説明

特に流線形のスケールを備える、流線形牽引ロープ用のスケール回転装置

本発明は、軸の周りを回転するように関節式にされたスケールによって流線形にされたロープのスケールを相互に整列させる手段に関し、その整列は、そのようなロープをウィンチのドラムに巻き付けることを可能にするために必要である。この手段は主に、傾斜前面を有し、かつ前部から後部まで延在する空洞部を備え、その空洞部内部を巻き付け前のロープが通る装置からなる。空洞部は、2つの側方縁部を有する長手方向開口部を有し、各縁部は、前部から後部までらせん形のプロファイルをたどり、2つのらせん形は互いに同軸であり、かつ空洞部の対称軸を備える。空洞部の壁もまた、装置内のその全経路に沿ってスケールの断面プロファイルをたどるように構成されている。開口部の縁部の長さを考えれば、装置に入るときのスケールの向きに関わらず、ロープが出るときに、隣接するスケールと整列して所望の向きを取るように、ロープを巻き付けるドラムに対して装置を配置する。本発明は特に、海に出航した潜水体を牽引するために船上で使用される、スケールによって流線形にされた牽引ロープを取り扱うためのシステムに適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海に出航した潜水体を牽引するために船舶で使用される流線形牽引ロープ、および流線形牽引ロープを船上にたぐりよせ、かつそれを、例えばウィンチのドラム上にしまい込むためのシステムに関する。より具体的には、関節式スケールによって流線形にされた牽引ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景は、被牽引潜水物体を展開するための艦艇にある。そのような艦艇では、非稼働フェーズにおいて、潜水体は艦艇に搭載されており、および牽引ロープまたは曳航索はウィンチのドラムに巻きつけられている。反対に稼働フェーズでは、潜水体は舟艇の後方で潜水し、舟艇が牽引ロープによって潜水体を牽引し、ロープ自体も、ウィンチにつながれたままである端部は別として、沈められる。
【0003】
そのような状況では、牽引ロープが沈められているときに、牽引ロープの抵抗を低減することが有用である。こうするために、流線形ロープおよび特に図1に示すようなフェアリングまたはスケールによって流線形にされたロープを使用することが公知である。このスケールは、流体力学的な、例えばフィン形状の細長要素を備え、これは、肉厚な内縁部に、ロープを通すチューブ状ダクトを備え、肉薄な外縁部によってロープの周りで水があまり乱流とならないようにしている。スケールセットがロープを完全にまたは部分的に被覆する。
【0004】
通常の動作では、スケールは、ロープの周りで動くように取り付けられ、かつ互いに対して回転するように接合されている。このように、一方のスケールが回転すると、隣接するスケールが回転することとなり、そして段階的に、全てのスケールが回転することとなる。
【0005】
これは、ロープが水中に展開されるとき、およびロープがドラムに巻き付けられるときのいずれも、スケールの向きが全て同じになり、かつ1つのスケールの向きのいかなる変化も、少しずつ、ロープを流線形にする全てのスケールに影響を及ぼすことを意味する。それゆえ、ロープが海で展開されるとき、スケールは、艦艇が移動することによって加えられる牽引力により発生した流れの方向に自然に向けられる。同じように、ロープがウィンチのドラムに巻き付けられるとき、ロープが上昇するにつれ、図2に示すように、全てのスケールはドラムに対して同一の向きとなる。その向きは、スケールを、一巻き毎に互いに平行になるように維持することによってロープを巻き付けることを可能にする。
【0006】
しかしながら、ロープの耐用期間内に、特定のスケール間の結合が破損されること、および1つ以上のスケールが部分的に損傷を受けることが度々ある。この場合、スケール間の結合がある箇所で破壊される場合、1つ以上のスケールがもはや全体と整列しないこともあり得る。その場合、ロープがウィンチのドラムに巻き付けられるとき、1つ以上のスケールの向きがドラムに対して悪くなること、およびドラム上で同じ位置レベルに位置する全てのスケールが互いに平行する配置である図2に示す配置通りの位置にならないことが特に起こり得る。それゆえ、1つ以上のスケールが、例えば、図4に示すような構成に横たわる場合がある。