説明

環境の影響により引き起こされる試料の性質変化を検出する方法

環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化を検出する方法であって、(i)該試料を作用時間Δtの間に環境の影響に曝し、その場合にパターン関数M(x,y)に基づいている公知の位置依存性の強度分布I(x,y)(強度パターン)を用いて該環境の影響を該試料に作用させ、(ii)引き続いて、試料による分析放射の透過、反射又は散乱を該試料の位置座標(x,y)及び分析放射の波長λに従属して検出し、こうして透過、反射又は散乱された分析放射の強度を該試料の位置座標(x,y)及び波長λに従属して表す応答関数A(x,y,λ)を決定し、(iii)相関分析により、該環境の影響の公知の位置依存性の強度分布I(x,y)又はこの強度分布のベースとなるパターン関数M(x,y)と応答関数A(x,y,λ)との相関を決定し、その場合にこの相関は、該環境の影響により引き起こされる該試料の物理的に測定可能な性質の変化の尺度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化を検出する方法に関する。
【0002】
染料、顔料、塗料、紫外線安定剤及び日焼け止め剤の工業的製造のためには、製品の耐光性を熟知することは決定的に重要である。目下のところ、該製品の耐光性は、該製品に分光分布が地表での太陽光の分光分布に相当する光が照射されることによって測定される。照射後に変色は基準系を用いて定量化される。この手順にとって不利であるのは、多くの製品の場合に変色を識別可能にするために必要である、一部では極めて長い照射時間である。例えば、関連DIN規格によれば照射時間は1000h及びそれ以上である。極めて耐候性の試料については、照射時間は10〜50年である。引き続いてカラースケール、例えばブルーウールスケールと比較対照される。さらにこの手順にとって不利であるのは、ヒトが評価を行わなければならず、故にこの評価が主観的な印象により決定されることである。
【0003】
特に長い露光時間を必要とする試料の例は、ファサード塗料(Fassadenfarbe)、高速道路標示、建物用のシーリング材料、電気的絶縁体、屋根瓦及び安全板ガラス(Sicherheitsscheiben)である。別の試料は、露光もしくは耐候性についての次の規格において挙げられる。
【0004】
人工日光を用いる耐候性についての関連規格は、プラスチックについてのISO 4892 (1994)、塗料及び塗膜についてのISO 11341 (1994)、装置中での塗膜についてのISO 11507 (1997)、道路車両(Strassenfahrzeuge)安全板ガラスについてのISO 3917 (1999)、地上建築物−目地材についてのISO 11431 (2002)、繊維製品−色堅ろう度試験についてのISO 105-B02 (1994)及び繊維製品−色堅ろう度−耐候性についてのISO 105-B04 (1994)である。
【0005】
直接暴露についての関連規格は、ASTM G7、ISO 877、ISO 2810、ASTM D4141 C(ブラックボックス)及びASTM G24(アンダーグラス暴露)である。
【0006】
必要な照射時間を減少させることを目指して、製品にしばしば日光の強度の数倍が照射される。しかしながら、高められた照射強度を用いて測定された耐光性が、しばしば自然条件下に存在する耐光性と一致しないことがわかっている。言い換えれば、照射された試料中で生じた変色ΔFは、強度I及び照射時間Δtからなる放射線量(Strahlendosis)Sと呼ばれる積だけでなく、明示的に放射の強度Iにも依存する、ΔF=f(S,I)。
【0007】
本発明の課題は、自然条件から逸脱する照射強度が使用される必要なく、光により誘導される試料の変色が、短い照射時間後に既に測定されることができる測定法を提供することである。
【0008】
前記課題は、環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化を検出する方法であって、
(i)該試料を作用時間Δtの間に該環境の影響に曝し、その場合に、パターン関数M(x,y)に基づいている公知の位置依存性の強度分布I(x,y)(強度パターン)を用いて該環境の影響を該試料に作用させ、
(ii)引き続いて、該試料による分析放射の透過、反射又は散乱を位置座標(x,y)及び分析放射の波長λに従属して検出し、こうして透過、反射及び/又は散乱した分析放射の強度を該試料の位置座標(x,y)及び波長λに従属して表す応答関数A(x,y,λ)を決定し、
(iii)相関分析により、該環境の影響の公知の位置依存性の強度分布I(x,y)又はこの強度分布のベースとなるパターン関数M(x,y)と、応答関数A(x,y,λ)との相関を決定し、その場合にこの相関は、該環境の影響により引き起こされる、該試料の物理的に測定可能な性質の変化の尺度である
ことによって、環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化を検出する方法により解決される。
【0009】
第一工程(i)において、検査すべき基体表面は環境の影響に曝される。本発明の範囲内での環境の影響は、物理的に測定可能な性質を変えるのに適している、該試料への任意の外的作用である。本発明の範囲内での環境の影響は、基体表面上への、光又は−より一般的には−放射、機械力、化学薬品、ガス、微生物、放射線(radioaktiver Strahlung)、音(例えば超音波)及び熱の作用を含む。該環境の影響は、例えば基体表面への照射又は暴露(Bewitterung)によるか又は基体表面へ化学薬品を施与することにより引き起こされうる。その場合に、“化学薬品”は、基体表面又はそれらの成分と反応しうる、全ての物質又は物質混合物(例えば化粧品も)のことを意味している。環境の影響は、例示的に挙げられた複数の外的作用の相互作用も含みうる。例えば、光酸化の場合に光及び大気酸素は相互作用する。屋外における耐候試験の場合に、暴露された試料は一般的に、光、化学薬品(水、酸等)、ガス、微生物、熱の作用及び機械的作用(風、雨)に曝されている。
【0010】
本発明の範囲内で物理的に測定可能であるのは、該試料と、該試料上又は該試料中へ射し込んだ分析放射との相互作用を介して把握可能である基体表面の性質である。分析放射は、該試料と相互作用することができ、かつ該試料により透過、反射又は散乱されることができるそれぞれ任意の放射であってよい。例は電磁放射線、粒子放射線(中性子、放射性のα線又はβ線)又は音響放射(例えば超音波)である。
