説明

環境試験装置

【課題】試験室に外気を導入することによって常温曝し試験を行う場合でも、冷却器の蒸発器への着霜を低減することが可能な環境試験装置を提供する。
【解決手段】この環境試験装置は、乾燥した冷却ガスを試験室S1に供給可能な供給装置14と、低温曝し試験を行うために低温ダンパ7a,7bに吸入口2p及び吹出し口2qを開放させるのに先立って供給装置14のガス供給部20に試験室S1への乾燥した冷却ガスの供給を開始させるとともに、その後、試験室S1の温度が降下する過程においてもガス供給部20に試験室S1への乾燥した冷却ガスの供給を行わせる制御装置16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料を高温の雰囲気に曝す高温曝し試験と、試料を低温の雰囲気に曝す低温曝し試験とをそれらの試験の間に試料を常温の雰囲気に曝す常温曝し試験を介して行うことが可能な環境試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された環境試験装置では、試験槽内に試験室と高温室と低温室とが設けられている。高温室は、試験室と連通しており、この高温室と試験室とを連通する連通口には高温ダンパが設けられている。この高温ダンパによって、高温室と試験室との間の連通口が開閉されるようになっている。また、低温室も試験室と連通しており、この低温室と試験室とを連通する連通口には低温ダンパが設けられている。この低温ダンパによって、低温室と試験室との間の連通口が開閉されるようになっている。また、試験槽には、試験室への外気導入用の開口部が設けられている。この開口部には、外気ダンパが設けられている。
【0004】
そして、高温曝し試験時には、高温ダンパによって高温室と試験室との間の連通口が開放され、高温室で加熱器によって生成された熱気が試験室に流入して試験室の温度が所定の高温に上昇する。これにより、試験室に収容された試料が高温の雰囲気に曝される。また、常温曝し試験時には、外気ダンパによって外気導入用の開口部が開放されて試験室に外気が導入されることにより、試験室に収容された試料が常温の雰囲気に曝される。そして、低温曝し試験時には、低温ダンパによって低温室と試験室との間の連通口が開放され、低温室で冷却器によって生成された冷気が試験室に流入して試験室の温度が所定の低温に降下する。これにより、試験室に収容された試料が低温の雰囲気に曝される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2690969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された環境試験装置では、常温曝し試験時に試験室に外気が導入されるため、その外気に含まれる水分が試験室に取り込まれる。この水分は、常温曝し試験の後、低温曝し試験を行う際に低温室に入り込み、冷却器の蒸発器に着霜を生じさせる原因となる。蒸発器に着霜が生じると、冷却器の冷却能力が低下するため、蒸発器のデフロストを行う必要が生じる。デフロストを行うためには、実施中の環境試験を中断するか、あるいは、その試験の温度条件を乱すことになるため、試験の再現性や信頼性が低下する。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、試験室に外気を導入することによって常温曝し試験を行う場合でも、冷却器の蒸発器への着霜を低減することが可能な環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の環境試験装置は、試料を収容可能な試験室と前記試験室に連通口を介して繋がる低温室とが内部に設けられた試験槽と、前記低温室内で冷気を生成する冷却器と、前記連通口を開閉可能な低温ダンパと、前記試験室へ外気を導入可能な外気導入手段とを備え、前記低温ダンパに前記連通口を開放させて前記低温室から前記試験室に冷気を流入させることにより、その試験室に収容された試料を低温の雰囲気に曝す低温曝し試験と、前記外気導入手段によって前記試験室に外気を導入することによりその試験室に収容された試料を常温の雰囲気に曝す常温曝し試験とを行うことが可能な環境試験装置であって、乾燥ガスを前記試験室に供給可能な供給装置と、前記低温曝し試験を行うために前記低温ダンパに前記連通口を開放させるのに先立って前記供給装置に前記試験室への乾燥ガスの供給を開始させるとともに、その後、前記試験室の温度が降下する過程においても前記供給装置に前記試験室への乾燥ガスの供給を行わせる制御装置とを備えている。
【0009】
この環境試験装置では、制御装置が、低温曝し試験のために低温ダンパに連通口を開放させるのに先立って供給装置に試験室への乾燥ガスの供給を開始させる。このため、常温曝し試験時に外気導入手段により試験室に外気が導入されるのに伴って試験室に水分が取り込まれたとしても、その後、低温曝し試験のために連通口が開放されて試験室と低温室とが連通する前に試験室の湿度を乾燥ガスによって低下させることができる。その結果、低温曝し試験の際に試験室から低温室に入り込む水分の量を低減することができる。そのため、低温室に入り込む水分に起因する冷却器の蒸発器への着霜を低減することができる。従って、この環境試験装置では、試験室に外気を導入することによって常温曝し試験を行う場合でも、冷却器の蒸発器への着霜を低減することができる。
【0010】
さらに、この環境試験装置では、低温曝し試験において試験室の温度が降下する過程においても供給装置が試験室へ乾燥ガスを供給する。このため、試験室の降温に伴って試験室の空気が収縮する際に、その空気の収縮を乾燥ガスで補うことができる。それにより、試験室の圧力低下を抑制することができる。試験室の圧力が試験槽の外部の圧力よりも低くなった場合には、水分を含む外気が試験室に侵入する虞があるが、この環境試験装置では、試験室の圧力低下を抑制することができるため、そのような水分を含んだ外気の試験室及び低温室への侵入を抑制することができる。このことは、外気に含まれる水分に起因する冷却器の蒸発器への着霜を抑制することに繋がる。従って、この環境試験装置では、低温曝し試験のために試験室の温度を降下させる際に外気に含まれる水分が低温室へ入り込むことによる冷却器の蒸発器への着霜を抑制することができる。
【0011】
上記環境試験装置において、前記供給装置は、前記乾燥ガスとして乾燥した冷却ガスを供給することが好ましい。
【0012】
このように構成すれば、試験室の降温中に、供給装置から試験室へ乾燥した冷却ガスを供給してその試験室の降温を促進することができる。その結果、試験室の降温速度を上げることができる。
【0013】
この場合において、前記供給装置は、液化冷却ガスを供給する冷却液供給源と、その冷却液供給源が供給する液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを生成可能な冷却ガス生成部と、その冷却ガス生成部において生成された乾燥した冷却ガスを前記試験室に導入可能なガス導入路とを含むことが好ましい。
【0014】
このように構成すれば、試験室に乾燥した冷却ガスを供給可能な供給装置の具体的な機構を構成することができる。
【0015】
さらにこの場合において、前記供給装置は、前記冷却液供給源から供給される液化冷却ガスの一部を前記低温室と前記試験室の少なくとも一方に導入可能な冷却液導入部を含むことが好ましい。
【0016】
この構成では、冷却液供給源から供給される液化冷却ガスの一部を冷却液導入部により低温室と試験室の少なくとも一方に導入することができるので、この液化冷却ガスを、低温曝し試験のために冷却器で生成した冷気によって試験室の温度を降下させる際の補助冷却手段として用いることができる。これにより、冷却器のみにより試験室の温度を降下させる場合に比べて試験室の降温をより促進することができる。このため、例えば、試験室に収容された試料が多くて試験室の温度が下がりにくい場合でも、試験室の温度を良好に降下させることができる。また、試験室の温度の降下速度を上げたいという要望がある場合でも、その要望に答えて試験室の温度の降下速度を上げることができる。
【0017】
さらにこの場合において、前記冷却ガス生成部は、前記冷却液供給源から供給される液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを分離可能な気液分離タンクを含み、前記ガス導入路は、前記気液分離タンクにおいて分離された冷却ガスをその気液分離タンクから導出可能なように当該気液分離タンクに接続され、前記冷却液導入部は、前記気液分離タンクから液化冷却ガスを導出可能なように当該気液分離タンクに接続されていることが好ましい。
【0018】
液化冷却ガスから冷却ガスを生成する手段として、液化冷却ガスを加熱して強制的に気化させるヒータを用いることも考えられる。しかし、この場合には、ヒータの稼働にエネルギを消費するため、エネルギコストが増大する。これに対して、本構成では、気液分離タンクにおいて液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを自然に分離することができるので、前記ヒータのようなエネルギ消費を防ぐことができる。従って、本構成では、エネルギコストの増大を防ぎつつ、液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを生成してその乾燥した冷却ガスを試験室に導入することができる。
【0019】