そのような位置となる結果、牽引ロープの巻き上げが妨害され、かつ図面に示すように、しばしば悪いポジションにあるスケールが破壊されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、所与の向きに従って、ロープ、特に牽引ロープに流線形を与えるスケールを確実に正しく位置決めしかつ整列させて、スケールを損傷させる恐れがなくロープを自動的にウィンチのドラムに巻き付けることができるようにし、かつこれは、これらのスケールが無傷な状態、特に各スケールをそれに隣接するスケールに回転するように連結する手段が無傷な状態にあることに関わらない、解決法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明の主題は、ロープが通され、前記ロープの周りで回転するように動き、かつ並進移動するように前記ロープに接合された物体を一定の方向に確実に向けるための装置であって、前記物体が、長さLのシリンダーの形状を有し、高さhの横断面を有し、かつ回転円筒体の形状を有する長手方向ダクトを備える装置である。このダクトは、前記物体の最も幅広なベースの位置レベルに配置され、このダクトによりロープが通される。本発明による装置は、ロープが出る後面と、ロープが入る傾斜前面と、向きを定められる物体の長さと少なくとも等しい長さの空洞部とを備えることを特徴とする。前記空洞部は対称軸をなし、かつその全長にわたって開口部が延在し、その縁部は、2つの対称的な縁部半部によって形成され、そのプロファイルは、まず、反対方向に回転しかつ同軸の2つのらせん曲線をたどり、その対称軸は空洞部の対称軸と同じである。各らせん形の縁部半部は、両縁部半部に共通しかつ装置の前面の位置レベルにある開口部の縁部の点から対称軸の周りを約180°回転した状態で形成されている。次いで、縁部半部のプロファイルは、離間した2つの平行の直線セグメントをたどり、開口部の幅によって、装置が繰り出されるまで、所望の向きを維持することにより物体を確実に適切な向きに誘導する。
【0009】
本発明による装置の特有の一実施形態では、空洞部は、空洞部の対称軸と同じである軸に沿って、装置を形成する材料に穴を形成することによって構成された壁を有しており、その穴の形成は、物体の断面、すなわち横断面に対応する表面分だけ装置の断面を除去することによって行われ、この除去による開口角度は、所与の横断面を通る断面に関しては縁部半部とこの横断面とが交わることによって画成される。
【0010】
上述の実施形態に関連し得る特有の実施形態では、本発明による装置はまた、向きを定められる物体を、装置を通過した後に確実に所望の向きにするように、装置の位置決めを可能にする固定アームを備える。
【0011】
上述の実施形態の変形例によれば、固定アームを、装置の水平面において回転するように移動可能にする構成とする。
【0012】
上述の変形例と組み合わせることができる別の変形例によれば、固定アームは、装置を通過するときにロープに加えられる圧力を制御することを可能にする弾性板を形成する。
【0013】
上述の変形例と組み合わせることができる実施形態では、本発明による装置は、向きを定められる物体に、この物体が装置の前面の点と接触するのを回避するような導入時の向きを与える手段を備える。
【0014】
上述の変形例と組み合わせることができる実施形態では、本発明による装置はまた、空洞部の対称軸に沿ってロープの軸を位置決めする手段を備える。
【0015】
この実施形態の変形例によれば、ロープの軸を位置決めする手段は、傾斜前面の後部に配置された溝付き転がり軸受を備える。
【0016】
上述の変形例と組み合わせることができる実施形態では、本発明による装置はまた、装置を通過するときにロープに加えられる圧力を制限する手段を備え、これらの手段は、ロープが空洞部の壁と接触する領域の位置レベルに配置されている。
【0017】
本発明の別の主題は、船舶によって潜水体を牽引するロープを流線形に形成するスケールを回転させることへの装置の応用である。前記装置は、ロープをウィンチのドラムに巻き付けるようにする向きに、ロープのスケールを確実に自動指向するように実装されている。
【0018】
本発明の別の主題は、固定アームを介してシステムの頭部に取り付けられた上述のスケール回転装置を備える、船舶によって潜水体を牽引するためのロープ用の分配システムである。
【0019】
本発明の別の主題は、上述の分配システムの変形例であり、ここでは、回転装置は、装置を垂直面に回転可能にさせる手段によってシステムに固定されている。
【0020】
有利には、本発明による装置をスケール、または横断面が肉薄で多かれ少なかれ流体力学的なプロファイルを有するシリンダーのモデルに作り上げられた様々なおよび多かれ少なかれ複雑な形態に開発し得る。
【0021】
本発明の特徴および利点は、非限定的な例としての特定の実施形態によって、かつ添付の図面に基づく本発明を説明する以下の詳細からより理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げがもたらす問題に関する図である。
【図2】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げがもたらす問題に関する図である。
【図3】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げがもたらす問題に関する図である。
