説明

球形顆粒及びその製造方法

【課題】摩損度、顆粒硬度が十分高いレベルに改善され、真球度が高く、その表面に生理活性物質等を被覆して製剤に応用した場合に該製剤における該生理活性物質の放出制御性に優れた高品質の球形顆粒、及び、該球形顆粒を効率的かつ簡便に製造することができる方法の提供。
【解決手段】糖を含有する核粒子を水平に設置した回転皿を回転させることにより転動させながら、粉末成分を散布することなく、該核粒子に固形分を含有する液を噴霧することを含むことを特徴とする球形顆粒の製造方法である。前記液が、糖を含有する水溶液乃至懸濁液である態様、前記核粒子が、糖の結晶、又は、糖及びデンプン若しくはその誘導体の噴霧乾燥粒子を含有する態様、更に得られた球形顆粒の表面に、糖を少なくとも含有する表面被覆層を形成することを含む態様、が好ましい。また、前記球形顆粒の製造方法により製造されることを特徴とする球形顆粒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の基材として好適な球形顆粒及びその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品等の基材として使用される球形顆粒が各種提供されており、その市販品としては、フロイント産業株式会社製「ノンパレル(登録商標)」などが知られている(非特許文献1参照)。前記球形顆粒は、その表面に各種の生理活性物質を被覆した製剤として使用されたり、あるいは更にその表面に機能性コーティング層が形成された製剤、あるいはカプセルに内包された製剤として使用される。この球形顆粒を核粒子に用いて生理活性物質の被覆や機能性コーティング層を形成する場合、該球形顆粒が脆弱なものであると工程中に破損してしまう事がある。そのため、各工程における装置内での加工に耐えうる強度を持った球形顆粒が求められる。また、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)に好適な製剤として使用される場合、該生理活性物質の放出性、例えば放出時間を可能な限り正確に制御する観点からは、前記球形顆粒の形状が真球により近い、粒度分布がシャープであることなどが求められる。
【0003】
前記球形顆粒の製造方法としては、遠心流動造粒装置やオニオン型パンコーティング装置などを用い、前記球形顆粒の核となる粒子(以下「核粒子」という)に、糖を含有する液や粉末等を供給しながら造粒することにより製造する方法が知られている。オニオン型パンコーティング装置により前記球形顆粒を造粒した場合、得られる顆粒の真球度が低く、前記生理活性物質の放出性を制御した製剤に好適な球形顆粒が得られないという問題があった。
【0004】
一方、遠心流動造粒装置で前記球形顆粒を造粒した場合、オニオン型パンコーティング装置で造粒した顆粒と比較して真球度の高い顆粒の製造が可能である。より具体的には、遠心流動造粒装置内に、前記核粒子としてグラニュー糖の結晶を仕込み、該核粒子の表面にバインダーとして蔗糖の水溶液を噴霧しつつ、蔗糖の微粒子乃至微粉末を散布することにより、前記グラニュー糖の結晶上に前記蔗糖による被覆層を形成して、球形顆粒を造粒する方法が知られている(特許文献1の段落〔0004〕参照)。この方法により製した場合、真球度の高い球形顆粒が得られる。
【0005】
しかしながら、この製造方法により球形顆粒を造粒する場合、真球度が高い球形顆粒は得られる一方で、顆粒硬度が十分でない場合が多い。さらに、この製造方法により小粒径の球形顆粒を造粒する場合には、造粒中に凝集が発生し易く回収率が低くなるなどの問題がある。近時は、得られる球形顆粒について、その摩損度、顆粒硬度の改善が望まれてきており、球形顆粒の摩損度、硬度の更なる向上が重要な技術的課題となってきている。
【0006】
【非特許文献1】明長良「製剤用球形顆粒『ノンパレル』」、p83〜p89、月刊薬事Vol.11、No.11(1989)
【特許文献1】特開2004−67670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、摩損度、顆粒硬度が十分高いレベルに改善され、真球度が高く、その表面に経口摂取可能な生理活性物質等を被覆して製剤に応用した場合に該製剤における該生理活性物質の放出制御性に優れた高品質の球形顆粒、及び、該球形顆粒を効率的かつ簡便に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 糖を含有する核粒子を水平に設置した回転皿を回転させることにより転動させながら、粉末成分を散布することなく、該核粒子に固形分を含有する液を噴霧して被覆層を形成する工程を含むことを特徴とする球形顆粒の製造方法である。
該球形粒子の製造方法においては、前記核粒子を転動して造粒するため、得られる球形顆粒は、真球度が高い。また、造粒の際に、前記核粒子が転動しながらその表面に前記液が噴霧され、該液中に溶解乃至分散された糖等による被覆層が該核粒子の表面に形成される。このようにして得られる球形顆粒の真球度は高く、摩損度、顆粒硬度も優れている。
<2> 固形分を含有する液が、糖を含有する水溶液乃至懸濁液である前記<1>に記載の球形顆粒の製造方法である。
<3> 核粒子が、糖の結晶、又は、糖及びデンプン若しくはその誘導体の噴霧乾燥粒子からなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法である。
