説明

現像処理装置

【課題】Uターン搬送機構を用いた通常処理から水平搬送機構を用いた迅速処理への変更が容易な現像処理装置を提供する。
【解決手段】感光材料Pを現像搬送機構によって各種処理槽に搬送することで発色現像処理から漂白定着処理を経て洗浄処理に至る現像処理を実施する現像処理装置。現像搬送機構には、処理液内で感光材料を往復搬送するUターン搬送機構6と、処理液外で受け取った感光材料を水平に搬送するとともに水平搬送中の感光材料に処理液を付与する処理液付与手段80を設けた水平搬送ユニット7とが含まれており、かつUターン搬送機構に代えて水平搬送ユニットを処理槽に装着する際にUターン搬送機構の処理液中容積分を補完するダミー充填体40が処理槽内に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光済み感光材料を供給側から排出側へ搬送することで発色現像処理から漂白定着処理を経て洗浄処理に至る処理を実施する現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現像処理装置は、発色現像液を収容する発色現像槽と、漂白定着液を収容する漂白定着槽と、安定液を収容する前記供給側の少なくとも1つの洗浄槽と前記排出側の少なくとも1つの洗浄槽とからなる洗浄槽群と、前記発色現像槽に装着されて前記発色現像槽内で前記感光材料を往復搬送するUターン発色現像搬送機構と、前記漂白定着槽に装着されて前記漂白定着槽内で前記感光材料を往復搬送するUターン漂白定着搬送機構と、前記洗浄槽群に装着されて前記感光材料を往復搬送するUターン洗浄搬送機構とを備えている。このように、各処理槽に感光材料を沈め込ませては再び引き上げることで現像処理に必要な処理を連続的に行うことが実現しているが、このような感光材料のUターン搬送では感光材料現像処理の簡易化及び迅速化の要望に応えることが困難である。特に、複数の(一般には4つの)洗浄槽からなる洗浄槽群におけるUターン搬送の多数回の繰り返しは現像処理迅速化の大きな障害である。
【0003】
このことから、複数の洗浄槽のうち少なくとも1つの槽に対してUターン洗浄搬送機構の代わりに、少なくともその一部分が洗浄液(安定液)に浸漬しながら回転するとともにその周面に弾性変形部材を有する処理ローラを設けることで、感光材料を洗浄槽の洗浄液中に浸漬させずに洗浄液面上を水平搬送して処理ローラの周面を介して洗浄液を付与する感光材料処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この感光材料処理装置では、一部の洗浄槽において感光材料を洗浄液に沈め込ませては再び引き上げるUターン搬送ではなく感光材料を洗浄槽の液面上で水平搬送することで、洗浄処理の簡易化及び迅速化に寄与し、感光材料現像処理時間の短縮を実現させる。
しかしながら、この感光材料処理装置では、感光材料の非搬送時に処理ローラを洗浄液中に完全に浸漬させるための手段が必要であり、処理ローラを含めた搬送機構がかなり大がかりなものとなり、従来からのUターン搬送機構を用いた通常処理から水平搬送機構を用いた迅速処理への変更が容易ではない。
【0004】
【特許文献1】特開平4−268554号公報(段落番号0037−0038、0110−0122、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実状に鑑み、本発明の課題は、Uターン搬送機構を用いた通常処理から水平搬送機構を用いた迅速処理への変更が容易な現像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
露光済み感光材料を供給側から排出側へ搬送することで発色現像処理から漂白定着処理を経て洗浄処理に至る現像処理を実施するために、処理槽として、発色現像槽と、漂白定着槽と、少なくとも1つの洗浄槽とからなる洗浄槽群とを備えるとともに、前記処理槽に装着されて前記感光材料を搬送する現像搬送機構を備えた現像処理装置において、上記課題を解決するため、本発明では、前記現像搬送機構には、前記処理槽に着脱可能に装着されるとともに当該処理槽の処理液内で感光材料を往復搬送するUターン搬送機構と、前記処理槽に着脱可能に装着されるとともに当該処理槽の処理液外で受け取った感光材料を水平に搬送する水平搬送ユニットとが含まれており、前記水平搬送ユニットには水平搬送中の感光材料に対して装着された処理槽の処理液を付与する処理液付与手段が設けられ、かつ前記Uターン搬送機構に代えて前記水平搬送ユニットを前記処理槽に装着する際に前記Uターン搬送機構の処理液中容積分を補完するダミー充填体が前記処理槽内に設置される。
