説明

現像処理方法

【課題】更にレジストパターンを微細化し、その高さを増大させたときも、基板上のリンス液を除去する際に、パターン倒れを防止できる現像処理方法を提供する。
【解決手段】レジストパターンが現像された後、リンス液が供給された基板上に、レジストパターンを疎水化する疎水化剤がハイドロフルオロエーテルで希釈されてなる処理液を供給する処理液供給工程S14〜S16と、処理液が供給された基板上から、処理液を除去する処理液除去工程S18、S19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストが塗布され、露光処理された基板に対し現像処理を行う現像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造のフォトリソグラフィー工程では、半導体基板(以下、「基板」又は「ウェハ」という。)の表面にフォトレジストを塗布し、レジスト上にマスクパターンを露光し、これを現像してウェハ表面にレジストパターンを形成している。
【0003】
このようなフォトリソグラフィー工程において、現像処理は、例えばパドル式やディップ式等の方法により行っている。例えば、パドル式はウェハに現像液を供給し、一方、ディップ式は現像液中にウェハを浸漬させて現像処理を進行させ、その後は、それぞれ、純水等を用いた洗浄液としてのリンス液をウェハ上に供給して現像液を洗い流している。そして最後に、ウェハからリンス液を除去するために、エアブローやウェハの回転等を行うことにより乾燥処理を行っている。
【0004】
一方、近年における半導体デバイスの微細化はより一層進行しており、微細かつ高アスペクト比のレジストパターンが出現している。このようなレジストパターンは、微細かつ高アスペクト比のため、例えば、上記乾燥処理においてリンス液が各パターン間から抜け出る際に、リンス液の表面張力によりパターン間に引力が生じることによる、いわゆる「パターン倒れ」の問題が発生している。かかるパターン倒れを防止するために、乾燥処理を行う前に、リンス液よりも表面張力の小さい有機溶媒を基板上に供給する現像処理方法がある。
【0005】
例えば、リンス液を除去する際のパターン倒れを防止するために、レジストパターンが現像された基板上にリンス液を供給し、リンス液が供給された基板上に、フッ素を含む有機溶剤を含む処理液を供給する、現像処理方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−178943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、リンス液を除去する際のパターン倒れを防止するために、リンス液が供給された基板上に、フッ素を含む有機溶剤を含む処理液を供給するときに、次のような問題がある。
【0008】
次世代の露光技術としてEUV(Extreme Ultra-Violet:極端紫外線)露光の開発が行われており、レジストパターンの更なる微細化が進行している。更に、微細化したレジストパターンをマスクにしてエッチングを行い、レジストパターンの下層にある被エッチング膜にレジストパターンを転写するために、エッチング条件に応じてレジストパターンの高さを現状よりも増大させることがある。レジストパターンの高さを増大させると、現像、リンスを行った後の乾燥処理中に、純水の表面張力と、レジストパターンに対する純水の接触角との関係により、レジストパターン間を水が抜ける際にパターン倒れが発生することがある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、更にレジストパターンを微細化し、その高さを増大させたときでも、基板上のリンス液を除去する際に、パターン倒れを防止できる現像処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一実施例によれば、レジストパターンが現像された後、リンス液が供給された基板上に、前記レジストパターンを疎水化する疎水化剤がハイドロフルオロエーテルで希釈されてなる処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理液が供給された前記基板上から、前記処理液を除去する処理液除去工程とを有する、現像処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、更にレジストパターンを微細化し、その高さを増大させたときでも、基板上のリンス液を除去する際に、パターン倒れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布現像処理システムの平面図である。
【図2】図1に示す塗布現像処理システムの正面図である。
【図3】図1に示す塗布現像処理システムの背面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る現像処理ユニットを示す平面図である。
【図5】図4に示す現像処理ユニットを示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る処理液供給機構を示す図である。
【図7】現像処理ユニットを用いた現像処理方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】現像処理ユニットを用いた現像処理方法の各工程を行う際の側面図(その1)である。
【図9】現像処理ユニットを用いた現像処理方法の各工程を行う際の側面図(その2)である。
【図10】現像処理ユニットを用いた現像処理方法の各工程を行う際の側面図(その3)である。
【図11】現像処理の際のレジストパターンを示す拡大断面図である。
【図12】パターンの間にリンス液が存在するときに、リンス液の接触角とパターンを倒そうとする力との関係を説明するための図である。
