説明

現金回収装置

【課題】運賃箱金庫がセットされる度にこの金庫内の硬貨を装置内の収納部に収めて硬貨回収を行う際に、硬貨が収納部の許容量を超えて溢れ出てしまう状況を生じ難くすることができる現金回収装置を提供する。
【解決手段】運賃箱金庫2内の硬貨を金庫解錠器8で回収する際、金庫解錠器制御装置51は金庫内硬貨を解錠器内に流し込むのに先立ち、運賃箱金庫2から金庫内硬貨枚数Mkkを取得して、その時に指定状態にある硬貨収納袋の空き容量Rとこの金庫内硬貨枚数Mkkとを比較する。このとき、金庫内の硬貨の全てを収めきることができればその硬貨収納袋を継続使用し、これとは逆に空き容量Rが足りないのであれば硬貨収納先を空の硬貨収納袋に切り換える。金庫解錠器制御装置51は、このようにして硬貨収納袋の空きスペースが足りるか否かの判定を行ってから、運賃箱金庫2内の硬貨(紙幣も含む)を解錠器本体に流し込む動作を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々の車両の運賃箱に運賃として投入された硬貨や紙幣等を一箇所で一括回収する現金回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路線バスやワンマン運行式鉄道等の車両においては、乗客が支払う運賃や、乗客がどの停留所から乗車したのかの証明である整理券の投入先として運賃箱が車内に設置されている。運賃箱は、運賃として投入された硬貨や紙幣がいくらであるのかを計数処理(計算)し、これら硬貨や紙幣を蓄積しつつ、運賃投入時に運賃とともに投入された整理券も同様に蓄積する。運賃箱には、運賃箱に投入された運賃や整理券の蓄積先として運賃箱金庫が設けられている。この運賃箱金庫は、路線バスや鉄道を運営する会社が管理するターミナルセンタ等でこの金庫内の運賃や整理券をまとめて一括回収できるように、運賃箱の装置本体に対して着脱可能となっている。
【0003】
ターミナルセンタには、各々の車両で支払われた運賃、即ち各々の運賃箱金庫に収納された運賃を一括回収する現金回収装置が設置されている。この種の現金回収装置の一例は、例えば特許文献1,2等に開示されている。運行終了後、運転者は運賃箱から運賃箱金庫を取り外し、これをターミナルセンサに持ち運ぶ。そして、ターミナルセンタに設置された現金回収装置を起動させ、この現金回収装置に運賃箱金庫をセットして現金回収動作を実行させることにより、運賃箱金庫内の運賃を現金回収装置に回収させる。現金回収装置は、運賃箱金庫内の硬貨、紙幣、整理券を仕分けして、各々対応する金庫や収納箱に収納する。
【0004】
図7に示すように、この種の現金回収装置81の下部には、回収した硬貨の一括収納先として箱形状をなす複数(図7は4つ)の硬貨用金庫82が設けられている。これら硬貨用金庫82には、各々が独立する硬貨収納先として箱形状の複数(図7は2つ)の硬貨収納箱83が設けられている。即ち、現金回収装置81の硬貨収納先は、合計8つの硬貨収納箱83からなり、一つの硬貨収納箱83が満杯になると隣の空の硬貨収納箱83が収納先として使用され、全ての硬貨収納箱83が満杯となるまで満杯→収納先切換えの動作が繰り返される。各硬貨収納箱83の硬貨収納上限位置には、収納硬貨が硬貨収納箱83内で上限位置にまで到達したことを検出可能な硬貨上限検出センサ84が設けられている。
【0005】
また、図8に示すように、これら硬貨用金庫82(硬貨収納箱83)の上部には、整理券から仕分けされた硬貨を特定の硬貨収納箱83に分配する硬貨分配機構85が設けられている。この硬貨分配機構85には、途中で折れ曲がった略筒形状をなす硬貨案内管86が設けられている。硬貨案内管86は、上入口86aから仕分け後の硬貨が導入され、導入した硬貨を下出口86bから連結筒86dを介して特定の硬貨収納箱83に吐き出す。また、硬貨案内管86には、硬貨案内管86の回動駆動源としてモータ87が接続されている。このモータ87は、硬貨案内管86の垂直軸86cを軸心に硬貨案内管86を回動させ、硬貨案内管86の下出口86bを特定の硬貨収納箱83に位置決めする。
【0006】
現金回収装置81には、この現金回収装置81を統括制御する制御装置88が設けられている。制御装置88は、現金回収装置81に運賃箱金庫89(図7参照)がセットされて現金回収の開始操作が行われたことを検出すると、運賃箱金庫89内の運賃及び整理券を一括回収する現金回収動作を現金回収装置81に実行させる。また、制御装置88には、入力側に硬貨上限検出センサ84が接続されるとともに、出力側にモータ87が接続されている。これにより、制御装置88は、現金回収動作時において硬貨上限検出センサ84から取得するセンサ出力に基づきモータ87の回転位置を管理することにより、複数の硬貨収納箱83の中から硬貨収納先を指定する。
【0007】
制御装置88は、現金回収装置81の内部に流した硬貨が硬貨収納箱83に収納された後、硬貨上限検出センサ84のセンサ出力を見て、この時に指定状態にある硬貨収納箱83が満杯になっていないかを確認する。制御装置88は、硬貨上限検出センサ84から非満杯信号を入力していれば、その時に硬貨案内管86で指定されている硬貨収納箱83にはまだ空き容量があると認識してその硬貨収納箱83を継続して用いる。一方、制御装置88は、この時に硬貨上限検出センサ84から満杯信号を入力していた場合、この時に指定状態にある硬貨収納箱83は満杯であると認識し、モータ87を所定量回転させて硬貨案内管86の下出口86bを隣の空の硬貨収納箱83に位置させて、空の硬貨収納箱83を新たな硬貨収納先として切り換える。
【0008】
制御装置88は、現金回収装置81にセットされた運賃箱金庫89内の運賃及び整理券を現金回収装置81の内部に流し込んでこれらを仕分け収納し、硬貨収納が行われた後に硬貨収納箱83が満杯か否かを確認するという動作を、現金回収装置81に運賃箱金庫89がセットされて現金回収の開始操作が行われる度に行い、複数の運賃箱金庫89に収納されている運賃及び整理券を1箇所の現金回収装置81で一括回収する。制御装置88は、全ての硬貨収納箱83が満杯になったことを認識すると、例えばアラームを鳴らすなどして作業者にその旨を通知する。
【特許文献1】特開平9−128586号公報