【0007】
処理槽内で感光材料を往復搬送するUターン搬送機構に代えて、いずれかの処理槽に水平搬送ユニットを装着することで、Uターン搬送をショートカットして処理時間を短縮することが可能となる。しかも、この水平搬送ユニットには水平搬送中の感光材料に対して処理液を付与する処理液付与手段が設けられているので、液外での水平搬送中においても処理液による処理を途切らせることはない。さらに、Uターン搬送機構に代えて水平搬送ユニットを装着する場合、Uターン搬送機構の液没部分によって嵩上げされていた処理液の液面が低下してしまい、カスケード接続された処理槽のオーバーフローが不完全となる問題や各種センサの最適位置がずれてしまう問題などが生じる。このような問題の解決策の1つとして、Uターン搬送機構の処理液中容積分の処理液を追加することが挙げられるが、このような処理液の追加は、処理液コストの上昇させるだけではなく、廃液処理コストも押し上げることになる。それらの問題は、本発明に基づいてUターン搬送機構の処理液中容積分を補完するダミー充填体をこの処理槽に設置することで解決される。なお、ここでの、Uターン搬送機構の処理液中容積分を補完するという記載は、Uターン搬送機構の処理液中容積分とダミー充填体の処理液中容積分が完全に一致するといった狭い意味ではなく、実質的に問題を引き起こさない程度の差違を許す範囲を含むものである。
また、水平搬送ユニットを簡単に着脱可能に構成しておくことで、必要に応じて迅速処理に代えて従来通りの現像処理仕様が要求される場合、手軽に水平搬送ユニットを取り外すとともにUターン搬送機構を装着することで、全ての処理槽で感光材料のUターン搬送浸漬処理を行うことも可能である。
【0008】
Uターン搬送機構の液没部分はかなり大きな容積であるため、この容積を補完するダミー充填体はかなりの大きさとなる。このため、このダミー充填体を、好ましくは樹脂製で、中空体に構成することによって、その重量が軽くなり、取り扱いが楽になる。さらに、中空体に構成することにより処理槽の処理液中に沈めたダミー充填体には大きな浮力が働くことになる。この大きな浮力を利用すると、ダミー充填体を押さえつけるストッパを処理槽に設けるという簡単な構造でも、ダミー充填体を処理槽内にしっかりと係止することができる。
【0009】
写真処理における現像処理装置には、処理槽の上部から取り出した処理液を処理槽の下部に戻すポンプ付き循環管路が設けられているので、この循環管路を処理液付与手段への処理液の供給に利用すると、追加的なポンプ付き供給管路を省くことができ、効果的である。水平搬送ユニットの処理液付与手段は処理液面の上方に位置することから処理液付与手段の処理液流入口は処理槽の上部領域に位置することになり、さらに循環効率を高めるために循環管路の処理液流出口が処理槽の下部領域に位置することを考慮すると、処理槽内部に設置されるダミー充填体に循環管路の処理液流出口と処理液付与手段の処理液流入口とをつなぐ延長管を設けておくと好都合となる。
【0010】
水平搬送ユニットの装着時に、処理液付与手段への処理液供給のための配管接続を簡単化するために、ダミー充填体が処理槽内に設置される際に循環管路の処理液流出口と延長管との接続が実現され、かつ水平搬送ユニットが処理槽に装着される際に処理液付与手段の処理液流入口と延長管との接続、及び水平搬送ユニットへの動力伝達を可能にする動力接続とが自動的に実現するような接続構造を採用するとよい。
【0011】
現像処理装置では、現像処理時間の短縮と現像結果の品質維持(画質維持)は相反するものであり、処理時間を短くすると品質低下が生じやすくなるが、品質維持(画質維持)に関しては洗浄処理の処理時間が発色現像処理や漂白定着処理に較べてより融通性をもっている。このため、迅速処理を所望する場合、洗浄槽に水平搬送ユニットを装着することが好ましい。また、一般的な写真プリント作製のための現像処理装置では、4つの洗浄槽から構成されているので、そのうちの任意の洗浄槽に対してUターン搬送機構に代えて水平搬送ユニットとダミー充填体を装着することで、種々のパターンの洗浄処理を実施することができる。このため、水平搬送ユニットとダミー充填体は、洗浄槽群の少なくとも1つに装着可能に構成されることが好都合である。
【0012】