【0011】
試料の概念は極めて広義に捉えられており、かつ一般的に、故意に特定の環境の影響に曝されることができる対象物を含む。例えば、試料は、顔料層の耐光性を検査するために紫外放射に曝される顔料層でコートされた基体であってよい。試料は、除草剤又は殺真菌剤の有効性を検査するために、これらで処理され、かつ後で空から撮影される田畑(Feld)であってよい。ファサードコーティングの耐摩耗性又は耐候安定性が検査されるべきである場合には、試料は、自然暴露されたか又はサンドブラストに曝された建物壁であってよい。
【0012】
単に表面的な性質変化は、環境の影響により誘導され、引き続き検出されることができる。しかしまた試料の内部での性質変化は、環境の影響により誘導され、引き続き検出されることができる。後者は、環境の影響及び使用される分析放射についての試料の透過性にも依存する。放射は、例えば表面的に反射又は散乱されることができるか、又はしかし試料を完全に貫通することもできる。放射は、適している装置によって該試料の内部の平面上へ焦点合わせされ、ひいてはこの平面中の性質変化が検出されることもできる。
【0013】
本発明による方法の一実施態様において、試料の表面が検査される。以下に、“基体表面”という概念はまた、試料の検査すべき表面にも使用される。その場合に該概念は、試料の幾何学的に理解される表面だけでなく、試料のこの幾何学的表面の下にあるより深い層も含み、これらの層はさらに、選択された物理的方法を用いる測定に利用可能である。
【0014】
本発明の本質的な特徴は、試料の性質を変えるのに適している環境の影響を、特定の、公知の位置依存性の強度分布I(x,y)を用いて該試料に作用させることである。言い換えれば:試料又は基体表面への環境の影響の作用は均一ではなくて、強度パターンを有する。この強度パターンは、単純な幾何学的なパターン、例えば帯状パターン(Streifenmuster)又はチェス盤(Schachbrett)−パターンであってよい。しかしまた強度パターンは完全に不規則であってもよい。
【0015】
試料もしくは基体表面に作用する環境の影響が、特定の波長を有するか又は特定の分光分布を有する光である場合には、強度は、W/cmで測定される放射強度と同等に扱われるべきである。作用する環境の影響が、例えば基体表面がサンドブラストに曝されることにより引き起こされる機械力の作用である場合には、この環境の影響の強度は、単位時間及び単位面積当たり基体表面上へ衝突する砂粒子の数と同等に扱われることができる。作用する環境の影響が化学薬品又はガスの作用である場合には、この環境の影響の強度は、基体表面の位置での特定の物質の濃度と同等に扱われることができる。作用する環境の影響が微生物の作用である場合には、この環境の影響の強度は、単位面積当たりの微生物の数と同等に扱われることができる。
【0016】
一般的に、強度パターンは、特定の、本質的には一定の強度を有する領域を有し、そのうえ、環境の影響の強度はほぼゼロか又はゼロに等しく、すなわち本質的には基体表面への作用が行われない領域を有するであろう。これらの領域は、好都合には単純な幾何学的なパターンを形成する。しかしまた低い強度の領域と高い強度の領域との間で連続的な強度プロフィールも可能である。
【0017】
環境の影響の強度パターンは好ましくは、環境の影響を、特定の位置依存性の透過関数T(x,y)(透過パターン)を有する1つ又はそれ以上のマスクを通して試料又は基体表面に作用させ、こうして位置依存性の強度分布I(x,y)をマスクの像として該試料又は基体表面上に生じさせることによって生じる。この場合に、強度パターンI(x,y)のベースとなるパターン関数M(x,y)は、マスクの透過関数T(x,y)に相当する。
【0018】
透過関数T(x,y)は、環境の影響についてのマスクの位置依存性の透過性を記載する。作用する環境の影響が光である場合には、該マスクは例えば光に対して本質的には透明なフィルムからなっていてよく、このフィルムはパターンを印刷されて有し、その場合に印刷された領域は特定の波長又は特定の波長範囲の光に対してより僅かな透過を有するか、又は本質的には不透明である。このフィルムは、試料上又は試料中への照射の際に相応する強度パターンを発生させるために、試料上へ載置されることができる。作用する環境の影響が、基体表面上へのサンドブラストにより引き起こされる機械的作用である場合には、マスクは穴部(Aussparungen)を有するテンプレートであってよく、この穴部を経てサンドブラストが基体表面に作用することができるが、しかしこのテンプレートはそれ以外では基体表面をカバーし、かつサンドブラストによる作用から保護する。作用する環境の影響が、化学薬品、ガス又は微生物の作用である場合には、マスクは同じように穴部を有するテンプレートであってよい。化学薬品又は微生物の場合に、これらを含んでいる調合物はテンプレート上へ塗布されることができる。テンプレートによりカバーされる基体表面の領域は、ついで調合物の作用から保護されるのに対して、テンプレートの穴部中の基体表面は調合物と接触する。屋外における耐候試験の場合に最終的にテンプレートによりカバーされている基体表面の領域は、全ての関連する環境の影響(光、化学薬品、ガス、微生物、機械的作用)から保護される。また放射線(α線、β線)を、十分な遮へい作用を有するテンプレートの使用下にパターン状に試料に作用させることができる。
【0019】
しかしまた、強度パターンを、マスクを使用せずに試料又は基体表面上へ施与することも可能である。例えば、試料への光の作用の際に強度分布I(x,y)は回折パターンとして試料上へ生じることができる。化学薬品及び/又は放射性物質は、テンプレートを使用しなくともパターン(これはパターン関数により記載される)として基体表面上に施与されることもできる。
【0020】
試料が降雨を受ける(beregnet)場合には、強度パターンはマイクロノズル配置又は雨保護格子(Regenschutzgitters)の使用下に発生されることができる。環境の影響が、試料への熱的作用である場合には、強度パターンは電熱線配置により発生されることができる。該配置又は該格子は、相応するパターン関数により記載される。機械的な振動パターンは定常の音波により空洞共振器中で発生されることができ、その場合に体積振動又は表面振動が励起されることができる。自然の音暴露(Beschallung)の際に、音を吸収する格子が使用されることができる。
【0021】
該試料は特定の作用時間Δtの間に環境の影響に曝される。該作用時間Δtは、環境の影響の種類及び強度に依存し、かつ秒、分、時間又は日、例えば1秒ないし10日であってよい。
