説明

環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブル

【課題】環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルの提供。
【解決手段】環状導体と、前記環状導体の上下を被覆する上ベースフィルム100および下ベースフィルム200とを備えてなる、環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルにおいて、前記上ベースフィルムおよび前記下ベースフィルムを被覆する前に前記環状導体の一部を圧延して形成した平角導体10が、前記フレキシブルフラットケーブルの端子部に露出し、前記端子部に露出した前記平角導体は、前記環状導体および前記平角導体が前記下ベースフィルムに貼り付けられるに際して、前記下ベースフィルムに貼り付けられた形で前記下ベースフィルムに支持されており、前記下ベースフィルムは、前記端子部を含む前記フレキシブルフラットケーブルの全長に亘って一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルに係り、さらに詳しくは、環状導体を用いたフラットケーブルを製造するが、前記フレキシブルフラットケーブルの端子部が平角導体の形状を呈するようにして、このようなフレキシブルフラットケーブルを連続して製造するためのものである。
【背景技術】
【0002】
通常、フレキシブルフラットケーブルは、コネクタに差し込まれて、電子部品同士で信号を送信する用途で用いられる。この種のフレキシブルフラットケーブルは、信号を送信するための線状導体の上下にベースフィルムなどを貼り付けて製造される。前記線状導体は、その断面が円形である環状導体、又はその断面が矩形である平角導体からなる。環状導体は、コネクタのコンタクトに設けられた押入刃、又はプリント回路基板の係合溝に嵌め込まれて連結され、平角導体は、コネクタの端子部に押圧されて接触される形で、主として用いられる。
【0003】
このような環状導体又は平角導体をユーザーが任意に選択して使用できるようにするために、環状導体の一部を圧延して平角導体として形成した後、ベースフィルムを上下に貼り付けたフレキシブルフラットケーブルが提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。同文献によれば、必要に応じて、環状導体又は平角導体が位置している領域を切り出し、上下のベースフィルムを切り欠いて露出させた環状導体又は平角導体をコネクタ又はプリント回路基板に連結できるようにする技術的思想が開示されている。なお、平角導体を露出させて使用する場合、平角導体に下補強板を別途に取り付けた形でフレキシブルフラットケーブルの末端を加工した後、このようなフレキシブルフラットケーブルをコネクタに差し込むようにしている。
【0004】
さらに、フレキシブルフラットケーブルの末端にあるベースフィルムを切り欠いて環状導体を露出させた後、露出した環状導体を圧延して平角導体に変形させ、このような平角導体の下端に別途の補強板を用いることにより平角導体の位置を固定させることが提案されている(例えば、下記の特許文献2および3参照)。
【0005】
前記従来の技術においては、フレキシブルフラットケーブルの所定の長さを切り取ることによりその末端を形成した後、予め加工された平角導体をその末端に露出させたり(特許文献1)、あるいは、その末端に環状導体を露出させた後に圧延して平角導体として加工したりする(特許文献2、3)ことが行われている。これらの場合、フレキシブルフラットケーブルを所定の長さに切り取って一々にその末端のベースフィルム層を切り欠かなければならないため、生産性が非常に低くならざるを得ない。また、線状導体を損なうことなくベースフィルムを切り欠くためにレーザーなどを用いるので、合成樹脂製のベースフィルムの切断面がきれいに仕上がらず、残留しているベースフィルムもまた熱によってその表面が荒れてしまうなどの変形が発生する、という不都合がある。
【0006】
加えて、最近の各種のコネクタの端子の狭ピッチ化には目を見張るものがあり、現在、約0.4〜0.5mmまで狭くなりつつある。このため、ここに用いられるフレキシブルフラットケーブルの末端部に露出した平角導体もまた、その幅を極めて狭くすることが求められ、しかも、端子のピッチに合わせて極めて精度よく配置する必要がある。しかしながら、前記従来の技術のように、平角導体を露出させた後に補強板を取り付けると、平角導体の精度よい配列および固定が極めて困難になってしまうという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−56721号公報(2002年2月22日、2頁段落[0005]−[0006])、3頁段落[0021]、全図
【特許文献2】特開2010−49971号公報(2010年3月4日、3頁段落[0012]、5頁段落[0033])