【特許文献2】特開2007−128226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、硬貨収納箱83が満杯か否かの確認は、現金回収装置81に流し込まれた硬貨が硬貨収納箱83に収納された後に硬貨上限検出センサ84のセンサ出力を確認することにより行っている。このため、例えば硬貨収納箱83が満杯ではないものの空き容量が残り少なくなっていた場合に、多量の硬貨が収納された運賃箱金庫89内のこれら硬貨を現金回収装置81で回収すると、空き容量が残り少ない硬貨収納箱83では、この多量の硬貨を全て収納することができない状況になる。よって、この状況下においては、硬貨収納箱83の空き容量を超える硬貨が硬貨収納箱83から溢れ出てしまうので、この硬貨収納箱83を現金回収装置81から引き出して金融機関等に預ける搬送作業を行うときに、こぼれ落ちた硬貨を拾い集める作業が必要となり、この作業が面倒に感じる問題があった。
【0010】
ところで、硬貨上限検出センサ84で硬貨の満杯監視を行っているのであれば、例えば回収動作の途中で硬貨収納箱83が満杯となってこれを硬貨上限検出センサ84で検出した時に、この検出タイミングでモータ87を駆動して硬貨案内管86の下出口86bを隣の空の硬貨収納箱83に位置切り換えすればよいと考えることもできる。しかし、現金回収装置81は回収動作を一旦開始してしまうと、硬貨が上流側から硬貨案内管86に次々と送られてくるので、もし仮にこの収納先切換え動作を採用したとすると、硬貨案内管86の下出口86bが満杯の硬貨収納箱83から隣の空の硬貨収納箱83まで移動する空白期間をとる時に下出口86bから吐き出される硬貨が硬貨収納箱83に入らないので、この動作で対応することができない現状がある。
【0011】
本発明の目的は、運賃箱金庫がセットされる度にこの金庫内の硬貨を装置内の収納部に収めて硬貨回収を行う際に、硬貨が収納部の許容量を超えて溢れ出てしまう状況を生じ難くすることができる現金回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記問題点を解決するために、本発明では、運賃及び券類の投入先である運賃箱に投入された運賃の収納先であって当該運賃箱から取り外し可能な運賃箱金庫を取り付け可能であり、取り付いた前記運賃箱金庫内の前記運賃と前記券類とを仕分けしてこれらの回収を行うとともに、当該回収を自身に取り付いた前記運賃箱金庫ごとに行って前記運賃及び前記券類を一括回収し、前記運賃としての硬貨の収納先として複数の硬貨収納部を持ちつつ、収納を行っている一硬貨収納部が満杯となると他の空の硬貨収納部に収納先を切り換えて該収納を行う現金回収装置において、前記運賃箱金庫内の硬貨を装置本体の内部に流し込むのに先立ち、前記運賃箱金庫に収納された金庫内硬貨枚数を当該運賃箱金庫から読み取る読取手段と、その時に指定状態にある硬貨収納部の空き容量を割り出す空き容量割出手段と、前記金庫内硬貨枚数と前記空き容量とを比較して、その時に指定状態にある前記硬貨収納部で前記運賃箱金庫内の硬貨を全て収納可能か否かを判定する判定手段と、前記金庫内硬貨枚数が前記空き容量が超える場合、前記硬貨を装置本体の内部に流し込むのに先立ち、前記硬貨の収納先を他の硬貨収納部に予め切り換える切換手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、運賃箱の運賃箱金庫に蓄積された運賃及び券類を現金回収装置で回収するに際しては、運賃箱から運賃箱金庫を取り外してこれを現金回収装置まで持ち運び、この運賃箱金庫を現金回収装置に取り付ける。現金回収装置は、運賃箱金庫内の運賃及び券類を取り込み、これらを例えば硬貨、紙幣、券類に仕分けして、各々対応する金庫や収納箱に順次収納する。そして、運賃箱金庫を現金回収装置に持ち寄る度に、運賃箱金庫の運賃を現金回収装置に回収させる作業を繰り返し行い、複数の運賃箱、即ち複数の運賃箱金庫の運賃が1つの現金回収装置で一括回収される。そして、硬貨収納部が満杯となると、他の空の硬貨収納部に硬貨収納先が切り換えられる。
【0014】
現金回収装置が運賃の回収動作を行う際、運賃箱金庫を現金回収装置にセットすることになるが、運賃箱金庫内の運賃や券類を装置本体内に流し込むのに先立ち、運賃箱金庫に格納された金庫内硬貨枚数を読取手段が読み取る。また、空き容量割出手段はその時に指定状態にある硬貨収納部の空き容量を割り出す。そして、判定手段は、金庫内硬貨枚数と空き容量とを比較し、その時にセットされた運賃箱金庫内の硬貨を硬貨収納部に収めるに際して、その時に指定状態にある硬貨収納部で空きスペースが足りるか否かを判定する。このとき、硬貨収納部の空きスペースが足りるのであれば、切換手段はその時に指定状態にある硬貨収納部を継続して使用し、硬貨収納部の空きスペースが足らないのであれば、硬貨収納先を空の硬貨収納部に切り換える。
【0015】
よって、本構成においては、運賃箱金庫内の運賃及び券類を流し込んで回収するのに先立ち、硬貨収納部の空きスペースが足りるか否かの確認を予め行い、空きスペースが足りれば硬貨収納先を切り換えは行わず、空きスペースが足りなければ硬貨収納先を空の硬貨収納部に切り換え、その切り換えの後、運賃箱金庫内の運賃及び券類を装置本体に流し込む動作に移って硬貨回収を行う。よって、運賃箱金庫の硬貨を現金回収装置で回収するに際して、運賃箱金庫内の硬貨を全て受け入れることができる硬貨収納部がその都度指定されることになるので、運賃箱金庫内の硬貨を硬貨収納部に収納する時に硬貨が硬貨収納部から溢れ出てしまうことを防ぐことが可能となる。
【0016】
本発明では、前記空き容量割出手段は、前記読取手段で読み取った前記金庫内硬貨枚数を蓄積していき、該蓄積で求めた演算値を基にその時に指定状態にある前記硬貨収納部の前記空き容量を割り出すことを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、現金回収装置にセットされた運賃箱金庫から読み取った金庫内硬貨枚数を順次蓄積していき、硬貨収納袋に最大で収めることが可能な最大許容硬貨枚数は決まっているので、順次蓄積して割り出した演算値とこの最大許容硬貨枚数とから、その時に指定状態にある硬貨収納部の空き容量が割り出される。ところで、この種の運賃箱金庫には、運賃箱金庫内に収納された硬貨枚数のデータとして金庫内硬貨枚数が登録されているのが一般的であるので、運賃箱金庫内の硬貨を回収する際にその時の指定状態の硬貨収納部の空きスペースで容量が足りるか否かの判定に際して、金庫内硬貨枚数を計数する新たなセンサ類を現金回収装置に設置する必要がない。よって、この種のセンサ類に関して部品点数増加や部品コストアップ等の諸問題を招くことなく、硬貨の溢れ防止対策を図ることが可能となる。
【0018】
