説明

玩具

【課題】力の弱い子供でも簡単に回すことができ、回転形状がバラエティに富んだ玩具を
提供する。
【解決手段】本発明は、複数の頂点2と、複数の頂点2同士を結ぶ稜線3と、稜線3同士
を結ぶ曲面4を有する多面体6を有すると共に回転させることで遊ぶ玩具であって、稜線
3は略円弧を有し、多面体6は、玩具が安定回転中に地面と接する回転接点9と多面体6
の重心とを結んで形成される複数の回転軸10を有し、複数の回転軸10を基準として仮
想的に形成される異なる形状を持つ複数の回転形状を有し、複数の回転形状のいずれかが
確率的に実現される玩具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転させて遊ぶ独楽やさいころなどに適用できる玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
独楽やさいころなどの、回転させて遊ぶ玩具は、その回転動作の面白さで、子供や大人
にとって面白い。
ベーゴマやけんかゴマなどは、紐を巻きつけて紐を回転させることで、独楽に回転力を
与えて、実際に独楽を回す必要がある。しかしながら、器用さや力の未熟な子供にとって
は、このような巻き紐を用いた独楽を回すことは簡単ではなかった。
独楽は、接点と重心を結ぶ回転軸が、地面に対して垂直となって回転することで、安定
した回転状態を維持できる。しかし、このような独楽は、接点はひとつであって、回転す
るときの形状は1つに定まってしまい、面白みにかける。
器用さや力の未熟な子供にとっても容易に独楽が回せるように、地面との接点と、重心
の真下の地面の点が異なることで、接点と重心の回転軸がそろうようになることによる力
を利用した、起き上がり独楽の種々の形態について、提案がなされている(例えば特許文
献1、2参照)。
特許文献1は、多面体の各頂点を中心とする、複数の球体を組み合わせることによる独
楽を開示している。
特許文献2は、卵形の形状により横倒しから回転を開始しても起き上がって回転する卵
形状の独楽を開示している。
【特許文献1】特表2002−515314号公報
【特許文献2】実用新案登録第3091116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術には下記のような問題点があった。
特許文献1に開示される独楽は、少なくとも3つの球体による囲まれる凹部が出来上が
る。この凹部により、独楽は、地面に置いたときに安定する。使用者が独楽を回し始める
ときには、この3つの球体により囲まれた凹部を地面に対する接点として回転させ始める
。回転を開始するときに地面に接している点を開始接点と呼び、安定回転中に地面と接し
ている接点を回転接点と呼ぶ。起き上がり独楽は、開始接点を基準に回転動作が始まった
独楽が、やがて回転接点と独楽の重心を結ぶ軸を回転軸とするように起き上がっていき、
回転接点と重心を結ぶ軸が回転軸となって、安定的に回転する。
特許文献1に開示される独楽は、少なくとも3つの球体が、凹部の周囲に出っ張りを有
するので、少なくとも3点が接点となる。接点の数が多いと、独楽自体が置いた状態で安
定してしまい、不安定な状態ではない。しかし、回転させるためには、置いた状態は不安
定であって、更に回転軸を基準とした回転が安定していることが必要である。
特許文献1に開示される独楽では、回転を始めるときの状態が安定に過ぎ、3つもの接
点があるので、回転動作を与えてもなかなか不安定な状態とならない。加えて、独楽は、
回転接点がひとつに定まらず、回転軸が、地面に対して垂直となりにくい。
このため、特許文献1に開示される独楽では、回し始めに大きな力を要するので、力の
弱い子供ではまわしにくい問題があった。
また、特許文献1の独楽は、回転接点となりうる候補は複数あるものの、いずれも、球
体の一点が、回転接点になるだけで、重心と回転接点を結ぶ回転軸は、いずれの球体の一
点が回転接点となっても、回転軸を基準とした断面形状は同じに過ぎない(多面体の頂点
毎に同じ球体を配置している以上、重心と球体の一点を結ぶ回転軸を、どの球体に対して
構成しても、断面形状は同じである)。
このため、特許文献1の独楽は、力の弱い子供にとっては、回しにくいのに加えて、回
転形状がひとつだけであって、面白みに欠ける問題があった。
このような独楽であると、子供は飽きてしまう問題もある。
【0004】
また、特許文献2に開示される卵形の独楽は、普通に地面においている場合には、横向
きになっており、この状態から手を添えて回転させる。このとき、安定回転となる回転接
点は、卵形の上もしくは下の頂点であり、回転開始時の接点から、安定回転時の回転接点
までの距離が長く、うまく起き上がらせるのは子供にとっては難しい問題がある。
また、回転状態は、卵形が縦になった状態のみであり、回転形状は、特許文献1の独楽
と同様にひとつのみで、面白みに欠ける。
以上のように、従来の技術における、起き上がり原理を利用した独楽は、力の弱い子供
では回しにくく、回る状態も単調で飽きられやすい問題があった。
本発明は、力の弱い子供でも簡単に回すことができ、回転形状がバラエティに富んだ、
玩具であって、回転させることで遊ぶ玩具を提供することを目的とする。
同時に、よく転がり、出る目をコントロールしにくいサイコロを提供することも目的と
する。よく知られている正四面体のサイコロは、特に、転がりにくく、出る目をコントロ
ールしやすいし、静止した状態では、面ではなく頂点が上にくるので目の数が読みにくい
という問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の頂点と、複数の頂点同士を結ぶ稜線と、
稜線同士を結ぶ曲面を有する多面体を有すると共に回転させて遊ぶ玩具であって、稜線は
円弧を有し、多面体は、玩具が安定回転中に地面と接する回転接点と多面体の重心とを結
んで形成される複数の回転軸を有し、複数の回転軸を基準として仮想的に形成される、異
