説明

環形照明ランプ

【課題】フィラメント電極に接続された一対のリード線同士の接触を広範囲に亘って防止することができる環形照明ランプを提供する。
【解決手段】環形発光管1内に配置されたフィラメント電極10に接続された一対のリード線11a、11bが、環形発光管1の端部に設けられたフレア13を貫通して、フレア13とその内側に設けられた細管12との間の配線空間30を通して環形発光管1の外部に引き出されている環形蛍光ランプにおいて、配線空間30が前記リード線の線形以下の狭窄部31a〜31dによって、フレア13の略全長に亘って少なくとも2つの領域に区分され、区分された一方の領域に一対のリード線11a、11bの一方が配置され、区分された他方の領域に一対の一対のリード線11a、11bの他方が配置されていることを特徴とする環形蛍光ランプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環形照明ランプに関するものであり、特に、フィラメント電極に接続された一対のリード線同士の接触による短絡を防止するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な環形蛍光ランプは、両端が対向するように屈曲形成された環形発光管と、その環形発光管の両端を気密に封止する一対のステムと、一対のステムの間に跨って取り付けられた口金とを有する。
【0003】
上記環形発光管は、中空管状で、内壁面には蛍光体膜が形成されている。また、環形発光管の内部は減圧され、アルゴンガス等の希ガスや水銀が充填されている。
【0004】
上記一対のステムのそれぞれは、フィラメント電極と、一端がフィラメント電極に接続された一対のリード線と、細管と、フレアとから構成されている。
【0005】
上記フレアは、底面を有する略筒状のガラス部材である。フレアは、底面が環形発光管の内部に配置される向きで該環形発光管の端部に挿入され、該環形発光管に熱溶着されている。
【0006】
上記細管は、環形発光管の端部に熱溶着されたフレアの内側に配置されている。具体的には、細管の長手方向一端側はフレアの内部に配置され、他端側はフレアの開口部から該フレアの外側に突出している。ここで、フレアの開口部とは、上記底面と対向する開放された端部を意味する。尚、細管は、環形蛍光ランプの製造過程において排気管として利用されたものである。具体的には、フレアの底面には通孔が形成されており、環形蛍光ランプの製造過程のある段階までは、環形発光管の内部が細管を介して外部と連通している。そして、細管を通して環形発光管内部の気体が排気されたり、内部に希ガスなどが導入されたりする。然る後、細管は適当な長さに切断され、切断された端部は加熱溶融されて封止される。先に、フレアの開口部から突出している、と説明した細管の他端は、このようにして封止された側の端部のことである。
【0007】
再びステムの説明に戻る。上記一対のリード線のそれぞれは、フレアとその内側に配置されている細管との間の隙間に、細管の長手方向に沿って配置されている。さらに、各リード線の一端(以下「先端」と呼ぶ。)は、フレアの底面を貫通して環形発光管の内部に引き込まれている。一方、各リード線の他端(以下「後端」と呼ぶ。)は、フレアの開口部から該ステムの外に引き出されている。
【0008】
上記フィラメント電極は、環形発光管の内部に配置され、フレア底面を貫通して環形発光管の内部に引き込まれている各リード線の先端に接続されている。換言すれば、フィラメント電極の両端は、一対のリード線の先端によって支持されている。一方、リード線の後端は、上記口金に設けられた端子に接続されている。この端子は、環形蛍光ランプに電力を供給するためのコネクタが接続される端子である。
【0009】
ここで、口金は、コネクタの装着性を向上させるために、環形発光管の外周に沿ってある程度回動できるように取り付けられている。しかし、上記のように、リード線の後端は口金に設けられている端子に接続されているので、口金が回動すると、リード線に張力が作用し、リード線がステムと細管との間の隙間内で変位する。このとき、変位の方向や変位量によっては、一対のリード線が互いに接触し、短絡する虞があった。特に、近年の環形蛍光ランプの細管化に伴って、上記リード線同士の短絡の可能性が高くなった。すなわち、環形蛍光ランプの細管化に伴って、フレア及び細管も細管化され、その結果、一対のリード線は初期状態においても従来に比して近接している。従って、リード線の変位量が従来よりも少ない場合であっても、一対のリード線が互いに接触してしまう場合があった。
【0010】
そこで、特許文献1によって、リード線が配置されているフレアと細管との間の隙間に絶縁樹脂を注入して、リード線を固定する方法が提案されている。また、特許文献2によって、フレアの長手方向の一部を部分的に変形させて、細管に近接させることにより、リード線の変位を規制する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−110098号公報
