説明

現像装置、並びにこれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】装置の小型化を図り、且つ初期現像剤収容器内の初期現像剤を確実に落下させることが可能な供給回収一体方式の現像装置、並びにこれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】初期現像剤を収容するべく、現像ケーシング50の上方に配置され現像ケーシング50に連通する開口部を有する初期現像剤収容器61と、初期現像剤収容器61の開口部を封止するヒートシール62と、ヒートシール62を保持しシール部材62を引き抜くべく一端が現像ケーシング50と初期現像剤収容器61の間から外部に突出する引き抜き部材63とを備える現像装置において、上記引き抜き部材63は斜め上に引き抜かれるように設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を用いる現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ、及び、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トナーとキャリアとを含有する二成分現像剤を用いる現像装置では、現像装置の出荷時及び運搬時において現像剤を外気と遮断する必要がある。その理由は、現像剤中のトナー成分が外気との接触により性能が低下する虞があり、また、現像装置運搬時の振動等で現像剤が現像装置内から流出する虞があるからである。そのため、工場で二成分現像剤を予め密閉封入した状態で現像装置を組み付け(以下、プリセットという)、これを画像形成装置本体にセットした状態で出荷することが多い。ユーザーは、製品となる画像形成装置を受け取った後、現像装置に取り付けられた現像剤封止のためのシール部材を取り除いて、現像動作が可能なようにして使用を開始する。
【0003】
例えば、特許文献1には、現像剤担持体が像担持体と対向するように露出する開口部を備え、内部に現像剤担持体や現像剤搬送部材が配置される現像器内に現像剤を予め封入する現像装置が提案されている。この現像装置では、現像器の開口部をシールすべく、シール部材を現像剤担持体と現像剤搬送部材との間に設けている。そして、現像剤搬送部材等の回転軸と平行にシール部材を引き抜くことにより、現像器内の現像剤が現像剤搬送部材によって現像剤担持体に供給可能となる構成となっている。
【0004】
この現像装置は、現像剤担持体に対向配置される現像剤搬送路が、現像剤担持体へ現像剤を供給する作用・及び現像剤担持体から現像剤を回収する作用の両作用を兼務する供給回収一体方式のものである。この現像剤搬送路内の現像剤は一度現像剤担持体に供給され、画像形成によりトナーが消費された現像剤は再度現像剤搬送路内に戻り、また画像形成に用いられるという作用を、現像剤搬送路内の軸方向で絶えず繰り返すのである。そのため、現像剤担持体に担持される現像剤が包含するトナー量が軸方向で漸減する、すなわち、画像の長手方向両端部で画像濃度の差異が生じやすいという欠点がある。
【0005】
これに対し、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給搬送路と、現像剤担持体から現像剤を回収する現像剤回収搬送路との両搬送路が現像剤担持体に対向配置される供給回収分離方式も知られている。現像剤供給搬送路内の現像剤は現像剤担持体に供給され、現像領域でトナーが消費された現像剤はそのまま現像剤回収搬送路内に回収され、新たにトナーが補給された後に再び現像剤供給搬送路に戻って現像剤担持体に供給されるという作用を繰り返す。よって、供給回収分離方式の現像装置は、供給回収一体方式の現像装置のように、画像の長手方向両端部で画像濃度差が生じにくい。
【0006】
ところが、この供給回収分離方式の現像装置は、供給回収一体方式の現像装置に比べると、プリセット時に現像剤を予め現像器内に封入密閉することが困難である。これは次の理由による。すなわち、供給回収一体方式の現像装置において、初期現像剤が収容される現像剤搬送路と現像装置外部とを連通させる経路は、現像剤搬送路内の現像剤を現像剤担持体へ供給するための開口部を通じた経路のみである。よって、シール部材による封止箇所は、この開口部だけでよい。これに対し、供給回収分離方式の現像装置において、現像剤供給搬送路内の現像剤を現像剤担持体へ供給するための供給用開口部を通じた経路だけでなく、現像剤担持体からの現像済み現像剤を現像剤回収搬送路内へ回収するための回収用開口部を通じた経路の2箇所が存在する。そのため、供給回収分離方式の場合、供給回収一体方式よりも広い開口部の範囲をシール部材で封止する必要がある。一般に、封止する範囲が広くなればなるほど、その封止安全性が低下する。
