説明

物質の測定法およびそれに用いるキット

【課題】低濃度の抗原などの物質を測定できる競合的均一系免疫凝集測定法およびそれに用いるキットを提供することを課題とする。
【解決手段】測定すべき抗原などの物質を含む試料と、該物質に対する抗体などの特異的結合パートナーと、該物質と同じ物質を担持した微細粒子または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子とを混合して、該特異的結合パートナーと、試料中の物質および微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物との間で、特異的結合反応を競合させて、該特異的結合パートナーと微細粒子が担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物との特異的結合反応による凝集の度合いから、測定すべき物質を定量する競合的均一系免疫凝集測定法において、該特異的結合パートナーとして、微細粒子に担持した特異的結合パートナーを用いることにより、低濃度の抗原などの物質を正確に測定することができ、また、用いる抗体などの量を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原等の物質の測定法およびそれに用いるキットに関する。更に詳細には、本発明は、試料中の物質の競合的均一系凝集測定法による測定法であって、生体試料中に低濃度で存在する蛋白質などの物質の測定に適した物質の測定法およびそれに用いるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液試料に存在する蛋白質等の抗原を測定する一つの方法として、ラテックス免疫比濁法等の免疫比濁法が知られている。これらの方法は、多数の試料を短時間で測定できるので、臨床検査業界で幅広く用いられている。しかしながら、これらの測定法では、測定試薬として用いる抗体を多量に使用する必要があり、測定試薬が高価になるという問題があった。また、プロゾーン現象が起こりやすく、さらに低濃度域では測定できない場合もあるという問題もあった。
【0003】
ところで、免疫測定法には、上記の免疫比濁法に関連して、競合的均一系免疫凝集測定法が知られている(特許文献1、2および3)。競合的均一系免疫凝集測定法とは、測定すべき抗原を含む試料と、該抗原に対する抗体と、その抗体と結合可能な抗原を担持してある微細粒子とを混合し、該抗体と、試料中の抗原および微細粒子に担持した抗原との間で、抗原抗体反応を競合させて、微細粒子に担持した抗原と抗体との抗原抗体反応による凝集の度合いから、測定すべき抗原を定量する方法である。この方法は、種々の工夫により、低濃度の抗原を測定できるというメリットがあり、その観点からいくつか研究がなされてきた。しかしながら、この方法において、さらなる低濃度の蛋白質を測定するには、更に測定感度が向上した測定法の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−206859号公報
【特許文献2】特表昭58−500874号公報
【特許文献3】特開2002−296281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、競合的均一系免疫凝集測定法等の競合的均一系凝集測定法を用いて、低濃度で存在する蛋白質などの抗原等の物質を高感度で測定する、抗原等の物質の測定法を提供することにある。また、そのような測定法に用いる測定用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのような状況下、これらの問題を解決するため、本発明者らは、競合的均一系免疫凝集測定法により、尿などの試料中で低濃度で存在するアルブミンやIgGなどの抗原を測定することを検討した。その結果、驚くべきことに、競合的均一系免疫凝集測定法に用いる抗体として、ラテックスなどの微細粒子に担持した抗体を用いると、低濃度のアルブミンなどを、少量の抗体により正確に測定できることが判明した。本発明はかかる経過により達成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 測定すべき物質を含む試料と、該物質に対する特異的結合パートナーと、該物質と同じ物質を担持した微細粒子または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子とを混合して、該特異的結合パートナーと、試料中の物質および微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物との間で、特異的結合反応を競合させて、該特異的結合パートナーと微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物との特異的結合反応による凝集の度合いから、測定すべき物質を定量する競合的均一系凝集測定法において、該特異的結合パートナーが微細粒子に担持した特異的結合パートナーであることを特徴とする、該物質の測定方法;
(2) 該物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子の粒径が、特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径と異なる上記(1)の測定方法;
(3) 該物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子の粒径が該特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径の1.05〜10.00倍である、上記(2)の測定方法;
(4) 測定すべき物質と特異的結合パートナーとの組み合わせが、抗体と抗原、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、レクチンとレクチン結合性糖類、ホルモンとホルモンレセプター、サイトカインとサイトカインレセプター、あるいはプロテインAまたはプロテインGとIgGの組み合わせである、上記(1)から(3)のいずれかの測定方法;
(5) 測定すべき物質が抗原で特異的結合パートナーが抗体、測定すべき物質が抗体で特異的結合パートナーが抗原、測定すべき物質がビオチンで特異的結合パートナーがアビジンまたはストレプトアビジン、あるいは測定すべき物質がアビジンまたはストレプトアビジンで特異的結合パートナーがビオチンである、上記(1)から(4)のいずれかの測定方法;
(6) 試料が生体試料であり、測定すべき物質がアルブミンまたはIgGで特異的結合パートナーがそれぞれ抗アルブミン抗体または抗IgG抗体である上記(5)の測定方法;
(7) 微細粒子がラテックス粒子である上記(1)から(6)のいずれかの測定方法;
(8) 凝集の度合いを波長340〜800nmの吸光度で測定する、上記(1)から(7)のいずれかの測定方法;