【特許文献2】特開2006−19045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1や特許文献2によって提案されている方法には次のような問題があった。すなわち、特許文献1記載の方法では、フレアと細管との間の隙間に絶縁樹脂等の絶縁体を注入する必要がある。しかし、上記隙間はそもそも狭く、環形蛍光ランプの細管化に伴ってますます狭くなる傾向にある。このような狭小な隙間に、所定量の絶縁樹脂等を正確に充填することは困難であり、歩留まりを低下させる可能性が大きい。また、絶縁樹脂等のコストや、絶縁樹脂等を充填する工程が加わることによるコストアップも無視できない。
【0012】
特許文献2記載の方法では、フレアの長手方向一部を部分的に変形させている。しかし、リード線はフレアの長手方向全域に亘って配置されている。従って、特許文献2によって提案されている方法では、リード線がフレアと重複している部分のうち、フレアが変形されている部分及びその近傍におけるリード線の接触は防止できても、それ以外の部分における接触を十分に防止することはできない。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィラメント電極に接続された一対のリード線同士の接触をなるべく広範囲に亘って防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の環形蛍光ランプでは、環形発光管内に配置されたフィラメント電極に接続された一対のリード線が、前記環形発光管の端部に設けられたフレアを貫通して、該フレアとその内側に設けられた細管との間の配線空間を通して前記環形発光管の外部に引き出されている。また、前記配線空間は前記リード線の線形以下の狭窄部によって、前記フレアの略全長に亘って少なくとも2つの領域に区分され、区分された一方の領域に前記一対のリード線の一方が配置され、区分された他方の領域に前記一対のリード線の他方が配置されている。
【0015】
前記狭窄部は、前記フレアの内周面と対向する前記細管の外周面の少なくとも2箇所を前記フレアの略全長に渡って前記内周面に近接させることによって形成されていることが好ましい。この場合、前記細管の断面形状を楕円形とし、細管断面の長軸方向における2つの頂点と、これら頂点と対向する前記フレアの内周面との間に前記狭窄部を形成することが好ましい。または、前記細管に、前記フレアの内周面に近接する方向に突出した少なくとも2つの凸部を設け、それら凸部と前記フレアの内周面との間に前記狭窄部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィラメント電極に接続された一対のリード線同士の接触を広範囲に亘って防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の環形照明ランプの実施形態の一例について図1〜図6を参照して説明する。図1は、本実施形態の環形蛍光ランプの外観を示す平面図である。図2は、図1に示す口金3の近傍の構造を示す拡大透視図である。図3は、本実施形態の環形蛍光ランプを構成するステムの構造を示す拡大平面図である。図4は、図3のA-A断面図である。
【0018】
上記各図に示すように示すように、本実施形態の環形照明ランプは、両端が対向するように屈曲形成された環形発光管1と、環形発光管1の両端を気密に封止する一対のステム2と、一対のステム2の間に跨って取り付けられた口金3とを有する。
【0019】
図1に示すように、環形発光管1は、中空管状で、内壁面には不図示の蛍光体膜が形成されている。また、環形発光管1の内部は減圧され、アルゴンガス等の希ガスや水銀が充填されている。
【0020】
主に図3に示すように、一対のステム2のそれぞれは、フィラメント電極10と、一端がフィラメント電極10に接続された一対のリード線11a、11bと、細管12と、フレア13とから構成されている。
【0021】
フレア13は、底面20を有する略筒状のガラス部材である。フレア13は、底面20が環形発光管1(図1)の内部に配置される向きで該環形発光管1の端部に挿入され、該環形発光管1に熱溶着されている。
【0022】
主に図3に示すように、細管12は、環形発光管1(図1)の端部に熱溶着されたフレア13の内側に配置されている。具体的には、細管12の長手方向一端側はフレア13の内部に配置され、他端側はフレア13の開口部21から該フレア13の外側に突出している。ここで、フレア13の開口部21とは、底面20と対向する開放された端部を意味する。尚、細管12が製造過程において排気管として利用されたものであること、及びその利用形態は既に説明したので、ここでの説明は省略する。