上記供給装置がガス導入路を含む構成において、前記供給装置は、前記ガス導入路に設けられ、前記試験室に導入するガスを一旦貯留するための貯留タンクと、前記貯留タンクに乾燥空気を供給可能な乾燥空気供給部とを含むことが好ましい。
【0020】
この構成では、乾燥空気供給部から供給された乾燥空気と冷却ガス生成部において生成されてガス導入路に導出された冷却ガスとを貯留タンク内で混合することができる。そして、この乾燥空気と冷却ガスの混合ガスを貯留タンクからガス導入路を通じて試験室に導入することができる。このため、乾燥空気の分、試験室への冷却ガスの供給量を削減することができる。その結果、冷却液供給源から供給する液化冷却ガスの消費量を低減することができる。
【0021】
この場合において、前記乾燥空気供給部は、液化冷却ガスが導入された前記気液分離タンクの外面と熱交換することにより空気を冷却して除湿し、乾燥空気を生成する乾燥空気生成部を有することが好ましい。
【0022】
ところで、乾燥空気を生成するためには、環境試験装置に乾燥機を設けてその乾燥機により空気を乾燥させることも考えられる。しかし、この場合には、環境試験装置の構成が複雑化するとともに、乾燥機の稼働にエネルギを消費するため、エネルギコストが増大する。これに対して、本構成では、乾燥空気生成部が、気液分離タンクとの熱交換により空気を冷却して除湿することによって、乾燥空気を生成する。すなわち、乾燥空気生成部において、液化冷却ガスが導入された気液分離タンクの冷熱を利用して乾燥空気を生成する。このため、エネルギコストの増大を防ぎながら、乾燥空気を生成することができる。また、本構成では、乾燥空気生成部と気液分離タンクとの熱交換の際、気液分離タンクが温められる。それによって、気液分離タンクでは、液化冷却ガスの気化が促進され、その結果、気液分離タンク内において冷却ガスを良好に生成することができる。
【0023】
上記供給装置がガス導入路を含む構成において、前記ガス導入路には、そのガス導入路を流れる乾燥した冷却ガスの温度を調整可能な加熱部が設けられ、前記制御装置は、前記低温曝し試験を行う前の前記常温曝し試験の最終段階において、前記外気導入手段による前記試験室への外気の導入を停止させるとともに、前記供給装置に前記加熱部により常温に調整させた乾燥した冷却ガスを前記試験室へ供給させることが好ましい。
【0024】
この構成では、低温曝し試験を行う前の常温曝し試験の最終段階において、試験室への外気導入を停止する一方、供給装置の加熱部によって常温に調整された乾燥冷却ガスを試験室へ供給することができる。これにより、低温曝し試験を行う前の常温曝し試験の最終段階では、試験室の温度を常温に保ちつつ、試験室の湿度を低下させることができる。ところで、常温曝し試験による試験室への外気導入の後、低温曝し試験への移行時に試験室から低温室に水分が入り込んで冷却器の蒸発器に着霜が生じるのを防ぐためには、低温曝し試験に移行する前に試験室に乾燥ガスを導入する期間を別途設けて、試験室の湿度を低下させることも考えられる。しかし、この場合には、試験時間が増大するという問題が生じる。これに対して、本構成では、低温曝し試験を行う前の常温曝し試験の最終段階において、試験室の温度を常温に保ちつつ、試験室の湿度を低下させることができる。このため、常温曝し試験の後、すぐに低温曝し試験のために連通口を開放して低温室と試験室とを連通状態にしても、試験室から低温室へ入り込む水分の量を低減することができる。このため、本構成では、試験時間の増大を防ぎながら、冷却器の蒸発器に対する着霜を低減することができる。
【0025】
上記環境試験装置において、前記供給装置は、前記試験室に加えて前記低温室にも乾燥ガスを供給可能に構成され、前記制御装置は、前記低温曝し試験の準備段階において前記冷却器に冷気を生成させる際、前記供給装置に前記低温室への乾燥ガスの供給を行わせることが好ましい。
【0026】
低温曝し試験の準備段階では、冷却器により冷気を生成して低温室の温度が低下するのに伴って低温室が試験槽の外部に対して負圧となる虞がある。この場合には、外気が、試験槽に存在する各種の微小な隙間を通じて低温室にわずかに侵入する虞がある。低温室に外気が侵入すると、その外気に含まれる水分が冷却器の蒸発器に対する着霜の原因となる。これに対して、本構成では、低温曝し試験の準備段階において冷却器に冷気を生成させる際、供給装置に低温室へ乾燥ガスを供給させるので、その際、低温室を比較的乾燥した状態にすることができるとともに、低温室を試験槽の外部に対して陽圧に保って前記微小な隙間を通じての低温室への外気の侵入を防ぐことができる。このため、低温曝し試験の準備段階での冷却器の蒸発器に対する着霜を低減することができる。
【0027】
上記環境試験装置において、前記制御装置は、前記低温曝し試験中、前記試験室と前記低温室の圧力が前記試験槽の外部の圧力以上の圧力に保持されるように前記供給装置による前記試験室への乾燥ガスの供給を行わせることが好ましい。
【0028】
このように構成すれば、低温曝し試験中に試験室から冷気の流出が生じた場合でも、供給装置から供給される乾燥ガスにより、試験室及び低温室の圧力を試験槽の外部の圧力以上の圧力に保持することができる。このため、低温曝し試験中も試験室及び低温室に水分を含んだ外気が侵入するのを防ぐことができる。
【0029】
上記供給装置が冷却液導入部を含む構成において、前記制御装置は、前記低温曝し試験中、前記試験室と前記低温室の圧力が前記試験槽の外部の圧力以上の圧力に保持されるように、前記供給装置による前記試験室への乾燥した冷却ガスの供給と、前記冷却液導入部による前記低温室と前記試験室の少なくとも一方への液化冷却ガスの導入とのうち少なくとも一方を行わせることが好ましい。
【0030】
このように構成すれば、低温曝し試験中に試験室から冷気の流出が生じた場合でも、供給装置から供給される乾燥した冷却ガス及び/又は冷却液導入部によって導入される液化冷却ガスにより、試験室及び低温室の圧力を試験槽の外部の圧力以上の圧力に保持することができる。このため、低温曝し試験中も試験室及び低温室に水分を含んだ外気が侵入するのを防ぐことができる。
【0031】
上記環境試験装置において、前記制御装置は、前記低温曝し試験から前記常温曝し試験への移行時に前記外気導入手段により前記試験室に外気を導入するのに先立って、前記供給装置に乾燥ガスを前記試験室へ供給させることが好ましい。
【0032】
低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に、低温ダンパにより連通口が完全に閉鎖されるよりも先に外気導入手段による試験室への外気導入が開始された場合には、試験室に導入された外気に含まれる水分が低温室に侵入する虞がある。これに対して、本構成では、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に外気導入手段により試験室に外気を導入するのに先立って、供給装置により乾燥ガスを試験室へ供給することができる。このため、連通口が完全に閉鎖されるよりも先に試験室への外気導入が開始される場合であっても、試験室を比較的乾燥した状態に保って試験室から連通口を通じて低温室に侵入する水分の量を低減することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明の環境試験装置によれば、試験室に外気を導入することによって常温曝し試験を行う場合でも、冷却器の蒸発器への着霜を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態による環境試験装置の概略的な構成を示す図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による環境試験装置の供給装置の配管系統図である。
【図3】本発明の第2実施形態による環境試験装置の供給装置の配管系統図である。
【図4】図3に示した供給装置に用いられる気液分離タンクの一例を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態による環境試験装置の供給装置の配管系統図である。
【図6】本発明の第4実施形態による環境試験装置のガス供給部の配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0036】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態による環境試験装置の構成について説明する。
【0037】
この第1実施形態による環境試験装置は、試験室S1に収容された試料Wを高温の雰囲気にさらす高温曝し試験と、その試料Wを低温の雰囲気にさらす低温曝し試験と、その試料Wを常温の雰囲気に曝す常温曝し試験とを行うことが可能な装置である。具体的には、この環境試験装置は、高温曝し試験、常温曝し試験、低温曝し試験をこの順番で行い、その後、再び常温曝し試験を行うような試験サイクルを繰り返し実施可能な試験装置である。このような環境試験装置の具体例としては、冷熱衝撃試験装置、振動環境複合試験装置、恒温恒湿装置などが挙げられる。
【0038】
そして、この環境試験装置は、試験槽2と、外気導入手段3と、高温ダンパ4a,4bと、加熱器5と、高温側送風機6と、低温ダンパ7a,7bと、冷却器8と、低温側送風機10と、補助加熱器12と、供給装置14と、制御装置16とを備えている。
【0039】
試験槽2は、中空の箱体に形成されている。この試験槽2の内部には、試験室S1と、高温室S2と、低温室S3とが設けられている。すなわち、試験槽2の内部空間は、試験室S1と高温室S2と低温室S3とに区画されている。試験槽2は、試験室S1、高温室S2及び低温室S3を形成する複数の壁部を備えており、その各壁部は、断熱壁となっている。