【図13】TMSDMAをTFEで希釈してなる処理液が、レジストパターンの表面を疎水化する疎水化処理における反応メカニズムを説明する図である。
【図14】実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれを行った後のレジストパターンについて、接触角の測定を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1〜図3は本発明に係る塗布現像処理システムの全体構成を示す図であり、図1はその平面図、図2は正面図及び図3は背面図である。
【0016】
塗布現像処理システム1は、カセットステーション10、処理ステーション11及びインターフェース部12を一体に接続した構成を有する。カセットステーション10は、被処理基板として半導体ウェハWを、ウェハカセットCRで複数枚例えば25枚単位で、システムに対して外部から搬入又は外部へ搬出する。また、カセットステーション10は、ウェハカセットCRに対してウェハWを搬入・搬出したりする。処理ステーション11は、塗布現像工程の中で1枚ずつウェハWに所定の処理を施す枚葉式の各種処理ユニットを所定位置に多段配置してなる。インターフェース部12は、処理ステーション11と、この処理ステーション11と隣接して設けられる露光装置(図示せず)との間でウェハWを受け渡しする。
【0017】
カセットステーション10は、図1に示すように、カセット載置台20、ウェハ搬送体21を有する。カセット載置台20では、カセット載置台20上の突起20aの位置に、複数個例えば4個までのウェハカセットCRが、それぞれのウェハ出入口を処理ステーション11側に向けてX方向一列に載置されている。ウェハ搬送体21は、カセット配列方向(X方向)及びウェハカセットCR内に収納されたウェハのウェハ配列方向(Z方向)に移動可能に設けられている。また、ウェハ搬送体21は、各ウェハカセットCRに選択的にアクセスするようになっている。また、ウェハ搬送体21は、θ方向に回転可能に構成され、後述するように処理ステーション11側の第3の組G3の多段ユニット部に属するアライメントユニット(ALIM)及びイクステンションユニット(EXT)にもアクセスできるようになっている。
【0018】
処理ステーション11では、図1に示すように、中心部に垂直搬送型の主ウェハ搬送機構22が設けられ、その周りに全ての処理ユニットが1組または複数の組に亙って多段に配置されている。この例では、5組G1、G2、G3、G4、G5の多段配置構成となっている。第1及び第2の組G1、G2の多段ユニットは、システム正面(図1において手前)側に並置されている。第3の組G3の多段ユニットは、カセットステーション10に隣接して配置されている。第4の組G4の多段ユニットは、インターフェース部12に隣接して配置されている。第5の組G5の多段ユニットは背部側に配置されている。なお第5の組G5は、主ウェハ搬送機構22のメンテナンスのためにレール25に沿って移動可能に構成されている。
【0019】
図3に示すように、主ウェハ搬送機構22は、ウェハ搬送装置46を上下方向(Z方向)に昇降自在に装備している。筒状支持体49はモータ(図示せず)の回転軸に接続されており、このモータの回転駆動力によって、前記回転軸を中心としてウェハ搬送装置46と一体に回転する。従って、このウェハ搬送装置46は、θ方向に回転自在となっている。ウェハ搬送装置46は、搬送アーム48を有している。
【0020】
図2に示すように、第1の組G1では、カップCP内でウェハWをスピンチャックに載せて所定の処理を行う2台のスピンナ型処理ユニット、例えばレジスト塗布処理ユニット(COT)及び本発明に係る現像処理ユニット(DEV)が下から順に2段に重ねられている。第2の組G2でも、2台のスピンナ型処理ユニット、例えばレジスト塗布処理ユニット(COT)及び現像処理ユニット(DEV)が下から順に2段に重ねられている。レジスト塗布処理ユニット(COT)ではレジスト液の排液が機構的にもメンテナンスの上でも面倒であることから、このように下段に配置するのが好ましい。しかし、必要に応じて上段に配置することも可能である。
【0021】
なお、第1の組G1、第2の組G2には、Z方向の下側等の空いたスペースに、レジスト塗布処理ユニット(COT)及び現像処理ユニット(DEV)に各種処理液を供給するためのケミカル室13が設けられてもよい。
【0022】
図3に示すように、第3の組G3では、ウェハWを載置台に載せて所定の処理を行うオーブン型の処理ユニット、例えば下から順にクーリングユニット(COL)、アドヒージョンユニット(AD)、アライメントユニット(ALIM)、イクステンションユニット(EXT)、プリベーキングユニット(PAB)及びポストエクスポージャーベーキングユニット(PEB)が重ねられている。第4の組G4でも、オーブン型の処理ユニット、例えば下から順にクーリングユニット(COL)、イクステンション・クーリングユニット(EXTCOL)、イクステンションユニット(EXT)、プリベーキングユニット(PAB)及びポストエクスポージャーベーキングユニット(PEB)が重ねられている。なお、現像後に加熱処理を行うためのポストベーキングユニットが配置されてもよい。
【0023】
このように処理温度の低いクーリングユニット(COL)、イクステンション・クーリングユニット(EXTCOL)を下段に配置し、処理温度の高いベーキングユニット(PAB)やポストエクスポージャーベーキングユニット(PEB)を上段に配置する。この上下配置により、ユニット間の熱的な相互干渉を少なくすることができる。しかし、ランダムな多段配置とすることも可能である。
【0024】