一般に、洗浄槽群を構成する複数の洗浄槽は、感光材料搬送方向で最下流の洗浄槽に安定液を補充するとともにオーバーフローした安定液が感光材料搬送方向上流側の洗浄槽に順次流れ込んでいく、いわゆるカスケード接続されていることから、下流側(排出側)の洗浄槽ほど液面レベルが高く、結果的にUターン搬送時には感光材料を長く浸漬することができる。このことから、複数の洗浄槽がカスケード接続されている場合、上流側(供給側)の洗浄槽に水平搬送ユニットとダミー充填体を装着することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による現像処理装置を組み込んだ写真プリント装置の外観図が図1に示されている。この写真プリント装置は、感光材料としての印画紙Pに対して露光処理と現像処理とを行う写真プリンタとしてのプリントステーション1Bと、現像済み写真フィルム2aやデジタルカメラ用メモリカード2bなどの画像入力メディアから取り込んだ撮影画像を処理してプリントステーション1Bで使用されるプリントデータの生成・転送などを行う操作ステーション1Aとから構成されている。
【0014】
この写真プリント装置はデジタルミニラボとも称せられるものであり、図2からよく理解できるように、プリントステーション1Bは、2つの印画紙マガジン11に納めたロール状の印画紙Pを引き出してシートカッター12でプリントサイズに切断すると共に、このように切断された印画紙Pに対し、バックプリント部13で色補正情報やコマ番号などのプリント処理情報を印画紙Pの裏面に印字するとともに、露光ユニット14で印画紙Pの表面に撮影画像の露光を行う露光装置3と、この露光後の印画紙Pを現像処理するために複数の現像処理槽を有した現像処理装置4から構成されている。現像された印画紙Pは、装置上部の横送りコンベア15からソータ16に送られ、写真プリントPとして、ソータ16の複数のトレイにオーダ単位で仕分けられた状態で集積される(図1参照)。
【0015】
プリントステーション1B内で印画紙Pを搬送する印画紙搬送機構は、印画紙Pを露光する露光ユニット14の領域に配置される露光搬送機構17と、露光された印画紙Pを現像処理する現像処理装置4の領域に配置される現像搬送機構18に区分けされる。露光搬送機構17には、露光ユニット14の露光ポイントの前後に配置されたチャッカー式印画紙搬送機構17aや露光搬送ローラユニット17bを含む複数の挟持搬送ローラ対が含まれている。
【0016】
プリント露光ユニット14には、副走査方向に搬送される印画紙Pに対して、主走査方向に沿って操作ステーション1Aからのプリントデータに基づいてR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のレーザ光線の照射を行うライン走査型記録ヘッドとしてのライン露光ヘッドが設けられている。プリント露光方式としては、このレーザビーム方式以外に、PLZTシャッター方式、液晶シャッター方式、蛍光ビーム方式、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)方式などが知られており、設計時に露光仕様に応じて選択することができる。
【0017】
前記操作ステーション1Aのデスク状コンソールの上部位置には、写真フィルム2aの撮影画像コマから撮影画像データ(以下単に画像データと略称する)を取得するフィルムスキャナ21が配置されており、デジタルカメラ等に装着される撮影画像記録媒体2bとして用いられている各種半導体メモリやCD−Rなどから画像データとしての撮影画像を取得するメディアリーダ22は、この写真プリント装置のコントローラ20として機能する汎用パソコンに組み込まれている。この汎用パソコンには、さらに各種情報を表示するモニタ23、各種設定や調整を行う際に用いる操作入力部として利用されるキーボード24やポインティングデバイスとしてのマウス25も接続されている。
【0018】
現像処理装置4は、処理槽部5Aと乾燥部5Bに区画されている。処理槽部5Aは各種処理液毎に区画された処理槽つまり、発色現像液を収容する発色現像槽51と、漂白定着液を収容する漂白定着槽52と、安定液を収容する4つの洗浄槽、つまり第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bと第3洗浄槽53cと第4洗浄槽53dからなる洗浄槽群53を備えている。第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bと第3洗浄槽53cと第4洗浄槽53dはカスケード接続されており、第4洗浄槽53dに補充された処理液がオーバーフロー方式で順次第1洗浄槽53aに流れ込む。乾燥部5Bは、現像処理された印画紙Pを乾燥するための熱風ブロア54を備えている。