なる形状を持つ複数の断面形状を有する玩具を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、多面体の頂点が回転接点となって安定回転に入る。このとき、開始接
点は、多面体の曲面のいずれかの点となるので、開始接点から、回転接点までの距離は非
常に短く、曲面であることにより、移動はなめらかである。。しかも、ひとつの開始接点
を基準とすると、複数の回転接点の候補があるので、最初に玩具に与える回転力が弱くて
も、頂点のいずれかが簡単に回転接点となる。このため、力の弱い子供であっても、独楽
として簡単に回して遊ぶことができる。
特に、各頂点に突起が設けられていることで、この突起が簡単に回転接点になるので、
容易に回転させることができ、子供であっても十分に楽しめる。
また、各頂点以外にも突起が設けられることで、回転接点となりうる候補の位置が増え
ることにより、より回転が容易になる。
【0007】
また、回転接点と重心を結んでできる回転軸が、複数であると共に、回転軸を基準とし
た断面形状も、複数の異なる形状を有するので、回転するときの回転形状はさまざまとな
る。回転軸を基準とした断面形状が、回転形状の基礎となるからである。
このため、回転形状がさまざまである上に、回転時の多面体のどこが回転接点となるか
は、回してみないとわからず、回転させた結果、さまざまな回転形状が定まるので、常に
新鮮な印象を受けることができる。このため、使用者にとっては、非常に楽しい玩具とな
りうる。
同時に、よく転がり、目の数がよみやすいサイコロを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明に係る玩具は、複数の頂点と、複数の頂点同士を結ぶ稜線と、稜線同士を結
ぶ曲面を有する多面体を有すると共に回転させることで遊ぶ玩具であって、
稜線は円弧を有し、
多面体は、玩具が安定回転中に地面と接する回転接点と多面体の重心とを結んで形成され
る複数の回転軸を有し、
複数の回転軸を基準として形成される、異なる形状を持つ複数の回転形状を有し、
複数の回転形状のいずれかが、確率的に実現される。
この構成により、回転を始める接点から、回転軸の一端となる部位に、即座に回転接点
が移動し(曲面や略円弧上を)、回転軸が地面に対して垂直となって、安定的な回転が実
現できると同時に、どれが回転接点になるかは確率的であるので、回転形状は確率的に現
れる。
例えば、いびつな四面体も曲面で覆うことにより、頂点を回転接点とする回転が容易に
得られ、その回転形状は、いびつ故に、頂点毎に異なる。もちろん、いびつな四面体その
ものは、回転させるのは大変困難である。
なお、本発明で述べている曲面は、略平面を排除するものではない。
【0009】
第2の発明の係る玩具では、曲面が球面の一部を構成するものである。
この構成により、不安定な初期回転時の接点の移動が滑らかになる。
【0010】
第3の発明に係る玩具では、多面体の中心部に空洞を有する。
この構成により、頂点などが、回転接点となるまでの時間が短い。また、重量を小さく
することができ、回転させるための力を軽減できるので、力の弱い子でも簡単に回せる。
【0011】
第4の発明に係る玩具では、すべての頂点、もしくは、一部の頂点に突起が設けらた。
この構成により、多面体の頂点には突起が設けられ、頂点を回転接点とする回転を拾い
やすくなる。
ただし、この突起は、本来の多面体から余りはみ出さないがよい。頂点部分を面取りし
て突起を設けるとよい。なお、頂点部分が窪んでいるときは、その窪みから、少々顔を出
す程度に突起を設けるのが好適である。
なお、重量を持つ突起を設けるときは、バランスを考えて設けると好適であり、全ての
頂点に設ける必要はない。
第5の発明に係る玩具では、多面体のすべての稜線、もしくは、一部の稜線の所定部位
に、突起が設けられた。
この構成により、素通りしがちな稜線部分での回転を拾いやすくなる。
なお、重量を持つ突起を設けるときは、バランスを考慮して設けると好適であり、全て
の稜線に設ける必要はない。
第6の発明に係る玩具では、多面体のすべての曲面、もしくは、一部の曲面の所定部位
に、突起が設けられた。
この構成により、立ち上がり独楽では、いままでは捨てられていた回転を拾うことがで
きる。同時に、曲面に突起が設けられると、玩具はより不安定になり、結果として、立ち
上がりが容易になる。
なお、重量を持つ突起を設けるときは、バランスを考慮して付けると好適であり、全て
の曲面に設ける必要はない。
なお、以上に述べた突起は、基本的には回転接点になり得るものであればよく、必ずし
も、多面体から突出していなくてもよく、極端に言えば、へこんでいてもよい。
これらの構成により、玩具の回転形状が、様々なバリエーションを有することになる。
加えて、回転接点となりうる部位が多くなり、力の弱い子供でも容易に独楽を回すことが
できる。結果として、使用者にとって飽きの来にくい玩具となる。子供への教育的配慮に
も優れている。
【0012】
第7の発明に係る玩具では、複数の頂点は、1個の仮想的球の球面上にあり、曲面の複
数の端点は平面上にあり、多面体の重心は、複数の端点から形成される平面図形を面とす
る仮想的多面体の重心と一致し、かつ、仮想的球の中心とも一致する。
この構成により、多面体の骨格がより対称性を持つようになり、回転時のバランス(重
量バランスや空気抵抗のバランス)がよく、回転時間を延ばせる玩具となる。
なお、対称性を持つ多面体の例としては、正多面体や準正多面体、直方体、各面が合同
な多面体等の面を、バランスよく膨らませたものが考えられる。
なお、頂点部分に面取りを施すと、頂点が無くなるが、本発明で述べている頂点とは、
面取りを施す前の頂点である。
【0013】
第8の発明に係る玩具では、曲面は、多面体の全ての頂点を通る仮想的球の球面の内側
にある。
この構成により、多面体は、正多面体や準正多面体、直方体、各面が合同な多面体等の
