説明

状態検知装置

【課題】液流が順方向および逆方向のいずれの場合にも内部に存在する気泡を有効に除去することのできる状態検知装置の提供。
【解決手段】管内に流通する液体の状態を前記管に介在配置された状態で検知する状態検知装置1であって、管に介在配置され、前記管内に流通する液体を貯留する貯液部2と、前記貯液部2に液体を流入させる流入部4と、前記貯液部2から液体を流出させる流出部5と、通常の取り付け状態における前記貯液部2の鉛直方向中央部より上側に、前記流入部4の後端部である流入口8と、前記流出部5の先端部である流出口9とを備える状態検知装置1であって、前記流入口8の中央を通り当該流入口8から流入する液体の流入方向を示す流入方向軸と、前記流出口9の中央を通り当該流出口9から流出する液体の流出方向を示す流出方向軸とがなす角度が140度以上、170度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内に流通する液体の状態を前記管に介在配置された状態で検知する状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体が流通する回路内の状態を監視することを目的とした状態検知装置の一例として、検知装置に設けたダイアフラムの変位により前記回路内を流れる液体の圧力を検知する圧力測定装置(特許文献1参照)や、光の透過度により液体の濁り度合い及び液体中に存在する特定成分の濃度を検知する光学検知装置がある。
【0003】
これらの検知装置は、当該検知装置内に気泡が存在すると、圧力や光の透過度を正確に検知できなくなるため、当該検知装置内部の気泡を除去する必要がある。
【0004】
特に、これらの検知装置が、血液回路など体外に血液を導出して処理する回路に組み込まれる場合においては、回路内に流れる液体の圧力や光の透過度は人命に関わる重要な指標となるため正確な検知が望まれる。
【0005】
以下、血液回路及び透析監視装置を例に挙げ、技術背景を説明する。
【0006】
血液透析は、患者から導出した血液を血液浄化器(ダイアライザ)に流通させ、血液中の過剰な水分や老廃物を除去する治療法である。患者と接続する流路は血液回路とよばれ、透析監視装置に配置された血液ポンプによって患者から導出された血液はこの回路内を流れ、そこに接続された前記血液浄化器によって浄化され、再び体内に返される。前記血液浄化器の内部には中空糸型半透膜が収容されており、中空糸内部に血液を、中空糸外部に透析液を流通させ、半透膜を介した拡散及び濾過の原理で血液中の不要物質を透析液に移動させ、血液中から除去する。
【0007】
一般的に治療施行時には透析効率向上のため、血液と透析液は対向流となるように流通させる。また、透析液の気泡除去のため、透析液は血液浄化器の中空糸外部を下方から上方へと流通させる。そのため、血液は透析液と対向流となるように、血液浄化器内を上方から下方へ向かって流通することとなる。
【0008】
一方、治療施行前には、血液回路や血液浄化器内の空気を生理食塩水などで置換し、回路内に血液を流通させるための準備作業が必要となる。この準備作業のうち、回路を透析監視装置に取り付けた後に透析監視装置の血液ポンプを用いて回路内に生理食塩水などを満たすことを「プライミング」という。プライミング操作では特に空気が残りやすい血液浄化器の血液流路には下方から上方に向かって液体を流通させ、回路内の空気を除去し易くしている。即ち、治療施行時においては上方から下方へ、プライミング時においては下方から上方へ液体を流通させることが求められ、両者の液体の流れは上下逆の向きとなる。このため、プライミング時においては、血液浄化器を反転させ、血液浄化器の流入口を下方に、血液浄化器流出口を上方に配置した状態で、液置換を行う等の事前処理を行っている。また、治療に移行する際には正しい方向へ配置し直す操作が必要であり、複数の透析患者の治療を同時に行う場合、非常に煩雑な操作になる。
【0009】
そこで昨今、透析監視装置に血液回路が接続された初期の状態から治療施行に移るまで、なるべく人手をかけないように工夫したプライミング方法が提案されている。
【0010】
このプライミング方法の一つとして、例えば、透析監視装置に血液回路をプリセットした状態で、ポンプを逆向きに回転させ、治療施行時に流れる液体の流れ方向とは逆方向の流れを発生させる方法が提案されている。プライミング時には、ポンプを逆向きに回転させ、逆向きの流れを発生させることで、治療施行時の向きに血液浄化器をセットした状態で、下方から上方へ血液浄化器に液体を満たすことが可能となる。
【0011】
