説明

玩具用模擬飲料

【課題】 黴や細菌の繁殖を抑制し、色調変化や浮遊物による視覚的な不具合を生じることがなく、常に新鮮なミルクやジュースの様相を長期的に維持できるため、幼児等が常に新鮮な外観を呈した模擬飲料を使用して、楽しくままごとや育児のまねごと等の遊戯が可能な玩具用模擬飲料を提供する。
【解決手段】 油脂及び乳化剤を含む水性媒体の乳化物にグレープフルーツ種子抽出物を配合してなる玩具用模擬飲料。水と着色剤とグレープフルーツ種子抽出物からなる玩具用模擬飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玩具用模擬飲料に関する。更には、ミルクやジュース等を模した玩具用模擬飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミルクやジュース等を模した模擬飲料が開示されており、玩具用の哺乳瓶や飲料容器に収容し、幼児がままごとに使用したり、人形に飲物を与えるといった育児のまねごとに使用されている。
前記模擬飲料には、水性媒体中に油脂を乳化した白濁の液体をミルクに見立てたものと、水性媒体中に染料等の着色剤を溶解・分散してジュースやお茶を模したものとがある。これらの模擬飲料において黴や細菌が繁殖した場合、油脂を含有した模擬飲料では、溶液の色調が変わってしまい見栄えが悪くなってしまう。また、着色剤を溶解・分散した模擬飲料では、溶液の色調が変わると共に、透明性が高い場合には浮遊物が視認されるようになるため、玩具全体の見栄えが悪くなり商品性を損なうと共に、幼児の興味を低下させることに繋がる。
そこで幼児用玩具に広く適用される防黴剤である安息香酸エステルを溶液中に添加する試みがなされるが、安息香酸エステルは水溶性が低いために長期の保管によって析出することや、乳化された油脂に移行して防黴効果が低下することがある。また、水性媒体中で白濁するため、透明性飲料を模したものには使用し難いものである。
前記問題を解消するために、チオシアン酸エステルやイソチオシアン酸エステルを配合することで安定した防黴効果を長期に亘って発現する玩具用模擬飲料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−33834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たな組成によって防黴効果を付与することで、黴や細菌の繁殖を抑制し、色調変化や浮遊物による視覚的な不具合を生じることがなく、常に新鮮なミルクやジュースの様相を長期的に維持できる玩具用模擬飲料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、油脂及び乳化剤を含む水性媒体の乳化物にグレープフルーツ種子抽出物を配合してなる玩具用模擬飲料を要件とする。
また、水と着色剤とグレープフルーツ種子抽出物からなる玩具用模擬飲料を要件とし、前記着色剤が食用色素であることを要件とする。
更に、前記溶液のpHが2〜7の範囲にあること、前記グレープフルーツ種子抽出物を溶液全量中0.01〜5重量%の範囲で含んでなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、長期間に亘って黴や細菌の繁殖を抑制できるため、製品性を損なうことなく常に新鮮な飲料の外観を呈したものとなり、幼児等が楽しくままごとや育児のまね等の遊戯を行うことが可能となる玩具用模擬飲料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の模擬飲料は、防黴、防菌効果を有するとともに安全性にも優れるグレープフルーツ種子抽出物を必須成分として水性媒体中に配合したものである。
前記グレープフルーツ種子抽出物は、ミカン科のグレープフルーツの種子から、各種溶媒を用いて抽出して得られる抽出物であり、溶媒(抽出溶媒、希釈溶媒など)以外の成分のことをいう。例えば、グレープフルーツ種子抽出物として、Desfan−10(ティックファイン株式会社製)、カルファ(カルファケミカル株式会社製)等の市販の抽出物を用いることができる。尚、前記抽出物は水性媒体に溶解した際に白濁することなく透明性を維持できる。
原料となるグレープフルーツの主要産地としては、アメリカ(柑橘類を生産している州)、メキシコ、アルゼンチン、イスラエル、南アフリカ等が挙げられ、本発明においては、これらの産地は問わず、いずれの産地のグレープフルーツでも用いることができる。
尚、抗菌性、保存安定性等の点から、未熟果の種子から抽出したものが特に好ましい。
【0008】
前記グレープフルーツ種子抽出物は、例えば以下のように抽出される。
まず、グレープフルーツの種子を、必要に応じて粉砕、乾燥等の処理を行う。次いで、炭化水素、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、およびこれらの混合溶媒に浸漬して抽出するか、或いは、浸漬し加熱還流して抽出する。抽出溶媒としては、水またはアルコールが好ましく用いられる。アルコールとしては、一価アルコール及び多価アルコールのいずれも適用できる。より好ましくは、水、エタノール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、及びこれらの混合溶媒であり、更に好ましくは水またはグリセリンである。
【0009】
前記グレープフルーツ種子抽出物は、溶液全量中0.01〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%添加することができる。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、また、5重量%を越えて添加しても防黴効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
【0010】
前記グレープフルーツ種子抽出物は、酸性領域化でより高い防黴効果を発現する性質を有することから、溶液のpHを、pH2〜7の酸性〜中性領域、好ましくはpH2〜6の酸性領域に調整することが好ましい。
【0011】
前記白濁液を構成する油脂としては、動物脂の他、食用紅花油、食用大豆油等の乾性油や、食用とうもろこし油、食用綿実油、食用ゴマ油、食用なたね油等の半乾性油、食用オリーブ油等の不乾性油、食用パーム油、食用ヤシ油等の植物脂を用いることができる。
【0012】
前記乳化剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を用いることができる。
【0013】
前記白濁液に添加して透明度の低い濁りのある果汁の外観を模したジュースとしたり、水中に添加して透明性が高いお茶やジュースの外観を模した溶液を形成するために添加される着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、酸性染料、塩基性染料、直接染料等の各種染料や、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられる。更に、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料、可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料や、前記可逆熱変色性組成物と共に、染料や顔料を内包したマイクロカプセル顔料等の熱変色性顔料を使用することもできる。
特に、食品添加物として規定されている、食用赤色2号、3号、102号、104号、105号、106号、食用黄色4号、5号、食用青色1号、2号等や、天然色素であるパプリカ色素、クチナシ色素、ウコン色素等の食用色素が好適に用いられる。
尚、前記着色剤は一種又は二種以上混合して用いることも可能である。
【0014】
また、粘度調整のために水溶性有機溶剤を添加することもでき、グリセリン、プロピレングリコール等が好適に用いられる。
更に、増粘或いは乳化物の分散安定性を向上させるために、アラビアガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム等の水溶性樹脂や多糖類を添加してもよい。
【0015】
その他必要に応じて、消泡剤、耐光性付与剤、香料を添加したり、トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸、没食子酸プロピル、クエン酸、クエン酸イソプロピル、クエン酸三カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤を添加することもできる。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の玩具用模擬飲料の組成を以下の表に示す。尚、表中の組成の数値は重量部である。
【表1】

