説明

牽引棒付き蛇篭

【課題】金網製の篭本体の内部に栗石を充填して形成される蛇篭を、現場に設置した際の蛇篭同士の連結を簡単且つ迅速に行うことができるように構成する。
【解決手段】金網からなる篭本体2の内部に栗石3が充填されると共に、線状部材5を係止させるための耳部4aを一端又は両端に有する牽引棒4が、前記篭本体2の内部を一端から他端まで横切る姿勢で引き抜き可能に配設されていて、前記耳部4aに線状部材5を係止させた状態で前記牽引棒4を蛇篭1から引き抜くことにより、該蛇篭1に前記線状部材5を挿通可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網からなる篭本体の内部に栗石を充填することにより形成される蛇篭に関するものであり、更に詳しくは、現場に設置した際の相互連結が容易な牽引棒付き蛇篭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、海岸、河岸、湖岸等の岸辺に護岸壁を構築したり、傾斜地の法面に補強壁を構築したりする場合に、蛇篭が使用される。この蛇篭は、菱形金網等の金網によって四角い容器形や円筒形などに形成された篭本体の内部に栗石を充填したもので、複数の蛇篭を岸辺や法面に沿って縦又は横に並べたり、縦及び横の両方向に並べたりすることにより、前記護岸壁や補強壁等の擁壁が構築される。その際、蛇篭の位置ずれを防止して前記擁壁の強度を高めるため、隣接する蛇篭同士を適宜の連結金具で互いに連結している。
【0003】
前記蛇篭同士の連結は、一般に、隣接する蛇篭の稜部に取り付けられている枠線同士を針金で結束するか、針金をコイル状に折曲して形成したスクリューストッパを巻き付けて結束するか、あるいは、菱形金網を形成する列線同士を針金で結束するなどして行われるが、何れの方法も、蛇篭の複数箇所において前記枠線同士或いは列線同士を前記連結金具を用いて結束するものであるため、設置する蛇篭の数が多い場合に、全ての蛇篭の連結を完了するまでに非常に多くの手間と時間とが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−18295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、金網製の篭本体の内部に栗石を充填することにより形成される蛇篭を、並べて設置した際の蛇篭同士の連結を簡単且つ迅速に行うことができるように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の蛇篭は、金網からなる篭本体の内部に栗石が充填されると共に、線状部材を係止させるための耳部を一端又は両端に有する牽引棒が、前記篭本体の内部を一端から他端まで横切る姿勢で引き抜き可能に配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の具体的な一実施形態によれば、前記篭本体は、方形の上面網及び底面網と、方形の前面網及び後面網と、方形の右側面網及び左側面網とによって四角い容器形に形成され、前記牽引棒は、前記上面網と底面網とを結ぶ上下方向、前記前面網と後面網とを結ぶ前後方向、前記右側面網と左側面網とを結ぶ左右方向のうち、少なくとも一方向に向けて配設されている。
【0008】
また、本発明によれば、金網からなる篭本体の内部に栗石が充填されると共に線状部材を係止させるための耳部を一端又は両端に有する牽引棒が配設された蛇篭を、複数個並べて配置する工程、前記牽引棒の耳部に前記線状部材を係止させて該牽引棒を前記蛇篭から引き抜くことにより、該蛇篭の内部に前記線状部材を挿通させる工程、前記線状部材で隣接する蛇篭同士を相互に連結する工程、を有することを特徴とする蛇篭の連結方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、線状部材を係止させるための耳部を備えた牽引棒を蛇篭に引き抜き可能に設置したことにより、蛇篭の設置時に前記牽引棒によって該蛇篭内に線状部材を挿通させ、隣接する蛇篭同士を該線状部材で簡単に連結することができる。特に、隣接する蛇篭同士を各々に挿通した線状部材で連結する方法は、針金や該針金をコイル状に折曲したスクリューストッパ等の連結金具を用いる従来の連結方法に比べ、蛇篭同士の相互連結を簡単且つ迅速に行うことができるので、設置する蛇篭の数が多くても、蛇篭の連結作業を簡単かつ迅速に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蛇篭の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の蛇篭の一部を破断して示す要部断面図である。