各面を少し膨らませたものでがあるが、いずれの頂点も回転接点となり得る(準正多面体
の場合、頂点よりも、正多面体の頂点部分を切り取ることによってできた小さい面の中央
が回転接点となりやすい)ので、誰にとっても回しやすいし、稜線部位も曲面部位も回転
接点となり得、立ち上がりやすく、安定して回転する玩具を形作ることができる。
【0014】
第9の発明に係る玩具では、多面体はその頂点部分と稜線部分に面取りが施されている

この構成により、地面との不要な摩擦、空気抵抗を幾分減らすことができ、さらに、突
起を設けやすくなる。この結果、球のように丸くもなく、角張ってもいない、立ち上がり
やすく、安定して回転する玩具を形作ることができる。
【0015】
第10の発明に係る玩具では、曲面は既に述べた仮想的球の球面の外側にある。
この構成により、その仮想的骨格が正多面体や準正多面体、直方体、各面が合同な多面
体、その他の、面が膨れあがって、頂点部分は窪み、稜線部分にはくびれのできた玩具を
形作ることができる。容易に立ち上がらせることができるし、頂点部分や、稜線部分のへ
こみ具合が小さいときは突起を付けることが可能で様々な面白い回転形状を楽しめる。
【0016】
第11の発明に係る玩具では、多面体は、その複数の頂点から正多面体が仮想的に形成
されるものであり、各曲面が互いに合同であり、曲面は既に述べた仮想的球の球面の外部
にある。
この構成により、骨格が正多面体で、全体が、曲面によって同様に覆われた、安定して
置けて(複数の点による支持)、しかし、転がりやすく(支持点間の距離が短い)、立ち
上がりやすく、安定して回転する玩具を実現できる。さらに、稜線部分のくびれ具合や、
頂点部分の窪みを浅くすれば、突起を付けることは困難ではなく、偶然的に決まる様々な
回転形状を楽しめる玩具を提供できる。
【0017】
第12の発明に係る玩具では、面のそれぞれに異なるが配色が施されている。
この構成により、回転毎に異なる混色が起き、様々な色合いを、回転毎に楽しめる。
【0018】
第14の発明に係る玩具では、大きく膨れあがった曲面の中央部分、もしくは、窪んだ
頂点の周辺部分に異なる数字、もしくは、数値が確認できる図形や模様が描かれている。
この構成により、とても転がりやすく、目の数が読みやすく、目の出方が等しい確率の
面白い形状のサイコロを提供できる。
なお、本発明に於いては、突起は設けても、設けなくてもよい。転がすだけでなく、様
々な回転を楽しんだ後に出た目を読んでもかまわない。また、空洞は、使用目的に応じ、
設けても、設けなくてもよい。
【0019】
以下、図面を用いて実施の形態について説明する。独楽を玩具の一例として説明するが
、玩具は、独楽に限られず、回転させて遊ぶ玩具を幅広く含む。
なお、本明細書において、玩具を地面(地面とは、現実の地面だけでなく、室内の床や
机の上の面などである)に置いたときに、自然な状態で多面体が地面に接する点を開始接
点と呼び、回転が開始され安定的に回転する際に地面と接する点を回転接点と呼ぶ。
また、回転接点と多面体の重心を結ぶ線は回転軸であり、回転軸が地面に対して垂直と
なることで、安定回転が実現される。
なお、起き上がり独楽は、開始接点で回転が始まると、独楽が傾き始め、傾きが進むに
つれ、回転軸の一端である回転接点が、地面に接して回転を開始し、回転軸が地面に対し
て垂直となって、安定的に回転を開始することにより実現される。
【0020】
(実施の形態1)
図1を用いて、実施の形態1における玩具を説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態1における独楽の斜視図である。
(全体概要)
独楽1は、多面体6を基本の形状として有している。多面体6は、複数の頂点2、複数
の頂点の内、隣り合う頂点2同士を結ぶ稜線3、稜線3同士を結ぶ曲面4から形成される

稜線3は、円弧を有しており、曲面4は、この円弧に従って緩やかなカーブを描いて、
形成されている。また、稜線3と頂点2は、それぞれ面取りが施されている。
図1の多面体6は、略正四面体(曲面を有しているのでこう呼ぶ)である。
多面体6は、複数の回転軸を有する。回転軸は、多面体の回転接点と重心を結ぶ線であ
り、図1に示される独楽では、複数の頂点2のいずれかが回転接点となるので、複数の頂
点2を一端とした複数の回転軸が形成される。
また、回転の状態によっては、稜線3のいずれかの部位や曲面4のいずれかの部位が、
回転接点となる。
このため、回転軸は、(1)頂点2のいずれかを回転接点とする回転軸、(2)稜線3
のいずれかの部位を回転接点とする回転軸、(3)曲面4のいずれかの部位を回転接点と
する回転軸、のいずれかの種類が形成される。
独楽1は、このいずれかの回転軸を軸として回転する。
【0021】
図1(b)には、ひとつの頂点2を回転接点9として回転する状態が示されている。独
楽1を掴んだ使用者は、適当な開始接点を地面に当てて回転を与える。開始接点では不安
定な状態にある独楽1は、安定姿勢に近づこうとするため、回転軸の一端である頂点2が
地面に近づこうとする。頂点2は、地面に接すると、頂点2が回転接点9となり、回転接
点9が、地面に対して接することで、自動的に、回転接点9と多面体6の重心とが結ばれ
る回転軸10は、地面に対して略垂直となる。
この結果、独楽1は、急に安定性を有し、回転軸10を基準として、安定的な回転を始
める。
【0022】
なお、独楽1は、多面体6を基本形状として形成されているが、必要に応じて、他の形
状が追加(空気抵抗を考慮しながら)されてもかまわない。
また、独楽1の材質は、木材、樹脂、金属、発泡スチロール、粘土など、何でもかまわ
ない。
また、頂点2、稜線3の所定部位、曲面4の所定部位のいずれかあるいはそれぞれに、
突起が設けられてもよい。突起があることにより、回転接点となる点が安定的に決定され
、回転軸が地面に対して垂直となる、安定的な回転動作が、早期かつ確実に実現されるか
らである。