(9) 自動分析装置を用いて測定する上記(1)から(8)のいずれかの測定方法;
【0008】
(10) 物質を競合的均一系凝集測定法により測定するためのキットであって、微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物であって該物質に対する特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物と、微細粒子に担持した該物質に対する特異的結合パートナーを含む試薬から構成されるキット;
(11) 該物質と同じ物質に担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物に担持した微細粒子の粒径が、特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径と異なる上記(10)のキット;および
(12) 該物質と同じ物質に担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物に担持した微細粒子の粒径が特異的結合パートナーを担持した微細粒子の1.05〜10.00倍である、上記(11)のキット
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の測定法により、高価な抗体等の特異的結合パートナーを少なく用い、プロゾーン現象を発現することなく、かつ、生体試料中に低濃度で存在する蛋白質である抗原等の物質を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、競合的均一系凝集測定法とは、測定すべき抗原等の物質を含む試料と、該物質に対する抗体等の特異的結合パートナーを担持してある微細粒子と、該物質と同じ物質または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと結合可能な類似物を担持してある微細粒子とを混合し、微細粒子に担持した該特異的結合パートナーと、試料中の物質および微細粒子に担持した物質または類似物との間で、抗原抗体反応等の特異的結合反応を競合させて、微細粒子に担持した物質または類似物と微細粒子に担持した該特異的結合パートナーとの特異的結合反応による凝集の度合いから、測定すべき抗原等の物質を定量する方法である。
【0011】
本発明の測定法は、競合免疫反応等の競合反応で、反応試薬および生成物のうちの、1個のみが濁りを有し、他の成分が水に溶解するということに基づいており、その原理を、以下に、物質として抗原を、かつ、特異的結合パートナーとして抗体を用いた場合(抗原測定の場合)を例示して説明する。
まず、反応試薬として混合する対象として、(i)試料由来の抗原、(ii)該抗原と同じ抗原と微細粒子との結合体または該抗原の類似物と微細粒子との結合体、(iii)抗体と微細粒子との結合体を用いるが、これら(i)−(iii)の抗原および結合体は、すべて水に可溶あるいは均一分散可能である。次いで、これらを混合して抗原抗体反応をさせると、(iv)(ii)の抗原または類似体と微細粒子との結合体と(iii)の抗体と微細粒子との結合体が反応した反応物、および(v)(i)の抗原と(iii)の抗体と微細粒子との結合体が反応した反応物の2つの抗原抗体反応物が競合して生成する。(iv)の抗原または類似体抗体反応物は水に不溶性で濁りが生じるのに対し、(v)の抗原抗体反応物は水に均一に分散される。従って、(iv)の抗原または類似体抗体反応物が多く形成されればされるほど、反応液の濁度が増加する。
この競合反応では、(i)の抗原は、(ii)の抗原または類似体と微細粒子との結合体と、限定量の(iii)の抗体と微細粒子との結合体に対して競合反応し、それによって、不溶性で濁りが生じる(iv)の抗原または類似体抗体反応物の量を減少させると同時に、反応溶液中の濁度を低下させる。そのため、試料中の抗原が高濃度になればなるほど、反応液の濁りが小さくなる。従って、濁りの度合いから試料中の抗原を測定することができる。
本発明の一般的な原理としては、上記の抗原測定の場合の原理において、抗原を物質と、抗体を特異的結合パートナーと、抗原抗体反応を特異的結合反応と、読み替えることにより、そのまま、説明できる。
【0012】
この発明において、測定すべき物質は、特異的結合パートナーと結合または反応などして結合性複合体を形成するものであれば特に限定しない。
本発明において、特異的結合パートナーとは、測定すべき物質を特異的に認識可能で、例えば、結合または反応して、測定すべき物質と結合性複合体を形成しうる物質をいう。
このような測定すべき物質と特異的結合パートナーとの組み合わせとしては、例えば、抗体と抗原、ビオチンとアビジンやストレプトアビジン、レクチンとレクチン結合性糖類、ホルモンとホルモンレセプター、サイトカインとサイトカインレセプター、プロテインAとIgG等の組み合わせを挙げられる。本発明においては、これらの組み合わせのうち、一方を測定すべき物質とした場合、残りの一方を特異的結合パートナーとすることができる。
【0013】
従って、かかる測定すべき物質としては、例えば、抗原、抗体、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、レクチン、レクチン結合性糖類、ホルモン、ホルモンレセプター、サイトカイン、サイトカインレセプター、プロテインA、IgG等が挙げられる。
【0014】
測定すべき物質が抗原の場合、この発明で使用する特異的結合パートナーは抗体であるが、そのような抗体としては、上記抗原に対して抗原抗体反応によって結合し得るポリクローナル抗体、モノクローナル抗体またはそれら抗体の一部分であるフラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、F(v)フラグメント、H鎖モノマーまたはダイマー、L鎖モノマーまたはダイマー、1個のH鎖および1個のL鎖からなるダイマー等も挙げられる。
【0015】
なお、この特異的結合パートナーとして使用する抗体、例えば、これらのポリクローナル抗体やモノクローナル抗体などは、当該技術分野に属する当業者に周知の方法に従って作製することができる。つまり、生体成分物質などの抗体結合可能物質などを抗原として、抗体を産生することができる動物種、例えば、ヒト、モルモット、ヤギ、ネズミ、ウサギ等の動物に免疫して、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体などの抗体を常法に従って作製することができる。
【0016】
測定すべき抗原としては、具体的には、CRP、アルブミン、IgG、IgA、IgM等を例示でき、特に生体試料に低濃度に存在する蛋白質が好適である。具体的には、アルブミン、IgG、IgA、IgMがさらに好適であり、アルブミン、IgGが特に好適である。