インターフェース部12は、奥行方向では処理ステーション11と同じ寸法を有するが、幅方向では小さなサイズにつくられている。インターフェース部12の正面部には可搬性のピックアップカセットCRと定置型のバッファカセットBRが2段に配置され、背面部には周辺露光装置23が配設され、中央部にはウェハ搬送体24が設けられている。このウェハ搬送体24は、X、Z方向に移動して両カセットCR、BR及び周辺露光装置23にアクセスするようになっている。さらに、ウェハ搬送体24は、θ方向に回転可能に構成され、処理ステーション11側の第4の組G4の多段ユニットに属するイクステンションユニット(EXT)にも、及び隣接する露光装置側のウェハ受渡し台(図示せず)にもアクセスできるようになっている。
【0025】
図4及び図5は、本発明の実施の形態に係る現像処理ユニット(DEV)を示す平面図及び断面図である。この現像処理ユニット(DEV)の中央部には、ウェハ搬送装置46の搬送アーム48が進退自在に設けられた環状のカップCΡが配設されている。カップCΡの内側には、ウェハWを水平に保持するスピンチャック52が配置されている。スピンチャック52は真空吸着によってウェハWを固定保持した状態で駆動モータ54によって回転駆動される。駆動モータ54は、ユニット底板50に設けられた開口50aに昇降移動可能に配置され、アルミニウムからなるキャップ状のフランジ部材58を介して、エアシリンダからなる昇降駆動手段60および昇降ガイド手段62と結合されている。このような昇降機構により、主ウェハ搬送機構22との間でウェハWの受け渡しが可能となる。
【0026】
図5に示すように、カップCP内に収容されたウェハW上において、このウェハWの表面に現像液を供給するための現像液ノズル36がノズルスキャンアーム37の先端部に取り付けられている。この現像液ノズル36には供給管31aが接続されており、この供給管31aを介して現像液供給機構31により現像液が供給されるようになっている。この現像液ノズル36は長尺形状を有し、例えば図示しない複数の孔、又はスリット状に形成された供給口より現像液が供給されるようになっている。ノズルスキャンアーム37は、ユニット底板50の上に一方向(Y方向)に敷設されたガイドレール39上で水平移動可能な垂直支持部材40の上端部に取り付けられており、図示しないY方向駆動機構によって垂直支持部材40と一体にY方向に移動するようになっている。また、ノズルスキャンアーム37は垂直支持部材40に沿ってZ方向にも移動可能に構成されており、現像液ノズル36と、スピンチャック52で保持されたウェハWとの距離が調節できるようになっている。
【0027】
また、ノズル保持体27に保持されウェハW表面にリンス液を供給するためのリンスノズル15が、上記現像液ノズル36と同様に、ノズルスキャンアーム17及び垂直支持部材26により、ガイドレール39に沿ってY方向に移動可能に設けられている。リンスノズル15には供給管32aが接続されており、この供給管32aを介してリンス液供給機構32からリンス液が供給されるようになっている。ここでリンス液としては、例えば純水を使用する。このノズルスキャンアーム17も垂直支持部材26に沿って移動可能に構成されており、リンスノズル15と、スピンチャック52で保持されたウェハWとの距離が調節できるようになっている。
【0028】
カップCPの隣には、ノズル保持体28に保持され、ウェハ上のレジストパターンの表面を疎水化する疎水化剤を、フッ素を含む有機溶剤で希釈してなる処理液を供給するための処理液ノズル16が、ノズルスキャンアーム18の先端に取り付けられている。このノズルスキャンアーム18はモータ19により、このモータ19を中心としてθ方向に回動可能に設けられている。処理液ノズル16には供給管33aが接続されており、この供給管33aを介して処理液供給機構33から処理液が供給されるようになっている。ここで、レジストパターンを疎水化する疎水化剤としては、特に限定されず、例えば、分子中に(CHSiで表されるシリル基を有する化合物を用いることができる。一例として、TMSDMA(トリメチルシリルジメチルアミン)を挙げることができる。また、疎水化剤を希釈するフッ素を含む有機溶剤としては、例えば純水より揮発性の高いハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(メチルパーフルオロイソブチルエーテルとメチルパーフルオロブチルエーテルとを混合したもの、又はこれら単独)を使用することができる。また、キシレン、ヘキサメチルジシラザン等も用いることができる。なお、このハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤は、レジストを溶かさない程度の溶剤であり、レジスト上に供給しても問題はない。
【0029】
カップCP内の底部には、ウェハ上に供給された現像液、リンス液及び処理液を排液するための排液管57が設けられており、図示しないシステム外へ排液されるようになっている。また、カップCPの底部には、現像液や処理液の供給により発生したミスト等、カップCP内の雰囲気を排気するための排気管59が設けられており、通常運転時においては真空ポンプ51により常時排気されている状態となっている。
【0030】
また、カップCPには、カップCPの温度を計測する温度センサ64が取り付けられており、更にこのカップCPの温度を調整するための温調ヒータ65が設けられている。この温調ヒータ65は、カップCP全体の温度を所定の温度、通常時には例えば23℃前後に調整するようになっている。
【0031】
更に、カップCPにおける排気管59及び排液管57にも同様に、排気管59及び排液管57の温度を計測する温度センサ66及び67と、それぞれ排気管59及び排液管57の温度を調整する温調ヒータ68及び69とが取り付けられている。
【0032】
現像液供給機構31、リンス液供給機構32及び処理液供給機構33は、それぞれ制御部30の指令に基づき、現像液、リンス液及び処理液をそれぞれ現像液ノズル36、リンスノズル15及び処理液ノズル16へ供給するようになっている。また、この制御部30は、上記各処理液供給のタイミングの制御とともに、駆動モータ54の回転数を制御するモータコントローラ34に指令を送出し、統括的な処理を行う。
