説明

珪素微粒子の製造方法

【課題】粒子径のそろった珪素微粒子を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、不活性雰囲気下において、珪素源と炭素源とを含む混合物を焼成する焼成工程と、混合物を焼成することにより生成した気体を急冷し、珪素微粒子と酸化珪素とを含んだ複合粉体を得る急冷工程と、酸化雰囲気下において、複合粉体を加熱する加熱工程と、加熱された複合粉体から一酸化珪素及び二酸化珪素を除去する除去工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易な珪素微粒子の製造方法として、珪素微粒子(Si)と酸化珪素(SiOx、X=1又は2)からなる複合粉体から珪素微粒子を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。複合粉体は、珪素源と炭素源とを含む混合物を不活性雰囲気下において焼成し、焼成によって生成した気体を急冷することにより得られる。得られた複合粉体をフッ酸及び酸化剤を含む溶液に浸漬して、酸化珪素をエッチングしていた。これによって、複合粉体から酸化珪素が除去され、珪素微粒子が得られていた。
【0003】
エッチング溶液は、酸化珪素をエッチングするだけでなく、珪素微粒子もエッチングする。従って、エッチング時間やエッチング濃度を調整することにより、所望の粒子径の珪素微粒子が得られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−112656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複合粉体に含まれる珪素微粒子の粒子径は様々であり、幅広い粒度分布となる。エッチングを行って、粒子径を小さくすることはできても、粒度分布は変わらない。従って、粒子径に差がある珪素微粒子は、所望の粒子径から外れるため、粒子径のそろった珪素微粒子を効率よく得ることはできなかった。
【0006】
また、粒度分布は、製造する度に異なる。このため、所望の粒子径が多く得られたエッチング条件が見つかったとしても、次の製造では、最適なエッチング条件とは限らない。従って、最も粒子径のそろった珪素微粒子群に合わせてエッチングを行うことは、困難であった。この点からも粒子径のそろった珪素微粒子を効率よく得ることはできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、従来よりも粒子径のそろった珪素微粒子を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、以下の特徴を持つ本発明を完成させた。本発明の特徴は、不活性雰囲気下において、珪素源と炭素源とを含む混合物を焼成する焼成工程と、前記混合物を焼成することにより生成した気体を急冷し、珪素微粒子と酸化珪素とを含んだ複合粉体を得る急冷工程と、酸化雰囲気下において、前記複合粉体を加熱する加熱工程と、加熱された前記複合粉体から一酸化珪素及び二酸化珪素を除去する除去工程とを備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の特徴によれば、酸化雰囲気下において複合粉体を加熱する。これにより、複合粉体に含まれる珪素微粒子の表面は酸化され、二酸化珪素(SiO)が形成される。粒子径の小さい珪素微粒子ほど二酸化珪素が形成されにくい。このため、粒子径の大きな珪素微粒子の表面は、より多く二酸化珪素に酸化され、粒子径の小さな珪素微粒子の表面は、二酸化珪素にあまり酸化されない。従って、従来よりも粒子径のそろった珪素微粒子が得られる。その結果、粒度分布は狭くなるため、効率よく珪素微粒子が得られることになる。
【0010】
本発明の他の特徴は、前記除去工程は、前記複合粉体を解砕する工程と、解砕した前記複合粉体を遠心分離する工程とを有することを要旨とする。
【0011】
本発明の他の特徴は、前記加熱工程では、不活性雰囲気で前記複合粉体を加熱した後に、酸化雰囲気で前記複合粉体を加熱することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る珪素微粒子の製造方法によれば、粒子径のそろった珪素微粒子を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る珪素微粒子の製造に用いられる製造装置1の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る珪素微粒子の製造方法一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)製造装置1の概略構成、(2)珪素微粒子の製造方法、(3)実施例、(4)作用・効果、(5)その他実施形態、について説明する。