【0007】
よって、上述した供給回収分離方式の現像装置においては、初期現像剤を密閉封入するための箱状の初期現像剤収容器を現像器の上方に設置している。そして、初期現像剤収容器の開口縁部に設けられるシール貼付台座面にシール部材を貼付し、シール部材を外部から引き抜き可能なようにシール部材を保持する引き抜き部材を装置の外部へ突出させている。この引き抜き部材を現像剤担持体の軸方向に沿って平行に引き抜くことで、シール部材をシール貼付台座面から剥離させて初期現像剤収容器を開口させ、初期現像剤収容器内の初期現像剤を現像器内に落下させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現像器の上方に初期現像剤収容器を設置することは、高さ方向に装置が大きくなってしまい小型化を図る上では不利であり、初期現像剤収容器を設置しながらも装置の小型化を図ることが期待されている。一般に現像剤供給搬送路や現像剤回収搬送路内には、現像剤を搬送するべく、現像剤搬送部材が配置されている。これら現像剤搬送部材は回転軸と回転軸の周囲に形成されたスクリュウなどの羽根部材とから構成され、現像装置の外部から回転軸に連結された駆動ギヤ等の駆動伝達手段によって回転駆動される。上述したように、シール部材及び引き抜き部材を搬送部材の軸方向に平行に引き抜くためには、装置側壁面に設置される駆動伝達手段を避けて、シール部材及び引き抜き部材が設置されていた。つまり、初期現像剤収容部の高さは、これらシール部材及び引き抜き部材の位置と、必要な初期現像剤量とによって決まっていた。
【0009】
また、一般に初期現像剤収容器を設置する現像装置の構成では、初期現像剤収容器内の初期現像剤を自重により落下させる構成であるため、シール部材を引き抜いた後も、初期現像剤収容器内で保存中に緩凝集状態になった初期現像剤が落下せずに残ってしまうことがあった。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は装置の小型化を図り、且つ初期現像剤収容器内の初期現像剤を確実に落下させることが可能な供給回収一体方式の現像装置、並びにこれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、像担持体に向けて開口部が形成された現像器内に配置され、該開口部から一部を露出させてトナーとキャリアとを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、該現像剤担持体上に担持される現像剤量を規制する現像剤規制部材と、該現像器内に形成され該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材が配置される現像剤供給搬送路と、該現像器内に形成され該現像剤担持体から現像剤を回収する現像剤回収部材が配置される現像剤回収搬送路と、初期現像剤を収容するべく該現像器の上方に配置され該現像器に連通する開口部を有する初期現像剤収容器と、該初期現像剤収容器の開口部を封止するシール部材と、該シール部材を保持し該シール部材を引き抜くべく一端が該現像器と該初期現像剤収容器の間から外部に突出する引き抜き部材とを備える現像装置において、上記引き抜き部材は斜め上に引き抜かれるように設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、装置の小型化を図り、且つ初期現像剤収容器内の初期現像剤を確実に落下させることが可能な供給回収一体方式の現像装置、並びにこれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示す概略構成図。
【図2】同画像形成装置の画像形成部の内部構成を示す概略断面図。
【図3】同画像形成装置の現像装置を供給スクリュウ及び回収スクリュウの軸線方向に沿って切断したときの構成を説明する断面図。
【図4】同画像形成装置の現像装置の内部構成を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をタンデム型カラー画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示す概略構成図である。図1に示すように、この画像形成装置は、装置本体1のほぼ中央に配置される画像形成部2と、この画像形成部2の下方に配置され、画像形成部2にシート状の記録媒体たる用紙Sを給送する給紙部20とを備える。また、この画像形成装置は、画像形成部2で用紙S上に転写されたトナー像を定着せしめる定着部15、定着部15により送出された用紙Sを装置本体1の上部の積載部26に向けて排出する排紙部27を備える。