【0033】
また制御部30は、例えば上記温度センサ64、66、67により各部が計測され、この計測された温度が所定の正常範囲内になければ異常とみなし、警告装置45はこれを受けて何らかの警告を行うようになっている。この警告装置としては、例えば警告ブザーや警告灯、あるいは操作ディスプレイ上の警告表示等を用いている。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態に係る処理液供給機構を示す図である。処理液供給機構33は、疎水化剤をHFEで希釈してなる処理液を貯蔵する処理液貯蔵タンク71を有する。処理液貯蔵タンク71は、処理液を供給する供給管33aの一端と接続され、供給管33aは、制御部30により開閉制御可能に設けられたバルブ72を介して、前述したように、その他端が処理液ノズル16に接続されている。
【0035】
処理液貯蔵タンク71には、処理液を混合して調整するために、HFEを供給するHFE供給管73、TMSDMAである疎水化剤を供給する疎水化剤供給管74の一端が接続されている。また、処理液貯蔵タンク71の内部を加圧して供給管33aに処理液を供給するための例えばNガス等の加圧ガス供給管75が接続されている。また、処理液貯蔵タンク71内には、供給された疎水化剤及びHFEを攪拌して混合するための攪拌機構76が設けられている。攪拌機構76は、処理液貯蔵タンク71の内部に設けられた攪拌部77と、処理液貯蔵タンク71の外部に設けられ、攪拌部77を制御部30により制御可能に回転駆動するモータ78とを有している。また、処理液貯蔵タンク71には、貯蔵される処理液の液面の上限と下限とを検知し、制御部30へ検知した信号を送る液面計79が設けられている。
【0036】
HFE供給管73は、制御部30により開閉制御可能に設けられたバルブ80、同様に制御部30により制御可能に設けられたポンプ81を介して、その他端がHFEを供給するHFE供給源82に接続されている。
【0037】
疎水化剤供給管74は、制御部30により開閉制御可能に設けられたバルブ83を介して、その他端が疎水化剤供給源84に接続されている。疎水化剤供給源84は、HFEに比べて微量の疎水化剤を適量に供給することができ、例えば疎水化剤をシリンジを介して供給するシリンジポンプ85と、制御部30により制御可能に設けられ、シリンジポンプ85を駆動するモータ86とを有している。
【0038】
加圧ガス供給管75は、制御部30により開閉制御可能に設けられたバルブ87を介して、その他端が例えばNガス等を供給する加圧ガス供給源88に接続されている。
【0039】
このようにして構成された処理液供給機構33では、制御部30からの制御に基づいて、バルブ80が開かれ、HFE供給源82からポンプ81を介し、HFE供給管73を通して所定の流量のHFEが処理液貯蔵タンク71に供給される。また、HFEと所定の混合比になるように、制御部30からの制御に基づいて、バルブ83を開き、モータ86に駆動されるシリンジポンプ85から疎水化剤供給管74を通して疎水化剤が処理液貯蔵タンク71に供給される。供給されたHFE及び疎水化剤は、攪拌機構76により均一に攪拌され、処理液貯蔵タンク71に貯蔵される。このような処理液貯蔵タンク71へのHFE及び疎水化剤の供給及び混合は、連続的又は断続的に行われ、液面計79により検知される液面が上限及び下限の間にあるように、その液量が、保持される。
【0040】
このようにして処理液が貯蔵された処理液貯蔵タンク71から処理液ノズル16に処理液を供給する際には、バルブ87が開かれ、加圧ガス供給源88から加圧ガス供給管75を通って処理液貯蔵タンク71に加圧ガスが供給される。そして、バルブ72が開かれ、供給管33aを通して処理液ノズル16に処理液を供給する。一方、処理液ノズル16への処理液の供給を停止するときは、供給管33aのバルブ72を閉じるとともに、バルブ87を閉じ、加圧ガス供給源88からの加圧ガスの供給も停止する。
【0041】
次に、以上説明した塗布現像処理システム1の一連の処理工程について説明する。
【0042】
先ず、カセットステーション10において、ウェハ搬送体21がカセット載置台20上の処理前のウェハを収容しているカセットCRにアクセスして、そのカセットCRから1枚のウェハWを取り出す。取り出されたウェハWは、アライメントユニット(ALIM)に搬送され、位置合わせが行われる。その後、ウェハWは、主ウェハ搬送機構22によりアドヒージョンユニット(AD)へ搬送されて疎水化処理が行われ、次いでクーリングユニット(COL)に搬送されて所定の冷却処理が行われる。その後、レジスト塗布処理ユニット(COT)に搬送されてレジスト塗布処理が行われ、プリベーキングユニット(PAB)に搬送されて所定の加熱処理が行われ、クーリングユニット(COL)に搬送されて所定の冷却処理が行われる。その後、ウェハ搬送体24によりインターフェース部12を介して図示しない露光装置に搬送されて露光処理が行われる。露光処理が終了したウェハWは、ポストエクスポージャーベーキングユニット(PEB)に搬送されて所定の加熱処理が行われ、次に現像処理ユニット(DEV)に搬送されて現像処理が行われる。現像処理後に、所定の加熱処理(ポストベーキング)が行われることもある。その後、ウェハWは、クーリングユニット(COL)に搬送されて所定の冷却処理が行われ、エクステンションユニット(EXT)を介してカセットCRに戻される。
【0043】
次に、図7から図11を参照して、現像処理ユニットを用いた現像処理方法について説明する。図7は各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図8から図10は各工程を行う際の側面図であり、図11は、現像処理の際のレジストパターンを示す拡大断面図である。
