説明

現像装置

【課題】トナーを進行波電界で搬送するにあたり、搬送体上でトナーの凝集やブロッキングを効果的に抑制して、こうした凝集等によるトナーの搬送阻害を抑制又は回避できる現像装置を提供する。
【解決手段】所定の帯電特性を有するトナーを含有する現像剤を収容する現像剤収容体22と、進行波電界によってトナーを現像領域に搬送する搬送体30と、を備える現像装置20とし、現像剤は、トナーと、トナーの所定の帯電特性とは逆の帯電特性を有する除電剤と、を含有するようにする。こうした現像剤を用いることで、トナーの凝集現象やブロッキング現象を抑制又は回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行波電界搬送方式による現像装置及び当該現像装置を備える画像形成装置並びに現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式に基づく複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に適用される現像装置には各種の形態が挙げられる。現像装置は、現像ローラなどの現像剤(トナー)担持体に担持させたトナーを、像担持体に形成された静電潜像に静電的作用により供給して潜像を可視化し現像するものである。このような現像装置には、像担持体に対して非接触の状態で像担持体上の静電潜像に供給して現像するものがある。こうした非接触方式の現像装置の一つとして、例えば、進行波電界(電界カーテン)を用いるものが知られている(特許文献1、2)。この方法は、表面に進行波電界を発生させる手段を備えた現像剤の搬送体を準備し、帯電したトナーを、トナー収容室から像担持体と対向する現像領域まで搬送し、最終的に像担持体上の静電潜像にトナーを供給することで静電潜像を現像するものである。進行波電界による搬送・現像方式は、ブレード等を用いてトナー層厚を調整する必要がない点、他の方法よりも摩擦等によってトナーを帯電する必要性が少ない点、及び非接触でトナーを像担持体に付着させることができる点などから、トナーへの機械的ストレスを低減できるなどのメリットがあることが知られている。また、非接触でトナーを搬送体から像担持体に直接付着させるため、現像ローラなどを必要としないためトルクを抑えることができるなどのメリットも知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−181371号公報
【特許文献2】特開2002−99142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らによれば、進行波電界による搬送方法によって、トナーを、その収容体内部から搬送し、再び収容体に返送するという、循環動作を行うと、搬送体上でトナーが凝集したりブロッキング(トナー凝集体の搬送体への固着)したりしてしまい、トナーの搬送が阻害されることがわかった。現状において、こうした不都合を抑制又は回避できるトナーは提供されていない。
【0005】
そこで、本発明は、トナーを進行波電界で搬送するにあたり、搬送体上でトナーの凝集やブロッキングを効果的に抑制して、こうした凝集等によるトナーの搬送阻害を抑制又は回避できる現像剤、現像装置及び画像形成装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記した課題を解決するのにあたって、上記したトナーの凝集及びブロッキング現象について検討したところ、進行波電界搬送中に搬送体とトナーとの摩擦帯電のほかトナー同士の摩擦帯電により、トナー及び搬送体の双方が過剰に帯電(チャージアップ)して、トナーが搬送体上に付着してしまうという知見を得た。さらに、本発明者らは、トナー及びトナー以外の要素について種々検討したところ、トナーとは逆の帯電特性を有する粒子を添加することで上記凝集現象やブロッキング現象を抑制又は回避できるという知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づき以下の発明を完成した。
【0007】
本発明によれば、所定の帯電特性を有するトナーを含有する現像剤を収容する現像剤収容体と、進行波電界によって前記トナーを現像領域に搬送する搬送体と、を備える現像装置であって、前記現像剤は、前記トナーと、前記トナーの前記所定の帯電特性とは逆の帯電特性を有する除電剤と、を含有する、現像装置が提供される。
【0008】
本発明の現像装置によれば、トナーとともに除電剤を現像剤中に含有することで、搬送体上へのトナーの付着を抑制して搬送体上でのトナーの凝集やブロッキングを抑制又は回避できる。このため、これらに起因する搬送阻害を抑制又は回避し、搬送を促進できる。
【0009】
本発明の現像装置においては、前記除電剤は、少なくとも結着樹脂を含むトナー様体とすることができる。除電剤をトナー様体とすることで、用いるトナーに応じた除電剤を準備できる。また、前記除電剤は、前記トナーによる画像形成を阻害しない程度の色調を有することができる。好ましくは、色調を有しない(即ち、着色剤を含まない)方がよい。除電剤がこうした色調を有していること、好ましくは色調を有していないことで、除電剤が誤ってトナーとともに像担持体に着地したとしても、画像を阻害しない。また、除電剤を除去する必要もない。前記現像剤は、前記トナーと前記除電剤との総量100質量部に対して除電剤を10質量部以上70質量部以下含有することができる。この範囲で除電剤を含有することで、効果的に除電作用を発揮させて搬送促進効果を得ることができる。
【0010】
前記現像剤において、前記除電剤は前記トナーよりも大きい平均粒径を有することができる。除電剤がトナーと同等あるいはそれよりも大きい平均粒子径を備えることで、効果的に除電することができる。また、前記除電剤の平均粒子径は5μm以上25μm以下であることが好ましい。除電剤の平均粒子径がこの範囲であると、除電剤の効果が得られやすい。さらに、前記搬送体上において前記トナーの凝集又はブロッキングを抑制可能である。こうした効果を有することで、確実にトナーの搬送を促進することができる。また、前記トナーは正の帯電特性を有することができる。正の帯電特性を有するトナーは環境保全において好ましいほか、除電剤による除電効も効果的である。
