説明

特性インピーダンスの整合が可能なシールドフレキシブルフラットケーブル

【課題】フレキシブル性と簡便な接続性というフラットケーブルの利点を失うことなく、特性インピーダンスの整合が可能で、導体幅精度およびピッチ精度が良く、また製造に多工程と多大な時間を要さないシールドフラットケーブルを提供する。
【解決手段】基材の絶縁フィルム(1)に形成された片面の金属箔(2a)をエッチングにより複数本の並列な線状に除去し、複数本の並列な線状金属箔片を残留させて信号線(2)列とし、また他面の金属箔(3a)をエッチングにより多数の丸穴(h1)で除去し、箔除去部繰り返しパターン状配列の金属箔体を残留させてシールド層(3)とし、また前記信号線列面およびシールド層面には端末露出部(t,t)を残して絶縁フィルム(4a,4b)を被覆し、特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブル(10)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブル(以下、フラットケーブルと略記する)に関し、更に詳しくは特性インピーダンスの整合が可能なシールドフレキシブルフラットケーブル(以下、シールドフラットケーブルと略記する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブルは配線材の省スペース性と簡便な接続により、電子機器類のプリント基盤、内部配線材、或は自動車の内部配線材として多用されている。従来のフラットケーブルは、2枚の絶縁フィルム間に複数本の導体を該導体の両端部を露出させて平行に配列させた構造をしており、このフラットケーブルと挿入型コネクターを組み合わせた配線方式が普及している。従来のフラットケーブルの一例について、図6を用いて説明する。
片面に熱融着性接着層(図示せず)を有する2枚の絶縁フィルム(4’、4’)を、接着層面を互いに内側にして、この間に複数本の平角導体(2’)を所定間隔(ピッチ)(p)に並列配列し、両端部の導体(2’)を所定長露出させて、接続端末部(端末導体露出部)(t、t)を設けて加熱融着させ、好ましくは該接続端末部(t、t)に補強テープ(U)を貼り付けフラットケーブル(50)としている。この従来のフラットケーブルについては下記特許文献1に記載されている。また、図示はしないが、このフラットケーブルの片面もしくは両面に、アルミPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの金属箔フィルムを接着させてシールド層を設けたシールドフラットケーブルも下記特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2001−43743
【特許文献2】特開平5−242736
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年電子機器において高速伝送ケーブルが多用されているが、フラットケーブルも液晶、フラットTVの画像インターフェース、内部配線材などに高速伝送ケーブルとして使用されてきている。なおフラットケーブルを高速伝送ケーブルとして使用するためには特性インピーダンスを目的の値に整合させる事が重要となり、特性インピーダンスの値として100Ωを求められることが多い。通常はフラットケーブルの片面若しくは両面をアルミPETフィルム等の金属箔フィルムでほぼ全面積に渡って覆った構造のシールドフラットケーブルとしており、金属箔フィルムで覆うことにより特性インピーダンスの値は低下する。
従来のシールドフラットケーブルでは特性インピーダンスの値が目的の値より小さくなった場合、特性インピーダンスを目的の値に整合させるために、通常は、このフラットケーブルの平角導体と金属箔フィルム間の絶縁フィルムを厚くして両者の距離を稼ぐ方法、若しくは平角導体の幅を小さくする方法が取られていた。然しながら、平角導体の幅を小さくした場合は、コネクターとの勘合の為の導体幅精度およびピッチ精度が厳しくなり、またコネクターの寸法精度も厳しくなるという問題があった。また、平角導体と金属箔フィルム間の絶縁フィルムを厚くした場合は、ケーブル自体が厚くなるためフラットケーブルが硬くなってしまい、フレキシブル性というフラットケーブルの利点が薄れてしまうという問題があった。つまりフレキシブル性が劣り、かつ導体幅が狭いためコネクターとの勘合精度が厳しいシールドフラットケーブルが多数見受けられるという問題があった。