しかし、例えば図8に示すような構造の圧力検知装置では、図中に示す矢印の方向(順方向)では空気を容易に追い出すことができるものの、当該プライミングのように逆方向では、空気を追い出し難くなるという他の問題が発生するため、本願発明者らは、液体が流入する流入口と液体が流出する流出口とを共に液が溜まる貯液部の上部に配置することで、液体の流れ方向が順方向でも逆方向でもいずれの場合にも容易に気泡を除去することのできる状態検知装置(圧力検知装置)を別途提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3526965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、順方向、逆方向の双方向の液流に対しいずれも容易に気泡を除去しうる構成の前記状態検知装置は、管内を通る液体の流速や液体の粘度によっては貯液部に液体が滞留することを見出だした。
【0014】
例えば、この流通する液体が血液の場合、滞留により血液凝固が引き起こされるなどして正確な圧力が検知できなくなるなどの問題が発生し、また、透析治療の最後に体外に導出した血液を体内に戻す際に、滞留している部分は体内に戻しきれない、等の問題が発生する。
【0015】
上記問題点に鑑み、本発明は、双方向の液流に対し容易に気泡を除去できる状態検知装置であって、滞留の発生を可及的に抑えることのできる状態検知装置の提供を目的とする。
【0016】
なお、上記説明において、透析監視装置を例として説明したが、血液濾過装置などの血液浄化用監視装置、人工心肺装置、血液濃縮装置など体外に体液を導出して処理する装置全般も同様の従来の技術や課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明にかかる状態検知装置は、管に介在配置され、前記管内に流通する液体を貯留する貯液部と、前記貯液部に液体を流入させる流入部と、前記貯液部から液体を流出させる流出部と、通常の取り付け状態における前記貯液部の鉛直方向中央部より上側に、前記流入部の後端部である流入口と、前記流出部の先端部である流出口とを備える状態検知装置であって、前記流入口の中央を通り当該流入口から流入する液体の流入方向を示す流入方向軸と、前記流出口の中央を通り当該流出口から流出する液体の流出方向を示す流出方向軸とがなす角度が180度未満である特徴としている。
【0018】
これにより、流入した液体の少なくとも一部が貯液部内に侵入し、貯液部内部に存在する液体を攪拌することが可能となる。従って、貯液部内に発生する液体の滞留を抑えることが可能となる。
【0019】
また、前記流入部に対し前記流出部のなす角は140度以上、170度以下であることが望ましい。
【0020】
これにより、貯液部における液体の滞留を抑制しつつ貯液部内部に存在する気泡を有効に排出することが可能となる。
【0021】
また、上記目的は、次に示す状態検知装置によっても達成できる。すなわち、本発明にかかる状態検知装置は、管に介在配置され、前記管内に流通する液体を貯留する貯液部と、前記貯液部に液体を流入させる流入部と、前記貯液部から液体を流出させる流出部と、通常の取り付け状態における前記貯液部の鉛直方向中央部より上側に、前記流入部の後端部である流入口と、前記流出部の先端部である流出口とを備える状態検知装置であって、前記流入口の中央を通り当該流入口から流入する液体の流入方向を示す流入方向軸と、前記流出口の中央を通り当該流出口から流出する液体の流出方向を示す流出方向軸とが接触しないように前記流入部と前記流出部とが配置されることを特徴としている。
【0022】
これにより、流入口から流入した液体の全てが流出口から直接流出する状態を回避して、流入口から流入してきた液体が貯液部内の液体を攪拌しつつ流出口から流出することができ、貯液部内に発生する液体の滞留を抑えることが可能となる。
【0023】
また、前記貯液部は略円柱形状となされ、前記流入口と前記流出口とは、前記貯液部の周壁に配設されることが望ましい。
【0024】
これにより、貯液部に流入する液体は、周壁に沿って旋回しながら流れるため、貯液部内の液体全体の攪拌が容易になる。また、液体の滞留の抑止と気泡除去とを容易に両立させることが可能となる。
【0025】
なお、上記独立した二つの発明を統合することで滞留防止効果を高める事ができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0026】
液流が順方向、逆方向のいずれであっても、有効に気泡を除去することを可能としながら、貯液部内での液体の滞留を可及的に抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ダイアフラムが取り外された圧力検知装置を示す斜視図である。
【図2】前記圧力検知装置の正面図である。
【図3】圧力検知装置のI−I線断面を下方から望む断面図である。
