説明

環式カーボネートを製造するための方法および触媒

多価アルコールとジアルキルカーボネートとを不均質触媒の存在で反応させることによって環式カーボネートを製造する方法であって、不均質触媒が塩基性混合酸化物または担体上に施こされた塩基性酸化物であることを特徴する、多価アルコールとジアルキルカーボネートとを不均質触媒の存在で反応させることによって環式カーボネートを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコールとジアルキルカーボネートとを不均質触媒の存在で反応させることによって環式カーボネートを製造する方法に関し、この方法は、不均質触媒が塩基性混合酸化物または担体上に施こされた塩基性酸化物であることによって特徴付けられている。
【0002】
環式カーボネート、殊に炭酸グリセリンは、溶剤、化粧品のための添加剤および清浄剤として重要である。また、この環式カーボネートは、エポキシ樹脂、ポリカーボネートおよびポリウレタンの製造に使用される。
【0003】
環式カーボネート、例えば炭酸グリセリンは、多価アルコールとジアルキルカーボネートとを触媒の存在で反応させることによって製造されることができる。
【0004】
均質触媒および不均質触媒の使用は、公知である。
【0005】
米国特許第5091543号明細書の記載によれば、アルキルアンモニウム塩またはピリジニウム塩は、均質触媒として使用される。
【0006】
欧州特許出願公開第739888号明細書には、触媒としてのゼオライトの使用が開示されている。グリセリンとジアルキルカーボネートとからの反応混合物は、ゼオライトを不均質触媒として含有する。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005060732号明細書には、塩基性触媒の使用が記載されている。塩基性触媒は、殊にアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、例えば相応する酸化物、水酸化物またはクロリドである。好ましいのは、クロリドと酸化物とからなる混合物の使用である。記載されたアルカリ金属クロリドおよびアルカリ土類金属クロリド、殊に塩化リチウムは、少なくとも部分的に水溶性である。
【0008】
均質触媒は、原則的に、この均質触媒が生成物混合物から分離するのが困難であるという欠点を有する。これに対して、不均質触媒は、簡単に再び取得され、および改めて使用されることができる。
【0009】
従って、上記反応のためには、できるだけ短い反応時間でできるだけ高い収量および選択性を生じる不均質触媒が望ましい。更に、不均質触媒は、反応条件下で触媒から溶解し(浸出し)、こうして望ましくない不純物を生成物混合物中に搬入する成分をできるだけ僅かに含有すべきである。殊に、例えば炭酸グリセリンを後処理する場合、この種の不純物の存在は、臨界的であることができ、および炭酸グリセリンの蒸留の際に爆発能を有するグリシドールへの分解を惹起しうる。更に、触媒の必要量は、できるだけ僅かであるべきである。
【0010】
従って、本発明の目的は、この種の触媒が使用されるような、環式カーボネートの製造法であった。
【0011】
それに応じて、冒頭に定義されたような方法が見い出された。
【0012】
本発明による方法の場合、環式カーボネートは、多価アルコールとジアルキルカーボネートとの反応によって製造される。
【0013】
グリセリンおよびジメチルカーボネートの例で表現すれば、この反応は、次の反応方程式に従って進行する:
【化1】

【0014】
出発物質について
多価アルコールとして、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物がこれに該当し、この化合物は、ジアルキルカーボネートとの反応によって環系を形成する。
【0015】
好ましい多価アルコールは、互いに相対的に1,2位、1,3位または1,4位に存在する少なくとも2個のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物である。1,2位には、隣接するC原子上に2個のヒドロキシル基が存在し、上記の反応の場合には、5員環が形成され;1,3位においては、相応して6員環が形成され、1,4位の場合には、7員環が形成される。好ましいのは、1,2位であり、したがって、5員環が形成される。
【0016】
好ましくは、多価アルコールは、脂肪族ジオールまたはトリオールであり、この場合2個のヒドロキシル基は、1,2位に存在する。多価アルコールは、有利に他の官能基を含有せず、および殊に300g/mol未満の分子量を有する。
【0017】
特に好ましいのは、グリセリンである。
【0018】
ジアルキルカーボネートとして、例えばC1〜C10−アルキル基を有するカーボネートが適しており;殊に、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートが挙げられる。
【0019】
特に好ましいのは、ジメチルカーボネートである。