<4> 核粒子が、水平に設置した回転皿を回転させることによる転動に加え、転動粒子にエアーを吹き込むことにより浮遊流動される前記<1>から<3>のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法である。
<5> 更に、得られた球形顆粒の表面に、糖及び/又は糖アルコールの水溶液を噴霧して表面被覆層を形成することを含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法である。
<6> 得られる球形顆粒の粒径が、篩い分け法により測定される粒径で75〜1,000μmである前記<1>から<5>のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法により製造されることを特徴とする球形顆粒である。
<8> 前記<7>に記載の球形顆粒の表面に経口摂取可能な生理活性物質を含有する成分を被覆して得られる製剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、摩損度、顆粒硬度が十分高いレベルに改善され、その表面に生理活性物質等を被覆して製剤に応用した場合に該製剤における該生理活性物質の放出制御性に優れた高品質の球形顆粒、及び、該球形顆粒を効率的かつ簡便に製造することができる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(球形顆粒及びその製造方法)
本発明の球形顆粒の製造方法においては、核粒子を水平に設置した回転皿を回転させることにより転動させ、該核粒子に液を噴霧して球形顆粒を造粒する造粒工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
本発明の球形顆粒は、本発明の前記球形顆粒の製造方法により製造される。
【0011】
<造粒工程>
前記造粒工程は、前記核粒子を水平に設置した回転皿を回転させることにより転動させ、該核粒子に粉末成分を散布することなく、該核粒子に固形分を含有する液を噴霧して被覆層を形成することにより球形顆粒を造粒する工程である。
【0012】
−核粒子−
前記核粒子としては、前記球形顆粒の用途、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものの中から適宜選択することができるが、本発明においては、少なくとも糖を含有していればよく、糖以外にその他の成分を含有していてもよい。
前記核粒子としては、市販の結晶粒や造粒物をそのまま使用してもよいし、該結晶粒を研磨、粉砕等して使用してもよいし、粉末等を造粒して得たものを使用してもよい。
前記核粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、真球度の高い前記顆粒を得る観点からは、立方に近い形や球状である方が好ましい。
【0013】
前記核粒子の粒径としては、特に制限はなく、前記球形顆粒の用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、篩い分け法により測定される粒径が、50〜850μmが好ましく、75〜500μmがより好ましい。
前記核粒子の粒径が850μmを超えると、得られる球形顆粒の粒径が1,000μm程度、あるいはそれ以上の粒径となるため、製剤化した際に製剤の服用感が悪くなるなどの問題が生じやすくなる。また、50μm未満であると、球形顆粒を造粒する際や得られた球形顆粒の表面に被覆層を形成する際に凝集を起こし易くなることがある。
【0014】
前記糖としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、麦芽糖などが挙げられる。これらは、核粒子を造粒して調製する場合には1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。結晶粒をそのまま核粒子として用いる場合には、得られた球形顆粒の組成の均一性を高める面で、1種単独で使用するのが好ましい。
前記その他の成分としては、経口摂取可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば糖アルコール、有機酸及びその塩、無機物、デンプン及びその誘導体、セルロース及びセルロース誘導体、合成高分子などが挙げられる。但し、本発明では生理活性物質をその他の成分として用いない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの使用法は特に制限は無いが、前述の糖と共に造粒する、糖の結晶粒に該成分をコーティングするなどの手法が挙げられる。
前記糖アルコールとしては、例えば、マンニトール、キシリトール、エリスリトールなどが挙げられる。前記有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸などが挙げられる。該有機酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などが挙げられる。前記無機物としては、例えば、食塩、酸化チタン、二酸化ケイ素などが挙げられる。前記デンプン及びその誘導体としては、例えば、コーンスターチ、コムギデンプン、コメデンプン、これらの誘導体などが挙げられる。前記セルロース及びセルロース誘導体としては、例えば、結晶セルロース、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどが挙げられる。前記合成高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸及びそのエステル、ポリビニルアルコール及びその誘導体などが挙げられる。
