説明

現像方法及び現像装置

【課題】フォトマスク基板の現像工程において、リンス液乾燥時の表面張力によるレジストパターン倒れを防止する。
【解決手段】カップ3の内側で基板1を水平に保持する基板保持部2を回転可能に構成する。チャンバ部材7aと共に昇降機構7cにより昇降される保持プレート7により、多孔質材料による吸液性シート6を、基板1と平行に保持する。基板1上の現像液パドル5eを洗浄液で置換した後、昇降機構7cにより保持プレート7を下降させて吸液性シート6の表面を洗浄液の液面に接触させる。減圧ライン7bに通じる吸液性シート6の背面側を負圧として、洗浄液を吸液性シート6で吸液する。吸液後、昇降機構7cにより保持プレート7を上昇させて、吸液性シート6を洗浄液から離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置やレチクルなどを製造する場合のリソグラフィ工程に適用するものであり、フォトマスク基板上にレジストが塗布され、電子線描画の処理が施された基板の表面に現像液を供給して現像処理を行う現像方法及び、現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの微細化及び高集積化に伴って、その製造プロセスでは、レジストパターンの微細化、パターン倒れの抑制が要求されていて、これら品質に大きく影響する工程の一つとしてリソグラフィ工程に於ける現像処理が問題視されている。現在、高精度の現像処理を行う現像装置や現像方法の開発が進められている。
【0003】
現像処理の工程では、レジスト膜が形成された基板に現像液を供給して現像液パドルを基板表面に形成し、所定時間現像処理を進行させた後、現像液を振り切り、次いで、洗浄液としてリンス液(純水)を供給して基板に残存する現像液を洗い流し、その後、基板を高速で回転して基板上に残存する現像液および洗浄液を振り切り、基板を乾燥させている。
【0004】
ところで、露光技術等の進歩により半導体デバイスの微細化が一層進行しており、微細かつ高アスペクト比のレジストパターンが出現するに至り、上述のような現像工程における最終の振り切り乾燥において、リンス液がパターン間から抜け出る際に、リンス液の表面張力によりレジストパターンが引っ張られて倒れるという、いわゆる「パターン倒れ」が発生することが問題となっている。
【0005】
そこで、レジストパターン倒れの防止策として、現像液やリンス液の表面張力の低減がこれまで数多く提案されてきた。
しかしながら、リンス液に界面活性剤を用いる場合には、従来の純水とは異なり、界面活性剤がパーティクルになって基板を汚染する、つまり、析出系欠陥が生じて品質を低下させるという問題が生じている。また、界面活性剤がレジストパターンを溶解したり、CD(Critical Dimension)に変動を与えるという問題も発生している。
【0006】
これらの問題を考慮した最適なプロセスは、特許文献1で提案されている。
上記特許文献1で提案された発明によれば、パーティクル等の析出系欠陥とCD変動の発生を抑えられる、リンス液の界面活性剤の濃度を見出して、パターン倒れを防止するようにしている。この観点を考慮すると、リンス液における界面活性剤の濃度は、水溶液にミセル(界面活性剤を純水に溶解させたときに、一定濃度以上で発生する界面活性剤の分子どうしの集合体)が発生しない濃度の近傍が適している。上記特許文献1の実施例では、析出系欠陥とCD変動の発生が低減される、界面活性剤種を選定した結果、そのリンス液の濃度は、50ppmまたはその前後が好ましいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−122691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案された発明では、レジスト種毎にリンス液に用いる界面活性剤の各素材との相性を検討したり、界面活性剤の濃度の最適化を図る必要が生じるとともに、リンス液の界面活性剤濃度の適正範囲が狭いという問題がある。しかも、特許文献1で提案された発明を実行するには、現像装置の薬液ラインの確保や、濃度管理など、装置を管理する上で負荷が大きい。そこで、界面活性剤の濃度やリンス液の組成に依存しない手段によって表面張力を低減させる方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では、レジストパターン間に溜まったリンス液を乾燥するために、現像工程のリンス液を乾燥する直前において、吸液性のシートが基板表面のレジストパターン表面に接触して、レジストパターン間に溜まったリンス液を吸液することを特徴する現像方法及び現像装置を提供する。