【0015】
上記画像形成部2は、図中時計回り方向に回転する像担持体たる感光体3a〜3d上に、互いに異なった色のトナー像を形成する画像形成部2a、2b、2c、2dを備えている。図示する各画像形成部2a〜2dでは、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及びブラックトナー像が感光体3a〜3d上それぞれ形成される。
【0016】
次に、画像形成部2の構成について詳しく説明する。図2は、画像形成部の内部構成を示す概略断面図である。各画像形成部2a、2b、2c、2dは、トナー色が異なる以外は構成が同じであるため、図2中、a,b,c,dの添え字を省略して説明する。各画像形成部2は、図1及び図2に示すように、感光体3の周囲に、感光体3を一様に帯電する帯電装置4、感光体3上の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置5、感光体3上のトナー像を転写せしめる転写ローラ6、転写後の感光体3上の転写残トナーを除去するクリーニング装置7等を備えている。帯電装置4は、不図示の電源により帯電バイアスが印加され、感光体3表面を一様に帯電する帯電ローラ41と、帯電ローラ41表面の付着物を除去する帯電ローラ清掃部材42とを備えている。帯電装置4に対して感光体移動方向下流側に隣接する空間は、光走査装置(LSU)8による露光がなされる光路空間Xとなる。光走査装置8は、帯電装置4により一様に帯電された感光体3表面に、画像情報に対応したレーザ光を照射し静電潜像を形成する。現像装置5は、後述するように、現像器たる現像ケーシング50内にトナーとキャリアとからなる2成分現像剤を収容し、感光体3上の潜像にトナーを供給して現像する現像ローラ51等を備える。現像装置5の上方には、円筒形状のトナー容器30とトナー補給機構31が配置され、現像装置5でのトナー消費に応じてトナー補給機構31が駆動し、トナー容器30から現像装置5にトナーが供給される。また、クリーニング装置7は、感光体3表面上の残留トナー等の付着物を除去するクリーニングブレード71と、固形潤滑剤72を削って潤滑剤を感光体3の表面上に塗布する潤滑剤塗布ブラシ73とを備える。また、クリーニング装置7は、クリーニングブレード71で除去した残留トナー等の付着物を図示しない廃トナー収容部に搬送する廃トナー回収スクリュウ74を備える。
【0017】
また、感光体3a〜3dの下部には、中間転写体として構成された中間転写ベルト10が配置されている。この中間転写ベルト10は、駆動ローラ11及び支持ローラ12に張架され、図中矢印方向に回転駆動される。この中間転写ベルト10を挟み込むようにして感光体3a〜3dに対向する位置には、転写ローラ6a〜6dが設置され、感光体3上のトナー像が中間転写ベルト10上に転写される一次転写部が形成されている。この中間転写ベルト10を挟み込むようにして支持ローラ12に対向する位置には、二次転写ローラ13が設置され、中間転写ベルト10上のトナー像が用紙Sに転写される二次転写部が形成されている。また、中間転写ベルト10には、その表面に残留するトナーを除去するためのクリーニング装置14が設置されている。なお、この中間転写体としては、ドラム状の中間転写体を用いることもできる。
【0018】
なお、上記画像形成部2では、図2に示すように、感光体2と、感光体2の周囲に配設される帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置7とが1つのユニットとして共通の支持体に支持されるプロセスカートリッジとして構成され、画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。画像形成装置本体に対しては、トナー容器30、トナー補給機構31、画像形成部(プロセスカートリッジ)2a〜2dが一体で脱着されるようになっている。
【0019】
上記画像形成部2の図1中右上方に配置される定着部15は、定着ローラ16、定着ローラ16に巻き掛けられた定着ベルト17、定着ベルト17を介して定着ローラ16に圧接する加圧ローラ18とを備える。定着部15は、上記したものに限らず、ヒータを内蔵したローラ式のもの、また加熱方式もIHを採用したものなど、適宜採用することができる。
【0020】
