説明

現像装置および画像形成装置

【課題】磁気記録ローラ上に現像パターンを形成したものを版として用いることで安定した画質を得ること、およびバリアブル印刷ができることを両立した、現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】磁気記録ローラ101上の磁性粒子が付着していない部分(画像部)にインク151を付着することで、磁性粒子(非画像部)が形成された現像パターンを版として用いることが可能となり、印刷において安定した画質を得ることが可能となる。また、磁気記録ローラ101上の磁性粒子を取り除き、新たな現像パターンに応じた磁気潜像を磁気記録ローラ101上に形成することで、異なる現像パターンを瞬時に形成することができることから、いわゆるバリアブル印刷も容易に実現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気潜像を保持できる磁気記録回転体上に磁性粒子を用いて現像パターンを形成したものを版として用いる現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像されたパターンを紙などの記録媒体に画像として印刷する現像装置として様々な方式が挙げられる。高速で印刷することが実現できる方式としては、静電潜像を乾式トナーまたは湿式トナー等の着色粉体を用いて現像する電子写真方式(たとえば、下記特許文献1)、磁気潜像を磁性トナーを用いて現像するマグネトグラフィ方式(たとえば、下記特許文献2)、インクを微小液滴として吐出するインクジェット方式などが挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの方式では着色粉体や微小液滴を使っているため個々の着色粉体や液滴までは制御しきれず、安定して大量の画像を高画質で印刷することは難しい。
【0004】
また、電子写真方式では静電気という制御が難しい要素を使っていることが安定した画質を保つのをさらに難しくしている。マグネトグラフィでは磁性トナーを使っていることがカラー化を難しくしている。インクジェット方式では低粘度のインクしか吐出できないことで滲みやすくなったり、ヘッドの目詰まりによって画像欠損が発生したりしてしまう。
【0005】
安定して大量の画像を高画質で印刷できる方式として、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、グラビア印刷方式などが挙げられる。これらの印刷方式は同じ版を繰り返し使い、版に安定した量のインクを供給して印刷するので、高画質の画像を安定して大量に形成することができる。
【0006】
しかしながら、これらの版を使った方式は、同じ画像を大量に印刷することが前提となった画像形成方式であるので、1枚ずつ違った画像を印刷するような、いわゆるバリアブル印刷には対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−51119号公報
【特許文献2】特開2009−92941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子写真方式、マグネトグラフィ方式、インクジェット方式などの印刷方式は、同じ版を繰り返し使うものではなくバリアブル印刷を得意としている。しかし、高画質の画像を安定して印刷することが難しい。
【0009】
現存する画像形成方式で、安定して大量の画像を高画質で印刷することと、バリアブル印刷を両立している印刷方式はない。そのため、たとえば、大部分が同じ画像で1部分だけが1枚1枚違うようなものを安定した画質で大量に印刷しようとしたときには同じ絵柄の部分と1枚1枚違う部分とで、違う画像形成装置を使って印刷しなければならない。
【0010】
本発明はこの課題を解決するもので、磁気記録回転体上に現像パターンを形成したものを版として用いることで安定した画質を得ること、およびバリアブル印刷ができることを両立した、現像装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に基づいた現像装置においては、表面に磁気潜像を保持できる磁気記録回転体と、上記磁気記録回転体に上記磁気潜像を書き込む磁気書き込みヘッドと、上記磁気書き込みヘッドに書き込まれた上記磁気潜像の上に磁性粒子を供給する磁性粒子供給装置と、上記着色剤を上記磁気記録回転体の表面上に供給する着色剤供給装置とを備える。
【0012】
また、上記磁性粒子表面の上記着色剤に対する親和性と上記磁気記録回転体表面の上記着色剤に対する親和性とが異なることによって、上記着色剤を上記磁性粒子表面、または上記磁気記録回転体表面に付着させる。
【0013】
他の形態においては、上記磁性粒子供給装置と上記着色剤供給装置との間に、上記磁気記録回転体の表面上に湿し水を供給する湿し水供給装置を有し、上記磁性粒子の表面は、上記磁気記録回転体の表面よりも上記湿し水との親和性が高く、上記着色剤は、上記湿し水との親和性よりも上記磁気記録回転体の表面との親和性の方が高く、上記磁性粒子供給装置によって上記磁気記録回転体上に付着した上記磁性粒子に上記湿し水を含ませることで、上記磁気記録回転体上の上記磁性粒子が付着していない部分にのみ上記着色剤を付着させる。
【0014】
他の形態においては、上記磁性粒子供給装置は、水を含む液体中に分散させた上記磁性粒子を上記磁気潜像の上に付着させ、上記磁性粒子の表面が、上記磁気記録回転体の表面よりも高い親水性を有し、上記着色剤は、上記水との親和性よりも上記磁気記録回転体の表面との親和性の方が高く、上記磁気記録回転体上の上記磁性粒子が付着していない部分に上記着色剤を付着させる。
【0015】
他の形態においては、上記磁性粒子は、上記着色剤との親和性よりも上記磁気記録回転体の表面との親和性の方が高く、上記磁気記録回転体上の上記磁性粒子が付着していない部分に上記着色剤を付着させる。