【0023】
主に図3に示すように、一対のリード線11a、11bのそれぞれは、フレア13とその内側に配置されている細管12との間の隙間に、細管12の長手方向に沿って配置されている。本発明では、一対のリード線11a、11bが配置されているフレア13と細管12との間の隙間を「配線空間」と呼ぶ。図示されている配線空間30に配置されている各リード線11a、11bの一端(以下「先端」と呼ぶ。)は、フレア13の底面20を貫通して環形発光管1の内部に引き込まれている(図2参照)。一方、各リード線の他端(以下「後端」と呼ぶ。)は、フレア13の開口部21から該フレア13の外に引き出されている。
【0024】
図2に示すように、フィラメント電極10は、環形発光管1の内部に配置され、フレア13の底面20(図3)を貫通して環形発光管1の内部に引き込まれている各リード線11a、11bの先端に接続されている。換言すれば、フィラメント電極10の両端は、一対のリード線11a、11bの先端によって支持されている。一方、リード線11a、11bの後端は、口金3に設けられた不図示の端子に接続されている。この端子は、環形蛍光ランプに電力を供給するためのコネクタが接続される端子である。ここで、口金3は、上記コネクタの装着性を向上させるために、環形発光管1の外周に沿ってある程度回動できるように取り付けられていることは既述のとおりである。
【0025】
以上が本実施形態の環形蛍光ランプの基本的構成である。次に、本発明の環形蛍光ランプの特徴であるステム2について、主に図4を参照しながらより詳細に説明する。図4は、図3のA-A断面図である。
【0026】
図4に示すように、ステム2を構成しているフレア13は略円形の断面形状を有する。一方、フレア13の内側に挿入されている細管12は略楕円形の断面形状を有する。そして、細管断面の長軸方向における2つの頂点12aと、これら頂点12aと対向するフレア13の内周面13aとの間の間隔Lがリード線11a、11bの線径以下となるように、フレア13の内径と細管12の外径(長軸)とが設定されている。すなわち、配線空間30には、リード線11a、11bの線径以下であって、リード線11a、11bが通過することのできない2つの狭窄部31a、31bがフレア13の略全長に亘って設けられている。換言すれば、図4に示す配線空間30は、フレア13の全長に亘って、紙面左側の第1領域30aと紙面右側の第2領域30bとに二分され、第1領域30aに一方のリード線11aが配置され、第2領域30bに他方のリード線11bが配置されている。
【0027】
従って、図5に示すように、口金3(図1)の回動に伴って、該口金3の端子に接続されているリード線11a、11bが配線空間30内で変位したとしても、第1領域30aに配置されているリード線11aは、狭窄部31bを超えて第2領域31bへ移動することはできない。また、第2領域31bに配置されているリード線11bは、狭窄部31aを超えて第1領域30aへ移動することはできない。尚、図5には、図4に示すリード線11a、11bが半時計回りに変位した場合を図示した。しかし、口金3が逆方向に回動され、リード線11a、11bが時計回りに変位した場合も同様である。すなわち、第1領域30aに配置されているリード線11aは、狭窄部31aを超えて第2領域31bへ移動することはできず、第2領域30bに配置されているリード線11bは、狭窄部31bを超えて第1領域30aへ移動することはできない。要するに、リード線11a、11bが互いに接触して短絡を起こすことはない。しかも、2つの狭窄部31a、31bは、フレア13の略全長に亘って設けられている。よって、リード線11a、11bがフレア13と重複している領域においては、リード線11a、11bの接触が確実に防止される。本例では、リード線11a、11bがフレア13と重複している領域がリード線11a、11bの大部分に及んでいる(図3参照)。従って、実質的にリード線11a、11bの全長に亘って互いの接触が防止されている。
【0028】
尚、図4には、細管12の断面形状を楕円形とすることによって、配線空間30内に2つの狭窄部31a、31bを設けた例を図示した。しかし、配線空間30内に、該空間30を少なくとも二分する狭窄部が設けられさえすれば、細管12の断面形状は楕円形に限られない。
【0029】
図6は、細管12の断面形状の変更例を示す断面図である。図6に示す細管12の断面は、図4に示される細管12の断面の短軸方向における2つの頂点部分が略円弧状に抉られた形状を有している。
【0030】
これまでは、配線空間30を2つの狭窄部によって2つの領域に区分する例について説明した。しかし、配線空間は3つ以上の領域に区分してもよい。図7に、配線空間が4つの領域に区分された例を示す。図7に示す例では、配線空間内に4つの狭窄部が設けられている。これら狭窄部は、具体的には次のようにして設けられたものである。