【0017】
測定すべき物質が抗体の場合、病気診断のための測定対象の抗体が好適であり、菌体外成分の中でも溶血毒素であるストレプトリジンOに対する抗体、抗ストレプトキナーゼ抗体、抗ヒアルロニダーゼ抗体、梅毒抗体、マイコプラズマ抗体、トキソプラズマ抗体、HTLV−1抗体、HBs抗体,HBe抗体,HBc抗体、HIV抗体、HCV抗体等の抗体を例示できる。
測定すべき物質が抗体の場合、特異的結合パートナーとして用いる抗原としては、その抗体と抗原抗体反応ができ得るものであれば、特に制限はない。例えば、その抗体が抗ストレプトリジンO抗体であるときは、使用する抗原はストレプトリジンOを例示できる。また、抗ストレプトキナーゼ抗体、抗ヒアルロニダーゼ抗体には、それぞれ、ストレプトキナーゼ、ヒアルロニダーゼを抗原として使用できる。また、その抗体が、梅毒抗体、マイコプラズマ抗体、トキソプラズマ抗体等であるときは、それぞれの感染菌における菌体成分を用いることができる。
【0018】
本発明においては、測定すべき物質と特異的結合パートナーの組合せとして、ビオチンと、アビジンまたはストレプトアビジンとの組み合わせを用いることにより、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン等を測定することができる。
すなわち、測定すべき物質がビオチンの場合、特異的結合パートナーとしては、アビジンまたはストレプトアビジンを用いることができる。また、測定すべき物質がアビジンまたはストレプトアビジンの場合、特異的結合パートナーとしては、ビオチンを用いることができる。
アビジンは,卵白中に存在する塩基性糖タンパク質で、低分子ビタミンであるビオチンにきわめて強い親和性がある。ストレプトアビジンは、Streptomyces avidinii から分離される細菌タンパク質であり、ビオチンとの結合能によりアビジンと類似し、アビジンの代用として使用されている。ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジンとの強い親和性と特異性を利用した,種々のシステムが考案されているが、そのようなアビジン、ビオチン、ストレプトアビジンを、本発明においては、正確に測定できる。
【0019】
本発明においては、測定すべき物質と特異的結合パートナーの組合せとして、レクチンとレクチン結合性糖類との組み合わせを用いることにより、レクチン、レクチン結合性糖類等を測定することができる。
測定すべき物質がレクチンの場合、特異的結合パートナーとしては、レクチン結合性糖類を用いることができる。レクチンとは、「糖鎖に結合活性を示すタンパク質の総称」である。本発明においてレクチンとレクチン結合性糖類の組み合わせとしては、ガレクチンとガラクトース鎖、C-型レクチンとC-型レクチン結合性糖類、セレクチンとシアリルLeX構造を有するセレクチン結合性糖類、分子中にコラーゲン様構造をもつマンノースに特異性を示すレクチン群とマンノース鎖含有糖類、グリコサミノグリカンに親和性を有するアネキシンとグリコサミノグリカン鎖含有糖類、コンカナバリンA等の豆科レクチンと豆科レクチン結合性糖類、リシンとリシン結合性糖類との組み合わせを例示できる。
【0020】
本発明においては、測定すべき物質と特異的結合パートナーの組合せとして、ホルモンとホルモンレセプターとの組み合わせを用いることにより、ホルモン、ホルモンレセプター等を測定することができる。
そのようなホルモンとしては、下垂体ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性腺ホルモン、膵・消化管ホルモンが例示できる。
下垂体ホルモンとしては、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモン、チロトロピン、プロラクチン等を例示できる。甲状腺ホルモンとしては、トリヨードサイロニン、サイロキシン、サイログロブリン等を例示できる。副腎皮質ホルモンとしては、アルドステロン、コルチゾール等を例示できる。性腺ホルモンとしては、hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL等を例示できる。膵・消化管ホルモンとしては、インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン等を例示できる。その他のホルモンとしては、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、レニン、アンジオテンシンI、II、エンケファリン、エリスロポエチン、ソマトスタチン等を例示できる。
ホルモンレセプターとしては、上記に例示したホルモンレセプターを例示できる。
【0021】
本発明においては、測定すべき物質と特異的結合パートナーの組合せとして、サイトカインとサイトカインレセプターとの組み合わせを用いることにより、サイトカイン、サイトカインレセプター等を測定することができる。
サイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子を例示でき、サイトカインレセプターとしては、例示したサイトカインのレセプターが例示できる。
【0022】
本発明においては、測定すべき物質と特異的結合パートナーの組合せとして、プロテインAやプロテインGとIgGとの組み合わせを用いることにより、プロテインA、プロテインG、IgGを測定することができる。
プロテインAは黄色ブドウ球菌の、また、プロテインGは連鎖球菌の細胞壁由来タンパク質である。これらのプロテインAやプロテインGは、殆どの哺乳動物IgGとの結合することができる。本発明においては、そのような性質を利用して、プロテインA、プロテインG、IgGを測定することができる。
本発明において、試料とは、例えば、生体由来の液体試料であり、具体的には、血漿、血清、尿等を例示できる。
【0023】
本発明において、測定すべき物質(該物質)の類似物であって特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物(物質の類似物と記載することもある)とは、測定すべき物質と異なる物質であるが、構造等が類似しているため特異的結合パートナーと特異的結合反応をする物質である。そのため、この類似物が物質の測定系に存在すると、測定すべき物質と特異的結合パートナーとの特異的結合反応が抑制される。
微細粒子とは、免疫凝集反応等に通常使用される微細粒子をそのまま使用することができる。最も一般的な微細粒子は、ラテックス粒子である。微細粒子は、通常0.01〜0.50μm、好ましくは0.02〜0.4μm、さらに好ましくは0.03〜0.3μmのものが使用される。
