説明

球状ポリアミド粒子の製造方法

【課題】本発明は、ポリアミドの融点(例えばポリアミド12の場合174℃付近)以上の温度、例えば,180〜200℃に加熱した場合容易に流動化し、互いに溶融・融着して冷却により成型品とすることができ、静電塗装用途、粉体塗装用途、レーザー焼結によりプロトタイプを製作する用途に適した平均粒子径が10μm以上100μm以下の球状ポリアミド粒子を提供することにある。
【解決手段】ラウロラクタムをナフテン系溶剤に溶解し、100〜150℃の加温下、活性化剤として単官能イソシアネート添加して開環重合反応を行うことにより前記用件を満足する球状ポリアミド粒子を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装用途、粉体塗装用途、レーザー焼結などによりプロトタイプを製作する用途に有利に使用できる球状ポリアミド粒子の製造方法に関する。
より詳しくは、ポリアミド粒子をその融点以上に加熱した場合になるべく低い温度で流動化し融着する球状ポリアミド粒子の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラウロラクタムを原料とするポリアミド微粒子の製造方法は、既に特許文献1、2および3に記載されている。これらに記載の方法では反応の際、活性化剤として三塩化リンを用いているため生成したポリアミドの分子量が大きくなりすぎ、ポリアミドの融点以上に加熱しても流動性が十分でなく、ポリアミド粒子同士の融着が起こらない。したがって、これらの方法で得られたポリアミド粒子を用いて静電塗装、粉体塗装、レーザー焼結などによりプロトタイプを成型することは極めて困難であった。
【0003】
【特許文献1】特公昭47−25157
【特許文献2】特開2000−248061
【特許文献3】特開2005−307096
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、化粧品分野のみならず、静電塗装用途、粉体塗装用途、レーザー焼結によりプロトタイプを成型する用途にも使用できる平均粒子径が10μm以上100μm以下に制御され、かつポリアミド粒子をその融点以上に加熱した場合に従来よりも低い温度で流動化し、容易に成型品を作成することができるようなポリアミド粒子を得ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ラウロラクタムをナフテン系溶剤中に溶解させ、加温下活性化剤として単官能イソシアネートを用いることにより、得られるポリアミド粒子がその融点以上の温度に加熱した場合従来品より低い温度で容易に流動性を生じ、融着して成形品を与える、平均粒子径が10μm以上100μm以下に制御された球状ポリアミド粒子となることを突き止め、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は
(1)ナフテン系溶剤中、単官能イソシアネートの存在下ラウロラクタムを開環重合させる平均粒子径が10〜100μmの球状ポリアミド粒子の製造法、
(2)開環重合を金属石鹸および金属水素化物の存在下に行う(1)記載の球状ポリアミド粒子の製造法、
(3)ラウロラクタムに対して0.1〜2重量%の単官能イソシアネートを用いる(1)又は(2)記載の球状ポリアミド粒子の製造法、
である。
【0007】
本発明の球状ポリアミド粒子の製造方法について述べる。
まず、ナフテン系溶剤中にラウロラクタムを添加し加温下撹拌してラウロラクタムを溶解させる。粒子の安定化剤として金属石鹸を加え、触媒として金属水素化物を添加する。反応温度を100〜150℃、好ましくは110〜130℃として単官能イソシアネートを添加する。反応が完了した後、固液分離、乾燥することによって目的の球状ポリアミド粒子が得られる。
【0008】
本発明において用いる溶媒は、ラウロラクタムは溶解するが、生成ポリアミドを溶解せず、沸点が高く重合反応に影響を与えないナフテン系溶剤である。
ナフテン系溶剤は、たとえば炭素数4〜14程度の飽和単環または飽和縮合環炭化水素化合物を多く含み、原油蒸留の際の蒸留温度が150〜220℃の無色透明、低臭、低毒性の液体である。蒸留温度が150〜200℃のものがより好ましい。
市場で入手しうるものとしては、新日本石油製 ナフテゾイール160、200、シェルジャパン製ブライトゾル、エクソン化学製エクソールD−30、D−40などが挙げられる。
この溶剤を用いて重合反応を行うことにより、得られるポリアミド粒子はその融点以上の温度に加熱した場合従来品より低い温度で容易に流動性を生じ、融着して成形品を与える、平均粒子径が10μm以上100μm以下、特に20μm以上80μm以下に制御された球状ポリアミド粒子となる。