【0011】
なお、本発明によれば、画像形成装置であって、上記いずれかの現像装置を備える、画像形成装置も提供される。本発明の画像形成装置によれば、上記した現像装置を備えることで、上記現像装置の作用効果を発揮でき、その結果、安定したトナー搬送性を備えることができる。
【0012】
また、本発明によれば、進行波電界によってトナーを現像領域に搬送する搬送体を備える現像装置に用いる現像剤であって、所定の帯電特性のトナーと、前記トナーの前記所定の帯電特性とは逆の帯電特性を有する除電剤と、を含有する、現像剤も提供される。
【0013】
本発明の現像剤によれば、トナーとともに除電剤を含有するため、トナーの進行波電界による搬送に伴って生じるトナー同士及びトナーと各種部材間における摩擦帯電による過剰な帯電を抑制できる。このため、トナーが搬送体上に付着するのを抑制でき、結果として、トナーの凝集やブロッキングも抑制し、トナーの搬送を促進できる。
【0014】
本発明の現像剤においては、既に本発明の現像装置において説明した各種態様を採ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、現像装置、画像形成装置及び現像剤に関する。以下、本発明のこれらの実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお説明の都合上、画像形成装置、現像装置及び現像剤の順で説明する。図1は本発明の現像装置の一例を示す。なお、図1は、本発明の実施形態を例示するものであって本発明を限定するものではない。
【0016】
(画像形成装置)
画像形成装置は、後,述する本発明の現像装置を有する画像形成ユニット、定着ユニット及び用紙搬送ユニットを備えている。
【0017】
なお、以下の説明では、画像形成装置を、フルカラーのレーザプリンタとして示したがこれに限定するものではなく、レーザプリンタ以外のプリンタ、複写機、ファクシミリ装置及びこれら2種以上の機能を備える複合機のいずれであってもよい。また、画像形成装置は、本発明の現像装置を備える限り、電子写真方式における帯電工程における帯電方式、露光工程に用いる露光部材の光源の種類や露光方式、転写方式及び定着方式は特に限定されない。また、画像形成装置はフルカラーであってもモノクロであってもよい。
【0018】
(画像形成ユニット)
画像形成ユニット10は、電子写真方式のフルカラー画像形成ユニットを構成している。画像形成ユニット10は、黄色、マゼンタ、シアン及び黒にそれぞれ対応した黄色画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用、及び黒画像用の4つの画像形成部(図示せず)から構成される。これらは、例えば、用紙搬送ユニットの用紙供給側から定着ユニットに向かって、用紙の搬送路に沿って、黄色画像形成部、マゼンタ画像形成部、シアン画像形成部、黒画像形成部が、この順に並設されている。各画像形成部は、実質的に同一の構成となっており、各色画像形成部は、各色の画像データに基づいて、黄色、マゼンタ、シアン、及び黒の各色のトナー像を形成して、最終的に用紙上に転写する。各画像形成部は、それぞれ、像担持体12と現像装置20のほか、図示しない帯電部材と、露光部材と、転写部材と、クリーニング部材と、除電部材とを備えている。
【0019】
像担持体12は、特に限定されるものではないが、表面に光導電性層を有するドラム形状とすることができる。像担持体12は、所定の方向に回転駆動するように構成されている。像担持体12の光導電性層は、帯電部材によって所定の電位まで帯電されるようになっている。
【0020】
帯電部材は、像担持体12の表面を均一に帯電するものである。帯電部材としては、例えば、タングステン等の導電線、金属製のシールド板、グリッド板からなるコロナ帯電器、帯電ローラ、帯電ブラシなどの各種の形態が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0021】
露光部材は、画素データに基づいて、帯電された像担持体12の表面を露光し、静電潜像を形成するものである。露光部材には、画像形成装置の図示しないコントローラから画像データが入力されるようになっており、それぞれ特定色の画像データに対応する静電潜像を像担持体12上に形成できるようになっている。露光部材としては、特に限定されるものではなく、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)や、発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッド等が用いられる。
【0022】
現像装置20は、トナーを含む現像剤を用いて、像担持体12上に形成された静電潜像を現像してトナー像(可視像)を形成するものである。現像装置20及び現像剤については後段で詳細に説明する。
【0023】
転写部材は、像担持体12上のトナー像を、後述する用紙搬送ユニットによって搬送される用紙上に転写するものである。転写部材の表面は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されるようになっている。転写部材としては、コロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、画像形成装置は、転写部材は、像担持体12上に形成されたトナー像を直接的に用紙に転写する直接転写方式を採用したが、これに限定するものではなく、中間転写方式とすることもできる。また、タンデム方式でなく、フォーサイクル方式であってもよい。
【0024】
クリーニング部材は、用紙への画像転写後に像担持体12上に残留しているトナーを除去するものである。典型的にはクリーニングブレードなどが挙げられるが、特に限定されない。除電部材は、クリーニング部材よりも後段側に配置されており、像担持体12の表面に残留している電位を除去するものであり、電位を除去する形態については特に限定されない。