本発明では蔗糖の結晶であるグラニュー糖を使用することがより好ましい。また、造粒した粒子を使用する場合は、噴霧乾燥造粒により得られる粒子は球形に近いため好ましく、糖及びデンプン若しくはその誘導体を噴霧乾燥した粒子であることがより好ましい。
【0015】
−固形分を含有する液−
前記固形分を含有する液としては、前記球形顆粒の用途、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものの中から適宜選択することができるが、本発明においては、糖を含有する水溶液乃至懸濁液が挙げられる。
前記糖としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述したものなどが好適に挙げられ、蔗糖が特に好適に挙げられる。該糖としては、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。該糖の種類によっては、バインダー効果を有するため、前記核粒子の表面で被覆層を形成した際、該被覆層と前記核粒子との接着強度に優れる。
【0016】
前記固形分を含有する液における前記糖の含有量としては、特に制限はなく、糖の溶解度に応じた濃度に調製すればよい。例えば蔗糖の場合では、20〜60重量%が好ましい。前記糖の含有量が、20重量%未満であると、液を噴霧する工程時間の延長による製造効率の低下が想定され、60重量%を超えると、蔗糖の持つバインダー効果により凝集発生を生じることがある。また、糖は液中で全量溶解しているのが好ましい。
【0017】
前記固形分を含有する液に含有される前記糖以外の添加成分としては、経口摂取可能なものであれば特に制限はなく、糖アルコール、有機酸及びその塩、無機物、デンプン及びその誘導体、セルロース誘導体、合成高分子などが挙げられる。前記糖アルコール、前記有機酸及びその塩、前記デンプン及びその誘導体、前記セルロース及びセルロース誘導体、前記合成高分子としては、上述したものと同様のものが挙げられる。但し、本発明では、生理活性物質は固形分として含有されない。
なお、前記添加成分が溶媒に対して溶解性の場合には、該液は水溶液となり、不溶性乃至難溶性の場合には、該液は懸濁液となる。
前記固形分を含有する液における前記添加成分の含有量としては、特に制限はなく、粘度、噴霧性等を考慮して目的に応じて適宜選択することができる。懸濁液の場合、分散質の含有量は30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。前記添加成分の含有量が、30重量%以上を超えると、添加する成分の性質にもよるが粘度が高くなり、噴霧性が悪くなったり、凝集が発生し易くなったりすることがある。
【0018】
前記液に含有される溶媒としては、水が好適に挙げられる。前記液における水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
また、前記固形分を含有する液に含有される溶媒としては、水以外に、本発明の目的を害さない範囲で、有機溶媒などを含有していてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコールなどが好適に挙げられる。前記液が前記有機溶媒を含有していると、溶解性の向上、乾燥時間の短縮が可能となる場合がある。
前記固形分を含有する液における前記有機溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
前記固形分を含有する液の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法に従って調製することができ、例えば、前記糖、前記糖以外の添加成分を水、あるいは必要に応じて選択した前記有機溶媒と混合し、攪拌等する方法などが挙げられる。
【0021】
−噴霧−
前記固形分を含有する液の前記核粒子への噴霧の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、使用する造粒装置に設けられた噴霧手段、例えば、スプレーガン、噴霧ノズル等から噴霧する方法などが好適に挙げられる。
なお、このとき、前記噴霧の条件としては、特に制限はなく、公知の条件を採用することができ、目的に応じてその噴霧量、噴霧する霧粒子(ミスト)の大きさ、噴霧時間などを適宜選択することができる。前記噴霧にスプレーガン等を使用する場合、そのスプレー空気圧としては、例えば、0.1MPa〜0.5MPa程度が好ましい。
前記造粒装置としては、本発明においては、前記核粒子を転動させることができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、遠心流動型コーティング造粒装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」など)複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、などが好適に挙げられる。
【0022】