本発明において、測定対象の物質と同じ物質またはその類似物を微細粒子に担持しておく場合、担持の方法は、疎水性相互作用による物理的吸着法や共有結合法等の通常の担持する方法を用いることができる。特に物質または特異的結合パートナーが強固に結合される共有結合法が好ましい。この共有結合法は公知の方法であり、結合試薬として、カルボジイミド試薬等の結合試薬、グルタールアルデヒド、塩化シアヌール、ベンゾキノン、タンニン酸、トリレンジイソシアネート等を使用し、緩衝液中で微細粒子と物質または特異的結合パートナーとを反応させることにより行うことができる。
【0024】
本発明においては、試料中の測定すべき物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子の粒径Aが、特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径Bと異なることにより測定感度が調節でき、特に粒径Aが粒径Bより大きいことが好ましい。このようにすることにより、試料中の物質の濃度が0の場合、吸光度を大きくし、かつ、濃度が高くなるにつれて少しずつ減衰させることができ、それによって、試薬としての特異的結合パートナー、更には試薬としての物質等も少なく使用して、低濃度の物質を高感度で測定することができる。特に、測定すべき物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子の粒径が特異的結合パートナーに担持した微細粒子の粒径の好ましくは1.05〜10.00倍、さらに好ましくは1.10〜3.00倍、特に好ましくは1.15〜2.50倍である。この倍数が小さすぎると感度が悪くなることもあり、逆に大きすぎると試薬の凝集が起こりやすくなるため試薬ブランクが高くなりすぎ物質を測定しにくいことがある。
【0025】
本発明においては、凝集の度合いを定量する方法としては、通常、生成する濁りを、通常、吸光度、好ましくは波長340〜800nmの吸光度で測定するが、凝集塊を肉眼で観察したり、凝集をしなかった粒子を計数することによっても実施することができる。
本発明の測定法を実施するには、例えば、次の具体的な方法が挙げられる。まず、試薬として、測定すべき物質と同じ物質を担持した微細粒子または該物質の類似物を担持した微細粒子を、りん酸緩衝液などの緩衝液に均一分散した第一試薬、並びに、特異的結合パートナーを担持した微細粒子をりん酸緩衝液などの緩衝液に均一分散した第二試薬を調製する。次いで、自動分析装置を用いて、測定すべき物質を含む試料に、第一試薬および第二試薬を加えて、特異的結合反応をさせ、生じる凝集割合を、例えば、波長340nmから800nmにて2ポイントエンド法により吸光度変化量として測定し、得られた測定値から、予め物質濃度既知の標準試料を用いて作成した検量線に基づいて、目的とする試料中の物質を定量することができる。
【0026】
このような本発明の測定法を実現するためには、微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物と、微細粒子に担持した該物質に対する特異的結合パートナーを含む試薬から構成されるキットを用いることができる。
微細粒子に担持した該抗原物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物、微細粒子に担持した該物質に対する特異的結合パートナーは、それぞれ、上記測定法で説明した、物質、特異的結合パートナー、微細粒子をそのまま用いることができる。
【0027】
以下の実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1並びに比較例1および2
抗原であるヒトアルブミンの測定
実施例1では、微細粒子として抗原であるアルブミンを担持したラテックス粒子を含む試薬(第一試薬)と、抗アルブミン抗体を担持したラテックス粒子を含む試薬(第二試薬)を用いて試料中のアルブミンを感度よく測定できることを示す。なお、比較例1として、ラテックス粒子を含まない緩衝液のみを第一試薬として用い、第二試薬として抗アルブミン抗体を担持したラテックス粒子を用いる通常のラテックス免疫凝集測定法、比較例2として、アルブミンを担持したラテックス粒子を第一試薬として用い、第二試薬として、ラテックス粒子に担持していない抗アルブミン抗体を用いた競合的均一系免疫測定法にてアルブミンを測定し、実施例1の測定感度と比較した。
【0028】
1)ヒトアルブミン感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子へのヒトアルブミンの結合は以下のように行った。
MES(2−モルホリノエタンスルホン酸1水和物)緩衝液で1%濃度とした、表面にカルボキシレート基を有する粒径208nmのラテックス粒子溶液100mLに、MES緩衝液で2mg/mLとした1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)溶液100mLを加え、10分間室温で攪拌してカルボキシレート基を活性化させた。
次いでヒト血清アルブミン(SCRIPPS社製)をMES緩衝液に1.0mg/mLとなるように溶解した溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により結合させた後、グリシン緩衝液を100mL加えて反応を停止させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を回収した。この沈殿物に精製水を200mL加え懸濁させた後、再び遠心分離を行い洗浄した。この沈殿物にTris緩衝液で0.5%濃度としたカゼイン溶液200mLを加え懸濁し超音波処理を行って完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にTris緩衝液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行って完全に分散させ1%濃度ヒトアルブミン感作ラテックス粒子を得た。
【0029】
2)抗ヒトアルブミンヤギ血清IgGフラクション感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子への抗ヒトアルブミンヤギ血清IgGフラクションの結合は以下のように行った。
MES緩衝液で1%濃度とした、表面にカルボキシレート基を有する粒径108nmのラテックス粒子溶液100mLに、MES緩衝液で2mg/mLとしたEDC溶液100mLを加え、10分間室温で攪拌してカルボキシレート基を活性化させた。