本発明では、回収動作時の前記運賃箱金庫の取り付け先である取付部を複数備えた現金回収装置であって、複数の前記取付部のうち一取付部に取り付けられた一運賃箱金庫の回収動作を行っている最中に、他取付部に前記運賃箱金庫が取り付けられた際、当該他取付部に取り付けられた他運賃箱金庫の回収動作に関して前記硬貨を流し込む手前までの動作を準備動作として先行実施する準備動作実行手段を備えたことを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、運賃箱金庫の取付部が現金回収装置に存在する場合、先に取り付けられた運賃箱金庫で回収動作が行われているときに、他の取付部に運賃箱金庫が取り付けられた際には、後付けの運賃箱金庫は準備動作が行われ、運賃や券類が装置本体内に流し込まれる手前まで、動作が先行実施される。このため、先付けの運賃箱金庫の回収動作が終わった後に後付けの運賃箱金庫の回収動作を行う際、この動作を短時間で開始することが可能となり、運賃箱金庫の回収動作をより効率的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、運賃箱金庫がセットされる度にこの金庫内の硬貨を装置内の収納部に収めて硬貨回収を行う際に、硬貨が収納部の許容量を超えて溢れ出てしまう状況を生じ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した現金回収装置の一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、路線バスやワンマン鉄道等の車両の車内には、運賃(硬貨、紙幣)や券類(整理券、回数券等)の投入先として運賃箱1が設置されている。運賃箱1には、運賃箱1に投入された運賃や券類の収納先(蓄積先)として運賃箱金庫2が着脱可能に取り付けられている。運賃箱金庫2は、例えば箱形状をなすとともに、硬貨、整理券及び回数券を混在して収納する硬貨収納室3と、紙幣のみを収納する紙幣収納室4とが区画形成されている。運賃箱金庫2は、硬貨収納室3が硬貨収納室シャッタ5により開閉可能で、紙幣収納室4が紙幣収納室シャッタ6により開閉可能であって、運賃箱1から取り外された際にシャッタ5,6が閉じられてこれらが施錠される。
【0022】
また、路線バスやワンマン鉄道等を管理する会社のターミナルセンタ7には、複数の運賃箱金庫2に蓄積された運賃や券類を一括収納する金庫解錠器8が設置されている。金庫解錠器8は、自身にセットされた運賃箱金庫2を解錠して運賃箱金庫2内の硬貨、紙幣及び券類等を解錠器本体9の内部に流し込みつつ、これらを仕分けして所定の金庫や収納箱に収納する動作を、自身にセットされる運賃箱金庫2ごとに行うことにより、複数の運賃箱金庫2内の硬貨、紙幣及び券類を一括回収する。なお、金庫解錠器8が現金回収装置に相当し、解錠器本体9が装置本体に相当する。
【0023】
金庫解錠器8の前面上部には、運賃箱金庫2のセット先として箱形状に開口した運賃箱金庫収納室10が解錠器本体9の幅方向に並んで複数(本例は2つ)設けられている。ここで、例えば一方(例えば紙面右側)の運賃箱金庫収納室10aに運賃箱金庫2aがセットされて、この運賃箱金庫2a内の運賃及び券類が解錠器本体9の中に送り込まれて一括回収されている最中に、他方(例えば紙面左側)の運賃箱金庫収納室10bに運賃箱金庫2bがセットされたとする。このときは、後入れの運賃箱金庫2bを待機状態にして運賃及び券類の吐き出しを待たせ、先入れの運賃箱金庫2aの運賃や硬貨の回収が終了すると、続いて後入れの運賃箱金庫2b内の運賃及び券類を解錠器本体9に流し込んで、これらを一括回収する。なお、運賃箱金庫収納室10が取付部(一取付部、他取付部)に相当する。
【0024】
運賃箱金庫収納室10の底面には、解錠器本体9において硬貨及び券類の入口11を開閉する硬貨経路シャッタ12が設けられている。また、運賃箱金庫収納室10の側面には、解錠器本体9において紙幣の入口13を開閉する紙幣経路シャッタ14が設けられている。運賃箱金庫2は、運賃箱1に取り付けられる時には硬貨収納室シャッタ5が上を向く配置向きをとり、金庫解錠器8に取り付けられる時には硬貨収納室シャッタ5が下を向く配置向きをとる。なお、入口11,13及びシャッタ12,14は、図1において紙面左側の運賃箱金庫収納室10bにのみ図示する。
【0025】
運賃箱金庫収納室10の上面には、運賃箱金庫2の収納状態をロックするロックピン15が垂直方向にスライド移動可能な状態で設けられている。このロックピン15は、運賃箱金庫収納室10に運賃箱金庫2が収納されていないとき、運賃箱金庫収納室10内に飛び出していない収納状態をとる。また、ロックピン15は、運賃箱金庫収納室10に運賃箱金庫2が収納されると、運賃箱金庫収納室10内に飛び出した突出状態をとって運賃箱金庫2の穴16に係止し、運賃箱金庫2の回収動作が終了するまでこのロック状態をとることにより、運賃箱金庫2の取り出しを禁止する。
【0026】
運賃箱金庫2内の硬貨、紙幣及び券類を金庫解錠器8に送り込むとき、運賃箱金庫2が解錠されて2つのシャッタ5,6が開状態となるとともに、解錠器本体9の2つのシャッタ12,14も開状態をとる。このように、シャッタ5,12が開状態となった際には、硬貨収納室3に収納された硬貨及び券類が自重により下方(金庫解錠器8の下方向)に落ちて解錠器本体9の内部に送り込まれる。一方、シャッタ6,14が開状態となった際には、運賃箱金庫2内の押出部材17(図4参照)が動いて、紙幣収納室4に収納された紙幣が側方(金庫解錠器8の幅方向)に押し出されて解錠器本体9の内部に送り込まれる。
【0027】
図1及び図6に示すように、金庫解錠器8の裏面下部には、金庫解錠器8で一括回収した硬貨の収納先として硬貨用金庫18が設けられている。この硬貨用金庫18は、金庫解錠器8の裏面下部に形成された硬貨用金庫収納室19に出し入れ可能な状態で収納されている。硬貨用金庫収納室19は、硬貨用金庫収納室扉20によって入口を閉じることが可能となっている。硬貨用金庫18には、一括回収した硬貨が流し込まれる硬貨収納袋21が複数(本例は8つ)設けられている。これら硬貨収納袋21,21…は、硬貨用金庫18の枠組みをなす袋支持部22に取り付けられるとともに、円周状に並ぶ配置位置をとっている。また、硬貨用金庫18は、キャスタにより移動する搬送台車23に乗せられ、この搬送台車23ごと硬貨用金庫収納室19に収納可能となっている。なお、硬貨収納袋21が硬貨収納部に相当する。
【0028】