上記画像形成部2の中間転写ベルト10の下方に配置された給紙部20は、シート状の記録媒体としての用紙Sを積載する給紙トレイ21を備えている。また、この給紙トレイ21には、該給紙トレイ21に積載された用紙Sを送り出す給紙コロ22と、重送された用紙を1枚に分離する分離手段としてのフリクションパッド23とを備えている、また、この給紙部20は、所定のタイミングで用紙Sを二次転写部に送り出すレジストローラ対24や、両面画像形成時に用いる再搬送路25等も備えている。ここで、シート状の記録媒体は、例えば転写紙や記録紙等の用紙(厚紙、はがき、封筒、普通紙、薄紙等を含む)の他に、塗工紙(コート紙やアート紙等を含む)、OHPシートもしくはOHPフィルム、トレーシングペーパ等の画像転写可能な被画像形成媒体であってもよい。
【0021】
かかる画像形成装置において画像形成が開始されると、感光体3aが図中時計方向に回転駆動され、この時、帯電装置4aによって感光体3の表面が所定の極性に一様に帯電される。次いで、その帯電面に、光走査装置8から画像情報に基づくレーザ光が照射され、これによって感光体3aに静電潜像が形成される。そして、感光体3aの表面に形成された静電潜像は、現像装置5aによってイエロートナー像として可視像化され、そのイエロートナー像は転写ローラ6aによって中間転写ベルト10上に転写される。
【0022】
フルカラー画像形成時は上述した画像形成動作が残りの全ての画像形成部2b〜2dで同様に行われ、これによって各感光体3a〜3dにそれぞれ形成されたイエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及びブラックトナー像が形成される。感光体3a〜3dに形成されたトナー像は、一次転写部で転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト10上に順次重ね合わせて転写される。一方、給紙部20から給送された用紙Sは、レジストローラ24に向けて送り出され、その先端が停止しているレジストローラ24に一旦突き当てられる。これによって用紙S先端の斜めずれなどが修正・整合される。そして、レジストローラ24は、中間転写ベルト10上に形成されたカラートナー像が2次転写ローラ13を設けた二次転写部で用紙Sの先端部と合致するような所定のタイミングで回転を再開し、二次転写部に向けて用紙Sを送り出す。
【0023】
二次転写部で未定着のカラートナー像が転写された用紙Sは、定着部15に送られ、定着部15による加熱・加圧によって未定着のカラートナー像が定着される。カラートナー像が定着せしめられた用紙Sは、シート排紙部27の排紙ローラ対により装置本体1の上面に設けられたシート積載部26に、画像面が下向き(フェースダウン)で排出・排紙される。カラートナー像転写後の中間転写ベルト10の表面に付着する転写残トナー等は、ベルトクリーニング装置14によって除去され、次の作像・転写工程に備える。用紙Pの裏面に画像形成が行われる場合には、定着部15を通過した用紙Sが再搬送路25に送出され、上述した作像・転写行程が繰り返される。
【0024】
次に、現像装置5の構成について詳しく説明する。図3は、現像装置を供給スクリュウ及び回収スクリュウの軸線方向に沿って切断したときの構成を説明する断面図である。現像装置5は、図2に示すように、現像ハウジング50の開口部から一部露出して感光体3と対向するように配置され、現像剤を表面に担持して表面移動する現像ローラ51と、現像ローラ51上の現像剤担持量を規制する現像剤規制部材であるドクタブレード52とを備える。現像ローラ51は、非磁性材料よりなる回転自在な現像スリーブ内に、磁界を発生するマグネットローラが固定配置されている。また、現像ハウジング50内には、現像ローラ51に対向する位置に、供給搬送路53と回収搬送路54とが上下に配置される。供給搬送路53には、現像剤を供給しながら現像ローラ51の軸線方向に沿って現像剤を搬送する現像剤供給部材たる供給搬送スクリュウ55が回転可能に保持される。回収搬送路54には、現像ローラ51上の現像後の現像剤を回収しながら、供給搬送スクリュウ55の搬送方向とは逆方向に現像剤を搬送する現像剤回収部材たる回収搬送スクリュウ56が回転可能に保持される。供給搬送路53と回収搬送路54とは、図2及び図3に示すように、仕切り壁57によって空間的に仕切られ、仕切り壁57の軸線方向両端に設けられた開口部である剤落下口及58及び剤上昇口59によって連通する。剤落下口58は、供給搬送路53の現像剤搬送方向下流側(以下、単に下流側という)端部と回収搬送路54の現像剤搬送方向上流側(以下、単に上流側という)端部との連通口となる。剤上昇口59は、回収搬送路54の下流側端部と供給搬送路53の上流側端部との連通口となる。また、回収搬送路54の下流側端部の位置には、トナー濃度センサ60が現像ケーシング50の外部から対向するように配置されている。このトナー濃度センサ60は、回収搬送路54内の下流側端部での現像剤のトナー濃度を磁気的に検知することができる。