【図3】蛇篭に線状部材を挿通する途中の状態を示す要部断面図である。
【図4】蛇篭に線状部材を挿通した状態を示す要部断面である。
【図5】蛇篭を左右に並設して線状部材で連結した状態の要部正面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】隣接する蛇篭に線状部材を挿通する前の平面図である。
【図8】図7において一方の蛇篭に線状部材を挿通した後の平面図である。
【図9】蛇篭を上下及び左右に並設して線状部材で連結した状態を正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2には本発明に係る牽引棒付き蛇篭の一実施形態が示されている。この蛇篭1は角形蛇篭であって、金網好ましくは菱形金網を用いて四角い容器形に形成された篭本体2の内部に栗石3を充填することにより形成され、該蛇篭1の内部には、複数の牽引棒4が、栗石充填領域を一端から反対側の他端まで横切る姿勢で引き抜き可能に設置されている。
【0012】
前記牽引棒4は、剛性の大きい金属棒からなるもので、その両端に、針金やワイヤロープ等の可撓性ある線状部材5(図3参照)を係止させるための環状又は鉤状をした耳部4aを有し、該耳部4aに線状部材5を係止させた状態で蛇篭1から引き抜くことにより、該蛇篭1の内部に前記線状部材5を挿通させるものである。
【0013】
前記菱形金網は、偏平螺旋状に折曲した列線7の折曲部7a同士を順次連繋させることにより形成されたもので、前記篭本体2は、このような菱形金網からなる方形の上面網8及び底面網9と、方形の前面網10及び後面網11と、方形の右側面網12及び左側面網13とを、四角い容器形に組み立てることにより、前記篭本体2が形成されている。そして、前記蛇篭1の左右両側端部寄りの上下位置、即ち四隅の近くに、前記前面網10と後面網11とを結ぶ前後方向に向けて該蛇篭1を貫通するように前記牽引棒4が配設されている。
【0014】
前記篭本体2を形成する場合、前記上面網8、底面網9、前面網10、後面網11、右側面網12、左側面網13をそれぞれ個別に形成し、各面網の外周に取り付けられた枠線同士を針金やスクリューストッパ等の連結金具14で連結しても良いが、前記底面網9と前面網10と後面網11とを一連の菱形金網で形成し、上面網8と右側面網12及び左側面網13は個別に形成し、それらを容器形に連結しても良い。
【0015】
前記篭本体2への栗石3の充填は、手作業で行うこともできるが、通常は、木製又は金属製の方形の保持枠(図示せず)の中に、上面網8を取り外した前記篭本体2を収容し、パワーショベル等の機械力を利用して該篭本体2の中に栗石3が充填される。充填が完了すると、前記保持枠が篭本体2から分離されたあと前記上面網8が取り付けられるか、又は、前記上面網8が取り付けられたあとに前記保持枠が蛇篭1から分離される。
複数の篭本体2を一つの保持枠の内部に並べて保持させ、該複数の篭本体2内に同時に栗石3を充填することも行われる。
【0016】
前記栗石3の充填に当たり、前記篭本体2の内部には、前記牽引棒4が、該篭本体2を一端(図では前端)から反対側の他端(図では後端)まで横切る姿勢で仮止めした状態に配設され、その状態で前記栗石3の充填が行われる。前記牽引棒4の両端は、菱形金網の網目から外部に若干突出していることが望ましいが、突出していなくても構わない。
【0017】
前記牽引棒4を仮止めする方法としては、例えば、該牽引棒4の両端を前面網10及び後面網11の網目から突出させた状態で列線7に係止させる方法、該牽引棒4の両端を仮止用針金で前面網10及び後面網11の列線7に結びつける方法、該牽引棒4の両端に菱形金網の網目より寸法の大きい板状又は棒状の係止部材を取り付け、この係止部材を篭本体2の外面に係止させる方法などがある。