なお、従来の球形顆粒の造粒方法では、前記噴霧の際に、前記核粒子に対して、粉末散布装置から前記糖等の粉末を散布することが一般的に行われている。しかし、本発明者が鋭意検討したところ、前記粉末の散布を行うと、摩損度、顆粒硬度の向上が十分に図れないことを見出した結果、本発明においては、摩損度、顆粒硬度が十分高いレベルに改善された高品質の球形顆粒を得る目的で、前記散布の際に、前記核粒子に対し前記粉末を散布することは行わない。
【0023】
−転動−
本発明において、前記転動は、「遠心流動」や「遠心転動」とも称され、円筒状の固定壁(ステーター)の内側に水平に設置された回転皿(ローター)が回転し、ステーターとローターの間に一定に設けられたクリアランスから供給されるスリットエアーを導入しながら、前記核粒子が該ローター上を転がり動くことを意味する。該転動により、前記核粒子はその表面に前記固形分を含有する液による被覆層が形成されつつ球形に成形される。
前記転動の方法としては、特に制限はなく、回転可能なローター及びステーターを備えた公知の造粒装置を用いる方法などが好適に挙げられる。前記造粒装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、遠心流動型コーティング造粒装置(例えばフロイント産業(株)製「CFグラニュレーター」など)、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、などが好適に挙げられる。
前記転動の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ローターの回転数としては、装置径の違いにより設定に差はあるが50〜1000rpm程度が好ましい。また、前記転動の際の温度としては、特に制限はなく、前記核粒子の種類、前記液の組成等に応じて適宜選択することができるが、製品温度として20〜50℃程度が好ましい。
【0024】
−浮遊流動−
本発明において、前記核粒子を転動させて造粒を行う際に、更に、前記核粒子が転動している状態にエアーを吹き込むことにより浮遊流動させること(以下、「転動」と「浮遊流動」とを組み合わせた状態のことを「転動浮遊流動」という)が好ましい。前記転動に加えて、前記浮遊流動を組み合わせた転動浮遊流動を行うと、乾燥効率が高くなるため作業効率が向上するなどの利点が得られる。
前記転動に加えて前記浮遊流動を生じさせるためには、スリットエアーとは別経路からのエアー(浮遊流動エアー)の導入が必要となる。例えば、核粒子は通過できないがエアーは通過できるスクリーンを回転皿に設け、回転皿下方から転動粒子に向けてエアーを吹き込むことにより浮遊流動エアーを導入したり、回転皿上方より回転皿近傍に設けられた管状のエアー供給手段により転動粒子に向けて浮遊流動エアーを導入したりすることができる。スリットエアー及び浮遊流動エアーの風量は、装置の容量などの目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
前記転動浮遊流動の方法としては、特に制限はなく、回転可能なローター及びスリットエアーと浮遊流動エアー経路を備えた公知の造粒装置を用いる方法などが好適に挙げられる。前記造粒装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複合型造粒コーティング装置(例えばフロイント産業(株)製「スパイラフロー」など)、遠心転動造粒コーティング装置(例えば、フロイント産業(株)製「グラニュレックス」など)、などが好適に挙げられる。
【0026】
−球形顆粒−
以上の造粒工程により、前記核粒子の表面に前記固形分を含有する液による被覆層が形成されて本発明の球形顆粒が造粒される。
前記被覆層の被覆量としては、特に制限はなく、前記球形顆粒の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記核粒子に対する前記液中に含有される前記糖等の固形分の割合で、50〜1500重量%程度が好ましく、100〜1000重量%程度がより好ましい。
【0027】
前記球形顆粒の粒径としては、特に制限はなく、該球形顆粒の用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、篩い分け法により測定される粒径が、75〜1,000μmが好ましく、150〜850μmがより好ましい。
前記球形顆粒の粒径が1,000μmを超えると、得られた球形顆粒を用いて製剤化した際に製剤の服用感が悪くなるなどの問題が生じやすくなることがあり、対して75μm未満であると、製剤化の際に凝集を起こし易くなることがある。
こうして得られた球形顆粒の真球度としては、0.85以上が好ましく、0.90以上がより好ましい。前記真球度が、0.85未満であると、該球形顆粒を製剤用核粒子として使用した場合に、該製剤における薬効成分の体内での溶解性が均一ではなく、ドラッグ・デリバリー・システム適用の製剤としての品質が不十分となることがある。一方、0.85以上であると、該球形顆粒の表面に、生理活性物質等を含有する被覆層を形成した際、該生理活性物質を均一にコートすることができ、その生理活性物質の放出速度をより正確に制御できる点で有利である。
【0028】
前記球形顆粒は、前記核粒子を転動して造粒されるため、真球度が高い。また、その造粒の際に、前記液を噴霧して該液中に溶解乃至分散された糖等の成分が該核粒子の表面に被覆層を形成するため、該球形顆粒は、摩損度が低く、顆粒硬度が高い。
