説明

現像処理装置

【課題】 効率的な安定処理を行う現像処理装置を構成する。
【解決手段】 複数の安定処理槽23のうち、印画紙Pの搬送方向で下流側のものに供給された安定処理液(STB)を、隣接する安定処理槽23の中間に位置する壁部Wをオーバーフローする形態で、印画紙Pの搬送方向での下流側から上流側に送る流動系を形成し、壁部Wでオーバーフローする安定処理液(STB)に接触させる形態で、搬送方向で上流側の安定処理槽23から搬送方向で下流側の安定処理槽23に印画紙Pを搬送するように補助ローラ45を有する搬送経路を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像処理後の感光材料を複数の処理槽に順次送り込んで、夫々の処理槽において処理を行う現像処理装置に関し、詳しくは、処理を効率的に行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された現像処理装置と関連する技術として特許文献1に記載されるものが存在する。この特許文献1は、安定処理を効率的に行うために、定着槽の次に安定処理を行うための複数組の圧着型のローラを上下方向に配置し、この複数のローラの上端部からに安定処理液を供給しながら、複数組の圧着ローラで圧着されるように感光材料を下方から上方に搬送することにより、漂白処理後の感光材料の安定処理を行うように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11‐30846号公報 (段落番号〔0063〕〜〔0065、〕図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように複数組の圧着型のローラに安定処理液を供給しながら、このローラの部位に感光材料を搬送する現像処理装置は、小型化も可能である。しかしながら、ローラとの接触によって安定処理を行うものではローラとの圧着が不良な状況に陥った場合や、ローラに対する安定処理液の供給が充分でない状況に陥った場合に、処理が不十分になることも考えられる。
【0005】
DP店に設置されているミニラボと称される印画紙処理用の現像処理装置を例に挙げると、この種の現像処理装置は1つの発色現像処理槽と、1つの漂白定着槽と、4つの安定処理槽との6槽の処理槽を有しており、この4つの安定処理槽に印画紙を浸漬させることにより確実な処理を実現している。
【0006】
また、従来からの現像処理装置では、例えば、特開2003−15267号公報にも示されるように、先の処理槽での処理が終了した印画紙を液面から引き上げた後に、次の処理槽に送り込む搬送形態が採用されるため、印画紙を液面から引き上げた状態で処理の進行が停止する。従って、4つの安定処理槽に順次印画紙を搬送する際にも、液面から引き上げられた印画紙における安定処理が停止するものとなり処理効率が良くないものであった。
【0007】
本発明の目的は、効率的な処理を行う現像処理装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、現像処理後の感光材料を複数の処理槽に順次送り込んで、夫々の処理槽において処理を行う現像処理装置であって、
前記複数の処理槽のうち、前記感光材料の搬送方向で下流側のものに補給された処理液を、隣接する処理槽の中間に位置する壁部をオーバーフローする形態で、前記感光材料の搬送方向での下流側から上流側に送る補給系を形成し、
前記壁部でオーバーフローする処理液に接触させる位置に前記感光材料を搬送する搬送経路を形成した点にある。
【0009】
この構成により、感光材料の搬送方向で上流側の処理槽から、下流側の処理槽に感光材料を送る際には、隣接する壁部においてオーバーフローする処理液に感光材料を接触させる搬送経路に感光材料を搬送するので、感光材料を液面から持ち上げるもののように、処理を停止させることがなく、複数の処理槽に対して感光材料を送って搬送処理を行える。その結果、効率的な処理を行う現像処理装置が合理的に構成された。特に、本発明によると、処理のために感光材料を処理液に浸漬させる距離の短縮が可能となり、処理槽の容量を低減することや、現像処理装置の小型化も可能となる。
【0010】
本発明は、前記複数の処理槽の液面レベルが、前記感光材料の搬送方向で下流のものほど高レベルになるように前記壁部の高さを設定しても良い。
【0011】
この構成により、感光材料の搬送方向で最下流に位置する処理槽に処理液を供給するだけで、その処理液が、感光材料の搬送方向で上流側に向けてオーバーフローする形態で順次補給されるものとなり、処理液を送る構造の簡素化が可能となる。
【0012】