【0025】
(定着ユニット)
定着ユニットは、加熱ローラおよび加圧ローラを備え、これらのニップ部に用紙が搬送されると、用紙にトナー像を熱圧着して定着させるものである。定着ユニットによってトナー像の定着処理が行われた後の用紙は図示しない排紙トレイに排出されるようになっている。
【0026】
(用紙搬送ユニット)
用紙搬送ユニットは、駆動ローラ、従動ローラ及び搬送ベルトを備え、各画像形成部の転写部材に対して、トナー像を転写するための用紙を搬送し、さらに、トナー像が転写された用紙を定着ユニットに搬送し、トナー像が定着された用紙を図示しない排紙トレイに排出するものである。搬送ベルトは、駆動ローラと従動ローラとに巻回されており、図示しない用紙トレイから供給された用紙を、各画像形成部に搬送するようになっている。
【0027】
(現像装置)
次に、現像装置20について詳細に説明する。図1に示すように、現像装置20は、トナーを含有する現像剤収容体22を備えている。収容体22は、像担持体12と対向する領域におおいて現像用の開口24を備えるとともに傾斜する底部26を備える容器状に形成されている。現像剤収容体22の内部には、収容体22内部の現像剤を攪拌するための攪拌部材28と、現像剤、すなわち、トナーを搬送する搬送体30と、を備えている。なお、収容体22は、図1に例示する形態に限定するものではなく、画像形成装置における画像形成方法や画像形成ユニット10や現像装置20の設置形態等によって適宜変更することができる。
【0028】
攪拌部材28は、収容体22内部の傾斜する底部26の下端近傍に備えられており、搬送体30から収容体22の内部に返送され集積される現像剤を攪拌できるようになっている。攪拌部材28は、また、現像剤を攪拌しつつ搬送体30の搬送開始端部32bへ供給することがきるようになっている。攪拌部材28は、さらに、現像剤を攪拌するとともに摩擦帯電により現像剤の成分であるトナーを帯電させることができる。なお、攪拌部材28の設置形態やその形状等は、特に限定されない。図1においては、例示として、複数枚の羽根を備える回転羽根を記載したが、スクリュー又はオーガ等であってもよい。
【0029】
搬送体30は、収容体22の現像用開口24において像担持体12に対向状に備えられている。搬送体30は、像担持体12に対向する絶縁性の基体32と当該基体32の像担持体12側の表面において一定間隔で配列された複数個の電極群34とを備えている。基体32は、像担持体12に対向するほぼ平板状の平板部32aと、開口部24の一端(図1において左側)から収容体22の内方を指向して屈曲する搬送開始端部32bと、開口部24の他端(図1において右側)から収容体22の内方を指向して屈曲する搬送終了端部32cとを備えている。
【0030】
搬送開始端部32bは、開口部24の前記一端から、収容体22の底部26の下端近傍を指向して屈曲されている。すなわち、おおよそ攪拌部材28を指向している。このため、収容体22の底部26の下端近傍に集積されて攪拌部材28によって攪拌され、開口部24側へと押し出される現像剤が搬送体30に供給されやすくなっている。また、搬送終了端部32cは、開口部24の前記他端において、収容体22内の底部26の上端近傍を指向して屈曲されている。このため、搬送体30上から収容体22の内部に返送される現像剤を収容体22の底部26の傾斜を利用して攪拌部材28に供給されやすくなっている。
【0031】
基体32の表面のほぼ全体に配列される電極群34を構成する各電極36は、基体32の幅にほぼ一致する長さを有する線状形態を備えている。各電極36は、その長辺が現像剤の搬送方向に直交するように基体32上に配列されている。電極36には、それぞれ図示しない交流電源が接続されており、各電極36に位相のずれた4相交流を印加することにより、搬送体30の表面に進行波電界を形成して、現像剤を現像領域にまで搬送することができるようになっている。
【0032】
(現像剤)
次に、この現像装置20に用いる現像剤について説明する。現像剤は、所定の帯電特性のトナーを含有している。現像剤としては、非磁性1成分系であってもよいし、トナーと磁性キャリアとを含む磁性2成分系のいずれであってもよい。現像装置20や画像形成装置の小型化等の観点からは、好ましくは非磁性1成分系である。なお、以下の説明においては、これら2種の双方を包含して説明するが、必要に応じ、磁性2成分系現像剤について補足する。
【0033】
現像剤に用いるトナーは、所定の帯電特性を有している。画像形成剤であるトナーの帯電特性は、正帯電性であってもよいし、負帯電性であってもよい。トナーの帯電特性は、主として画像形成ユニット10における静電潜像の形成形態及び静電潜像に対するトナーの付着形態によって決まる。トナーは、環境保全等の観点から正帯電性のトナーであることが好ましい。なお、トナーの構成成分及び製法については後段で詳述する。なお、現像剤を磁性2成分系とする場合には、適切な磁性導電性のキャリアを含めるようにする。キャリアは典型的には、鉄やフェライトが用いられる。
【0034】
現像剤は、除電剤を含んでいる。除電剤は、トナーの帯電特性とは逆の帯電特性を有することができる。トナーの帯電特性と逆の帯電特性を有するとは、トナーとの摩擦によってトナーとは逆の帯電傾向を発現することを意味する。換言すれば、摩擦帯電系列における帯電傾向においてトナーとは逆の傾向を有することを意味する。例えば、正帯電性のトナーが摩擦帯電系列において、所定レベルの正の帯電傾向を示す場合には、除電剤は、当該所定レベルの正の帯電傾向よりも逆方向の傾向、すなわち、負の帯電傾向を示すものであればよい。すなわち、除電剤の発現する帯電特性とは、トナーの帯電特性との相対的なものである。
【0035】
除電剤が、トナーとの関係において上記の帯電特性を有する場合には、現像装置20においてトナーと並存されることにより、トナーとの摩擦によってトナー同士の摩擦帯電による過剰な帯電(チャージアップ)を効果的に抑制又は回避することができる。このため、搬送体30において、トナーの凝集又はブロッキングを効果的に抑制又は回避して、現像剤の円滑な搬送が可能となる。