【0018】
また、前記牽引棒4を右側面網12及び左側面網13の内面に直接接触する状態に配設する場合は、該牽引棒4の中間の適宜位置を仮止用針金で前記右側面網12及び左側面網13の列線7に結び着けても良い。
前記仮止用針金は、栗石3充填後に除去しても良いが、そのまま放置しても良い。
【0019】
前記牽引棒4は、図2に示すように、右側面網12又は左側面網13との間に栗石3が介在する程度に該側面網から離して配設されているが、右側面網12又は左側面網13と接触する程度に該側面網の内面に沿って配設することもできる。
【0020】
前記構成を有する蛇篭1は、現場に運ばれて所定の場所に設置されたあと、前記牽引棒4により線状部材5が挿通されるか、あるいは、前記牽引棒4で線状部材5が挿通されたあと、現場に運ばれて設置される。
【0021】
前記蛇篭1に線状部材5を挿通する場合、図3に示すように、前記牽引棒4の一方の耳部4aに線状部材5の端部を係止させ、その状態で該牽引棒4を他方の耳部4aの方向に向けて矢印a方向に蛇篭から引き抜くようにする。これにより該蛇篭1の内部には、図4に示すように、前記線状部材5が該蛇篭1を一端から他端に向けて貫通した状態に挿通される。この場合、挿通後の該線状部材5は必ずしも蛇篭1の内部を真っ直ぐ延びているとは限らず、前記牽引棒4の引き抜きに伴って栗石3が動いたような場合には、動いた栗石3に押されて部分的に湾曲した状態で該蛇篭1の内部に挿通されることもある。なお、前記牽引棒4の引き抜きに伴って栗石が動いたとしても、該牽引棒4の太さ自体は小さいため、栗石の動きも非常に小さく、蛇篭1としての機能に影響は及ぼさない。
【0022】
そして、図5及び図6に示すように、隣接する蛇篭1の線状部材5の端部同士を相互に結合することにより、隣接する蛇篭1同士が相互に連結される。
蛇篭1が左右方向に3つ以上並設されている場合には、上記方法によって隣接する蛇篭1同士を次々に連結することができる。
蛇篭1を上下に段積した場合も、同様にして上下の蛇篭1同士を線状部材5で相互に連結することができる。
【0023】
図5及び図6の実施形態では、各蛇篭1に線状部材5を個別に挿通し、両線状部材5の端部同士を相互に結合しているが、隣接する蛇篭1を1本の線状部材5で連結することもできる。即ち、図7に示すように、2つの蛇篭1のうち一方の蛇篭1の牽引棒4の耳部4aに線状部材5を係止させ、該牽引棒4を矢印b方向に引き抜いて図8のように前記蛇篭1に線状部材5を挿通させたあと、この線状部材5を他方の蛇篭1の牽引棒4の耳部4aに係止させ、この牽引棒4を矢印c方向に引き抜くことにより、1本の前記線状部材5が2つの蛇篭1にU字形に折り曲げられた状態で挿通される。そこで、該線状部材5の両端部を相互に結合することにより、前記2つの蛇篭1を1本の線状部材5で連結することができる。
【0024】
前記牽引棒4は、耳部4aに複数の線状部材5を係止させた状態で蛇篭1から引き抜くことにより、該蛇篭1に複数の線状部材5を挿通させることもでき、これにより、例えば図9に示すように、上下及び左右に並設した蛇篭1同士を相互に連結することができる。即ち、図9において、4つの蛇篭1の端部が接する部分では、各蛇篭1の牽引棒4の耳部4aにそれぞれ2本の線状部材5を係止させた状態で該牽引棒4を引き抜くことにより、各蛇篭1にそれぞれ2本の線状部材5が挿通され、一方の線状部材5によって左右の蛇篭1同士が相互に連結され、他方の線状部材5によって上下の蛇篭1同士が相互に連結されている。
前記蛇篭1が左右だけ又は上下だけに隣接し合う部分では、各蛇篭1に牽引棒4によってそれぞれ1本の線状部材5が挿通され、この線状部材5で隣接する蛇篭1が相互に連結される。
【0025】
蛇篭1が左右方向及び上下方向にそれぞれ3つ以上並設されている場合には、上記方法によって隣接する蛇篭1同士を次々に連結することができる。
【0026】