また、シールドフラットケーブルの製造方法も導体伸線・導体圧延・導体整列・導体ラミネート・シールドテープラミネートと、信号線形成およびシールド層形成に多工程を要し、特に細線導体の整列およびシールドテープラミネートに多大な時間を要していた。
本発明は、上記従来技術が有する各種問題点を解決するためになされたものであり、フレキシブル性と簡便な接続性というフラットケーブルの利点を失うことなく、特性インピーダンスの整合が可能で、導体幅精度およびピッチ精度が良く、またシールドフラットケーブルの製造に上記のような多工程と多大な時間を要さないシールドフラットケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点として本発明は、基材の絶縁フィルムの両面に形成された金属箔の片面(信号線形成面)の金属箔をエッチングにより複数本の並列な線状に除去することにより、複数本の並列な線状の金属箔片を残留させて信号線列を形成し、また他面(シールド層形成面)の金属箔をエッチングにより任意の形状で一部除去することにより、箔除去部を設けた金属箔体を残留させてシールド層を形成し、また前記信号線列面の端末露出部を残し絶縁フィルムが被覆され、またシールド層面は端末露出部を残し、若しくは全面に渡って絶縁フィルムが被覆されてなるシールドフラットケーブルであって、前記信号線列に対面するシールド層の金属箔の被覆面積が減じられることを要因として特性インピーダンスが目的の値に整合されていることを特徴とする特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブルにある。
前記基材の絶縁フィルムとしては、例えばPETフィルムが挙げられる。また前記金属箔としては、例えば銅箔が挙げられる。また前記線状の金属箔片は導体として用いられ、例えば平角導体状である。前記エッチングは、例えば順次、マスキング印刷、エッチング処理、マスキング材除去という一般的な処理方法で良い。
特性インピーダンスの整合について説明する。特性インピーダンスは、それぞれの信号線を覆っている(対面する)シールド層の金属箔の被覆面積によって調整できる(被覆面積が大きいと特性インピーダンスの値は下がり、また被覆面積が小さいと特性インピーダンスの値は上がる)。例えば2本ある信号線に対して、金属箔の被覆面積が1本は大きく、また他の1本は小さい場合、特性インピーダンスは前者が小さく、また後者は大きくなってしまうので、整合がとれているとはいえなくなる。従って、特性インピーダンスを目的の値に整合させるためには、複数本ある信号線のどの線に対してもシールド層の金属箔が均一な被覆面積となるように調整することが重要となる。
上記第1観点のシールドフラットケーブルでは、フレキシブル性と簡便な接続性というフラットケーブルの利点を失うことなく、特性インピーダンスの整合が可能で、導体幅精度およびピッチ精度が良く、またシールドフラットケーブルの製造に多工程と多大な時間を要さなくなる。
【0005】
第2の観点として本発明は、前記箔除去部は、直径(最大径)(以下、直径と略記する)が0.2mm〜2.0mmの丸形状穴、若しくはケーブル長手方向に対する長さが0.2mm〜10mmの多角形状穴であり、これらの箔除去部が任意の配列で整列していることを特徴とする特性インピーダンスの整合が可能なシールドフレキシブルフラットケーブルにある。
前記丸形状穴としては、例えば丸穴、楕円穴、長円穴等がある。また前記多角形状穴としては、例えば三角穴、正方形穴,長方形穴,台形穴等の四角穴、五角穴、六角穴等がある。
上記第2観点のシールドフラットケーブルでは、前記第1観点のシールドフラットケーブルの作用・効果に加え、前記箔除去部を、直径が0.2mm〜2.0mmの丸形状穴、若しくはケーブル長手方向に対する長さ(以下、ケーブル長手方向長さと略記する)が0.2mm〜10mmの多角形状穴とし、これらの箔除去部を任意の配列で整列することにより、より好ましく特性インピーダンスを目的の値に整合させることができる。
なお、前記丸形状穴の直径を0.2mm〜2.0mmと限定した理由は、直径が0.2mm未満では、丸形状穴の直径が小さくなり過ぎ、エッチングによる箔除去加工が困難になるので好ましくなく、また直径が2.0mmを超えると、丸形状穴の直径が信号線の幅に比べて大きくなり過ぎ、フラットケーブルを成す複数の信号線に対して均一に特性インピーダンスの値を整合させることが困難になってしまうので好ましくない。また多角形状穴のケーブル長手方向長さを0.2mm〜10mmと限定した理由は、長手方向長さが0.2mm未満では、多角形状穴の長手方向長さが小さくなり過ぎ、エッチングによる箔除去加工が困難になるので好ましくなく、また特性インピーダンスのコントロールには箔被覆部も同程度の長手方向長さが必要であるため、多角形状穴のケーブル長手方向長さが10mmを超えると、1本の信号線において、その長手方向に対して箔除去部と箔被覆部での特性インピーダンスのばらつきが大きくなるので、好ましくない。