【0023】
(回転動作について)
図2を用いて、独楽1の回転について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における独楽の回転状態を示す側面図である。
独楽1は、最初、曲面4上のいずれかの部位もしくは、稜線3上のいずれかの部位を、
開始接点7として、地面に置かれている。
子供などの使用者は、開始接点7を基準に、独楽1に回転を与える。独楽1は、開始接
点7を、当初は回転接点として、回転動作を開始する。しかし、開始接点7は、曲面4上
のある一つの部位であるので、安定性は弱い。このため、独楽1は、ふらつきを有する。
加えて、開始接点7に対しては、地面との摩擦力が働く。
このふらつきと、摩擦力が相まって、開始接点7は開始接点7の周囲に存在する3つの
頂点2のいずれかに近づこうとする。
頂点2のいずれかは、回転軸の一端となりうる候補である。
このような作用が働く結果、頂点2の一つが、回転接点9となる。頂点2は、多面体の
重心11と結ばれた線を回転軸10とでき、頂点2が回転接点となって、地面に接するこ
とで、回転軸10は結果的に、地面に対して略垂直となる。回転軸10が、地面に対して
略垂直となると、独楽1は、回転軸10を基準に回転することとなって、その回転動作は
安定的になる。このとき、重心11の地面からの高さは、独楽1の中央に近い。
図2の独楽は、略正四面体であるが、いびつな四面体状のものは、頂点毎に回転形状は
異なる。
このような安定的な回転動作に入ると、独楽1は、長時間にわたって回転し、子供にと
っても大人にとっても、楽しい独楽遊びができる。
また、開始接点7は、曲面4および稜線3のいずれかの部位となるが、稜線3は、円弧
を有し、曲面4も稜線に沿ったカーブを有するので、開始接点は、一点である。
このため、開始接点により地面に置かれた独楽1は、不安定な状態である。この不安定
な状態のおかげで、回転を開始させると、より安定する頂点2のいずれかを回転接点とす
る力が働き、回転軸10を基準とした回転動作に入りやすくなる。
加えて、頂点2が複数の多面体6から、独楽1が形成されるため、開始接点7を基準と
した回転接点9の候補は、周辺の少なくとも3つの頂点2となり、回転接点9が早期に定
まりやすい。特に、開始接点7から、頂点2までの距離が短いし、その間が曲面、円弧で
あるから、開始接点7から、回転接点9までの移行はたやすい。
このような特徴から、本発明の実施の形態1における独楽は、力の弱い子供でも簡単に
回すことができ、しかも、簡単に起き上がって回転軸10を基準とした回転が可能となる
ので、子供であっても、容易に長時間の独楽回しを楽しむことができる。
【0024】
(回転形状)
次に、独楽1の様々な回転形状について説明する。
本発明の玩具に基づく独楽1は、回転形状が、様々である楽しみを有している。
図3は、本発明の実施の形態1における独楽の回転形状を示す側面図である。
独楽1は、各頂点2、稜線3の所定の部位、曲面4の所定の部位のいずれかを、回転接
点として回転する。このとき、各頂点2、稜線3の所定の部位、曲面の所定の部位のそれ
ぞれに、突起20が設けられている。この突起20により、独楽1は、開始接点の位置と
、回転開始時にかけられた力の方向や加減によって、いずれの突起20が回転接点9にな
るかが決まる。逆に言うと、力加減によって、回転接点9となる突起20は、様々に選択
される。このため、どこの突起20が回転接点9となるかは、回してみるまでわからない

このため、使用者が回転をさせる場合には、そのつど、異なった突起20が回転接点9
として選択されて、回転を開始する。また、回転接点9となる突起20は、頂点2に設け
られているものと、稜線3の所定部位に設けられているものと、曲面4の所定部位に設け
られているものとがあり、それぞれと多面体6の重心と結ばれる線による回転軸を基準と
した、多面体6の断面形状は異なる。
すなわち、頂点2の突起20が回転接点9となった回転軸を基準とした多面体の断面形
状と、稜線3の所定部位に設けられた突起20が回転接点9となった回転軸を基準とした
多面体の断面形状と、曲面4の所定部位に設けられた突起20が回転接点9となった回転
軸を基準とした断面形状のそれぞれは、異なる形状を有する。
【0025】
図3(a)は、頂点2に設けられた突起20が回転接点9となった場合の、回転形状を
示している。図3から明らかな通り、多面体6をさかさまにした状態をほぼ半分に切った
形状が、回転形状となる。円弧を持った稜線に囲まれた逆三角形の形状を有する。
すなわち、回転させた結果、頂点2が回転接点9となった場合には、側面から独楽1を
見た場合に、独楽1は、逆三角形となる濃い回転形状を有していることになる。同時に、
その周りに、逆三角形となる薄い回転形状を有している。
図3(b)は、曲面4の所定部位に設けられた突起20が、回転接点9となった場合の
、回転形状を示している。図3から明らかな通り、多面体6を上向きに鎮座させた形状が
、回転軸10を基準とする回転形状であり、円弧に囲まれた三角形の回転形状を有してい
る。
すなわち、回転させた結果、曲面4の所定部位が回転接点9となった場合には、独楽1
を側面から見た場合に、独楽1は、三角形となる濃い回転形状を有している。同時に、そ
の周りに、三角形となる薄い回転形状を有している。
図3(c)は、稜線3の所定部位に設けられた突起20が、回転接点9となった場合の
、回転形状を示している。図3から明らかな通り、ソロバンの珠の形の回転形状となる。
すなわち、回転させた結果、稜線3の所定部位が回転接点9となった場合には、独楽1
を側面から見た場合に、独楽1は、ソロバンの珠の形となる濃い回転形状を有している。
同時に、その周りに、円柱の形に近い、薄い回転形状を有している。
以上のように、回転させるたびに、偶然的な(物理学的には説明ができるが)確率で、
独楽1は、様々な回転形状を有するようになる。