【0029】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、表面被覆層形成工程などが好適に挙げられる。
前記表面被覆層形成工程は、前記造粒工程において得られた前記球形顆粒の表面に表面被覆層を形成する工程である。本発明の球形顆粒は、前記表面被覆層が形成されていないものであってもよいし、該表面被覆層が形成されたものであってもよい。該表面被覆層が形成された前記球形顆粒は、該表面被覆層が形成されていない場合に比し、一般的にはその摩損度、硬度等が良化する。
【0030】
前記表面被覆層の形成方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記造粒工程と同様に、上述した造粒装置を用い、適宜選択した条件にて、表面被覆層形成液を噴霧することにより行う方法などが挙げられる。なお、前記表面被覆層形成液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述した前記固形分を含有する液と同様のものが好適に挙げられる。
なお、本発明においては、前記液としては、水溶液、懸濁液のいずれであってもよいが、前記表面被覆層形成液としては、得られる球形顆粒の摩損度、硬度の向上等の観点からは、懸濁液よりも水溶液の方が好ましい。
本発明では、特に前記糖及び/または糖アルコールの水溶液であることが好ましい。
【0031】
前記表面被覆層の被覆量としては、特に制限はなく、前記球形顆粒の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記核粒子に対する前記表面被覆層形成液中に含有される前記糖等の固形分の割合で、1〜200重量%程度が好ましく、10〜100重量%程度がより好ましい。
【0032】
<球形顆粒の製造例>
ここで、前記球形顆粒(前記核粒子の表面に前記被覆層が形成されたもの)、乃至、前記表面被覆層が形成された前記球形顆粒の製造例として、例えば、遠心転動造粒コーティング装置を用いた場合について以下に説明する。
【0033】
前記遠心転動造粒コーティング装置「グラニュレックス」(フロイント産業株式会社製)は、前記核粒子を転動させながら球形顆粒に造粒可能な造粒室を備える。
前記造粒室は、設置面に水平な断面形状が円形の空間を有しており、該空間内に、前記設置面に対し水平に皿面が設置され、回転可能な円形の回転皿(ローター)を備えてなる。なお、前記ローターは、その外周縁部が徐々に上方に傾斜した形状となっていて、回転軸を中心に回転されると、その皿面上で前記核粒子を転動可能である。
該造粒室においては、前記ローターの外周端と該造粒室の内壁との間に所定のクリアランスが形成されている。また、前記造粒室の内部には、前記空間内の温度を測定するための熱電対などの温度計が備えられている。
【0034】
前記造粒室には、噴霧装置も設けられており、前記核粒子の表面の前記被覆層を形成するための前記液を、前記造粒室の内部に噴霧可能になっている。なお、前記噴霧装置は、前記ローターの上方であって、かつその外周縁部近傍に設けられており、前記液を送液するための管及びポンプと、該液を前記空間内に噴霧可能なスプレーノズルとを備える。
また、前記造粒室においては、前記ローターの下方にエアチャンバが形成されていて、該エアチャンバ内に空気を圧送可能になっており、前記クリアランス部分から前記造粒室の内部(前記空間内)にスリットエアーが導入可能になっている。
【0035】
この遠心転動造粒コーティング装置において、前記ローターを回転させてスリットエアーを導入した状態で前記核粒子を投入すると、前記核粒子が転動する。次に前記被覆層を形成するための前記固形分を含有する液を噴霧すると、前記核粒子の表面が前記固形分を含有する液に含まれる前記糖等の成分で被覆され、球形顆粒となる。こうして得られた球形顆粒は、前記遠心転動コーティング装置から取り出し、流動層装置などの装置に移し変えて、更に乾燥工程等を行うこともできるが、前記グラニュレックスでは自動昇降式の給気システムを造粒室内に有しており、転動している粒子内にエアーを送り込むことにより、粒子を転動浮遊流動させることが可能となる。よって造粒中にこの浮遊流動エアーを導入することにより乾燥効率が向上するため、さらに効率よく造粒が可能となる。
【0036】
以上、本発明の球形顆粒の製造方法により得られた球形顆粒が本発明の球形顆粒であり、該球形顆粒は、製剤用球形粒として好適に使用することができる。該球形顆粒は、その摩損度及び硬度が良化されているので、該球形顆粒の表面に前記生理活性物質を被覆して製剤化する際に、前記球形顆粒の破損等による不良品の発生率も低くなる。また該球形顆粒は真球度が高いので、その表面に生理活性物質等を被覆して製剤とすると、該生理活性物質が均一に体内で溶解可能となり、ドラッグ・デリバリー・システム等に好適な高品質の製剤とすることができる。
【0037】
<本発明の球形顆粒を用いた製剤の製造>
前記球形顆粒の表面に、生理活性物質含有被覆層を形成して製剤とする方法としては特に制限はなく、例えば、結合液を噴霧しながら生理活性物質を含有する粉末を供給して被覆を行う粉末被覆造粒や、生理活性物質や結合剤を溶解乃至懸濁させた液を噴霧して被覆するスプレーコーティング法などの公知の条件にて行うことができる。