【0010】
即ち、上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の現像方法は、フォトマスク基板の現像方法であって、水平に配置した前記基板の上方に該基板と平行して配置した吸液性シートを前記基板に接近させて、現像液と置換されて前記基板上のレジストパターンを覆う洗浄液の液面に前記吸液性シートの表面を接触させる接触ステップと、前記洗浄液の液面に表面を接触させた前記吸液性シートにより前記レジストパターンに付着した前記基板上の洗浄液を吸液する吸液ステップと、前記洗浄液を吸液した吸液性シートを前記基板に対し上方に移動させて前記レジストパターンから前記吸液性シートを離間させる離間ステップとを含むことを特徴とする。
また、請求項5に記載の現像装置は、基板保持部により水平に保持したフォトマスク基板を回転させつつ該基板上に供給した洗浄液で前記基板上の現像液を置換する現像装置であって、吸液性シートを保持して前記基板の上方に該基板と平行して配置する保持プレートと、前記保持プレートを前記基板に対して昇降させる昇降手段と、前記昇降手段を制御する制御手段とを備えており、前記制御手段は、前記昇降手段により前記保持プレートを前記基板に対し下降させて、該基板上のレジストパターンを覆う前記洗浄液の液面に前記吸液性シートの表面を接触させる第1の制御と、前記洗浄液の液面に表面を接触させた前記吸液性シートにより前記レジストパターンに付着した前記基板上の洗浄液を吸液した後、前記保持プレートを前記基板に対し上昇させて、前記洗浄液を吸液した前記吸液性シートを前記レジストパターンから離間させる第2の制御とを行うことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の現像方法は、前記吸液ステップが、前記洗浄液を前記吸液性シートで吸液させるための負圧を前記吸液性シートに付与する負圧付与ステップを含んでいることを特徴とする。
また、請求項6に記載の現像装置は、前記吸液性シートに負圧を付与する負圧付与手段をさらに備えており、該負圧付与手段により付与された負圧により前記吸液性シートが前記洗浄液を吸液することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の現像方法は、前記吸液ステップが、前記基板と前記吸液性シートとにより前記レジストパターンを挟持する挟持ステップを含んでいることを特徴とする。
なお、請求項4に記載の現像方法のように、前記吸液ステップが、前記基板と共に前記レジストパターンを挟持する前記吸液性シートを前記基板と一体に回転させる回転ステップを含んでいることを特徴とすることもできる。
また、請求項7に記載の現像装置は、前記制御手段が、前記第1の制御において、前記レジストパターンに前記吸液性シートの表面を接触させて該吸液性シートと前記基板とにより前記レジストパターンを挟持させることを特徴とする。
なお、請求項8に記載の現像装置のように、前記保持プレート及び前記昇降手段を前記基板の回転軸の周りに回転可能に支持する回転支持手段をさらに備えており、前記制御手段が、前記吸液性シートと前記基板とにより前記レジストパターンを挟持させた状態で、該基板及び前記吸液性シートと共に前記保持プレート及び前記昇降手段を回転させることを特徴とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように本発明は、フォトマスク基板の現像工程において、リンス液または純水等の洗浄液を乾燥する直前において、吸液性のシートが基板上のレジストパターン表面又はレジストパターンを覆う洗浄液面に接触して、レジストパターンの形成を阻害することなく、レジストパターン間に溜まったリンス液を吸液することを特徴する、現像装置及び現像方法である。
これにより、現像工程における表面張力によるレジストパターン倒れを防止する効果がある。従来提案されているような界面活性剤の添加や表面塗布膜を形成する手段とは異なり、レジストと各素材同士の相性や、界面活性剤の濃度最適化の必要性が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る現像装置の断面図である。
【図2】図1の現像装置によるリンス液乾燥工程において吸液性シートを用いた状態を示す断面図である。
【図3】図2の吸液性シートがレジスト膜表面に接触する直前の状態を示す断面図である。
【図4】レジストパターンと液体との相互作用を説明するための断面図である。
【図5】レジストパターン表面に吸液性シートが接触して、吸液した状態の一例を示す断面図である。