【0006】
第3の観点として本発明は、前記任意の配列は、前記箔除去部が等ピッチ間隔で一列に並んでいる直列配列を基本単位とし、この基本単位が並列に複数列配列されており、n列目(但し、nは1以上)の基本単位に対してn+1列目の基本単位が、配列方向に所定の値ずらされて配列されて成る繰り返しパターン状配列であることを特徴とする特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブルにある。
上記第3観点のシールドフラットケーブルでは、前記第1または第2観点のシールドフラットケーブルの作用・効果に加え、前記箔除去部の配列を上記のような繰り返しパターン状配列とすることにより、複数本ある信号線のどの線に対してもシールド層の金属箔が均一な被覆面積となるように調整することができ、更に好ましく特性インピーダンスを目的の値に整合させることができる。
【0007】
第4の観点として本発明は、前記箔除去部は、前記信号線列と平行でかつ同ピッチとした複数本の並列な線状であり、また箔除去部を設けた金属箔体を残留させたシールド層である複数本の並列な線状金属箔片(以下、線状金属箔片列と略記する)が、対面する信号線列に対して一部分が重なるか、または全く重ならないことにより、一様な関わりを持つことを特徴とする特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブルにある。
前記線状金属箔片列が、対面する信号線列に対して一様な関わりを持つことについて図5を用いて説明する。なお、図5はシールド層の線状金属箔片列が、対面する信号線列に対して一部分重なっている状態の一例を示す略横断面図である。
図5に示すように、前記基材の絶縁フィルム(1)の両面に形成された信号線(2)列と線状金属箔片(m)列が平行であるため、信号線列と対面する線状金属箔片列との重なり部(n)が一本の信号線の長手方向に渡って同じ関わりを持ち、かつピッチが同じであるため、全ての信号線が同じ関わりを持つので特性インピーダンスの整合が可能となる。
また、線状金属箔片(m)列が、対面する信号線(2)列に対して全く重ならない場合は、信号線に対して一定の距離に線状金属箔片からなるシールド部が存在することになるので、上記と同様、一様な関わりを持ち、特性インピーダンスの整合が可能となる。
なお、線状金属箔片(m)列が、対面する信号線(2)列に対して全て重なる場合は、それぞれの信号線にとっては、それぞれ金属箔片で全面覆われているため、シールド層全面が金属箔の場合と殆んど同じ特性インピーダンスになる。
上記第4観点のシールドフラットケーブルでは、前記第1観点のシールドフラットケーブルの作用・効果に加え、前記線状金属箔片列が前記信号線列に対して一様な関わりを持つことにより、より好ましく特性インピーダンスを目的の値に整合させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシールドフラットケーブルは、前記基材の絶縁フィルムの片面に形成された信号線列に対面するシールド層形成面の金属箔の被覆面積が減じられることを要因として特性インピーダンスを目的の値に整合させることができる。例えばシールド層の箔除去部を丸穴とし、その大きさ、数量、配列を適宜選択し、好ましくは配列を繰り返しパターン状配列とすれば良い。そのため、シールドフラットケーブルを構成する絶縁フィルムを、ケーブルのフレキシブル性を損なうほど厚くして特性インピーダンスを整合させる必要がなくなり、フレキシブル性というフラットケーブルの利点を保持したまま特性インピーダンスを整合させることができるようになる。また本発明のシールドフラットケーブルは簡便な接続性を有し、導体幅精度およびピッチ精度が良く、更にシールドフラットケーブルの製造に多工程と多大な時間を要さなくなる。従って、本発明は産業に寄与する効果が極めて大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明のシールドフラットケーブルの一例を示す略図であり、同図(a)は上面図、同図(b)は下面図、また同図(c)は同図(a)のc−c部の断面図である。図2は、箔除去部が丸穴の繰り返しパターン状配列のシールド層を説明するための平面図である。図3は、箔除去部が長方形穴の繰り返しパターン状配列のシールド層を説明するための平面図である。図4は、箔除去部が並列な線状であるシールド層を説明するための平面図である。また図5はシールド層の線状金属箔片列が、対面する信号線列に対して一部分重なっている状態の一例を示す略横断面図である。