図1に示すように、金庫解錠器8の前面下部において一側方寄り(図1の紙面右寄り)の位置には、金庫解錠器8で一括回収した紙幣の収納先として紙幣用金庫24が設けられている。この紙幣用金庫24は、紙幣の入口として上壁が開口されるとともに、金庫解錠器8の前面下部の一側方寄りに形成された紙幣用金庫収納室25に出し入れ可能な状態で収納されている。紙幣用金庫収納室25は、紙幣用金庫収納室扉26によって入口を閉じることが可能となっている。運賃箱金庫2の紙幣収納室4内の紙幣は、運賃箱金庫2内の押出部材によって側方に押し出された後、解錠器本体9内の紙幣シュート(図示略)を通って紙幣用金庫24に搬送される。
【0029】
また、金庫解錠器8の前面下部において他側方寄り(図1の紙面左寄り)の位置には、金庫解錠器8で一括回収した券類の収納先として券類用金庫27が設けられている。この券類用金庫27は、券類の入口として上壁が開口されるとともに、金庫解錠器8の前面下部の他側方寄りの位置に形成された券類用金庫収納室28に出し入れ可能な状態で収納されている。券類用金庫収納室28は、券類用金庫収納室扉29によって入口を閉じることが可能となっている。
【0030】
図2に示すように、金庫解錠器8の内部には、金庫解錠器8の内部に落下してきた硬貨と券類とを分離する券銭分離機構30が設けられている。この券銭分離機構30には、解錠器本体9に対して回動可能な状態で取り付けられた略円筒形状をなすドラム31が設けられている。ドラム31は、解錠器本体9の幅方向を軸心L1として回動可能な取り付け状態をとるとともに、解錠器本体9の略中央位置に配置されている。ドラム31は、解錠器本体9の内部に送り込まれてきた硬貨及び券類をドラム内部に取り込み、自身の回動動作を伴わせてこれら硬貨と券類とを仕分けする。
【0031】
ドラム31は、そのドラム本体32の両端が開口した円筒形状をなし、一端側の開口がドラム31内への硬貨及び券類の導入口32aとなり、他端側の開口がドラム31からの券類の送出口32bとなっている。ドラム31の導入口32aの付近には、運賃箱金庫2から解錠器本体9に送り込まれた硬貨及び券類をドラム31の内部に流し込むベルトコンベア33が設けられている。また、ベルトコンベア33の下部には、ドラム31の内部に送り込まれた券類を、風により送出口32bに向けて飛ばす送風機34が設けられている。送風機34の風によりドラム31の送出口32bから外部に吐き出された券類は、解錠器本体9内の券類シュート(図示略)を通って券類用金庫27に搬送される。
【0032】
ドラム本体32の内部には、このドラム31内に送り込まれた硬貨及び券類のうち硬貨のみを通す硬貨フィルタ部35が一体回動可能に設けられている。硬貨フィルタ部35は、両側が開口した円筒形状をなすとともに、一端側の開口がドラム31内への硬貨及び券類の導入口32aとなり、他端側の開口が送出口32bに通じている。ベルトコンベア33により搬送された硬貨及び券類は、硬貨フィルタ部35の内部に送り込まれる。硬貨フィルタ部35は、ドラム本体32と同一軸心回動が可能であって、ドラム本体32よりも径が小さく、しかも長さが短く形成されている。硬貨フィルタ部35の周壁には、ドラム31の内部に入り込んだ硬貨を周壁外部に通過させる複数の孔36が規則性を持って形成されている。硬貨フィルタ部35は、ドラム31内に送り込まれた硬貨を孔36から硬貨フィルタ部35の外部に通すことにより、ドラム31内で券類と混ざり状態にある硬貨を券類から仕分ける。
【0033】
ドラム31の下方位置には、ドラム31(ドラム本体32及び硬貨フィルタ部35)の回動駆動源としてドラム用モータ37が配置されている。ドラム用モータ37は、そのモータ軸37aにプーリ38が取着され、そのプーリ38に掛装状態にあるベルト39を、ドラム本体32の送出口32b側の端部に形成されたベルト掛止部40に掛装することにより、ドラム31に接続されている。ドラム本体32の内周面には、ドラム31の回動軸心L1を中心として螺旋状に延びる硬貨案内部41が突出形成されている。ドラム本体32の周壁においてベルトコンベア33寄りの位置には、ドラム31内の硬貨をドラム31外に吐き出す硬貨吐出口42が貫設されている。硬貨案内部41は、ドラム31の回動動作時において硬貨を自身に沿わせて移動させることにより、ドラム本体32内の硬貨を下流側、即ち硬貨吐出口42に案内する。
【0034】
図3に示すように、ドラム31の下方位置には、ドラム31によって仕分けされた硬貨を複数の硬貨収納袋21の中から特定袋に振り分ける硬貨分配機構43が設けられている。硬貨分配機構43には、ドラム31での仕分け後の硬貨の通過経路となる硬貨シュート44が取り付けられている。この硬貨シュート44は、解錠器本体9に取り付け固定されるとともに、拡径に形成された入口44aがドラム31の硬貨吐出口42に向き合い可能な位置に配置され、出口44bが下方を向く配置向きをとっている。
【0035】
また、解錠器本体9において硬貨収納袋21と硬貨シュート44との間には、筒形状のアーム部材45が回動可能な状態で取り付けられている。このアーム部材45は、硬貨シュート44から送られてきた硬貨を硬貨収納袋21に送る時の通過経路である。アーム部材45は、途中で折れ曲がった形状をなし、垂直方向に延びつつ中心軸が回動時の軸心L2となる第1筒部45aと、この第1筒部45aに対して所定角度だけ曲げられた第2筒部45bとを持つ。アーム部材45は、第1筒部45aの上端部が仕分け後の硬貨の導入口46となり、第2筒部45bの下端部が硬貨を硬貨収納袋21に向けて吐き出す送出口47となる。
【0036】
アーム部材45の下方位置には、アーム部材45の回動駆動源としてアーム回動用モータ48が配置されている。アーム回動用モータ48は、そのモータ軸48aが連結部材49を介してアーム部材45に連結されている。この連結部材49は、アーム回動用モータ48の駆動力を、アーム部材45が軸心L2回りに回動するのに必要な回動方向の運動力に変換する部材である。複数あるこれら硬貨収納袋21は、アーム回動用モータ48が回動してアーム部材45の送出口47が特定の硬貨収納袋21に向き合う位置決め状態をとることにより、複数の硬貨収納袋21のうち特定の1つが硬貨収納先として指定される。
【0037】
また、各々の硬貨収納袋21の上端位置には、収納した硬貨が硬貨収納袋21から溢れ出す可能性があることを検出可能な満杯センサ50が設けられている。この満杯センサ50は、例えば光学センサからなり、本例においては硬貨収納袋21に収納された硬貨が満杯になったのを検出するのではなく、硬貨収納袋21に収納された硬貨が異常に積み重なっていることを検出するセンサとして使用されている。満杯センサ50は、硬貨収納袋21内の硬貨が異常に積み重なっていることを検出すると、異常検出信号(例えば、オン信号)を出力可能となっている。
【0038】