【0022】
第二工程(ii)において、環境の影響に曝されていた試料は物理分析される。そのために、該試料による分析放射の透過、反射又は散乱は試料の位置座標(x,y)に従属して検出される。該分析放射は、離散した波長、例えば5.8μm(1720cm−1に相当)でのCO−バンドの波長を有していてよいか、又はしかし波長範囲、例えば400〜800nmの全可視分光範囲を含んでいてよい。該試料による分析放射の透過、反射又は散乱は一般的に分析放射の波長に依存している。それゆえ、透過、反射又は散乱された分析光の強度を位置座標(x,y)及び波長λに従属して表す応答関数A(x,y,λ)が得られる。この応答関数は、離散した波長λについて又は1つもしくはそれ以上の波長範囲Δλ(例えば可視光線の赤色範囲、緑色範囲及び青色範囲)について決定されることができる。
【0023】
分析放射の波長又はその分光組成は、検査される試料及び当該の問題提起に依存する。しばしば、該スペクトルのUV−VIS及び/又はNIR−範囲内の分析光が該当するであろう。例えば、着色剤の耐光性、すなわちヒトの眼で知覚可能である試料の着色の変化が検査されるべきである場合には、分析光は本質的には日光の分光組成を有するか又は日光であろう。例えば、プラスチックのCO数の決定によりプラスチックの光誘導された老化が検査されるべきである場合には、分析光は波長5.8μmのNIR−光であろう。紫外線吸収剤の安定性が検査されるべきである場合には、分析放射はUVA−及び/又はUVB−光を含むであろう。
【0024】
使用される測定構成も検査される試料及び問題提起に依存する。基体表面、例えば塗料表面の光沢挙動が分析されるべきであるような場合には、このためには試料のより深い層からの散乱の影響を大幅に取り除くテレセントリック測定光学(telezentrischen Messoptik)の使用が適している。これに対して、着色剤の耐光性が検査されるべきである場合には、このためには光沢の妨げとなる影響を大幅に抑制する共焦点の測色系の使用が適している。
【0025】
本発明による方法の一実施態様において、分析光の反射は基体表面により測定される。その場合に好ましくはテレセントリック測定光学が使用される。本発明による方法の別の実施態様において、基体表面による分析光の散乱が検出される。その場合に、好ましくは共焦点の測色系が使用される。
【0026】
基体表面による分析放射の反射又は散乱は位置座標(x,y)及び波長λに従属して、カラースキャナー又はデジタルカメラを用いても検出されることができる。
【0027】
放射線又は音響放射(超音波)の検出は、医学的診断学から公知のイメージング法を用いて行われることができる。熱赤外放射は熱画像カメラ(Waermebildkamera)を用いて検出されることができる。
【0028】
環境の影響により誘導される試料の変化をより良好に検出可能にするために、試料は後処理にかけられることができる。試料の親水性又は疎水性の変化は、例えば、試料が水蒸気でスチーミングされることによって、より良好に検出可能にされることができる。
【0029】
検出された強度値から、応答関数A(x,y,λ)は一般的にデジタル画像評価系を用いて決定される。
【0030】
環境の影響が、波長λを有する放射の作用にある場合には、試料上にか又は試料中に生じた強度パターンは、一般的に該放射の波長の関数でもある。位置依存性及び波長依存性の強度関数I(x,y,λ)のベースとなるパターン関数M(x,y,λ)は、例えば、強度パターンを発生させるために使用されるマスクの位置依存性及び波長依存性の透過関数T(x,y,λ)であってよい。
【0031】
本発明による方法の一実施態様において、
(i)試料を作用時間Δtの間に環境の影響に曝し、その場合に該環境の影響は放射であり、かつパターン関数M(x,y,λ)に基づいている公知の位置依存性及び波長依存性の強度分布I(x,y,λ)(強度パターン)を用いて該環境の影響を該試料に作用させ、
(ii)引き続いて、該試料による分析放射の透過、反射又は散乱を該試料の位置座標(x,y)及び該分析放射の波長λに従属して検出し、こうして透過、反射及び/又は散乱された分析放射の強度を該試料の位置座標(x,y)及び該分析放射の波長λに従属して表す応答関数A(x,y,λ)を決定し、
(iii)相関分析により、該環境の影響の公知の位置依存性及び波長依存性の強度分布I(x,y,λ)又はこの強度分布のベースとなるパターン関数M(x,y,λ)と、応答関数A(x,y,λ)との相関を決定し、その場合にこの相関は、該環境の影響により引き起こされる、該試料の物理的に測定可能な性質の変化の尺度である。
【0032】
第三工程(iii)において、相関分析により、該環境の影響の公知の位置依存性の強度分布I(x,y)もしくはI(x,y,λ)又はこの強度分布のベースとなるパターン関数M(x,y)もしくはM(x,y,λ)と、工程(ii)において決定された応答関数A(x,y,λ)との相関が決定される。
【0033】
相関分析は、特徴的なパターンを識別するためのそれ自体として公知の数学的方法である。相関分析の方法は文献に詳しく記載されている。試料の(測定された)応答関数が比較関数とどの程度まで相関するかが検査される。
【0034】
そのためには超相関関数が計算される:
【0035】
【数1】

α、βは自由選択可能なスケーリングパラメーターであり、x、yは自由選択可能な位置パラメーターである。前記の方程式は、積分が2つの座標について、しかし、もしかすると1つの座標についてのみ実施されることが理解されるべきである。測定範囲を超える変数のV及びAの値は、0に等しく定められる。
【0036】
相関関数は、応答関数A(x,y,λ)が比較関数V(αx+x,βy+y,λ)とどの程度まで相関関係にあり、かつこの相関が、その変数が変化される場合にどれだけ大きく変わるか、すなわち相関がどれだけ有意であるかについての情報を与える。
【0037】
比較関数V(αx+x,βy+y,λ)の選択は、検査すべき問題提起に依存する。比較関数は、強度分布I(x,y,λ)又はこの強度分布のベースとなるパターン関数M(x,y,λ)又はまた強度分布I(x,y,λ)とパターン関数M(x,y,λ)とからの積と同一であってよいが、しかし同一である必要はない。比較関数は一般的に、環境の影響による試料又は基体表面の期待されうるか又は探索される性質変化を記載する。しかしこの性質変化は期待に応じて環境の影響の強度分布の特徴的なパターンを有する。当業者は、検査すべき問題提起に相応して適している比較関数を選択するであろう。
【0038】