【図6】吸液作用が十分働いた状態の一例を示すレジストパターンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に関する実施の形態を説明する。
【0016】
本発明の実施の形態では、一例としてレジストが塗布形成されたフォトマスク基板を用いるものとする。基板上には、レジスト膜が形成されており、このレジスト膜に所定の描画工程及び現像処理工程を施してパターンを形成する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る現像装置の断面図である。本実施形態の現像装置は、レジスト膜が形成された基板1の現像を行う装置である。この現像装置は、基板保持部2、カップ3、及び、現像液供給ノズル5を有している。
基板保持部2上には、基板1が水平に載置、保持される。基板保持部2は、水平を保って基板1を保持したまま、回転及び上下方向に駆動できるようにするために、基板保持部2の回転中心に先端が連結されたシャフト2aと、このシャフト2aに接続された駆動源2bとが、現像装置に設けられている。駆動源2bは、シャフト2aを回転駆動する不図示のモータと、モータと共にシャフト2aを昇降させる不図示のリフト装置とを有している。駆動源2bは、制御ユニットA(請求項中の制御手段に相当)によって制御される。
また、カップ3は、基板保持部2の周囲に設けられており、現像液の供給または現像処理の過程で、現像液が飛散することを防止する。なお、基板保持部2の回転及び昇降時にもカップ3の位置は固定されたままである。
【0018】
なお、本実施形態の現像装置において行う基板1の現像方法の例としては、パドル現像やスプレー現像などの方法があるが、本発明においては限定する必要はなく、レジストを現像する方法であればよい。
本実施の形態では、パドル形成用の現像液供給ノズル5を用いて、レジスト膜4への現像液の供給及び現像処理を順次行う。
現像液供給ノズル5は、図1の紙面表裏方向に長手方向を延在させた長尺状をなし、その下面に設けた複数の吐出口5a(図1中では一番手前の1つのみ示している)を長手方向に沿って水平に配置している。この現像液供給ノズル5からは、現像液が全体として帯状に吐出される。
現像液供給ノズル5は、基板保持部2の上方に水平かつ平行に配置された2本以上のガイドシャフト5b(図1中では一番手前の1つのみ示している)によって移動可能に支持されている。
ガイドシャフト5bのうち1本は、モータ5cによって回転駆動されるスクリューシャフトで構成されており、このスクリューシャフトとねじ係合する送り部材5dにより、現像液供給ノズル5が吊り下げ支持されている。したがって、現像液供給ノズル5は、モータ5cの回転駆動によりガイドシャフト5bに沿って移動可能に構成されている。
このように構成したことにより、現像液供給ノズル5は、現像液の供給を行う場合に、基板保持部2上に載置した基板1の上方の所定の位置に進出することができ、それ以外の場合に、基板1の上方から退避することができる。
なお、モータ5cの回転駆動による現像液供給ノズル5の移動は、制御ユニットAによって制御される。制御ユニットAは、例えば、ROMに記憶されたプログラムにしたがってCPUがRAMの作業領域を使用し処理を実行するマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0019】
また、本実施形態の現像装置は、図2に示す吸液性シート6及び保持プレート7を有している。本実施形態の現像装置では、保持プレート7によって外周部と背面を保持された吸液性シート6が基板保持部2上の基板1の上方に配置される。吸液性シート6の表面は、基板1の表面に対して水平に保持されている。
吸液性シート6は、後述するように多孔質の材料で構成されており、吸液性シート6の背面は、保持プレート7内の不図示の通孔と、保持プレート7の背後に取り付けたチャンバ部材7aの密閉された内部空間とを介して、減圧ライン7b(請求項中の負圧付与手段に相当)と接続される。
これにより、基板1の表面から吸液性シート6に吸液したリンス液を、チャンバ部材7aの内部空間の負圧を利用して、保持プレート7の通孔を介して減圧ライン7b側に吸い上げ、基板1の表面の乾燥を促進させることができるようにしている。
さらに、本実施形態の現像装置は、保持プレート7及びチャンバ部材7aを上下に昇降させる駆動源を有した昇降機構7c(請求項中の昇降手段に相当)を有している。この昇降機構7cによる保持プレート7及びチャンバ部材7aの昇降は、制御ユニットAによって制御される。昇降機構7cとチャンバ部材7aとは、減圧ライン7bよりも保持プレート7側の箇所において、ロータリージョイント7d(請求項中の回転支持手段に相当)を介して連結されている。このロータリージョイント7dは、チャンバ部材7aの内部空間と減圧ライン7bとを連通する通路(図示せず)を内部に有している。