ところで、例えば満杯センサ50がオン状態となる程に硬貨が異常に積み重なった際にアーム部材45を回転した場合を想定すると、盛り上がった蓄積状態にある硬貨にアーム部材45の送出口47が触れて、硬貨が溢れ出す可能性がある。よって、満杯センサ50がオンした時には、硬貨収納袋21内の硬貨が異常状態にあると判定して、金庫解錠器8はその旨をエラー表示するとともに動作が一旦停止状態となる。このとき、作業者は硬貨用金庫収納室扉20を開けて、盛り上がり蓄積状態にある硬貨を硬貨収納袋21に手で押し込むなどして、満杯センサ50が硬貨を検出しない状態に戻し、これを確認した後に金庫解錠器8をリセット操作して、金庫解錠器8に回収動作を再開させる。
【0039】
図4に示すように、金庫解錠器8には、この金庫解錠器8を統括制御するコントロールユニットとして金庫解錠器制御装置51が設けられている。この金庫解錠器制御装置51は、例えばCPU52、ROM53、書換可能メモリ54等を備えている。CPU52は、ROM53に書き込まれた制御プログラムPd1に基づき動作することにより、金庫解錠器8に運賃箱金庫2内の運賃及び券類の一括回収動作を実行させる。この制御プログラムPd1は、金庫解錠器8に運賃箱金庫2内の運賃及び券類を仕分けして一括回収させるべく、運賃箱金庫2、シャッタ12,14、ロックピン15、モータ37,48等を動作させるプログラムである。なお、金庫解錠器制御装置51が読取手段、空き容量割出手段、判定手段、切換手段及び準備動作実行手段を構成する。
【0040】
また、運賃箱金庫2には、この運賃箱金庫2を統括制御する運賃箱金庫制御装置55が設けられている。運賃箱金庫制御装置55は、例えばCPU56、ROM57、書換可能メモリ58等を備えている。CPU56は、ROM57に書き込まれた制御プログラムPd2に基づき動作することにより、運賃箱1に関する各種情報を書換可能メモリ58に書き込んだり、その書換可能メモリ58に書き込まれた各種情報を外部に出力したり、シャッタ5,6の施解錠や開閉を制御したりする。書換可能メモリ58に書き込まれる各種情報としては、例えば運賃箱1に投入された投入金、即ち運賃箱金庫2に収納された収納金に関する金庫データDknがある。この金庫データDknには、例えば運賃箱金庫2に蓄積された硬貨の金種別の硬貨枚数の情報として硬貨データDkm、紙幣の総枚数の情報として紙幣データDsn等がある。
【0041】
図5に示すように、運賃箱金庫2の裏面には、運賃箱金庫2側の電気配線の接続箇所として金庫側コネクタ59が設けられている。金庫側コネクタ59は、データ通信用のコネクタであって、その接続ピン(図示略)が運賃箱金庫制御装置55に接続されている。一方、金庫解錠器8において運賃箱金庫収納室10の内壁面には、金庫解錠器8側の電気配線の接続箇所として解錠器側コネクタ60が設けられている。解錠器側コネクタ60は、金庫側コネクタ59と接続可能であって、その接続ピン(図示略)が金庫解錠器制御装置51に接続されている。
【0042】
運賃箱金庫制御装置55は、運賃箱金庫2が運賃箱金庫収納室10に収納されて金庫側コネクタ59が解錠器側コネクタ60に繋がった状況下において、金庫解錠器制御装置51から金庫データDknの転送要求を受け付けると、書換可能メモリ58に書き込まれた金庫データDknを金庫解錠器制御装置51に出力する。また、運賃箱金庫制御装置55は、金庫側コネクタ59が解錠器側コネクタ60に繋がった状況下において、金庫解錠器制御装置51からシャッタ5,6の開操作要求を受け付けると、この時に閉状態にあるこれら2つのシャッタ5,6を開状態にし、金庫解錠器制御装置51からシャッタ5,6の閉操作要求を受け付けると、この時に開状態にあるこれら2つのシャッタ5,6を閉状態にする。
【0043】
また、金庫解錠器制御装置51のROM53に書き込まれた制御プログラムPd1には、硬貨を硬貨収納袋21から溢れ出ないように収納する硬貨溢れ防止プログラムPkdが含まれている。CPU52は、硬貨の一括回収時においてこの硬貨溢れ防止プログラムPkdに従って動作することにより、収納先の硬貨収納袋21から硬貨が溢れ出すことを防ぐ硬貨溢れ防止処理を実行する。この硬貨溢れ防止プログラムPkdは、金庫解錠器8に運賃箱金庫2がセットされてこの運賃箱金庫2内の運賃及び券類を一括回収する度に毎回実行される。
【0044】
本例の硬貨溢れ防止処理においては、運賃箱金庫2内の運賃及び券類を解錠器本体9の内部に吐き出すに先立ち、この運賃箱金庫2から吸い上げる金庫データDknの中の硬貨データDkmから金庫内硬貨枚数Mkkを割り出す。そして、1つの硬貨収納袋21に最大で収納できる硬貨の最大許容硬貨枚数Mmxは予め決まっているので、運賃箱金庫2を金庫解錠器8にセットしたその都度において、最大許容硬貨枚数Mmxを最大値(基準)として、金庫内硬貨枚数Mkkを割り出す度にこの金庫内硬貨枚数Mkkを順次減算していって、運賃箱金庫2内の硬貨を硬貨収納袋21に収納するのに先立ち、この時の硬貨収納袋21で空きスペースが足りるのか否かを予測判定する。そして、空きスペースが足りるのであれば、その時に指定状態にある硬貨収納袋21をそのまま使用し、空きスペースが足りない場合には、アーム回動用モータ48を駆動させてアーム部材45を所定量回転させることにより、硬貨収納先を隣の空き硬貨収納袋21に切り換える。
【0045】
次に、本例の金庫解錠器8の動作を説明する。
例えば、2つある運賃箱金庫収納室10a,10bのうち一方(図1の右側)の運賃箱金庫収納室10aに運賃箱金庫2aがセットされた場合を想定する。ところで、金庫解錠器制御装置51は、自身に電源が投入されて起動状態にあるとき、解錠器側コネクタ60の接続状態を逐次監視し、運賃箱金庫収納室10aに運賃箱金庫2aが収納されて金庫側コネクタ59が解錠器側コネクタ60に完挿し状態なったことを検出すると、ロックピン15を突出状態にしてこれを運賃箱金庫2の穴16に係止させ、運賃箱金庫2aを運賃箱金庫収納室10aから取り外せないようにする。また、金庫解錠器制御装置51は、この時に一括回収動作が実行中でなければ、これらコネクタ59,60を介して、その時にセット状態にある運賃箱金庫2aの運賃箱金庫制御装置55に金庫データ転送要求を出力する。なお、完挿し状態の検出は、例えばコネクタ59,60の所定の接続ピン同士が通電状態になったか否かを見ることによって行う。
【0046】