本発明は、前記壁部の上方位置に、この前記搬送経路に送られる感光材料に搬送力を作用させる補助ローラを備えても良い。
【0013】
この構成により、比較的小さいサイズの感光材料でも、オーバーフローする処理液の流れに抗する方向に向かう力を補助ローラから感光材料に作用させることにより、壁部を確実に乗り越えて次の処理槽に送り込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、暗箱構造の筐体1の内部に露光ブロックAと現像ブロックBとを配置すると共に、筐体1の端部位置に乾燥ブロックCを配置してペーパープロセッサーが構成されている。このペーパープロセッサーは、デジタルミニラボと称せられる現像処理装置の印画紙自動現像部として構成されたものであり、前記露光ブロックAにおいて感光材料としての印画紙Pに対して画像データの露光を行い、前記現像ブロックBにおいて前記露光ブロックAからの印画紙Pの現像処理を行い、前記乾燥ブロックCにおいて前記現像ブロックBからの印画紙Pの乾燥処理を行い、この乾燥処理後の印画紙Pを筐体上部の排出部2から筐体外のコンベア3上に排出する作動を行う。
【0015】
図面には示していないが、このペーパープロセッサーは、プリントサイズやプリント枚数等のオーダ情報と画像データとを取得するオペレートユニットに接続している。このオペレートユニットはフィルムスキャナで写真フィルムから取得した画像データ、あるいは、メディアドライブでフラッシュメモリやCD−R等のメディアから取得した画像データに対して必要な補正を行うことや、トリミングを行い、このように補正や加工後の画像データとオーダ情報とをペーパープロセッサーに伝送するように構成されている。
【0016】
前記露光ブロックAは、下部に2つの印画紙マガジンMを配置すると共に、上部位置に露光ヘッドHと、この露光ヘッドHと制御ユニットGとを配置している。前記制御ユニットGは、このペーパープロセッサーでの前記印画紙Pの搬送と、露光ブロックAでの露光の制御を行う。
【0017】
この露光ブロックAでは、印画紙マガジンM、Mの一方に収納したロール状の印画紙Pを圧着型のアドバンスローラ11で引き出し、カッターユニット12でプリントサイズに切断し、このように切断された印画紙Pの裏面側に印字ヘッド13によって必要な情報をプリントし、この後、印画紙Pを挟持搬送するチャックユニット14によって露光経路に送り込む。
【0018】
前記露光経路では、前記チャックユニット14からの印画紙Pを受け取り、複数の露光搬送ローラ15で上方(副走査方向)に搬送しながら露光位置において前記露光ヘッドHからのレーザビームで主走査方向に走査する形態で露光を行う。
【0019】
この露光ヘッドHとして、レーザビームを走査する形態で露光を行うもの以外に、PLZTシャッタ方式、液晶シャッタ方式、蛍光ビーム方式、FOCRT方式、或いは、DMD方式を用いることができる。
【0020】
この露光経路で露光を終えた印画紙Pを前搬送経路の複数の圧着ローラ16で搬送方向を水平方向に変換して送り出し、振り分け部の2つのチャッカー17の何れかでチャックし、2列の振り分け経路に振り分けて送り出し、更に、後搬送経路の複数の圧着ローラ18の搬送によって前記現像ブロックBに送り込む。
【0021】
前記振り分け部では予め設定されたサイズより小さいサイズの印画紙Pを、前述した2列の振り分け経路に振り分ける振り分けモードと、振り分けずに単列で送り出す単列モードとでの搬送を行えるように構成されている。また、前記予め設定されたサイズより大きいサイズの印画紙Pを搬送する際には自動的に単列モードを選択して、前記2つのチャッカー17で印画紙Pの幅方向の両端をチャックして搬送するように制御形態が設定されている。
【0022】
前記乾燥ブロックCは、現像ブロックBから送り出される印画紙Pに対してヒータで加熱された空気を供給するブロワ5と印画紙Pを圧着して搬送する複数の搬送ローラ6を備えている。
【0023】
〔処理槽〕
図1〜図3に示すように、前記現像ブロックBは前記印画紙Pの搬送方向で上流側から下流側に向けて、発色現像処理液(CD)を貯留する1つの発色現像処理槽21、漂白定着処理液(BF)を貯留する1つの漂白定着処理槽22、及び、安定処理液(STB)を貯留する4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dを、この順序で備えている。
【0024】
図面には示していないが、発色現像処理槽21、漂白定着処理槽22、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23D夫々の側部位置には、夫々と処理液が循環するサブタンクを備えており、このサブタンクにおいて処理液の液面の管理、処理液の補給、処理液の温度制御を行うように構成されている。