【0016】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述の現像装置を有する。
【発明の効果】
【0017】
この発明に基づいた現像装置および画像形成装置によれば、磁気記録回転体上に現像パターンを形成したものを版として用いることで安定した画質を得ることと、およびバリアブル印刷ができることを両立した現像装置および画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1から3における画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態1の現像装置おける現像工程を示す第1断面工程図である。
【図4】実施の形態1の現像装置おける現像工程を示す第2断面工程図である。
【図5】実施の形態1の現像装置おける現像工程を示す第3断面工程図である。
【図6】実施の形態1の現像装置おける現像工程を示す第4断面工程図である。
【図7】実施の形態1の現像装置おける転写工程を示す断面図である。
【図8】実施の形態2における画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図9】実施の形態2の現像装置おける現像工程を示す第1断面工程図である。
【図10】実施の形態2の現像装置おける現像工程を示す第2断面工程図である。
【図11】実施の形態2の現像装置おける現像工程を示す第3断面工程図である。
【図12】実施の形態2の現像装置おける転写工程を示す断面図である。
【図13】実施の形態3における画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図14】実施の形態3の現像装置おける現像工程を示す第1断面工程図である。
【図15】実施の形態3の現像装置おける現像工程を示す第2断面工程図である。
【図16】実施の形態3の現像装置おける現像工程を示す第3断面工程図である。
【図17】実施の形態3の現像装置おける転写工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に基づいた各実施の形態における現像装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0020】
また、画像形成装置として、複数の画像形成ユニットを備えるフルカラー方式の画像形成装置1を図示しているが、本発明は、フルカラー方式にのみ限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する1色(ブラック等)の画像形成ユニットを採用している画像形成装置への適用も可能である。
【0021】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本実施の形態における画像形成装置1について説明する。なお、図1は、各実施の形態における画像形成装置1の外観を示す斜視図、図2は実施の形態1における画像形成装置に採用される現像装置10Aを含む画像形成ユニット100Aの構造を示す断面模式図である。なお、後述の実施の形態2では、現像装置10Bを含む画像形成ユニット100Bが採用され、実施の形態3では、現像装置10Cを含む画像形成ユニット100Cが採用されている。
【0022】
(画像形成装置1)
画像形成装置1は、複写機、プリンタ、またはファクシミリ等の画像形成装置の一例である。画像形成装置1は、本体の上部に位置する操作パネル50内に、操作部51および操作ディスプレイ52を有している。操作部51は、キー51aを通して入力されたユーザからの各種の指示等を受ける。操作ディスプレイ52は、ユーザに対する指示メニュー等を表示する。
【0023】
本体の上面には、スキャナ53およびフィーダ55が設けられている。フィーダ55は原稿をスキャナ53に送る。本体の側部には、プリンタ54が設けられている。本体の下部には、トレイ57および給紙部58が設けられている。
【0024】
トレイ57には、プリンタ54によって画像を印刷された記録媒体としての用紙が排出される。給紙部58は、プリンタ54に用紙を供給する。本体の内部には複数の画像形成ユニット100Aが設けられている。現像装置10で現像された現像パターンに対して、インクが塗布されることにより画像パターンが形成され、そのインクによる画像パターンが記録媒体に印刷される。
【0025】
(画像形成ユニット100A)
図2は、画像形成ユニット100Aの詳細を模式的に示した断面図である。画像形成ユニット100Aは、本実施の形態における現像装置10Aを含んでいる。以下、画像形成ユニット100Aの構成について説明する。
【0026】
画像形成ユニット100を構成する現像装置10Aは、磁気記録ローラ101と、この磁気記録ローラ101の周囲に、回転方向(図中R1方向)に沿って、磁気書き込みヘッド102、磁性粒子供給装置103、湿し水供給装置104、着色剤供給装置105、磁気記録ローラ清掃装置109、および消磁装置111が順番に設けられている。
【0027】
現像装置10A以外に、画像形成ユニット100の構成装置として、着色剤供給装置105と磁気記録ローラ清掃装置109との間に中間転写ローラ106が設けられ、この中間転写ローラ106の回転方向に沿って、周囲に押圧ローラ108、および中間転写ローラ清掃装置110が設けられている。
【0028】
(磁気記録ローラ101)
磁気記録ローラ101は、撥水性(親油性)表面を有し、現像装置10Aに対して回転可能な状態で保持されている。磁気記録ローラ101の磁気記録機能については、従来のマグネトグラフィで提案されている磁気ローラと同様の構成により実現することができる。
【0029】
たとえば、アルミニウムなどの金属でできたドラムにNi、Ni−Pなどの下地層をおよそ1〜30μm形成し、この上にCo−Ni、Co−P、Co−Ni−P、Co−Zn−P、Co−Ni−Zn−Pなどの磁気記録層をおよそ0.1〜10μm形成すればよい。また、更にNi、Ni−Pなどの保護層をおよそ0.1〜5μm形成してもよい。