【0044】
図7に示すように、本実施の形態に係る現像処理方法は、現像液供給工程(ステップS11)、現像液除去工程(ステップS12)、リンス液供給工程(ステップS13)、処理液供給工程(ステップS14〜ステップS16)、疎水化処理安定化工程(ステップS17)、処理液除去工程(ステップS18及びステップS19)及び乾燥処理工程(ステップS20)を有する。処理液供給工程は、第1の供給工程(ステップS14)、第2の供給工程(ステップS15)及び第3の供給工程(ステップS16)を有する。処理液除去工程は、第1の除去工程(ステップS18)及び第2の除去工程(ステップS19)を有する。
【0045】
また、図7に示す現像処理方法が実施する処理レシピの例を表1に示す。
【0046】
【表1】

表1における各列は、左から順に、各ステップのステップ番号、工程名、時間、回転数(rpm)、及びそのステップにおいて供給する薬液の種類を示すものである。
【0047】
最初に、現像液供給工程(ステップS11)を行う。現像液供給工程(ステップS11)では、基板に現像液を供給し、レジストパターンを現像する。
【0048】
先ず、スピンチャック52が上昇し、主ウェハ搬送機構22からウェハWを受け取ると、スピンチャック52が下降しウェハWがカップCP内に収容される。そして、図8(a)に示すように現像液ノズル36が現像液41を吐出しながらウェハW上を移動し、吐出が終了した後にウェハWを例えば60秒放置し現像処理を進行させる。ここで高スループット化を図るため、ウェハWを回転させながら現像液41を吐出しても構わない。そのときは、ウェハWを所定の回転数で回転させて現像液41を伸展させ、例えば60秒間放置することにより現像処理を進行させることになる。
【0049】
次に、現像液除去工程(ステップS12)を行う。現像液除去工程(ステップS12)では、レジストパターンが現像された基板上に、リンス液を供給し、基板上から現像液を除去する。
【0050】
図8(b)に示すように、現像液ノズル36をカップ外へ移動させ、リンスノズル15をウェハWの中心上へ移動させる。そして、図8(c)に示すように、ウェハWを回転させながらリンス液42を吐出し、現像液41を洗い流す。このとき、ウェハWを回転させながら行うため、現像液41を振り切りながら純水でウェハWの表面をリンス液42でリンスすることになる。
【0051】
図11(a)に示すように、現像されたレジストパターン29の上面29aがリンス液42から出ないようにするために、ウェハWの回転数を低速の300rpm〜800rpm、より好ましくは500rpmとする。レジストパターン29の上面29aがリンス液42から出てしまうと、リンス液42の表面張力によりパターン倒れが生じるおそれがあるためである。このようにウェハWの回転を300rpm〜800rpmの比較的低速回転とすることにより、ウェハW上で流れるリンス液42の速度を極力小さくして、現像液41を洗い流すときにレジストパターン29が倒れないようにする。なお、以下では、レジストパターンのことを「パターン」ということがある。
【0052】
次に、リンス液供給工程(ステップS13)を行う。リンス液供給工程(ステップS13)では、基板を次の第1の供給工程における回転数(第1の回転数)R1よりも低い第4の回転数R4で回転させながら、リンス液を供給する。
【0053】
現像液除去工程(ステップS12)において、リンス液42でリンスされたウェハWの表面が、次の処理液供給工程(ステップS14〜ステップS16)において処理液が供給されるまでに乾燥しないように、すなわち液切れしないように、ウェハWの表面にリンス液(純水)の液膜(純水パドル)を形成する。図8(d)に示すように、ウェハWの回転数R4(本発明における第4の回転数に相当する。)を0rpm〜300rpm、より好ましくは100rpmとする。
【0054】
次に、処理液供給工程(ステップS14〜ステップS16)を行う。処理液供給工程(ステップS14〜ステップS16)では、レジストパターンが現像された後、リンス液が供給された基板上に、レジストパターンを疎水化する疎水化剤がハイドロフルオロエーテル(HFE)で希釈されてなる処理液を供給する。また、処理液供給工程(ステップS14〜ステップS16)は、前述したように、第1の供給工程(ステップS14)、第2の供給工程(ステップS15)及び第3の供給工程(ステップS16)を有する。
【0055】
まず、第1の供給工程(ステップS14)を行う。第1の供給工程(ステップS14)では、基板を第1の回転数R1で回転させながら、基板上に処理液を供給する。
【0056】
図9(a)に示すように、リンスノズル15をカップ外へ移動させ、処理液ノズル16をウェハWの中心上へ移動させる。そして、図9(b)に示すように、ウェハWを300rpm〜500rpm、より好ましくは400rpmで回転させ、ウェハWの中心上に処理液43を吐出する。すなわち、第1の回転数R1は、300rpm〜500rpmである。第1の回転数R1が300rpmより低いときは、処理液43がウェハW上のリンス液42に対して均一に混ざらず、処理液43が粒状になってリンス液42中に散在してしまい、このままウェハWの回転による振り切り乾燥を行うとパターン倒れが生じてしまう。一方、第1の回転数R1が500rpmより高いときは、処理液43が均一に伸展するが、処理液43が伸展する前にウェハW上からリンス液42が流れ出し、パターン倒れを引き起こす可能性が高い。
【0057】
次に、第2の供給工程(ステップS15)を行う。第2の供給工程(ステップS15)では、基板を第1の回転数R1よりも高い第2の回転数R2で回転させながら、基板上に処理液を供給する。
【0058】