【図4】圧力検知部としてのダイアフラムを筐体に取り付けた状態を示す正面図(a)、断面図(b)である。
【図5】血液浄化用監視装置やこれに取り付けられる血液回路、透析液回路を示す斜視図である。
【図6】圧力検知装置の別態様を示す図である。
【図7】実験の結果を示す表である。
【図8】従来の圧力検知装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の状態検知装置の一実施形態である圧力検知装置について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、一つの端面が開口状態の圧力検知装置を示す斜視図である。
【0030】
同図に示す圧力検知装置1は、透析監視装置に用いられる血液回路や透析液回路などに介在配置され、回路内の血液や透析液の圧力などをリアルタイムに検知するための装置の一部品であり、中央部に円柱形の貯液部2を有するT字形状の筐体3を備えている。
【0031】
図2は、前記圧力検知装置の正面図である。なお、同図は、圧力検知装置の通常取り付け状態における姿勢を示している。図3は、図2における圧力検知装置1のI−I線断面を下方から望む断面図である。
【0032】
図2および図3に示す状態検知装置としての圧力検知装置1は、貯液部2と筐体3の外部とを連通する流入部4と流出部5とを備えている。
【0033】
流入部4、及び、流出部5は、貯液部2に直接接続される流路であって、本実施形態の場合、筐体3の外部から貯液部2に向かって直線状に設けられる流路である。なお便宜上、流入部4と流出部5、及び、後述の流入口8と流出口9とを固定して説明しているが、使用時の液の流れと逆向きの流れを発生させて、プライミング液を回路内や浄化器内を流通させる。プライミング時などにおいては、流入部4が流出部として機能し、流入口8が流出口として機能する。また同様に、流出部5が流入部として機能し、流出口9が流入口として機能する。
【0034】
本実施形態の場合、流入部4に対し流出部5のなす角(流入部4と流出部5とが直線状であるため、流入方向軸と流出方向軸とがなす角と同じ)θは160度が採用されている。このように流入部4と流出部5とが所定の角度で配置されると、流入した液体の一部が貯液部2の下部にまで到達すると共に、貯液部2の下部に存在していた液体が流出部5にまで到達することができ、貯液部2における液体を攪拌して滞留を防止することができる。
【0035】
なお、前記流入部4と流出部5とのなす角度は限定されるものでは無いが、流入部4に対し流出部5のなす角θが170度以下の範囲内であるとき、流入部4から流入する液体の流量が少ない場合などでも流入口や流出口から離れた位置にある貯液部下方の滞留を防止することが可能となり望ましい。
【0036】
また、流入部4、及び、流出部5は、それぞれ外側端部に拡径部6が設けられている。この拡径部6は、液体の流路である軟質の管(図示せず)の端部が強制嵌入される部分である。なお、流入部4や流出部5の外側端部にコネクタを設け、外部の管と着脱自在となるようにしても構わない。
【0037】
図2および図3からもわかるように、貯液部2は、円柱形状をしている。そして、貯液部2は、その周壁及びその一端部を筐体3により一体に囲われることにより形成されている。また、貯液部2の他端部は、筐体3によって閉ざされることなく開口状態となっている。
【0038】
なお、開口状態となっている貯液部2の他端部は後述のダイアフラムにより封止されることとなる。
【0039】
筐体3は、内部の液体の状態が目視できるよう全体が透明の樹脂で形成されている。これにより、透析中に血液の状態や透析液の状態、また、液体の流れの状態などを目視により確認することができる。
【0040】
さらに、貯液部2を形成する筐体3の周壁部分が透明であることにより、貯液部2に貯液される液体に光を透過させることができるようになる。これにより、例えば、透析液回路に透過光を検出できる装置を介在配置して、貯液部2を透過する透過光の光量の変化を検出すれば、透析液の濁り具合、つまり、透析液への血液の漏出(漏血)の有無等を判定することが可能となる。しかも、貯液部2は管などに比べ容積が大きい瘤状の部分となるため、貯液部2に貯留される液体中を光が透過する距離を長くすることができ、透析液の濁り具合等を検出する感度などを向上させることが可能となる。
【0041】