この結果、子供や大人の別なく、独楽1を使った遊びが楽しくなり、独楽1は飽きられ
にくくなる。また、子供が、独楽1の原理を知ろうとする態度を持つようになるので、子
供の科学教育のきっかけともなるメリットもある。
【0026】
なお、ここでは、回転接点9となる部位には、突起20が設けられているとして説明し
たが、突起20が設けられていると、回転接点9として安定しやすいが、突起20がなく
とも、回転接点9にはなりうるので、突起20が明示的に設けられていなくともよい。す
なわち、突起20が回転接点9になるということは、突起20が設けられている部位が回
転接点9になるということと同義である。
また、突起20は、多面体6に球やピンなど、突起形状を有するものが埋め込まれても
よく、多面体6そのものを加工して、突起形状を持つようにしてもよい。さらに、その突
起の多面体からの突出程度によっても、3種類の回転形状の現れ方の確率が異なるので、
突出程度を微調整できるような、例えば、ねじ式の突起でも差し支えない。
なお、多面体6は、その仮想的骨格が正多面体、もしくは、準正多面体(数学的には、
準正多面体は正確に定義されているが、正多面体の頂点部分を大きく面取りしたものも含
む)、もしくは、直方体、もしくは、各面が合同な多面体であることが、回転バランスや
回転の安定性の両面から好ましい。正多面体であれば、正四面体、正六面体、正八面体、
正十二面体、正二十面体などいろいろと考えられ、準正多面体も同様にいろいろ考えられ
るが、起き上がりの容易性や安定性、また、回転形状の違いの明確性などから、仮想的骨
格が、正四面体、正六面体、正八面体、準正四面体、準正六面体、もしくは、準正八面体
の場合が好適である。
【0027】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2における独楽の透過斜視図である。
独楽1は、実施の形態1で説明したとおり、多面体6により形成される。
実施の形態2における独楽1は、多面体6の内部に空洞30を有している。空洞30は
、予め空洞30が設けられた複数の部材が合わされて多面体6が形成されて実現されても
よく、多面体6の表面の一部に穴を開けて、そこから熱伝道などで、内部をくりぬいて実
現されてもよい。
空洞30があることにより、多面体6は、頂点2、稜線3、曲面4の付近の重量密度が
、多面体6の平均的な重量密度よりも大きくなる。すなわち、回転を開始させた場合に、
重量密度の高い、これら頂点2、稜線3、曲面4のいずれかが、回転接点9となりやすく
なる。この結果、開始接点から回転接点9への移行が、短時間で行われ、それだけ、初期
に加えられた力を、回転動作に無駄なく使うことができ、回転時間が長くなるメリットが
ある。
また、回転接点9となりうる頂点2、稜線3の所定部位、曲面4の所定部位に突起20
を備えた場合には、多面体6における重量バランスが、突起20により乗りかかることに
なるので、回転開始から、突起20が回転接点9となるまでの時間がより短くなる。
このように、多面体6に空洞30が設けられることで、多面体6において、回転接点9
となりうる部位に向けて重量密度が大きくなるので、どのような設置状態から回転を開始
させても、即座かつ簡単にいずれかの部位が回転接点9となって、独楽1が安定的に回転
する。
このように、多面体6内部に空洞30が設けられることで、力の弱い子供であっても、
簡単に独楽1を回すことができる。特に、最初の設置状態如何にかかわらず、弱い力で回
転を与えても、回転軸が地面に対して垂直となりうる回転接点9を、地面に対する回転位
置とできるようになる。結果として、最初に弱い力しか与えることができない場合であっ
ても、確実に安定回転をさせることができる。
【0028】
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。
図5は、本発明の実施の形態3における独楽の断面図の1つである。
図5の独楽1は、多面体6でできている。この多面体6は略正四面体で、多面体6を形
成する曲面4は、球面の一部を形成し、この球面が形成しうる球の中心は、多面体6にお
いて、曲面4に対して対向する位置にある頂点2と略一致している。
独楽1は、様々な多面体6で形成されるが、略正四面体で形成されるのが、回転の安定
性や加工の容易性から、特に好適である。なお、各面が曲面であるので、略正四面体とい
う言葉を使っている。
略正四面体の各曲面4は、球面の一部を形成するようなカーブを有した曲面であればよ
く、この場合には、回転を開始させた後、簡単に頂点2などに設けられた突起20に、回
転位置が近づき、突起20が回転接点9になる。
地面に平行な偶力をかけると、独楽1は重心を貫く鉛直線の周りを回転しようとする。
このとき、地面から曲面に働く摩擦力が、回転方向とは逆に足下に働き、独楽1を前のめ
りにさせるように作用する。この結果、曲面4のいずれの位置を、開始接点とした場合で
あっても、開始接点の周囲にあるいずれかの頂点2(もしくは、突起20)が地面に近づ
いていき、頂点2(もしくは、突起20)が、短時間で、回転接点となる。よって、回し
はじめから独楽1の起き上がりまでの時間が短くなり、長時間の回転が得られる。
この結果、力の弱い子供でも、長時間、独楽1を回すことができ、十分に楽しむことが
できる。
【0029】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
実施の形態4では、独楽1に突起20が設けられた場合について説明する。
実施の形態1でも説明したが、独楽1の、頂点2、稜線3の所定部位、曲面4の所定部
位のいずれかあるいはそれぞれに突起20が設けられる。突起20が設けられる所定部位
は任意であるが、突起20と多面体6の重心を結ぶ線(すなわち回転軸10)が、地面に
対して垂直となるように、突起20が付けられる部位を地面に接して置ける部位が好適で
ある。突起20が回転接点9となった後で、安定した回転が得られるからである。