【特許文献3】特開2010−192287号公報(2010年9月2日、5頁段落[0015]、6頁段落[0021])全図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子部をより見栄えよく形成することができ、インピーダンスが調節し易くてフレキシブルフラットケーブルの薄肉化を図ることができる他、フレキシブルフラットケーブルの外面のシールド層と線状導体との接触を防ぐことのできるフレキシブルフラットケーブルを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルは、環状導体と、前記環状導体の上下を被覆する上ベースフィルムおよび下ベースフィルムとを備えてなる、環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルであって、このフレキシブルフラットケーブルは、上ベースフィルムおよび下ベースフィルムを被覆する前に環状導体の一部を圧延して形成した平角導体が、前記フレキシブルフラットケーブルの端子部に露出し、端子部に露出した平角導体は、環状導体および平角導体が下ベースフィルムに貼り付けられるに際して、下ベースフィルムに貼り付けられた形で下ベースフィルムに支持されており、前記下ベースフィルムは、端子部を含むフレキシブルフラットケーブルの全長に亘って一体に形成されていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記上ベースフィルムの末端には帯状の絶縁フィルムが挿入されており、前記帯状の絶縁フィルムの一部は、前記上ベースフィルムによって被覆されていない。
【0011】
また、好ましくは、前記環状導体の外面には、絶縁コーティング層がそれぞれ形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフレキシブルフラットケーブルによれば、端子部をより見栄えよく形成することができ、線状導体が全て平角導体からなる従来のフレキシブルフラットケーブルに比べて、安価な環状導体が使用できて製造コストを削減することができ、インピーダンスが調節し易くてフレキシブルフラットケーブルの薄肉化を図ることができる他、しかも、フレキシブルフラットケーブルの表面のシールド層と線状導体との接触が回避できて、短絡を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。
【図2】従来のフレキシブルフラットケーブルの断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの断面図である。
【図6】本発明のフレキシブルフラットケーブルの製造方法を示す概略図である。
【図7】本発明のフレキシブルフラットケーブルの製造方法を示す概略図である。
【図8】本発明のフレキシブルフラットケーブルの製造方法を示す概略図である。
【図9】本発明のフレキシブルフラットケーブルの最終加工段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、本発明をその実施形態を挙げて詳述する。
【0015】
図1は、平角導体を線状導体として使用する従来のフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。平角導体10は、上フィルム層100と下フィルム層200との間に接着剤又はフィルム間の熱融着によって固定される。また、フレキシブルフラットケーブルの末端に形成される端子部2には上フィルム層が存在せず、平角導体10が外部に露出しており、フレキシブルフラットケーブル末端の下フィルム層200の下には端子部を支持する補強部300が取り付けられている。
【0016】
図2は、フレキシブルフラットケーブルの断面(図1におけるA−A断面)を示すものであり、上ベースフィルム110と下ベースフィルム210との間に平角導体10が配置され、上ベースフィルム110および下ベースフィルム210は接着部410によって貼合されている。
【0017】
上ベースフィルム110の上面には、インピーダンスを調節するために、誘電体材料からなるインピーダンス調節フィルム120が貼り付けられている。インピーダンス調節フィルム120の上面には、グランドおよびシールド機能を担当するアルミニウム箔部130が貼り付けられており、アルミニウム箔部130の上面にはカバーフィルム140が貼り付けられている。前記上ベースフィルム110、インピーダンス調節フィルム120、アルミニウム箔部130およびカバーフィルム140は、熱融着又は接着剤によって貼合されているが、図2には、上ベースフィルム110と下ベースフィルム210との間の接着部410を除く残りの接着部は示されていない。なお、上ベースフィルム110、インピーダンス調節フィルム120、アルミニウム箔部130およびカバーフィルム140が上フィルム層100をなす。
【0018】
図2には、下フィルム層が下ベースフィルム210のみからなる場合が示してあるが、下フィルム層の下面にインピーダンス調節フィルム、アルミニウム箔部、カバーフィルムを貼り付けて下フィルム層をなしてもよい。
【0019】
図2において、差動インピーダンスを100Ωに整合させる場合、各層の厚さは、カバーフィルム140は50μmであり、アルミニウム箔部130は7μmであり、インピーダンス調節フィルム120は150〜180μmであり、上ベースフィルム110は12μmであり、接着部410は68μmであり、そして下ベースフィルム210は12μmであって、全体として299〜329μmの厚さを有する。平角導体の厚さは35μmであり、幅は約0.3mmである。