【0020】
不均質触媒について
本発明によれば、不均質触媒が使用される。不均質触媒は、反応条件下で固有相を形成する。本発明の場合には、不均質触媒は、固体であり、一方、出発物質は、液状またはガス状である。
【0021】
不均質触媒として、塩基性混合酸化物または担体上に施こされた塩基性酸化物が使用される。
【0022】
混合酸化物は、少なくとも2つの異なる元素の酸化物である。混合酸化物は、この混合酸化物が水中でpH値の上昇を生じる場合には、塩基性である。
【0023】
混合酸化物は、周期律表の第Ia主族、第IIa主族、第IIIa主族および第IVa主族、周期律表の第IIb副族、第IIIb副族および第IVb副族ならびにランタニドの金属の酸化物から選択された少なくとも2つの酸化物の混合物である。酸化物の選択は、得られた混合酸化物が塩基性であるという条件付きで行なわれる。
【0024】
そのために、有利には、混合酸化物は、殊に第IIa主族からの少なくとも1つの酸化物を含有するが;しかし、第IIa族からの酸化物の併用なしに塩基性混合酸化物であってもよく、例えば酸化亜鉛(ZnO)と酸化アルミニウム(Al23)とからなる混合酸化物がこれに該当する。
【0025】
特に好ましいのは、周期律表の第Ia族、第IIa族、第IIIa族、第Ib族および第IIb族の金属の酸化物から構成されている混合酸化物であり、この場合第IIa主族の金属の少なくとも1つの酸化物が混合酸化物中に含有されている。
【0026】
混合酸化物は、2つを上廻る金属酸化物を含有していてよいが、しかし、多数の異なる金属酸化物は、混合酸化物中には不要である。既に、2個または3個の金属酸化物、殊に2個の金属酸化物からなる混合酸化物は、良好に好適である。
【0027】
1つの好ましい実施態様において、不均質触媒は、担体上に施こされた塩基性酸化物である。
【0028】
担体は、任意の無機材料からのものであってよく、例えばゼオライト、炭素、ポリマー、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、二酸化珪素−酸化アルミニウム、二酸化珪素−二酸化チタン、二酸化珪素−二酸化ジルコニウム、二酸化チタン−二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム−酸化アルミニウムが挙げられる。
【0029】
好ましくは、担体は、無機担体、殊に金属酸化物または非金属酸化物である。
【0030】
殊に、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物からなる担体が重要である。
【0031】
殊に好ましいのは、酸化ジルコニウムである。
【0032】
担体上には、少なくとも1つの塩基性酸化物が施されている。これは、例えば周期律表の第Ia主族、第IIa主族、第IIIa主族および第IVa主族、周期律表の第IIb副族、第IIIb副族および第IVb副族ならびにランタニドの金属の金属酸化物である。
【0033】
担体上には、多数の酸化物、殊に上記の混合酸化物が施されていてもよい。
【0034】
好ましくは、担体上には、第Ia主族または第IIa主族、第IIIb副族またはランタニドの金属の少なくとも1つの金属酸化物が施されている。
【0035】
特に好ましいのは、アルカリ土類金属酸化物(第IIa主族)、例えばCaO、BaOまたはMgOである。
【0036】
殊に好ましいのは、CaOである。
【0037】
殊に好ましい実施態様において、不均質触媒は、少なくとも1つの他の金属酸化物、殊にアルカリ土類金属酸化物、例えばCaO、BaOまたはMgOが施こされた、金属酸化物、殊にZrO2、TiO2、SiO2またはAl23、殊に有利にZrO2からなる担持触媒である。殊に、CaOが施された、二酸化ジルコニウムからなる担体を有する塩基性担持触媒が重要である。
【0038】
施された金属酸化物は、大部分が担体の表面上に存在するが、しかし、金属酸化物、または相応する金属カチオンは、十分に均一に担体中に分布していてよく;これは、当業者には、当該金属カチオンを有する酸化物担体のドーピングと呼ばれている。担体中への、または担体上での施与または分配の種類は、触媒の種類にとって二次的に重要なことであり、担体の製造法および/または多孔度のみに依存する。
【0039】
担持触媒中に施与された金属酸化物の含量は、特に全担持触媒に対してアルカリ土類金属カチオン0.1〜25質量%、特に有利に0.5〜10質量%の量に相当する。
【0040】
触媒は、付加的に、例えばその他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、カルコゲンまたはハロゲンでのさらなるドーピングによって変性されてよい。しかし、触媒は、特に不均質触媒から反応条件下で溶解し得、およびこうして"浸出"の問題をまねく化合物の成分を全く含有しないかまたは場合によっては前記成分を僅かに含有する。従って、水溶性のアルカリ金属塩、例えばLiClの含量は、できるだけ僅かである。特に、水溶性のアルカリ金属塩の含量は、不均質触媒100質量部に対して0.5質量部未満、特に有利に0.1質量部未満である。