【0019】
図2に示すように、現像搬送ライン18には、処理槽内で印画紙Pを往復搬送するUターン搬送機構6が備えられるが、このUターン搬送機構6は、現像処理装置4の処理形態に応じて、図3に示すように、本発明による現像搬送機構である水平搬送ユニット7によって部分的に置き換えることができる。処理槽毎に処理液中に印画紙Pを浸漬させUターン搬送させるUターン搬送機構6とは異なり水平搬送ユニット7は、処理槽の処理液上方で印画紙Pを水平に搬送しながら処理液付与手段により処理液と接触させるものであり、処理槽通過距離が断然短くなることから現像処理の迅速化に寄与する。つまり、標準処理形態での現像処理装置4では現像搬送ライン18はUターン搬送機構6のみによって構成され、迅速処理形態ではUターン搬送機構6と水平搬送ユニット7の組み合わせによって構成される。
【0020】
ここでは、まず図2を用いて標準処理形態での現像処理装置を説明する。Uターン搬送機構6は、印画紙Pを処理槽の深さ方向に送り込むとともに底部でUターンさせて再び液面に向かわせるように配置された駆動ローラを備えた液中ラックと呼ばれる複数の浸漬搬送ラック60と、処理槽外つまり液面上で各処理槽をクロスするように印画紙Pを実質的に水平に搬送する液外ラックと呼ばれる複数の槽外搬送ラック61との組み合わせで構成されている。液中ラック60は装着される処理槽によってその長さ(高さ)が異なっており、発色現像槽51と漂白定着槽52に装着される発色現像槽用液中ラック60aと漂白定着槽用液中ラック60bは、洗浄槽群53に装着される第1・第2・第3・第4洗浄槽用液中ラック60c、60d、60e、60fより長くなっている。
【0021】
液外ラック61は、露光装置3から送られてきた印画紙Pを発色現像槽51に送り込む導入ラック61a、発色現像槽51から引き上げた印画紙Pを漂白定着槽52に送り込む第1クロスオーバラック61b、漂白定着槽52から引き上げた印画紙Pを第1洗浄槽53aに送り込む第2クロスオーバラック61c、第1洗浄槽53aから引き上げた印画紙Pを第2洗浄槽53bに送り込む第3クロスオーバラック61d、第2洗浄槽53bから引き上げた印画紙Pを第3洗浄槽53cに送り込む第4クロスオーバラック61e、第3洗浄槽53dから引き上げた印画紙Pを第4洗浄槽53dに送り込む第5クロスオーバラック61f、第4洗浄槽53eから引き上げた印画紙Pを絞りながら乾燥部5Bに送るスクイズラック61gから構成されている。
【0022】
現像搬送ライン18を構成する液中ラック60と液外ラック61には、印画紙Pを搬送するための駆動ローラが設けられているが、これらの駆動ローラへ動力を伝達するために、図2では模式的にしか図示されていないが、モータによって回転駆動される動力伝達主軸62が処理槽の並びに沿って延設されている。各液中ラック60の駆動ローラは、液中ラック60の対応処理槽への装着によって噛み合い結合するウオームギヤセットを介して動力伝達主軸62から分岐された回転動力を利用して回転駆動される。同様に、各液外ラック61の駆動ローラも、液外ラック61の対応処理槽への装着によって噛み合い結合するギヤセットを介して動力伝達主軸62から分岐された回転動力を利用して回転駆動される。
【0023】
次に、図3を用いて迅速処理形態での現像処理装置の一例を説明する。図示された迅速処理形態では、上記標準処理形態に較べて、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに装着されていたUターン搬送機構6としての第1洗浄槽用液中ラック60aと第2洗浄槽用液中ラック60bと第2クロスオーバラック61cと第3クロスオーバラック61dと第4クロスオーバラック61eとが水平搬送ユニット7によって置き換えられていることで異なっている。つまり、この迅速処理形態では、漂白定着槽52から引き上げた印画紙Pはそのまま水平搬送され、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bを飛び越して第3洗浄槽53cに送り込まれる。
【0024】