運賃箱金庫制御装置55は、金庫解錠器制御装置51から金庫データ転送要求を受け付けると、自身の書換可能メモリ58に書き込まれている金庫データDknを読み出し、この金庫データDknを同じくコネクタ59,60を介して運賃箱金庫制御装置55に転送する。金庫解錠器制御装置51は、運賃箱金庫制御装置55から送られてきた金庫データDknを受け付けると、この金庫データDknの中から硬貨データDkmを読み取り、この時に運賃箱金庫収納室10aにセットされている運賃箱金庫2aの中に、どれだけの枚数の硬貨が収納されているのかその金庫内硬貨枚数Mkkを確認する。なお、金庫解錠器制御装置51は、運賃箱金庫収納室10に運賃箱金庫2にセットされる度に、運賃箱金庫2内の運賃及び券類を流し込む前段階において、この運賃箱金庫2から金庫データDknを受け付けて金庫内硬貨枚数Mkkを確認する。
【0047】
金庫解錠器制御装置51は、運賃箱金庫2a内の金庫内硬貨枚数Mkkを確認すると、運賃箱金庫2a内の硬貨を解錠器本体9の内部に流し込むのに先立ち、その時に指定状態にある硬貨収納袋21で硬貨収納の空きスペースが足りるか否かを予測確認する。ところで、この種の硬貨収納袋21は、1つの袋内に収納できる硬貨の最大許容量として最大許容硬貨枚数Mmxが予め決められている。よって、硬貨収納先が空の硬貨収納袋21のときには、この最大許容硬貨枚数Mmxが空き容量Rとされ、空の硬貨収納袋21に最初に硬貨が入れられる際には、最大許容硬貨枚数Mmxからその時の運賃箱金庫2aの金庫内硬貨枚数Mkkを減算し、この減算値(演算値)を硬貨収納後の新たな空き容量Rとして割り出す。
【0048】
そして、金庫解錠器制御装置51は、運賃箱金庫収納室10に新たな運賃箱金庫2がセットされてこの運賃箱金庫2から金庫データDknを吸い上げる度に、データ吸い上げの前の空き容量Rからこの時の運賃箱金庫2内の金庫内硬貨枚数Mkkを減算して硬貨収納後の新たな空き容量Rを割り出す処理を繰り返し行い、この時の硬貨収納袋21で空きスペースが足りるか否かを確認する。この時に割り出した空き容量Rに関するデータ(空き容量データDrd)は、金庫解錠器制御装置51の書換可能メモリ54に書き込まれ、次の回収動作時に使用すべく保持される。
【0049】
金庫解錠器制御装置51は、このようにして運賃箱金庫2から金庫内硬貨枚数Mkkを受け付ける度に空き容量Rを割り出すが、本例においてはこの空き容量Rが「0」となるか否かを見ることにより、この時に硬貨収納先として指定されている硬貨収納袋21が、セット状態にある運賃箱金庫2内の硬貨によって満杯以上になるか否かを予測判定する。即ち、計算後の空き容量Rが「0」にならない(空き容量R≧0)のであれば、この時に指定状態にある硬貨収納袋21に運賃箱金庫2の硬貨を流し込んでも、この硬貨収納袋21から硬貨が溢れ出ないと判定され、もし仮に空き容量Rが「0」よりも低い値をとる(空き容量R<0)のであれば、この時に指定状態にある硬貨収納袋21に運賃箱金庫2内の硬貨を流し込んでしまうと、硬貨が硬貨収納袋21から溢れ出てしまうと判定される。
【0050】
金庫解錠器制御装置51は、空き容量Rが「0」にならない(空き容量R≧0)ことを認識すると、この時に指定状態にある硬貨収納袋21に運賃箱金庫2内の硬貨が流し込まれてもこの時の硬貨収納袋21の空きスペースで硬貨収納が足りると判定し、その時に指定状態にある硬貨収納袋21をそのまま使用する。即ち、金庫解錠器制御装置51は、空き容量Rが「0」にならない(空き容量R≧0)ことを認識すると、アーム回動用モータ48を回動駆動せずにアーム部材45をその時に位置状態のままで保持し、その時に指定状態にある硬貨収納袋21を継続使用する。
【0051】
一方、金庫解錠器制御装置51は、空き容量Rが「0」よりも低い値をとる(空き容量R<0)ことを認識すると、運賃箱金庫2内の硬貨を硬貨収納袋21に収納するに際してこの時に指定状態にある硬貨収納袋21では空きスペースが足らないと判定し、アーム回動用モータ48を所定量回動させることによりアーム部材45を軸心L2回りに所定量回動させて、アーム部材45の送出口47を隣の空の硬貨収納袋21の入口に位置させる。これにより、運賃箱金庫2内の硬貨の収納先は、これら硬貨を溢れ出させずに収納可能な容量を持つ(即ち、空状態)の硬貨収納袋21に切り換えられる。
【0052】
金庫解錠器制御装置51は、このようにして硬貨収納袋21の指定を行うと、続いて解錠器本体9の2つのシャッタ12,14を開状態にする。金庫解錠器制御装置51は、この2つのシャッタ12,14を開状態にした後、コネクタ59,60を介して運賃箱金庫2aにシャッタ開操作要求を出力する。運賃箱金庫制御装置55は、このシャッタ開操作要求を受け付けると、シャッタ5,6を解錠しつつこれらを開状態にする。このとき、硬貨収納室3に収納された硬貨及び券類は、自重により落下して解錠器本体9の内部に流し込まれ、紙幣収納室4の紙幣は、運賃箱金庫2の押出部材によって側方に押し出されて解錠器本体9の内部に送り込まれ、紙幣シュートを介して紙幣用金庫24に搬送される。
【0053】
解錠器本体9の内部に送り込まれた硬貨及び券類は、ベルトコンベア33に乗ってドラム31の一端にある導入口32aまで搬送され、この導入口32aからドラム31(硬貨フィルタ部35)の内部に流し込まれる。そして、ドラム31内に入り込んだ券類は、送風機34の風によってドラム31の他端にある送出口32bに向かって飛ばされ、この送出口32bからドラム31の外部に吐き出される。ドラム31の外部に吐き出された券類は、券類用シュートを通過して券類用金庫27に搬送される。
【0054】
一方、ドラム31の内部に送り込まれた硬貨は、ドラム用モータ37によって回転状態をとる硬貨フィルタ部35の内面を滑り、孔36と対向位置をとると、この孔36からドラム本体32の内面に落下する。また、ドラム31が回転状態をとるとき、螺旋状の硬貨案内部41はドラム31の回転動作によって硬貨を下流側(硬貨吐出口42)に送る案内機構として働くことから、ドラム本体32の内面に送り込まれた硬貨はこの硬貨案内部41により硬貨吐出口42に案内されて、この硬貨吐出口42からドラム31の外部に吐き出される。そして、ドラム31から吐き出された硬貨は、アーム部材45を通過してその時に指定状態にある硬貨収納袋21に収納される。
【0055】
ところで、運賃箱金庫2aの回収動作を行っている最中に、例えば他方(図1の左側)の運賃箱金庫収納室10bに運賃箱金庫2bが収納された場合を想定する。金庫解錠器制御装置51は、運賃箱金庫2bの金庫側コネクタ59が運賃箱金庫収納室10bの解錠器側コネクタ60に完挿しとなったことを検出すると、この時に回収動作が実行中であれば、運賃箱金庫2bに金庫内の運賃及び券類の搬出を待たせる準備状態をとらせる。この準備状態は、運賃箱金庫2bをロックピン15でロック状態にするものの金庫データDknのデータ出力は待たせた状態とするとともに、解錠器本体9に2つのシャッタ12,14を開けさせた状態にしておく動作である。