【0040】
試験室S1は、試料Wを収容可能な空間である。この試験室S1は、試験槽2の内部空間の中央に配置されている。試験槽2は、試験室S1に試料Wを出し入れするための開口部2bが設けられた側壁2aを有している。この側壁2aには、開口部2bを開閉可能な扉部2cが取り付けられている。この扉部2cは、断熱性を有している。
【0041】
また、試験槽2には、前記開口部2bが設けられた側壁2aと対向配置された側壁2dが設けられている。この側壁2dのうち試験室S1を形成する部分には、試験室S1へ外気を導入するための外気導入手段3が設けられている。この外気導入手段3は、外気導入口2e及び排気口2fと、外気ダンパ3a,3bと、外気導入用送風機3cと、排気用送風機3dとによって構成されている。
【0042】
外気導入口2e及び排気口2fは、試験槽2の側壁2dのうち試験室S1を形成する部分に形成されている。外気導入口2eは、試験室S1に外気を導入するための開口部である。排気口2fは、外気導入口2eを通じて試験室S1に外気が導入される際に試験室S1から外部へその試験室S1内の空気を排出するための開口部である。
【0043】
外気ダンパ3a,3bは、試験槽2の側壁2dの外面に設けられている。一方の外気ダンパ3aは、外気導入口2eを開閉するためのものであり、他方の外気ダンパ3bは、外気導入口2fを開閉するためのものである。
【0044】
外気導入用送風機3cは、外気導入口2eに設けられている。この外気導入用送風機3cが駆動されることにより、外気導入口2eを通じて試験室S1に外気が導入される。排気用送風機3dは、排気口2fに設けられている。この排気用送風機3dが駆動されることにより、排気口2fを通じて試験室S1内の空気が外部へ排出される。すなわち、この外気導入手段3では、外気ダンパ3a,3bにより外気導入口2e及び排気口2fを開放した状態で外気導入用送風機3c及び排気用送風機3dを駆動させることにより、外気導入口2eを通じて試験室S1に外気が導入されるとともに試験室S1内の空気が排気口2fを通じて外部へ排出されるという空気の流れが作り出されるようになっている。なお、外気導入用送風機3cと排気用送風機3dのうちいずれか一方を省略してもよい。
【0045】
また、試験槽2の側壁2dのうち試験室S1を形成する部分には、第1導入孔2gと、逃がし孔2hとが設けられている。
【0046】
第1導入孔2gは、後述するガス供給部20から供給される乾燥ガスを試験室S1に導入するためのものである。この第1導入孔2gは、本発明の貫通孔の概念に含まれる。具体的には、この第1導入孔2gは、側壁2dを試験室S1側から試験槽2の外部側へ貫通するものである。この第1導入孔2gには、後述するガス供給部20のガス導入管25が気密状に挿通されている。ガス供給部20から供給される乾燥ガスは、ガス導入管25を通じて試験室S1に導入される。
【0047】
逃がし孔2hは、前記側壁2dを試験室S1側から試験槽2の外部側へ貫通するものである。この逃がし孔2hには、逃がし管2iが挿嵌されている。この逃がし管2iは、試験室S1内の圧力が試験槽2の外部の圧力よりも高い場合に試験室S1内の空気やガスを試験槽2の外部へ逃がすためのものである。なお、逃がし管2i内には、スリットが形成された図略の膜体が当該逃がし管2i内の空気やガスの流通を遮るように取り付けられていてもよい。この場合には、試験室S1内の圧力が試験槽2の外部の圧力よりも高い場合に、試験室S1内の空気やガスは、逃がし管2i内を通るとともに膜体のスリット部分を通過して試験槽2の外部へ徐々に逃げることが可能となる。
【0048】
高温室S2と低温室S3は、図1において試験室S1の上下両側に分かれて配置されている。高温室S2は、高温曝し試験の際に試験室S1に供給する熱気を生成するための部屋であり、低温室S3は、低温曝し試験の際に試験室S1に供給する冷気を生成するための部屋である。
【0049】
具体的には、高温室S2は、試験槽2内に設けられた高温側仕切り壁2jによって試験室S1と仕切られている。高温側仕切り壁2jには、吸入口2kと吹出し口2mとが設けられている。高温室S2は、吸入口2k及び吹出し口2mを介して試験室S1に繋がっている。吸入口2kは、試験室S1の空気を高温室S2に導入するための開口部であり、吹出し口2mは、高温室S2で生成された熱気を試験室S1に流入させるための開口部である。高温側仕切り壁2jには、吸入口2kを開閉可能な高温ダンパ4aと、吹出し口2mを開閉可能な高温ダンパ4bとが設けられている。
【0050】
そして、高温室S2には、加熱器5と、高温側送風機6とが設けられている。加熱器5は、高温室S2において空気を加熱して熱気を生成する。高温側送風機6は、高温曝し試験の際、加熱器5によって生成された熱気を前記吸入口2kと前記吹出し口2mを通じて高温室S2と試験室S1との間で循環させる。
【0051】
また、低温室S3は、試験槽2内に設けられた低温側仕切り壁2nによって試験室S1と仕切られている。低温側仕切り壁2nには、吸入口2pと吹出し口2qとが設けられている。この吸入口2pと吹出し口2qは、本発明の連通口の概念に含まれるものである。低温室S3は、吸入口2p及び吹出し口2qを介して試験室S1に繋がっている。吸入口2pは、試験室S1の空気を低温室S3に導入するための開口部であり、吹出し口2qは、低温室S3で生成された冷気を試験室S1に流入させるための開口部である。低温側仕切り壁2nには、吸入口2pを開閉可能な低温ダンパ7aと、吹出し口2qを開閉可能な低温ダンパ7bとが設けられている。
【0052】
そして、低温室S3には、冷却器8と、低温側送風機10と、補助加熱器12とが設けられている。冷却器8は、図略の蒸発器を有し、低温室S3において空気を冷却して冷気を生成する。低温側送風機10は、低温曝し試験の際、冷却器8によって生成された冷気を前記吸入口2p及び前記吹出し口2qを通じて低温室S3と試験室S1との間で循環させる。補助加熱器12は、低温室S3で生成される冷気の温度が目標温度よりも低くなった場合に稼働されてその冷気の温度を上昇させる。
【0053】
また、試験槽2の側壁2dのうち低温室S3を形成する部分には、第2導入孔2uが設けられている。この第2導入孔2uは、後述する冷却液導入部30によって供給される液化冷却ガスを低温室S3に導入するためのものである。この第2導入孔2uは、側壁2dを低温室S3側から試験槽2の外部側へ貫通するものである。この第2導入孔2uには、後述する冷却液導入部30の冷却液導入管31が気密状に挿通されている。冷却液導入部30によって供給される液化冷却ガスは、冷却液導入管31を通じて低温室S3に導入される。
【0054】
供給装置14は、試験室S1に乾燥ガスを供給可能であるとともに、低温室S3に液化冷却ガスを供給可能な装置である。この供給装置14は、図2に示すように、ガス供給部20と、冷却液導入部30とを備えている。
【0055】
ガス供給部20は、乾燥ガスを試験室S1に供給可能に構成されている。このガス供給部20は、乾燥ガスを試験室S1内の圧力よりも高い圧力でその試験室S1に供給する。そして、このガス供給部20は、乾燥ガスとして乾燥した冷却ガスを試験室S1に供給する。この冷却ガスとしては、窒素ガスや炭酸ガス等が用いられる。
【0056】
具体的には、このガス供給部20は、冷却液供給源21と、冷却ガス生成部22と、供給配管23と、タンク導入切換弁24と、ガス導入管25と、ガス供給切換弁26とを有する。
【0057】
冷却液供給源21は、液化冷却ガス(液体窒素や液化炭酸ガス等)を所定の圧力で供給するものである。この冷却液供給源21は、具体的には液化冷却ガスが所定の圧力で充填されたタンクからなる。
【0058】
冷却ガス生成部22は、冷却液供給源21が供給する液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを生成するものである。この冷却ガス生成部22は、ガス生成タンク22aと、ヒータ22bと、調圧装置22cとを有する。
【0059】
ガス生成タンク22aは、冷却液供給源21と供給配管23を介して接続されている。これにより、ガス生成タンク22aには、冷却液供給源21から吐出された液化冷却ガスを供給配管23を通じて導入可能となっている。供給配管23には、タンク導入切換弁24が設けられている。このタンク導入切換弁24は、電磁弁からなり、制御装置16(図1参照)によって開閉制御される。このタンク導入切換弁24の開閉により、供給配管23を通じて冷却液供給源21からガス生成タンク22aへ液化冷却ガスを導入するか否かが切り換えられる。
【0060】
ヒータ22bは、ガス生成タンク22a内に導入された液化冷却ガスを加熱するためのものである。このヒータ22bによって液化冷却ガスが加熱されることにより、その液化冷却ガスの一部が気化して乾燥した冷却ガスとなる。これにより、ガス生成タンク22a内で乾燥した冷却ガスが生成される。
【0061】
調圧装置22cは、ガス生成タンク22aに取り付けられている。この調圧装置22cは、ガス生成タンク22a内の圧力を試験室S1内の圧力よりも高い圧力(例えば、2気圧程度)に調整する。これにより、冷却ガスは、ガス生成タンク22aから試験室S1内の圧力よりも高い圧力で吐出される。
【0062】