例えば、光を照射することにより行われた表面の反射変化が検査されるべきである場合には、比較関数は、そのx−y−依存性が、公知の位置依存性の強度分布I(x,y,λ)又はベースとなるパターン関数M(x,y,λ)の公知のx−y−依存性又は強度分布I(x,y,λ)とパターン関数M(x,y,λ)とからの積に相当するように選択されるべきである。比較関数は、明示的な波長依存性を有している必要はない。しかし例えば、変色が検査されるべきである場合には、比較関数は、場合によりヒトの知覚を考慮して選択される波長依存性を有するであろう。
【0039】
相関関数は、所望の、すなわち環境の影響により引き起こされる試料の変化のみを写し、かつ有効に妨害する影響、例えばランダム雑音、試料不均質性及び外部光の影響を抑制する。このことから極めて高い感度がもたらされる。
【0040】
一般的な相関分析の好ましい一変法はフーリエ分析である。
【0041】
本発明による方法の一実施態様において、強度分布I(x,y,λ)は空間周波数αを有する周期性の強度分布である。周期性の強度分布は、周期性の透過関数T(x,y,λ)=M(x,y,λ)を有するマスクが使用されることによって発生されることができる。これは、例えばいわゆるバーコード−マスク、例えば規則的に(等距離で)配置されている、(大幅に)不透明な棒(いわゆる黒/白−バーコード−マスク)の印刷を有する透明フィルム、又は相応する一連の長方形の穴部を有するテンプレートであってよい。マスクを使用する代わりに、相応するパターン関数M(x,y,λ)を有する光学格子が試料上に投射されることもできる。
【0042】
例示的に、以下に、位置依存性の強度分布I(x,y,λ)と応答関数A(x,y,λ)との間の相関を決定するための相関分析の方法が記載される。相関分析の方法はそれ自体として公知であり、かつ文献に詳しく記載されている。故に本発明は、また、そのような数学的方法を提供することではない。
【0043】
マスクの透過関数が周期性構造を有する場合には、特に明快な状況となる。例えば、透過関数
【0044】
【数2】

を選択し、引き続いて試料の耐光性を決定したい場合には、V(x,y,λ)=I(x,y,λ)=T(x,y,λ)なので次のことが当てはまる:
【0045】
【数3】

【0046】
それゆえ相関関数は定数を含め、応答関数の実部の(reelle)フーリエ変換である。それゆえαは、空間周波数と解釈されることができる。さらに、K(α,β,x,y,λ)はマスクの固有周波数αの場合にのみ、照射により引き起こされる寄与を示す。他の全ての空間周波数α≠αの場合に、相関関数は消失する。それゆえ、無限に高い空間周波数−分解能α/Δαが得られる。
【0047】
しかしながら実地において、有限の試料の大きさxmaxに基づいて、積分が負の無限大から正の無限大まで実施されることができないことが考慮されるべきである。さらに、連続的に測定されるのではなくて、応答関数は、限定された数の支持点を用いてデジタル化される。支持点の密度から、なお測定可能な空間周波数の上限がもたらされる。それに対して、有限の試料の大きさから、α/Δα=α・xmaxにより与えられている有限の空間周波数−分解能α/Δαがもたらされる。
【0048】
このことは、統計学的方法(信号雑音)により引き起こされる妨害が、無限に高い空間周波数−分解能の場合よりも、あまり有効に抑制されないことを意味する。しかしながら実地において、これらの制限にもかかわらず本発明による方法が、目視検査と比較して100倍を上回るより高い感度を有することがわかっている。
【0049】
こうして算出された相関は、環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化についての、定量的であり、かつ主観的な評価から独立した尺度である。
【0050】
相関分析を用いるパターン識別から、環境の影響により試料中又は基体表面上に引き起こされる変化の検出の極めて高い感度がもたらされる。この感度は、試料の目視評価(例えば比較試料に基づく)に基づくそれぞれの方法の場合よりも、はるかにずっと高い。
【0051】
本発明による方法の一実施態様において、散乱又は反射された光の強度値は波長範囲Δλに亘って合計され、かつ複数の異なる波長範囲Δλ、Δλ、Δλ、...について複数の異なる応答関数A(x,y,Δλ)、A(x,y,Δλ)、A(x,y,Δλ)、...が決定され、かつその都度、環境の影響の公知の強度パターンI(x,y)又はI(x,y,λ)と相関関係にある。こうして、例えば、特定の波長の場合に又は特定の波長範囲内で、試料又は基体表面の吸収特性の変化に表れる、試料又は基体表面の特定の性質に環境の影響がどの程度まで作用するのかが決定されることができるのに対して、これは他の波長の場合に又は他の波長範囲内で、試料又は基体表面の吸収特性に表れるであろう他の性質に関係しないままである。
【0052】
本発明による方法の一実施態様において、応答関数は赤色光、緑色光及び青色光についてRGB−分析によりその都度決定される。これは、基体表面により反射又は散乱された光の強度値が赤色、緑色及び青色の波長範囲について、すなわち例えば600〜700nm(赤)、500〜600nm(緑)及び400〜500nm(青)の波長範囲について合計され、かつ相応する応答関数がこれらの波長範囲のそれぞれについて算出されることによって行われる。引き続いて、これらの応答関数のそれぞれは、環境の影響の強度パターンI(x,y)もしくはI(x,y,λ)又は相応するパターン関数と相関されることができる。例えば、着色剤の耐光性が検査されるべきである場合には、このようにして、着色剤−試料により散乱された光の赤色−、緑色−及び青色−成分が(例えば太陽光を)照射した後にどれだけ変わり、かつそれにより着色剤の色の印象がどれだけ変わるのかが算出されることができる。
【0053】
例えば、基体表面は格子フィルムを通して照射されることができる。照射後に格子フィルムは除去され、かつ基体表面はスキャナーを用いてスキャンされる。引き続いて照射された基体表面のR−、G−、B−信号は、以下に記載された方法により一次元のフーリエ変換にかけられる。スキャナーにより測定された強度はS(k,m)で示される。この場合に、示数jはR−、G−、B−カラー(赤、緑及び青)を示す。それに対して大きさk及びmは、強度が測定された位置を示す。k又はmにより示された方向は、以下に画像行又は画像列と呼ばれる。数学的演算
【0054】
【数4】

を用いて、それぞれの画像行についてパワースペクトルP(k′,m)が計算される。
【0055】
こうしてそれぞれの画像行について得られたパワースペクトルは全ての画像列に亘って平均される。