【0036】
除電剤は、また、搬送体30の基体32や攪拌部材28の帯電特性と比較したとき、これらのいずれかの帯電特性よりも逆の帯電傾向を有するものであることが好ましい。除電剤がこうした帯電傾向を示すことで、トナーと基体32や攪拌部材28との間の摩擦によるこれらのチャージアップを効果的に抑制又は回避することができる。このため、搬送体30におけるトナーの凝集やブロッキングを効果的に抑制又は回避できる。
【0037】
除電剤は、上記した帯電特性を有するものであればよく、その材質、構成、形状及び大きさ等特に限定されない。当業者であれば、トナーの帯電特性を考慮して適宜材質を決定することができる。
【0038】
なお、本発明の除電剤は、磁性2成分系現像剤におけるキャリアを包含するものではない。磁性2成分系現像剤におけるキャリアと本発明における除電剤とは、本発明における除電剤が磁性を有していない点において区別することができる。
【0039】
除電剤は、それ自体トナーとの間で摩擦帯電するものであるから、それ自体粒子状体であることが好ましい。なお、除電剤は、搬送工程を通じて、一次粒子として存在していなくてもよく、トナーとともに二次粒子を形成して現像剤を構成していてもよいし、除電剤同士の二次粒子を形成していてもよい。
【0040】
除電剤は、少なくとも結着樹脂を含む粒子としてもよい。なお、ここで、結着樹脂とはそれ自体バインダ性能のある樹脂を意味する。また、除電剤は、少なくとも結着樹脂を含むトナーの母粒子状の粒子(トナー様体)であってもよい。なお、除電剤におけるトナー様体は、画像形成のための着色剤を含んでいてもいなくてもよいし、定着のためのワックスを含んでいてもいなくともよい。適当な色調付与のために着色剤が含まれていてもよい。除電剤をトナー様体とすることで、トナーと同様に(又は同時に)容易に除電剤を取得することができる。また、帯電特性等の制御も容易に行うことができる。除電剤を、トナー様体とするとき、必要に応じて所定の帯電特性を付与可能な程度の添加剤を含むトナー様体とすることができる。除電剤に必要な帯電特性を付与するには、必要に応じて、通常のトナーの製造に用いられる帯電制御剤及び外添剤のいずれか一方あるいは双方がトナー母粒子に添加されていてもよい。除電剤をトナー様体とするとき、結着樹脂を含むトナー母粒子を画像形成剤としてのトナーのトナー母粒子と共通とし、帯電特性のみが異なるものとしてもよい。使用する帯電制御剤や外添剤についてトナーと逆の帯電特性を有するものを用いることで、除電剤を容易に製造することができる。
【0041】
除電剤は、用紙にトナーとともに付与されたとき、トナーによる画像形成を阻害しない程度の色調を有するように調整されていることが好ましい。除電剤はトナーとは逆の帯電特性を有することから像担持体12に対してトナーと同様に供給されることはないが、上記色調に調節されていれば、誤って像担持体12に供給されたときであっても、画像形成を阻害することがないからである。例えば、除電剤は、着色剤が付与されておらず、色調をほとんど有しないか全く有しないものとすることができる。例えば、無色あるいは無色に近いものとすることができる。また、除電剤は、トナーと同系色又は同一色とすることもできる。例えば、シアンのトナーの場合、トナーと同程度の彩度及び明度としてもよいし、トナーよりも明度及び/又は彩度に比較して低い又は高いものとしてもよい。除電剤における適切な色調は、必要に応じて、使用する着色剤の量(有無)や、使用する着色剤の種類を適宜変更することによって容易に取得することができる。尚、除電剤は、着色剤を含まずに、それ自体透明であることが最も好ましい。
【0042】
なお、トナーによる画像形成を阻害しないとは、除電剤によって意図しない欠陥がトナー画像に少なくとも明示的には付与されないことを意味する。こうした欠陥が明示的に付与されるときには、トナーによる画像形成を阻害しない、とは言えない。ここで、「明示的」とは、目視により視認されることを意味する。欠陥の種類は特に限定しないが、例えば、色ムラ、不鮮明化などの画像解像度の低下が挙げられる。
【0043】
除電剤は、トナーや搬送体30並びに攪拌部材28との接触面積、流動性、トナーとの混合均一性等を考慮すると、球状であることが好ましい。より好ましくは真球状である。また、耐久性を考慮するとシェル状よりも中実状体であることが好ましい。
【0044】
除電剤のサイズも特に限定しない。トナーとの混合均一性等を考慮して適宜決定されればよい。トナーの凝集又はブロッキング抑制効果を考慮すると、除電剤の平均粒子径は、トナーの平均粒子径と同等又はそれ以上であることが好ましい。除電剤の均粒子径は、トナーの平均粒子径に対して50%以上400%以下であることが好ましい。この範囲であると効率的に除電することができる。
【0045】
また、除電剤の平均粒子径は、5μm以上25μm以下であることが好ましい。この範囲であると、平均粒子径が5μm以上25μm以下のトナーを効果的に除電することができる。除電剤の平均粒子径は、より好ましくは10μm以上25μm以下である。
【0046】
なお、トナー及び除電剤の平均粒子径については、細孔電気抵抗法による測定方法を採用できる。また、この測定方法においては、ベックマンコールター社製コールターマルチサイザーII(アパーチャ径100μm)あるいはそれと同等の装置により体積平均粒子径を測定することが好ましい。トナーと除電剤の平均粒子径を対比する場合には、それぞれ同一の平均粒子径の測定方法によって計測された平均粒子径粒子径を用いることが好ましい。
【0047】
このような除電剤は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上の除電剤を用いる場合、どのような組み合わせであってもよい。除電剤の材質、粒子構造、形状、大きさ及び帯電特性等のいずれかあるいはこれらのうちの2種類以上が異なるものとすることができる。
【0048】