ガス導入管25は、ガス生成タンク22aから試験室S1へ乾燥した冷却ガスを導入するためのものである。このガス導入管25は、本発明のガス導入路の概念に含まれる。このガス導入管25は、例えば銅管等の管状の部材からなる。このガス導入管25の一端部は、ガス生成タンク22aに接続されている。一方、このガス導入管25の他端部は、試験槽2の側壁2dに設けられた前記第1導入孔2gを通じて試験室S1内に挿入されている。これにより、ガス生成タンク22aからガス導入管25を通じて試験室S1へ乾燥冷却ガスを試験室S1内の圧力よりも高い圧力で導入可能となっている。
【0063】
ガス供給切換弁26は、ガス導入管25に設けられている。このガス供給切換弁26は、電磁弁からなり、制御装置16(図1参照)によって開閉制御される。すなわち、このガス供給切換弁26の開閉によってガス供給部20から試験室S1へ冷却ガスを供給するか否かを切り換えるようになっている。また、このガス供給切換弁26は、制御装置16によって開度制御される。このガス供給切換弁26の開度制御によって、試験室S1への冷却ガスの導入量が制御される。
【0064】
冷却液導入部30は、冷却液供給源21から供給される液化冷却ガスの一部を低温室S3に導入可能に構成されている。この冷却液導入部30は、冷却液導入管31と、冷却液供給切換弁32とを有する。
【0065】
冷却液導入管31は、冷却液供給源21から供給される液化冷却ガスの一部を低温室S3に導入するためのものである。この冷却液導入管31は、例えばキャピラリチューブ等の細い管状の部材からなる。この冷却液導入管31の一端部は、前記供給配管23に接続されている。一方、この冷却液導入管31の他端部は、試験槽2の側壁2dに設けられた第2導入孔2uを通じて低温室S3内に挿入されている。これにより、冷却液供給源21から供給配管23に吐出された液化冷却ガスの一部をこの冷却液導入管31を通じて低温室S3へ導入可能となっている。
【0066】
冷却液供給切換弁32は、冷却液導入管31に設けられている。この冷却液供給切換弁32は、電磁弁からなり、制御装置16(図1参照)によって開閉制御される。すなわち、この冷却液供給切換弁32の開閉によって冷却液導入部30から低温室S3へ液化冷却ガスを導入するか否かを切り換えるようになっている。また、この冷却液供給切換弁32は、制御装置16によって開度制御される。この冷却液供給切換弁32の開度制御によって、低温室S3への液化冷却ガスの導入量が制御される。
【0067】
制御装置16は、加熱器5、冷却器8及び補助加熱器12の稼働を制御する。具体的には、制御装置16は、加熱器5の加熱能力と、冷却器8の冷却能力と、補助加熱器12の加熱能力とをそれぞれ制御する。また、制御装置16は、高温側送風機6及び低温側送風機10の駆動を制御する。また、制御装置16は、高温ダンパ4a,4bの開閉動作を制御するとともに、低温ダンパ7a,7bの開閉動作を制御する。さらに、制御装置16は、上記したようにタンク導入切換弁24、ガス供給切換弁26及び冷却液供給切換弁32の開閉制御と、ガス供給切換弁26及び冷却液供給切換弁32の開度制御とを行う。
【0068】
次に、この第1実施形態による環境試験装置の動作について説明する。なお、以下に説明する動作は、高温曝し試験と、常温曝し試験と、低温曝し試験とをこの順番で行った後、再び常温曝し試験を行うという試験サイクルを繰り返し実施する場合の当該第1実施形態による環境試験装置の動作である。
【0069】
この環境試験装置における環境試験の開始時点では、高温ダンパ4a,4bにより吸入口2k及び吹出し口2mは閉鎖されているとともに、低温ダンパ7a,7bにより吸入口2p及び吹出し口2qは閉鎖されている。また、外気ダンパ3a,3bにより外気導入口2e及び排気口2fも閉鎖されている。
【0070】
また、供給装置14では、ガス供給部20のガス供給切換弁26と冷却液導入部30の冷却液供給切換弁32が共に閉状態となっている。一方、ガス供給部20のタンク導入切換弁24は、開状態にされる。それにより、液化冷却ガスが冷却液供給源21から供給配管23を通じてガス生成タンク22aに供給されている。そして、ヒータ22bが稼働されることにより、ガス生成タンク22a内で乾燥した冷却ガスが生成されている。このガス生成タンク22a内において、冷却ガスの圧力は、調圧装置22cにより試験室S1内の圧力よりも高い圧力(2気圧程度)に調整されている。
【0071】
この状態で、制御装置16は、加熱器5及び高温側送風機6を稼働させることにより、高温室S2内で熱気を生成させる。その後、制御装置16は、高温ダンパ4a,4bを動作させて吸入口2k及び吹出し口2mを開放する。これにより、高温室S2と試験室S1との間で吸入口2k及び吹出し口2mを通じて熱気が循環する。この熱気の循環によって、試験室S1の雰囲気の温度は、所定の高温まで上昇する。そして、試験室S1に収容された試料Wは、この試験室S1の高温の雰囲気に曝される。このようにして、高温曝し試験が行われる。なお、この高温曝し試験は、予め設定された一定時間行われる。
【0072】
そして、高温曝し試験の開始から一定時間が経過すると、制御装置16は、高温ダンパ4a,4bを駆動して吸入口2k及び吹出し口2mを閉鎖する。これにより、高温室S2から試験室S1への熱気の供給は停止され、高温曝し試験が終了する。そして、制御装置16は、この吸入口2k及び吹出し口2mの閉鎖とほぼ同時に、外気導入手段3により試験室S1に外気を導入させる。すなわち、制御装置16は、吸入口2k及び吹出し口2mの閉鎖とほぼ同時に、外気ダンパ3a,3bを駆動して外気導入口2e及び排気口2fを開放する。さらに、制御装置16は、外気導入用送風機3cと排気用送風機3dを駆動する。これにより、外気導入口2eを通じて試験室S1に外気が導入されるとともに、排気口2fを通じて試験室S1内の空気が外部へ排出される。すなわち、試験室S1が外気によって換気される。それによって、試験室S1の温度は、常温に降下する。そして、試験室S1に収容された試料Wは、この試験室S1の常温の雰囲気に曝される。このようにして、常温曝し試験が行われる。この常温曝し試験は、予め設定された一定時間行われる。
【0073】
そして、高温曝し試験や常温曝し試験が行われている際、低温室S3では、常温曝し試験の後に行う低温曝し試験の準備が行われる。具体的には、制御装置16が冷却器8及び低温側送風機10を稼働させる。これにより、低温ダンパ7a,7bによって吸入口2p及び吹出し口2qが閉鎖されて試験室S1と隔離された低温室S3において、冷気が生成される。
【0074】
そして、常温曝し試験の開始から一定時間が経過すると、制御装置16は、外気ダンパ3a,3bを駆動して外気導入口2e及び排気口2fを閉鎖する。これにより、試験室S1への外気の導入は停止され、常温曝し試験が終了する。また、制御装置16は、この外気導入口2e及び排気口2fの閉鎖とほぼ同時に、低温ダンパ7a,7bを駆動して吸入口2p及び吹出し口2qを開放する。これにより、低温室S3と試験室S1との間で吸入口2p及び吹出し口2qを通じて冷気が循環する。この冷気の循環によって、試験室S1の雰囲気の温度は、所定の低温まで低下する。そして、試験室S1に収容された試料Wは、この試験室S1の低温の雰囲気に曝される。このようにして、低温曝し試験が行われる。この低温曝し試験は、予め設定された一定時間行われる。
【0075】
そして、この第1実施形態では、上記の常温曝し試験から低温曝し試験への移行時に低温ダンパ7a,7bが吸入口2p及び吹出し口2qを開放するのに先立って、ガス供給部20が試験室S1へ乾燥した冷却ガスの供給を開始する。具体的には、制御装置16は、低温ダンパ7a,7bを駆動して吸入口2p及び吹出し口2qを開放するのに先立って、ガス供給切換弁26を開状態にする。これにより、冷却ガス生成部22のガス生成タンク22a内で生成された乾燥した冷却ガスが、ガス導入管25を通じて試験室S1に導入される。常温曝し試験時には、試験室S1に外気とともにその外気に含まれる水分が取り込まれるが、このように乾燥した冷却ガスを試験室S1に導入することにより、低温曝し試験のために吸入口2p及び吹出し口2qを開放する時点では、試験室S1内の湿度を比較的低い状態にすることができる。
【0076】
なお、この時、ガス供給部20から試験室S1への乾燥冷却ガスの供給量に応じて、外気導入口2eを通じての試験室S1への外気導入量を調整してもよい。例えば、ガス供給部20から試験室S1への乾燥冷却ガスの供給量が、常温曝し試験時における試験室S1への外気導入量と同等以上であれば、外気ダンパ3aにより外気導入口2eを閉じてもよい。この場合、ガス供給部20から試験室S1への乾燥冷却ガスの供給量は、排気用送風機3dによる排気口2fを通じての排気量と同等であることが好ましい。また、ガス供給部20から試験室S1への乾燥冷却ガスの供給量が、常温曝し試験時における試験室S1への外気導入量よりも少ない場合には、制御装置16が、前記乾燥冷却ガスの供給量と外気導入用送風機3cによる外気導入口2eを通じての外気導入量との和が排気用送風機3dによる排気口2fを通じての排気量と同等となるように外気導入用送風機3cの駆動量を制御して前記外気導入量を調整してもよい。これらの構成によれば、試験室S1内の空気を効率良く乾燥冷却ガスで置換することができる。また、試験室S1への気体の導入量と試験室S1からの排気量とのバランスが取れるので、外気導入用送風機3cの駆動効率が低下するのを抑制することができる。
【0077】
また、制御装置16は、低温室S3から試験室S1への冷気の導入により試験室S1の温度が降下する過程においても、ガス供給切換弁26を開状態にしてガス供給部20から試験室S1へ乾燥冷却ガスを供給させる。これにより、試験室S1の温度の降下に伴って試験室S1内の空気が収縮しても、その空気の収縮が冷却ガスの供給で補われる。その結果、この試験室S1の温度が降下する過程において、試験室S1の圧力は、試験槽2の外部の圧力よりも高い圧力に維持される。
【0078】
また、試験室S1に収容された試料Wが多くて試験室S1の温度が降下しにくい場合や、試験室S1の降温速度を上げたい場合には、制御装置16は、冷却液導入部30から低温室S3へ液化冷却ガスを導入させる。具体的には、制御装置16は、冷却液導入部30の冷却液供給切換弁32を開状態にする。これにより、冷却液供給源21から供給される液化冷却ガスの一部が冷却液導入管31を通じて低温室S3に導入される。この低温室S3に導入された液化冷却ガスは、補助冷却手段として作用する。すなわち、この液化冷却ガスは、低温室S3で気化して冷却ガスとなり、低温室S3での冷気の生成及び試験室S1の降温を促進する。
【0079】
なお、低温曝し試験中には、低温側送風機10による冷気の循環に伴って、試験室S1に部分的に陽圧となる箇所が現れるとともに、低温室S3が負圧となる。そして、試験室S1の部分的に陽圧になった所からは、試験槽2に存在する各種の隙間や外部との連通箇所を通じて試験槽2の外部へ空気及び冷却ガスが流出し、その結果、試験室S1の圧力は試験槽2の外圧と等しくなる。そして、試験室S1の圧力が外圧と等しくなると、低温室S3が負圧となっていることにより、外部から試験槽2の各種隙間を通じて低温室S3及び試験室S1に外気が吸い込まれる虞がある。そこで、制御装置16は、この低温曝し試験中において、試験室S1と低温室S3の圧力が試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持されるように、ガス供給部20から試験室S1へ乾燥冷却ガスを供給させるとともに、必要に応じて冷却液導入部30から低温室S3へ液化冷却ガスを導入させる。
【0080】
具体的には、予備実験によって、ガス供給部20から試験室S1へ供給する冷却ガスの供給量と、冷却液導入部30から低温室S3へ導入する液化冷却ガスの導入量とをどのように制御すれば、低温曝し試験中の試験室S1及び低温室S3の圧力を試験槽2の外部の圧力以上の圧力に維持できるかが調べられている。そして、その予備実験の結果に基づいて、制御装置16に低温曝し試験中におけるガス供給部20から試験室S1への冷却ガスの供給量の制御プログラムと冷却液導入部30から低温室S3への液化冷却ガスの供給量の制御プログラムとが組み込まれている。制御装置16は、その組み込まれた制御プログラムに基づいて低温曝し試験中にガス供給切換弁26の開度を制御することにより試験室S1へ導入する冷却ガスの流量を制御するとともに、冷却液供給切換弁32の開度を制御することにより低温室S3へ導入する液化冷却ガスの流量を制御する。このようにして、低温曝し試験において試験室S1と低温室S3の圧力が試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持される。
【0081】
なお、この低温曝し試験中において、試験室S1及び低温室S3の圧力を試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持できれば、ガス供給切換弁26及び冷却液供給切換弁32を断続的に開状態にして試験室S1への冷却ガスの供給及び低温室S3への液化冷却ガスの供給を断続的に行ってもよい。
【0082】
次に、低温曝し試験の開始から一定時間が経過すると、制御装置16は、低温ダンパ7a,7bを駆動して吸入口2p及び吹出し口2qを閉鎖する。これにより、低温室S3から試験室S1への冷気の供給は停止され、低温曝し試験が終了する。そして、制御装置16は、この吸入口2p及び吹出し口2qの閉鎖とほぼ同時に、上記常温曝し試験の場合と同様にして外気導入手段3により試験室S1へ外気を導入させる。これにより、上記と同様の常温曝し試験が再び行われる。
【0083】
そして、制御装置16は、低温曝し試験中に試験室S1への乾燥冷却ガスの供給が断続的に行われる場合であっても、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に外気導入手段3により試験室S1に外気を導入する前には、必ずガス供給部20により乾燥冷却ガスを試験室S1へ供給させる。具体的には、制御装置16は、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に外気導入口2e及び排気口2fを開放する前に、必ずガス供給切換弁26を開状態にしておく。これにより、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に吸入口2p及び吹出し口2qが完全に閉鎖されるよりもわずかに早く外気導入口2e及び排気口2fが開放された場合でも、その際に試験室S1に導入された冷却ガスにより試験室S1が比較的乾燥した状態に保たれる。このため、吸入口2p及び吹出し口2qが完全に閉鎖されるまでのわずかの期間に試験室S1から吸入口2pを通じて低温室S3に入り込む水分の量が低減される。
【0084】
そして、以上のような高温曝し試験から常温曝し試験までの各試験が、この後、繰り返し行われる。
【0085】
以上説明したように、この第1実施形態では、制御装置16が、低温曝し試験のために低温ダンパ7a,7bに吸入口2p及び吹出し口2qを開放させるのに先立って供給装置14のガス供給部20に試験室S1への乾燥ガスの供給を開始させる。このため、常温曝し試験時に外気導入手段3により試験室S1に外気が導入されるのに伴って試験室S1に水分が取り込まれたとしても、その後、低温曝し試験のために吸入口2p及び吹出し口2qが開放されて試験室S1と低温室S3とが連通する前に試験室S1の湿度を乾燥ガスによって低下させることができる。その結果、低温曝し試験の際に試験室S1と低温室S3とが連通状態となったときに低温室S3に入り込む水分の量を低減することができる。そのため、低温室S3に入り込む水分に起因する冷却器8の蒸発器への着霜を低減することができる。従って、この第1実施形態では、試験室S1に外気を導入することによって常温曝し試験を行う場合でも、冷却器8の蒸発器への着霜を低減することができる。
【0086】
また、この第1実施形態では、制御装置16が、低温曝し試験において試験室S1の温度が降下する過程においてもガス供給部20に試験室S1への乾燥ガスの供給を行わせる。このため、試験室S1の降温に伴って試験室S1の空気が収縮する際に、その空気の収縮を乾燥ガスで補うことができる。それにより、試験室S1の圧力低下を抑制することができる。このため、水分を含んだ外気の試験室S1及び低温室S3への侵入を抑制することができる。このことは、外気に含まれる水分に起因する冷却器8の蒸発器への着霜を抑制することに繋がる。従って、この第1実施形態では、低温曝し試験のために試験室S1の温度を降下させる際に外気に含まれる水分が低温室S3へ入り込むことによる冷却器8の蒸発器への着霜を抑制することができる。
【0087】
また、この第1実施形態では、ガス供給部20が乾燥ガスを試験室S1内の圧力よりも高い圧力で供給するため、その乾燥ガスを試験室S1に導入するための第1導入孔2gの内径が小さくても、試験室S1に乾燥ガスを良好に導入することができる。このため、この第1実施形態では、第1導入孔2gの部分での試験槽2の断熱性能の大幅な低下を抑制することができるとともに、試験室S1の降温に伴う当該試験室S1への水分を含んだ外気の侵入を有効に防止することができる。
【0088】
また、この第1実施形態では、ガス供給部20が、乾燥ガスとして乾燥した冷却ガスを供給するので、低温曝し試験のために試験室S1の温度を降下させる際にその冷却ガスによって試験室S1の降温を促進することができる。その結果、試験室S1の降温速度を上げることができる。
【0089】
また、この第1実施形態では、冷却液供給源21から供給される液化冷却ガスの一部を冷却液導入部30により低温室S3に導入することができるので、低温曝し試験のために冷却器8で生成した冷気によって試験室S1の温度を降下させる際の補助冷却手段として、その低温室S3に導入する液化冷却ガスを用いることができる。これにより、冷却器8のみにより試験室S1の温度を降下させる場合に比べて試験室S1の降温をより促進することができる。このため、例えば、試験室S1に収容された試料が多くて試験室S1の温度が下がりにくい場合でも、試験室S1の温度を良好に降下させることができる。また、試験室S1の温度の降下速度を上げたいという要望がある場合でも、その要望に答えて試験室S1の温度の降下速度を上げることができる。
【0090】
また、この第1実施形態では、低温曝し試験中、試験室S1と低温室S3の圧力が試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持されるように、ガス供給部20による試験室S1への乾燥冷却ガスの供給と、冷却液導入部30による低温室S3への液化冷却ガスの導入とが行われる。このため、低温曝し試験中に試験室S1から冷気が流出し、試験室S1内の圧力が外部の圧力よりも低下する虞が生じた場合でも、ガス供給部20から試験室S1に供給される乾燥冷却ガス及び冷却液導入部30によって低温室S3に導入される液化冷却ガスにより、試験室S1及び低温室S3の圧力を試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持することができる。このため、低温曝し試験中も試験室S1及び低温室S3に水分を含んだ外気が侵入するのを防ぐことができる。
【0091】
また、この第1実施形態では、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に外気導入手段3により試験室S1に外気が導入されるのに先立って、ガス供給部20により乾燥冷却ガスが試験室S1へ供給される。このため、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に吸入口2p及び吹出し口2qが完全に閉鎖されるよりも先に試験室S1への外気導入が開始される場合であっても、試験室を比較的乾燥した状態に保つことができる。このため、この低温曝し試験から常温曝し試験への移行時に試験室S1から吸入口2p及び吹出し口2qを通じて低温室S3に侵入する水分の量を低減することができる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、図3及び図4を参照して、本発明の第2実施形態による環境試験装置の構成について説明する。
【0093】
この第2実施形態による環境試験装置では、図3に示すように、ガス供給部20の冷却ガス生成部22は気液分離タンク22eからなり、その気液分離タンク22eに冷却液導入部30が接続されている。
【0094】
具体的には、この第2実施形態では、冷却ガス生成部22は、冷却液供給源21から供給配管23を通じて供給される液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを分離可能な気液分離タンク22eからなる。この気液分離タンク22eには、図4に示すように、供給配管23の端部が当該気液分離タンク22eの上端部から少し下側の位置に取り付けられている。液化冷却ガスは、この供給配管23を通じて気液分離タンク22e内に導入される。
【0095】
そして、ガス供給部20のガス導入管25は、気液分離タンク22eにおいて分離された乾燥冷却ガスを当該気液分離タンク22eから導出可能なように当該気液分離タンク22eに接続されている。具体的には、ガス導入管25の端部は、気液分離タンク22eの上端部からその気液分離タンク22e内に挿入されてその気液分離タンク22e内の最上部近傍の位置に配設されている。気液分離タンク22e内では、液化冷却ガスが下側に溜まり、その液化冷却ガスの上側に冷却ガスが溜まる。
【0096】
そして、気液分離タンク22eには、加圧用配管22g、加圧コイル部22h、加圧弁22i及び圧力計22jが設けられている。
【0097】
加圧用配管22gは、気液分離タンク22e内の最下部近傍とガス導入管25におけるガス供給切換弁26の上流側の部分とを接続している。加圧コイル部22hは、この加圧用配管22gに設けられている。また、加圧弁22iは、この加圧用配管22gのうち加圧コイル部22hよりも気液分離タンク22eの上端部側の部分に設けられている。
【0098】
気液分離タンク22e内の下部に溜まった液化冷却ガスは、加圧用配管22gを通じて導出され、加圧コイル部22hでの熱交換により気化される。この液化冷却ガスの気化によって生成された冷却ガスの圧力は、液化冷却ガスの圧力よりも高くなる。そして、この冷却ガスは、加圧用配管22gを通じて気液分離タンク22e内にその上部から戻される。この気液分離タンク22e内に戻される冷却ガスの圧力は、加圧弁22iによって所定の設定圧力に調整される。これにより、気液分離タンク22e内の冷却ガス及び液化冷却ガスの圧力は、加圧弁22iによる設定圧力となる。この加圧弁22iによる設定圧力は、供給配管23を通じて気液分離タンク22e内に導入される液化冷却ガスの圧力よりも低い圧力となっている。このため、供給配管23を通じて気液分離タンク22e内に液化冷却ガスが導入されると、その液化冷却ガスの一部は気化して冷却ガスとなる。そのため、気液分離タンク22e内で液化冷却ガスの一部が自然に冷却ガスとして分離する。
【0099】
また、加圧弁22iによる前記設定圧力は、試験室S1内の圧力よりも高い圧力となっている。これにより、気液分離タンク22eからガス導入管25を通じて冷却ガスが試験室S1内の圧力よりも高い圧力で導出される。
【0100】
圧力計22jは、気液分離タンク22eに接続されたガス導入管25の端部近傍に接続されている。この圧力計22jによって、気液分離タンク22e内からガス導入管25を通じて導出される冷却ガスの圧力が検出可能となっている。
【0101】
そして、冷却液導入管31は、気液分離タンク22eから液化冷却ガスを導出可能なように当該気液分離タンク22eに接続されている。具体的には、冷却液導入管31は、気液分離タンク22eの上端部からその内部に挿入されている。そして、冷却液導入管31の端部は、気液分離タンク22e内の最下部近傍に配置されている。これにより、気液分離タンク22e内に溜まった液化冷却ガスが当該気液分離タンク22内の圧力により冷却液導入管31を通じて導出されるようになっている。
【0102】
この第2実施形態による環境試験装置の上記以外の構成は、上記第1実施形態による環境試験装置の構成と同様である。
【0103】
以上説明したように、この第2実施形態では、冷却ガス生成部22は、冷却液供給源21から供給される液化冷却ガスから乾燥冷却ガスを分離可能な気液分離タンク22eからなる。この気液分離タンク22eでは、導入された液化冷却ガスから乾燥冷却ガスを自然に分離することができるので、ヒータで液化冷却ガスを加熱して強制的に冷却ガスを生成する場合のようなエネルギ消費を防ぐことができる。従って、この第2実施形態では、エネルギコストの増大を防ぎつつ、液化冷却ガスから乾燥冷却ガスを生成してその乾燥冷却ガスを試験室S1に導入することができる。
【0104】
この第2実施形態によるこれ以外の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0105】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態による環境試験装置の構成について説明する。
【0106】
この第3実施形態による環境試験装置では、上記第2実施形態と異なり、ガス供給部20のガス導入管25に加熱部27が設けられている。また、この第3実施形態では、供給装置14が、試験室S1に加えて低温室S3にも乾燥ガスを供給可能に構成されている。
【0107】
具体的には、加熱部27は、ガス導入管25を流れる冷却ガスの温度を調整可能に構成されている。この加熱部27は、ガス導入管25のうち気液分離タンク22eに接続された端部とガス供給切換弁26が設けられた箇所との間の部分に設けられている。この加熱部27の加熱能力は、制御装置16(図1参照)によって制御される。
【0108】
また、供給装置14は、ガス導入管25から低温室S3へ乾燥した冷却ガスを導入可能なバイパス部28を備えている。このバイパス部28は、バイパス管28aと、バイパス切換弁28bとによって構成されている。
【0109】
バイパス管28aは、ガス導入管25のうちガス供給切換弁26が設けられた箇所よりも試験槽2側(試験室S1側)の部分と冷却液導入管31のうち冷却液供給切換弁32が設けられた箇所よりも試験槽2側(低温室S3側)の部分とを繋いでいる。すなわち、ガス導入管25からこのバイパス管28a及び冷却液導入管31を通じて低温室S3へ乾燥した冷却ガスを導入可能となっている。
【0110】
バイパス切換弁28bは、バイパス管28aに設けられている。このバイパス切換弁28bは、電磁弁であり、制御装置16(図1参照)によって開閉制御される。このバイパス切換弁28bの開閉制御によって、ガス導入管25から低温室S3へ冷却ガスを導入するか否かが切り換えられるようになっている。また、このバイパス切換弁28bは、制御装置16によって開度制御される。このバイパス切換弁28bの開度制御によって、ガス導入管25から低温室S3へ導入する冷却ガスの流量が制御されるようになっている。
【0111】
そして、この第3実施形態の環境試験装置による環境試験では、制御装置16は、低温曝し試験の準備段階において冷却器8に冷気を生成させる際、バイパス部28により低温室S3へ乾燥冷却ガスを導入させる。
【0112】
具体的には、低温ダンパ7a,7bにより吸入口2p及び吹出し口2qが閉鎖されて低温室S3が試験室S1と隔離されている状態で、制御装置16は、後に行う低温曝し試験の準備のために冷却器8を稼働させて低温室S3内で冷気を生成させる。この際、制御装置16は、バイパス切換弁28bを開状態にする。これにより、ガス導入管25からバイパス管28a及び冷却液導入管31を通じて低温室S3に乾燥冷却ガスが導入される。それによって、この低温曝し試験の準備段階において、冷却器8により冷気を生成させる際、低温室S3が比較的乾燥した状態となる。
【0113】
また、この第3実施形態では、常温曝し試験の後に低温曝し試験を行う際、制御装置16は、その常温曝し試験の最終段階において、外気導入手段3による試験室S1への外気の導入を停止させるとともに、加熱部27により常温に調整させた乾燥冷却ガスをガス供給部20から試験室S1へ供給させる。
【0114】