【0030】
磁気記録ローラ101では、後述の湿し水を撥き、かつ後述の油性インクとの親和性を保つために、さらに表面に撥水性(親油性)を付与することが好ましい。表面の撥水性(親油性)は、使用する湿し水と油性インクとの組み合わせに応じて、例えばシリコーン、アルキルシリル化剤、親油性高分子等を用いて処理することにより付与することができる。
【0031】
磁気記録ローラ101の構成については、ここに例示したものに限られず、磁気記録機能、および表面の撥水性(親油性)のそれぞれを実現するための様々な公知技術を適用することができる。
【0032】
(磁気書き込みヘッド102)
磁気書き込みヘッド102は、画素単位のコイルを有しており、磁気書き込みヘッド102の磁極先端部から漏洩磁束が生じることにより、磁気記録ローラ101の表面を磁化させる。これによって磁気記録ローラ101が、図2の矢印方向R1に回転するに従って、磁気記録ローラ101の表面に磁気潜像が形成される。
【0033】
磁気書き込みヘッド102は、磁気記録ローラ101から離間状態にできる機構(図示しない)を備えている。同じ画像を繰り返し印刷する場合には、新たな磁気潜像を形成する必要がないので、磁気書き込みヘッド102を磁気記録ローラ101から離間状態としておく。こうしておくことで、磁気記録ローラ101に付着させた磁性粒子の顕像(以下で説明)を磁気書き込みヘッド102との接触によって乱すこともない。
【0034】
(磁性粒子供給装置103)
磁性粒子供給装置103は、磁性粒子供給ローラ103aと磁性粒子保持部103bと磁性粒子規制ブレード103cとを有している。磁性粒子供給ローラ103aはマグネットローラであり、複数のN極S極が周方向に交互に並んだ磁気パターンを有しており、現像装置10Aに対して回転可能な状態で保持されている。
【0035】
磁性粒子保持部103bの中には磁性粒子供給ローラ103aと十分に接触する量の磁性粒子131が保持されている。磁性粒子131は、平均粒子径5μm〜30μm程度、より好ましくは5μm〜10μm程度で、表面の親水性が、純水接触角0度〜20度、より好ましくは0度〜10度である。磁性粒子131は、磁性粒子補充器(図示省略)から適宜補充される。
【0036】
磁性粒子131として、たとえば、スチレン重合体などの樹脂を結着材として、400エルステッド以上の保持力を持つ物質(例えば、γ‐Feなど)を重量割合30%を含んだ粒子に対して、有機シラン化合物(例えば、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン)をコートしたものを用いることができる。
【0037】
磁性粒子供給ローラ103aが磁性粒子保持部103b中の磁性粒子と接触することによって、磁性粒子供給ローラ103aの表面に磁性粒子が層となって付着する。磁性粒子供給ローラ103aには、磁性粒子規制ブレード103cが当接されている。
【0038】
磁性粒子供給ローラ103aの表面に付着した磁性粒子層は、磁性粒子供給ローラ103aが、図中の矢印R2の方向に回転するにしたがって、磁性粒子規制ブレード103cとの当接部で適切な高さに均一化される。この適切な高さは、たとえば、5μm〜50μm程度、より好ましくは10μm〜20μmである。
【0039】
この適切な高さに保持された磁性粒子層が、磁気記録ローラ101と磁性粒子供給ローラ103aのニップ部P1において磁気記録ローラ101表面に形成された磁気潜像に沿って付着することにより、磁気潜像が顕像化される。この時点で、磁気記録ローラ101の表面において、磁性粒子が付着した部分が非画像部となるように磁気潜像を作るものとする。なお、磁性粒子供給ローラ103aはマグネットローラでなくとも、表面に磁性粒子を層状に保持できるような付着力を持たせられれば他のものでもよい。
【0040】
磁性粒子供給装置103は、磁気記録ローラ101から離間状態にできる機構(図示しない)を備えている。同じ画像を繰り返し印刷する場合には、新たな磁気潜像を形成する必要がないので、磁性粒子供給装置103を離間状態としておく。こうしておくことで、磁気記録ローラ101に付着させた磁性粒子の顕像を磁性粒子供給装置103との接触によって乱すこともない。
【0041】
(湿し水供給装置104)
湿し水供給装置104は、湿し水供給ローラ104aと、湿し水保持部104bと、湿し水供給ローラ清掃装置104cとを有する。湿し水供給ローラ104aは現像装置10Aに対して回転可能な状態で保持されている。
【0042】
湿し水保持部104bの中には湿し水供給ローラ104aと十分接触する量の湿し水141が保持されている。湿し水141には、公知のオフセット印刷で使われるいわゆる湿し水と同様のものを用いることができる。湿し水141は、図示しない湿し水補充器から適宜補充される。
【0043】
湿し水供給ローラ104aの表面は、表面に湿し水141を保持できる程度の親水性を有し、図中の矢印R3の向きに回転に伴って、湿し水保持部104b中の湿し水141を表面に保持した後、磁気記録ローラ101と湿し水供給ローラ104aのニップ部P2において磁気記録ローラ101の表面に付着した磁性粒子に湿し水を含ませる(図5参照)。磁気記録ローラ101の磁性粒子が付着していない部分は、磁気記録ローラ101の表面が撥水性なので、湿し水141はほとんど付着しない。
【0044】
湿し水供給ローラ清掃装置104cは、磁気記録ローラ101と湿し水供給ローラ104aとのニップ部P2よりも、湿し水供給ローラ104aの回転方向R3の下流に設けられており、湿し水供給ローラ104aの表面の付着物(インクなど)を取り除く。
【0045】
(着色剤供給装置105)
着色剤供給装置105は、着色剤としてのインク151を磁気記録ローラ101の表面上に供給する。着色剤供給装置105は、インク供給ローラ105aとインク保持部105bとインク規制ブレード105cとを有する。インク供給ローラ105aは現像装置10Aに対して回転可能な状態で保持されている。