【0056】
【数5】

【0057】
引き続いて、
【0058】
【数6】

は、空間周波数k′についてプロットされる。基体表面の色の光化学的に誘導された変化は、チャンネルR、G、B中で、フィルム格子により規定された空間周波数で、平均したパワースペクトルの明らかにより高い強度が確認されることができることにより、一義的に識別されることができる。個々のチャンネルR、G、B中のこの強度の高さは、光化学的に生じる変色の尺度である。
【0059】
試料をより詳細に検査するためには、前記の数学的演算の結果はより正確に考察される。パワースペクトルに加えて、目下、
【0060】
【数7】

の符号も考慮される。雑音抑制のためには、この場合にまた、全ての測定された画像行に亘って
【0061】
【数8】

平均される。V(k′)は、環境の影響が、スキャナーにより測定された信号の増加(V(k′)>0)又は減少(V(k′)<0)をもたらしたかどうかについての情報を与える。
【0062】
当該方法を用いて検査されることができる基体表面は、任意の材料の表面、例えばプラスチック、木材、塗料及び紙の表面である。
【0063】
基体材料自体、例えばプラスチックの性質の変化又は基体材料中へ導入されているか又はこれらの上に施与されている物質、例えば着色剤、紫外線吸収剤、安定剤、化粧品の性質の変化が検査されることができる。
【0064】
本発明の一態様は、5.8μmでのCO−バンドの位置解像された検出による、プラスチックの熱的な又は光誘導される老化を検査するための本発明による方法の使用である。このためには、とりわけDIN 53383に記載されているような、プラスチックであるポリエチレンについて例えば4.95μm(2020cm−1に相当)である特定の基準吸光度に対する5.8μmでの吸光度の比が形成される。
【0065】
同じように、任意の別の物質の熱的な又は光誘導された(光酸化的な)老化は検査されることができる。故に、本発明の更なる態様は一般に、物質の光誘導されたか又は光酸化的な老化を検査するための本発明による方法の使用である。検査すべき物質は、例えば着色剤で着色されたかもしくは未着色のプラスチック、塗料、金属、繊維製品(Textilien)、紙、木製品又は建築材料である。
【0066】
光誘導された老化の検出は、当該の物質の適しているスペクトルバンドを用いて行われる。これらは、スペクトルのIR−又はUV−VIS−範囲内であってよい。
【0067】
本発明の一態様は、着色剤の耐光性を測定するための本発明による方法の使用でもある。着色剤は染料又は顔料であってよい。その場合に、着色剤を含有する基体表面に、好ましくは太陽光又はソーラーシミュレーターからの光がマスクを通して照射されるようにして行われることができる。マスクは、好ましくは空間周波数を有する規則的な透過関数を有し、かつ特に好ましくは一次元の空間周波数αを有する黒−白−バーコード−マスクである。マスクは、基体表面上へ載置されることができるか又は光源の前に取り付けられ、かつ適している光学を用いて基体表面上に投射されることができる。しかしまた、強度パターンを回折パターンとして基体表面上に発生させることも可能である。適しているソーラーシミュレーター及び太陽光に相応する発光スペクトルを有する光源は当業者に公知であり、かつ例えばキセノン−ランプを含む。試料に屋外試験において、太陽光が、直接にか又は鏡の系を用いて間接的に適している耐候安定な金属マスクを通して照射されることもできる。照射強度は、400nmまでの波長範囲内の紫外線については例えば20〜2000W/mであり、かつ400〜800nmの可視の分光範囲内の光については500〜5000W/mであり、特に紫外線については約50W/mであり、それゆえ自然の太陽光の放射強度に相当する。照射期間(作用時間Δt)は、数秒間から数年間までであってよい。極めて耐候性の又は耐候安定な試料のためには、この期間は一般的に1週間ないし数ヶ月間である。着色剤の耐光性を決定するための本発明による方法は、試料の変色を定量的に検出可能にするために、自然の放射強度での比較的短い照射期間で既に十分であることに傑出している。照射後に、(場合により)マスクは除去され、かつ基体表面はスキャナーを用いてスキャンされるか又はデジタルカメラを用いて撮影される。引き続いて、画像評価電子技術を用いて、好ましくはRGB−分析が実施され、かつ応答関数は赤色光、緑色光及び青色光について決定される。これらは、最終的に照射の公知の強度パターンと相関関係になり、その場合に相関分析として好ましくはフーリエ分析が実施される。マスクの空間周波数(又は強度分布I(x,y,λ)の空間周波数)での赤色光、緑色光又は青色光についての相関関数のピークは定量的に、照射に起因されうる、基体表面により散乱された光の赤、緑又は青の色成分の変化に相当する。
【0068】
本発明の別の態様は、基体表面の光沢挙動の変化を測定するための本発明による方法の使用である。検査すべき基体表面は、例えば塗料表面、好ましくは自動車塗料の表面である。例えば、環境の影響がどの程度まで、基体表面の光沢挙動の変化に表れる基体表面の機械的損傷をまねくのかが検査されることができる。例えば塗料層中で割れ又は空洞が形成されうる。そのような変化を検出するために、分析光の反射はテレセントリック照明光学及び検出光学を用いて測定される。テレセントリック測定配置の使用により、試料が平行な分析光で照らされ、かつ平行な光のみが検出されることが保証される。それにより、専ら試料の光沢挙動の変化が検出され、かつ試料の色の考えられる変化は抑制される。
【0069】
特定の国家において特許の保護から排除されている場合に、これらの国家において発明として特許の保護が請求されない、本発明による方法の別の態様は、環境の影響により、例えば化粧品によるか又は一般的にアレルゲン性物質により引き起こされる、ヒト又は動物の皮膚のアレルギー性の皮膚刺激の診断である。本発明による方法により、アレルギー性の皮膚刺激の早期発見が、皮膚刺激が眼で知覚可能になるさらにずっと前に可能である。
【0070】
本発明による方法の別の態様は、農業において使用される農薬、例えば肥料、殺真菌剤、除草剤及び殺虫剤の有効性の検査である。基体表面は、ここでは有用植物が植えられている地表の一部であり、該環境の影響は、土壌への化学薬品の導入又は有用植物への化学薬品の施与である。農薬の導入もしくは施与は、パターン関数M(x,y)により記載される特定のパターンに従う。(場合により規則的な間隔で)こうして処理された田畑から、航空写真が撮影され、これはデジタル加工され、かつ、場合によりRGB−分析後に、パターン識別のために相関分析にかけられる。