前記生理活性物質含有被覆層を構成する成分としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、経口摂取可能な生理活性物質に加えて医薬品添加物や食品添加物などを用いてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記生理活性物質としては、経口摂取可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、催眠・鎮静剤、解熱鎮痛消炎剤、精神神経用剤、自律神経用剤、抗パーキンソン剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、動脈硬化用剤、鎮咳去痰剤、ビタミン剤、滋養強壮薬、抗生物質、胃腸薬、などが挙げられる。
前記医薬品添加物及び前記食品添加物としては、経口摂取可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、糖、糖アルコール、デンプン及びその誘導体、有機酸及びその塩、無機物、セルロース及びその誘導体、非セルロース多糖類、合成高分子などが挙げられる。
【0039】
さらに製剤としての機能性を高めるために、生理活性物質含有被覆層に加えて機能性コーティング層を形成してもよい。機能性コーティング層とは、徐放性、胃溶性、腸溶性などの薬物の放出速度をコントロールするためや、防湿、遮光、苦味や臭いのマスキングを目的として形成する層である。これらを形成する方法としては、製剤の目的に応じて公知の条件にて行えばよい。機能性コーティング層を形成する成分としては、経口摂取可能なものであれば特に制限は無く、例えば天然高分子や合成高分子などが挙げられる。
以上により、各種の製剤が得られる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において得られた球形顆粒については、真球度、摩損度、顆粒硬度を以下のように測定した。
【0041】
<真球度>
得られた球形顆粒につき、その短径及び長径を測定し、その短径/長径の比で表した値である。この短径/長径の比とは、前記球形顆粒の短軸と長軸との比を意味し、真球度を示す目安となる。
前記短径及び長径の比は、得られた前記球形顆粒を試料台にランダムに置き、写真撮影し、50個の球形顆粒についてその長軸の長さ(長径)と、長軸の中点に直交する短軸の長さ(短径)とを、各々測定し、各々について長径に対する短径の比を求め、50個の平均値で示したものである。
なお、真球度の評価基準は以下のとおりである。
◎・・・真球度0.90以上
○・・・真球度0.85以上0.90未満
×・・・真球度0.85未満
【0042】
<摩損度>
得られた球形顆粒を、篩を用いてそれぞれ下表に示す粒子径に篩別した後、その約10gを精密に量りとり(Wt)、内径32mm×深さ65mmのステンレス製円筒容器に入れ、ミキサーミル(SPEX社製)にて、10分間振とうを行った。振とう終了後、下表に示す目開きの篩いに移して微粉を除去し、篩い上の残留分(Ws)を精密に秤量し、次式(i)により摩損度を算出した。
摩損度(%)=(Wt−Ws)/Wt×100 ・・・(i)
なお、一般的に同じ成分を持つ顆粒の場合、粒子径が大きくなるにつれ摩損度は大きくなる傾向がある。この理由から、摩損度については同じ粒子径の顆粒を用いて比較を行った。
【0043】
【表1】

【0044】
<顆粒硬度>
得られた球形顆粒のうち摩損度測定と同様の粒子径の顆粒を用いて顆粒硬度測定装置(GRANO、岡田精工(株)製)を用い、測定加重1kg、測定速度100μm/sec、先端チップ径3mmφの条件にて顆粒硬度を測定し、20粒の平均値を該顆粒硬度とした。なお、一般的に同じ成分を持つ顆粒の場合、粒子径が大きくなるにつれ顆粒硬度は大きくなる傾向がある。この理由から、顆粒硬度については同じ粒子径の顆粒を用いて比較を行った。
【0045】
(実施例1)
複合型造粒コーティング装置(フロイント産業(株)製、「スパイラフロー」、SFC−5)を用いて、下記表2に示す処方の懸濁液を、核粒子(粒径が150〜212μmであるグラニュー糖の結晶(蔗糖の結晶、塩水港精糖(株)製))の重量に対して、該懸濁液中の蔗糖及びコーンスターチの固形分重量で、700重量%の被覆量となるように該核粒子(グラニュー糖の結晶)の表面に被覆して、球形顆粒を造粒した。
該複合型造粒コーティング装置の運転条件としては、総風量(浮遊流動エアー量+スリットエアー量)が3.4m/min(80℃設定)であり、ローター回転数が300rpmであり、スプレー空気圧が0.4MPaとし、排気温度が40℃前後となるように、液の噴霧速度を調整した。
【0046】
該複合型造粒コーティング装置は、上述した造粒室を備えており、該造粒室内に回転可能なローターが備えられている。また、該造粒室の内壁には、前記ローターの外周縁部の近傍であってかつ上方に、前記懸濁液を前記核粒子に向けて噴霧可能な噴霧装置(スプレーガン)を備えられている。また、該ローターの外周縁部と前記造粒室の内壁との間には僅かなクリアランスが設けられており、下方からスリットエアーが該クリアランスを通過して該造粒室内に導入可能になっている。また、ローターの一部は通風が可能なスクリーンになっており、このスクリーン部分から浮遊流動エアーを導入することが可能である。
このため、複合型造粒コーティング装置において、該ローターを回転させ、前記スリットエアーを前記造粒室内に導入した状態で前記核粒子を投入すると、該核粒子が前記転動を生じる。また、この転動の際に、浮遊流動エアーを前記造粒室内に導入させると、前記転動浮遊流動が生ずる。こうして、該複合型造粒コーティング装置を用いて前記造粒工程を行うことにより、以下の球形顆粒が造粒された。
得られた球形顆粒の、真球度は0.87であり、摩損度は1.08%であり、顆粒硬度は169gであり、粒径355〜500μmで篩い分けた際の収率は約88%であった。なお、前記真球度、前記摩損度、前記顆粒硬度は、前述の方法にて測定し、評価した。前記収率は、篩い分け法により算出した値である。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様の処方及び条件で球形顆粒を造粒した後、更に表2に示す処方の液(前記表面被覆層形成液)を前記核粒子の重量に対して、該液中の蔗糖の固形分重量で、50重量%の被覆量となるように該球形顆粒の表面に被覆し前記表面被覆層を形成した以外は、実施例1と同様として球形顆粒を造粒した。
得られた球形顆粒の、真球度は0.88であり、摩損度は0.18%であり、顆粒硬度は190gであり、粒径355〜500μmで篩い分けた際の収率は約88%であった。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、核粒子であるグラニュー糖の粒径を212〜300μmに変更したこと、及びコーティングによる被覆量を700%から900%に変更した以外は、実施例1と同様として球形顆粒を造粒し、実施例1と同様の評価を行った。
得られた球形顆粒の、真球度は0.90であり、摩損度は1.33%であり、顆粒硬度は345gであり、粒径500〜710μmで篩い分けた際の収率は約96%であった。
【0049】
(実施例4)
実施例3において、懸濁液の組成を表2に示す処方に変更して実施例3と同様として球形顆粒を造粒した後、更に表2に示す処方の液(前記表面被覆層形成液)を前記核粒子の重量に対して、該液中の蔗糖の固形分重量で、50重量%の被覆量となるように該球形顆粒の表面に被覆(噴霧)し前記表面被覆層を形成した以外は、実施例3と同様として球形顆粒を造粒した。
得られた球形顆粒の、真球度は0.90であり、摩損度は0.45%であり、顆粒硬度は360gであり、粒径500〜710μmで篩い分けた際の収率は約95%であった。
【0050】
(実施例5)
実施例4において、複合型造粒コーティング装置に代えて遠心転動造粒コーティング装置(フロイント産業(株)製、「グラニュレックス」、GX−40)を用いたこと、及び、表2に示す処方の懸濁液を使用したこと以外は、実施例4と同様として球形顆粒を造粒した。
該遠心転動造粒コーティング装置の運転条件としては、総風量(浮遊流動エアー量+スリットエアー量)が2.5m/min(80℃設定)であり、ローター回転数が250rpmであり、スプレー空気圧が0.4MPaとし、排気温度が40℃前後となるように、液の噴霧速度を調整した。
得られた球形顆粒の、真球度は0.91であり、摩損度は0.49%であり、顆粒硬度は341gであり、粒径500〜710μmで篩い分けた際の収率は約91%であった。
【0051】
(実施例6)
複合型造粒コーティング装置(フロイント産業(株)製、「スパイラフロー」、SFC−5)を用いて、蔗糖:コーンスターチ=8:2の懸濁液を噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥品を、粒径106〜180μmに分級したものを核粒子とし、表2に示す処方の溶液を、核粒子の重量に対して該液の蔗糖の固形分重量で250重量%の被覆量となるように噴霧して球形顆粒を造粒した。
なお、複合型造粒コーティング装置の運転条件としては、総風量(浮遊流動エアー量+スリットエアー量)が3.0m/min(70℃設定)であり、ローター回転数が300rpmであり、スプレー空気圧が0.4MPaとし、排気温度が43℃前後となるように、液の噴霧速度を調整した。
得られた球形顆粒の、真球度は0.98であり、摩損度は0.05%であり、顆粒硬度は42gであり、粒径150〜250μmで篩い分けた際の収率は約73%であった。
【0052】
【表2】

* コーンスターチの略
表中「%」は重量%を意味する
【0053】
(比較例1)
粒径が150〜212μmのグラニュー糖500gを核粒子として用い、遠心流動型コーティング造粒装置CFグラニュレーター(フロイント産業(株)製、CF−360EX)へ投入し、50重量%蔗糖水溶液を該核粒子に噴霧しながら、蔗糖及びコーンスターチを重量比で3:1の割合で混合粉砕した混合粉2.5kgを該核粒子に散布することにより、粉末レイヤリングした。即ち、前記核粒子の表面に、前記混合粉の散布と、前記蔗糖水溶液の噴霧とを行って、被覆層を形成して顆粒を造粒した。得られた顆粒について、実施例1と同様の評価を行った。
該遠心流動型コーティング造粒装置の運転条件は、スリットエアー量が0.18m/minであり、ローター回転数が160rpmであり、スプレー空気圧が0.1MPaであり、液速度が5〜10mL/minとした。また、前記混合粉の散布量は、20〜70g/minの間で調整した。
その結果、得られた顆粒は、真球度が0.93であり、摩損度が1.49%であり、顆粒硬度が93gであり、粒径355〜500μmで篩い分けた際の収率が約70%であった。