【0046】
インク保持部105bの中にはインク供給ローラ105aと十分接触する量のインク151が保持されている。インク151は、インク補充器(図示省略)から適宜補充される。インク151は、油性インクなど湿し水と混ざらない(湿し水を撥く)性質のインクを用いる。
【0047】
インク供給ローラ105aが、図中の矢印R4の方向に回転するにしたがって、インク保持部105b中のインク151を表面に保持した後、インク供給ローラ105aに当接するインク規制ブレード105cによって適切な厚さに均一化される。インク151の厚さは、2μm〜50μm、より好ましくは4μm〜10μmのインク151の層が、インク供給ローラ105aの表面上に形成される。
【0048】
このようにインク151の層を形成することによって、磁気記録ローラ101とインク供給ローラ105aのニップ部P3において、インク151が磁気記録ローラ101の表面上に適切量付着する。このとき、磁気記録ローラ101の表面の磁性粒子が付着した部分(非画像部)には湿し水が含まれているので、インク151が付着することはなく、磁性粒子が付着していない部分(画像部)にのみインクが付着することになる(図6参照)。
【0049】
(中間転写ローラ106)
中間転写ローラ106は、撥水性の表面を持ち、磁気記録ローラ101と接触して、現像装置10Aに対して回転可能な状態で保持されている。中間転写ローラ106が、図中の矢印R5の方向に回転するにしたがって、磁気記録ローラ101とのニップ部P4で、磁気記録ローラ101上に付着したインク151が、磁気記録ローラ101から中間転写ローラ106へと転写される。このとき、中間転写ローラ106の表面は撥水性を有しているので、湿し水はほとんど転写されない。
【0050】
(押圧ローラ108)
押圧ローラ108は、印刷時に用紙供給装置(図示省略)から供給される記録媒体107を、中間転写ローラ106と押圧ローラ108との間に挟むような位置で、現像装置10Aに対して回転可能な状態で保持されている。これにより、中間転写ローラ106上に付着したインク151が記録媒体107に転写される。このようにして印刷物を得ることができる(図7参照)。
【0051】
(磁気記録ローラ清掃装置109)
磁気記録ローラ清掃装置109は、磁気記録ローラ101に近接して、磁気記録ローラ101との接触状態と非接触状態を切り替えるのが可能な状態で保持されている。同じ画像を繰り返し印刷する場合には、磁気記録ローラ清掃装置109を磁気記録ローラ101に接触させず、そのまま磁気記録ローラ101を回転させる。そうすれば磁気記録ローラ101上に付着した磁性粒子が保持されたままとなり、そのまま同じ画像を印刷し続けることができる。
【0052】
印刷する画像を切り替える場合には、磁気記録ローラ清掃装置109を磁気記録ローラ101に接触させて、磁気記録ローラ101の表面の付着物(磁性粒子、湿し水、インクなど)を掻き取り、除去する。そうすれば、磁気記録ローラ101上に新たな画像を形成できる状態となる。
【0053】
磁気記録ローラ清掃装置109によって磁気記録ローラ101から除去した磁性粒子を、磁性粒子保持部103bへと搬送する装置を設けてもよい(図示省略)。この装置によって磁性粒子を繰り返し使うことができ、消耗品を減らすことができる。この場合には、磁気記録ローラ清掃装置109の中で、磁性粒子とその他の物とを分別する装置を設けるとより効率的となる。
【0054】
(中間転写ローラ清掃装置110)
中間転写ローラ清掃装置110は、中間転写ローラ106に接触して保持されており、中間転写ローラ106の表面の付着物(記録媒体107に転写されずに残ったインクなど)を掻き取り、除去する。中間転写ローラ清掃装置110がなければ、中間転写ローラ106に残ったインクが記録媒体107に転写されてしまい画像不良の不具合が発生してしまう。
【0055】
磁気記録ローラ101と中間転写ローラ106との周長および周速度が共に等しい場合は、中間転写ローラ清掃装置110を、中間転写ローラ106との接触状態と非接触状態を切り替えるのが可能な状態で保持する。この場合は、磁気記録ローラ101のインク付着部分と中間転写ローラ106のインク付着部分とが一致するので、中間転写ローラ106上にインクが残っていても、上記の不具合が発生することはない。
【0056】
よって、同じ画像を繰り返し印刷する場合には、中間転写ローラ清掃装置110を中間転写ローラ106に接触させず、そのまま中間転写ローラ106を回転させることができる。印刷する画像を切り替える場合には、中間転写ローラ清掃装置110を中間転写ローラ106に接触させて中間転写ローラ106の表面の付着物(記録媒体107に転写されずに残ったインクなど)を除去する。
【0057】
(消磁装置111)
消磁装置111は、磁気記録ローラ101に近接して保持されている。消磁装置111が接触式の方式である場合は、磁気記録ローラ101との接触状態と非接触状態とを切り替えるのが可能な状態で保持する。
【0058】
同じ画像を繰り返し印刷する場合には、消磁装置111を動作させず(消磁装置111が接触式ならば磁気記録ローラ101に接触させず)、そのまま磁気記録ローラ101を回転させる。そうすれば磁気記録ローラ101上に付着した磁性潜像が保持されたままとなり、そのまま同じ画像を印刷し続けることができる。
【0059】
印刷する画像を切り替える場合には、消磁装置111を動作させて(消磁装置111が接触式ならば磁気記録ローラ101に接触させて)、磁気記録ローラ101磁性潜像を消去する。そうすれば再び磁気記録ローラ101上に画像を形成できる状態となる。
【0060】
(現像工程および印刷工程)