【0071】
本発明の別の態様は、物質の耐候安定性、物質の耐薬品性又はコーティングの耐摩耗性を検査するための本発明による方法の使用である。
【0072】
例えば、本発明による方法は、人工日光を用いる耐候性について又は直接暴露についての関連規格に記載された方法と組み合わせて使用されることができる。関連規格は、例えばプラスチックについてのISO 4892 (1994)、塗料及び塗膜についてのISO 11341 (1994)、装置中での塗膜についてのISO 11507 (1997)、道路車両−安全板ガラスについてのISO 3917 (1999)、地上建築物−目地材についてのISO 11431 (2002)、繊維製品−色堅ろう度試験についてのISO 105-B02 (1994)及び繊維製品−色堅ろう度−耐候性についてのISO 105-B04 (1994)並びに直接暴露についてのASTM G7、ISO 877、ISO 2810、ASTM D4141 C(ブラックボックス)及びASTM G24(アンダーグラス暴露)である。
【0073】
例えば、金属格子は本発明の範囲内でテンプレートとして簡単に、とりわけ次の暴露装置もしくは露光装置及びボックス中で有利に使用されることができる:
・人工の露光又は暴露のための商業的に既に入手可能な全ての装置中で(例参照);
・屋外暴露の場合に例えば(例えばATLAS社の)“ブラックボックス”中で;
・アンダー−グラス−露光のための(例えばATLAS社の)露光室中で;
・太陽運行の自動追跡を有する暴露装置、例えばアリゾナ及びフロリダにおけるATLAS社のIP/DP-ボックス中で;
・適している鏡系による促進された降雨(Beregnung)及び太陽露光を有する屋外暴露設備中で(例えばATLAS社のEMMA/EMMAQUA)。
【0074】
本発明は、次の例によってより詳細に説明される。
【0075】
実施例
照射実験を次のように実施した:
試料面積は、他に書かれていない限り、8×8cmであった。
【0076】
1mmの周期長さを有する格子構造を有していたAGFA-フィルム(タイプ3ZESP)からなる格子フィルムを試料上に置き、TESA-フィルムを用いて固定した。照射すべき試料は、格子フィルムと一緒に堅い厚紙上に固定した。フィルム、試料及び厚紙からなるスタックに、付加的に3mm厚さの石英ガラス板の重しをのせた。
【0077】
ドイツトウヒ材試料(Fichtenholzprobe)(例1)を除いて、全ての試料スタックを屋外条件下でATLAS社の市販のサンテスター(SUNTEST XLS Plus)中で露光した。
【0078】
照射後に格子フィルムを除去した。露光された試料を、露光された側で下へ向かってスキャナー(HP SCAN-JET 550 C)の対物ガラス上に置き、次の条件下にスキャンした:
トゥルーカラー(True Colour) (16.7万色)
解像度:1200dpi
コントラスト:中
色:自動
露光:自動
格子フィルムを同様にスキャンした。
【0079】
引き続いて照射された試料面積のR−、G−、B−信号を、以下に記載される方法により一次元のフーリエ変換にかけた。スキャナーにより測定された強度をS(k,m)で示す。この場合に、示数jはR−、G−、B−カラー(赤、緑及び青)を示す。それに対して大きさk及びmは、強度が測定された位置を示す。k又はmにより示された方向は、以下に画像行又は画像列と呼ぶ。数学的演算
【0080】
【数9】

を用いて、それぞれの画像行についてパワースペクトルP(k′,m)を計算した。
【0081】
こうしてそれぞれの画像行について得られたパワースペクトルを全ての画像列に亘って平均した。
【0082】
【数10】

【0083】
図1、図2、図4及び図6には、その都度
【0084】
【数11】

が空間周波数k′についてプロットされている。光化学的に誘導された変色は、チャンネルR、G、B中で、フィルム格子により規定される空間周波数で、平均したパワースペクトルの明らかに高められた強度が確認されることができることにより、一義的に識別されることができる。個々のチャンネル中でのこの強度の高さは、光化学的に生じる変色の尺度である。図中にx−軸又はy−軸上にプロットされた大きさは、平均したパワースペクトルの空間周波数又は強度に比例している。
【0085】
例1
15×10cmの大きさの明るいドイツトウヒ材パネルに、屋外条件下に空間周波数1/mmを有する格子フィルムを通して太陽光を15分間照射した。
【0086】
露光後にフィルム格子を取り去り、木材表面を目視で鑑定した。眼で試料表面の変化は確認されることができなかった。特に格子パターンは眼で知覚可能ではなかった。
【0087】
一次元のフーリエ変換の結果は、露光されたドイツトウヒ材パネルについて図1に及び格子フィルムについて図2に示されている。
【0088】
図2から識別可能な43の格子の空間周波数の場合に、図1において青色チャンネル中で極めて高いフーリエ−信号ピーク、緑色チャンネル中で中程度のフーリエ−信号ピーク及び赤色チャンネル中で相対的に小さなフーリエ−信号ピークが確認されることができる。このことは木材表面の褐変に相当するが、しかしこれは目視限界をはるかに下回る。
【0089】
信号高さは、小さな作用、例えば雑音等をより良好に目に見えるようにするために、対数でプロットされている。故に得られたフーリエ−信号ピークは絶対的に極めて高い。
【0090】
例2
a)従来の露光(比較)
型式HP 2000 Cのインクジェット−プリンタを用いて、表面カバーする(flaechendeckender)マゼンダ印刷をオーバーヘッド−フィルム上に印刷した。この印刷に、屋外条件下にATLAS社のサンテスターXLS Plus中で1日間照射した。照射開始前(時点t)並びに8時間(時点t)又は24時間(時点t)の照射時間後にフィルムを透過分光法により検査した。結果は図3に示されている。その場合に、透過[%](y−軸)は波長[nm](x−軸)についてプロットされている。
【0091】
時点t、t又はtでの透過スペクトルから取り出されることができるように、緑色の分光範囲内の透過は照射の過程で明らかに増加する。それに対して青色及び赤色の分光範囲内で透過の(より少ない)減少が観察される。
【0092】
全体として、典型的には彩色的に(koloristisch)評価される、眼でも知覚可能な明るさの増加(Aufhellung)がもたらされる。
【0093】
b)格子露光(本発明による)
a)において使用されたフィルムと同一のマゼンダフィルムに、前記の格子フィルムを通して人工太陽光を照射した。露光時間は10分に過ぎなかった!
