説明

現像装置

【課題】
錠剤から成る現像処理剤の溶解性に優れ、かつ、コンパクトな現像装置を提供する。
【解決手段】
感光材料を現像処理するための現像部を有し、現像部には現像処理タンク21とサブタンク22と両タンク21,22との間で現像処理液Lを循環させる循環路28aとが備えられ、サブタンク22には錠剤から成る現像処理剤Tを投入する錠剤投入部4と現像処理剤Tを溶解する錠剤溶解部5とが備えられている現像装置において、
錠剤投入部4から投入された現像処理剤Tを収容するとともに、循環する現像処理液Lの通過を許容する通過口61を有する容器6が錠剤溶解部5に配置され、容器の外面6Aと錠剤溶解部の内面5Aとの間には隙間Gが設けられ、かつ、隙間Gに面した容器の外面6Aに開口部62を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光材料を現像処理するための現像部を有し、前記現像部には現像処理タンクとサブタンクと前記現像処理タンクと前記サブタンクとの間で現像処理液を循環させる循環路とが備えられ、前記サブタンクには錠剤から成る現像処理剤を投入する錠剤投入部と前記現像処理剤を溶解する錠剤溶解部とが備えられている現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光材料を現像処理する現像装置には、その現像部に現像、漂白、定着等の現像処理を順次行うための現像処理液が夫々充填された複数の現像処理タンクが備えられ、さらに、これら現像処理タンク夫々に対してサブタンクが備えられている。現像処理タンクとサブタンクとの間には循環路が設けられ、現像処理液がサブタンクから現像処理タンクに供給されるとともに現像処理タンクからサブタンクへ流入し、両タンクの間を循環している。各現像処理タンク内の現像処理液は、感光材料の処理によりその濃度等が変化するので、各サブタンクに液剤又は固形剤(錠剤)から成る現像処理剤を供給することにより、現像処理液の性能を一定に保持している。
【0003】
このうち錠剤から成る現像処理剤を使用するタイプの現像装置として、サブタンクの上部からサブタンク内にこの錠剤を投入するタイプの現像装置がある(例えば特許文献1)。このような現像装置においては、現像処理タンクからの現像処理液の循環流によりサブタンク内で錠剤が溶解され、この錠剤を溶解した現像処理液は循環路を通じて現像処理タンクに供給される。
【0004】
また、同様のタイプの現像装置として、図6に示すように、現像処理液が通過できる通過口61’を碁盤目状に有する仕切り板6’でサブタンク内を仕切ることにより、錠剤から成る現像処理剤を溶解させるための専用の空間を設けている現像装置もある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−120137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した現像装置においては錠剤からなる現像処理剤をサブタンク内で溶解しているが、サブタンク内にはヒータやフィルタ等が配置されているため余分な空間がほとんどなく、その錠剤が溶解するための空間である錠剤溶解部の容量は極めて小さい状態となっている。したがって、錠剤溶解部を通過する現像処理液も少なくなり、錠剤が溶解し難いという問題があった。特に、錠剤溶解部の底部に溜まった錠剤や錠剤溶解部の側面に付着した錠剤は、現像処理液と接触する面が減少するため、さらに溶解し難くなる。その結果、長時間にわたる連続現像処理を続けた場合、錠剤が完全に溶解しないままに次々と錠剤が投入され、サブタンクから錠剤が溢れてくるという問題も生じていた。
【0007】
この問題を解決するため、錠剤溶解部の容量を大きくすることが考えられるが、上述したようにサブタンクにはヒータやフィルタなどが配置されているため余分な空間はほとんどなく、したがってサブタンク自体を大きくしなければならない。しかし、この場合には、現像装置の大型化につながるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、錠剤から成る現像処理剤の溶解性に優れ、かつ、コンパクトな現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る現像装置の第一特徴構成は、感光材料を現像処理するための現像部を有し、前記現像部には現像処理タンクとサブタンクと前記現像処理タンクと前記サブタンクとの間で現像処理液を循環させる循環路とが備えられ、前記サブタンクには錠剤から成る現像処理剤を投入する錠剤投入部と前記現像処理剤を溶解する錠剤溶解部とが備えられている現像装置において、