図9(c)に示すように、ウェハWを1000rpm〜1500rpm、より好ましくは1200rpmで回転させ、図11(b)に示すように、ウェハW上に残存していたリンス液42を処理液43に置換する。このように、ウェハWを高速の1000rpm〜1500rpmで回転させて処理液43で置換することにより、ウェハWの全面に処理液43を伸展させつつ、ウェハW上からリンス液42が流れ出る際のパターン倒れを防止することができる。
【0059】
次に、第3の供給工程(ステップS16)を行う。第3の供給工程(ステップS16)では、基板を第2の回転数R2よりも低い第3の回転数R3で回転させながら、基板上に処理液を供給する。
【0060】
図9(d)に示すように、ウェハWを0rpm〜500rpm、より好ましくは300rpmで回転させ、図11(c)に示すように、レジストパターン29上の処理液43の液量を調整する。このように、ウェハWを低速の0rpm〜500rpmで回転させることにより、ウェハW上の処理液43の液量を調整することができる。すなわち、第3の回転数R3は、0rpm〜500rpmである。第3の回転数R3が500rpmより高いときは、処理液43がウェハW上から振り切られてしまい、処理液43の液量が少なくなってしまう。
【0061】
次に、疎水化処理安定化工程(ステップS17)を行う。疎水化処理安定化工程(ステップS17)では、処理液の供給を停止し、基板の回転を略停止した状態で、レジストパターンの疎水化処理を安定化させる。
【0062】
図10(a)に示すように、処理液43の吐出を停止し、処理液ノズル16をカップ外へ移動させ、ウェハWの回転数を0〜50rpmにするか、より好ましくは回転を停止させ、ウェハWを略静止させた状態で、ウェハWの全面でレジストパターン29の表面の疎水化処理を安定化させる。
【0063】
次に、処理液除去工程(ステップS18及びステップS19)を行う。処理液除去工程(ステップS18及びステップS19)では、処理液が供給された基板上から、処理液を除去する。また、処理液除去工程(ステップS18及びステップS19)は、前述したように、第1の除去工程(ステップS18)及び第2の除去工程(ステップS19)を有する。
【0064】
まず、第1の除去工程(ステップS18)を行う。第1の除去工程(ステップS18)では、基板を第5の回転数R5で回転させながら、基板上から処理液を除去する。
【0065】
図10(b)に示すように、ウェハWを300rpm〜700rpm、より好ましくは500rpmで回転させる。このように、ウェハWを低速の300rpm〜700rpmで回転させることにより、ウェハWの表面の処理液43を少し除去することができる。ここで、必要に応じて純水よりなるリンス液42をウェハ中央付近から吐出させながら処理液43を除去してもよい。
【0066】
次に、第2の除去工程(ステップS19)を行う。第2の除去工程(ステップS19)では、基板を第5の回転数R5よりも高い第6の回転数R6で回転させながら、基板上から処理液を除去する。
【0067】
図10(c)に示すように、ウェハWを1000rpm〜1500rpm、より好ましくは1200rpmで回転させる。このように、ウェハWを高速の1000rpm〜1500rpmで回転させることにより、ウェハW表面の処理液43を効率良く除去することができる。また、必要に応じて純水よりなるリンス液42をウェハ中央付近から吐出させながら処理液43を除去してもよいのは、第1の除去工程と同様である。
【0068】
図11(d)に示す処理液43のレジストパターン29に対する接触角θは、85°〜95°となっており、処理液43がパターン間から抜け出ても表面張力は小さいので、パターン倒れを起こすことはない。より好ましい接触角θは、図14を用いて後述するように、90°〜95°である。このような高い接触角は、処理液43が、疎水化剤であるTMSDMAを、表面張力がリンス液の表面張力よりも小さいHFEで希釈してなるものであるために、達成できる。また、いったん疎水化処理が行われた後は、純水よりなるリンス液42に対しても、このような高い接触角が達成できる。TMSDMAは、後述するように、疎水性を有するシリル基等の疎水基を有しており、レジストパターン29の表面をシリル基等の疎水基で置換する。また、HFEは、後述するように、フッ素を有しているため、レジストパターン29の表面をフッ素でコーティングする。これらによって、上記接触角が実現できる。
【0069】
また、HFEは、純水より比重が大きいため、図9(c)における処理液43の供給の際に、処理液43がリンス液42より下部に配置されるようになり、リンス液42がレジストパターン29間から抜け出易くなる。従って、パターン倒れの防止は、よりいっそう効果的となる。
【0070】
そして、最後に乾燥処理工程(ステップS20)を行う。乾燥処理工程(ステップS20)では、基板を所定の回転数で回転させ乾燥処理を行う。
【0071】
図10(d)に示すように、ウェハWを1500rpm〜2500rpm、より好ましくは2000rpmの高回転で回転させ、ウェハWの表面を十分に乾燥させる。
【0072】
次に、本実施の形態で、処理液がレジストパターンのパターン倒れを防止する作用効果について説明する。
【0073】
図12は、パターンの間にリンス液が存在するときに、リンス液の接触角とパターンを倒そうとする力との関係を説明するための図である。2本のレジストパターン29の間をリンス液42でリンスした後、リンス液42を乾燥していく途中の段階では、図12に示すように、あるレジストパターン29の一方の側がリンス液42と接触し、一方の側が乾燥して空気と接触した状態となる。このような状態が形成されると、レジストパターン29の一方の側からはリンス液42に押され、他方の側から空気に押されるため、その圧力差があると、レジストパターン29を倒そうとする力が働くことになる。このパターンを倒そうとする力Fは、次式(1)で表される。
【0074】
【数1】

