説明

珪酸塩組成物

固体粒状アルカリ金属珪酸塩組成物は、粒状アルカリ金属珪酸塩と、炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は30μm未満の容積平均粒度を有する)との混合物からなる。この混合物は湿った条件下で、ケーキングに対して抵抗性であることが認められた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ金属珪酸塩組成物、特に、ケーキング(caking)に対して抵抗性のアルカリ金属珪酸塩組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体アルカリ金属珪酸塩は多数の用途において広く使用されている。重要な用途の一つは、例えば、耐蝕性、ビルディング性(building property)、土壌懸濁性及び漂白安定性を提供するための洗浄剤組成物の添加剤としての用途である。この用途においては、珪酸塩が、水に添加したとき、容易に溶解することが重要である。不幸にして、水に容易に溶解する珪酸塩は、しばしば、湿潤条件に暴露したとき、固化する(cake)傾向も有する。このことにより、かかる珪酸塩を含有する洗浄剤組成物を製造する際に加工の困難性が生じ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、水に容易に溶解するが、湿った雰囲気中で取り扱った際にケーキング(固化)に対して抵抗性である固体アルカリ金属珪酸塩組成物が必要とされている。本発明の目的はかかる固体珪酸塩組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、固体粒状(particulate)アルカリ金属珪酸塩組成物は粒状アルカリ金属珪酸塩と、炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は30μm未満の容積平均粒度(volume average particle size)を有する)との混合物からなる。
【0005】
本発明によれば、更に、粒状アルカリ金属珪酸塩、特に、本質的にアルカリ金属珪酸塩からなる粒子と、炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は30μm未満の容積平均粒度を有する)とを混合することからなる珪酸塩組成物の製造方法が提供される。
【0006】
アルカリ金属珪酸塩の粒子と、粒状のカルボン酸塩とから本質的になる混合物の形のかかる組成物は、サンプルチューブ内で長時間、比較的高い湿度に暴露したとき、自由流動性(free-flowing)であるのに対し、カルボン酸塩を混合していない同様の珪酸塩は同様の湿度に数時間暴露した後に固体タブレットに転化し、24時間以内に湿潤した固体ガラス状タブレットに転化することが認められた。
【0007】
本発明の別の要旨によれば、
(a) 本質的にアルカリ金属珪酸塩からなる粒子;及び
(b) 炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は
30μm未満の容積平均粒度を有する);
の混合物からなるアルカリ金属珪酸塩組成物の形の、耐ケーキング性でかつ水溶性の固体粒状材料が提供される。
【0008】
アルカリ金属珪酸塩は任意のアルカリ金属の珪酸塩であり得るが、珪酸ナトリウム及びカリウムであることが好ましく、最も一般的には珪酸ナトリウムである。
【0009】
本発明は任意のSiO2:M2O(Mはアルカリ金属である)のモル比を有する珪酸塩に適用し得るが、比較的高い溶解性を有する珪酸塩に特に有用である。特に、珪酸塩は、好ましくは3.0:1 未満、より好ましくは2.5:1 未満のSiO2:M2Oのモル比を有する。通常、珪酸塩は1.5:1を越えるSiO2:M2Oのモル比を有する。
【0010】
本発明は広い範囲の粒度、例えば約1200μmまでの粒度、典型的には約40μm〜1200μm、例えば、40μm〜1000μmの粒度を有するアルカリ金属珪酸塩にケーキングに対する抵抗性を提供し得る。
【0011】
例えば、150〜1200μm、典型的には250〜1200μm、例えば400〜1000μmの平均粒度(篩分けによって測定)を有する商業的に入手し得る顆粒状アルカリ金属珪酸塩は、カルボン酸と混合して、ケーキングに対する抵抗性を有する組成物を提供するのに適当であり、本発明に従ってカルボン酸塩を添加することによって、150μm未満の容積平均粒度を有する粉末状アルカリ金属珪酸塩のケーキングに対する抵抗性も改善される。通常、珪酸塩の容積平均粒度は40μmより大きい。これらの二つの粒度は商業的に入手し得るアルカリ金属珪酸塩製品について典型的なものであるが、本発明は上記範囲以外の容積平均粒度を有する珪酸塩についても実施し得ると考えられる。