次に、図3から図7を参照して、上記構成を有する画像形成ユニット100Aを用いた場合の現像工程および印刷工程について説明する。なお、図3から図6は、現像工程を示す第1から第4断面工程図、図7は、転写工程を示す断面図である。
【0061】
図3を参照して、磁気書き込みヘッド102により、磁気記録ローラ101の表面の所定領域を磁化させる。これによって、磁気記録ローラ101の表面に磁気潜像101aが形成される。
【0062】
次に、図4を参照して、磁性粒子供給装置103により、磁気記録ローラ101表面に形成された磁気潜像101aに沿って磁性粒子131を供給し、磁気潜像を顕像化する。この時点で、磁気記録ローラ101の表面において、磁性粒子131が付着した部分が非画像部となるように磁気潜像101aを形成しておく。
【0063】
次に、図5を参照して、湿し水供給装置104を用いて、磁気記録ローラ101の表面に付着した磁性粒子131に湿し水を含ませて、湿し水を含んだ磁性粒子131wとする。磁気記録ローラ101の磁性粒子131が付着していない部分は、磁気記録ローラ101の表面が撥水性なので、湿し水141はほとんど付着しない。
【0064】
次に、図6を参照して、着色剤供給装置105を用いて、インク151を磁気記録ローラ101の表面上に適切量付着させる。このとき、磁気記録ローラ101の表面の磁性粒子131wが付着した部分(非画像部)には湿し水が含まれているので、インク151が付着することはなく、磁性粒子131wが付着していない部分(画像部)にインク151が付着することになる。
【0065】
次に、図7を参照して、磁気記録ローラ101から中間転写ローラ106へと転写されたインク151(画像部)が、記録媒体107に転写される。このようにして印刷物を得ることができる。
【0066】
(作用・効果)
以上、本実施の形態における現像装置10Aおよび画像形成ユニット100Aによれば、磁性粒子131の表面は、磁気記録ローラ101の表面よりも湿し水141との親和性が高く、インク151は、湿し水141との親和性よりも磁気記録ローラ101の表面との親和性の方が高く、磁性粒子供給装置103によって磁気記録ローラ101上に付着した磁性粒子131に湿し水141を含ませることで、磁気記録ローラ101上の磁性粒子131が付着していない部分にのみインク151を付着させている。
【0067】
このように、磁気記録ローラ101上の磁性粒子が付着していない部分(画像部)にインク151を付着させることで、磁性粒子(非画像部)が形成された現像パターンを版として用いることが可能となり、印刷において安定した画質を得ることが可能となる。
【0068】
また、磁気記録ローラ101上の磁性粒子を取り除き、新たな現像パターンに応じた磁気潜像を磁気記録ローラ101上に形成することで、異なる現像パターンを瞬時に形成することができることから、いわゆるバリアブル印刷も容易に実現することが可能となる。
【0069】
このように、磁気記録回転体である磁気記録ローラ上に磁気書き込みヘッドによって磁気潜像を書き込み、その磁気潜像を磁性粒子によって現像する。ここで、磁気記録ローラ表面と磁性粒子表面とでインクに対する親和性に違いを持たせることによって、磁気記録ローラ上の磁性粒子がある部分と磁性粒子がない部分とでインクが付くか、付かないかを分けられるので、この磁性粒子の像を画像形成の版とすることができる。
【0070】
同じ画像を繰り返し印刷したいときには、磁性粒子の像を保っておいてそれを版として繰り返し使うことで安定した画質で画像形成できる。また、ある画像を印刷した後に、磁気記録ローラ上の磁性粒子を磁気記録ローラ清掃装置によって回収し、前の磁気潜像を消磁装置で消した後に、新しい磁気潜像を磁気書き込みヘッドで書き込んで再び磁性粒子で現像するという工程を繰り返すことによって、1枚1枚違った版によって印刷できるので、バリアブル印刷も可能ということになる。
【0071】
(実施の形態2)
次に、図8を参照して、本実施の形態における画像形成装置に採用される現像装置10Bを含む画像形成ユニット100Bについて説明する。画像形成装置1の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、図8は、本実施の形態における画像形成装置に採用される現像装置10Bを含む画像形成ユニット100Bの構造を示す断面模式図である。
【0072】
現像装置10Bを含む画像形成ユニット100Bの構成は、基本的には実施の形態1と同様で、現像装置10Bにおいて、実施の形態1の現像装置10Aと一部構成が異なっている。
【0073】
撥水性表面を持つ磁気記録ローラ101、磁気書き込みヘッド102、磁性粒子供給装置103、湿し水供給装置104、着色剤供給装置105、中間転写ローラ106、磁気記録ローラ清掃装置109、消磁装置111は実施の形態1で説明した現像装置10Aを含む画像形成ユニット100Aと同様に設けられている。
【0074】
磁気書き込みヘッド102、湿し水供給装置104、着色剤供給装置105、中間転写ローラ106、磁気記録ローラ清掃装置109、および消磁装置111は、実施の形態1と同じであり、磁性粒子供給装置103における磁性粒子の保持状態が実施の形態1と異なっている。
【0075】
磁性粒子供給装置103は、磁性粒子供給ローラ103aと磁性粒子保持部103bと磁性粒子規制ブレード103cとを有している。磁性粒子供給ローラ103aはマグネットローラであり、複数のN極S極が周方向に交互に並んだ磁気パターンを持っており、現像装置10Bに対して回転可能な状態で保持されている。
【0076】
磁性粒子保持部103bの中には磁性粒子供給ローラ103aと十分に接触する量の磁性粒子132wが保持されている。磁性粒子132wは、平均粒子径0.1μm〜5μm程度、より好ましくは0.3μm〜2μmで、表面の親水性が、純水接触角0度〜20度、より好ましくは0度〜10度である。
【0077】
本実施の形態において、磁性粒子132wは、磁性粒子保持部103bの中で湿し水(オフセット印刷で使われるいわゆる湿し水と同様のもの)に分散した状態で保持されている。磁性粒子132wは、磁性粒子補充器(図示省略)から湿し水とともに適宜補充される。