貯液部2の周壁面には、流入部4の端部である流入口8と、流出部5の端部である流出口9が設けられている。当該流入口8と流出口9とは、図2および図3からもわかるように、貯液部2の中心を通る鉛直軸10方向の中央より上部に配置されており、頂上またはその近傍に配置されている。また、鉛直軸10に対し対称となるように、圧力検知装置1の厚さ方向(図3中上下方向)にずれて配置されている。すなわち、流入口8の中央を通り当該流入口8から流入する液体の流入方向を示す流入方向軸と、前記流出口9の中央を通り当該流出口9から流出する液体の流出方向を示す流出方向軸とが接触しないように前記流入部4と前記流出部5とが配置されている。
【0042】
このように、流入部4と流出部5とを同一の面に配置しないことにより、流入部4から流入した液体の一部が流出部5から直接に流出することなく、貯液部2内の液体を攪拌し、貯液部2内の液体が滞留するのを抑止することが可能となる。また、本実施形態のように、流入部4と流出部5とを同一の面に配置せず、かつ、流入部4と流出部5との間に所定の角度θ(図2)を設けることで、貯液部2の滞留防止効果をより高めることができる。
【0043】
さらに、図2に示すように、流入口8の上端部と流出口9の上端部とは、水平方向(図2中左右方向)においてほぼ同一の位置に配置されている。また、当該位置には貯液部2の頂上が(水平方向の)ほぼ同一位置になるように配置されている。以上のように各上端部及び頂上が同一平面上に配置されることで、貯液部2の上端部に止まっている気泡が流入口8から流入する液体によって流出口9に容易に搬送される。従って、貯液部2の内部に気泡を留めることなく、貯液部2内部の気泡を容易に除去することが可能となる。なお、本実施形態の場合、貯液部2は円柱形状であるため、頂上は線状に存在することとなる。
【0044】
また、図2および図3に示したように、圧力検知装置1は、流入部4と流出部5とを入れ替えても液体の流れる状況が同じとなるように貯液部2の形状、貯液部2と流入部4および流出部5との位置関係、流入部4と流出部5の傾斜、流入口8と流出口9の位置などが、図2において左右対称、図3において、軸対称となされている。このように、各部の形状を対称とし、各部の位置関係を対称とすることで、液体の流入方向が逆になっても、前記と同様に貯液部2における液体の滞留を防止し、有効に気泡を排除することが可能となる。従って、液体の流れ方向が逆となるプライミング時においても、圧力検知装置内部の気泡を容易に除去することが可能となる。
【0045】
図4は、圧力検知部としてのダイアフラム11を筐体に取り付けた状態を示す図であり、(a)が正面図、(b)は(a)に示すAA線で切断した状態を示す断面図である。
【0046】
同図に示すように、円柱形の貯液部2の一端は、貯液部2に存在する液体の圧力により変形するダイアフラム11によって封止されている。また、ダイアフラム11は、抜け落ちを防止するための押さえリング12によって筐体3に取り付けられている。
【0047】
なお、ダイアフラム11に接続されるロードセル13は、ダイアフラム11中央近傍の変位を圧力として検出するためのセンサである。
【0048】
図5は、持続緩徐的な療法に適した血液浄化用監視装置14やこれに取り付けられる血液回路17、透析液回路18(補液回路、ろ液回路)を示す斜視図である。
【0049】
同図に示すように、圧力検知装置1は、血液浄化に用いられる血液浄化器19の前後の血液回路17に介在配置され、治療施行中の血液の圧力をリアルタイムで検出するものである。
【0050】
また、透析液回路18にも圧力検知装置1は介在配置されており、透析液の圧力もリアルタイムで検出するものとなっている。さらに透析液回路18の圧力検知装置1の両脇には、発光部20と受光部21が備えられており、発光部20から照射される光の強度を受光部21で検知することにより、透析液中の漏血の有無を確認している。このように、圧力検知装置1を用いて、貯液部2内に存在する血液や特定成分の濃度変化(受光量の変化)をモニタリングすることで、透析液の状態を圧力と共に観察することが可能となる。
【0051】
<実施例>
次に、本発明の効果を確かめた実験について説明する。
【0052】
本発明の効果を検証するため以下の三つの実験を行った。
【0053】
(1)所定の管を用いて圧力検知装置を含んだ液体回路を組み、当該回路内にポンプを用いて生理食塩水を充填した後、圧力検知装置中の気泡の残存の有無を目視で確認(気泡除去性能の確認)。
【0054】
(2)当該回路に充填された生理食塩水をポンプにより循環させている状態で、混注ポート(図示せず)より気泡を送り込み、圧力検知装置内での気泡の除去状態を目視にて観察した(気泡除去性能の確認)。
【0055】
(3)一旦牛血液で充填した回路を生理食塩水で置換していき、所定時間経過後の圧力検知装置内の牛血液の残存状況を目視により観察した(滞留状況の確認)。
【0056】