ここで、γはリンス液の表面張力、θはパターンでのリンス液の接触角、Dはパターンの間隔、Hはパターンの高さ、Lはパターンの長さである。このパターンを倒そうとする力Fは、パターンを曲げるモーメントを生じさせる。パターンの幅をW1とすると、パターンにかかる最大応力σMAXは、次式(2)で表される。
【0075】
【数2】

したがって、σMAXがパターンの倒壊ストレスσCRTを超えたときにパターンは倒れることになる(σMAX>σCRT)。この式から、パターン倒れを防止するには、(1)パターンの間隔Dを広げる、(2)高さHを低くするか、幅W1を広げることによってパターンのアスペクト比(H/W1)を小さくする、(3)リンス液の表面張力γを小さくする、(4)パターンでのリンス液の接触角θを大きくしてcosθを小さくする、等の方法が考えられる。
【0076】
本実施の形態に係る現像処理方法は、上記したうちの(4)接触角θを大きくすることによって、パターンにかかる最大応力σMAXを低減し、パターン倒れを防止するものである。
【0077】
図13は、TMSDMAをTFEで希釈してなる処理液が、レジストパターンの表面を疎水化する疎水化処理における反応メカニズムを説明する図である。処理液に含まれるTMSDMA(トリメチルシリルジメチルアミン)は、その分子中に(CHSiで表されるシリル基を有する。一方、レジストは、その高分子構造中にOH基を有する。TMSDMA中のシリル基がレジストパターンの表面において、レジスト中のOH基のHと置換反応を起こす。OH基が親水基であるのに対し、OH基のHがシリル基と置換した基は疎水基である。従って、レジストパターン表面に形成された疎水基によって、レジストパターンの表面が疎水化される。
【0078】
次に、図14及び表2から表4を参照し、本実施の形態に係る現像処理方法によるパターン倒れ防止効果についての評価結果について説明する。
(実施例1)
実施例1として、図7に示すステップS11からステップS20の各工程を行った。ステップS13からステップS20の各工程の条件は、表1に示す処理レシピの例に従って実施した。ただし、表1のステップS14からステップS16で供給する処理液として、TMSDMAをHFE:TMSDMA=100:1の混合比で希釈した処理液を用いた。
(比較例1)
比較例1として、処理液の種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、図7に示すステップS11からステップS20の各工程を行った。比較例1では、ステップS14からステップS16で供給する処理液として、TMSDMAを含まないHFEよりなる処理液を用いた。
(比較例2)
比較例2として、処理液供給工程及び疎水化安定化工程を行わず、リンス液(純水)のみでリンスする現像処理方法を行った。すなわち、表1に示す処理レシピのうちステップS13からステップS17を省略し、図7に示すステップS11、ステップS12、ステップS18からステップS20の各工程を行った。
【0079】
実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれを行った後のレジストパターンについて、レジストパターンと同じレジストの塗布膜を疎水化処理し、その表面の接触角を測定した。測定方法として、その表面に純水を滴下し(0.1ml)、その接触角を、側面から専用のカメラで撮影して測定する方法を用いた。その結果を、図14のグラフに示す。
【0080】
図14に示すように、実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれにおいて、接触角θは、93.5°、78.5°、80.9°となった。すなわち、実施例1において、比較例1、比較例2よりも大きな接触角θが得られた。従って、前述したように、実施例1において、比較例1、比較例2よりもパターンにかかる最大応力σMAXを小さくすることができることが明らかになった。
【0081】
実施例1は、処理液を用いない比較例2に対してのみならず、HFEよりなる処理液を用いた比較例1に対しても、接触角が増大している。これは、疎水化剤を含まず単にHFEよりなる処理液でレジスト表面をフッ素処理しても、接触角はあまり増大しないことを示している。また、HFE:TMSDMA=100:1の混合比を有する処理液では、接触角を90°以上にすることができる。
(実施例2)
実施例2として、露光時のベストフォーカス位置からフォーカス位置をずらし、かつ、露光時のドーズ量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、図7に示すステップS11からステップS20の各工程を行った。パターンとしては、ライン幅120nm及びスペース幅120nm(ピッチ240nm)、並びに高さ380nmを有するレジストパターンを形成した。各フォーカス位置のずれ量及び各ドーズ量の条件に対応して得られたパターンの線幅であるCD(Critical Dimension)値を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて測定した。これらの値を表2に示す。
【0082】
【表2】

表2において、着色したマスは、その条件においてパターン倒れが発生したことを示している。実施例2では、実施した全てのフォーカス位置のずれ量及びドーズ量の条件において、パターン倒れが発生しなかった。
(比較例3)
比較例3として、露光時のベストフォーカス位置からフォーカス位置をずらし、かつ、露光時のドーズ量を変更したこと以外は、比較例1と同様にして行った。また、パターンとしては、実施例2と同様に、ライン幅120nm及びスペース幅120nm(ピッチ240nm)、並びに高さ380nmを有するレジストパターンを形成した。比較例1と同様に、ステップS14からステップS16で供給する処理液として、TMSDMAを含まないHFEよりなる処理液を用いた。各フォーカス位置のずれ量及び各ドーズ量の条件に対応して得られたパターンのCD値を表3に示す。