露光されたフィルムのスキャンされた画像の一次元のフーリエ分析の結果は図4に示されている。
【0094】
格子フィルムの空間周波数で、緑色チャンネル(上の曲線)中で大きい信号ピーク、青色チャンネル(下の曲線)中で小さい信号ピーク及び赤色チャンネル(中央の曲線)中でさらにより小さい信号ピークが観察される。
【0095】
2a及び2bからの実験の比較から、本例において、本発明による方法により達成される約100の時間的促進因子を評価することができる。
【0096】
例3
a)従来の露光(比較)
P.R. 178の明るさの増加を有するBASF AG、Ludwigshafen、DEの試験塗料を、前記のように600時間、屋外条件下に従来的に露光した。
【0097】
露光の前及び後に、塗料試料を反射分光法によりキャラクタリゼーションした。結果は図5に表されている。点付きの線は露光された試料に相当し、実線は露光されていない試料に相当する。その場合に、反射率[%](y−軸)は波長(x−軸)についてプロットされている。
【0098】
図5から識別できるように、照射後に塗料試料の反射率は、青色及び緑色の分光範囲内で数%だけ増加し、かつ赤色の分光範囲内で数%だけ減少する。このことは、塗料試料の、眼で識別できるのが難しい軽度の曇り(Abtruebung)及び同時の明るさの増加をもたらす。
b)格子露光(本発明による)
塗料試料に前記の格子フィルムを通して屋外条件下に照射した。照射時間は92時間に過ぎなかった。図6は、照射された塗料試料のスキャンされた画像の一次元のフーリエ分析の結果を表す。
【0099】
71の格子フィルムの空間周波数で、3つ全てのカラーチャンネル中で、雑音レベルよりも約5倍高い、ほぼ同じく高い信号ピークが識別される。これらは、赤色、緑色及び青色の分光範囲内の反射率の変化を表す。極めて明瞭な測定信号は既に、露光時間の単に92時間後に生じる。
【0100】
例4
P.R.122の明るさの増加を有するBASF AG、Ludwigshafen、DEの試験塗料を、市販の暴露装置(ATLAS社のW.O.M CI 35A)中で試験法SAE 1960、CAM 180による暴露にかけた。暴露パターンは、3mmの距離で3mmの幅(0.166/mmの空間周波数に相当)を有する支柱(Streben)を有する5cm×7cmの面積を有する金属格子を用いて発生させた。格子は、適している保持装置を用いて試料表面の3mm前にポジショニングされていた。
【0101】
特定の時間間隔後に、試料を有する保持装置を暴露装置から取り出した。試料表面の前の金属格子を除去し、かつ試料表面を、上記で一般的に記載されたように、スキャンし、かつRGB−分析及び一次元のFT−変換を用いて評価した。それぞれの時間間隔後にFT−信号ピークの高さをチャンネルR、G、及びBについて決定した。最終的に、金属格子を再び同じ位置で保持装置中へ装填し、かつ暴露を続けた。
【0102】
図7には、FT−信号ピークの高さがチャンネルR(三角)、G(菱形)及びB(正方形)について暴露時間に対してプロットされている。この図から引き出すことができるように、青色チャンネル中で及び緑色チャンネル中で、時間と共にFT−信号ピークのほぼ線形の増大が観察されることができる。それに対して赤色チャンネル中で極めて迅速にFT−信号ピークの急激な上昇が観察されるが、しかしこれは約300暴露時間後にほぼ一定のままである。
【0103】
それにより、格子暴露は、特異的な製品特性のキャラクタリゼーションのため並びに個々のカラーチャンネル中での信号高さの外挿によるより長い照射時間の場合の変色の予想のために卓越して適している。そのうえ、FT−信号ピークが赤色及び青色のチャンネル中で負の符号を有し、このことは赤色及び青色の分析放射について吸収する光化学的反応生成物(Photoprodukte)による反射率の減少を示すのに対して、FT−信号ピークが緑色の分光範囲内で正の符号を有し、このことは緑色の分析光についてP.R.122の光化学的分解による反射率の増加を示すことを突き止めることができた。
【0104】
目視で暴露時間420時間後にも塗料試料の変色は識別されることができない。高耐候安定な顔料P.R.122の場合に色調変化が眼で明らかに知覚可能になるためには、少なくとも1000暴露時間の暴露時間が必要である。
【0105】
例5
砂粒子により際立った塗料損傷の早期発見のために、次の実験を実施した:
8×8cm大きさの塗料試料(BASFのライトグレーのメタリック−塗装)の前に、金属格子を取り付けた。格子の空間周波数は0.32/mmであった。引き続いて、試料を、砂吹き機(Sandstrahlgeblaese)を用いて1mの距離から30秒間、格子を通して処理した。引き続いて格子を除去した。試料の目視検査は変化を示さなかった。該試料を、スキャナー(Microtek社の型式AsticScan 1800 f)を用いてスキャンした。図8は、処理された塗料試料のスキャンされた画像の一次元のフーリエ分析の結果を表す。上の曲線は青色チャンネルを表し、中央の曲線は赤色チャンネルを表し、かつ下の曲線は緑色チャンネルを表す。0.32/mmの空間周波数でのフーリエ信号の信号ピークは、明瞭に識別されることができる。信号ピークの高さは、サンドブラスト−暴露による塗料試料の損傷の程度を表す。該方法は、高い感度により特徴付けられている。もちろん、5分間の暴露は、肉眼で識別可能な塗料試料の変化をもたらさなかった。
【0106】
例6:
例4と同じように行い、かつ顔料P.B.15:3の明るさの増加を使用する。さらに金属格子をテフロン(Teflon)でコートし、距離なしで直接に試料表面上へ載置する。格子の位置座標は、フーリエ信号の位相決定に引き入れる。図9に示された結果が得られる。
【0107】
その場合に、縦座標上に試料の反射率の変化(四角:青色チャンネル;三角:緑色チャンネル;菱形:赤色チャンネル)及び横座標上に暴露時間が時間でプロットされている。青色チャンネル中で暴露のために反射率の連続的な減少が観察される。250暴露時間後に、反射率は約6パーミルだけ減少した。これは、青色の分光範囲内で吸収する光化学的反応生成物の合成に起因されうる。赤色チャンネルにおいて、極めて弱く増加する反射率が観察される。これは、赤色の分光範囲内で吸収する顔料の分解に起因されうる。これらの全ての効果は、ヒトの眼の目視限界をはるかに下回って観察されることができ、かつ本発明による方法の高い感度を強調する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ドイツトウヒ材パネルに、屋外条件下に空間周波数1/mmを有する格子フィルムを通して太陽光を15分間照射した後の、ドイツトウヒ材パネルの一次元のフーリエ変換の結果を示すグラフ。
【図2】ドイツトウヒ材パネルに、屋外条件下に空間周波数1/mmを有する格子フィルムを通して太陽光を15分間照射した後の、格子フィルムの一次元のフーリエ変換の結果を示すグラフ。
【図3】オーバーヘッド−フィルム上のマゼンダ印刷に、屋外条件下にATLAS社のサンテスターXLS Plus中で1日間照射した後の、フィルムを透過分光法により検査した結果を示すグラフ。
【図4】格子フィルムを通して照射した後の、マゼンダフィルムのスキャンされた画像の一次元のフーリエ分析の結果を示すグラフ。
【図5】P.R. 178の明るさの増加を有するBASF AG、Ludwigshafen、DEの試験塗料を、前記のように600時間、屋外条件下に従来的に露光した後に、反射分光法によりキャラクタリゼーションした結果を示すグラフ。
【図6】格子フィルムを通して屋外条件下に照射した後の、塗料試料のスキャンされた画像の一次元のフーリエ分析の結果を示すグラフ。
【図7】P.R.122の明るさの増加を有するBASF AG、Ludwigshafen、DEの試験塗料を、市販の暴露装置(ATLAS社のW.O.M CI 35A)中で試験法SAE 1960、CAM 180により暴露した後の、チャンネルR(三角)、G(菱形)及びB(正方形)についての暴露時間に対するFT−信号ピークの高さを示すグラフ。
【図8】砂吹き機を用いて1mの距離から30秒間、格子を通して処理した後の、スキャンされた画像の一次元のフーリエ分析の結果を示すグラフ。