また、使用した圧力検知装置は、図3に示す流入口と流出口の位置関係を図3中上下方向にずらしたもの(ずれ有り)で流入部に対する流出部の角度を変化させたもの、及び図6(b)に示す流入口8と流出口9の位置関係(流入方向軸と流出方向軸とが交差:ずれ無し)で流入部4に対する流出部5の角度を変化させたものである。
【0057】
図7は上記実験の結果を示す表である。
【0058】
同表に示されるように、滞留の状態は、流入部4と流出部5とがなす角度θが小さくなるほど所定時間経過後の圧力検知装置内の牛血液残存量は減少する傾向にあり、滞留防止効果が大きいことを示した。これに対し、θが170度より大きくなれば、牛血液残存量は大きく増加し、ほとんど置換できない場合も存在した。
【0059】
さらに、θが170度より大きい場合でも流入口と流出口との位置関係にずれがある場合は、ずれがない場合より牛血液残存量が減少し、流入口と流出口との位置関係のずれが滞留を改善する傾向にあることが判明した。
【0060】
以上から、流入部に対する流出部の角度θを140度以上、170度以下の範囲に設定すると、気泡の除去効果と滞留防止効果との両方を享受できると結論することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるわけではない。
【0062】
例えば、圧力検知部(ダイアフラム)を備えることのない、状態検知装置であっても本発明に包含される。例えば貯液部を形成する透明な筐体を備えた状態検知装置ならば、液体の流通方向に関わりなく気泡を容易に除去できる貯液部を利用することができ、当該貯液部に光を透過させることで、光に対して液体が干渉する距離を長く確保することができ、液体の濁りを高い感度で検出することができるようになる。
【0063】
また、圧力の検出もダイアフラムを用いて精密に圧力を測定するばかりでなく、ピローと呼ばれるものを用い、圧力の正負のみをおおざっぱに検出するものでもよい。ピローとは、血液浄化用血液回路に、一般的に組込まれて使用されるもので、液体の流れる軸方向での断面が楕円状に成形・加工された可撓性の拡径部を有するチューブで、前記拡径部のつぶれ具合により、血液回路内の陰圧状態を確認できる。
【0064】
また、貯液部2の形状も円柱形ばかりでなく、球形を採用しても良い。また、矩形など
任意の形状を採用しても本発明に包含される。
【0065】
また、筐体3の形状も、T字形状ばかりでなく、任意の形状を採用することができ、例えば貯液部2の形状に沿った円筒形状としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、管内に流れる液体の状態を検出する状態検出装置に適用でき、特に、本発明に係る状態検出装置は、体外に体液を導出して処理をする体液導出装置に好適に採用される。
【符号の説明】
【0067】
1 圧力検知装置
2 貯液部
3 筐体
4 流入部
5 流出部
6 拡径部
8 流入口
9 流出口
10 鉛直軸
11 ダイアフラム
12 押さえリング
13 ロードセル
14 血液浄化用監視装置
17 血液回路
18 透析液回路
19 血液浄化器
20 発光部
21 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管に介在配置され、前記管内に流通する液体を貯留する貯液部と、前記貯液部に液体を流入させる流入部と、前記貯液部から液体を流出させる流出部と、通常の取り付け状態における前記貯液部の鉛直方向中央部より上側に、前記流入部の後端部である流入口と、前記流出部の先端部である流出口とを備える状態検知装置であって、
前記流入口の中央を通り当該流入口から流入する液体の流入方向を示す流入方向軸と、前記流出口の中央を通り当該流出口から流出する液体の流出方向を示す流出方向軸とがなす角度が140度以上、170度以下であることを特徴とする状態検知装置。
【請求項2】
前記貯液部において、前記流入口または流出口から最も遠方の部分の液体の滞留を防止するように、前記流入方向軸と流出方向軸が配置される請求項1に記載の状態検知装置。
【請求項3】
前記貯液部は略円柱形状となされ、
前記流入口と前記流出口とは、前記貯液部の周壁に配設される
請求項1または請求項2に記載の状態検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−232190(P2012−232190A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193356(P2012−193356)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2006−326162(P2006−326162)の分割
【原出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】