【0012】
好ましいカルボン酸塩はI 族金属の塩、II族金属の塩又は亜鉛塩である。特に有用な塩はナトリウム塩又はマグネシウム塩である。
【0013】
カルボン酸は飽和又は不飽和カルボン酸である。カルボン酸は炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するモノカルボン酸であることが好ましい。好ましい塩は10〜24個の炭素原子を含有するモノカルボン酸の塩であり、特に好ましいモノカルボン酸は14〜24個の炭素原子を含有している。ステアリン酸の塩が本発明で使用するのに特に適当であることが認められた。
【0014】
カルボン酸塩の容積平均粒度は30μm未満であり、20μm未満であることが好ましい。通常、カルボン酸塩の容積平均粒度は1μmを越える。粒度を測定する方法は種々、知られており、全て、若干、異なる結果を与える。本発明においては、粒度分布はマルバーン マスターサイザー[Malvern Mastersizer;登録商標]を使用して光散乱により得られる。容積平均粒度は、粒度分布から計算して、50%の累積容量(50% cumulative volume)における平均粒度である。300 RFレンズとMS17サンプル提示装置を有するマルバーン マスターサイザー S型が使用される。ウースターシャー州、マルバーン所在のMalvern
Instruments社によって製造されているこの装置は低電力He/Neレーザーを利用し、フラウンホーファー回折の原理を使用する。マルバーン マスターサイザーにより材料の容積粒度分布を測定する。容積平均粒度(d50)又は50パーセンチルはこの装置によって生じるデーターから容易に得られる。90パーセンチル(d90)のごとき他のパーセンチルは容易に得られる。
【0015】
カルボン酸塩の好ましい量は、珪酸塩組成物の重量の0.1〜15重量%、例えば0.5〜10重量%である。
【0016】
最適な量は、ある程度、珪酸塩とカルボン酸塩の粒度に依存する。例えば400〜1000μmの平均粒度を有する顆粒状アルカリ金属珪酸塩を、30μm未満の容積平均粒度を有するカルボン酸塩、約0.5〜5重量%と混合して、良好な耐ケーキング性を有する珪酸塩組成物を製造し得る。アルカリ金属珪酸塩が150μm未満、例えば40〜150μmの容積平均粒度を有する粉末である場合には、カルボン酸塩の好ましい量は組成物の1〜10重量%である。粉末状珪酸塩については、カルボン酸塩の量は1〜15重量%であることがより好ましい。
【0017】
好ましい量はカルボン酸塩の粒度にも依存する。カルボン酸塩が15〜25μmの容積平均粒度を有する場合には、顆粒状珪酸塩(例えば400〜1000μmの粒度を有する)についての好ましい量は、組成物の2〜4重量%である。カルボン酸塩の容積平均粒度が2〜8μmである場合には、好ましい量は0.5〜2重量%である。同様に、粉末状珪酸塩(粒度が150μm未満、例えば40〜150μm)については、15〜25μmの容積平均粒度を有するカルボン酸塩の好ましい量は4〜5重量%であり、これに対して、カルボン酸塩の容積平均粒度が2〜8μmである場合には、好ましい量は組成物の1〜2重量%である。
【0018】
本発明の組成物は粒状アルカリ金属珪酸塩(即ち、アルカリ金属珪酸塩から本質的になる粒子)と、粒状カルボン酸塩(即ち、カルボン酸塩から本質的になる粒子)とを混合して、アルカリ金属珪酸塩とカルボン酸塩とから本質的になる、水溶性の、耐ケーキング性でかつ自由流動性の固体粒状組成物を製造することによって製造し得る。粒状材料を混合するのに任意の適当な装置を使用し得るが、均質な混合物を得ることが重要であると考えられる。通常、カルボン酸塩とアルカリ金属珪酸塩との間では粒度に大きな差があり、このことが均質な混合物を得ることを困難にしている。ホバルト(Hobart)ミキサーによって提供されるごとき穏やかであるが、効率的な混合が本発明の組成物を製造するのに適当であることが認められている。
【実施例】
【0019】
本発明を以下の実施例により例示する。
【0020】
実施例1
オランダ BV 所在、INEOS Silicas社から、粉末についてはピラミッド(Pyramid) P、顆粒についてはピラミッド Gの商標名で入手される多数の異なる珪酸ナトリウム製品を使用して珪酸塩組成物を調製した。これらの珪酸ナトリウムは以下の表1に示す特性を有していた。
【表1】