この水平搬送ユニット7は、印画紙Pを水平搬送しながら洗浄処理する水平洗浄搬送ユニット70であり、図4と図5に示すように、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに装着されている。水平洗浄搬送ユニット70は、印画紙Pを漂白定着槽52から引き上げる入口挟持搬送ローラ部72、引き上げられた印画紙Pを水平搬送するために相互に間隔をあけて配置されている第1挟持搬送ローラ部73と中間挟持搬送ローラ部74と第2挟持搬送ローラ部75、水平搬送された印画紙Pを第3洗浄槽53cに送り込む出口挟持搬送ローラ部76を設けている。これらの挟持搬送ローラ部は、第2クロスオーバラック61cと第3クロスオーバラック61dと第4クロスオーバラック61eとが装着されていた装着位置に同様に装着されるような寸法形状を有するハウジング71に取り付けられている。各挟持搬送ローラ部の駆動ローラには印画紙Pの搬送方向に延びている動力伝達主軸62からウオームギヤセット63を介して分岐された回転動力が、さらに動力分岐ギヤセット64を介して伝達される。この動力分岐ギヤセット64は、水平洗浄搬送ユニット70を所定の洗浄槽に装着されることによって上下から噛み合うように構成されている。
【0025】
第1挟持搬送ローラ部73と中間挟持搬送ローラ部74との間、及び中間挟持搬送ローラ部74と第2挟持搬送ローラ部75との間には、水平搬送される印画紙Pの両面(乳剤面とベース面)側に対応する洗浄槽に収容されている安定液を付与する安定液付与手段としての水平洗浄器80が配置されている。
【0026】
入口挟持搬送ローラ部72と第1挟持搬送ローラ部73との間には、印画紙Pを介して漂白定着槽52から第1洗浄槽53aに漂白定着液が持ち込まれないように印画紙Pに付着する漂白定着液を削ぎ取る入口ブレード部77が設けられている。また、第2挟持搬送ローラ部75と出口挟持搬送ローラ部76との間には、比較的汚れをもつ安定液が印画紙Pを介して第3洗浄槽53cに持ち込まれないように印画紙Pに付着する安定液を削ぎ取る出口ブレード部78が設けられている。
【0027】
水平洗浄搬送ユニット70に備えられている水平洗浄器80には、水平搬送される印画紙Pの上面(ベース面)と対向する上面側処理液付与モジュール80aと、水平搬送される印画紙Pの下面(乳剤面)と対向する下面側処理液付与モジュール80bが含まれている。下面側処理液付与モジュール80bは水平洗浄搬送ユニット70のハウジング71にネジ止め固定されているが、上面側処理液付与モジュール80aはハウジング71の上方からワンタッチでハンドル81をもって着脱可能なようにバネ付勢ボールなどによるクイックカップリング82を介してハウジング71に保持されている。これにより、水平洗浄搬送ユニット70内で印画紙Pの搬送詰まりが発生しても、上面側処理液付与モジュール80aをワンタッチで取り外すことで簡単に搬送詰まりした印画紙Pを取り除くことができる。
【0028】
上面側処理液付与モジュール80aと下面側処理液付与モジュール80bには、処理液流入管86を通じてポンプ供給されてきた安定液を流通させる流通路83と、水平搬送される印画紙Pに対向する領域に形成されるとともに前記流通路83が開口している四角形凹部84が形成されており、この四角形凹部84の底面にブラシ毛85が密集植設されている。現像処理時には、対応する洗浄槽53a又は53bから安定液が流通路83を通じて四角形凹部84流れ込み、印画紙Pの表面に達した安定液がブラシ毛85によって掃き取られていくことで、効果的な洗浄処理が期待できる。なお、ブラシ毛85に代えて、スポンジなどの多孔の弾性体を用いても同様な効果が得られる。ここでは、上面側処理液付与モジュール80aのブラシ毛85の先端が水平搬送される印画紙Pの上面(ベース面)に接触しながら安定液を付与するとともに、下面側処理液付与モジュール80bのブラシ毛85の先端が水平搬送される印画紙Pの下面(乳剤面)に接触しながら処理液を付与することで、浸漬洗浄処理に匹敵する水平搬送洗浄処理を実現している。この水平搬送洗浄処理を施される印画紙Pは、上面側処理液付与モジュール80aのブラシ毛85の先端と下面側処理液付与モジュール80bのブラシ毛85の先端によって規定される水平搬送ラインLに沿って搬送されることになる。
【0029】
図4から理解できるように、第1挟持搬送ローラ部73と中間挟持搬送ローラ部74と第2挟持搬送ローラ部75の各印画紙挟持箇所が前述した水平搬送ラインLより高い位置に設定されている。これにより、第1挟持搬送ローラ部73から水平洗浄器80に送り込まれる印画紙Pは下がり勾配となることから、水平洗浄器80によって印画紙Pの表面に付与された第1洗浄槽53aの安定液が第1挟持搬送ローラ部73に伝わりにくくなる。同様に、中間挟持搬送ローラ部74の印画紙挟持箇所も水平搬送ラインLより高い位置にあるため、水平洗浄器80によって印画紙Pの表面に付与された第1洗浄槽53a又は第2洗浄槽53bの安定液が中間挟持搬送ローラ部74に伝わりにくくなる。さらに、第2挟持搬送ローラ部75の印画紙挟持箇所も水平搬送ラインLより高い位置にあるため、水平洗浄器80によって印画紙Pの表面に付与された第2洗浄槽53bの安定液が第2挟持搬送ローラ部75に伝わりにくくなる。
【0030】
水平洗浄搬送ユニット70は、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに装着されていた第1洗浄槽用液中ラック60aと第2洗浄槽用液中ラック60b、及び第2クロスオーバラック61cと第3クロスオーバラック61dと第4クロスオーバラック61eを取り外して、その代わりに第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bを跨るように装着されるものであるから、そのままでは、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに収容されている安定液の液面レベルが大幅に低下することになる。このことを避けるために、第1洗浄槽用液中ラック60aの安定液中容積分を補完する容積をもつダミー充填体40が第1洗浄槽53a内に設置されている。同様に、第2洗浄槽用液中ラック60bの安定液中容積分を補完する容積をもつダミー充填体40も第2洗浄槽53b内に設置されている。
【0031】
図6に示すように、第1洗浄槽53aや第2洗浄槽53bのみならず各処理槽にはオーバーフロー流通可能に接続しているサブタンク55が付随している。サブタンク55はさらに循環管路57を介して各処理槽と連通しており、サブタンク55から処理槽への循環流を作り出すために循環管路57に循環ポンプ56が介装されている。この循環管路57は処理槽の下部まで延びており、その先端に処理液流出口として機能する切換弁90が取り付けられている。後で詳しく説明されるが、この切換弁90は標準処理形態ではそこで処理液循環流を流出させることにより、処理槽の下部から上部、さらにサブタンク55と循環管路57を経て処理槽の下部に至る循環流路を作り出している。
【0032】
また、迅速処理形態では、この循環管路57は処理液付与手段への処理液供給管路の一部として機能する。つまり、図6で示すように、ダミー充填体40は処理槽の内部形状に類似した形状を有する樹脂製中空体41からなるが、その樹脂製中空体41の縦軸心に沿って縦孔42が貫通形成されており、この縦孔42に処理液を流すことができる延長管87が挿入固定されている。延長管87の下端は拡径された段付きホッパ87aとして形成されている。ダミー充填体40の処理槽への設置時に、段付きホッパ87aは、この段付きホッパ87aとのカップリング部材としても形成されている切換弁90と接続する。延長管87の上端は、水平洗浄搬送ユニット70が処理槽に装着される際に水平洗浄器80の処理液流入管86と公知のクイックカップリング88を介して接続される。これにより、循環管路57を通じてポンプ供給されてきた安定液が延長管87と処理液流入管86を介して上面側処理液付与モジュール80aと下面側処理液付与モジュール80bの流通路83に流れ込む。なお、図6で模式的に示されているだけであるが、樹脂製中空体であるダミー充填体40の浮力は大きいので、このダミー充填体40は処理槽に設けられた揺動式ストッパ44でその上端を押さえ付けられるだけで、確実な保持が可能となる。ストッパ44を固定式にした場合、ストッパ44の形状とダミー充填体40のストッパ受け部の形状を、相互スライドにより係止位置又は非係止位置となるように形成するとよい。
【0033】
図7に示されているように、延長管87と循環管路57とのカップリングとしても機能する切換弁90はスライド弁として構成されている。この切換弁90は、一端を循環管路57に接続されるとともに他端を閉鎖した筒体91と、筒体の外周面に軸方向に間隔を開けて貫通孔として設けられた第1ポート92a及び第2ポート92bと、筒体91の外周面を軸方向に摺動するスライド弁体93と、スライド弁体93の下端摺動位置を決定するストッパハブ部94と、処理液流入管86の筒体91への挿入を案内するとともにスライド弁体93の上端摺動位置を決定する受け部を有する挿入ガイド95と、スライド弁体93を上端摺動位置に付勢するバネ96と、バネ96を受けるバネ押さえハブ部97から構成されている。