【図4】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げがもたらす問題に関する図である。
【図5】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げに適応したバージョンの本発明による装置の全体図である。
【図6】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げに適応したバージョンの本発明による装置の全体図である。
【図7】スケールを有するロープのウィンチ上への自動巻き上げに適応したバージョンの本発明による装置の全体図である。
【図8】本発明による装置の操作の原理を示す図である。
【図9】本発明による装置の操作の原理を示す図である。
【図10】本発明による装置の、ウィンチの分配システムの頭部への例示的な実装例を示す図である。
【図11】本発明による装置の、ウィンチの分配システムの頭部への例示的な実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
重要なことが、まず、図1〜図4に、本発明が解決する技術的な問題を明白に示してまとめられている。この説明を、船舶の後ろで潜水体が沈められるときに潜水体とそれを輸送する船舶との間を結び付けるための電気式牽引ロープの特定の例によって与える。
【0024】
図1に示すように、操作、すなわち、潜水体(図示せず)の出航およびその回収は、ウィンチのドラム12に静止した状態で巻かれた牽引ロープ11によって行われる。潜水体の稼働時、すなわち、潜水体が船舶に牽引されながら水中に沈んでいるとき、牽引ロープ11はドラムから一定の長さまで繰り出されて、一定の深さにおよび船舶から一定の距離に潜水体を位置決めし、かつ潜水体を牽引できるようにする。この状況では、ロープ自体もその長さの全てまたは一部が水中に沈められるので、ロープの通った跡に、水の抵抗を発生する乱流を生じ、そのため、スケールとも呼ばれるフェアリング13を備えたロープを装備することによってその抵抗を制限するための努力がなされている。
【0025】
スケール13は、比較的平坦な、背びれの外観を有する細長要素として形成する。スケールはロープに配置されて連続的なまたは不連続な外装を形成し、かつ関節式につないで回転するようにロープの周りを動く。スケールはまた、図2の断面図に示すように、ロープの軸の周りで回転するように互いに結合して、ロープの軸に沿って実質的に連続的な縁14をなすことができる。
【0026】
この二重の可動性によって、各スケール13が水中で、例えば、ロープを引っ張る船舶の船首方位の変更によるロープ11の動きに追従すること、および水中でのロープの変位によって引き起こされた流れに対する抵抗を最も小さくすることができる向きをとることの双方が可能となる。各スケールとそれに隣接するスケールとの間に存在する軸方向の結合によっても、スケール13と直接隣接したスケール131および132との間に存在し得る差(逸脱)を制限することが可能となる一方、図2に示すような一定の逸脱を可能にする。このように、ロープの周りでスケール13が回転運動を行うとき、スケールはその運動において、隣接するスケール131および132も動かす。従って、高振幅の指向性運動が、ロープに沿って並列するスケールによって形成された外装の全てに付与され得る。それゆえ、適切に構成された外装は、連続的なフィンセグメントの外観をなし、それぞれが、外装によって、ロープに付与された運動によって与えられる抵抗が全体的に可能な限り小さくなるように向けられる。
【0027】
本明細書で説明する例示的な実施形態では、スケール13によって形成された外装の役割は、ロープが水中に放り込まれかつ船舶によって引っ張られるときに、水中でのロープの運動によって生成された後方乱流を低減することにある。従って、その構成要素であるスケールは、図2に示すような、流体力学的性質が与えられる特定の形態をとる。一般的な説明の観点から、各スケールは、長さLのシリンダー状物体21として形成する。そのベース部の領域の断面24は、肉薄縁部22および幅広縁部23を備える実質的に対称的なNACAプロファイルを描く。このように説明されるシリンダー21は、その最も肉厚な部分23に回転円筒体の形態の長手方向ダクト25を備え、その直径はロープ11の直径と実質的に等しい。さらに、直接隣接するスケール26と27との間の結合手段(図2には図示せず)は、ダクト25の端部と同じ位置レベルに配置される。
【0028】
より一般的な観点から、スケールが、長さL、高さhでありかつその縁部の一方に、ロープの直径と実質的に等しい直径の、回転円筒体の形態の長手方向ダクト25を備えるシリンダー状物体21として形成することを条件として、本発明による装置をスケールの様々な形態に適応するように構成することができる。この物体を、例えば、長さLの矩形の平行六面体とすることができ、かつそのセクションsは、平行六面体の縁部の一方で長手方向ダクト25を収容するのに十分である。ここで長手方向ダクトの軸は、スケールの対称中心を通る長手方向軸に対して平行であり、かつ対称中心から離隔されている。