突起20がその重量を有することで、回転開始により曲面4で生じる摩擦力によって、
接点が突起20に移動しやすくなる。この結果、突起20が回転接点9となる。
突起20が回転接点9となった場合、突起20を基準とした回転軸10が、地面に対し
て垂直となるので、独楽1は、突起20を基準として、安定した回転を行う。結果として
、長時間にわたって、独楽1が回転する。
なお、このとき、使用者は、独楽1をどのような姿勢から回転させても、起き上がり動
作によって、突起20を基準とした回転を得ることができる。すなわち、開始時点の独楽
1の姿勢に係らず、使用者は、安定的に回転する独楽遊びを楽しむことができる。このた
め、子供であっても飽きることなく独楽遊びをできる。
また、様々な部位に突起20が設けられることで、回転開始時の独楽1の姿勢に係らず
、多数の回転接点9の候補が存在することになるので、力の弱い子供でも容易に独楽1を
回すことができる。加えて、異なる部位にある突起20の内、どれが回転接点9となるの
かは回してみるまでわからない。このため回転形状は様々に変化し、見るものをあきさせ
ない。
【0030】
図6は、本発明の実施の形態4における独楽の斜視図である。
図6から明らかな通り、独楽1には、その各頂点2と曲面4の所定部位(曲面4の略中
央の部位が好ましい。多面体6の重心と結ばれる線が、地面に対して垂直となるからであ
る)に突起20が設けられている。なお、突起20は、球形やピン状の部材が取り付けら
れてもよく、加工により多面体6に設けられたものでもよい。
図6に示される独楽1では、頂点2に設けられた突起20が、回転接点9となる場合と
、曲面4に設けられた突起20が回転接点9となる場合の2つがある。
図6(b)は、頂点2に設けられた突起20が、回転接点9となる場合を示している。
頂点2に設けられた突起20が回転接点となることで、逆三角形のような回転形状を有す
る。
これに対して、図6(c)は、曲面4に設けられた突起20が、回転接点9となる場合
を示している。図から明らかな通り、回転形状は、上向き三角形に近い形状を有している

このように、突起20が設けられることで、回転させやすくなるだけでなく、回転形状
が様々に変化する楽しさがある。
次に、図7は、本発明の実施の形態4における独楽の斜視図である。
図6の場合と異なり、突起20は、頂点2、曲面4の所定部位に加えて、稜線3の所定
部位にも設けられている。
ここで、稜線3の略中央に突起20が設けられることが好適である。バランスもよくな
る上に、稜線3に設けられた突起20を基準とする回転軸10が、地面に対して垂直とな
るからである。
この場合には、図6の場合に加えて、稜線3に設けられた突起20が回転接点9となり
うる。この場合には、回転形状は、ソロバンの珠の形となり、ほかとは異なる回転形状と
なる。
なお、曲面4に突起を付けると、曲面が余り膨らんでいない場合でも不安定になり、立
ち上がり安くなる。また、以上の突起20は他の突起が回転接点になることを阻害しない
ように設けるべきである。特に、曲面4に付ける突起が大きいと、この突起が回転接点に
なりやすく、普通の独楽の性質しか持たなくなる。曲面4に付ける突起がかなり小さく、
曲面4と地面がすれすれのときでも、回し方と空気の層により安定した回転が得られる。
図6、7は、曲面4の突起を開始接点とする場合であるが、曲面が地面と接した瞬間に
曲面に摩擦力が働き、独楽1は前のめりなる。この結果、接点の移動が可能となり、最寄
りの突起が回転を拾うことになる。その突起での回転が安定しないときは、さらに別の突
起へと接点が移っていく。こうして、様々な形状を持つ回転形状が得られる。
なお、図13に示すように、略準正多面体の場合は、頂点2や曲面4、稜線3に突起を
付けるとき、全ての頂点、全ての曲面、全ての稜線に付ける必要はない。安定した回転が
得られるように付ければ十分である。
このように、突起20を設ける場所を様々にすることにより、独楽1の回転形状も様々
になる。結果として、子供でも回しやすくなるだけでなく、飽きることなく楽しめるよう
になる。
以上のように、本発明の独楽1であれば、簡単に回すことができる上に、様々な回転形
状を楽しむことができる。
【0031】
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。
実施の形態5における独楽は、その仮想的骨格が直方体である。
例えば、縦、横、高さの比が1:1:2であるような直方体の各面を膨らませた独楽で
ある(図8参照)。
直方体そのものは、頂点を接点にして回すのは非常に困難であるが、略直方体の独楽1
は、頂点を接点として容易に、長時間は無理だが、回すことができる。ここでは、頂点の
すべてではなく、一部の頂点に重量のある突起を付けている(図8(a))。この結果、
幾分、不安定さが増し、横に置いた状態から回し始めるても、すぐに頂点を接点とする回
転状態に至る(図8(b))。さらに、4つの長い稜線の中央に突起を付けると、その突
起を接点とする安定した回転も得られる(図8(c))。
この結果、回すことが非常に困難である直方体そのものではないが、頂点を接点にして
容易に回せて、同時に、複数の回転形状を実現できる略直方体の独楽を提供できる。
【0032】
(実施の形態6)
次に実施の形態6について説明する。
実施の形態6における独楽は、その仮想的骨格が、4面が合同な三角形である四面体で
ある。
例えば、合同な三角形の3辺の長さの比が1:2:2であるような四面体の各面を膨ら
ませて球面状にした独楽1である(図9参照)。
正四面体でない四面体は一般に回転させるのは困難であるが、4面が合同な四面体は、
向かい合う辺の長さが等しく、独楽としての対称性を持っている。
図9の独楽1には、各稜線の中央部分に重量を持つ突起を付けている。この結果、横に
置いた独楽1は、回転を始めると、長い稜線に設けられた突起、もしくは、短い稜線に設
けられた突起を回転接点として安定回転を始める。この2つの回転形状は異なるもので、