具体的には、制御装置16は、常温曝し試験の後に低温曝し試験を行う場合に、その常温曝し試験中に加熱部27を稼動させてガス導入管25内の乾燥冷却ガスを常温まで暖めておく。この際、ガス供給切換弁26は、閉状態である。そして、この常温曝し試験の最終段階において、制御装置16は、外気ダンパ3a,3b(図1参照)に外気導入口2e及び排気口2fを閉鎖させるとともに、ガス供給切換弁26を開状態とする。これにより、試験室S1への外気の導入が停止される一方、常温に調整された乾燥冷却ガスが試験室S1に導入される。すなわち、この第3実施形態では、常温曝し試験の終了時点よりも前の時点で、試験室S1への外気導入を常温の乾燥冷却ガスの導入に切り換える。なお、この外気導入から常温の冷却ガスの導入への切り換えは、低温曝し試験のために低温ダンパ7a,7bにより吸入口2p及び吹出し口2qを開放させる時点から所定時間前(例えば30秒程度前)に行われる。
【0115】
この第3実施形態による環境試験装置の上記以外の構成及び動作は、上記第2実施形態による環境試験装置の構成及び動作と同様である。
【0116】
以上説明したように、この第3実施形態では、低温曝し試験を行う前の常温曝し試験の最終段階において、試験室S1への外気導入を停止させる一方、常温に調整した乾燥冷却ガスを試験室S1へ供給する。これにより、低温曝し試験を行う前の常温曝し試験の最終段階では、試験室S1の温度を常温に保ちつつ、その試験室S1の湿度を低下させることができる。
【0117】
ところで、常温曝し試験による試験室S1への外気導入の後、低温曝し試験への移行時に試験室S1から低温室S3に水分が入り込んで冷却器8の蒸発器に着霜が生じるのを防ぐためには、常温曝し試験の後、低温曝し試験に移行する前に試験室S1に乾燥ガスを導入する期間を別途設けて、試験室S1の湿度を低下させることも考えられる。しかし、この場合には、試験時間が増大するという問題が生じる。これに対して、この第3実施形態では、低温曝し試験を行う前の常温曝し試験の最終段階において、試験室S1の温度を常温に保ちつつ、その試験室S1の湿度を低下させることができる。このため、常温曝し試験の後、すぐに低温曝し試験のために吸入口2p及び吹出し口2qを開放して低温室S3と試験室S1とを連通状態にしても、試験室S1から低温室S3へ入り込む水分の量を低減することができる。このため、この第3実施形態では、試験時間の増大を防ぎながら、冷却器8の蒸発器に対する着霜を低減することができる。
【0118】
また、低温曝し試験から常温曝し試験への移行時、すなわち、低温ダンパ7a,7bにより吸入口2p及び吹出し口2qが閉鎖されつつ、外気ダンパ3a,3bにより外気導入口2e及び排気口2fが開放されていく時には、試験室S1に導入される外気中の水分がまだ完全に閉鎖されていない吸入口2pを通って低温室S3へわずかに侵入する場合がある。低温室S3へ侵入した水分は、以降に再び実施する低温曝し試験の準備段階において冷却器8により冷気を生成する際、その冷却器8の蒸発器に対する着霜の原因となる。また、低温曝し試験の準備段階では、低温室S3の温度が低下するのに伴って低温室S3が試験槽2の外部に対して負圧となる虞がある。この場合には、外気が、試験槽2に存在する各種の微小な隙間(試験槽2の外部から低温室S3へ図略の冷凍配管を通すための孔のシール部の隙間や、試験槽2のうち低温室S3を形成する部分に設けられた図略のメンテナンス蓋の隙間等)を通じて低温室S3にわずかに侵入する虞がある。この場合も、低温室S3に侵入する外気に含まれる水分が冷却器8の蒸発器に対する着霜の原因となる。これに対して、この第3実施形態では、低温曝し試験の準備段階において冷却器8に冷気を生成させる際、バイパス部28により低温室S3へ乾燥冷却ガスを導入させるので、低温室S3を比較的乾燥した状態にすることができるとともに、低温室S3を試験槽2の外部に対して陽圧に保って前記微小な隙間を通じての低温室S3への外気の侵入を防ぐことができる。このため、低温曝し試験の準備段階での冷却器8の蒸発器に対する着霜を低減することができる。
【0119】
この第3実施形態による上記以外の効果は、上記第2実施形態による効果と同様である。
【0120】
(第4実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態による環境試験装置の構成について説明する。
【0121】
この第4実施形態による環境試験装置では、ガス供給部20に貯留タンク40と乾燥空気供給部42とが設けられており、乾燥空気供給部42から供給される乾燥空気と、気液分離タンク22eから導出される乾燥した冷却ガスとが貯留タンク40で混合された後、試験室S1へ導入されるようになっている。
【0122】
具体的には、貯留タンク40は、ガス供給部20のガス導入管25のうち気液分離タンク22eに接続された端部とガス供給切換弁26が設けられた箇所との間の部分に設けられている。この貯留タンク40は、気液分離タンク22eからガス導入管25を通じて試験室S1へ導入する乾燥冷却ガスを一旦貯留するためのものである。この貯留タンク40内の圧力は、試験室S1内の圧力よりも高く、かつ、気液分離タンク22e内の圧力以下の圧力となっている。
【0123】
ガス導入管25のうち貯留タンク40と気液分離タンク22eとの間の部分には、逆流防止弁44が設けられている。この逆流防止弁44により、貯留タンク40からガス導入管25を通じて気液分離タンク22e側へガスが逆流するのが防止されている。
【0124】
乾燥空気供給部42は、貯留タンク40に乾燥空気を供給可能に構成されている。この乾燥空気供給部42は、乾燥空気生成部42aと、貯留タンク導入管42bと、排水管42cと、ポンプ42dとを有する。
【0125】
乾燥空気生成部42aは、液化冷却ガスが導入された気液分離タンク22eの外面と熱交換することにより空気を冷却して除湿し、それによって乾燥空気を生成するものである。この乾燥空気生成部42aは、その内部を空気が流通可能な細い管状の部材からなり、気液分離タンク22eの外面に巻回されている。この乾燥空気生成部42aは、気液分離タンク22eの外面と接触してその気液分離タンク22eと熱交換可能な材料によって形成されている。そして、この乾燥空気生成部42aには、その一端部から空気が導入されるようになっている。この乾燥空気生成部42aの一端部から導入される空気は、大気から導入される。また、乾燥空気生成部42aの他端部は、貯留タンク導入管42bを介して貯留タンク40に接続されている。
【0126】
排水管42cは、貯留タンク導入管42bに接続されている。この排水管42cは、乾燥空気生成部42aにおける空気の除湿によって生じる水を排出するためのものである。貯留タンク導入管42bに対する排水管42cの接続部分には、図略のタンク状の部分が設けられている。このタンク状の部分の上部から除湿後の空気と除湿によって生じた水とが共に導入され、乾燥空気だけがタンク状の部分の上部から貯留タンク導入管42bを通じて貯留タンク40側へ流れる一方、タンク状の部分の下部に溜まった水は、そのタンク状の部分の下部から排水管42cを通じて排出される。なお、このタンク状の部分の代わりに、遠心分離器等の分離器を貯留タンク導入管42bに対する排水管42cの接続部分に設けて乾燥空気と除湿によって生じた水とを強制的に分離し、乾燥空気だけを貯留タンク導入管42bを通じて貯留タンク40側へ流すとともに、除湿によって生じた水は排水管42cを通じて排出してもよい。
【0127】
ポンプ42dは、貯留タンク導入管42bのうち排水管42cが接続された箇所と貯留タンク40に接続された箇所との間の部分に設けられている。
【0128】
そして、この第4実施形態の環境試験装置では、環境試験の開始時点においてガス供給切換弁26が閉じられた状態で、ポンプ42dが駆動されることによって乾燥空気生成部42aに大気から空気が導入される。一方、気液分離タンク22eには、冷却液供給源21(図3参照)から供給配管23を通じて液化冷却ガスが導入されている。これにより、気液分離タンク22eの外面は、低温となっている。
【0129】
乾燥空気生成部42a内に導入された空気は、乾燥空気生成部42aを介してこの低温の気液分離タンク22eの外面と熱交換する。これにより、乾燥空気生成部42a内の空気は、冷却されて除湿される。それによって、乾燥空気生成部42a内で乾燥空気が生成される。この生成された乾燥空気は、ポンプ42dの駆動により乾燥空気生成部42aから貯留タンク導入管42bを通じて貯留タンク40へ導入される。一方、乾燥空気生成部42aでの空気の除湿に伴って生じる水は、排水管42cを通じて排出される。また、貯留タンク40には、気液分離タンク22eで分離された乾燥冷却ガスがガス導入管25を通じて導入される。これにより、貯留タンク40内で乾燥空気と乾燥冷却ガスとが混合される。そして、制御装置16(図1参照)がガス供給切換弁26を開状態にしたとき、貯留タンク40からガス導入管25を通じて乾燥空気と乾燥冷却ガスとの混合ガスが試験室S1へ供給される。
【0130】
この第4実施形態による環境試験装置の上記以外の構成及び動作は、上記第2実施形態による環境試験装置の構成及び動作と同様である。
【0131】
以上説明したように、この第4実施形態では、乾燥空気供給部42から供給された乾燥空気と気液分離タンク22eからガス導入管25を通じて導出された乾燥冷却ガスとを貯留タンク40内で混合することができる。そして、この乾燥空気と乾燥冷却ガスの混合ガスを貯留タンク40からガス導入管25を通じて試験室S1に導入することができる。このため、乾燥空気の分、試験室S1への冷却ガスの供給量を削減することができる。その結果、冷却液供給源21から供給する液化冷却ガスの消費量を低減することができる。
【0132】
また、この第4実施形態では、乾燥空気生成部42aにおいて、液化冷却ガスが導入された気液分離タンク22eの冷熱を利用して乾燥空気を生成することができる。このため、乾燥機を駆動して空気を乾燥させる構成に比べ、エネルギコストの低減を図ることができる。