【0021】
これらの珪酸塩と粒状ステアリン酸塩との混合物の調製は、9.8gの珪酸塩粒子と0.2gの粒状ステアリン酸塩とを50cm3のステリリン(Sterilin)サンプル管中で約2分間振盪することにより行なった。ついで、開放サンプル管を相対湿度70%、37℃の湿潤キャビネット中に4日間放置した。これらを毎日観察し、その際、ケーキングを検査するために倒置により混合した。得られた結果は表2に示されている。
【表2】

【0022】
ステアリン酸塩を添加していない全ての珪酸塩の対照サンプルも湿潤キャビネット中に置いたが、この場合、一夜でガラス状固体となった。
【0023】
実施例2
P95 珪酸塩粉末又はG91 顆粒状珪酸ナトリウム 2940gと、8μmの容積平均粒度を有するステアリン酸ナトリウム 60gとをホバルトミキサー中で、セット2で10分間、混合することにより珪酸塩組成物を製造した。
【0024】
製造した組成物のサンプル 10gを50cm3の開放ステリリンサンプル管中に装入し、37℃、相対湿度70%の湿潤キャビネット中に、表3に示すごとき種々の時間放置した。
【0025】
予め秤量した1600μm篩上で1分間、サンプル(貯蔵後)を穏やかに篩分けることによりケーキングの程度を測定した。1600μm篩上に残留した製品のフラクションを当初の重量のパーセンテージで表した。その結果を、本発明に従って調製したサンプル(“変性”)と、ステアリン酸ナトリウムを混合しなかった珪酸塩サンプルとについて表3に示す。
【表3】

【0026】
溶解性
P95、変性P95、G91及び変性G91について、下記の方法を使用して溶解性試験を行った。
【0027】
22℃の攪拌されている脱イオン水 95gに、5gのP95を添加し、10分間攪拌した。溶液をろ過し、洗浄し、ろ紙上に残留する残渣を乾燥し、秤量した。同一の実験を変性P95、G91及び変性G91について行った。各々のサンプルの溶解度を下記の式から決定した:
溶解度%=使用したサンプルの重量−残渣の重量/使用したサンプルの重量 x 100
【0028】
溶解度試験の結果は下記の通りである:
サンプル 溶解度%
P95 99.9
変性P95 99.6
G91 99.8
変性G91 99.6
【0029】
上記の結果は、粉末状及び顆粒状の可溶性珪酸塩製品をステアリン酸ナトリウムで被覆することによりその水に対する溶解性は影響を受けないことを明らかに示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状アルカリ金属珪酸塩と、炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は30μm未満の容積平均粒度を有する)との混合物からなる固体粒状アルカリ金属珪酸塩組成物。
【請求項2】
(a) 本質的にアルカリ金属珪酸塩からなる粒子;及び
(b) 炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は
30μm未満の容積平均粒度を有する);
の混合物からなるアルカリ金属珪酸塩組成物の形の、耐ケーキング性でかつ水溶性の固体粒状材料。
【請求項3】
請求項2に記載されるごとき耐ケーキング性でかつ水溶性の材料の形で洗浄剤組成物に配合されたアルカリ金属珪酸塩を含有する組成物の、洗浄剤組成物の製造における使用。
【請求項4】
アルカリ金属珪酸塩は珪酸ナトリウムである、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項5】
アルカリ金属珪酸塩は3.0:1未満のSiO2:M2O (Mはアルカリ金属である)のモル比を有する、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項6】
アルカリ金属珪酸塩は約1200μmまでの平均粒度を有する、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項7】
アルカリ金属珪酸塩は40μmを越える平均粒度を有する、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項8】
アルカリ金属珪酸塩は250〜1200μmの範囲の平均粒度を有する顆粒状珪酸塩である、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項9】
アルカリ金属珪酸塩は400〜1000μmの範囲の平均粒度を有する顆粒状珪酸塩である、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項10】
アルカリ金属珪酸塩は150μm未満の容積平均粒度を有する粉末である、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項11】
アルカリ金属珪酸塩は40μmを越える容積平均粒度を有する粉末である、請求項10に記載の組成物又は使用。
【請求項12】
カルボン酸塩は、I 族金属の塩、II族金属の塩又は亜鉛塩である、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項13】
カルボン酸は10〜24個の炭素原子を含有している、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項14】
カルボン酸塩は珪酸塩組成物の重量の0.1〜15重量%の量で存在させる、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項15】
カルボン酸塩は珪酸塩組成物の重量の少なくとも0.5重量%の量で存在させる、請求項14に記載の組成物又は使用。
【請求項16】
カルボン酸塩は珪酸塩組成物の重量の少なくとも1.0重量%の量で存在させる、請求項14に記載の組成物又は使用。
【請求項17】
カルボン酸塩は珪酸塩組成物の重量の10重量%までの量で存在させる、請求項14に記載の組成物又は使用。
【請求項18】
カルボン酸塩は珪酸塩組成物の重量の5重量%までの量で存在させる、請求項14に記載の組成物又は使用。
【請求項19】
カルボン酸塩はステアリン酸塩である、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項20】
カルボン酸塩はナトリウム塩又はマグネシウム塩である、前記請求項のいずれか一つに記載の組成物又は使用。
【請求項21】
粒状アルカリ金属珪酸塩と、炭素原子6〜24個の炭素鎖長を有するカルボン酸の粒状の塩(上記カルボン酸塩は30μm未満の容積平均粒度を有する)とを混合することからなる、珪酸塩組成物の製造方法。


【公表番号】特表2006−506303(P2006−506303A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550828(P2004−550828)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004922
【国際公開番号】WO2004/043860
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501388205)イネオス シリカス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】