【0025】
尚、処理液の液面を管理する場合、前記発色現像処理槽21、漂白定着処理槽22については、対応するサブタンクに対して発色現像処理液(CD)、漂白定着処理液(BF)を補充することになるが、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dについては、印画紙Pの搬送方向で最も下流側の安定処理槽23Dに対応するサブタンクにのみ安定処理液(STB)を補充し、後述するように夫々の安定処理槽の間で安定処理液(STB)をオーバーフローさせる形態で、このサブタンクから搬送方向での上流側のサブタンクに安定処理液(STB)を補充する制御形態となる。
【0026】
前記発色現像処理槽21、漂白定着処理槽22、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23D夫々には処理液中に印画紙Pを搬送するように複数の搬送ローラ31を有した液中ラック32を備えている。また、前記露光ブロックAからの印画紙Pを発色現像処理槽21に送り込むフィードラック34を備えている。
【0027】
また、発色現像処理槽21での処理を終えて発色現像処理液(CD)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の漂白定着処理槽22に送り込む部位、及び、漂白定着処理槽22での処理を終えて漂白定着処理液(BF)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の安定処理槽23Aに送り込む部位に第1のクロスオーバラック35を備えている。尚、4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dを総称して安定処理槽23と記載する。
【0028】
前記安定処理槽23Aでの処理を終えた印画紙Pを次の安定処理槽23Bに送り込む部位、安定処理槽23Bでの処理を終えた印画紙Pを次の安定処理槽23Cに送り込む部位、安定処理槽23Cでの処理を終えて安定処理液(STB)の液面から引き上げられた印画紙Pを次の安定処理槽23Dに送り込む部位に第2のクロスオーバラック36を備えている。更に、印画紙Pの搬送方向での後端に位置する安定処理槽23Dからの印画紙Pを送り出す位置にスクイズラック37を備えている。
【0029】
前記フィードラック34には前記印画紙Pを搬送する複数の圧着型の供給ローラ41を備えており、前記第1のクロスオーバラック35には印画紙Pを案内する円弧状のガイド42と、印画紙Pを搬送する一対の圧着型の搬送ローラ43とを備えている。前記第2のクロスオーバラック36には印画紙Pを案内する円弧状のガイド44と、印画紙Pに接触して搬送を補助する補助ローラ45とを備えている。また、スクイズラック37には印画紙Pに圧着することにより印画紙Pに付着した安定処理液(STB)をスクイズする形態で取り除く圧着型のスクイズローラ46を備えている。
【0030】
この現像ブロックBでは、各処理槽の液中ラック32において搬送される印画紙Pの感光面(乳剤面)が外向き(処理槽の内壁面に向かう側)に設定されているため、前記第1のクロスオーバラック35、及び、第2のクロスオーバラック36で搬送される印画紙Pの感光面が下向きとなる。
【0031】
図3及び図4に示すように、前記4つの安定処理槽23A、23B、23C、23Dのうち、隣接するものの中間に位置する壁部において、印画紙Pの搬送方向で下流側の安定処理液(STB)を上流側に送る流動系を形成している。
【0032】
つまり、隣接する安定処理槽23Aと安定処理槽23Bのとの中間に位置する壁部Wは、印画紙Pの搬送方向で中央位置が最も高く、印画紙Pの搬送方向で上流側と下流側とが滑らかに低いレベルとなるように上面を円弧状に成形してあり、この壁部Wの最も高い位置の上方に近接するように前記補助ローラ45を配置している。この壁部Wの構造は、安定処理槽23Bと安定処理槽23Cのとの中間位置、及び、安定処理槽23Cと安定処理槽23Dのとの中間位置においても同様である。
【0033】
また、前記3箇所の壁部Wの上面位置を印画紙Pの搬送方向で下流側のものほど少しずつ高いレベルに設定し、印画紙Pの搬送方向で下流側の安定処理槽23の安定処理液(STB)が夫々の壁部Wにおいてオーバーフローする形態で、印画紙Pの搬送方向で上流側の安定処理槽23に流れるように流動形態を設定している。また、このように壁部Wをオーバーフローする安定処理液(STB)の流れに抗して、印画紙Pの搬送方向での上流側の安定処理槽23から下流側の安定処理槽23に対して印画紙Pを搬送する搬送経路が形成されている。