次いで抗ヒトアルブミンヤギ血清IgGフラクションをMES緩衝液に2.0mg/mLとなるように溶解した溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により結合させ、グリシン緩衝液を100mL加えて反応を停止させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を回収した。この沈殿物に精製水を200mL加え懸濁させた後、再び遠心分離を行い洗浄した。この沈殿物にTris緩衝液で0.5%濃度としたカゼイン溶液200mLを加え懸濁し超音波処理を行って完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にTris緩衝液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行って完全に分散させ1%濃度抗ヒトアルブミンヤギ血清IgGフラクション感作ラテックス粒子を得た。
【0030】
3)アルブミン測定用の第一試薬および第二試薬の調製
ヒトアルブミン感作ラテックス粒子と抗ヒトアルブミンヤギ血清IgGフラクション感作ラテックス粒子を用いて、第一試薬および第二試薬を調製した。
第一試薬は1%濃度ヒトアルブミン感作ラテックス粒子10mLにTris緩衝液90mLを加えラテックス濃度0.1%の溶液として用いた。
第二試薬は1%濃度抗ヒトアルブミンヤギ血清IgGフラクション感作ラテックス粒子10mLにTris緩衝液90mLを加えラテックス濃度0.1%の溶液として用いた。この溶液は当該IgGフラクション0.2mg/mLにあたる。また、比較例1として、第一試薬の代わりにTris緩衝液のみを用いた場合と、比較例2として、第二試薬の代わりにTris緩衝液で当該IgGフラクション0.2mg/mLとなるよう調製した溶液を用いた場合の2例を用意した。
試料は、界面活性剤を添加した生理食塩水でアルブミン濃度既知の試料を適宜希釈して使用した。
なお、各試薬の組成は以下の通りである。
【0031】
MES緩衝液
MES 50mM pH 5.2
グリシン緩衝液
グリシン 500mM pH 8.0
Tris緩衝液
Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)
50mM pH 8.0
塩化ナトリウム 100mM
Triton−X100 0.1%
【0032】
アルブミンの測定は日立7180形自動分析装置を用い、試料10μLに対し第一試薬150μL、第二試薬50μLを反応させ、波長570nmにて19〜34測光ポイント間(第二試薬添加後約1分後から5分後に相当)において、2ポイントエンド法による吸光度変化量を測定した。
【0033】
4)測定結果
測定結果を表1と図1に示す。
【表1】

【0034】
表1に示したように、第一試薬にヒトアルブミン感作ラテックス粒子を用いた場合には、第一試薬と第二試薬の間で凝集が起こり、検体中のヒトアルブミン濃度が増すにつれて競合反応により吸光度変化量が減少する。ここで実施例1、比較例1および比較例2の比較を容易にするため、試料各濃度の吸光度変化量から0濃度の吸光度変化量(ブランク吸光度)を差し引いた値を絶対値で比較したものを表2に示す。
【表2】

【0035】
図1、表1、表2に示すように、本発明の測定法は、第一試薬を緩衝液のみとして該抗体感作ラテックス粒子と試料中の該抗原との凝集を測定する系(比較例1)に比べ、第一試薬に該抗原感作ラテックス粒子を用いた場合(実施例1)では大幅な感度の向上が認められ、これは第一試薬に該抗原感作ラテックス粒子、第二試薬に該抗体のみの場合(比較例2)と比べても顕著な現象であることが確認された。
【0036】
5)確立された尿中アルブミン測定法との相関性
アルブミン測定試薬として確立されているN−アッセイ TIA MicroAlb ニットーボー(日東紡績株式会社製)と本発明試薬の相関性の結果を図2に示す。なお、試料は尿検体を用いた。
図2に示すように、従来法をX、本発明法をYとして相関性を確認したところ、Y=1.04X+0.8、相関係数0.997と良好な結果が得られた。本発明の方法と確立されたアルブミン測定法との相関性が確認されたことは、本発明法が尿中のアルブミンを正確に測定できるといえる。
【0037】
実施例2並びに比較例3および4
抗原であるヒトIgGの測定
実施例2では、微細粒子としてIgGを担持したラテックス粒子を含む試薬(第一試薬)と、抗ヒトIgG抗体を担持したラテックス粒子を含む試薬(第二試薬)を用いて試料中のIgGを感度よく測定できることを示す。なお、比較例3として、ラテックス粒子を含まない緩衝液のみを第一試薬として用い、第二試薬として抗ヒトIgG抗体を担持したラテックス粒子を用いる通常のラテックス免疫凝集測定法、比較例4として、IgGを担持したラテックス粒子を含む試薬を第一試薬として用い、第二試薬として、ラテックス粒子に担持していない抗IgG抗体を用いた競合的均一系免疫測定法にてIgGを測定し、実施例2の測定感度と比較した。
【0038】
1)ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子へのヒトIgGフラクションの結合は以下のように行った。
MES緩衝液で1%濃度とした、表面にカルボキシレートを有する粒径108nmのラテックス粒子溶液100mLに、MES緩衝液で200mg/mLに調製したEDC溶液1.5mL添加した。
次いで、ヒトIgGフラクションをMES緩衝液に0.5mg/mLとなるように溶解した溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により結合させた後、Tris緩衝液を50mL加えて反応を停止させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄し沈殿物を回収した。この沈殿物にBSAコート溶液を100mL加え沈殿物を懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にHEPES緩衝液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させ1%濃度ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子を得た。
【0039】
2)抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子への抗ヒトIgG抗体の結合は以下のように行った。
MES緩衝液で1%濃度とした、表面にカルボキシレートを有する粒径108nmのラテックス粒子溶液100mLに、MES緩衝液で200mg/mLに調製したEDC溶液1.5mL添加した。
次いで、抗ヒトIgG抗体をMES緩衝液に1.0mg/mLとなるように溶解した溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により結合させた後、Tris緩衝液を50mL加えて反応を停止させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄し沈殿物を回収した。この沈殿物にBSAコート溶液を100mL加え沈殿物を懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にHEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)緩衝液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させ1%濃度抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子を得た。
【0040】
3)ヒトIgG測定用の第一試薬および第二試薬の調製
ヒトIgG感作ラテックス粒子と抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子を用いて、第一試薬及び第二試薬を調製した。
第一試薬は、1%濃度ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子10mLにHEPES緩衝液を90mLを加えてラテックス濃度0.1%の溶液として用いた。第二試薬は、1%濃度抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子3mLにHEPES緩衝液を97mLを加えてラテックス濃度0.03%の溶液として用いた。この溶液中の当該抗ヒトIgG抗体濃度は0.03mg/mLにあたる。
また、比較例3として、第一試薬にHEPES緩衝液を用いた場合と、比較例4として、第二試薬にHEPES緩衝液で当該抗ヒトIgGフラクションが0.03mg/mLとなるよう調製した溶液を用いた場合の2例を用意した。
試料は、界面活性剤を添加した生理食塩水を用いて濃度既知のヒトIgG試料を適宜希釈して使用した。
各試薬の組成は以下の通りである。
【0041】
BSAコート溶液
HEPES 25mM pH7.5
塩化ナトリウム 150mM
Triton−X100 0.1%
BSA (ウシ血清アルブミン) 1.0%
Tris緩衝液
Tris 12.4mM pH7.5
尿素 20mM
HEPES緩衝液
HEPES 25mM pH7.5
塩化ナトリウム 150mM
Triton−X100 0.1%
【0042】
ヒトIgGの測定は日立7180形自動分析装置を用い、試料10μLに対し第一試薬100μL、第二試薬100μLを反応させ、波長570nmにて19−34測光ポイント間(第二試薬添加後約1分後から5分後に相当)において、2ポイントエンド法による吸光度変化量を測定した。
【0043】
4)測定結果
測定結果を表3と図3に示す。
【表3】

【0044】
表3に示したように、第一試薬にヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子を用いた場合には、第一試薬と第二試薬の間で凝集が起こり、検体中のヒトIgG濃度が増すにつれ競合反応により吸光度変化量が減少する。
ここで、実施例2、比較例3および比較例4の比較を容易にするため、試料各濃度の吸光度変化量から0濃度の吸光度変化量(ブランク吸光度)を差し引いた値を絶対値で比較したものを表4に示す。
【表4】

【0045】
図3、表3、表4に示したように、第一試薬を緩衝液として抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子と試料中の抗原との凝集を測定する系(比較例3)に比べ、第一試薬にヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子を用いた場合(実施例2)では大幅な感度の向上が認められ、これは第一試薬にヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子、第二試薬が抗ヒトIgG抗体溶液の場合(比較例4)と比べても顕著な現象であることが確認された。
また、比較例4ではヒトIgG濃度が高くなるにつれ吸光度の上昇が抑えられ、さらに、比較例3では逆に吸光度が減少しプロゾーン現象が認められた。しかし、実施例2では比較例よりも高濃度まで測定が可能であり、プロゾーン現象も認められなかった。
【0046】
5)確立されたラテックス法IgG測定試薬との相関性
ヒトIgGについての本発明の測定法と、IgG測定試薬として確立されているN−アッセイ LA IgG ニットーボー試薬との相関性の結果を図4に示す。試料は、界面活性剤を添加した生理食塩水を用いて血清検体を適宜希釈して使用した。
図3に示されているように、確立されている方法をX、本法をYとして相関性を確認したところ、Y=0.9963X−0.1820、相関係数0.9875と良好な結果が得られた。このことから本発明の測定法がヒトIgGを正確に測定できているといえる。
【0047】
実施例3〜6
粒径比の違いによるIgGの測定
本実施例では、抗原であるヒトIgGを担持したラテックス粒子(粒径一定)を用いて第一試薬とし、抗体である抗ヒトIgG抗体を担持したラテックス粒子の粒径を種々変化させて、その感度を比較した。
【0048】
1)ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子へのヒトIgGフラクションの結合は以下のように行った。
精製水で1%濃度とした粒径120nmのラテックス粒子100mLにHEPES緩衝液で0.5mg/mLとなるように調製したヒトIgGフラクション溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してラテックス粒子表面にヒトIgGフラクションを物理吸着させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄し沈殿物を回収した。この沈殿物にBSAコート溶液を100mL加え沈殿物を懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にHEPES緩衝液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させ1%濃度ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子(粒径120nm)を得た。
【0049】
2)抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子への抗ヒトIgG抗体の結合は以下のように行った。
精製水で各々1%濃度とした粒径の異なる4種類(粒径98、120、190、260nm)のラテックス粒子100mLにHEPES緩衝液で2.0mg/mLとなるように調製した抗ヒトIgG抗体溶液を各々100mL加え室温にて1時間攪拌してラテックス粒子表面に物理吸着させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄し沈殿物を回収した。この沈殿物にBSAコート溶液を各々100mL加え沈殿物を懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にHEPES緩衝液を各々100mL加えて懸濁し、超音波処理を行い完全に分散させ4種類の1%濃度抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子(粒径98、120、190、260nm)を得た。