【0041】
不均質触媒は、粉末の形または有利に0.1〜5mm、有利に1〜3mmの特有の直径を有する成形体、例えばストランド、砕石、リング、中空円筒体、球またはタブレットの形で使用されることができる。この場合、特有の直径は、成形体の体積と幾何学的成形体の表面積からの商の6倍となる。触媒には、成形体の製造のために結合剤が添加されてよい。
【0042】
触媒は、例えば0.05〜1.0ml/gの細孔容積を有する細孔を有することができる。
【0043】
不均質触媒の製造について
塩基性混合酸化物は、当業者に公知の常法により製造することができる。
【0044】
塩基性混合酸化物の製造のために、望ましい金属塩は、最初に水中に溶解されることができ、引続き適当な沈殿剤(例えば、アンモニア水溶液、アルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩の溶液、例えば炭酸ナトリウム、ウロトロピン等)で沈殿されることができる。その後に、得られた固体は洗浄および乾燥されることができ、例えば噴霧乾燥によって乾燥されることもできる。最後に、得られた生成物は、直接に、または後の使用の直前で200〜1200℃、殊に400〜600℃の温度で、例えば空気または窒素の下で活性化されてよい。
【0045】
また、塩基性担持触媒は、当業者に公知の常法により製造されることができる。
【0046】
この場合も、特に最初に望ましい金属塩の水溶液が製造される。引続き、担体は前記溶液で処理される。この場合、前記溶液の量は、完全に、または殆んど完全に担体によって吸収される(水吸収に対する含浸)ように算定されることができる。しかし、触媒は、水溶液中に分散されてもよく、引続き溶液から、例えば濾過によって分離されてもよい。引続き、再び活性化は、高い温度で、上記の記載と同様に行なうことができる。
【0047】
方法について
出発物質は、液相または気相中で不均質触媒の存在下で反応されてよい。
【0048】
上記の出発物質、殊にグリセリンおよびジメチルカーボネートの場合、反応は、有利に液相中で行なわれる。
【0049】
多価アルコールまたはジアルキルカーボネートは、過剰量で使用されることができる。好ましい実施態様において、ジアルキルカーボネート、特にジメチルカーボネートは、過剰量で使用され、例えば多価アルコール(グリセリン)1モルに対してジアルキルカーボネート1.1〜10モル、殊に1.5〜8モルまたは1.5〜5モルが使用されてよい。
【0050】
反応は、常圧、減圧または過圧で行なうことができる。特に、反応は、常圧で実施される。
【0051】
反応は、特に高められた温度、例えば30〜100℃、殊に50〜90℃の温度で実施される。
【0052】
反応は、非連続的(バッチ形式、即ち全ての出発生成物の全体量の装入下)、半連続的(反応中の出発生成物の一部分の供給)または連続的に実施されることができる。連続的な実施の場合、特に多価アルコールならびにジアルキルカーボネートは、連続的に供給される。
【0053】
不均質触媒は、特に多価アルコール100質量部に対して0.1〜10質量部、特に有利に0.2〜5質量部の量で使用される。
【0054】
本発明による方法によって、環式カーボネートの高い収量および選択性は、短い反応時間で達成される。不均質触媒の必要量は、僅かである。
【0055】
不均質触媒は、簡単に、例えば濾過によって生成物混合物から分離されることができ、場合によっては後処理および再使用されることができる。"浸出"の問題をまねく、不均質触媒中の可溶性成分の含量は、省略されうる。
【0056】
不均質触媒は、長い耐用年数も有する。連続的な処理形式の場合、高い収量および選択性は、長い時間に亘って維持される。
【0057】
非連続的な処理形式(バッチ法による製造)の場合、触媒は、繰返し使用されてよく;環式カーボネートをバッチ法により製造した後、触媒は、生成物から分離され、改めてバッチ法による製造に再び使用されてよく;これは、数回、例えば同一の触媒を再使用しながら10回まで繰り返されてよい。
【実施例】
【0058】
例:
A)触媒の製造
製造された触媒の概要は、第1表に記載されている。
【0059】
実施例1:
沈殿釜中に水10 lを装入し、次に同時にNa2CO3水溶液ならびに硝酸カルシウムと硝酸アルミニウムとからなる水溶液(CaO4.81kgおよびAl236.19kgを含有する溶液134kg)を攪拌しながら80℃およびpH5.5で沈殿させた。Na2CO3溶液全部で190kgの添加後、最終pH値は、7.8であった。生成物を濾過し、水で洗浄し、および100℃で16時間乾燥させた。この乾燥させた生成物19.06kgを水10.69 lおよびポリエチレンオキシド190gと一緒にして混練し、1.5mmのストランドに押出した。このストランドを120℃で16時間乾燥させ、最終的に空気中で600℃で1時間か焼した。35%のCaO含量および65%のAl23含量を有するストランド15.1kgが得られた。