【0034】
このような構成により、印画紙Pの搬送方向で最も上流に位置する安定処理槽23Aの安定処理液(STB)の液面レベルをL1とした場合、安定処理槽23B、23C、23Dの液面レベルL2、L3、L4と、この順序で液面レベルが高くなる。ちなみに、液面レベルL1、L2のレベル差d、液面レベルL2、L3のレベル差d、液面レベルL3、L4のレベル差dの値を大きい値に設定する必要はなく、また、多少のバラツキがあっても良い。尚、この現像処理装置では、前記発色現像処理槽21の液面レベルと、漂白定着処理槽22の液面レベルとを前記液面レベルをL1に一致させている。
【0035】
この安定処理槽23における安定処理液(STB)の補給形態を図4のように示すことが可能である。つまり、印画紙Pの搬送方向で最も下流に位置する安定処理槽23Dに対して、貯留部51に貯留された安定処理液(STB)を送り込むポンプ52を備え、この安定処理槽23Dの安定処理液(STB)が前記3箇所の壁部Wを順次オーバーフローすることにより、安定処理槽23C、23B、23Aに対して、この順序で安定処理液(STB)が送られる補給系を形成している。更に、安定処理槽23Aに送られた安定処理液(STB)は、この安定処理槽23Aから、更にオーバーフローする形態で処理槽外の廃液タンク53に送り出され、回収される。
【0036】
このように本発明では、安定処理液(STB)がオーバーフローする壁部Wを乗り越える形態で、その感光面を下向きにして前記印画紙Pを隣接する安定処理槽23に送り込むように印画紙Pの搬送経路を形成しているので、従来からの現像処理装置のように、安定処理液(STB)の液面から持ち上げられた後に次の安定処理槽23に印画紙Pを送り込むもののように、安定処理が一時的に停止する不都合を解消して継続的に安定処理を行い、処理時間の短縮や安定処理槽23の小型化を可能にしている。特に、印画紙Pが壁部Wを乗り越える際には前記補助ローラ45が印画紙Pに接触することにより、安定処理液(STB)の流れに抗して隣接する安定処理槽23に対して印画紙Pを送り込めるのである。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い。
【0038】
(a)壁部Wの部位において、印画紙Pの搬送方向で下流側の安定処理槽23から上流側の安定処理槽23の方向に流れを安定処理液(STB)の流れを積極的に作り出すポンプ類を備える。このようにポンプ類を備えることにより、複数の安定処理槽23の液面レベルの差が小さいものであっても、積極的にオーバーフローを作り出し、この部位に感光材料を送ることが可能となる。
【0039】
(b)感光材料として写真フィルムを用いる現像処理装置に適用する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ペーパープロセッサーの縦断正面図
【図2】各ラックの部位での印画紙の搬送経路を示す断面図
【図3】安定処理槽に対応した各ラックの部位での印画紙の搬送経路を示す断面図
【図4】各安定処理槽での安定処理液の補給形態を示す図
【符号の説明】
【0041】
23 安定処理槽
45 補助ローラ
P 感光材料:印画紙
W 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像処理後の感光材料を複数の処理槽に順次送り込んで、夫々の処理槽において処理を行う現像処理装置であって、
前記複数の処理槽のうち、前記感光材料の搬送方向で下流側のものに補給された処理液を、隣接する処理槽の中間に位置する壁部をオーバーフローする形態で、前記感光材料の搬送方向での下流側から上流側に送る補給系を形成し、
前記壁部でオーバーフローする処理液に接触させる位置に前記感光材料を搬送する搬送経路を形成している現像処理装置。
【請求項2】
前記複数の処理槽の液面レベルが、前記感光材料の搬送方向で下流のものほど高レベルになるように前記壁部の高さを設定している請求項1記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記壁部の上方位置に、この前記搬送経路に送られる感光材料に搬送力を作用させる補助ローラを備えている請求項1又は2記載の現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−41054(P2007−41054A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222128(P2005−222128)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】