これらの図において、1は基材の絶縁フィルム(PETフィルム)、2は信号線(線状金属箔片)、2a,3aは金属箔(銅箔)、3はシールド層(箔除去部を設けた金属箔体)(箔除去部繰り返しパターン状配列の金属箔体)、4a,4bは絶縁フィルム、10は特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブル、cは切断部、hは箔除去部(任意の形状)、h1は丸形状穴(丸穴)、h2は多角形状穴(長方形穴)、h3は線状箔除去部、jはケーブル長手方向、kは基本単位の直列穴配列、mは線状金属箔片、nは重なり部(被覆部)、sは両面金属箔絶縁フィルム(両面銅箔PETフィルム)、tは接続端末部(線状金属箔片露出部)、またzは直列穴配列間の残留金属箔部(残留銅箔部)である。
【実施例1】
【0010】
本発明のシールドフラットケーブルの第1実施形態(実施例1)について図1、図2を用いて説明する。
基材の絶縁フィルム(1)として幅16.5mm×長さ310mm×厚さ75μmのPETフィルムを用い、このPETフィルムの片面(信号線形成面)全面に、金属箔(2a)として厚さ30μmの銅箔を接着し、また他面(シールド層形成面)全面に金属箔(3a)として厚さ10μmの銅箔を接着させ、総厚さが105μmの両面金属箔絶縁フィルム(両面銅箔PETフィルム)(s)とした(但し図1(c)では、両面の金属箔はエッチング処理されている)。
次に信号線形成面の金属箔(2a)に対して、エッチング処理により並列な線状に除去し、幅が0.3mmであり、ケーブル長手方向(j)に対して0.5mmピッチで並列に並んだ、30本の信号線(2)列を形成した(図1では5本の信号線のみ示す)。
次にシールド層形成面の銅箔(3a)に対して、図2に示すように、エッチングにより任意の形状で一部除去する形状を、多数の直径約1.0mmの丸穴(h1)としてエッチング処理を行って箔除去部(h)を設け、この箔除去部(h)が等ピッチ(例えば2.01.5mm)間隔で一列に並んでいる直列穴配列(k)を基本単位とし、またこの基本単位を並列に複数列配列させる際に、穴配列方向に、1列目の基本単位の穴ピッチに対して5分の1ピッチ分ずらして1列目と同様の2列目の基本単位を配置し、また2列目の基本単位に対して3列目の基本単位を5分の1ピッチ分ずらすというように、n列目の基本単位に対してn+1列目の基本単位を所定の値ずらすという繰り返しパターン状配列を行い、箔除去部が繰り返しパターン状配列の金属箔体としたシールド層(3)を形成した。なお、基本単位の直列穴配列(k)の方向とケーブル長手方向(j)は直交させている。
次に前記信号線(2)列とシールド層(3)面に対し、各端部にそれぞれ5mm長さの接続端末部(t,t)を設けるように、絶縁フィルム(4a,4b)として幅17mm×長さ300m×厚さ60μmの熱融着性接着層付きのポリエステルフィルムを熱ラミネートすることにより特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブル(10)を製造した。
なお、シールドフラットケーブルを量産して製造する場合は、特に図示はしないが、
先ず、例えば幅500mmで長さ方向に連続した状態の基材絶縁フィルムの両面に対して、金属箔を連続的に接着して両面金属箔絶縁フィルムとする。
次に、両面金属箔絶縁フィルムの両金属箔面に、エッチング処理により信号線列および箔除去部が繰り返しパターン状配列の金属箔体を残留させたシールド層を形成し、エッチング処理両面金属箔絶縁フィルムとする。
次に、前記エッチング処理両面金属箔絶縁フィルムの信号線列面およびシールド層面に所定の幅と長さ、例えば幅500mm×長さ300mmにカットした熱融着性接着層付きの絶縁フィルムを所定の箇所に熱ラミネートし、続いて製品のシールドフラットケーブルの信号線に必要な本数、例えば30本となるようにスリットしフラットケーブル体とする。
次に、前記フラットケーブル体の絶縁フィルムの先端から所定の位置、例えば5mmの位置で端末カットすることによりシールドフラットケーブルを製造する。
【実施例2】
【0011】
本発明のシールドフラットケーブルの第2実施形態(実施例2)について図1、図3を用いて説明する。
前記実施例1と同じ両面銅箔PETフィルム(s)を用い、信号線形成面の金属箔(2a)に対して、エッチング処理により並列な線状に除去し、幅が0.2mmであり、ケーブル長手方向(j)に対して0.5mmピッチで並列に並んだ、30本の信号線(2)列を形成した。