前記錠剤投入部から投入された前記現像処理剤を収容するとともに、循環する前記現像処理液の通過を許容する通過口を有する容器が前記錠剤溶解部に配置され、前記容器の外面と前記錠剤溶解部の内面との間には隙間が設けられ、かつ、前記隙間に面した前記容器の外面には開口部が形成されている点にある。
【0010】
すなわち、錠剤溶解部に配置された容器内には錠剤から成る現像処理剤が収容されており、通過口を通じて容器内を通過する現像処理液の循環流により、この現像処理剤を溶解することができる。本構成では、さらに、容器の外面と錠剤溶解部の内面との間に隙間を設けるとともに、この隙間に面した容器の外面に開口部を形成している。これにより、容器内を通過する現像処理液は、この開口部が形成された容器の外面と錠剤溶解部の内面との間に設けられた隙間に流入することができる。このため、現像処理剤が容器底部に溜まっていたり容器側面に付着していたとしても、現像処理剤が接している容器の面内に前記開口部がある場合には、前記隙間に流入した現像処理液がこの開口部を通じて現像処理剤と接触することができ、現像処理剤を溶解し易くすることができる。さらに、前記開口部を通じて前記隙間から容器内に流入する現像処理液の圧力により、この開口部近傍では現像処理剤が付着し難くなり、その結果、現像処理剤の溶解性が向上する。
また、本構成では、容器の外面と錠剤溶解部の内面との間に隙間を設けるとともに、この隙間に面した容器の外面に開口部を形成しているので、錠剤溶解部の容量を大きくすることなく、現像処理剤の溶解性の向上を図ることができる。
したがって、錠剤から成る現像処理剤の溶解性に優れ、かつ、コンパクトな現像装置を提供することができる。
【0011】
本発明に係る現像装置の第二特徴構成は、前記開口部が形成された前記容器の外面上に凸部が形成されている点にある。
【0012】
本構成のごとく、開口部が形成された容器の外面上に凸部を形成するだけで、開口部が形成された容器の外面と錠剤溶解部の内面との間に隙間を設けることができる。すなわち、錠剤の溶解性を向上させるため、開口部を通じて現像処理液が流入・流出することができる隙間を容易に設けることができる。また、現像装置本体側(錠剤溶解部側)ではなく、容器側に凸部を形成するので、その成形も容易である。したがって、他の部品を用いることなくコンパクトな構成でこの隙間を設けることができる。
【0013】
本発明に係る現像装置の第三特徴構成は、前記サブタンク内に前記循環する現像処理液を前記錠剤溶解部へ案内するガイド部材が備えられるとともに、前記ガイド部材の端部が前記容器に接している点にある。
【0014】
サブタンク内に設けられたガイド部材は、現像処理タンクから流入してくる現像処理液を錠剤溶解部へ案内するため、錠剤溶解部へ多くの現像処理液を流入させることができ、容器内の現像処理剤が溶解し易くなる。さらに、このガイド部材の端部が容器に接するようにすることで、より多くの循環する現像処理液を容器内に流入させることができ、容器内の現像処理剤の溶解性の向上を図ることができる。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、感光材料としての銀塩印画紙P(以下、印画紙と称する)に対して露光を行う露光部Exと、このように露光された印画紙Pの現像処理を行う現像部Deと、現像処理後の印画紙Pを乾燥する乾燥部Drとを筐体10に収納するとともに、筐体10の外部には、処理の後に筐体10の上部から水平方向に送り出される印画紙Pをベルト搬送機構11からソータ(図示せず)に送り、オーダ単位で仕分けて集積する写真プリンターが構成されている。この写真プリンターはデジタルミニラボと称せられるものであり、図面には示していないが、写真フィルムのコマ画像をフィルムスキャナによって光電変換することにより取り込んだ画像情報、あるいは、デジタルカメラで撮影した画像情報を該写真プリンターに伝送することにより、露光部Exにおいて、その画像情報に基づき印画紙Pに対して露光を行えるものとなっている。
【0016】
露光部Exは、2つの印画紙マガジンMの一方に収納したロール状の印画紙Pを供給ユニットU1でプリントサイズに切断して上方に搬送し、この供給ユニットU1からの印画紙Pを露光ユニットU2において上方に搬送しながら画像情報の露光を行い、この露光ユニットU2から上方に送られる印画紙Pを前部ローラユニットU3において搬送方向を水平方向に変換した後、振分ユニットU4で水平方向に送り、この後、後部ローラユニットU5から現像部Deに受け渡すよう構成されている。
【0017】