【0025】
上記構成の現像装置5では、供給搬送路53内の現像剤が供給スクリュウ55の回転により現像ローラ51に振り掛けられ、現像ローラ51の表面に現像剤が担持・搬送される。現像ローラ51の表面に担持・搬送される現像剤は、ドクタブレード52と現像ローラ51とが対向する隙間であるドクタギャップで層厚が規制され、感光体3と対向する現像領域に搬送される。現像ローラ(現像スリーブ)51には現像バイアスが印加され、現像領域においては、印加される現像バイアスの作用により、現像ローラ51上のトナーが感光体3上の静電潜像に選択的に転移して、静電潜像が現像される。現像領域を通過した後の現像ローラ51上の現像剤は、回収搬送路54内に回収され、回収スクリュウ56の回転により供給搬送路53内の現像剤とは反対方向へ搬送される。供給搬送路53内の現像剤の内、現像ローラ51に供給されず供給搬送路53の下流側端部まで搬送された現像剤は剤落下口58から回収搬送路54へと受け渡される。
【0026】
さらに、上記トナー濃度センサ60の検知結果に応じて、トナー容器30内のトナーがトナー補給機構31を介してトナー補給口32に供給される。トナー補給口32から補給されたトナーは、供給搬送路53の下流側端部まで到達した現像剤とともに剤落下口58から回収搬送路54へと受け渡される。回収搬送路54内の回収スクリュウ56は軸線方向へと現像剤を搬送し、その下流側端部近傍の回収搬送路54内で現像剤を堆積させる。トナー補給口32から供給されたトナーによりトナー濃度が再び上昇し、回収搬送路54の下流側端部で堆積した現像剤は、剤上昇口59を介して上方の供給搬送路53へと受け渡される。そして、供給搬送路53へと受け渡された現像剤は、供給スクリュウ55の回転によって軸線方向に搬送されながら現像ローラ51に供給される。
【0027】
ところで、上記現像装置5は、供給搬送路53の上方に略箱状の初期現像剤収容器61を備えている。プリセット時(未使用時)には、上記現像ケーシング50内に現像剤を収容せず、初期現像剤収容器61内に初期現像剤が密閉封入されている。図4は、現像装置の構成を示す要部拡大断面図である。この初期現像剤収容器61は、図3及び図4に示すように、下部に大きな一つの開口部を有して現像ケーシング50(供給搬送路53)と連通しているが、プリセット時には、その開口部が一枚のシート状のヒートシール62により封止され、その内部に初期現像剤が密閉封入されている。そして、使用開始時に、このヒートシール部材62の引き抜き部材63を装置本体手前側から引き抜くことにより、初期現像剤収容器61の開口部を解放して初期現像剤収容器61内の初期現像剤を現像ケーシング50内に落下させる。
【0028】
上記ヒートシール62は、引き抜き部材63と一体成型され、装置本体奥側(図3中左側端部)の位置が剥離開始位置となるように折り返された状態で、初期現像剤収容器61の開口縁部に設けられたシール貼付台座面に剥離容易な状態で接着されている。接着方法としては、熱圧着が密閉性の点から好ましい。そして、この引き抜き部材63の一端が、置本体手前側(図3中右側端部)で、現像ケーシング50と初期現像剤収容器61との間から突出しており、ユーザーによって引き抜き作業が可能となっている。これにより、ヒートシール62が初期現像剤収容器61の開口部に貼付されたときのシール性と、引き抜き部材63によりヒートシール62を現像装置5から引き抜く時の操作性が確保される。装置本体前を解放する構成の画像形成装置においては、本体に現像装置(プロセスカートリッジ)をセットしたまま引き抜くことが可能である。また、ヒートシール62は、開口部をシールするシール部材と、シール部材を剥離させながら引き抜くための引き抜き部材とを一体成型したものでも、シール部材に引き抜き部材を付設したものでもよいが、生産性、引き抜き時の確実性の点からは、シール部材と引き抜き部材とを一体にシート状に成型し、一端を引き抜き部材63として形成することが好ましい。
【0029】
ここで、初期現像剤収容器61の開口縁部に設けられたシール貼付台座面は、供給スクリュウ55の軸線方向と平行に略水平方向に延在しているが、装置本体手前側(図3中左側)で引き抜き部材63を斜め上に突出させるべく、図3中符号Yで示すように装置手前側のシート貼付台座面が傾斜している。図4に示すように、開口部を塞ぐヒートシール62全体の位置は、図中実線で示す位置にあるが、装置本体手前側で引き抜き部材63が突出する位置は、図中一点鎖線で示すように先の図中実線で示す位置より高くなるのである。
【0030】