現像剤における除電剤の含有量は特に限定されない。現像剤は、除電剤の作用により、トナーの凝集又はブロッキングを抑制して現像剤の搬送阻害を抑制又は回避できる程度に除電剤を含有することができる。通常、現像剤中に除電剤が含まれていれば、その除電作用により有意な現像剤の搬送促進作用を得ることができる。好ましくは、現像剤においては、トナーと除電剤との総量(以下、単に総量という。)100質量部に対して除電剤が10質量部以上70質量部以下である。除電剤を総量100質量部に対して10質量部以上70質量部以下含有することで、飛躍的に現像剤の搬送阻害の抑制効果又は回避効果(搬送促進効果)を得ることができる。より好ましくは、同30質量部以上である。30質量部以上であると、除電剤を含まない場合に比較して7倍以上の搬送促進効果を得られやすい。また、さらに好ましくは同40質量部以上である。40質量部以上であると、除電剤を含まない場合に比較して10倍以上の搬送促進効果が得られやすい。また、除電剤は、同70質量部以下であることが好ましい。70質量部を超えて添加してももはや飛躍的な搬送促進効果が得られにくいからである。より好ましくは、同60質量部以下である。以上のことから、除電剤のより好ましい配合比の範囲は、総量100質量部に対して40質量部以上60質量部以下であり、さらに好ましくは45質量部以上55質量部以下であり、50質量部程度が最も好ましい。
【0049】
なお、除電剤を用いたときの搬送促進効果は、例えば実施例において記載した評価系における連続搬送時間を指標とすることができる。
【0050】
現像剤は、上記した除電剤とともにトナー、さらに必要に応じて磁性キャリアを混合することによって得ることができる。混合方法は、特に限定されないで、この種の現像剤に通常用いられる方法を採用することができる。また、現像剤には、トナー、除電剤及びキャリアなどの現像剤において必須成分のほか、適宜公知の添加剤を含めることができる。
【0051】
次に、画像形成装置の現像装置20に上記現像剤を適用してトナーを搬送し、現像する工程について説明する。なお、以下の例では、LAN等により接続されたPC端末からの画像形成命令に基づいて、画像形成装置において用紙への画像形成命令に係る画像像情に対応したトナー像の形成動作が開始されたときの現像工程について説明する。
【0052】
画像形成装置の図示しないコントローラが、LAN経由の画像形成命令を、インタフェースを介して受信すると、コントローラが、画像形成命令に係る画像情報にもとづき、各色に色分解し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の画像情報を生成する。
【0053】
次いで、各画像形成部において以下の動作が実行される。まず、帯電部材により、像担持体12の表面全体が帯電されるとともに、露光部材により像担持体12に対して各色の画像情報に対応して露光され、静電潜像が形成される。
【0054】
静電潜像の形成とともに、あるいはこれに先立って、現像装置20においては、現像のための現像剤の準備が開始される。すなわち、収容体22内の攪拌部材28の回転が開始され、収容体22内に収容された現像剤の攪拌が開始される。こうした攪拌により、現像剤中のトナーは攪拌部材28等との摩擦帯電や、トナー同士の摩擦帯電により帯電される。一方、トナーとともに除電剤が並存されることにより、トナーと除電剤との間の摩擦帯電により、トナーの過剰な帯電が抑制される。
【0055】
また、現像装置20においては、搬送体30の基体32上に配列された電極群34の各電極36に所定量の位相のずれを有する4相交流が印加されて、搬送体30の表面に進行波電界が形成される。これにより、現像装置20の収容体22内にあって基体32の搬送開始端部32bから搬送体30上に乗った現像剤、特には現像剤中のトナーは、各電極36間を進行波電界作用によって移動しながら搬送されていく。このとき、現像剤中に除電剤が併存するため、基体32とトナーとの間の摩擦帯電、トナー同士の摩擦帯電による過剰な帯電が抑制又は回避される。すなわち、トナー及び搬送体30がそれぞれ反対の極性に過剰に帯電することが抑制され、トナーが搬送体30に付着することが抑制される。すなわち、トナーの搬送体30上での凝集やブロッキングが抑制され、こうした凝集等による搬送阻害が抑制又は回避される(搬送が促進される)。
【0056】
次いで、像担持体12上の静電潜像が、像担持体12の回転により現像装置20に対向する領域(現像領域)に到達すると、現像装置20の搬送体30の基体32上に配列された電極群34上を進行波電界作用によって搬送されるトナーと接触し、トナーは像担持体12の静電潜像に対してクローン力によって着地する。この結果、像担持体12上に静電潜像に対応するトナー像が形成される。なお、トナーの付着形式は、露光によって電荷が除去された領域にトナーが押し込まれる形式であってもよいし、露光によって電荷が残留した領域にトナーが付着される形式であってもよい。
【0057】
進行波電界作用によってトナーが搬送されるとき、搬送体30が像担持体12に対して非接触であっても着地されるため、像担持体12との接触によるトナーへの負荷や像担持体12の負荷が低減される。また、搬送体30が像担持体12に非接触の状態でも着地する。この結果、像担持体12上には、静電潜像に対応するトナー像が形成される。
【0058】
こうした像担持体12上にトナー像が形成された後、像担持体12の回転によりトナー像が転写部材40に到達すると、転写部材40に供給された用紙にトナー像が形成される。
【0059】
用紙は、順次、各色の画像形成部の順に搬送され、この順で各色のトナー像が用紙上に形成される。
【0060】
以上説明したように、本発明の現像剤を収容する現像装置20によれば、現像剤中にトナーとともに除電剤を含有するため、進行波電界による帯電したトナーの搬送や、収容体22におけるトナーの攪拌時において、トナー及び搬送体30の過剰な帯電を防止することができる。これにより、搬送体30上におけるトナーの凝集やブロッキングを効果的に抑制又は回避でき、この結果、トナーの搬送を促進することができ、トナーをより長時間にわたり連続的に搬送することができるようになる。