このナフテン系溶剤の使用量はラウロラクタムの通常1.5倍以上、好ましくは1.5〜5倍である。
【0009】
触媒として用いる金属水素化物は水素化ナトリウムが好ましい。その使用量はラウロラクタムの0.1%〜1重量%が好ましい。
【0010】
金属石鹸として炭素数10〜20の脂肪酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩が好ましく、ステアリン酸ナトリウムが特に好ましい。この金属石鹸の使用量は、ラウロラクタムの通常0.5〜10重量%、好ましくは、1〜5重量%である。
【0011】
重合温度は100〜150℃、好ましくは110〜130℃である。それ以下であるとナフテン系溶剤にラウロラクタムが溶解せず、それ以上では粒子同士の凝集が起こり好ましくない。
【0012】
単官能イソシアネートとしては、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ステアリルイソシアネートなどの脂肪族モノイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどの芳香族モノイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの芳香脂肪族モノイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートなどの脂環族モノイソシアネートなどが挙げられるが、それらは、複数を用いてもよい。それらの中でもフェニルイソシアネートが望ましい。
単官能イソシアネートの使用量は、ラウロラクタムの0.1〜2重量%、好ましくは、0.2〜1.5重量%である。添加する時期は、ラウロラクタムをナフテン系溶剤に完全に溶解し、液温が110℃以上、好ましくは110〜130℃になったときが好ましい。
反応時間は通常30分〜6時間、好ましくは1〜3時間である。
【0013】
反応容器の撹拌羽根の形状や撹拌速度等の撹拌条件を適切に選択することは生成ポリアミドの粒子系を適切なものにするためにも重要である。たとえば、重合反応液を十分撹拌するために、通常使用するモーター駆動型の撹拌装置を使用できる。撹拌羽根はプロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼などが使用できる。また必要に応じて、邪魔板や特殊な形状の撹拌羽根も使用できる。
【0014】
得られた重合反応液は、分散系全体をそのまま冷却するか、またはポリアミドを溶解せずに媒体を溶解する溶剤中に投入して冷却する。このようにして、ポリアミドの融点または軟化点、好ましくはガラス転移点より低い温度に冷却して反応を停止させると、平均粒子径10μm以上100μm以下の球状ポリアミド粒子を得ることができる。
【0015】
重合反応により得られたポリアミドを溶解せずに重合媒体を溶解する溶剤としては、例えばキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶剤、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類などをあけることができ、特にイソプロピルアルコールが好ましい。
【0016】
その後、濾過等の分離操作を行い、媒体中の球状ポリアミド粒子を単離する。このとき、必要に応じ単離したポリアミド粒子を上記溶媒で洗浄することにより、該ポリアミド粒子から重合溶媒、触媒、安定化剤等の不純物を完全に取り除くことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により得られる球状ポリアミド粒子は、10μm以上100μm以下に制御され、かつ得られたポリアミドの融点(例えばポリアミド12の場合174℃付近)以上の温度、例えば,180〜200℃に加熱した場合容易に流動し、互いに溶融・融着して冷却により成型品とすることができる。したがって、本発明の方法で製造された球状ポリアミド粒子は、静電塗装用途、粉体塗装用途、レーザー焼結によりプロトタイプを製作する用途での使用に適したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
温度計、滴下ロート、撹拌機、窒素ガス流入口をセットした1000mlステンレス製4つ口フラスコにナフテン系溶剤(エクソールD−40 エクソン化学製)を360g、ラウロラクタム210gを添加し、液温が113℃となるよう加熱した。ラウロラクタムは109℃にてナフテン系溶剤に完全に溶解した。続いてステアリン酸ナトリウムを4.25g加えた。続いて鉱油中の純度60%の水素化ナトリウム0.94gを添加した。30分後113℃にて活性化剤としてフェニルイソシアネート5.50gを添加した。その際、液温は125℃まで上昇した。そのまま125℃にて反応を1時間続けたのち冷却して反応を終了した。得たれたスラリーにイソプロピルアルコールを200g加え、よく撹拌したのち、ヌッチェ上で吸引濾過し固体液体分離を行った。この操作を3回繰り返し得られたポリアミドケーキを80℃にて48時間乾燥し球状ポリアミド粒子を得た。なお、本製造における収率は97%であった。また、得られた球状ポリアミド粒子の平均粒子径は45μmであった。DSC測定によるこのポリアミドの融点は174℃であった。
【実施例2】
【0020】
実施例1において活性化剤としてフェニルイソシアネートの代わりにステアリルイソシアネート9.05gを添加して球状ポリアミド粒子を得た。得られた球状ポリアミド粒子の平均粒子径は55μmで、収率は95%であった。融点は173℃であった。
[比較例1]
【0021】
実施例1において溶媒としてn−パラフィン系溶剤(ニッコーホワイトN−10 日鉱石油化学製)を使用した。液温が130℃になるまで加熱してもラウロラクタムがn−パラフィン系溶剤に溶解しなかった。
[比較例2]
【0022】
実施例1においてフェニルイソシアネート添加温度を132℃に変更した。液温は140℃まで上昇した。140℃にてさらに1時間反応して冷却して実施例と同様の操作で取り出したところ、数個〜数十個の粒子が凝集しており、得られたポリアミド粒子の平均粒子径は254μmで、収率は98%、融点は174℃であった。
[比較例3]
【0023】
実施例1において活性化剤として2官能イソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート2.90gを添加した。ヘキサメチレンジイソシアネートを添加して5分後に撹拌ができなくなり反応を中止した。冷却後反応系内を確認すると粒子は生成しておらず、大きな凝集物となりフラスコ壁面と撹拌棒に付着していた。
[比較例4]
【0024】
特開2005−307096の実施例1に記載させる方法にて行った。平均粒子径35μm、収率は95%、融点は168℃であった。
【実施例3】
【0025】
実施例1、実施例2、比較例2、比較例4で得られたポリアミド粒子各1gをガラス板上に直径3cmの円形になるよう敷き詰め、190℃雰囲気中で1時間放置したのち、取り出して冷却し外観を観察した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1、実施例2、比較例2の方法で得られたポリアミド粒子は190℃の雰囲気中でポリアミド粒子が溶融して融着し1枚の板状に成型されていた。一方、比較例4の方法で得られたポリアミド粒子は分子量が大きすぎるために、ポリアミドの融点以上の190℃雰囲気中に放置しても粒子が溶融せず、したがって粒子同士の融着も起こらず、粉っぽい外観のままであった。したがって表1から明らかなように実施例1、実施例2の場合にのみ、平均粒子径が10μm以上100μm以下に制御され、かつポリアミドの融点以上に加熱した場合に十分に溶融し、融着する球状ポリアミド粒子が得られることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の方法により得られる球状ポリアミド粒子は、10μm以上100μm以下に制御され、かつ得られたポリアミドの融点以上の温度、例えば,180〜200℃に加熱した場合容易に流動し、互いに溶融・融着して冷却により成型品とすることができる。したがって、本発明の方法で製造された球状ポリアミド粒子は、静電塗装用途、粉体塗装用途、レーザー焼結によりプロトタイプを製作する用途での使用に適したものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフテン系溶剤中、単官能イソシアネートの存在下ラウロラクタムを開環重合させる平均粒子径が10〜100μmの球状ポリアミド粒子の製造法。
【請求項2】
開環重合を金属石鹸および金属水素化物の存在下に行う請求項1記載の球状ポリアミド粒子の製造法。
【請求項3】
ラウロラクタムに対して0.1〜2重量%の単官能イソシアネートを用いる請求項1又は2記載の球状ポリアミド粒子の製造法。

【公開番号】特開2008−189895(P2008−189895A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28810(P2007−28810)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】