ロータリージョイント7dによりチャンバ部材7aは、昇降機構7cに対して、基板保持部2の回転軸線の周りに回転可能に支持されている。したがって、昇降機構7cによりチャンバ部材7a及び保持プレート7を基板保持部2側に降下させ、基板1の表面に吸液性シート6の表面を当接させた状態で、駆動源2bにより基板保持部2を回転させると、吸液性シート6、保持プレート7及びチャンバ部材7aも、基板1や基板保持部2と一体となって回転することができる。
なお、現像液供給ノズル5やガイドシャフト5b及びモータ5cと、吸液性シート6や保持プレート7、チャンバ部材7a、減圧ライン7b及び昇降機構7cとは、互いに干渉することが無いように配置されている。
【0020】
吸液性シート6には、多孔質の材料を用いる。多孔質の材料としては、スポンジ状の構造を有する材料を用いることが適当であり、具体的には、ポリビニールアルコール、ポリオレフィン、またはポリエチレン等の有機高分子繊維の薄膜が、一例として挙げられる。これらの材料は、微細な繊維から構成されており、気孔率(単位面積当りの細孔の面積)は70%以上と高い方が好ましく、各細孔間の距離も短い。
【0021】
吸液性シート6は、極めて親水性が高く、微細な気孔が3次元的に広がっていて、毛細管現象を生じる。さらに吸液後の吸液性シート6は、ウエット状態で柔軟性がある方が好ましい。また、吸液性シート6の厚さは、1mm以上10mm以下が好ましい。
ここでは、一例として、吸液性シート6の厚さは5mmで、平均気孔は約90μmで、気孔率は90%のものを用いる。
【0022】
以下に、本実施の形態の現像処理方法について説明する。なお、上述した現像装置を用いて以下の現像処理方法を実行する場合、実行する現像処理方法に適した動作を現像装置の各部が行うように、制御ユニットAによって現像装置の各部の駆動が制御される。
【0023】
現像液供給ノズル5が基板1の上方に移動し現像液を帯状に吐出しながら、基板1の表面に沿って水平に移動することで、現像液が基板1全面に塗布され、レジスト膜4の上に現像液パドル5eが形成される。
【0024】
現像反応を進行させるための所定時間が経過した後に、現像液供給ノズル5と同様の構成により基板1の上方に進出させた不図示の純水供給ノズルから、リンス液としての純水を吐出しながら、基板1を所定の回転数(例えば、500〜2000rpm)で回転させる。純水以外に、界面活性剤を用いたリンス液や希釈現像液を用いてもよい。
【0025】
所定時間、純水を供給して、レジスト膜の表面を純水に置換した後に、現像液供給ノズル5と同様に純水供給ノズルをカップ3外に待避させつつ、基板1を回転停止状態に維持するか、置換した純水(リンス液)の振り切りを完全にしない程度に低速回転(例えば50rpm)させて、基板1の表面が乾燥しない状態を維持しておく。
【0026】
次に、基板1の回転を止めた状態で、吸液性シート6の水平度(基板1に対する平行度)を保ちながら、基板1の表面に向かって吸液性シート6を下降させる。図3は、吸液性シート6が、レジスト膜4の現像により描画された基板1のレジストパターン表面8に接近した状態である。
現像液と置換された洗浄液であるリンス液10の液面は、レジストパターン表面8と同じ程度の高さ位置にあれば好ましいが、リンス液10の液面がレジストパターン表面8よりも高くなってもかまわない。吸液性シート6がリンス液10の液面に接触した段階で、吸液作用が始まる。この時、レジストパターン9を上から崩さないように吸液性シート6をリンス液10の液面の高さからわずかに下降させ、レジストパターン表面8に接触した時点でそのままの高さを保持させる。
即ち、水平に配置した基板1の上方に基板1と平行して配置した吸液性シート6を基板1に接近させて、現像液と置換されて基板1上のレジストパターン9を覆うリンス液10(洗浄液)の液面に吸液性シート6の表面を接触させる接触ステップを実行する。
【0027】
吸液性シート6は、描画部のレジストパターン表面8のリンス液10と、レジストパターン9間の液を十分吸液できるよう、十分な気孔率と体積を有している。例えば、吸液性シート6の気孔率は90%で、厚さは5mmとする。また吸液性シート6の大きさは、基板1と同程度の大きさか、現像で形成されるレジストパターン9のエリアの全体を十分覆う大きさであれば良い。