【0061】
なお、以上の説明において、現像装置20は、タンデム方式でフルカラーのレーザプリンタに対応したものとして記載したが、本発明の現像装置は、これに限定するものではなく、既に説明した各種の態様の画像形成装置に対応するものとして構成することができる。また、以上の説明においては、現像装置20は、像担持体12を備えないもの、すなわち、分離型の現像装置として説明したが、本発明の現像装置はこれに限定するものではなく、像担持体12を現像装置として備える一体型であってもよい。
【0062】
また、以上の説明においては、現像剤の製造方法について説明しないが、後段にて詳述するトナー及びその製造方法の記載によれば、本発明は、現像剤の製造方法としても実施することができる。
【0063】
以下、現像剤の必須成分であるトナー及びその製造方法について説明する。なお、既に説明したように、除電剤をトナー様体とする場合において、以下のトナー及びその製造方法がトナー様体としての除電剤及びその製造方法に適用される。尚、トナーの製造方法は、以下に説明するものの他に公知の方法を適用できる。例えば、混練粉砕法、溶解懸濁法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法等である。
【0064】
(トナー)
トナーは、結着樹脂、着色剤、ワックスおよび帯電制御剤を有している。尚、除電剤は、結着樹脂、ワックス及び帯電制御樹脂を有していて、着色剤を含有していない。また、必要に応じて外添剤が添加される。
【0065】
結着樹脂としては、特に制限されず、トナーの結着樹脂として知られる公知の合成樹脂が用いられる。例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその誘導体、例えば、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体などのスチレン−スチレン誘導体共重合体、例えば、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタクリル酸系共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体など)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。
【0066】
(着色剤)
着色剤は、トナーに所望の色を付与するものであって、結着樹脂内に分散または浸透される。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、例えば、キノフタロンイエロー、ハンザイエロー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、ペリノンオレジン、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料、例えば、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料または金属粉、例えば、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの油溶性染料または分散染料、例えば、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸樹脂などのロジン系染料が挙げられる。さらには、高級脂肪酸や樹脂などよって加工された染料や顔料なども挙げられる。
【0067】
これらは、所望する色に応じて、単独使用または併用することができる。例えば、有彩単一色のトナーには、同色系の顔料と染料、例えば、ローダミン系の顔料と染料、キノフタロン系の顔料と染料、フタロシアニン系の顔料と染料を、それぞれ配合することができる。 着色剤は、結着樹脂100質量部に対して、例えば、2〜20質量部、好ましくは、4〜10質量部の割合で配合される。
【0068】
(ワックス)
ワックスは、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるために添加される。加熱圧力定着方式の場合、加熱媒体からトナーが剥離しやすいように、トナー内部にワックスを内包させておくことが一般的である。ワックスとしては、例えば、エステル系ワックス、炭化水素系ワックスなどが挙げられる。
エステル系ワックスとしては、例えば、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルなどの脂肪族エステル化合物、例えば、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの多官能エステル化合物などが挙げられる。
炭化水素系ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類、例えば、キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリン、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス、例えば、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。
【0069】
これらワックスは、単独使用または併用することができる。好ましくは、上記したワックスのうち、融点が、50〜100℃のワックスが挙げられる。融点が低く溶融粘度の低いワックスは、定着器の加熱温度が低い場合でも、結着樹脂よりも先に溶融してトナー表面に染み出すことで、オフセットを防止することができる。より具体的には、エステル系ワックス、パラフィン系ワックスが挙げられる。
ワックスは、結着樹脂100質量部に対して、例えば、1〜30質量部、好ましくは、3〜15質量部の割合で配合される。
【0070】