次にシールド層形成面の銅箔(3a)に対して、エッチング処理により図3に示すように、長辺が2.0mm×短辺が0.4mmの長方形穴(h2)からなる箔除去部が等ピッチ(例えば4.0mm)間隔で一列に並んでいる直列穴配列(k)を基本単位とし、またこの基本単位を並列に複数列配列させる際に、穴配列方向に、1列目の基本単位の穴ピッチに対して0.2mmずらして1列目と同様の2列目の基本単位を配置し、また2列目の基本単位に対して3列目の基本単位を0.2mmずらすというように、n列目の基本単位に対してn+1列目の基本単位を所定の値ずらすという繰り返しパターン状配列を行い、箔除去部が繰り返しパターン状配列の金属箔体のシールド層(3)を形成した。なお基本単位の直列穴配列間の残留金属箔部(残留銅箔部)(z)の幅は0.2mmとした。また、基本単位の直列穴配列(k)の方向とケーブル長手方向(j)は直交させている。
次に、特に図示しないが、前記実施例1と同様にして、信号線(2)列面とシールド層(3)面に対して絶縁フィルム(4a,4b)を熱ラミネートすることにより特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブルを製造した。
【実施例3】
【0012】
本発明のシールドフラットケーブルの第3実施形態(実施例3)について図1、図4を用いて説明する。
前記実施例1と同じ両面銅箔PETフィルム(s)を用い、前記実施例2と同様にして、信号線形成面の金属箔(2a)に対して、エッチング処理により並列な線状に除去し、幅が0.2mmであり、ケーブル長手方向(j)に対して0.5mmピッチで並列に並んだ、30本の信号線(2)列を形成した。
次にシールド層形成面の銅箔(3a)に対して、エッチング処理により図4に示すように、前記信号線(2)列と平行でかつ同ピッチとした31本(図4では7本のみ示す)の並列な線状に除去することにより線状箔除去部(h3)を設け、信号線(2)列と平行な0.3mm幅であり、かつピッチが0.5mmである線状の金属箔体(m)を30本(図4では6本のみ示す)残留させてシールド層(3)を形成した。
次に、特に図示しないが、実施例1と同様にして、信号線(2)列面とシールド層(3)面に対して絶縁フィルム(4a,4b)を熱ラミネートすることにより特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブルを製造した。
【0013】
上記実施例1〜3により得られた本発明のシールドフラットケーブルは、フレキシブル性と簡便な接続性というフラットケーブルの利点を失うことなく、導体幅精度およびピッチ精度が良かった。
【0014】
(比較例1)
特に図示はしないが、図6の従来のフラットケーブル(50)を参考にして説明する。
片面に熱融着性接着層を有する幅15.5mm×長さ300mm×厚さ60μmの2枚の絶縁フィルムを、接着層面を互いに内側にして、この間に30本の幅0.2mm×長さ310mm×厚さ35μmの平角導体を0.5mmピッチに並列配列し、両端部の導体を5mm長露出させて接続端末部(端末導体露出部)を設けるようにして加熱融着し、フラットケーブル体とした。
次に幅15.5mm×長さ300mm、アルミ厚さが1μm、PET厚さが12μm、また接着剤厚さが40μmの熱融着導電性接着剤付きアルミPETフィルムを、そのアルミ箔面に対してエッチング等の金属箔除去処理をせずに、前記フラットケーブル体の上方の絶縁フィルム面に、140℃の熱ロールによって加熱融着してシールドフラットケーブルを製造した。
【0015】
(比較例2)
特に図示はしないが、平角導体として幅0.3mm×長さ310mm×厚さ35μmのものを用い、また絶縁フィルムとして、片面に熱融着性接着層を有する幅15.5mm×長さ300mm×厚さ75μmの2枚の絶縁フィルムを用いる他は、上記比較例1と同様にしてシールドフラットケーブルを製造した。
【0016】
―特性インピーダンスの測定―
上記実施例1〜3および比較例1、2により得られたシールドフラットケーブルについて、TDR測定器を用い、シールド層をグランドに落とし、また信号線列をG(グランド線)−S(信号線)−S−Gとして特性インピーダンスを測定した結果、実施例1、2および3のシールドフラットケーブルの特性インピーダンスは、いずれもおよそ100Ωで目的の値に整合されていた。一方、比較例1、2のシールドフラットケーブルの特性インピーダンスはそれぞれ81Ω、84Ωで目的の値に整合されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明のシールドフラットケーブルは、信号線列に対面するシールド層の金属箔の被覆面積が減じられることにより特性インピーダンスを目的の値に整合させることができるので、高速伝送ケーブルとして使用するのに好適となり、液晶、フラットTVの画像インターフェース、内部配線材などに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のシールドフラットケーブルの一例を示す略図であり、同図(a)は上面図、同図(b)は下面図、また同図(c)は同図(a)のc−c部の断面図である。