【0029】
潜水体が海で展開されないとき、潜水体は、支持する船舶に取り付けられている一方、牽引ロープ11は、それを動かすために使用されるウィンチのドラム12に巻き付けられる。ロープの巻き付け時に、ウィンチの表面上にロープを自動的に正しく位置決めするのを容易にするために、ドラムの表面は、例えば図3に示すように、その回転毎にロープ11が位置決めされる、らせん状の溝彫り31を備えることができる。
【0030】
それゆえ、ウィンチのドラムに対してロープの初期の向きが確実に正しくされ、スケールの自由縁部がドラムと接触しない向きとなるので、およびスケールが互いに結合されるために、通常の状況では、配置は好都合にも容易となる。それゆえ、巻き付け後、牽引ロープは、図3に示すようにドラムに正しく位置決めされる、すなわち、そのスケールが実質的に垂直に向けられる。それゆえ、本質的に比較的脆弱なスケールを損傷させる危険性がない。
【0031】
他方、ロープが海で展開される潜水体の実施フェーズ中に1つ以上のスケールが損傷された場合、および受けた損傷により、隣接するスケールとの結合に影響を及ぼす場合、ロープの初期の向きが正しくても、ウィンチのドラムへのロープの完全自動巻き上げを正確に進めるかを十分保証できない。図4に示すタイプの状況に遭遇する可能性があり、この場合、結合をもたらす手段(例えば端部ストッパを備える軸方向ガイド)が破損したために、隣接するスケールに対して自由に回転するスケール41は、ドラム上で横に平らになるように配置され、その結果、それに続く巻きでロープによって平らにされて全体的に破損される。追加的な手段がない場合、そのような結果を回避するための唯一の方法は、ロープを巻き付ける際中にスケールの状態を人が確認すること、および隣接するスケールから離れたスケールを手動で位置決めすることである。そのような介入は巻き上げ操作の時間を長くし、とりわけ、あまり自動的ではないという主要な欠点を有する。
【0032】
以下、本発明による装置を全体的に示す図5〜図7に関して説明する。
【0033】
図5に、通常の向きにある装置の全体図を提示する。この図から分かるように、本発明による装置は中実物体51の形態にあり、それは、図において破線59で示す回転対称軸を有する空洞部52を含む。この空洞部自体は長手方向開口部53をなしており、その開口部の限界は、開口部の輪郭54(すなわち縁部)によって示される空洞部の壁である。その特徴的な幾何学的形状のために、開口部53の縁部54は、開口部の形状に加えて、傾斜前面55および後面56を画成する。さらに、本発明による装置は、上述の空洞部を収容することができるいずれの外形もなす。例えば図4示すように、例えば全体的形状は回転円筒体である。
【0034】
牽引ロープを定められた向きにすることができる物体に関して、本発明による装置はまた、ウィンチのドラムに対して、そのスケールの向きが確実に機能することができるようにする一定の向きで、近接した位置とすることができるように配置される。このために、固定アーム57、または他の任意の同様の手段を収容可能なように設計する。
【0035】
図6に、向きを変えて、開口部53が上方に向けられた本発明による装置を示す。それゆえ、開口部53の縁部の特徴的なプロファイル、および前面55の傾斜プロファイルを示す。
【0036】
本発明によれば、開口部53の縁部を、2つの湾曲した縁部半部61と62とを合わせたものと定義することができ、それぞれのプロファイルは、反対方向に回転しかつ同軸の2つのらせん曲線に従っており、その対称軸は空洞部の軸59と同じである。各らせん形の縁部半部は、両縁部半部に共通でかつ装置の前面の位置レベルに位置する開口部の縁部の点63から約180°回転した状態で形成されている。
【0037】
回転アングルは実際には、横断面におけるスケールのプロファイルの幅によって決定され、スケール、それゆえスケールを取り付けられたロープは、図7に示すように、大きく広がった開口部として示すその前面55を介して装置に入り、かつ所望の方向に向けられた、幅狭な開口部として示すその後面を介して装置から出ることが分かる。後面は、スケールの面24の形状と横断面において実質的に同一の形状であり、かつそのサイズは機能上の遊びを除いて実質的に等しい。この回転アングルを越えると、各縁部半部は、直線セグメント510または511によって装置の後方に向かって延在し、一定の開口部を画成してスケールを装置から出すように誘導することを可能にする。
【0038】
それゆえ、そのような装置を使用することにより、好都合にも、スケールが装置に入る時の向きに関わらず、その際の向きに従ってスケールを自動的に位置決めすることが可能となる。並進するように接合しているロープに加えられた牽引力によって動くスケールは、本発明による装置を通って移動するにつれ、その元の向きから、所望の向きに対応するその最終的な向きまで回転するように自動的に誘導される。