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、目的および用途に対応して、正帯電性電荷制御剤または負帯電性電荷制御剤から、単独または併用して用いられる。本発明の現像剤におけるトナー及びトナー様体としての除電剤も、正帯電性電荷制御剤及び負帯電性電荷制御剤の双方又は一方を用いることができる。帯電性の異なる電荷制御剤を組み合わせて用いることで、帯電性の調節を容易に行うことができ、本発明の現像剤のトナー及び除電剤を得るのに都合がよい。
正帯電性電荷制御剤として、例えば、ニグロシン染料、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン化合物、塩基性基含有化合物、3級アミノ基含有アクリル系樹脂などが挙げられる。負帯電性電荷制御剤として、例えば、トリメチルエタン系染料、アゾ系顔料、銅フタロシアニン、サリチル酸金属錯塩、ベンジル酸金属錯塩、ペリレン、キナクリドン、金属錯塩アゾ系染料などが挙げられる。帯電制御剤は、結着樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部の割合で配合される。
【0071】
(外添剤)
外添剤は、トナーの帯電性、流動性、保存安定性などを調整するために添加され、トナー母粒子よりも非常に小さい粒径の極微粒子からなる。本発明の現像剤におけるトナーは外添剤によって所定の帯電特性が付与されていてもよい。また、同様に、本発明の現像剤におけるトナー様体の除電剤においても、外添剤によってトナーと逆の帯電特性が付与されていてもよい。
【0072】
外添剤としては、例えば、無機粒子や合成樹脂粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物、および、これらの疎水性化処理物などが挙げられる。例えば、シリカの疎水化処理物は、シリカの微粉体を、シリコーンオイルやシランカップリング剤(例えば、ジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンなど)で処理することにより、得ることができる。
【0073】
また、上記に記載したものは負帯電性のものであるが、正帯電性のものとして、アミノシラン−シリコーンオイル、アミノアンモニウム−シリコーンオイル、アミノシランヘキサメチルジシラザン、アミノアンモニウムヘキサメチルジシラザン、アミノシランジクロロジメチルシラン、アミノアンモニウムアミノシランジクロロジメチルシラン、アミノシランポリジメチルシロキサン、アミノアンモニウムポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0074】
合成樹脂粒子としては、例えば、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体からなるコアシェル型粒子などが挙げられる。
【0075】
外添剤の添加では、例えば、ヘンシェルミキサーなどの高速攪拌機などを用いて、トナー母粒子と外添剤とを攪拌混合する。外添剤は、例えば、トナー母粒子100質量部に対して、通常、0.1〜6質量部の割合で添加される。
【0076】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定するものではない。
【実施例1】
【0077】
[トナーの調製]
以下の原料を混合後、45℃に加熱して樹脂溶液を調製した。
ポリエステル樹脂FC1565 *1 17質量部
エステル系ワックス *2 1質量部
ニグロシン系染料(帯電制御剤)*3 1質量部
カーボンブラック(着色剤)*4 1質量部
メチルエチルケトン 80質量部
*1 三菱レーヨン株式会社製、Tg64℃、Mn(数平均分子量)5000、Mw(重量平均分子量)98000、ゲル分(THF不溶分)1.5質量%、酸価6.1mgKOH/g
*2 日油株式会社製ユニスターH476
*3 オリエント化学工業株式会社製ボントロンNO4
*4 三菱化学株式会社製カーボンブラック#260
【0078】
蒸留水100質量部と1規定の水酸化ナトリウム水溶液1質量部とを混合して水性媒体を調製し、その後、45℃に加熱した。
【0079】
樹脂溶液100質量部及び水性媒体100質量部を、45℃に保持しながら、配合し、その後、ホモジナイザーDIAX900(ハイドルフジャパン)で、16000rpmで30分間攪拌して、乳化液を調製した。
【0080】
得られた乳化液1600質量部を、2Lセパラブルフラスコに挿入して、その気相中に窒素を送気しながら、70℃で150分間加熱攪拌して有機溶媒を除去し、懸濁液を得た。懸濁液中の樹脂微粒子の体積平均径は256nmであった。また、懸濁液中の析出物の有無を確認したところ、析出物はなかった。損後、懸濁液の固形分濃度を10質量%となるように蒸留水で希釈して、1600部の懸濁液を調製した。
【0081】
懸濁液100質量部に対して、0.2規定の塩化アルミニウム2.5質量部を添加して、ホモジナイザーで10分間高速混合し、その後、6枚平板タービン翼により300rpmで懸濁液を攪拌しながら液温45℃にまで昇温し、20分間攪拌を継続した。その後、懸濁液に0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部を添加し、液温90℃まで昇温し、トナー母粒子が真球状になるまで約5時間攪拌を継続し、その後冷却した。冷却後、懸濁液100質量部に対して1規定の塩酸水溶液2.5質量部を添加して、懸濁液が流動する程度に1時間攪拌後、ろ過し、乾燥して、トナー母粒子を得た。
【0082】
得られたトナー母粒子100質量部にシリカ2.0質量部(テイカ株式会社製、MSP−013(正帯電付与性))をヘンシェルミキサーを用いて攪拌混合して、正帯電性のトナーを粒子を得た。なお、体積平均粒子径は、ベックマンコールター社製コールターマルチサイザーII(アパーチャ径100μm)で測定した。
【実施例2】
【0083】
[除電剤の調製]