【0060】
実施例2:
沈殿釜中に水10 lを装入し、次に同時にNa2CO3水溶液ならびに硝酸マグネシウムと硝酸亜鉛と硝酸アルミニウムとからなる水溶液(MgO1.56kg、ZnO3.25kgおよびAl238.19kgを含有する溶液140kg)を攪拌しながら80℃およびpH5.5で沈殿させた。Na2CO3溶液全部で190kgの添加後、最終pH値は、7.8であった。生成物を濾過し、水で洗浄し、および100℃で16時間乾燥させた。この乾燥させた生成物18.62kgを水4.81 lと一緒にして混練し、1.5mmのストランドに押出した。このストランドを120℃で16時間乾燥させ、最終的に空気中で600℃で1時間か焼した。11%のMgO含量、25%のZnO含量および64%のAl23含量を有するストランド12.1kgが得られた。
【0061】
実施例3:
酸化ジルコニウム150kg(材料D9−89、BASF)を70%のSilres MSE 100 16.65kg(Wacker社)、水35 lおよびポリエチレンオキシド1.5kgと一緒にして60分間混練した。引続き、この材料を1.5mmのストランドに押出し、このストランドをベルト型か焼炉(Bandkalzinierer)上で120℃で一晩中、乾燥させ、引続き580℃で2時間か焼した。白色の酸化ジルコニウムストランド143.8kgが得られた。
【0062】
実施例4:
実施例3からの酸化ジルコニウムストランド120gをフラスコ中に供給し、Ca(NO32*4H2O29.5gと水38gとからなる澄明な溶液を添加した。この材料を数回良好に混合し、引続き16時間120℃で空気中で乾燥させ、最終的に10K/分の加熱速度で500℃で2時間空気中でか焼した。3.5%のCa含量を有する白色のストランド123.6gが得られた。
【0063】
実施例5:
3mmのストランドの形の酸化ジルコニウム200g(材料SZ 31108、Norpro社)を500℃で5時間空気中でか焼した。このストランドをフラスコ中に供給し、Ca(NO32*4H2O93.74gと水80.4gとからなる澄明な溶液を添加した。次に、含浸したストランドを室温で30分間、およびさらに80℃で30分間ロータリーエバポレータで予め乾燥させた。次に、ストランドを100℃で16時間空気中で乾燥させ、最終的に2K/分の加熱速度で500℃で16時間空気中でか焼した。6.5%のCa含量を有するベージュ色のストランド226.9gが得られた。
【0064】
実施例6:
3mmのストランドの形の酸化ジルコニウム200g(材料SZ 31108、Norpro社)を500℃で5時間空気中でか焼した。このストランドをフラスコ中に供給し、Ca(NO32*4H2O155.44gと水80.4gとからなる澄明な溶液を添加した。次に、含浸したストランドを室温で30分間、およびさらに80℃で30分間ロータリーエバポレータで予め乾燥させた。次に、ストランドを100℃で16時間空気中で乾燥させ、最終的に2K/分の加熱速度で500℃で16時間空気中でか焼した。1.7%のMg含量を有する白色のストランド206.4gが得られた。
【0065】
実施例7:
1.5mmのストランドの形の酸化チタン120g(材料 S 150、Finnti社)をフラスコ中に供給し、Ca(NO32*4H2O29.5gと水62gとからなる澄明な溶液を添加した。この材料を数回良好に混合し、引続き16時間120℃で空気中で乾燥させ、最終的に10K/分の加熱速度で500℃で2時間空気中でか焼した。4.2%のCa含量を有する白色のストランド124.2gが得られた。
【0066】
実施例8:
1.5mmのストランドの形の二酸化珪素120g(材料 D11−10、BASF社)をフラスコ中に供給し、Ca(NO32*4H2O29.5gと水166gとからなる澄明な溶液を添加した。この材料を数回良好に混合し、引続き120℃で16時間空気中で乾燥させ、最終的に10K/分の加熱速度で500℃で2時間空気中でか焼した。
【0067】
4.2%のCa含量を有する白色のストランド124.5gが得られた。
【0068】
実施例9:
1.5mmのストランドの形の酸化アルミニウム120g(材料 D10−10、BASF社)をフラスコ中に供給し、Ca(NO32*4H2O29.5gと水144gとからなる澄明な溶液を添加した。この材料を数回良好に混合し、引続き16時間120℃で空気中で乾燥させ、最終的に10K/分の加熱速度で500℃で2時間空気中でか焼した。3.3%のCa含量を有する白色のストランド123.8gが得られた。
【0069】
実施例10:
炭酸カルシウム2.6kgを800℃で2時間か焼し、窒素の下でさらに加工した。生じたCaO粉末1.4kgをステアリン酸マグネシウム42gと混合した。この混合物を回転式タブレット成型機上で25kNのプレス力で5×3mmのタブレットに加工した。最終的にこのタブレットを450℃で2時間空気中でか焼した。
【0070】
実施例11:
MgO顆粒1.5kg(Magnesia社)をステアリン酸マグネシウム45gと混合した。この混合物を回転式タブレット成型機上で12.4kNのプレス力で3×3mmのタブレットに加工した。最終的にこのタブレットを450℃で2時間空気中でか焼した。