一般に、現像ケーシング50の装置本体手前側壁面には、供給スクリュウ55を駆動させる駆動ギヤ64等が設置されている。そのため、引き抜き部材63を現像ローラ51の軸線方向と水平方向に引き抜こうとすると、この駆動ギヤ64等を避けて、図中点線で示す位置に、シール部材62と引き抜き部材63とを設置しなければいけなかった。これに対し、本実施形態に係る現像装置5において、上記ヒートシール62はシール貼付台座面の全体の高さを、図中実線で示すように低くして、装本体手前側で引き抜き部材63を突出させる高さを図中点線で示すように高くしている。これにより、初期現像剤収容器61では、ヒートシール62を一点鎖線で示す位置に設置して引き抜き部材63を水平方向に引き抜くように構成する場合に比べ、初期現像剤を収容するための容積を稼ぐことができる。つまり、本実施形態に係る現像装置5においては、所定量の初期現像剤を初期現像剤収容器61に収容する場合には、引き抜き部材63を水平方向に引き抜く構成に比べ、図4中点線で示す高さから図4中実線で示す高さを引いた分だけ、初期現像剤収容器61の高さを低くすることができるのである。なお、一般に現像ケーシング50の装置本体奥側(図3中右側)にも、現像ローラ51等を駆動させるべく、駆動ギヤ列が配置されている。そのため、現像ケーシング50の装置本体手前側であっても奥側であっても、図4中実線で示す位置でヒートシール62及び引き抜き部材63を水平に引き抜くのは難しい。
【0031】
また、このように構成される現像装置5においては、ユーザーによってヒートシール62と引き抜き部材63が斜め上に引き抜かれることになる。そのため、ヒートシール62や引き抜き部材63は供給スクリュー55のスクリュウ部に接触しながら移動し、その際のヒートシール62や引き抜き部材63の振動が初期現像剤収容器61内の初期現像剤に伝わる。これにより、初期現像剤収容器61内の現像剤が保存状態で緩凝集状態になっている場合でも、ヒートシール62の引き抜き時の振動が伝わってその凝集状態を崩すことができ、ヒートシール62の引き抜き後に初期現像剤収容器61内に現像剤が残るのを抑制することができる。
【0032】
なお、本実施形態に係る供給回収分離方式の現像装置は、現像剤供給搬送路の下流側と現像剤回収搬送路の上流側とを接続し、且つ、現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向上流側と現像剤回収搬送路の下流側とを接続し、現像剤供給搬送路内と現像剤回収搬送路内の現像剤搬送方向が互いに逆方向となる構成である。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではなく、更に別の搬送路を設けた供給回収分離方式の現像装置であってもよい。例えば、現像剤供給搬送路の下流側と現像剤回収搬送路の下流側と更に別の搬送路の上流端とを接続し、かつ、当該別の搬送路の下流側と現像剤供給搬送路の上流側とを接続した循環搬送路を有し、現像剤供給搬送路と現像剤回収搬送路内の現像剤搬送方向が互いに同じとなるような構成であってもよい。
【0033】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
感光体2などの像担持体に向けて開口部が形成された現像ケーシング50などの現像器内に配置され、該開口部から一部を露出させてトナーとキャリアとを含む現像剤を担持する現像ローラ51などの現像剤担持体と、該現像剤担持体上に担持される現像剤量を規制するドクタブレード52などの現像剤規制部材と、該現像器内に形成され該現像剤担持体に現像剤を供給する供給スクリュウ55などの現像剤供給部材が配置される供給搬送路53などの現像剤供給搬送路と、該現像器内に形成され該現像剤担持体上から現像剤を回収する回収スクリュウ56などの現像剤回収部材が配置される回収搬送路54などの現像剤回収搬送路と、初期現像剤を収容するべく該現像器の上方に配置され該現像器に連通する開口部を有する初期現像剤収容器61などの初期現像剤収容器と、該初期現像剤収容器の開口部を封止するヒートシール62などのシール部材と、該シール部材を保持し該シール部材を引き抜くべく一端が該現像器と該初期現像剤収容器の間から外部に突出する引き抜き部材63などの引き抜き部材とを備える現像装置において、上記引き抜き部材は斜め上に引き抜かれるように設置される。
これよれば、上記実施形態で説明したように、上記引き抜き部材を斜め上に引き抜くことになるのでシール部材の設置高さを低くし、初期現像剤収容器の容積を稼ぐことができる。つまり、所定量の初期現像剤を収容する場合には、その分だけ初期現像剤収容器の高さを低くすることができ、装置の高さ方向の小型化が可能である。また、上述したように、引き抜き部材を斜め上に引き抜くことで、シール部材と現像剤供給部材とを接触させ初期現像剤収容器内の現像剤に振動を与えることができる。これにより、シール引き抜き後に初期現像剤収容器内に現像剤が残ることを抑制することができ、確実に現像器内に現像剤を供給し安定した動作が可能となる。