前記実施形態においては、蛇篭1の正面視において左右両端寄りの位置にそれぞれ上下2つ(合計4つ)の牽引棒4が設けられているが、該牽引棒4の配設位置及び数は任意であり、蛇篭1の連結態様に応じて1つ又は2つ以上の牽引棒4を適宜位置に設けることができる。例えば、前記蛇篭1の左右両端寄りで上下方向の中央位置にそれぞれ1つ(合計2つ)の牽引棒4を設けることも、左右方向の中央位置に1つの牽引棒4を設けることもできる。
【0027】
また、前記実施形態は、前記牽引棒4が蛇篭1の前後方向即ち前面網10と後面網11とを結ぶ方向に配設されているが、該牽引棒4は、蛇篭1の左右方向即ち右側面網12と左側面網13とを結ぶ方向に配設することも、蛇篭1の上下方向即ち上面網8と底面網9とを結ぶ方向に配設することも、前記3つの方向のうちの何れか2方向あるいは3方向に配設することもでき、それらの配設位置及び数も任意である。
例えば、前記牽引棒4を蛇篭1の左右方向に配設した場合は、前後あるいは上下に並設した蛇篭1同士を線状部材5によって連結することが可能であり、上下方向に配設した場合には、前後あるいは左右に並設した蛇篭1同士を連結することが可能である。
【0028】
前記各実施形態の牽引棒4は、両端に耳部4aを有しているが、一端だけに耳部4aを有していても良い。
【0029】
このように、蛇篭1に耳部4a付きの牽引棒4を引き抜き可能に設置することにより、蛇篭の設置時に前記牽引棒4によって該蛇篭内に線状部材5を挿通させ、隣接する蛇篭同士を該線状部材5で簡単に連結することができる。特に、隣接する蛇篭同士を各々に挿通した線状部材5で連結する方法は、針金や該針金をコイル状に折曲したスクリューストッパ等の連結金具を用いる従来の連結方法に比べ、蛇篭同士の相互連結を簡単且つ迅速に行うことができるので、設置する蛇篭の数が多くても、蛇篭の連結作業を簡単かつ迅速に行うことが可能になる。
【0030】
なお、前記各実施形態では、四角い篭本体を用いて形成された角形の蛇篭が示されているが、円筒形の蛇篭や短円柱形をした蛇篭(だるま篭)など角形の蛇篭以外にも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 蛇篭
2 篭本体
3 栗石
4 牽引棒
4a 耳部
5 線状部材
8 上面網
9 底面網
10 前面網
11 後面網
12 右側面網
13 左側面網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網からなる篭本体の内部に栗石が充填されると共に、線状部材を係止させるための耳部を一端又は両端に有する牽引棒が、前記篭本体の内部を一端から他端まで横切る姿勢で引き抜き可能に配設されていることを特徴とする牽引棒付き蛇篭。
【請求項2】
前記篭本体は、方形の上面網及び底面網と、方形の前面網及び後面網と、方形の右側面網及び左側面網とによって四角い容器形に形成され、
前記牽引棒は、前記上面網と底面網とを結ぶ上下方向、前記前面網と後面網とを結ぶ前後方向、前記右側面網と左側面網とを結ぶ左右方向のうち、少なくとも一方向に向けて配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の蛇篭。
【請求項3】
金網からなる篭本体の内部に栗石が充填されると共に線状部材を係止させるための耳部を一端又は両端に有する牽引棒が配設された蛇篭を、複数個並べて配置する工程、
前記牽引棒の耳部に前記線状部材を係止させて該牽引棒を前記蛇篭から引き抜くことにより、該蛇篭の内部に前記線状部材を挿通させる工程、
前記線状部材で隣接する蛇篭同士を相互に連結する工程、
を有することを特徴とする蛇篭の連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−92613(P2012−92613A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242345(P2010−242345)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505444905)近畿砕石株式会社 (6)
【出願人】(390006116)瀬戸内金網商工株式会社 (18)
【Fターム(参考)】