【0083】
【表3】

表3においても、着色したマスは、その条件においてパターン倒れが発生したことを示している。比較例3では、ドーズ量が32mJ以上の一部の条件において、パターン倒れが発生した。これは、ドーズ量の増大に伴ってCD値が減少し、よりパターン倒れが起きやすくなったためである。また、ドーズ量が33mJ以上の一部の条件においては、パターン倒れが顕著であり、CD値が測定できない条件(「×」で表示)があった。
(比較例4)
比較例4として、露光時のベストフォーカス位置からフォーカス位置をずらし、かつ、露光時のドーズ量を変更したこと以外は、比較例2と同様にして行った。また、パターンとしては、実施例2と同様に、ライン幅120nm及びスペース幅120nm(ピッチ240nm)、並びに高さ380nmを有するレジストパターンを形成した。比較例2と同様に、処理液供給工程及び疎水化安定化工程を行わず、リンス液(純水)のみでリンスする現像処理方法を行った。各フォーカス位置のずれ量及び各ドーズ量の条件に対応して得られたパターンのCD値を表4に示す。
【0084】
【表4】

表4においても、着色したマスは、その条件においてパターン倒れが発生したことを示している。比較例4では、ドーズ量が31mJ以上の一部の条件において、パターン倒れが発生し、比較例3よりも更にパターン倒れが発生する条件の領域が増大した。また、ドーズ量が31mJ以上の一部の条件においては、パターン倒れが顕著であり、CD値が測定できない条件(「×」で表示)があった。
【0085】
表2から表4を比較すると、実施例2においては、比較例3、比較例4よりもパターン倒れを防止できることが明らかである。これは、前述したように、TMSDMAがレジストパターンの表面のOH基のHをシリル基で置換して疎水性を増大させ、パターンでのリンス液に対する接触角θを増大させ、パターンにかかる最大応力σMAXを減少させるためである。
【0086】
なお、実施例1、実施例2を行うにあたり、TMSDMAをHFE:TMSDMA=300:1の混合比で希釈した処理液を用いて行ったときも、実施例1、実施例2と略同等の効果が得られた。
【0087】
一方、処理液におけるTMSDMAの混合比(濃度)を、HFE:TMSDMA=100:1程度よりも増大させたときには、パターン倒れを防止する効果が向上することはなく、かつ、処理液のコストが増大する。これは、TMSDMA自体がレジストを溶解させる性質を有しているためであり、また、TMSDMAが高価な薬液であるためである。
【0088】
従って、パターン倒れを防止し、かつ、コストの増大を抑制することができる処理液の混合比としては、HFE:TMSDMA=100:1からHFE:TMSDMA=300:1程度の範囲であることが好ましい。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 塗布現像処理システム
15 リンスノズル
16 処理液ノズル
29 レジストパターン
31 現像液供給機構
32 リンス液供給機構
33 処理液供給機構
36 現像液ノズル
41 現像液
42 リンス液
43 処理液
52 スピンチャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストパターンが現像された後、リンス液が供給された基板上に、前記レジストパターンを疎水化する疎水化剤がハイドロフルオロエーテルで希釈されてなる処理液を供給する処理液供給工程と、
前記処理液が供給された前記基板上から、前記処理液を除去する処理液除去工程と
を有する、現像処理方法。
【請求項2】
前記処理液供給工程の後、前記処理液除去工程の前に、
前記処理液の供給を停止し、前記基板の回転を略停止した状態で、前記レジストパターンの疎水化処理を安定化させる疎水化処理安定化工程を有する、請求項1に記載の現像処理方法。
【請求項3】
前記疎水化剤は、トリメチルシリルジメチルアミンである、請求項1又は請求項2に記載の現像処理方法。
【請求項4】
前記処理液供給工程は、
前記基板を第1の回転数で回転させながら、前記基板上に前記処理液を供給する第1の供給工程と、
前記第1の供給工程の後に、前記基板を前記第1の回転数よりも高い第2の回転数で回転させながら、前記基板上に前記処理液を供給する第2の供給工程と、
前記第2の供給工程の後に、前記基板を前記第2の回転数よりも低い第3の回転数で回転させながら、前記基板上に前記処理液を供給する第3の供給工程と
を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の現像処理方法。
【請求項5】
前記処理液供給工程の前に、
前記基板を前記第1の回転数よりも低い第4の回転数で回転させながら、前記基板上に前記リンス液を供給するリンス液供給工程を有する、請求項4に記載の現像処理方法。
【請求項6】
前記処理液除去工程は、
前記基板を第5の回転数で回転させながら、前記基板上から前記処理液を除去する第1の除去工程と、
前記第1の除去工程の後に、前記基板を前記第5の回転数よりも高い第6の回転数で回転させながら、前記基板上から前記処理液を除去する第2の除去工程と
を有する、請求項5に記載の現像処理方法。
【請求項7】
前記処理液除去工程を、前記基板上にリンス液を供給しながら行う、請求項1から請求項6のいずれかに記載の現像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−82200(P2011−82200A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230642(P2009−230642)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】