ヴァリエーションを楽しめる。
3辺の長さが全て異なるときは、3個の回転形状が得られ、さらに楽しめる玩具を提供
できる。
なお、3辺の長さが大きく異なるときは、立ち上がるのは困難であるから、その長さに
は、配慮が必要である。
なお、図9の独楽1の曲面に突起を設けるときは、三角形の外心が、三角形が膨れて移
動した部位が好適である。
【0033】
(実施の形態7)
次に実施の形態6について説明する。
実施の形態7における独楽は、各曲面4に異なる色が配色されている(図10参照)。
例えば、多面体6が四面体である場合には、四面体のそれぞれの4つの曲面4に、異な
る色を配色する。
例えば、黄、赤、青の色の三原色と緑の配色とすることが好適である(図9参照)。
このような色分けがなされることにより、独楽1が回転するときに発する色味が様々に
なって非常に興味深いものとなる。回転により、曲面4ごとに異なる配色がなされた多面
体6の外観が、混色されて、様々な色味を見せるからである。既に、様々な色独楽が作ら
れているが、回転毎に色と形状が変わるパレットである色独楽を寡聞にして知らない。
特に、独楽1の回転形状は、どこが回転接点9となるかで変わるが、加えて色味も回転
接点9の位置によって変わる。このため、回転形状と色味とをあわせた回転中の見た目は
、理論上は14通りのバリエーションを持ち、見るものをあきさせない。
なお、多面体が四面体以上の面を有する多面体であれば、更なる種類の配色が可能であ
り、回転時の色味のバリエーションは更に広がる。
また、色の配色は、曲面4毎に変えるだけでなく、曲面4毎に異なる模様の彩色を施し
てもよい。
以上のように、実施の形態5における独楽1であれば、回転形状に色味の変化も加わっ
て、更なる面白みのある遊びを実現できる。
【0034】
(実施の形態8)
次に、実施の形態8について説明する。
図11は、本発明の実施の形態8における独楽の斜視図である。
図11に示される独楽1は、稜線3に対する曲面4が凸状に膨らんでいる形状を有して
いる。
実施の形態1から6においては、稜線3が曲面4の尾根になっている独楽1について説
明したが、これから述べるように、稜線3が曲面4の谷になって、曲面4が凸状に膨らん
でいる独楽1であっても、同様に楽しむことができる。
また、曲面4を詳しく表現すると、曲面4は球面の一部を形成するものであって、球面
の形成しうる仮想的球の中心は、曲面4の端部となる複数の頂点2から形成されうる仮想
的平面図形(三角形や四角形等)の重心と略一致している。
この構成では、頂点部分の窪みや稜線部分のくびれ具合は浅く、突起を付けやすい。さ
らに、独楽1の加工も容易である。
図11中のA,B,C,Dは、仮想的な正四面体の頂点2部分に該当し、この部位に突
起20が設けられている。頂点2部分は窪んでいる。
図11中のP,Q,R,S,T、Uは、稜線3の上の所定部位に該当し、この部位に突
起20が設けられている。稜線3は谷である。
図11中のX,Y、Z、Wは、曲面4の所定部位に該当し、この部位に突起20が設け
られている。
このように多種多様な部位に突起20が設けられていることで、独楽1を回転させた場
合に、様々な回転軸によって独楽1は回転する。また、回転軸が異なれば、当然に回転形
状も異なるので、回転形状のバリエーションの広い独楽遊びができる。
また、実施の形態1〜5で説明した独楽1と異なり、実施の形態6における独楽1は、
頂点2となるA、B,C,Dの位置が、周囲で膨らんでいる曲面4に比較して落ち込んで
いるので、地面に独楽1を置いたときに3点で支持されて安定した状態である(頂点2部
分に突起が付けられているときは、その突起と他の2点で支持される)。しかし、この安
定性は、4個の球が分離して接合している場合に比べて低い。
このため、回しはじめには、さほどの力を要せず、回転が始まると、膨らんだ形状によ
り、面白い回転形状を有して、楽しく独楽遊びができる。また、それなりに安定するので
、独楽が机の上から転がり落ちたりすることを防止できる。
以上のように、本発明の独楽1であれば、器用さや力の弱い子供であっても、簡単に回
転させることができ、かつバリエーションに富んだ回転状態を楽しむことができる。飽き
っぽくならないので、教育的配慮にも優れている。高学年になれば、自分で制作すること
も可能で、球や球面、また、多面体についての理解が深まると思える。
【0035】
(実施の形態9)
次に、実施の形態9について説明する。
図12(a)に示すように、実施の形態8で示した立体の突起を設けない状態の多面体
は、投げると転がりやすく、いずれ3点で支持されて、安定するのだが、この時、上にく
るのは、頂点ではなく、膨れた面であり、そこに、数字、もしくは、数値が確認できる図
形や模様が十分に描けて、4面のサイコロとして提供できる。
また、図12(b)に示すように、仮想的骨格が正六面体で、曲面が既に述べた仮想的
球からはみ出ている立体の場合、上にくるのは、窪んだ頂点部分であり、そこにも、数字
、もしくは、数値が確認できる図形や模様が十分に描けて、サイコロとして提供できるが
、サイコロの目の個数は頂点の数と等しい。つまり、仮想的骨格が6面を有する正6面体
のとき、サイコロの目の個数は8個ある。6面より多い場合も同様で、頂点の数だけ目の
個数がある。
【0036】
(膨張率と重心比、凹率、安定性について)
次に、付属資料としてであるが、独楽1の膨張率と重心比、凹率、安定性について、多
面体の仮想的骨格が正四面体で、互いに合同な曲面がそれぞれ球面の一部を形成している
場合において、図14を用いて説明する。
図14(a)では、正四面体の各面14を覆う曲面4は、頂点Aを中心とする球の球面
の一部である、点Gは正四面体の重心で、これを中心とする球の球面4Gの一部が表され
ている。この場合、曲面は4Gの内部にある。
膨張率を、BQ/BTで表すことにし、重心の高さと独楽の高さの割合を重心比と呼べ