【0050】
3)ヒトIgG測定用の第一試薬および第二試薬の調製
ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子と抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子を用いて、第一試薬及び第二試薬を調製した。
第一試薬は、1%ヒトIgGフラクション感作ラテックス粒子10mLにHEPES緩衝液を90mL加えてラテックス濃度0.1%の溶液として用いた。第二試薬は1%抗ヒトIgG抗体感作ラテックス粒子(粒径 98、120、190、260nm)2.5mLにHEPES緩衝液を各々97.5mL加えてラテックス濃度0.025%の溶液として用いた。
【0051】
各試薬の組成は以下の通りである。
HEPES緩衝液
HEPES 25mM pH7.5
塩化ナトリウム 150mM
BSAコート溶液
HEPES 25mM pH7.5
塩化ナトリウム 150mM
BSA(ウシ血清アルブミン) 1.0%
【0052】
4)測定法と結果
ヒトIgGの測定は日立7180形自動分析装置を用い、試料10μLに対し第一試薬100μL、第二試薬100μLを反応させ、波長570nmにて19−34測光ポイント間(第二試薬添加後約1分後から5分後に相当)において、2ポイントエンド法による吸光度変化量を測定した。
測定結果を表5に示す。
【表5】


表中、カッコ内は、(第一試薬のラテックス粒径)/(第二試薬のラテックス粒径)を表す
【0053】
表5に示したように、第一試薬と第二試薬の間で凝集が起こり、検体中のヒトIgG濃度が増すにつれ競合反応により吸光度変化量が減少する。
ここで、粒径の大きさによる比較を容易にするため、試料各濃度の吸光度変化量から0濃度の吸光度変化量(ブランク吸光度)を差し引いた値を絶対値で比較したものを表6に示す。
【表6】


表中、カッコ内は、(第一試薬のラテックス粒径)/(第二試薬のラテックス粒径)を表す
【0054】
表5、表6に示されるように、第一試薬に用いられるラテックス粒子の粒径が第二試薬に用いられているラテックス粒子よりも小さいか等しい場合と比較し、第一試薬に用いられるラテックス粒子の粒径が第二試薬に用いられているラテックス粒子よりも大きい場合では大幅な感度の向上が認められた。
【0055】
実施例7〜9
特異的結合パートナーとしてアビジンを用いたビオチンの測定
実施例7〜9では、特異的結合パートナーとしてアビジンを用い、ビオチンを測定した例を示す。ビオチンを結合したラテックス粒子を用いて第一試薬、一方、そのラテックス粒子の0.52〜1.56倍となる粒径を有するラテックス粒子にアビジンを担持させた第二試薬を用いて試料中のビオチンを測定した。
【0056】
1)ビオチン結合ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子へのビオチンの結合は以下のように行った。
MES緩衝液で1%濃度とした表面にカルボキシレート基を有する粒径194nmのラテックス粒子溶液100mLに、MES緩衝液で2mg/mLとしたEDC溶液100mLを加え、10分間室温で攪拌してカルボキシレート基を活性化させた。
次いでウシ血清アルブミンをMES緩衝液に10mg/mLとなるように溶解した溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により結合させた後、Tris緩衝液を100mL加えて反応を停止させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を回収した。この沈殿物にTween緩衝液を200mL加え懸濁させた後、再び遠心分離を行い洗浄した。この沈殿物を炭酸水素ナトリウム緩衝液100mLを加え懸濁し超音波処理を行って完全に分散させた後、活性化したスクシイミド基が修飾されたビオチンを含むビオチン溶液500μLを加え室温で1時間攪拌した。次いで遠心分離を行い得られた沈殿物にカゼイン溶液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行って完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。 その後、遠心分離を行い得られた沈殿物にTX100溶液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行って完全に分散させ1%濃度ビオチン結合ラテックス粒子を得た。
【0057】
2)アビジン感作ラテックス粒子の調製
ラテックス粒子へのアビジンの結合は以下のように行った。
MES緩衝液で1%濃度とした粒径の異なる3種類(100、194、303nm)のラテックス粒子100mLにMES緩衝液で2mg/mLとしたEDC溶液100mLを加え、10分間室温で攪拌してカルボキシレート基を活性化させた。
次いでアビジンをMES緩衝液に0.5mg/mLとなるように溶解した溶液100mLを加え室温にて1時間攪拌してカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により結合させた後、Tris緩衝液を100mL加えて反応を停止させた。その後、20,000rpmで1時間遠心分離を行い、上清を廃棄して沈殿物を回収した。この沈殿物にカゼイン溶液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行って完全に分散させた後、室温で1時間攪拌した。その後、遠心分離を行い得られた沈殿物にTX100溶液を100mL加えて懸濁し、超音波処理を行って完全に分散させ1%濃度アビジン感作ラテックス粒子を得た。
【0058】
3)ビオチン測定用の第一試薬および第二試薬の調製
ビオチン結合ラテックス粒子とアビジン感作ラテックス粒子を用いて、第一試薬及び第二試薬を調製した。
第一試薬は、1%濃度ビオチン結合ラテックス粒子10mLにTX100溶液を90mL加えてラテックス濃度0.1%の溶液として用いた。第二試薬は1%濃度アビジン感作ラテックス粒子(100、194、303nm)4mLにTX100溶液を各々96mL加えてラテックス濃度0.04%の溶液として用いた。
各試薬の組成は以下の通りである。
【0059】
Tween溶液
炭酸水素ナトリウム 400mM pH8.3
塩化ナトリウム 1M
Tween20 5.0%
炭酸水素ナトリウム緩衝液
炭酸水素ナトリウム 400mM pH8.3
塩化ナトリウム 1M
ビオチン溶液
Biotin−(AC−OSu 10mg
ジメチルスルホキシド 1280μL
カゼイン溶液
HEPES 25mM pH7.5
塩化ナトリウム 150mM
カゼイン 1.0%