【0056】
ここで、この種の金庫解錠器8は1秒当たりに回収できる硬貨枚数(例えば20枚/1秒)が仕様によって決まっているので、金庫解錠器制御装置51は運賃箱金庫について硬貨の回収動作を行うとき、この金庫内に収納されている金庫内硬貨枚数Mkkが分かれば、その時の回収動作に要する処理時間も分かる。よって、金庫解錠器制御装置51は、金庫内硬貨枚数Mkkを割り出すとその時の回収動作に要する所要時間を演算し、回収動作時にこの所要時間が経過したら、運賃箱金庫における回収動作が終了したと判定する。金庫解錠器制御装置51は、運賃箱金庫2aの運賃及び券類の回収動作を行う際、運賃箱金庫2aの金庫内硬貨枚数Mkkから割り出した回収に必要な所要時間が経過すると、この時の回収動作が完了したと判定する。
【0057】
このように、金庫解錠器制御装置51は、一方の運賃箱金庫収納室10aにセットされた運賃箱金庫2aの一括回収動作が完了したことを認識すると、続いて隣の運賃箱金庫収納室10bにセットされた運賃箱金庫2bに金庫データ転送要求を出力して、運賃箱金庫2aの時と同じ要領で運賃箱金庫2b内の運賃及び券類を回収する。なお、この時は、運賃箱金庫収納室10bのシャッタ12,14に準備動作をとらせてこれらを予め開状態にしておくので、この後の動作としては硬貨収納先の確認を行った後、直ぐに運賃箱金庫2bのシャッタ5,6の開操作が実行され、運賃箱金庫2b内の運賃及び券類が解錠器本体9の内部に流し込まれる。
【0058】
さて、本例においては、運賃箱金庫2内の硬貨を金庫解錠器8の内部に流し込むのに先立ち、この時の運賃箱金庫2内の金庫内硬貨枚数Mkkを読み出して、この硬貨をその時の指定状態にある硬貨収納袋21に流し込んだら、硬貨が溢れるか否かを予測判定する。そして、硬貨が溢れ出す可能性のない時には、その時に指定状態にある硬貨収納袋21をそのまま使用し、硬貨が溢れ出す場合には、アーム回動用モータ48によりアーム部材45を所定量回動させて、硬貨収納先を隣の空の硬貨収納袋21に切り換える。このため、運賃箱金庫2内の硬貨を硬貨収納袋21に収納するに際して、硬貨が硬貨収納袋21がこぼれ落ちることを防止することが可能となる。
【0059】
また、本例の硬貨収納の空きスペースの予測確認においては、1つの硬貨収納袋21に最大で収納できる最大許容硬貨枚数Mmxを基準として、運賃箱金庫2から金庫内硬貨枚数Mkkを吸い上げる度(即ち、1金庫で回収動作を行う度)にこれを金庫内硬貨枚数Mkkで順次減算していく。そして、この減算により割り出される空き容量Rの値が「0」よりも低い値をとるか否かを見ることにより、運賃箱金庫2内の硬貨を硬貨収納袋21に収納する際に、その時に硬貨収納先として指定された硬貨収納袋21で硬貨収納の空きスペースが充分か否かを見ている。よって、硬貨収納袋21はより満杯に近い状態まで硬貨を収納することが可能となるので、1つひとつの硬貨収納袋21を効率的に使用することが可能となる。
【0060】
更に、先入れの運賃箱金庫2aの回収動作が行われている最中に運賃箱金庫2bが後入れされた際には、この運賃箱金庫2bの回収動作において準備動作がとられ、運賃箱金庫2bはロックピン15によりロック状態がとられて金庫データDknのデータ出力を待つ状態まで動作が進み、金庫解錠器8はシャッタ12,14が先に開状態となる。このため、先入れの運賃箱金庫2の回収動作が終了した後に後入れの運賃箱金庫2の回収動作を行うに際して、運賃箱金庫2bの回収動作を直ぐに開始することが可能となるので、運賃箱金庫2b内の運賃及び券類を金庫解錠器8で回収する時に要する処理時間を短く抑えることが可能となる。
【0061】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)運賃箱金庫2を運賃箱金庫収納室10にセットして運賃箱金庫2内の解錠器本体9内に流し込むのに先立ち、運賃箱金庫2から吸い上げた金庫内硬貨枚数Mkkと、その時に指定状態にある硬貨収納袋21の空き容量Rとを比較し、その時に指定状態にある硬貨収納袋21に運賃箱金庫2内の硬貨が全て収まり切るのであれば、その硬貨収納袋21を継続使用し、逆にその硬貨収納袋21では収まり切らないのであれば、硬貨収納先を空の硬貨収納袋21に切り換える。このため、運賃箱金庫2内の硬貨を硬貨収納袋21に収納する時に、この硬貨を全て収め切れる硬貨収納袋21で硬貨収納を行うことが可能となるので、硬貨を硬貨用金庫18に一括回収するに際して硬貨を硬貨収納袋21から溢れ出させずに済ますことができる。
【0062】
(2)硬貨収納袋21の空きスペースが足りるか否かの判定は、その時に運賃箱金庫収納室10にセット状態にある運賃箱金庫2の金庫内硬貨枚数Mkkの値が必要になるが、この金庫内硬貨枚数Mkkは、運賃箱金庫2に登録(書き込み)された硬貨データDkmが用いられる。よって、運賃箱金庫2の金庫内硬貨枚数Mkkの値を取得するに際して運賃箱金庫2内に収納された硬貨枚数を計数する硬貨計数センサを解錠器本体9に新たに設置せずに済み、この種のセンサ類に関して部品点数増加や部品コストアップ等の諸問題を招くことなく、硬貨の溢れ防止対策を図ることができる。
【0063】
(3)金庫解錠器8で先入れの運賃箱金庫2の回収動作が行われている際、その時に空き状態にある運賃箱金庫収納室10に他の運賃箱金庫2がセットされた場合、この後入れの運賃箱金庫2に対して準備動作が行われ、ロックピン15による運賃箱金庫2の金庫固定動作と、後入れの運賃箱金庫2がセットされた運賃箱金庫収納室10のシャッタ12,14を予め開状態にするシャッタ開動作とが先行して実行される。このため、先入れの運賃箱金庫2の回収動作が終わった後に後入れの運賃箱金庫2の回収動作を行う際、この後入れの運賃箱金庫2の回収動作を短時間で開始することが可能となるので、運賃箱金庫2の回収動作をより効率的に行うことができ、回収動作に要する回収時間の短時間化を図ることができる。
【0064】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 硬貨分配機構43は、途中で曲がった筒状のアーム部材45をアーム回動用モータ48により回動させて、複数の硬貨収納袋21の中から特定の1つを指定する機構のものに限定されない。例えば、1本の硬貨シュートの傾きをアクチュエータにより変えることによって、硬貨収納先となる硬貨収納袋21を指定する機構でもよい。
【0065】