【0039】
さらに、図7に、ウィンチの分配システム71に取り付けられた本発明による装置を示す。分配システム71は誘導システムであり、その公知の役割は、ロープを可変的に位置決めして、ロープが密に隣接して巻回を形成し、巻き付け後にドラムの全表面を占めるようにすることにある。
【0040】
簡単な第1の実施形態では、本発明による装置は、本質的に、上述のように、開口部53の縁部54の特有のプロファイルを特徴とする。この第1の実施形態では、空洞部53の壁の形状は明確には与えられていないが、空洞部の寸法はスケールを通過させることを条件とする、言い換えると、空洞部の断面が全長にわたって、スケールの断面がどの向きにあってもスケールを通過させるのに十分であることを条件とする。そのような構成では、空洞部は、例えば、回転円筒体によって画成された空洞部52の形状を有することができ、その回転軸は軸59と同じであり、かつ上述したような縁部54を備える開口部53を呈する。この空洞部の作製に付随する唯一の制限事項は、空洞部が構成されている回転円筒体の内径が、スケールの高さhよりもわずかに小さいサイズであることである。このように、いずれかの向きから所望の向きへのスケールの誘導は、開口部53の縁部、スケールが装置を通過するときにその自由縁部22(図2参照)が当たる縁部によってのみなされる。そのスケールの通過は、ロープの巻き戻しによって加えられた牽引力の作用下で行われる。この実施形態の最も簡潔な変形例では、本発明による装置は、スケールが当接しかつ所望の向きに誘導する二重らせん形状のレールとすることもできる。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明による装置は、単純な誘導レールの状態とするのではなく、それどころか、内壁が利用される空洞部52を有する中実物体の状態にする。この実施形態では、装置は、空洞部52の範囲を限定する壁の形状に関連した追加的な特徴を有する。この好ましい実施形態によれば、空洞部52の壁は、軸59と同じである軸に沿って、装置を形成する材料に穴を形成することによって作製され、この穴の形成は、スケール13の断面に対応する表面分だけ装置の断面を除去することによってなされる。除去による開口角度は、対称軸59の所与の点を通過する断面に対して、その点の位置レベルにおいて開口部53を画成する縁部半部61および62の位置によって決まる。言い換えると、2つの壁半部64および65を合わせた空洞部の壁は、空洞部52の対称軸59と同じである軸に沿って、装置を形成する材料に穴を形成することによって作製され、この穴の形成は、スケール21の断面24に対応する面分だけ装置の断面を除去することによってなされる。除去による開口角度は、横断面を通る断面に対しては、縁部半部61および62がこの横断面と交わることによって画成される。この実施形態を図8および図9−a〜図9−iに示す。
【0042】
図9−a〜図9−iと併せて図8に、様々な点での横断面を通る穴の形態を示す。図9−a〜図9−iはそれぞれ、図8で述べた断面A−A〜断面I−Iに対応する。断面A−Aは、装置の前面からの横断面図(図6の点63の位置レベルにおける断面)に実質的に対応する一方、断面B−B〜断面G−Gは、先のセクションで述べたように、開口部53の縁部54のらせん形のプロファイルに続く、空洞部52の壁の表面が広がる各点における中間の断面に対応する。そのように、空洞部が公知の方法で、360°の開口角度91(断面A−A)に形成された穴から、それぞれ異なる中間の開口部角度92の値を経て、スケールの横断面プロファイルに密接に従う開口角度93(断面G−G)に形成された穴まで変化させることによって形成される。それゆえ、空洞部は、装置の後面(断面I−I)に広がるスケールのプロファイルの形状および寸法を実質的に有する最後の誘導ダクト94で終端する(断面H−H)。
【0043】
この好ましい実施形態では、本発明による装置は、製造するのがより複雑ではあるものの、もはや隣接するスケールと回転するように結合されていないスケールだけではなく、部分的に破損して、再指向を行うために装置の縁部54に当たるのに十分な高さhをもはや有しないスケールの向きを変えること、従って所望の向きを確実にもたらすことを可能にするという利点がある。そのようなスケールの誘導は、空洞部自体の内壁によってもたらされる。
【0044】
どのような実施形態、特に上述の好ましい実施形態が考慮されても、本発明による装置を、図9−a〜図9−iにアスタリスク95で示しかつ図8に水平の破線で示す対称軸59に実質的に沿って位置決めすることによってロープがウィンチを通過するように、ウィンチに対して設計しかつ配置する。このために、本発明による装置は、ロープ11が空洞部の壁と接触する領域66に配置された追加的なロープ誘導手段を備え得る。実施形態の非限定的な例として示す構成では、これらの追加的な手段は、溝付き転がり軸受96を備える。この転がり軸受は、装置の後部、スケールの回転領域の後ろ側にある領域(断面図G−G〜I−I参照)に取り付けられている。さらに、これらの手段は装置に配置されるため、ロープが転がり軸受96の溝97の底部に載置されるとき、ロープの軸は、少なくとも接触領域において、装置の対称軸59と同じになる。このように、ロープを装置の固定基準点に対して位置決めすることができる。
【0045】
どのような実施形態が考慮されても、本発明による装置に手段58(図5または図6を参照)を追加することも可能であり、この手段により、スケールを、装置の入り口においてスケールの面24と、装置の前側の点を構成する2つの縁部半部61および62の接触点63とを直接接触させる方向の向きにしないようにすることが可能となる。実際には、滅多に起こらないがそのような向きになった場合には、スケールは装置の端部63に当接し、かつこのため、装置に係合させるために応力を伴わずに縁部半部の一方または他方に沿って摺動させることは不可能である。そのような事態の影響を打開することを可能にする手段は、予測された状況にあるスケールに縁の角が丸い肉薄な面を与え、装置の端部は、スケールの上縁部と接触するときに、上縁部にわずかな回転運動を与え、それによりスケールの面24が装置の点63と前面接触しないようにするという特徴を有する。
【0046】
図5および図6に正確に示すように、手段58は、例えば、垂直にまたは垂直よりも小さい角度で装置の点(すなわち点63)の位置レベルに位置決めされた、長円形セクションのくちばしまたはけづめの形態の短いロッドからなる。しかしながら、スケールが装置に係合する前にスケールを望ましくない向きから離れさせることを可能にする他の任意の物体も考慮できる。
【0047】
以下、図10および図11について説明する。
【0048】
図10に、本発明による装置の例示的な実装例を示す。この応用では、本発明による装置をウィンチの分配システムに取り付け、そのドラム上にはロープ12が巻き付けられる(図にはそのスケールは示していない)。分配システムは、ウィンチのドラムの軸15に対して平行な軸1002に沿って移動するキャリッジ1001に取り付けられたロープを誘導する手段を含む。この例示的な実装例では、本発明によるスケール回転装置は分配システムの頭部に配置され、その頭部に、上述のように固定アーム57を介して固定される。固定アームは、好都合にもダンパとして機能する弾性板の形態であり、本発明による装置によってロープに加えられた圧力を制御しかつ制限することを可能にする。あるいは、固定アームを剛性構造とすることもでき、減衰は、この装置と、ロープおよび関連の例えば溝付き転がり軸受96との接触点の位置レベルにおいて、本発明による装置に配置された別の手段によってもたらされる。さらに、当然ながら2つの解決方法を、装置の同一の実施形態において組み合わせることができる。
【0049】
ロープの向きの方向および分配システムの軸1002上での位置に関わらず組立体を確実に正しく操作するために、自然に水平面において確実に装置を回転させる本発明による装置の固定アーム自体を、本発明による装置が垂直面における回転運動に追従できるようにする手段によって、分配システムに固定する。それゆえ、ロープの分配からどのような応力が生じても、本発明による装置は、位置決めに関する一定の自由を有し、それにより、ロープの軸に対するその最適な向きを支持する。これらの手段は、例えば図11に示すように、本発明による装置の固定アーム57が固定された水平中心部1102と、部分1101を移動式キャリッジ1001に関節式に固定でき、中心部それゆえ本発明による装置を水平軸1103の周りで回転するように動かすことができるように配置された2つの側方延伸部とを備える部分1101からなり得る。本発明に従って適切に固定された装置51は、好都合には、垂直軸1104および水平軸1103の周りでの回転方向の可動性という利益を享受し、可動性により、ロープの軸に対する向きのために所与の瞬間に装置に加えられ得る機械的応力を全て低減させることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ(11)が通され、前記ロープの周りで回転するように動き、かつ前記ロープに並進移動するように接合する物体(13、21)を一定の方向に確実に向けるための装置(51)であって、前記物体が、長さLのシリンダーの形態を有し、高さHの横断面(24)を有し、かつ回転円筒体の形態を有する長手方向ダクト(25)を備えていて、その長手方向ダクト(25)は、物体の最も幅広のベース(23)の位置レベルに配置されていて、それによりロープが通される、装置(51)において、