現像部Deは、基本的に1つの発色現像槽CDと、1つの漂白定着槽BFと4つの安定槽STBとで成る複数の現像処理槽2(3種の現像処理槽CD、BF、STBの総称)を備えるとともに、夫々の現像処理槽2に印画紙Pを供給するよう多数の圧着ローラを有した搬送ユニット3を備えている。
【0018】
現像処理槽2は現像処理を行う部位の深さが夫々異なるものであるが、基本的には略等しく図2のように示すことが可能である。つまり、現像処理槽2は搬送ユニット3によって印画紙Pが供給される現像処理タンク21と、この現像処理タンク21の側部位置において現像処理タンク21からの現像処理液Lの流入・流出が可能なように連通状態で形成されたサブタンク22とを備えるとともに、サブタンク22からフィルタ25を介して吸入した現像処理液Lを現像処理タンク21の底部に戻すよう循環ポンプ28を有した循環路28aを備えている。なお、現像処理液Lとは発色現像処理に使用される処理液L〈CD〉と、漂白定着処理に使用される処理液L〈BF〉、及び、安定処理に使用される処理液L〈STB〉を含むものの総称である。
【0019】
図3に示すように、サブタンク22の内部には、フィルタ25が組み込まれ、そのフィルタ25を通過した濾過後の現像処理液Lは、フィルタ25を貫通するパイプ26のスリット26aからパイプ26内に流れて循環路28aに至る。また、フィルタ25を取り巻くようにガイド板27が設けられている。ガイド板27はサブタンク22の側面から延出し、その先端は後に説明する錠剤溶解部5に配置された容器6に接している(図4参照)。これにより現像処理タンク21から流入してきた現像処理液Lが容器6に案内される。なお、図示しないが、サブタンク22内には、現像処理液Lの液温を計測する温度センサと、現像処理液を加熱する加熱手段としての電気式のヒータと、現像処理液の液面レベルを計測するフロート式の液面センサも備えられている。
【0020】
サブタンク22には、さらに錠剤投入部4と錠剤溶解部5が備えられている。この錠剤投入部4はサブタンク22上部に設けられる。図3に示すように、サブタンク22上面を固定する円形の固定部材41の中央部には孔41aが形成されている。この孔41aから投入された錠剤からなる現像処理剤T(以下、錠剤と称する)は、サブタンク22内のフィルタ25上部に設けられた斜面42に沿って下方へ転がり、錠剤溶解部5に収容される。錠剤溶解部5は現像処理タンク21とは反対側にサブタンク22の一部として形成されており、この錠剤溶解部5には碁盤目状に開口部62をその全面に有する例えばステンレス製の容器6が収められている。図5に示すように、容器のフィルタ側の外面6A’以外の外面6Aには直線状の凸部63が複数形成されており、これにより図3及び図4に示すように錠剤溶解部の内面5Aと容器の外面6Aとの間に隙間Gが設けられている。
【0021】
したがって、現像処理タンク21からサブタンク22に流入してきた現像処理液Lは、図4に示すようにガイド板27により錠剤溶解部5へ案内され、錠剤溶解部5内に配置された容器のフィルタ側の面6A’に形成された開口部62を通じて容器6内に流入する。ガイド板27の先端は、容器6に接しているので現像処理液Lをほとんど全て容器6内に流入させることができる。容器6内を通過する現像処理液Lは、そこに収容されている錠剤Tを溶解させ、容器のフィルタ側の面6A’に形成された開口部62を通じて容器外へ流出していく。すなわち、容器のフィルタ側の面6A’に形成された開口部62が現像処理液Lの循環流の通過を許容する通過口61となっている。そして、フィルタ25に流れ込み、そのフィルタ25を通過した濾過後の現像処理液Lは、フィルタ25を貫通するパイプ26のスリット26aからパイプ26内に流れて循環路28aに至り、現像処理タンク21の底部に戻される。
【0022】
一方、容器内を通過する現像処理液Lは、容器の外面6Aに形成された開口部62を通じて隙間Gに流れ込む。錠剤Tが容器6の底部に溜まっていたり容器6の側面に付着していたりする場合、この開口部62に接した錠剤Tに対しては、隙間Gに流入した現像処理液Lが開口部62を通じて錠剤Tの表面と接触することができるので、錠剤Tが溶解し易くなる。また、開口部62を通じて隙間Gから容器6内に流入する現像処理液の圧力により、開口部62近傍では錠剤が付着し難くなり、その結果、錠剤の溶解性が向上する。
【0023】