【0078】
磁性粒子供給ローラ103aが磁性粒子保持部103b中の磁性粒子と接触することによって、磁性粒子供給ローラ103aの表面に磁性粒子が層となって付着する。磁性粒子供給ローラ3aには、磁性粒子規制ブレード103cが当接されている。
【0079】
磁性粒子供給ローラ103aの表面に付着した磁性粒子層は、磁性粒子供給ローラ103aが、図中の矢印R2の方向に回転するにしたがって、磁性粒子規制ブレード103cとの当接部で適切な高さに均一化される。この適切な高さは、たとえば、0.5μm〜10μm程度、より好ましくは1μm〜2μm程度である。
【0080】
この適切な高さで保持された磁性粒子層が、磁気記録ローラ101と磁性粒子供給ローラ103aのニップ部P1において磁気記録ローラ101表面に形成された磁気潜像に沿って付着することにより、磁気潜像が顕像化される。この時点で、磁気記録ローラ101の表面において、磁性粒子が付着した部分が非画像部となるように磁気潜像を作るものとする。なお、磁性粒子供給ローラ103aはマグネットローラでなくとも、表面に磁性粒子を層状に保持できるような付着力を持たせられれば他のものでもよい。
【0081】
磁性粒子供給装置103は、磁気記録ローラ101から離間状態にできる機構(図示しない)を備えている。同じ画像を繰り返し印刷する場合には、新たな磁気潜像を形成する必要がないので、磁性粒子供給装置103を離間状態としておく。こうしておくことで、磁気記録ローラ101に付着させた磁性粒子の顕像を磁性粒子供給装置103との接触によって乱すこともない。
【0082】
(湿し水供給装置104)
湿し水供給装置104の構成、作用は実施の形態1と同様である。本実施の形態において、磁気記録ローラ101に付着した磁性粒子132wはもともと湿し水を含んだ状態であるが、乾燥を防ぐために湿し水供給装置104から湿し水を適宜供給することが好ましい。
【0083】
(現像工程および印刷工程)
次に、図9から図12を参照して、上記構成を有する画像形成ユニット100Bを用いた場合の現像工程および印刷工程について説明する。なお、図9から図11は、現像工程を示す第1から第3断面工程図、図12は、転写工程を示す断面図である。
【0084】
図9を参照して、磁気書き込みヘッド102により、磁気記録ローラ101の表面の所定領域を磁化させる。これによって、磁気記録ローラ101の表面に磁気潜像101aが形成される。
【0085】
次に、図10を参照して、磁性粒子供給装置103により、磁気記録ローラ101表面に形成された磁気潜像101aに沿って湿し水を含んだ磁性粒子132wを供給し、磁気潜像を顕像化する。この時点で、磁気記録ローラ101の表面において、磁性粒子132wが付着した部分が非画像部となるように磁気潜像101aを形成しておく。なお、必要に応じて、磁性粒子132wの乾燥を防ぐために、湿し水供給装置104を用いて、磁性粒子132wに湿し水を供給する。
【0086】
次に、図11を参照して、着色剤供給装置105を用いて、インク151を磁気記録ローラ101の表面上に適切量付着させる。このとき、磁気記録ローラ101の表面の磁性粒子132wが付着した部分(非画像部)には湿し水が含まれているので、インク151が付着することはなく、磁性粒子132wが付着していない部分(画像部)にインク151が付着することになる。
【0087】
次に、図12を参照して、磁気記録ローラ101から中間転写ローラ106へと転写されたインク151(画像部)が、記録媒体107に転写される。このようにして印刷物を得ることができる。
【0088】
(作用・効果)
以上、本実施の形態における現像装置10Bおよび画像形成ユニット100Bによれば、磁性粒子供給装置103は、水を含む液体中に分散させた磁性粒子132wを磁気潜像101aの上に付着させ、磁性粒子132wの表面が、磁気記録ローラ101の表面よりも高い親水性を有し、着色剤151は、水との親和性よりも磁気記録ローラ101の表面との親和性の方が高く、磁気記録ローラ101上の磁性粒子131が付着していない部分に着色剤151を付着させている。
【0089】
このように、磁気記録ローラ101上の磁性粒子が付着していない部分(画像部)にインクを付着することで、磁性粒子(非画像部)が形成された現像パターンを版として用いることが可能となり、印刷において安定した画質を得ることが可能となる。
【0090】
また、磁気記録ローラ101上の磁性粒子を取り除き、新たな現像パターンに応じた磁気潜像を磁気記録ローラ101上に形成することで、異なる現像パターンを瞬時に形成することができることから、いわゆるバリアブル印刷も容易に実現することが可能となる。
【0091】
(実施の形態3)
次に、図13を参照して、本実施の形態における画像形成装置に採用される現像装置10Cを含む画像形成ユニット100Cについて説明する。画像形成装置1の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、図13は、本実施の形態における画像形成装置に採用される現像装置10Cを含む画像形成ユニット100Cの構造を示す断面模式図である。
【0092】
現像装置10Cを含む画像形成ユニット100Cの構成は、基本的には実施の形態1と同様で、現像装置10Cにおいて、実施の形態1の現像装置10Aと一部構成が異なっている。
【0093】
撥水性表面を持つ磁気記録ローラ101、磁気書き込みヘッド102、磁性粒子供給装置103、着色剤供給装置105、中間転写ローラ106、磁気記録ローラ清掃装置109、消磁装置111は実施の形態1で説明した現像装置10Aを含む画像形成ユニット100Aと同様に設けられている。
【0094】