【0034】
図7(a)から理解できるように、ダミー充填体40を取り外すことにより、延長管87と循環管路57との接続が解除されるとバネ96の付勢力でスライド弁体93が上端摺動位置までスライドし、第1ポート92aが封鎖され、第2ポート92bが開放される。これにより、循環管路57を通って第2ポート92bから処理液が処理槽下部で流れ出す。これに対して、図7(b)から理解できるように、ダミー充填体40を設置する際に延長管87と循環管路57とが接続されるとバネ96の付勢に抗してスライド弁体93が下端摺動位置までスライドし、第1ポート92aが開放され、第2ポート92bが封鎖される。段付きホッパ87aとして形成された延長管87のその段部はスライド弁体92の上面と密着するように構成されていることから、循環管路57を通って第1ポート92aから処理液が流れ出すが、流れ出した処理液はそのまま延長管87を抜け、さらに処理液流入管86を通って、上面側処理液付与モジュール80aと下面側処理液付与モジュール80bの流通路83に分流供給される。
【0035】
水平洗浄搬送ユニット70を第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに装着する際、まずダミー充填体40を第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに設置すると、それぞれの循環管路57は切換弁90を介してダミー充填体40の延長管87と接続される。その後、水平洗浄搬送ユニット70を装着することで、水平洗浄器80の処理液流入管86がクイックカップリング88によって延長管87と接続される。これにより、迅速処理形態で使用される水平洗浄搬送ユニット70は、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bへの装着の際に、その動力伝達及びダミー充填体40を介しての処理液供給管路の接続が実現されるので、標準処理形態から迅速処理形態への移行が簡単となる。
【0036】
上述した実施の形態では、循環管路57の流出口としての切換弁90が処理槽の下部に位置していたので、循環管路57と水平洗浄器80の処理液流入管86をつなぐための延長管87をダミー充填体40に設けていたが、循環管路57の流出口が処理槽の上部に位置している場合、延長管87は不必要となり、直接循環管路57の流出口としての切換弁90に処理液流入管86を接続するような構成を採用できる。その場合、処理槽内を上方に延びる循環管路57を避けるような凹部をダミー充填体40に形成することになる。また、このように、循環管路57と処理液流入管86との接続を処理槽の上部に配置させた場合でも、接続解除時の切換弁90の処理液流出口である第2ポート92bが横方向を向いているので、接続解除時に処理液が上方に飛び散るといった不都合も防止できる。
【0037】
上述した実施の形態では、水平洗浄搬送ユニット70とダミー充填体40を第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bに装着して、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bにおける浸漬処理を飛ばしていたが、同じ水平洗浄搬送ユニット70とダミー充填体40を第2洗浄槽53bと第3洗浄槽53cに装着して第2洗浄槽53bと第3洗浄槽53cにおける浸漬処理を飛ばすことも可能である。さらには、水平洗浄搬送ユニット70を、印画紙Pを隣接処理槽から受け取る入口挟持搬送ローラ部72、引き上げられた印画紙Pを水平搬送するために相互に間隔をあけて配置されている第1挟持搬送ローラ部73及び第2挟持搬送ローラ部75と、水平搬送された印画紙Pを隣接処理槽に送り込む出口挟持搬送ローラ部76と、第1挟持搬送ローラ部73と第2挟持搬送ローラ部75との間に設けられた水平洗浄器80とから構成し、第1洗浄槽53aと第2洗浄槽53bと第3洗浄槽53cのいずれか1つに装着することも可能である。さらには、水平洗浄搬送ユニット70を第4洗浄槽53dに装着するように構成することも可能である。その際、いずれにしても、置き換えられるUターン搬送機構6を構成する浸漬搬送ラック60の処理液中容積分を有するダミー充填体40が、対応する処理槽内に設置される。