【図9】顔料P.B.15:3の明るさの増加を使用し、金属格子をテフロン(Teflon)でコートし、距離なしで直接に試料表面上へ載置して暴露した後の、縦座標上に試料の反射率の変化(四角:青色チャンネル;三角:緑色チャンネル;菱形:赤色チャンネル)及び横座標上に暴露時間を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化を検出する方法において、
(i)該試料を作用時間Δtの間に環境の影響に曝し、その場合に、パターン関数M(x,y)に基づいている公知の位置依存性の強度分布I(x,y)(強度パターン)を用いて該環境の影響を該試料に作用させ、
(ii)引き続いて、該試料による分析放射の透過、反射又は散乱を該試料の位置座標(x,y)及び分析放射の波長λに従属して検出し、こうして透過、反射又は散乱した分析放射の強度を該試料の位置座標(x,y)及び波長λに従属して表す応答関数A(x,y,λ)を決定し、
(iii)相関分析により、該環境の影響の公知の位置依存性の強度分布I(x,y)又はこの強度分布のベースとなるパターン関数M(x,y)と応答関数A(x,y,λ)との相関を決定し、その場合にこの相関は、該環境の影響により引き起こされる、該試料の物理的に測定可能な性質の変化の尺度である
ことを特徴とする、環境の影響により引き起こされる、試料の物理的に測定可能な性質の変化を検出する方法。
【請求項2】
環境の影響を、特定の位置依存性の透過関数T(x,y)を有するマスクを通して基体表面に作用させ、こうして位置依存性の強度分布I(x,y)をマスクの像として基体表面上に生じさせる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
環境の影響が放射の作用からなり、かつ強度分布が位置依存性及び波長依存性の強度分布I(x,y,λ)である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
環境の影響が光の作用を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
環境の影響が機械力の作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
環境の影響が化学薬品の作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
環境の影響がガスの作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
環境の影響が微生物の作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項9】
環境の影響が放射線の作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】
環境の影響が音波の作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項11】
環境の影響が熱の作用を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項12】
環境の影響が試料の暴露により引き起こされる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
環境の影響が試料上に化学薬品を施与することにより引き起こされる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項14】
強度分布I(x,y,λ)を回折パターンとして試料上に生じさせる、請求項3又は4記載の方法。
【請求項15】
強度分布I(x,y,λ)を、位置依存性及び波長依存性の透過関数T(x,y,λ)を有するマスクを通して光を試料に照射することにより生じさせる、請求項3又は4記載の方法。
【請求項16】
人工又は天然の太陽光を照射する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
マスクがバーコード−マスクである、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
強度分布I(x,y)又はI(x,y,λ)が、空間周波数αを有する周期性の強度分布である、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
相関分析がフーリエ分析である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分析光の透過、反射又は散乱をUV−VIS及び/又はNIR−範囲において測定する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
試料による分析放射の透過、反射又は散乱を複数の波長範囲Δλについて決定し、こうして複数の応答関数A(x,y,Δλ)を複数の波長範囲Δλについて決定する、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
応答関数を赤色光、緑色光及び青色光についてRGB−分析によりその都度決定する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
分析光の反射を検出する、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
検出の際にテレセントリック測定光学を使用する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
分析光の散乱を検出する、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
検出の際に共焦点の測色系を使用する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
試料による分析光の反射又は散乱を位置座標(x,y)に従属して、カラースキャナーを用いて検出する、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
試料による分析光の反射又は散乱を位置座標(x,y)に従属して、デジタルカメラを用いて検出する、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
応答関数A(x,y,λ)を、デジタル画像評価電子技術を用いて決定する、請求項1から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
基体表面の光沢挙動の変化を測定するための、請求項23又は24記載の方法の使用。
【請求項31】
基体表面が塗料表面である、請求項30記載の使用。
【請求項32】
塗料が自動車塗料である、請求項31記載の使用。
【請求項33】
着色剤又はこれらで着色された基体の耐光性を決定するための、請求項25又は26記載の方法の使用。
【請求項34】
物質の光誘導された又は光酸化的な老化を検査するための、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項35】
物質が、着色剤で着色されたプラスチック又は未着色のプラスチック、塗料、繊維製品、金属、紙、木製品、建築材料及び化粧品から選択されている、請求項34記載の使用。
【請求項36】
物質の耐候安定性を検査するための、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項37】
物質の耐薬品性を検査するための、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項38】
基体上のコーティングの耐摩耗性を検査するための、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−533957(P2007−533957A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523595(P2006−523595)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009223
【国際公開番号】WO2005/019808
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】