・ 金庫内硬貨枚数Mkkは、運賃箱金庫2内に予め登録された格納データから取得することに限定されない。例えば、解錠器本体9のシャッタ12付近に、運賃箱金庫2から流れ落ちてくる硬貨を実測する硬貨計数センサを設け、この硬貨計数センサから取得するセンサ値から金庫内硬貨枚数Mkkを得てもよい。
【0066】
・ その時の指定状態の硬貨収納袋21で空きスペースが足りるか否かを判定する時の処理は、例えば運賃箱金庫2から金庫内硬貨枚数Mkkを吸い上げる度にこれを加算していき、その加算値(演算値)が最大許容硬貨枚数Mmxを超えるか否かを見ることにより行ってもよい。
【0067】
・ 後入れの運賃箱金庫2で行われる準備動作は、必ずしもロックピン15による運賃箱金庫2の金庫固定動作と、後入れ運賃箱金庫2が収納された運賃箱金庫収納室10のシャッタ12,14を予め開けておくシャッタ開動作とに限定されない。即ち、後入れ運賃箱金庫2のシャッタ5,6を開状態(シャッタ5のみも可)する前に済ませておきたい動作であれば、この動作は特に限定されない。
【0068】
・ 金庫解錠器8は、必ずしも複数の運賃箱金庫収納室10a,10bを持つものに限定されず、これを1つのみ備えるものでもよい。
・ 運賃箱金庫2に登録された金庫データDknに含まれるデータ種は、必ずしも硬貨データDkm及び紙幣データDsnに限定されない。例えば、運賃箱1に、磁気カード又はICカードにより運賃支払いが可能なカードリーダが搭載されている場合には、この磁気カード又はICカードから読み取ったカード情報が含まれていてもよい。
【0069】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記空き容量割出手段は、空の前記硬貨収納部に最初に硬貨を収めるとき、当該硬貨収納部で最大収納できる最大許容硬貨枚数から前記運賃箱金庫の前記金庫内硬貨枚数を減算することにより、当該硬貨収納部の前記空き容量を割り出すとともに、前記装置本体に前記運賃箱金庫が取り付けられて当該運賃箱金庫から前記金庫内硬貨枚数を取得する度に、その時の前記空き容量から当該金庫内硬貨枚数を減算していく処理を繰り返し行うことにより、前記空き容量を割り出す。この構成によれば、その都度において硬貨収納袋の空き容量がどれだけであるのかを知ることが可能となる。
【0070】
(2)請求項1〜3、前記技術的思想(1)のいずれかにおいて、前記硬貨の収納先を切り換える硬貨収納先切換機構は、前記仕分け後の前記硬貨を前記硬貨収納部に送る時の通過経路であり、しかも各々の回動位置をとることにより複数の前記硬貨収納部の中の1つを硬貨収納先として選択的に指定するアームと、当該アームの回動駆動源として動作するモータとを備え、前記切換手段は、前記金庫内硬貨枚数が前記空き容量を超える場合、前記モータを駆動して前記アームの出口を空の硬貨収納部に位置させることにより、前記硬貨の収納先を空の前記硬貨収納部に切り換える。この構成によれば、硬貨収納先切換機構がアームとモータという簡素な構成で済む。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】一実施形態における金庫解錠器の概略構成を示す斜視図。
【図2】券銭分離機構の概略構成を示す斜視図。
【図3】硬貨分配機構の概略構成を示す斜視図。
【図4】金庫解錠器及び運賃箱金庫の電気構成を示すブロック図。
【図5】金庫解錠器及び運賃箱金庫のコネクタ部分を示す斜視図。
【図6】金庫解錠器の裏面側の外観を示す裏面図。
【図7】従来における金庫解錠器の概略構成を示す斜視図。
【図8】同じく硬貨分配機構の概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0072】
1…運賃箱、2(2a,2b)…運賃箱金庫、8…現金回収装置としての金庫解錠器、9…装置本体としての解錠器本体、10(10a,10b)…取付部(一取付部、他取付部)としての運賃箱金庫収納室、21…硬貨収納部としての硬貨収納袋、51…読取手段、空き容量割出手段、判定手段、切換手段及び準備動作実行手段を構成する金庫解錠器制御装置、Mkk…金庫内硬貨枚数、R…空き容量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運賃及び券類の投入先である運賃箱に投入された運賃の収納先であって当該運賃箱から取り外し可能な運賃箱金庫を取り付け可能であり、取り付いた前記運賃箱金庫内の前記運賃と前記券類とを仕分けしてこれらの回収を行うとともに、当該回収を自身に取り付いた前記運賃箱金庫ごとに行って前記運賃及び前記券類を一括回収し、前記運賃としての硬貨の収納先として複数の硬貨収納部を持ちつつ、収納を行っている一硬貨収納部が満杯となると他の空の硬貨収納部に収納先を切り換えて該収納を行う現金回収装置において、
前記運賃箱金庫内の硬貨を装置本体の内部に流し込むのに先立ち、前記運賃箱金庫に収納された金庫内硬貨枚数を当該運賃箱金庫から読み取る読取手段と、
その時に指定状態にある硬貨収納部の空き容量を割り出す空き容量割出手段と、
前記金庫内硬貨枚数と前記空き容量とを比較して、その時に指定状態にある前記硬貨収納部で前記運賃箱金庫内の硬貨を全て収納可能か否かを判定する判定手段と、
前記金庫内硬貨枚数が前記空き容量が超える場合、前記硬貨を装置本体の内部に流し込むのに先立ち、前記硬貨の収納先を他の硬貨収納部に予め切り換える切換手段と
を備えたことを特徴とする現金回収装置。
【請求項2】
前記空き容量割出手段は、前記読取手段で読み取った前記金庫内硬貨枚数を蓄積していき、該蓄積で求めた演算値を基にその時に指定状態にある前記硬貨収納部の前記空き容量を割り出すことを特徴とする請求項1に記載の現金回収装置。
【請求項3】
回収動作時の前記運賃箱金庫の取り付け先である取付部を複数備えた現金回収装置であって、
複数の前記取付部のうち一取付部に取り付けられた一運賃箱金庫の回収動作を行っている最中に、他取付部に前記運賃箱金庫が取り付けられた際、当該他取付部に取り付けられた他運賃箱金庫の回収動作に関して前記硬貨を流し込む手前までの動作を準備動作として先行実施する準備動作実行手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の現金回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−169532(P2009−169532A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4739(P2008−4739)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】