【0038】
上述した実施の形態では、本発明による現像搬送機構である水平搬送ユニット7は印画紙Pを洗浄槽に収容された安定液の液面上を通過させる水平洗浄搬送ユニットとして構成されていたが、もちろんこの水平搬送ユニット7とダミー充填体40を、発色現像槽51の発色現像液又は漂白定着槽52の漂白定着液の液面上を通過させる水平発色現像搬送ユニット又は水平漂白定着搬送ユニットとして構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による現像処理装置を採用した写真プリント装置の外観図
【図2】標準処理形態における現像処理装置の構成を示す概略断面図
【図3】迅速処理形態における現像処理装置の構成を示す概略断面図
【図4】水平洗浄搬送ユニットの概略構造を示す概略図
【図5】動力伝達の経路を示す概略平面図
【図6】水平洗浄搬送ユニットとダミー充填体の装着を示す説明図
【図7】切換弁の構造を示す概略図
【符号の説明】
【0040】
4:現像処理装置
6:Uターン搬送機構
7:水平搬送機構
40:ダミー充填体
51: 発色現像槽
52: 漂白定着槽
53 :洗浄槽群
53a:第1洗浄槽
53b:第2洗浄槽
53c:第3洗浄槽
53d:第4洗浄槽
55:サブタンク
56:循環ポンプ
57:循環管路
60:浸漬搬送ラック
70:水平洗浄搬送ユニット(水平搬送ユニット)
71:ハウジング
73:第1挟持搬送ローラ部
74:中間挟持搬送ローラ部
75:第2挟持搬送ローラ部
80:水平洗浄器(処理液付与手段)
80a:上面側処理液付与モジュール
80b:下面側処理液付与モジュール
86:処理液流入管
87:延長管
88:クイックカップリング
90:切換弁
P:印画紙(感光材料)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光済み感光材料を供給側から排出側へ搬送することで発色現像処理から漂白定着処理を経て洗浄処理に至る現像処理を実施するために、処理槽として、発色現像槽と、漂白定着槽と、少なくとも1つの洗浄槽とからなる洗浄槽群とを備えるとともに、前記処理槽に装着されて前記感光材料を搬送する現像搬送機構を備えた現像処理装置において、
前記現像搬送機構には、前記処理槽に着脱可能に装着されるとともに当該処理槽の処理液内で感光材料を往復搬送するUターン搬送機構と、前記処理槽に着脱可能に装着されるとともに当該処理槽の処理液外で受け取った感光材料を水平に搬送する水平搬送ユニットとが含まれており、前記水平搬送ユニットには水平搬送中の感光材料に対して装着された処理槽の処理液を付与する処理液付与手段が設けられ、かつ
前記Uターン搬送機構に代えて前記水平搬送ユニットを前記処理槽に装着する際に前記Uターン搬送機構の処理液中容積分を補完するダミー充填体が前記処理槽内に設置されることを特徴とする現像処理装置。
【請求項2】
前記ダミー充填体が大きな浮力を有する中空体として構成されており、この浮力を用いて前記ダミー充填体が前記処理槽内に係止されることを特徴とする請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記処理槽の上部から取り出した処理液を前記処理槽の下部に戻すポンプ付き循環管路が設けられており、前記処理液付与手段への処理液の供給が前記循環管路から行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像処理装置。
【請求項4】
前記ダミー充填体に前記循環管路の処理液流出口と前記処理液付与手段の処理液流入口とをつなぐ延長管が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の現像処理装置。
【請求項5】
前記ダミー充填体が前記処理槽内に設置される際に前記循環管路の処理液流出口と前記延長管との接続が実現され、かつ前記水平搬送ユニットが前記処理槽に装着される際に前記処理液付与手段の処理液流入口と前記延長管との接続、及び前記水平搬送ユニットへの動力伝達を可能にする動力接続とが実現することを特徴とする請求項4に記載の現像処理装置。
【請求項6】
前記水平搬送ユニットは、前記洗浄槽群の少なくとも1つに装着可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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