ば、重心比は、GQ/AQで表せる。この図のとき、膨張率は約45%、重心比は約39
%である。
図14(b)では、面14の重心である点Bが球の中心である。この場合、曲面は、球
面4Gの外部に膨らんでいて、膨張率は約141%、重心比は約45%である。
以上のことから、いずれの場合も、異なる回転形状が得られ、逆立ちしたときもさほど
重心は上がらないことがわかり、逆立ちしたときの回転は安定させ得ると言える。
さらに、図14(b)では、独楽1は頂点2部分が窪み、膨れた球面の3点で支持され
るが、窪み(SC)の半径(BC)に対する割合SC/BCを凹率と呼ぶことにし、3点
支持の安定性を、重心の高さ(GS)で、重心真下の点Sと支持点Rとの距離(SR)を
割った数値SR/GSで表すとき、この図の場合の凹率は約6%、安定性は0.3である
。このことから、3点で支持されているが、安定性はさほどなく、転がりやすく、また、
頂点部分の窪みは浅く、同時に、稜線部分のくびれも小さくて、突起を付けやすいことが
分かる。
実施の形態で述べてきた独楽1は、複数の回転形状を持ちえる正多面体や準正多面体、
直方体、その他の立体の各面を、球面状に膨らませることにより、回転時の接点の移動を
なめらかにして起きあがらせるのであるが、複数の安定した回転形状を実現するためには
、素通りしがちな回転接点の部位に突起を設ける必要があるが、膨張率が100%を超え
る場合、突起の付けやすさの判断材料として凹率を導入した。
また、サイコロとして使えるかどうかの判断材料として安定性を導入した。
仮想的骨格が正四面体の場合、膨張率を上げて200%にすると、重心比は約40%、
凹率は約22%、安定性は約0.51となる。因みに、膨張率をいくら上げても、4個の
球体が2個ずつ接合した立体にはならないが、その安定性は、膨張率を大きくしたときは
約0.71になり、4個の球体の場合は約0.82である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、独楽やさいころなど、回転させることで遊ぶ玩具などに好適に利用できる。
また、多面体や球についての理解を深める教材にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における独楽の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における独楽の回転状態を示す側面図
【図3】本発明の実施の形態1における独楽の回転形状を示す側面図
【図4】本発明の実施の形態2における独楽の透過斜視図
【図5】本発明の実施の形態3における独楽の断面図
【図6】本発明の実施の形態4における独楽の斜視図
【図7】本発明の実施の形態4における独楽の斜視図
【図8】本発明の実施の形態5における独楽の斜視図
【図9】本発明の実施の形態6における独楽の斜視図
【図10】本発明の実施の形態7における独楽の斜視図
【図11】本発明の実施の形態8における独楽の斜視図
【図12】本発明の実施の形態9の斜視図
【図13】略準正四面体の独楽の斜視図
【図14】膨張率、重心の位置、凹率、安定性を説明するための図
【符号の説明】
【0039】
1 独楽
2 頂点
3 稜線
4 曲面
5 半径
6 多面体
7 開始接点
8 地面
9 回転接点
10 回転軸
11 重心
12 濃く見える回転形状
13 薄く見える回転形状
14 正四面体の面
20 突起
30 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の頂点と、前記複数の頂点同士を結ぶ稜線と、前記稜線同士を結ぶ曲面を有する多面
体を有すると共に回転させることで遊ぶ玩具であって、
前記稜線は略円弧を有し、
前記多面体は、前記玩具が安定回転中に地面と接する回転接点と前記多面体の重心とを結
んで形成される複数の回転軸を有し、
前記複数の回転軸を基準として形成される、異なる形状を持つ複数の回転形状を有し、
前記複数の回転形状のいずれかが、確率的に実現される玩具。
【請求項2】
前記曲面は球面の一部を形成する請求項1記載の玩具。
【請求項3】
前記玩具の中心部に空洞を有する請求項1から2のいずれか記載の玩具。
【請求項4】
前記多面体の前記すべての頂点部分に、もしくは、前記一部の頂点部分に、突起が設けら
れた請求項1から3のいずれか記載の玩具。
【請求項5】
前記多面体の前記すべての稜線の所定部位に、もしくは、前記一部の稜線の所定部位に、
突起が設けられた請求項1から4のいずれか記載の玩具。
【請求項6】
前記多面体の前記すべての曲面の所定部位に、もしくは、前記一部の面の所定部位に、突
起が設けられた請求項1から5のいずれか記載の玩具。
【請求項7】
前記複数の頂点は、1個の仮想的球の球面上にあり、
前記曲面の複数の端点は平面上にあり、
前記多面体の重心は、
前記複数の端点から形成される平面図形を面とする仮想的多面体の重心と一致し、
かつ、前記仮想的球の中心とも一致する請求項1から6のいずれか記載の玩具。
【請求項8】
前記曲面は、前記仮想的球の球面内部にある請求項7記載の玩具。
【請求項9】
前記頂点部分と前記稜線部分に面取りが施されている請求項1から8のいずれか記載の玩
具。
【請求項10】
前記曲面は前記仮想的球の球面の外部にある請求項7記載の玩具。
【請求項11】
前記多面体は、前記仮想的多面体が正多面体であり、前記全ての曲面は互いに合同である
請求項10記載の玩具。
【請求項12】
前記複数の面のそれぞれに、異なる配色が施された請求項1から11のいずれか記載の玩
具。
【請求項13】
前記玩具は独楽である請求項1から12のいずれか記載の玩具。
【請求項14】
前記玩具は、前記曲面の中央部分、もしくは、前記頂点の周辺部分に、異なる数字、また
は、数値が確認できる図形や模様が描かれているサイコロである請求項11記載の玩具。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate