説明

球状ゲルおよびその製造方法

【課題】硬さと粘りに富んだ優れた食感を有しかつ安定に形状を保持しうる球状ゲルおよびその製造方法の提供。
【解決手段】加熱凝固性β−1,3−グルカンおよび多価金属塩を含み、かつ粘度が130〜3600 mPa・sである分散液を、多価金属イオンと反応してゲル化するゲル化剤を含み、かつ前記加熱凝固性β−1,3−グルカンの熱不可逆性凝固温度以上の温度である溶液に滴下することを含んでなる、球状ゲルの製造方法、およびそれにより得られる球状ゲルを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた食感を有し、かつ安定に形状を保持しうる球状ゲルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イクラ、スジコ、キャビア等の魚卵食品やタピオカティに含まれるタピオカパール等は、球状であるという外観と弾力のある食感が好まれ、様々な食品に使用されている。さらに、それらを模した人工イクラ等の粒状ゲルの食品も広く利用されている。
【0003】
各種ゲル化剤を用いて、粒状ゲルを調製する様々な方法が報告されている。例えば、特開昭55−99177号公報(特許文献1)には、アルギン酸ナトリウムを塩化カルシウム溶液に滴下することにより調製される粒状ゲルが報告され、その利用方法としては人工イクラが記載されている。しかしながら、この方法では、食感はアルギン酸カルシウムの性質によって決定され、粒状ゲルは粘りがなくもろい食感となる。
【0004】
また、特開平8−80166号公報(特許文献2)には、粒状ゲル調製する方法として、多価金属イオンと反応してゲルを形成する多糖類水溶液を、熱凝固性β−1,3−グルカンおよび多価金属塩含有水溶液に滴下し、ついで加熱することを特徴とする粒状ゲルの製造法が報告されている。しかしながら、得られる粒状ゲルは主に2種のゲル化剤が混合ざれた状態となり、たとえば、カードランとそれ以外のゲル化剤の混合物の場合、カードラン単独の場合に比べ、破断荷重(最大荷重)で示されるゲル強度が低下し、破断歪率で示されるゲルの粘りが低下してしまう。
【0005】
また、ゼリー食品を製造する種々の方法が報告されている。例えば、特開昭63−230041号公報(特許文献3)には、塩類およびゲル化剤を含有する溶液と、それとは別の塩類およびゲル化剤を含有する溶液とを接触させ、異種間溶液で反応させることによりゲル化させ、異種ゲルが混在したゼリーを調製する方法が報告されている。
【0006】
また、特開平9−275915号公報(特許文献4)には、加熱により固化し、かつカルシウムイオンでは固化しないゲル化剤およびカルシウム化合物を含有する分散液と、カルシウムイオンで固化するゲル化剤を含有する溶液とを接触させた後、加熱することを特徴とする異種ゼリーが混在するゼリー食品の製造方法が報告されている。
【0007】
しかしながら、上記のゼリー食品の製造方法ではいずれも、粒状ゲルを他のゼリーの中に存在させることにより粒状ゲルの安定性の低さを補っており、粒状ゼリーを単独で取り出すことは難しい。
【0008】
上記のように、粒状ゲルは、食品分野において食感または美観付与をはじめとする様々な用途に広く適用されている。しなしながら、効果的な食感および美観付与を勘案すれば、硬さと粘りとを備えた優れた食感を有しかつ安定に形状を保持しうるゲルおよびその簡易かつ迅速な製造方法が依然として求められているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭55−99177号公報
【特許文献2】特開平8−80166号公報
【特許文献3】特開昭63−230041号公報
【特許文献4】特開平9−275915号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、硬さと粘りとを備えた優れた食感を有しかつ形状の安定した球状ゲルおよびその製造方法を提供することをその目的とする。
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)加熱凝固性β−1,3−グルカンおよび多価金属塩を含み、かつ粘度が130〜3600 mPa・sである分散液を、多価金属イオンと反応してゲル化するゲル化剤を含み、かつ加熱凝固性β−1,3−グルカンの熱不可逆性凝固温度以上の温度である溶液に滴下することを含んでなる、球状ゲルの製造方法。
(2)加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである、(1)に記載の方法。
(3)上記ゲル化剤が、アルギン酸塩、ロウメトキシルペクチンまたはジェランガムである、(1)または(2)に記載の方法。
(4)多価金属イオンが、カルシウムイオン、鉄イオンまたはマグネシウムイオンである、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法により得られる、球状ゲル。
(6)加熱凝固性β−1,3−グルカンから実質的になる、球状ゲル。
【0012】
本発明によれば、硬さと粘りとを備えた優れた食感を有しかつ安定した形状を保持しうる球状ゲルを1ステップで簡易かつ迅速に製造することができる。工業生産上有利に利用することができる。また、かかる本発明の球状ゲルおよび製造方法は、食品分野における食感および美観付与や工業的生産において有利に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の球状ゲルの製造方法は、加熱凝固性β−1,3−グルカンおよび多価金属塩を含み、かつ粘度が130〜3600 mPa・sである分散液(以下、「A液」ともいう。)を、多価金属イオンと反応してゲル化するゲル化剤を含み、かつ加熱凝固性β−1,3−グルカンの熱不可逆性凝固温度以上の温度である溶液(以下、「B液」ともいう。)に滴下することを一つの特徴としている。
【0014】
本発明のA液は、加熱凝固性β−1,3−グルカンおよび多価金属塩を溶媒中で公知手法を用いて分散することにより得ることができる。
【0015】
また、A液の粘度は130〜3600 mPa・sに調製されている。かかるA液の粘度範囲は、A液の流動性を確保し、球状ゲルを安定に製造する上で有利である。また、A液の粘度範囲は、好ましくは150〜3600mPa・sであり、より好ましくは150〜2600mPa・sである。かかる粘度範囲は、硬さと粘りとのある食感や真球形状をゲルに付与する上で特に好ましい。
A液の上記粘度は、例えば、後述する実施例1に記載の方法により決定することができる。
【0016】
A液の粘度は、公知技術により適宜調製することができる。かかる手法としては、例えば、加熱凝固性β−1,3−グルカンを分散させた後、冷却する高粘度化法(参照:食品ハイドロコロイドの開発と応用 編者 西成 勝好)、加熱凝固性β−1,3−グルカンをアルカリに膨潤または溶解させることで高粘度化を行うアルカリ膨潤/溶解法、加熱凝固性β−1,3−グルカンに、でんぷん等を添加して粘度を付与する方法等が挙げられるが、好ましくはアルカリ膨潤/溶解法である。
【0017】
また、加熱凝固性β−1,3−グルカンは、D−グルコースを構成糖とし、β−1,3−グルコシド結合してなり、加熱凝固性を有する多糖類である。加熱凝固性β−1,3−グルカンの起源は、微生物、動物あるいは植物等、特に限定されない。加熱凝固性β−1,3−グルカンとしては、例えば、カードラン、パラミロン、パキマン等を挙げることができ、好ましくはカードランである。
【0018】
A液中の加熱凝固性β−1,3−グルカンの量は、特に限定されないが、A液の流動性を勘案すると、A液100重量部に対して、0.1〜8重量部であり、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0019】
A液中の多価金属塩は、可食性の塩類が好ましく用いられる。また、多価金属塩は、例えば、元素周期表でIIa族(アルカリ土類金属)(例、カルシウム等)、VIII族(例、鉄等)、Ib族(例、銅等)、IIb族(例、亜鉛等)、IIIa族(アルミニウム等)等に属する金属と酸との塩が挙げられるが、好ましくはカルシウム塩である。
【0020】
また、多価金属塩を形成する酸としては、特に限定されないが、無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等)および有機酸(例、酢酸、乳酸、グルコン酸、チオグリコール酸、アスコルビン酸等)が挙げられる。
【0021】
より具体的には、カルシウムと酸の塩は、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム等の無機酸との塩、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、チオグリコール酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等の有機酸との塩が挙げられるが、好ましくは塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、または乳酸カルシウムであり、より好ましくは塩化カルシウム、乳酸カルシウムであり、さらに好ましくは、乳酸カルシウムである。
【0022】
A液中の多価金属塩の量は、B液中のゲル化剤をゲル化しうる限り特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。具体的には、多価金属塩の量は、例えば、A液100重量部当り、多価金属として0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜3重量部の範囲で適宜選択してもよい。かかる量は、乳酸カルシウムを用いた場合に特に好ましい。
【0023】
A液中の溶媒は、β−1,3−グルカンおよび多価金属塩を分散しうる限り特に限定されないが、好ましくは水性媒体であり、より好ましくは水または含アルコール水溶液(例えば、約0.1〜10v/v%アルコール含有水)であり、さらに好ましくは水である。
【0024】
また、A液の温度は、A液を好適な粘度範囲に保つように当業者が適宜決定することができる。かかるA液の温度は、好ましくは加熱凝固性β−1,3−グルカンの凝固温度(ゲル化温度)未満であり、かつA液の粘度が上述の数値範囲に保たれる温度である。より具体的には、A液の温度は、好ましくは80℃未満であり、より好ましくは50〜60℃である。かかる温度は、加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである場合に特に好ましい。
【0025】
A液のpHは、加熱凝固性β−1,3−グルカンの種類・性質を勘案して、当業者により適宜決定される。具体的には、A液のpHは、11以下が望ましく、好ましくは、pH1.0〜pH11.0である。かかる好適なpHは加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである場合、カードランを溶解させずに効果的に溶媒中に分散させる上で有利である。
【0026】
また、本発明のB液は、多価金属イオンと反応してゲル化するゲル化剤を溶媒中で常法により分散させ、A液中の加熱凝固性β−1,3−グルカンの熱不可逆性凝固(ゲル化)温度以上の温度とすることにより調製することができる。
【0027】
具体的には、B液の温度は、好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは80〜150℃である。かかる温度は、加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランの場合、球状ゲルを形成する上で特に有利である。
【0028】
B液中のゲル化剤は、多価金属イオンと反応してゲル化する限り特に限定されないが、好ましくは多糖類であり、より好ましくはアルギン酸、ロウメトキシルペクチン、ジェランガムまたはその塩等であり、さらに好ましくはアルギン酸またはその塩であり、さらに好ましくはアルギン酸アルカリ金属塩であり、さらに一層好ましくはアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムである。
【0029】
B液中のゲル化剤の量は、特に限定されないが、B液100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0030】
B液に用いられる溶媒およびpHは、特に限定されず、A液と同様とすることができる。
【0031】
上記の他、A液およびB液は、本発明の球状ゲルの形成を妨げない範囲で適宜添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、特に限定されないが、香料、色素、果汁、エキス、調味料またはpH調節剤等が挙げられる。
【0032】
また、A液をB液に滴下する方法は、特に限定されず、多孔板やノズル等の公知装置を用いて連続的または断続的に行ってよい。また、A液の滴下の際には、多孔板、ノズル等の公知装置の口径・形状やA液の滴下量、滴下速度、粘度または比重などを適宜調節することにより、球状ゲルの形や大きさは当業者によって適宜調節される。なお、A液をノズル等から連続的にB液に注入する場合、麺状のゲルやフカヒレ切片のような形状のゲルを調製することもでき、本発明にはかかる態様も包含される。
【0033】
また、A液の滴下の際、B液は静置していてもよく、撹拌していてもよい。
【0034】
また、A液の滴下後のB液の温度は、特に限定されないが、球状ゲルの安定な製造を勘案すれば、加熱凝固性β−1,3−グルカンの熱不可逆性凝固(ゲル化)温度以上に維持することが好ましい。かかる温度の保持時間は、好ましくは10分以上である。
【0035】
上記のような本発明の製造方法によれば、球状ゲルは、加熱凝固性β−1,3−グルカンを主成分とするコアと、所望により、多価金属塩およびゲル化剤の反応物を主成分とする外膜とを具備するゲルとして提供しうる。かかる球状ゲルは、β−1,3−グルカン特有の結着性の低減した状態で取得することができ、β−1,3−グルカンゲルの製造で通常発生しやすい接触による重合を防止して安定した形状を保持する上で有利である。
【0036】
また、本発明の球状ゲルは、A液の多価金属塩濃度、B液のゲル化剤濃度および反応時間等を当業者が適宜調節することによって、手で剥離することが可能な外膜を有する球状ゲルから外膜を有していない球状ゲルまで提供することが可能である。なお、上記外膜は、球状ゲルを炭酸ナトリウム等のアルカリ剤水溶液に浸漬することによって除去してもよく、本発明には、かかる態様も包含される。
【0037】
また、一つの態様によれば、球状ゲルは、加熱凝固性β−1,3−グルカンから実質的になる。ここで、「加熱凝固性β−1,3−グルカンから実質的になる」とは、球状ゲルの製造工程および使用工程に際して混入した加熱凝固性β−1,3−グルカンとは異なる他の成分が含まれてもよいことを意味し、具体的には、加熱凝固性β−1,3−グルカンの含有量が、球状ゲル全体の好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.8重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上を意味する。
【0038】
また、球状ゲルの大きさは、特に限定されないが、好ましくは2〜20mmであり、より好ましくは3〜15mmであり、さらに好ましくは3〜10mmである。かかる大きさは、球状ゲルを食品として用いる場合に特に有利である。
【0039】
また、本発明の球状ゲルは、上述の通り、硬さと粘りとを備えた食感を奏することができる。
球状ゲルの硬さを、最大荷重(ゲル強度)を用いて表す場合、最大荷重は、品温20℃のとき、好ましくは最大荷重0.3〜3.0Nである。
また、球状ゲルの粘りを、破断歪率を用いて表す場合、破断歪率は、品温20℃のとき、好ましくは65%以上である。
なお、上記最大荷重および破断歪率は、本願明細書の実施例1の(2)に記載の手法により、決定することができる(山電社製クリープメーターRE2-3300Sを使用して測定。測定条件:プランジャー:直径3mm、高さ22mmの円柱型、最大測定歪率:98%、測定速度:0.5mm/秒)。
【0040】
また、本発明の球状ゲルは、優れたレトルト耐性および冷凍耐性を奏することができる。
例えば、121℃ F=20のレトルト条件の場合、球状ゲルの最大荷重は、好ましくはレトルト殺菌前の最大荷重の100〜300%である。
また、−20℃、7日間冷凍して解凍した場合、球状ゲルの最大荷重は、好ましくは冷凍前の球状ゲルの最大荷重の100〜600%である。
【0041】
また、本発明の球状ゲルは、本発明の球状ゲルは、そのまま食品として用いてもよくまたは食品の原料として用いてもよい。本発明の食品としては、特に限定されないが、模造イクラなどの魚卵様食品、タピオカパール様食品、球状のゼリー食品、アイスや冷菓などの冷製食品、等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例示に限定されない。
【0043】
実施例1
(1)
表1のa-1液の配合1に示される割合で、水とカードランを充分に分散させ、水とカードランからなるa-1液50重量部を得た。次に、a-1液を撹拌(300rpm)しながら、リン酸3ナトリウム0.5重量部を水25重量部に溶解させた溶解液をa-1液に添加した。次に、得られた混合液を50〜55℃で撹拌(600rpm)しながら、乳酸0.4重量部を水3.6重量部に溶解させた溶解液を上記混合液に添加した。得られた混合液を55〜60℃に維持して撹拌(800rpm)しながら、乳酸カルシウム1重量部を水19.5重量部に溶解させた溶解液を上記混合液に添加した。得られた混合液を55〜60℃に維持して撹拌(800rpm)することにより、カードランとカルシウムイオンの分散液(A液1)を得た。同様にして、表1の配合2〜6でa-1液を調製する以外、A液1と同様にして、A液2〜6を得た。
A液1〜6を調製した時点で、A液1〜6の粘度を測定した(測定機器:東機産業ビスコメーター TVB−10 ロータNo.23(M4)、60rpm、60秒後の数値を測定)。その結果は、表1に示す。
【0044】
次に、水99.5重量部にアルギン酸ナトリウム0.5重量部に添加し、撹拌(800rpm)・溶解することにより、アルギン酸ナトリウム溶液(以下、「B液」ともいう)を得た。
次に、容器に充填した95℃のB液に、シリンジに充填したA液1を約 25g/sの速度で滴下した。その後B液を95℃で60分保持したところ、3〜6mmの粒状ゲルが生成した。次に、該粒状ゲルをB液より分離し、水を用いて冷却・洗浄し、試験品1を得た。同様にして、A液2〜6を用いて、試験品2〜6の製造を行った。
【0045】
試験品の成形性は、下記のように判断した。
○:真球状の粒状ゲルが成形できている
△:粒状ゲルが成形できているが、真球状ではない
×:粘度が高く、滴下できないため、粒状ゲルが成形できない。
【0046】
また、試験品の食感を訓練されたパネラー3名により評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(2)
(1)の球状の試験品3(以下、「球状ゲルA」ともいう)をレトルト殺菌用の容器に充填し、密閉し、121℃、F=20にて、レトルト殺菌を行い、レトルト殺菌処理された球状ゲルA(以下、「球状ゲルB」ともいう)を得た。
また、球状ゲルAを適当な容器に充填し、密閉した。次に、該容器を球状ゲルAごと、−20℃に7日間、静置した。7日後、該容器を20℃の水温で流水解凍し、冷凍処理された球状ゲルA(以下、「球状ゲルC」ともいう)を得た。
次に、球状ゲルA〜Cの食感を比較するために、最大荷重(ゲル強度)と破断歪率(ゲルの粘り)を山電社製クリープメーターRE2‐3300Sにて、N数=4〜5にて測定した(測定温度:20℃、プランジャー:直径3mm、高さ22mmの円柱型、最大測定歪率:98%、測定速度:0.5mm/秒)。
また、球状ゲルBおよびCの食感を、球状ゲルAの食感と比較した。測定結果と比較結果は表2に示す。レトルト殺菌後、冷凍解凍後においても、硬さ、粘りのある食感であった。
【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱凝固性β−1,3−グルカンおよび多価金属塩を含み、かつ粘度が130〜3600 mPa・sである分散液を、多価金属イオンと反応してゲル化するゲル化剤を含み、かつ前記加熱凝固性β−1,3−グルカンの熱不可逆性凝固温度以上の温度である溶液に滴下することを含んでなる、球状ゲルの製造方法。
【請求項2】
加熱凝固性β−1,3−グルカンがカードランである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲル化剤が、アルギン酸塩、ロウメトキシルペクチンまたはジェランガムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
多価金属イオンが、カルシウムイオン、鉄イオンまたはマグネシウムイオンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により得られる、球状ゲル。
【請求項6】
加熱凝固性β−1,3−グルカンから実質的になる、球状ゲル。