【0015】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
(1)製造装置1の概略構成
本実施形態に係る珪素微粒子の製造に用いられる製造装置1の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る珪素微粒子の製造に用いられる製造装置1の概略構成図である。
【0017】
図1に示されるように、製造装置1は、珪素源と炭素源を含む混合物を容器Wに収容し加熱雰囲気を形成する加熱容器2と、加熱容器2を保持するステージ8と、容器Wに収容された混合物を加熱する発熱体10a及び発熱体10bと、加熱容器2と発熱体10a及び発熱体10bを覆う断熱材12と、加熱容器2から吸引管21を介して反応ガスを吸引するブロア23と、複合粉体を収容する集塵機22と、ガスを供給する供給管24を有する吸引装置20と、を備える。吸引装置20は加熱容器2内に加熱及び不活性雰囲気を維持しながらSiOガスを吸引することができる。吸引装置20内は、アルゴンガスが循環するように設けられている。また設定圧力により自動開閉する電磁弁25を備える。
【0018】
(2)珪素微粒子の製造方法
本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法を説明するためのフローチャートである。図2に示されるように、珪素微粒子の製造方法は、工程S1から工程S4を有する。
【0019】
(2.1)焼成工程S1
工程S1は、不活性雰囲気下において、珪素源と炭素源とを含む混合物を焼成する焼成工程である。工程S1は、珪素源と炭素源とから混合物を生成する工程S11(混合物生成工程)と、工程S11で生成された混合物を焼成する工程S12(混合物焼成工程)とを有する。
【0020】
珪素源、すなわち、珪素含有原料としては、液状の珪素源と固体状の珪素源とを併用することができる。ただし、少なくとも一種は、液状の珪素源から選ばれなくてはならない。
【0021】
液状の珪素源としては、アルコキシシラン(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)及びテトラアルコキシシランの重合体が用いられる。アルコキシシランの中ではテトラアルコキシシランが好適に用いられる。具体的には、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられる。ハンドリングの点からは、エトキシシランが好ましい。テトラアルコキシシランの重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子量重合体(オリゴマー)及びさらに重合度が高いケイ酸ポリマーで液状の珪素源が挙げられる。
【0022】
これら液状の珪素源と併用可能な固体状の珪素源としては、酸化珪素が挙げられる。酸化珪素には、SiOの他、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化珪素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉体)等が挙げられる。
【0023】
これら珪素源のなかでも、均質性やハンドリング性の観点から、テトラエトキシシランのオリゴマー及びテトラエトキシシランのオリゴマーと微粉体シリカとの混合物等が好適である。
【0024】
炭素源、すなわち、炭素含有原料は、不純物元素を含まない触媒を用いて合成され、加熱及び/又は触媒、若しくは架橋剤により重合又は架橋して硬化しうる任意の1種もしくは2種以上の有機化合物から構成されるモノマー、オリゴマー及びポリマーである。
【0025】
炭素含有原料の好適な具体例としては、不純物元素を含まない触媒を用いて合成されたフェノール樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。特に、残炭率が高く、作業性に優れているレゾール型またはノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0026】
本実施形態に有用なレゾール型フェノール樹脂は、不純物元素を含まない触媒(具体的には、アンモニアまたは有機アミン)の存在下において、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、ビスフェノールAなどの1価または2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類とを反応させて製造する。
【0027】
触媒として用いる有機アミンは、第一級、第二級、および第三級アミンのいずれでもよい。有機アミンとしては、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、N−メチルアニリン、ピリジン、モルホリン等を用いることができる。
【0028】
フェノール類とアルデヒド類とをアンモニアまたは有機アミンの存在下に反応させてレゾール型フェノール樹脂を合成する方法は、使用触媒が異なる以外は、従来公知の方法を採用できる。
【0029】
即ち、フェノール類1モルに対し、1〜3モルのアルデヒド類と0.02〜0.2モルの有機アミン又はアンモニアを加え、60〜100℃に加熱する。
【0030】
一方、本実施形態に有用なノボラック型フェノール樹脂は、上記と同様の1価または2価フェノール類とアルデヒド類とを混合し、不純物元素を含まない酸類(具体的には、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸またはシュウ酸など)を触媒として反応させて製造することができる。
【0031】
ノボラック型フェノール樹脂の製造も従来公知の方法を採用できる。即ち、フェノール類1モルに対し、0.5〜0.9モルのアルデヒド類と0.02〜0.2モルの不純物元素を含まない無機酸又は有機酸を加え、60〜100℃に加熱する。
【0032】
なお、不純物の一例として、Fe、Ni、Cu、Cr、V、W等の重金属元素、Li、Na、K等のアルカリ金属元素、並びにBe、Mg、Ca、B、Al、Ga等のアルカリ土類若しくは両性金属元素などが挙げられる。
【0033】
工程S11では、珪素含有原料と炭素含有原料とを混合した原料混合物に、必要に応じて重合又は架橋用の触媒又は架橋剤を加え、溶媒中で溶解する。重合又は架橋反応を生じさせて混合物を生成する。原料混合物は、150℃程度で加熱される。これによって、混合物を乾燥させる。Si/C比は、0.5〜3.0が好ましい。
【0034】
工程S12では、工程S1で得られた混合物を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程である。混合物を容器Wに収容する。発熱体10a及び発熱体10bを用いて、不活性気体の雰囲気下で加熱焼成して、混合物を炭化及び珪化する。これによって、炭素及び珪素を含んだ気体が発生する。具体的には、以下の式(1)に示されるように、一酸化珪素(SiO)が生成される。
【0035】
SiO+C →SiO+CO ・・・(1)
不活性気体雰囲気とは、非酸化性雰囲気である。不活性気体は、例えば、真空、窒素、ヘリウムまたはアルゴンを含む。
【0036】
(2.2)急冷工程S2
次に、工程S2を行う。工程S2は、混合物を焼成することにより生成した気体を急冷し、複合粉体を得る急冷工程である。ブロア23を作動させる。そして吸引管21を介して加熱容器2内からアルゴンガス気流に乗せて生成ガスを抜き出す。断熱材12の外部は室温に保たれているため生成ガスは室温まで急冷される。そして生成ガスから珪素微粒子(Si)を含んだ複合粉体が得られる。具体的には、1600℃未満の温度にて冷却することによって、以下の式(2)で示されるように、珪素微粒子を含んだ複合粉体が得られる。
【0037】
2SiO → Si+SiO ・・・(2)
ただし、式(2)の反応は、完全に進行するわけではないため、複合粉体は、SiとSiOだけではなく、SiOも含んでいる。すなわち、複合粉体は、不純物を除いて、SiとSiOx(x=1又は2)からなっている。
【0038】
得られた複合粉体を集塵機22に集塵する。アルゴン気流は、供給管24を介して加熱容器2に送り込まれる。
【0039】
(2.3)加熱工程S3
次に、工程S3を行う。工程S3は、複合粉体を加熱する加熱工程S3である。図2に示されるように、工程S3は、不活性雰囲気下において複合粉体を加熱する加熱処理工程S31と、酸性雰囲気下において複合粉体を加熱する工程S32とを有する。
【0040】
工程S31は、不活性雰囲気下において複合粉体を加熱する加熱処理工程S31である。工程S31は、珪素微粒子の結晶性を向上させるために行われる。不活性雰囲気にするため、例えば、希ガスが用いられる。工程S31は、800℃から1300℃の温度範囲で行われる。良好な結晶性を得るために、工程S31は、900℃から1100℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0041】
工程S32は、酸性雰囲気下において複合粉体を加熱する工程である。酸性雰囲気下において複合粉体を加熱することにより、複合粉体に含まれる珪素微粒子の表面が酸化される。具体的には、珪素微粒子の表面を形成する珪素が二酸化珪素へと酸化される。このとき、粒子径の大きい珪素微粒子の方が、粒子径の小さい珪素微粒子に比べて、表面が酸化される。従って、粒子径の大きい珪素微粒子の粒子径が、酸化によって粒子径が小さくなる割合に比べると、粒子径の小さい珪素微粒子は、粒子径はあまり小さくならない。従って、粒子径のそろった珪素微粒子が得られる。
【0042】
また、加熱温度を変化させることにより、珪素微粒子の表面が二酸化珪素へと酸化される割合も異なるため、珪素微粒子の粒子径を制御することができる。具体的には、加熱温度を高温にするほど、珪素微粒子の表面が二酸化珪素へとより酸化される。従って、加熱温度を高温にするほど、得られる珪素微粒子の平均粒子径が小さくなる。
【0043】
工程S31と工程S32とは、同時に行っても良い。工程S32の加熱温度が結晶性を向上させる温度と同等である場合は、工程S31を省略することができる。
【0044】
(2.4)除去工程S4
次に、工程S4を行う。工程S4は、複合粉体から酸化珪素を除去する除去工程である。図2に示されるように、本実施形態において、工程S4は、複合粉体を解砕する解砕工程S41と、解砕した複合粉体を遠心分離する遠心分離工程S42と、遠心分離して得られた複合粉体から酸化珪素を除去する酸化珪素除去工程S43とを有する。
【0045】
工程S41は、複合粉体を解砕する工程S41である。加熱工程S3により珪素微粒子の表面が二酸化珪素へと酸化された複合粉体を解砕する。解砕には、例えば、ボールミルが用いられる。この工程により、複合粉体は、細かく解砕される。。
【0046】
工程S42は、遠心分離によって、解砕した複合粉体を遠心分離により分離する工程である。加熱工程S3を行っても、全ての珪素微粒子の粒子径が必ずしもそろうわけではなく、他の粒子径に比べると大きな粒子径の珪素微粒子が存在することもある。従って、工程S41によって、複合粉体は、加熱工程S3により粒子径のそろった珪素微粒子及び珪素微粒子の表面に形成された二酸化珪素を含む複合粉体と、加熱工程S3により粒子径のそろった珪素微粒子、そろった粒子径よりもやや大きな粒子径の珪素微粒子、及び珪素微粒子の表面に形成された二酸化珪素を含む複合粉体とに解砕される。工程S42において、遠心分離をすることにより、粒子径のそろった珪素微粒子のみを含む複合粉体を得ることができる。。
【0047】
工程S43は、遠心分離によって得られた複合粉体から二酸化珪素を含む酸化珪素を除去する工程である。例えば、エッチングによって、酸化珪素を除去することができる。フッ酸及び酸化剤を含むエッチング溶液に浸漬することによって、酸化珪素を除去できる。これによって、珪素微粒子が製造される。
【0048】
(3)実施例
本実施形態に係る珪素微粒子の平均粒子径及び粒度分布を調べるために、以下の実験を行った。なお、本発明は、これら実施例に何ら制限されない。
【0049】
ケイ素源としてエチルシリケート620gと、炭素源としてのフェノール樹脂288gと、重合触媒としてのマレイン酸水溶液92g(35重量%)とからなる混合溶液を図1の加熱容器2内に配置した。混合溶液を150℃で加熱して固化させた。次に、得られた混合物を窒素雰囲気下において90℃で1時間炭化させた。得られた炭化物をアルゴン雰囲気下において1600℃で加熱した。
【0050】
次に、加熱容器2内で生成された反応ガスを、吸引装置20とアルゴンガスのキャリアガスを用いて加熱容器2の外へ搬送し、その後急冷して複合粉体を得た。
【0051】
得られた複合粉体をアルゴン雰囲気下において、1100℃で1時間加熱した。その後、複合粉体を酸性雰囲気下(アルゴン99%、酸素1%)において、加熱した。加熱温度は、600℃(実施例1)、700℃(実施例2)、800℃(実施例3)、900℃(実施例4)、1000℃(実施例5)、1100℃(実施例6)とし、複合粉体をそれぞれ8g用いた。
【0052】
それぞれの加熱温度で処理した複合粉体2gを水溶媒中で、ボールミルを用いて解砕した。ボールミルは、タングステンカーバイド(WC)製の容器(ジャー)及びボールを用いた。水溶媒として、超純水20mlを用いた。600rpmの回転数で5分解砕し、10分静止を繰り返した。解砕を合計7時間行った。
【0053】
解砕により得られたスラリーを遠心分離した。温度0℃、22000×gの遠心加速度で、遠心分離を30分間行った。
【0054】
遠心分離により得られた上澄み液を用いて、TEM観察を行った。結果を表1に示す。
【表1】

【0055】