錠剤の溶解性を向上させるためには、容器内を通過する現像処理液を増加させることも必要である。そのため、本実施形態においてはガイド板27をその先端が容器に接するように設けている。この他、容器の開口率(容器外面の面積に対する開口部全体の面積の割合)を、容器内部に収容された錠剤の現像処理液による流出を回避しつつ、可能な限り大きくしても良い。開口率が大きくなると、通過する現像処理液の増加だけでなく、上述したように容器と錠剤溶解部の間の隙間に流入した現像処理液が開口部を通じて錠剤と多く接触し、錠剤が溶解し易くなる。また、循環ポンプ28を調節することにより、現像処理タンク21とサブタンク22を循環する現像処理液Lの循環速度を高め、錠剤溶解部を通過する現像処理液の循環流の流速を速くすることもでき、錠剤の溶解性を向上させることができる。
【0024】
本実施形態における容器は、その外面6Aに開口部62を有するとともに、これらの面上に直線状の凸部63を有している。これらの開口部や凸部を容器側に形成することは容易である。そして、この直線状の凸部63により、サブタンク22の一部として形成された錠剤溶解部5との間に隙間Gを設けることができ、上述したような錠剤の溶解性の向上を図ることができる。すなわち、錠剤の溶解性に優れているとともに、装置の大型化や複雑化を図ることなくコンパクトな現像装置が実現されている。
【0025】
上述した実施の形態では、開口部が形成された容器の外面上に形成された凸部を直線状の凸部としたが、もちろんその他の形状、例えば波形状の凸部などでも良い。
また、容器と錠剤溶解部との間に隙間を設けるための凸部を容器側ではなく、現像装置本体側(錠剤溶解部側)に設けても、容器側及び現像装置本体側(錠剤溶解部側)両方に設けても良い。
【0026】
上述した実施の形態では、容器と錠剤溶解部との間の全てに隙間を形成したが、もちろん全てに隙間を形成しなくても良い。例えば、上述した実施の形態において、容器のフィルタ側の面に現像処理液の循環流の通過を許容する通過口となる開口部を形成し、その反対側の面に同様の開口部を形成し、この反対側の面上に凸部を形成することにより、この面と錠剤溶解部(サブタンクの一部)との間にのみ隙間を設けることができる。また、隙間の長さや容器に形成された開口部の大きさは容器の各面で同じでなくても良く、各面によって適宜変更しても良い。
【0027】
さらに、上述した実施の形態では現像装置として印画紙を現像する装置を取り上げたが、もちろん、印画紙以外の感光材料、例えば写真フィルムなどを現像する装置にも本発明は適用することができる。
【0028】
なお、上述した実施の形態にように錠剤溶解部に開口部を有する容器を配置するのではなく、開口部が形成されている板部材を錠剤溶解部と隙間を開けて配設することにより、錠剤の溶解性の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る現像装置の断面模式図
【図2】本発明に係る現像装置の断面模式図
【図3】本発明に係る現像装置におけるサブタンクの拡大断面模式図
【図4】本発明に係る現像装置におけるサブタンクの上面断面模式図
【図5】本発明に係る現像装置における容器の斜視図
【図6】従来の現像装置におけるサブタンクの拡大断面模式図
【符号の説明】
【0030】
4:錠剤投入部
5:錠剤溶解部
5A:錠剤溶解部の内面
6:容器
6A:容器の外面
21:現像処理タンク
22:サブタンク
27:ガイド板(ガイド部材)
28a:循環路
61:通過口
62:開口部
63:凸部
De:現像部
G:隙間
L:現像処理液
T:錠剤(現像処理剤)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光材料を現像処理するための現像部を有し、
前記現像部には現像処理タンクとサブタンクと前記現像処理タンクと前記サブタンクとの間で現像処理液を循環させる循環路とが備えられ、
前記サブタンクには錠剤から成る現像処理剤を投入する錠剤投入部と前記現像処理剤を溶解する錠剤溶解部とが備えられている現像装置において、
前記錠剤投入部から投入された前記現像処理剤を収容するとともに、循環する前記現像処理液の通過を許容する通過口を有する容器が前記錠剤溶解部に配置され、
前記容器の外面と前記錠剤溶解部の内面との間には隙間が設けられ、かつ、
前記隙間に面した前記容器の外面には開口部が形成されている現像装置。
【請求項2】
前記開口部が形成された前記容器の外面上に凸部が形成されている請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記サブタンク内に前記循環する現像処理液を前記錠剤溶解部へ案内するガイド部材が備えられるとともに、前記ガイド部材の端部が前記容器に接している請求項1又は2に記載の現像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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