原料にカーボンブラックを含有していない以下の組成の樹脂溶液を用いること、凝集停止剤としての0.2規定水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部の半量(1.25質量部)を使用することの2点以外は、実施例1に記載のトナーの作製と同様に操作して、トナー母粒子を得た。この母粒子100質量部にシリカ2.0質量部(テイカ株式会社製、MSN−007(負帯電付与性)をヘンシェルミキサーを用いて攪拌混合して負帯電性のトナー粒子を得て、これを除電剤1とした。得られたトナーの体積平均粒子径(実施例1と同様の測定法による)は、20μmであった。なお、樹脂溶液は、以下の原料を混合後、45℃に加熱して調製した。それぞれの原料は、実施例1と同じものを用いた。

ポリエステル樹脂FC1565 18質量部
エステル系ワックス 1質量部
ニグロシン系染料(帯電制御剤) 1質量部
メチルエチルケトン 80質量部
【0084】
実施例1に記載したトナー母粒子の作製方法と同様に操作してトナー母粒子を得て、さらに、このトナー母粒子100質量部にシリカ2.0質量部(テイカ株式会社製、MSN−007(負帯電付与性)をヘンシェルミキサーを用いて攪拌混合して負帯電性のトナー粒子を得て、これを除電剤2とした。得られたトナーの体積平均粒子径(実施例1と同様の測定法による)は、7.9μmであった。
【実施例3】
【0085】
[現像剤の調製]
実施例1で得られたトナーに対して除電剤1又は除電剤2を、以下の表に示す配合比(質量比)で適切な容量のポリエステル製の袋中で十分に混合して現像剤1〜8を得た。また、トナーのみからなる除電剤を比較例とした。
【表1】

【0086】
[現像剤の評価]
次に、得られた各種現像剤の一定量を、図2に示す循環実験装置に供給して、搬送実験を行った。循環実験装置は、進行波電界による搬送方式に用いられる搬送体を模して作製されている。図示はしないが、内部には、搬送方向に配列された複数個の電極が配列されるとともに、位相の異なる4相交流が順次電極に印加されることで、進行波電界作用によりプラスに帯電したトナーを図中矢印方向に搬送可能に構成されている。また、この搬送体は、適当な収容体にセットされるとともに、搬送体の上面は、現像剤の供給時以外は、当該上面から一定の高さに配した透明なガラス板で覆われている。
【0087】
評価は、各現像剤の一定量を、実験開始時において図2に示す位置に供給後、所定の態様で電圧を印加して図3に示す方向で進行波電界によるトナー搬送を開始する。搬送体の表面において目視にて現像剤が循環しているかどうかを確認し、循環が確認されなくなるまでの時間を計測し、連続搬送時間(分)とした。結果を図3に示す。
【0088】
図3に示すように、正の帯電性のトナー母粒子に除電剤として負の帯電性のトナー母粒子を添加することで、連続搬送時間は著しく延長した。現像剤1〜8にあっては、少なくとも2.5倍以上延長することがわかった。
【0089】
特に、大径の除電剤1を用いた現像剤1〜4において、連続搬送時間の延長効果がより高く、5倍から15倍に増加した。これらのなかでも、特に、トナーと除電剤との総量に対する除電剤の配合比が特に30質量部以上50質量部以下のとき、7倍以上15倍以下の延長効果を確認でき、50質量部において最も良好な延長効果を確認できた。
【0090】
また、小径の除電剤2を用いた現像剤5〜8でも、除電剤2を用いた現像剤1〜4より延長効果は低いものの、配合比において総量に対して30質量部以上50質量部以下の範囲で良好な効果が得られ、特に50質量部で良好な効果が得られた。
【0091】
なお、これらの実施例では、トナー母粒子の調製時にバインダ及び着色剤を含めないものとしたが、バインダ及び着色剤を用いてトナー母粒子を調製し、同様にトナー及び除電剤を調製した場合においても、上記と同様の効果が得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の現像装置の一例を示す図である。
【図2】進行波電界作用によるトナーの搬送を評価するための装置を示す図である。
【図3】実施例で調製した現像剤の連続搬送時間の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
10 画像形成ユニット、12 像担持体、20 現像装置、22 収容体、24 開口部、26 底部、28 攪拌部材、30 搬送体、32 基体、32a 平板部、32b 搬送開始端部、32c 搬送終了端部、34 電極群、36 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の帯電特性を有するトナーを含有する現像剤を収容する現像剤収容体と進行波電界によって前記トナーを現像領域に搬送する搬送体とを備える現像装置であって、
前記現像剤は、前記トナーと、前記トナーの前記所定の帯電特性とは逆の帯電特性を有する除電剤と、を含有する、現像装置。
【請求項2】
前記除電剤は、少なくとも結着樹脂を含むトナー様体である、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記除電剤は、着色剤を含まない、請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤は、前記トナーと前記除電剤との総量100質量部に対して除電剤を10質量部以上70質量部以下含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記除電剤は前記トナーと同等あるいはそれよりも大きい平均粒径を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記除電剤の平均粒子径は5μm以上25μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
前記搬送体上において前記トナーの凝集又はブロッキングを抑制可能である、請求項1〜6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
前記トナーは正の帯電特性を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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