表1に示されるように、酸化雰囲気下における加熱温度が高いほど、標準偏差が小さくなっている。すなわち、加熱温度が高いほど、珪素微粒子の粒度分布が狭くなることが分かる。従って、酸性雰囲気下において複合粉体を加熱することによって、加熱しない場合と比べると、珪素微粒子の粒度分布が狭くなることが分かる。すなわち、酸性雰囲気下において複合粉体を加熱することによって、粒子径のそろった珪素微粒子が得られることが分かった。
【0056】
また、酸化雰囲気下における加熱温度が高いほど、平均粒子径が小さいことが分かった。このことから、加熱温度を調整することによって、平均粒子径を制御することができることが分かった。
【0057】
(4)作用・効果
本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法によれば、不活性雰囲気下において、珪素源と炭素源とを含む混合物を焼成する焼成工程と、混合物を焼成することにより生成した気体を急冷し、珪素微粒子と酸化珪素とを含んだ複合粉体を得る急冷工程と、酸化雰囲気下において、複合粉体を加熱する加熱工程と、加熱された複合粉体から一酸化珪素及び二酸化珪素を除去する除去工程とを備える。これにより、複合粉体に含まれる珪素微粒子の表面は酸化され、二酸化珪素が形成される。粒子径の小さい珪素微粒子ほど二酸化珪素が形成されにくい。このため、粒子径の大きな珪素微粒子の表面は、より多く二酸化珪素に酸化され、粒子径の小さな珪素微粒子の表面は、二酸化珪素にあまり酸化されない。従って、従来よりも粒子径のそろった珪素微粒子が得られる。すなわち、粒度分布幅の小さい珪素微粒子が得られる。
【0058】
本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法によれば、除去工程は、複合粉体を解砕する工程と、解砕した複合粉体を遠心分離する工程とを有する。複合粉体を解砕することによって、複合粉体は、加熱工程S3により粒子径のそろった珪素微粒子及び珪素微粒子の表面に形成された二酸化珪素を含む複合粉体と、加熱工程S3により粒子径のそろった珪素微粒子、そろった粒子径よりもやや大きな粒子径の珪素微粒子、及び珪素微粒子の表面に形成された二酸化珪素を含む複合粉体とに解砕される。これらの複合粉体を遠心分離することによって、粒子径のそろった珪素微粒子のみを含む複合粉体を得ることができる。従って、さらに粒子径のそろった珪素微粒子が得られる。
【0059】
(5)その他実施形態
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。
【0060】
例えば、除去工程S4では、複合粉体を解砕して、遠心分離を行った後に、珪素微粒子と酸化珪素とに分離したが、必ずしもこれに限られない。除去工程S4では、エッチングにより珪素微粒子と酸化珪素とを分離しても良い。具体的には、工程S3により、酸性雰囲気下において加熱された複合粉体をフッ酸及び酸化剤を含むエッチング溶液に浸漬する。これにより、酸化珪素がエッチング溶液に溶解し、珪素微粒子がエッチング溶液に残る。珪素微粒子が残ったエッチング溶液をろ過することによって、珪素微粒子を得ることができる。
【0061】
本実施形態において、除去工程S4によって、珪素微粒子を単離していたが、必ずしも単離する必要はなく、目的に応じて、二酸化珪素に覆われた珪素微粒子であっても良い。
【0062】
本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…加熱装置、2…加熱容器、8…ステージ、10a、10b…発熱体、12…断熱材、20…吸引装置、22…集塵機、23…ブロア、24…供給管、25…電磁弁、W…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性雰囲気下において、珪素源と炭素源とを含む混合物を焼成する焼成工程と、
前記混合物を焼成することにより生成した気体を急冷し、珪素微粒子と酸化珪素とを含んだ複合粉体を得る急冷工程と、
酸化雰囲気下において、前記複合粉体を加熱する加熱工程と、
加熱された前記複合粉体から一酸化珪素及び二酸化珪素を除去する除去工程とを備えた珪素微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記除去工程は、前記複合粉体を解砕する工程と、解砕した前記複合粉体を遠心分離する工程とを有する請求項1に記載の珪素微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、不活性雰囲気下において前記複合粉体を加熱した後に、酸化雰囲気下において前記複合粉体を加熱する請求項1又は請求項2に記載の珪素微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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