【図2】箔除去部が丸穴の繰り返しパターン状配列のシールド層を説明するための平面図である。
【図3】箔除去部が長方形穴の繰り返しパターン状配列のシールド層を説明するための平面図である。
【図4】箔除去部が並列な線状であるシールド層を説明するための平面図である。
【図5】シールド層の線状金属箔片列が、対面する信号線列に対して一部分重なっている状態の一例を示す略横断面図である。
【図6】従来のフラットケーブルの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 基材の絶縁フィルム(PETフィルム)
2 信号線(線状金属箔片)
2a,3a 金属箔(銅箔)
3 シールド層(箔除去部を設けた金属箔体)(箔除去部繰り返しパターン状配列の金属箔体)
4a,4b 絶縁フィルム
10 特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブル
c 切断部
h 箔除去部(任意の形状)
h1 丸形状穴(丸穴)
h2 多角形状穴(長方形穴)
h3 線状箔除去部
j ケーブル長手方向
k 基本単位の直列穴配列
m 線状金属箔片
n 重なり部(被覆部)
s 両面金属箔絶縁フィルム(両面銅箔PETフィルム)
t 接続端末部(線状金属箔片露出部)
z 直列穴配列間の残留金属箔部(残留銅箔部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の絶縁フィルムの両面に形成された金属箔の片面(信号線形成面)の金属箔をエッチングにより複数本の並列な線状に除去することにより、複数本の並列な線状の金属箔片を残留させて信号線列を形成し、また他面(シールド層形成面)の金属箔をエッチングにより任意の形状で一部除去することにより、箔除去部を設けた金属箔体を残留させてシールド層を形成し、また前記信号線列面の端末露出部を残し絶縁フィルムが被覆され、またシールド層面は端末露出部を残し、若しくは全面に渡って絶縁フィルムが被覆されてなるシールドフレキシブルフラットケーブルであって、
前記信号線列に対面するシールド層の金属箔の被覆面積が減じられることを要因として特性インピーダンスが目的の値に整合されていることを特徴とする特性インピーダンスの整合が可能なシールドフレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記箔除去部は、直径(最大径)が0.2mm〜2.0mmの丸形状穴、若しくはケーブル長手方向に対する長さが0.2mm〜10mmの多角形状穴であり、これらの箔除去部が任意の配列で整列していることを特徴とする請求項1記載の特性インピーダンスの整合が可能なシールドフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
前記任意の配列は、前記箔除去部が等ピッチ間隔で一列に並んでいる直列配列を基本単位とし、この基本単位が並列に複数列配列されており、n列目(但し、nは1以上)の基本単位に対してn+1列目の基本単位が、配列方向に所定の値ずらされて配列されて成る繰り返しパターン状配列であることを特徴とする請求項1または2記載の特性インピーダンスの整合が可能なシールドフレキシブルフラットケーブル。
【請求項4】
前記箔除去部は、前記信号線列と平行でかつ同ピッチとした複数本の並列な線状であり、また箔除去部を設けた金属箔体を残留させたシールド層である複数本の並列な線状金属箔片が、対面する信号線列に対して一部分が重なるか、または全く重ならないことにより、一様な関わりを持つことを特徴とする請求項1記載の特性インピーダンスの整合が可能なシールドフラットケーブル。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−243665(P2008−243665A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83889(P2007−83889)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】