磁気書き込みヘッド102、着色剤供給装置105、中間転写ローラ106、磁気記録ローラ清掃装置109、および消磁装置111は、実施の形態1と同じであり、磁性粒子供給装置103に用いる磁性粒子が実施の形態1と異なり、表面に撥油性を有する磁性粒子が用いられている。したがって、現像装置10Cでは、湿し水供給装置は用いない。
【0095】
磁性粒子供給装置103は、磁性粒子供給ローラ103aと磁性粒子保持部103bと磁性粒子規制ブレード103cとを有している。磁性粒子供給ローラ103aはマグネットローラであり、複数のN極S極が周方向に交互に並んだ磁気パターンを持っており、現像装置10Cに対して回転可能な状態で保持されている。
【0096】
磁性粒子保持部103bの中には磁性粒子供給ローラ103aと十分に接触する量の磁性粒子133が保持されている。磁性粒子133は、平均粒子径5μm〜30μm程度、より好ましくは5μm〜10μmで、表面の撥油性が、純水接触角100度以上、より好ましくは115度以上である。磁性粒子133は、磁性粒子補充器(図示省略)から適宜補充される。磁性粒子133に対する撥油性の付与は従来の撥油性表面処理方法を用いることができ、たとえば、フルオロアルキルシラン系化合物を用いた表面処理により行うことができる。
【0097】
磁性粒子供給ローラ103aが磁性粒子保持部103b中の磁性粒子と接触することによって、磁性粒子供給ローラ103aの表面に磁性粒子が層となって付着する。磁性粒子供給ローラ103aには、磁性粒子規制ブレード103cが当接されている。
【0098】
磁性粒子供給ローラ103aの表面に付着した磁性粒子層は、磁性粒子供給ローラ103aが、図中の矢印R2の方向に回転するにしたがって、磁性粒子規制ブレード103cとの当接部で適切な高さに均一化される。この適切な高さは、たとえば、5μm〜50μm程度、より好ましくは10μm〜20μm程度である。
【0099】
この適切な高さで保持された磁性粒子層が、磁気記録ローラ101と磁性粒子供給ローラ103aのニップ部P1において磁気記録ローラ101の表面に形成された磁気潜像に沿って付着することにより、磁気潜像が顕像化される。この時点で、磁気記録ローラ101の表面において、磁性粒子が付着した部分が非画像部となるように磁気潜像を作るものとする。なお、磁性粒子供給ローラ103aはマグネットローラでなくとも、表面に磁性粒子を層状に保持できるような付着力を持たせられれば他のものでもよい。
【0100】
磁性粒子供給装置103は、磁気記録ローラ101から離間状態にできる機構(図示しない)を備えている。同じ画像を繰り返し印刷する場合には、新たな磁気潜像を形成する必要がないので、磁性粒子供給装置103を離間状態としておく。こうしておくことで、磁気記録ローラ101に付着させた磁性粒子の顕像を磁性粒子供給装置103との接触によって乱すこともない。
【0101】
(着色剤供給装置105)
着色剤供給装置105は、着色剤としてのインク151を磁気記録ローラ101の表面上に供給する。着色剤供給装置105は、インク供給ローラ105aとインク保持部105bとインク規制ブレード105cとを有する。インク供給ローラ105aは現像装置10Cに対して回転可能な状態で保持されている。
【0102】
インク保持部105bの中にはインク供給ローラ105aと十分接触する量のインク151が保持されている。インク151は、インク補充器(図示省略)から適宜補充される。インク151には油性インクなど磁性粒子表面に対して親和性が低い性質のインクを用いる。
【0103】
インク供給ローラ105aが、図中の矢印R4の方向に回転するにしたがって、インク保持部105b中のインク151を表面に保持した後、インク供給ローラ105aに当接するインク規制ブレード105cによって適切な厚さに均一化される。インク151の厚さは、2μm〜50μm、より好ましくは4μm〜10μmのインク151の層が、インク供給ローラ105aの表面上に形成される。
【0104】
このようにインク151の層を形成することによって、磁気記録ローラ101とインク供給ローラ105aのニップ部P3において、インク151が磁気記録ローラ101の表面上に適切量付着する。このとき、磁気記録ローラ101の表面の磁性粒子が付着した部分(非画像部)には湿し水が含まれているので、インク151が付着することはなく、磁性粒子が付着していない部分(画像部)にのみインクが付着することになる。
【0105】
(現像工程および印刷工程)
次に、図14から図17を参照して、上記構成を有する画像形成ユニット100Cを用いた場合の現像工程および印刷工程について説明する。なお、図14から図16は、現像工程を示す第1から第3断面工程図、図17は、転写工程を示す断面図である。
【0106】
図14を参照して、磁気書き込みヘッド102により、磁気記録ローラ101の表面の所定領域を磁化させる。これによって、磁気記録ローラ101の表面に磁気潜像101aが形成される。
【0107】
次に、図15を参照して、磁性粒子供給装置103により、磁気記録ローラ101表面に形成された磁気潜像101aに沿って表面に撥油性を有する磁性粒子133を供給し、磁気潜像を顕像化する。この時点で、磁気記録ローラ101の表面において、磁性粒子133が付着した部分が非画像部となるように磁気潜像101aを形成しておく。
【0108】
次に、図16を参照して、着色剤供給装置105を用いて、インク151を磁気記録ローラ101の表面上に適切量付着させる。このとき、磁気記録ローラ101の表面の磁性粒子133が付着した部分は撥油性を有することから、インク151が付着することはなく、磁性粒子133が付着していない部分(画像部)にインク151が付着することになる。
【0109】
次に、図17を参照して、磁気記録ローラ101から中間転写ローラ106へと転写されたインク151(画像部)が、記録媒体107に転写される。このようにして印刷物を得ることができる。
【0110】
(作用・効果)