(態様B)
像を担持する感光体3などの像担持体と、該像担持体を一様帯電せしめる帯電装置4などの帯電手段と、該像担持体上の潜像を現像する現像装置5などの現像手段と、該像担持体に残留する転写残トナーをクリーニングするクリーニング装置7などのクリーニング手段とを備える画像形成装置に用いられ、該像担持体、該帯電手段、該クリーニング手段より選ばれる少なくとも1つと、該現像手段とが一体になって画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジにおいて、上記現像手段として、請求項1の現像装置を用いる。これによれば、上記実施形態で説明したように、プロセスカートリッジの小型化及び動作の安定化を図ることが可能である。
(態様C)
感光体3などの像担持体と、該像担持体に潜像を形成する光走査装置8などの潜像形成手段と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置5などの現像手段とを備える画像形成装置において、上記現像手段として請求項1の現像装置を備える。これによれば、上記実施形態で説明したように、画像形成装置本体の小型化及び動作の安定化を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 装置本体
2 画像形成部
3 感光体
4 帯電装置
5 現像装置
6 転写ローラ
7 クリーニング装置
8 光走査装置
50 現像ケーシング
51 現像ローラ
52 ドクタブレード
53 供給搬送路
54 回収搬送路
55 供給スクリュウ
56 回収スクリュウ
61 初期現像剤収容器
62 ヒートシール
63 引き抜き部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2005−189423号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に向けて開口部が形成された現像器内に配置され、該開口部から一部を露出させてトナーとキャリアとを含む現像剤を担持する現像剤担持体と、
該現像剤担持体上に担持される現像剤量を規制する現像剤規制部材と、
該現像器内に形成され該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材が配置される現像剤供給搬送路と、
該現像器内に形成され該現像剤担持体から現像剤を回収する現像剤回収部材が配置される現像剤回収搬送路と、
初期現像剤を収容するべく該現像器の上方に配置され該現像器に連通する開口部を有する初期現像剤収容器と、
該初期現像剤収容器の開口部を封止するシール部材と、
該シール部材を保持し該シール部材を引き抜くべく一端が該現像器と該初期現像剤収容器の間から外部に突出する引き抜き部材とを備える現像装置において、
上記引き抜き部材は斜め上に引き抜かれるように設置されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
像を担持する像担持体と、該像担持体を一様帯電せしめる帯電手段と、該像担持体上の潜像を現像する現像手段と、該像担持体に残留する転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備える画像形成装置に用いられ、該像担持体、該帯電手段、該クリーニング手段より選ばれる少なくとも1つと、該現像手段とが一体になって画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
上記現像手段として、請求項1の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項3】
像担持体と、
該像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置において、
上記現像手段として請求項1の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104932(P2013−104932A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247053(P2011−247053)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】