【0017】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)第一工業製薬(株)製、商品名:DKエステルF160
(2)日清製油(株)製、商品名:ハイオレイックサフラワー油
(3)(株)アイゼン製、商品名:食用黄色4号
(4)(株)アイゼン製、商品名:食用黄色5号
(5)三栄薬品貿易(株)製、商品名:アラビックコールSS
(6)(株)アデプト製、商品名:Desfan−10(有効成分10%)
(7)パラオキシ安息香酸エステル、上野製薬(株)製、商品名:ネオメッキンスS(有効成分50%水乳化物)
【0018】
模擬飲料溶液の調製
実施例1,3及び比較例1,2,4の溶液は、イオン交換水中に樹脂と乳化剤を溶解し、油脂を加えて25℃でディスパーにて10000rpmで10分間攪拌して乳化した後、残りの成分を加えて攪拌溶解することで調製した。
また、実施例2及び比較例3の溶液は、イオン交換水に各成分を添加し、25℃でディスパーにて30分間攪拌溶解することで調製した。
【0019】
防黴確認試験
前記実施例及び比較例で作製した玩具用模擬飲料を、作製直後のもの及び作製後50℃で60日間保管したもの、普通寒天培地により37℃で7日間培養することで黴の発生状況を確認した。
以下の表に試験結果を示す。
【表2】

【0020】
尚、表中の試験結果の評価は以下のとおりである。
○:菌のコロニー発生はみられない。
×:菌のコロニー発生がみられる。
【0021】
応用例
実施例1で得た玩具用模擬飲料(懸濁オレンジジュース)を、パイロットインキ社製「まほうのミルクびん」の透明容器内に収容することで模擬飲料玩具を得た。尚、前記商品は乳首部分を下方に向けることで、透明容器内に収容した溶液が泡を発生させながら減っていくように視覚される玩具用哺乳瓶である。
前記哺乳瓶を下方に向け、人形にジュースを飲ませるようにすると、哺乳瓶内で泡を発生しながらジュースの量が減少し、あたかも人形がジュースを飲んでいるような様相を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂及び乳化剤を含む水性媒体の乳化物にグレープフルーツ種子抽出物を配合してなる玩具用模擬飲料。
【請求項2】
水と着色剤とグレープフルーツ種子抽出物からなる玩具用模擬飲料。
【請求項3】
前記着色剤が食用色素である請求項2記載の玩具用模擬飲料。
【請求項4】
前記溶液のpHが2〜7範囲にある請求項1乃至3のいずれかに記載の玩具用模擬飲料。
【請求項5】
前記グレープフルーツ種子抽出物を溶液全量中0.01〜5重量%の範囲で含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の玩具用模擬飲料。