TX100溶液
HEPES 25mM pH7.5
塩化ナトリウム 150mM
Triton−X100 1.0%
【0060】
4)ビオチンの測定
試料中のビオチン測定は日立7180形自動分析装置を用い、試料10μLに対し第一試薬120μL、第二試薬60μLを反応させ、主波長570nm、副波長800nmにて19−34測光ポイント間(第二試薬添加後約1分後から5分後に相当)において、2ポイントエンド法による吸光度変化量を測定した。
【0061】
測定結果
測定結果を表7に示す。
【表7】

【0062】
表7に示したように、実施例7〜9において、試料中のビオチン濃度が増すにつれ競合反応により吸光度変化量がいずれも減少した。したがって、実施例7〜9のいずれの条件でも、ビオチン濃度と吸光度変化量との検量線を作成することができ、これと測定値を比較することにより、ビオチン濃度を測定できることが判明した。
ここで、粒径の大きさによる比較を容易にするため、試料各濃度の吸光度変化量から0濃度の吸光度変化量(ブランク吸光度)を差し引いた値を絶対値で比較したものを表8に示す。
【表8】

【0063】
表8の絶対値から、ビオチンを担持した微細粒子の粒径が、アビジンを担持した微細粒子の粒径よりも大きい場合、大幅な感度の向上が認められた。
このことは、抗原抗体反応に限定されることなく他の特異的結合反応においても、測定すべき物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径が、特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径よりも大きい場合、その物質をより感度よく測定できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の測定法により、高価な抗体等の特異的結合パートナーを少なく用い、プロゾーン現象を発現することなく、かつ、生体試料中に低濃度で存在するアルブミンなどの物質を感度良く正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1、比較例1および比較例2におけるアルブミンの測定結果を示す。
【図2】尿中アルブミンを測定した場合の本発明の測定法とTIA法との相関性の結果を示す。
【図3】実施例2、比較例3および比較例4におけるヒトIgGの測定結果を示す。
【図4】ヒトIgGを測定した場合の本発明の測定法とラテックス法との相関性の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定すべき物質を含む試料と、該物質に対する特異的結合パートナーと、該物質と同じ物質を担持した微細粒子または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子とを混合して、該特異的結合パートナーと、試料中の物質および微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物との間で、特異的結合反応を競合させて、該特異的結合パートナーと微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物との特異的結合反応による凝集の度合いから、測定すべき物質を定量する競合的均一系凝集測定法において、該特異的結合パートナーが微細粒子に担持した特異的結合パートナーであることを特徴とする、該物質の測定方法。
【請求項2】
該物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子の粒径が、特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径と異なる請求項1の測定方法。
【請求項3】
該物質と同じ物質を担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物を担持した微細粒子の粒径が該特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径の1.05〜10.00倍である、請求項2の測定方法。
【請求項4】
測定すべき物質と特異的結合パートナーとの組み合わせが、抗体と抗原、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、レクチンとレクチン結合性糖類、ホルモンとホルモンレセプター、サイトカインとサイトカインレセプター、あるいはプロテインAまたはプロテインGとIgGの組み合わせである、請求項1から3のいずれかの測定方法。
【請求項5】
測定すべき物質が抗原で特異的結合パートナーが抗体、測定すべき物質が抗体で特異的結合パートナーが抗原、測定すべき物質がビオチンで特異的結合パートナーがアビジンまたはストレプトアビジン、あるいは測定すべき物質がアビジンまたはストレプトアビジンで特異的結合パートナーがビオチンである、請求項1から5のいずれかの測定方法。
【請求項6】
試料が生体試料であり、測定すべき物質がアルブミンまたはIgGで特異的結合パートナーがそれぞれ抗アルブミン抗体または抗IgG抗体である請求項5の測定方法。
【請求項7】
微細粒子がラテックス粒子である請求項1から6のいずれかの測定方法。
【請求項8】
凝集の度合いを波長340〜800nmの吸光度で測定する、請求項1から7のいずれかの測定方法。
【請求項9】
自動分析装置を用いて測定する請求項1から8のいずれかの測定方法。
【請求項10】
物質を競合的均一系凝集測定法により測定するためのキットであって、微細粒子に担持した該物質と同じ物質または微細粒子に担持した該物質の類似物であって該物質に対する特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物と、微細粒子に担持した該物質に対する特異的結合パートナーを含む試薬から構成されるキット。
【請求項11】
該物質と同じ物質に担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物に担持した微細粒子の粒径が、特異的結合パートナーを担持した微細粒子の粒径と異なる請求項10のキット。
【請求項12】
該物質と同じ物質に担持した微細粒子の粒径または該物質の類似物であって該特異的結合パートナーと特異的結合反応し得る類似物に担持した微細粒子の粒径が特異的結合パートナーを担持した微細粒子の1.05〜10.00倍である、請求項11のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−31252(P2009−31252A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8665(P2008−8665)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】