前記装置は、前記ロープ(11)が出る後面(56)と、前記ロープが入る傾斜前面(55)と、向きを定められる前記物体の長さと少なくとも同じ長さの空洞部(52)とを備え、前記空洞部には対称軸(59)があり、かつその全長にわたって開口部(53)が延在し、その縁部(54)は、2つの対称的な縁部半部(61、62)によって形成されており、そのプロファイルは、まず、反対方向に回転しかつ同軸の2つのらせん曲線をたどり、その対称軸は前記空洞部の前記対称軸(59)と同じであり、各らせん形の縁部半部は、両縁部半部(61、62)に共通しかつ前記装置の前記前面(55)の位置レベルに位置する前記開口部の前記縁部(54)の点(63)から対称軸の周りを約180°回転した状態で形成されており;次いで、離間した2つの平行な直線セグメント(510)をたどって、前記開口部の幅によって、前記装置が繰り出されるまで、所望の向きを維持することにより前記物体(21)を適切な向きにするように確実に誘導することを特徴とする装置(51)。
【請求項2】
前記空洞部(52)が、前記空洞部(52)の前記対称軸(59)と同じである軸に沿って、前記装置を形成する材料に穴を形成することによって作製された壁(64、65)を有し、前記穴の形成が、横断面における前記物体(21)の前記断面(24)に対応する表面分だけ前記装置の断面を除去することによって行われ、この除去による開口角度が、所与の横断面を通る前記断面に対しては、前記縁部半部(61、62)がこの横断面と交わることよって画成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
さらに固定アーム(57)を備え、前記向きを定められる物体を、前記装置を通過後に確実に所望の向きにするように、装置を位置決めすることを可能にすることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記固定アーム(57)が、前記装置の水平面において回転するような移動を可能にするように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記固定アーム(57)が、前記装置を通過する時に前記ロープ(11)に加えられる圧力の制御を可能にする弾性板を形成していることを特徴とする請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記向きを定められる物体に、前記物体と前記装置の前記前面の点との接触を回避する導入時の向きを与える手段(58)を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
さらに、前記空洞部(52)の前記対称軸(59)に沿って前記ロープ(11)の軸を位置決めする手段(96、97)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ロープ(11)の軸を位置決めする前記手段(96、97)が、前記傾斜前面(55)の後部に配置された溝付き転がり軸受を備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
さらに、前記装置を通過するときに前記ロープに加えられた圧力を制限するための手段を備え、これらの手段が、前記ロープ(11)が前記空洞部(52)の前記壁と接触する領域(66)の位置レベルに配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
船舶によって潜水体を牽引するロープ(11)を流線形に形成する前記スケール(21)を回転させることへの請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置の応用であって、前記装置が、前記ロープがウィンチの前記ドラム(12)に巻き付けられる向きに、前記ロープの前記スケール(21)の自動指向を保証するように実装されている、応用。
【請求項11】
船舶によって潜水体を牽引するロープ用の分配システム(71)であって、請求項9による回転装置が、前記固定アーム(57)によって頭部に取り付けられた分配システム(71)。
【請求項12】
前記回転装置が、前記装置を垂直面において回転させることを可能にする手段(1101)によって前記システムに固定されている請求項11に記載のロープ分配システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−502860(P2011−502860A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532586(P2010−532586)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065049
【国際公開番号】WO2009/060025
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(505157485)テールズ (231)