以上、本実施の形態における現像装置10Cおよび画像形成ユニット100Cによれば、磁性粒子133は、着色剤151との親和性よりも磁気記録ローラ101の表面との親和性の方が高く、磁気記録ローラ101上の磁性粒子133が付着していない部分に着色剤151を付着させている。
【0111】
このように、磁気記録ローラ101上の磁性粒子が付着していない部分(画像部)にインクを付着することで、磁性粒子(非画像部)が形成された現像パターンを版として用いることが可能となり、印刷において安定した画質を得ることが可能となる。
【0112】
また、磁気記録ローラ101上の磁性粒子を取り除き、新たな現像パターンに応じた磁気潜像を磁気記録ローラ101上に形成することで、異なる現像パターンを瞬時に形成することができることから、いわゆるバリアブル印刷も容易に実現することが可能となる。
【0113】
なお、上記各実施の形態では、磁性粒表面の親和性と上記磁気記録回転体としての磁気記録ローラ表面の親和性とを異ならせ、インクを磁性粒子の表面に付着させず、インクを磁性粒子が設けられていない磁気記録ローラ表面に付着させる構成について説明しているが、インクを磁性粒子の表面に付着させ、インクを磁性粒子が設けられていない磁気記録ローラ表面に付着させない構成を採用することも可能である。
【0114】
なお、本実施の形態における純水接触角は、従来の接触角測定装置により測定できる値であり、たとえば、測定対象物を構成する材料を用いて平板形状物を作製し、これに対し常温常湿(例えば、20℃、50%RH)で接触角計測定装置「接触角計CA−V(協和界面科学株式会社製)」を用い、5回測定し、その平均値から求めることができる。
【0115】
測定対象物Aに対する測定対象物Bおよび測定対象物Cの親和性の大小関係を求める場合、純水接触角の値が近いか離れているかに基づいて判断することができる。また、測定対象物Aが固体であって、測定対象物Bおよび測定対象物Cが液体であった場合、固体の測定対象物を構成する材料を用いて平板形状物を作製し、これに対し測定対象物Bおよび測定対象物Cそれぞれの測定対象物を滴下して接触角を測定し、これらの接触角を用いて親和性の大小関係を判断してもよい。なお、接触角が90℃以上であれば、平板形状物は滴下した液体を撥いていると言うことができる。
【0116】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 画像形成装置、10A,10B,10C 現像装置、50 操作パネル、51 操作部、51a キー、52 操作ディスプレイ、53 スキャナ、54 プリンタ、55 フィーダ、57 トレイ、58 給紙部、100A,100B,100C 画像形成ユニット、101 磁気記録ローラ、101a 磁気潜像、102 磁気書き込みヘッド、103 磁性粒子供給装置、103a 磁性粒子供給ローラ、103b 磁性粒子保持部、103c 磁性粒子規制ブレード、104 湿し水供給装置、104a 湿し水供給ローラ、104b 湿し水保持部、104c 湿し水供給ローラ清掃装置、105 着色剤供給装置、105a インク供給ローラ、105b インク保持部、105c インク規制ブレード、106 中間転写ローラ、107 記録媒体、108 押圧ローラ、109 磁気記録ローラ清掃装置、110 中間転写ローラ清掃装置、111 消磁装置、131,131w,132w,133 磁性粒子、141 湿し水、151 インク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に磁気潜像を保持できる磁気記録回転体と、
前記磁気記録回転体に前記磁気潜像を書き込む磁気書き込みヘッドと、
前記磁気書き込みヘッドに書き込まれた前記磁気潜像の上に磁性粒子を供給する磁性粒子供給装置と、
着色剤を前記磁気記録回転体の表面上に供給する着色剤供給装置と、を備え、
前記磁性粒子表面の前記着色剤に対する親和性と前記磁気記録回転体表面の前記着色剤に対する親和性とが異なることによって、前記着色剤を前記磁性粒子表面、または前記磁気記録回転体表面に付着させる、現像装置。
【請求項2】
前記磁性粒子供給装置と前記着色剤供給装置との間に、前記磁気記録回転体の表面上に湿し水を供給する湿し水供給装置を有し、
前記磁性粒子の表面は、前記磁気記録回転体の表面よりも前記湿し水との親和性が高く、
前記着色剤は、前記湿し水との親和性よりも前記磁気記録回転体の表面との親和性の方が高く、
前記磁性粒子供給装置によって前記磁気記録回転体上に付着した前記磁性粒子に前記湿し水を含ませることで、前記磁気記録回転体上の前記磁性粒子が付着していない部分にのみ前記着色剤を付着させる、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁性粒子供給装置は、水を含む液体中に分散させた前記磁性粒子を前記磁気潜像の上に付着させ、
前記磁性粒子の表面が、前記磁気記録回転体の表面よりも高い親水性を有し、
前記着色剤は、前記水との親和性よりも前記磁気記録回転体の表面との親和性の方が高く、
前記磁気記録回転体上の前記磁性粒子が付着していない部分に前記着色剤を付着させる、請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記磁性粒子は、前記着色剤との親和性よりも前記磁気記録回転体の表面との親和性の方が高く、
前記磁気記録回転体上の前記磁性粒子が付着していない部分に前記着色剤を付着させる、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の現像装置を有する、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−66427(P2012−66427A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211705(P2010−211705)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】