比較例1で得られた顆粒と同じ粒子径である実施例1及び2で得られた本発明の球形顆粒とを比較すると、実施例1、2で得られた顆粒は比較例1の顆粒と比較して顆粒硬度の上昇及び摩損度の低下が確認された。
【0054】
【表3】

【0055】
(比較例2)
粒径が212〜300μmのグラニュー糖500gを核粒子として用い、遠心流動型コーティング造粒装置CFグラニュレーター(フロイント産業(株)製、CF−360EX)へ投入し、50重量%蔗糖水溶液を該核粒子に噴霧しながら、蔗糖及びコーンスターチを重量比で3:1の割合で混合粉砕した混合粉2.5kgを該核粒子に散布することにより、粉末レイヤリングした。即ち、前記核粒子の表面に、前記混合粉の散布と、前記蔗糖水溶液の噴霧とを行って、被覆層を形成して顆粒を造粒した。得られた顆粒について、実施例1と同様の評価を行った。
該遠心流動型コーティング造粒装置の運転条件は、スリットエアー量が0.18m/minであり、ローター回転数が160rpmであり、スプレー空気圧が0.1MPaであり、液速度が5〜10mL/minとした。また、前記混合粉の散布量は、20〜70g/minの間で調整した。
その結果、得られた顆粒は、真球度が0.94であり、摩損度が1.85%であり、顆粒硬度が152gであり、粒径500〜710μmで篩い分けた際の収率が約70%であった。
比較例2で得られた顆粒と同じ粒子径である実施例3、4及び5で得られた球形顆粒とを比較すると、実施例3、4、5で得られた顆粒は比較例2の顆粒と比較して顆粒硬度の上昇及び摩損度の低下が確認された。
【0056】
【表4】

*表面被複層形成液の略
【0057】
(比較例3)
蔗糖:コーンスターチ=8:2の液を噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥品を粒径106〜180μmで分級したもの1kgを核粒子として用い、遠心流動型コーティング造粒装置CFグラニュレーター(フロイント産業(株)製、CF−360EX)へ投入し、30重量%蔗糖水溶液を該核粒子に噴霧しながら、蔗糖及びコーンスターチを9:1(重量比)の割合で混合粉砕した混合粉2kgを該核粒子に散布することにより、粉末レイヤリングした。即ち、前記核粒子の表面に、前記混合粉の散布と、前記蔗糖水溶液の噴霧とを行って、被覆層を形成して顆粒を造粒した。得られた顆粒について、実施例1と同様の評価を行った。
該遠心流動型コーティング造粒装置の運転条件は、スリットエアー量が0.18m/minであり、ローター回転数が160rpmであり、スプレー空気圧が0.1MPaであり、液速度が5〜10mL/minとした。また、前記混合粉の散布量は、20〜70g/minの間で調整した。
その結果、得られた顆粒は、真球度が0.93であり、摩損度が0.36%であり、顆粒硬度が13gであり、粒径150〜250μmで篩い分けた際の収率が約61%であった。
比較例3で得られた顆粒と同じ粒子径である実施例6で得られた球形顆粒とを比較すると、実施例6で得られた顆粒は比較例3の顆粒と比較して顆粒硬度の上昇及び摩損度の低下が確認された。
【0058】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の球形顆粒の製造方法によれば、結晶粒からなる核粒子に液のみを噴霧する手法を用いながらも、粉末被覆して造粒した顆粒よりも摩損度、顆粒硬度に優れ、真球度の高い高品質な球形顆粒が得られるので、本発明の球形顆粒の製造方法は、高品質の製剤を効率よく製造するために用いる製剤用核粒子として好適な球形顆粒の製造に好適に利用することができる。
本発明の球形顆粒は、粉末被覆して造粒した顆粒よりも摩損度、顆粒硬度に優れ、真球度が高く、高品質であるため、放出制御製剤等に用いる製剤用核粒子として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖を含有する核粒子を水平に設置した回転皿を回転させることにより転動させながら、粉末成分を散布することなく、該核粒子に固形分を含有する液を噴霧して被覆層を形成する工程を含むことを特徴とする球形顆粒の製造方法。
【請求項2】
固形分を含有する液が、糖を含有する水溶液乃至懸濁液である請求項1に記載の球形顆粒の製造方法。
【請求項3】
核粒子が、糖の結晶、又は、糖及びデンプン若しくはその誘導体の噴霧乾燥粒子からなる請求項1から2のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法。
【請求項4】
核粒子が、水平に設置した回転皿を回転させることによる転動に加え、転動粒子にエアーを吹き込むことにより浮遊流動される請求項1から3のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法。
【請求項5】
更に、得られた球形顆粒の表面に、糖及び/又は糖アルコールの水溶液を噴霧して表面被覆層を形成することを含む請求項1から4のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の球形顆粒の製造方法により製造されることを特徴とする球形顆粒。

【公開番号】特開2009−263303(P2009−263303A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117114(P2008−117114)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】