また、乾燥回転をする直前に、基板1を300rpm以上1000rpm未満で10秒間回転させて液を振り切り、吸液性シート6を基板1に接触させても良い。接触させる時間はリンス液10を吸液する作用が十分働くことが好ましく、例えば5秒以上とする。
【0028】
レジストパターン倒れの発生に対するリンス液10の表面張力による影響を説明するため、図4に概略的な断面図を示す。基板1上には、現像で形成された高アスペクト比のレジストパターン9が形成されている。すなわち、底面の幅に比べて大きな高さを有する2つのレジストパターン9が基板1上に立っている。これらのレジストパターン9は、それらの上部がリンス液10の液面11から露出している。
このような状態において、レジストパターン9が液体(リンス液10)に関して良好な濡れ性を有しているとき、近接した2つのレジストパターン間の液体(リンス液10)の液面11の高さは、表面張力に基づく毛管現象によって上昇する。その上昇した液面11の高さは重力によって引き下げられようとするが、そのときに液面11の表面張力がレジストパターン9の側面を接触角θの方向に引っ張るように作用する。したがって、2つのレジストパターン9が互いに近づけられるような力Fが作用する。
この場合に、レジストパターン9の濡れ性が高ければレジストパターン9の表面に対する液体(リンス液10)の接触角θが小さくなり、レジストパターン間にある液面11とそれらの外側にある液面12との高さの差hは、液体の表面張力が大きいほど大きくなる。
【0029】
吸液性シート6による作用は、液面レベル差hをできる限り無くすように、レジストパターン9,9間の液面11を下げるような効果がある。
【0030】
図5は、吸液性シート6がレジストパターン表面8に接触して、吸液している状態の一例を示す。2本のレジストパターン9,9の外側に接する液面12との高さと、レジストパターン9,9間に溜まった液面11との高さとの差hができるだけ小さくなるように、吸液性シート6によるリンス液10の吸液がパターン間の液面11を下げる働きをするだけで、十分にパターン倒れを防止する効果があり、吸液性シート6によってパターン間のリンス液10を完全に吸液できなくともよい。
この状態が、リンス液10(洗浄液)の液面11に表面を接触させた吸液性シート6によりレジストパターン9に付着したリンス液10(洗浄液)を吸液する吸液ステップを実行している状態である。
【0031】
さらに、吸液性シート6は、基板1が支える底面とは反対側の、レジストパターン表面8を上から支える作用があり、基板1と協働してレジストパターン9を上下から挟み込んで保持することで、レジストパターン倒れを防止する。
この状態が、基板1と吸液性シート6とによりレジストパターン9を挟持する挟持ステップを実行している状態である。
【0032】
次に、液の乾燥を促進するため、基板1に吸液性シート6が接触した状態を維持しながら、駆動源2bの不図示のモータによって、基板1と吸液性シート6を一体で回転させる。例えば、基板1の回転乾燥として、500〜3000rpm、例えば1000rpmとし、30秒間の回転乾燥処理を行う。
この状態が、リンス液10(洗浄液)の液面11に表面を接触させた吸液性シート6を基板1と一体に回転させる回転ステップを実行している状態である。
この時、減圧ライン7bに連通する吸液性シート6の背面側を減圧させることで、吸液性シート6が吸液したリンス液10を保持プレート7乃至チャンバ部材7aの内部空間側に拡散させる。これにより、吸液性シート6の吸液の作用を促進させるとともに、吸液したリンス液10を基板1に垂らさないように、シート内に液を保水する効果がある。なお、吸液性シート6が基板1の表面に接触した段階で、吸液性シート6の背面側の減圧を開始してもよい。
この状態が、リンス液10(洗浄液)を吸液性シート6で吸液させるための負圧を吸液性シート6に付与する負圧付与ステップを実行している状態である。
【0033】
次に、リンス液10(洗浄液)を吸液した吸液性シート6を基板1に対し上方に移動させてレジストパターン9から吸液性シート6を離間させる離間ステップを実行する。
図6は、吸液性シート6がリンス液10を十分に吸液した状態のレジストパターン断面図の一例を示す。
基板1の界面には、わずかにリンス液10が残っているが、これらを完全に乾燥する工程を次に示す。吸液性シート6が保持プレート7の上昇によって、ゆっくりと基板1から上方向に離れて、基板1と吸液性シート6の距離が5mm以上離れた時に、基板1が、500〜3000rpmの高速回転を始める。ここでの最終乾燥としては、例えば1000rpmで3分間基板を回転させる。