【0031】
図7における細管12は、その外周面に4つの凸部が周方向に沿って等間隔で設けられている。各凸部12a〜12dは円弧状の外面を有し、フレア13の内周面13aとの間に狭窄部31a〜31dを形成している。具体的には、各凸部12a〜12dの外面の頂点と、該頂点と対向するフレア13の内周面13aとの間の間隔がリード線11a、11bの線径以下となるように、各凸部12a〜12dの高さが設定されている。
【0032】
上記のように、細管12の外周面に4つの凸部12a〜12d(狭窄部31a〜31d)が形成されている結果、図7に示す配線空間30は、4つの領域30a〜30dに分けられている。そして、リード線11aは、凸部12aと12b(狭窄部31aと31d)との間の第1領域30aに配置され、該第1領域30a内においてのみ変位可能である。一方、リード線11bは、凸部12cと12d(狭窄部31bと31c)との間の第2領域30bに配置され、該領域30b内においてのみ変位可能である。換言すれば、リード線11aは、狭窄部31a又は狭窄部31dを越えて隣接する第3領域30cや第4領域30dに移動することはできない。また、リード線11bは、狭窄部31b又は狭窄部31cを越えて隣接する第3領域30cや第4領域30dに移動することはできない。従って、リード線11a、11b同士の短絡が確実に防止される。さらに、図3や図6に示す例では、リード線11a、11bの間に介在する狭窄部は1つのみであったが、図7に示す例では、リード線11a、11bの間に2つの狭窄部が介在している。従って、リード線11a、11b同士の接触による短絡がより一層確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の環形蛍光ランプの外観部を示す平面図である。
【図2】図1に示す口金3の近傍の構造を示す拡大透視図である。
【図3】本実施形態の環形傾向ランプを構成するステムの構造を示す拡大平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図4において口金の回動に伴いリード線が変位した状態を示した図である。
【図6】他の実施例を示した図である。
【図7】他の実施例を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 環形発光管
2 ステム
3 口金
10 フィラメント電極
11a リード線
11b リード線
12 細管
12a 凸部
12b 凸部
12c 凸部
12d 凸部
13 フレア
13a 内周面
20 底面
21 開口部
30 配線空間
30a 第1領域
30b 第2領域
30c 第3領域
30d 第4領域
31a 狭窄部
31b 狭窄部
31c 狭窄部
31d 狭窄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環形発光管内に配置されたフィラメント電極に接続された一対のリード線が、前記環形発光管の端部に設けられたフレアを貫通して、該フレアとその内側に設けられた細管との間の配線空間を通して前記環形発光管の外部に引き出されている環形蛍光ランプにおいて、
前記配線空間が前記リード線の線形以下の狭窄部によって、前記フレアの略全長に亘って少なくとも2つの領域に区分され、区分された一方の領域に前記一対のリード線の一方が配置され、区分された他方の領域に前記一対のリード線の他方が配置されていることを特徴とする環形蛍光ランプ。
【請求項2】
前記狭窄部が、前記フレアの内周面と対向する前記細管の外周面の少なくとも2箇所を前記フレアの略全長に渡って前記内周面に近接させることによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の環形蛍光ランプ。
【請求項3】
前記細管が楕円形の断面形状を有し、細管断面の長軸方向における2つの頂点と、これら頂点と対向する前記フレアの内周面との間に前記狭窄部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の環形蛍光ランプ。
【請求項4】
前記細管に、前記フレアの内周面に近接する方向に突出した少なくとも2つの凸部が設けられ、それら凸部と前記フレアの内周面との間に前記狭窄部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の環形蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−288129(P2008−288129A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133929(P2007−133929)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】