【0071】
B)炭酸グリセリンを製造するための例
試験を水遠心分離機を備えたガラス製攪拌装置中で還流下に実施した。
【0072】
標準バッチ量:
攪拌機および還流冷却器を備えた四口フラスコ中に、グリセリン23g(0.25モル)(無水、最純;99%超、Merck社)、炭酸ジメチル90g(1モル)(99%、ACROS社)および触媒バスケット中の触媒0.6g(=グリセリンに関連して2.6質量%)を装入した。反応混合物を80℃に加熱した。反応経過をGC(30mのDB5カラム)により追跡した。反応が終結した後、この反応混合物を冷却し、触媒を分離した。その後、沈殿物を真空中で留去し、粗製生成物を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
触媒1および2は、本発明による混合酸化物である。触媒4〜9は、本発明による担持触媒であり、触媒10および11は、比較のためのものである。
【0075】
触媒の浸出
触媒の安定性を比較しうるために、Roehm GmbH社の出願(DE 10 2005 060 732)に記載された触媒および上記の触媒No.4を用いて試験を実施した。DE 10 2005 060 732からの触媒は、CaOおよびLiClの乾燥された混合物またはか焼された混合物であり;双方の場合に強い浸出が観察された。これとは異なり、触媒4は、アルカリ金属のドーピングもハロゲン化物のドーピングもなく、重大な浸出を全く示さない(第2表)。
【0076】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールとジアルキルカーボネートとを不均質触媒の存在で反応させることによって環式カーボネートを製造する方法において、不均質触媒が塩基性混合酸化物または担体上に施こされた塩基性酸化物であることを特徴する、多価アルコールとジアルキルカーボネートとを不均質触媒の存在で反応させることによって環式カーボネートを製造する方法。
【請求項2】
グリセリンをジアルキルカーボネートと反応させ、炭酸グリセリンに変える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネートである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
不均質触媒は、担体上に施こされた塩基性酸化物である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
担体は、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物からなる担体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
担体は、酸化ジルコニウムからなる担体である、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
塩基性酸化物は、アルカリ土類金属酸化物である、請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
塩基性酸化物は、酸化カルシウムである、請求項4から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
不均質触媒は、不均質触媒100質量部に対して水溶性アルカリ金属塩0.1質量部未満を含有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
不均質触媒を多価アルコール100質量部に対して0.1〜10質量部の量で使用する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法によって得られた環式カーボネート。
【請求項12】
溶剤、化粧品のための添加剤および清浄剤として、またはエポキシ樹脂、ポリカーボネートおよびポリウレタンを製造するための出発物質としての請求項11記載の環式カーボネートの使用。
【請求項13】
二酸化ジルコニウムからなる担体およびアルカリ土類金属酸化物の含量を有する担持触媒。
【請求項14】
二酸化ジルコニウムからなる担体および酸化カルシウムの含量を有する担持触媒。
【請求項15】
アルカリ土類金属カチオンの含量が全担持触媒に対して0.1〜25質量%である、請求項13または14記載の担持触媒

【公表番号】特表2012−505853(P2012−505853A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531459(P2011−531459)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063249
【国際公開番号】WO2010/043581
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】