以上によって、吸液性シート6を用いた現像処理並びにリンス液10の乾燥工程を完了させる。
【0034】
なお、吸液性シート6は、その保持プレート7に対して交換可能な状態で取り付けられる。1回の現像処理後に、未処理の吸液性シート6に交換するのが好ましく、これにより吸液性シート6に残った不溶成分による汚染を避ける。
【符号の説明】
【0035】
1・・・基板
2・・・基板保持部
4・・・レジスト膜
6・・・吸液性シート
7・・・保持プレート
7b・・・減圧ライン(負圧付与手段)
7c・・・昇降機構(昇降手段)
7d・・・ロータリージョイント(回転支持手段)
9・・・レジストパターン
10・・・リンス液
11・・・パターン間に溜まった液面
12・・・パターン外側に接する液面
A・・・制御ユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスク基板の現像方法であって、
水平に配置した前記基板の上方に該基板と平行して配置した吸液性シートを前記基板に接近させて、現像液と置換されて前記基板上のレジストパターンを覆う洗浄液の液面に前記吸液性シートの表面を接触させる接触ステップと、
前記洗浄液の液面に表面を接触させた前記吸液性シートにより前記レジストパターンに付着した前記基板上の洗浄液を吸液する吸液ステップと、
前記洗浄液を吸液した吸液性シートを前記基板に対し上方に移動させて前記レジストパターンから前記吸液性シートを離間させる離間ステップと、
を含むことを特徴とする現像方法。
【請求項2】
前記吸液ステップは、前記洗浄液を前記吸液性シートで吸液させるための負圧を前記吸液性シートに付与する負圧付与ステップを含んでいることを特徴とする請求項1記載の現像方法。
【請求項3】
前記吸液ステップは、前記基板と前記吸液性シートとにより前記レジストパターンを挟持する挟持ステップを含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の現像方法。
【請求項4】
前記吸液ステップは、前記基板と共に前記レジストパターンを挟持する前記吸液性シートを前記基板と一体に回転させる回転ステップを含んでいることを特徴とする請求項3記載の現像方法。
【請求項5】
基板保持部により水平に保持したフォトマスク基板を回転させつつ該基板上に供給した洗浄液で前記基板上の現像液を置換する現像装置であって、
吸液性シートを保持して前記基板の上方に該基板と平行して配置する保持プレートと、
前記保持プレートを前記基板に対して昇降させる昇降手段と、
前記昇降手段を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、
前記昇降手段により前記保持プレートを前記基板に対し下降させて、該基板上のレジストパターンを覆う前記洗浄液の液面に前記吸液性シートの表面を接触させる第1の制御と、
前記洗浄液の液面に表面を接触させた前記吸液性シートにより前記レジストパターンに付着した前記基板上の洗浄液を吸液した後、前記保持プレートを前記基板に対し上昇させて、前記洗浄液を吸液した前記吸液性シートを前記レジストパターンから離間させる第2の制御と、
を行う、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
前記吸液性シートに負圧を付与する負圧付与手段をさらに備えており、該負圧付与手段により付与された負圧により前記吸液性シートが前記洗浄液を吸液することを特徴とする請求項5記載の現像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1の制御において、前記レジストパターンに前記吸液性シートの表面を接触させて該吸液性シートと前記基板とにより前記レジストパターンを挟持させることを特徴とする請求項5又は6記載の現像装置。
【請求項8】
前記保持プレートを前記基板の回転軸の周りに回転可能に支持する回転支持手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記吸液性シートと前記基板とにより前記レジストパターンを挟持させた状態で、該基板及び前記吸液性シートと共に前記保持プレートを回転させることを特徴とする請求項7記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174974(P2012−174974A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37151(P2011−37151)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】