【0133】
また、この第4実施形態では、乾燥空気生成部42aと気液分離タンク22eとの熱交換の際、気液分離タンク22eが温められる。それによって、気液分離タンク22e内では、液化冷却ガスの気化が促進される。このため、気液分離タンク22e内において冷却ガスを良好に生成することができる。従って、この第4実施形態では、エネルギコストの増大を防ぎつつ、乾燥空気を生成することができるとともに、気液分離タンク22e内で冷却ガスを良好に生成することができる。
【0134】
この第4実施形態による上記以外の効果は、上記第2実施形態による効果と同様である。
【0135】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0136】
例えば、供給装置14に冷却液導入部30が設けられていなくてもよい。すなわち、供給装置14にガス供給部20のみが設けられていてもよい。
【0137】
また、供給装置14が供給する乾燥ガスは、上記実施形態で示した乾燥冷却ガスに限定されない。すなわち、供給装置14が供給する乾燥ガスは、液化冷却ガスを気化させて生成した冷却ガスに限らず、乾燥空気やその他の種類の乾燥ガスであってもよい。
【0138】
また、冷却液導入部30は、試験室S1に液化冷却ガスを導入するように構成されていてもよい。この場合には、試験槽2の側壁2dのうち試験室S1を形成する部分に貫通孔を形成し、その貫通孔を通じて冷却液導入管31の端部を試験室S1内に挿入すればよい。また、冷却液導入部30は、試験室S1と低温室S3の両方に液化冷却ガスを導入するように構成されていてもよい。この場合には、冷却液導入管31を途中で2つに分岐させてその分岐した一方の管を第2導入孔2uを通じて低温室S3に挿入するとともに、分岐したもう一方の管を側壁2dの試験室S1を形成する部分に設けた貫通孔を通じて試験室S1に挿入すればよい。
【0139】
また、低温曝し試験中において、ガス供給部20から冷却ガスを試験室S1に供給することのみによって試験室S1と低温室S3の圧力を試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持してもよい。また、低温曝し試験中において、冷却液導入部30から液化冷却ガスを低温室S3に供給することのみによって試験室S1と低温室S3の圧力を試験槽2の外部の圧力以上の圧力に保持してもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、高温曝し試験、常温曝し試験、低温曝し試験及び常温曝し試験をこの順番で行う試験サイクルを繰り返す環境試験の例を示したが、低温曝し試験、常温曝し試験、高温曝し試験及び常温曝し試験をこの順番で行う試験サイクルを繰り返す環境試験を環境試験装置で行ってもよい。この場合の環境試験装置にも本発明を適用することが可能である。
【0141】
また、試験槽2内に高温室S2が設けられていなくてもよい。
【0142】
また、排気口2fとガス導入管25とは、できる限り離間して配設することが好ましい。この場合には、ガス導入管25を通じて試験室S1に導入された乾燥冷却ガスがすぐに排気口2fを通じて排出されるのを抑制することができる。
【0143】
また、図1で示した外気導入口2eと排気口2fの位置を互いに入れ替えてもよい。
【0144】
また、気液分離タンクは、図4の構成のものに限られない。
【0145】
また、外気導入用送風機3cと排気用送風機3dのうちいずれか一方を省略してもよい。
【符号の説明】
【0146】
2 試験槽
2d 壁部
2g 第1導入孔(貫通孔)
2p 吸入口(連通口)
2q 吹出し口(連通口)
3 外気導入手段
7a、7b 低温ダンパ
8 冷却器
14 供給装置
16 制御装置
21 冷却液供給源
22 冷却ガス生成部
22e 気液分離タンク
25 ガス導入管(ガス導入路)
27 加熱部
28 バイパス部
30 冷却液導入部
40 貯留タンク
42 乾燥空気供給部
42a 乾燥空気生成部
S1 試験室
S3 低温室
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容可能な試験室と前記試験室に連通口を介して繋がる低温室とが内部に設けられた試験槽と、前記低温室内で冷気を生成する冷却器と、前記連通口を開閉可能な低温ダンパと、前記試験室へ外気を導入可能な外気導入手段とを備え、前記低温ダンパに前記連通口を開放させて前記低温室から前記試験室に冷気を流入させることにより、その試験室に収容された試料を低温の雰囲気に曝す低温曝し試験と、前記外気導入手段によって前記試験室に外気を導入することによりその試験室に収容された試料を常温の雰囲気に曝す常温曝し試験とを行うことが可能な環境試験装置であって、
乾燥ガスを前記試験室に供給可能な供給装置と、
前記低温曝し試験を行うために前記低温ダンパに前記連通口を開放させるのに先立って前記供給装置に前記試験室への乾燥ガスの供給を開始させるとともに、その後、前記試験室の温度が降下する過程においても前記供給装置に前記試験室への乾燥ガスの供給を行わせる制御装置とを備えた、環境試験装置。
【請求項2】
前記供給装置は、前記乾燥ガスとして乾燥した冷却ガスを供給する、請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記供給装置は、液化冷却ガスを供給する冷却液供給源と、その冷却液供給源が供給する液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを生成可能な冷却ガス生成部と、その冷却ガス生成部において生成された乾燥した冷却ガスを前記試験室に導入可能なガス導入路とを含む、請求項2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記供給装置は、前記冷却液供給源から供給される液化冷却ガスの一部を前記低温室と前記試験室の少なくとも一方に導入可能な冷却液導入部を含む、請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記冷却ガス生成部は、前記冷却液供給源から供給される液化冷却ガスから乾燥した冷却ガスを分離可能な気液分離タンクを含み、
前記ガス導入路は、前記気液分離タンクにおいて分離された冷却ガスをその気液分離タンクから導出可能なように当該気液分離タンクに接続され、
前記冷却液導入部は、前記気液分離タンクから液化冷却ガスを導出可能なように当該気液分離タンクに接続されている、請求項4に記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記供給装置は、前記ガス導入路に設けられ、前記試験室に導入するガスを一旦貯留するための貯留タンクと、前記貯留タンクに乾燥空気を供給可能な乾燥空気供給部とを含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記乾燥空気供給部は、液化冷却ガスが導入された前記気液分離タンクの外面と熱交換することにより空気を冷却して除湿し、乾燥空気を生成する乾燥空気生成部を有する、請求項6に記載の環境試験装置。
【請求項8】
前記ガス導入路には、そのガス導入路を流れる乾燥した冷却ガスの温度を調整可能な加熱部が設けられ、
前記制御装置は、前記低温曝し試験を行う前の前記常温曝し試験の最終段階において、前記外気導入手段による前記試験室への外気の導入を停止させるとともに、前記供給装置に前記加熱部により常温に調整させた乾燥した冷却ガスを前記試験室へ供給させる、請求項3〜7のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項9】
前記供給装置は、前記試験室に加えて前記低温室にも乾燥ガスを供給可能に構成され、
前記制御装置は、前記低温曝し試験の準備段階において前記冷却器に冷気を生成させる際、前記供給装置に前記低温室への乾燥ガスの供給を行わせる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記低温曝し試験中、前記試験室と前記低温室の圧力が前記試験槽の外部の圧力以上の圧力に保持されるように前記供給装置による前記試験室への乾燥ガスの供給を行わせる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記低温曝し試験中、前記試験室と前記低温室の圧力が前記試験槽の外部の圧力以上の圧力に保持されるように、前記供給装置による前記試験室への乾燥した冷却ガスの供給と、前記冷却液導入部による前記低温室と前記試験室の少なくとも一方への液化冷却ガスの導入とのうち少なくとも一方を行わせる、請求項4に記載の環境試験装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記低温曝し試験から前記常温曝し試験への移行時に前記外気導入手段により前記試験室に外気を導入するのに先立って、前記供給装置に乾燥ガスを前記試験室へ供給させる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−271233(P2010−271233A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124213(P2009−124213)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】