【0020】
図3は、本発明の一実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの斜視図であり、図4は、図3におけるB−B断面図である。
【0021】
図2に示す従来のフレキシブルフラットケーブルとの相違点としては、端子部を除く残部の線状導体が環状導体からなっていることと、上ベースフィルムの末端には帯状の絶縁フィルムが挿入されていることと、が挙げられる。前記帯状の絶縁フィルムの一部は、前記上ベースフィルムによって被覆されていないままで端子部側に露出している。
【0022】
図4において、差動インピーダンスを100Ωに整合させる場合、各層の厚さは、カバーフィルム140は50μmであり、アルミニウム箔部130は7μmであり、インピーダンス調節フィルム120は32〜50μmであり、上ベースフィルム110は23μmであり、接着部410は80μmであり、下ベースフィルム210は23μmであり、環状導体20の直径は120μmであるため、全体として258〜276μmの厚さを有する。
【0023】
このため、平角導体を使用する従来のフレキシブルフラットケーブルに比べて、線状導体の薄肉化を図ることが可能になる。
【0024】
図5は、本発明の他の実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの断面図であり、環状導体20の外面には絶縁コーティング層22が約10μmの厚さで形成されており、誘電体材質の絶縁コーティング層を備えることにより、インピーダンス調節フィルムの厚さが約12〜20μmと薄くなって、全体として235〜243μmの厚さを有することとなり、フレキシブルフラットケーブルのさらなる薄肉化を図ることができる。
【0025】
また、上ベースフィルムと平角導体との間に挿入され、その一部が前記上ベースフィルムによって被覆されていないままで端子部側に露出した帯状の絶縁フィルム500は、上フィルム層100の最上面がアルミニウム箔部から形成された場合、フレキシブルフラットケーブルの使用中に端子部が折り返されてアルミニウム箔部と平角導体10とが接触して短絡が発生することを防ぐことを可能とする。
【0026】
次いで、本発明の環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルの製造方法について説明する。
【0027】
図6から図8は、本発明のフレキシブルフラットケーブルの製造方法に対する概略図である。
【0028】
環状導体20が巻回されたボビン610から環状導体20が繰り出される(ステップ1)。繰り出される環状導体20の一部は端子部に用いられる平角導体として加工されるが、この際、加工は、ローラー(図6における620)又はプレス(図7における630)を用いて周期的に環状導体を押し付けることにより行われる(ステップ2)。
【0029】
下ベースフィルム210は、下ベースフィルム210が巻回されたボビン640から繰り出される。下ベースフィルム210は、繰り出される間に、その下面に補強部300を熱融着器650によって取り付けられる。補強部300は、フレキシブルフラットケーブルの末端が形成される個所に取り付けられる(ステップ3)。
【0030】
上ベースフィルム110は、上ベースフィルム110が巻回されたボビン660から繰り出される。繰り出された上ベースフィルム110は、穿孔器670によって端子露出部111が穿孔される(図6における拡大図I参照)。上ベースフィルム110が切り欠かれた端子露出部111は、上ベースフィルム110を切り欠くことで平角導体10を端子部において露出させるようにするためのものである(ステップ4)。上ベースフィルムの末端の下面に、帯状の絶縁フィルム500が熱融着器650’によって貼り付けられる(図6における拡大図II参照)。絶縁フィルム500なしの本発明の実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルを製造する場合には、絶縁フィルムを貼り付けるステップを省略してもよいということは、いうまでもない。
【0031】
前記ステップを経た下ベースフィルム210と上ベースフィルム110との間に、ステップ2を経た環状導体を挿入するが、この際、ステップ4において加工された端子露出部111に平角導体が位置するようにして貼り付ける(ステップ5)。この際、貼り付けは、接着剤又は熱融着によって行われるが、接着剤を使用する場合は、貼り付ける直前に接着剤を塗布する工程を行う。図6から図8には、熱融着ローラー680によって熱融着を行うことが示してある。
【0032】
図5に示すように、環状導体20の外面に絶縁コーティング層22が形成されている場合には、ステップ1後およびステップ5前に、平角導体として加工される、あるいは平角導体として加工された部分の絶縁コーティング層22を切り欠くステップをさらに行う。この際、絶縁コーティング層22の切り欠きは、図8の刃690を用いて行ってもよく、レーザー装置を用いて行ってもよいなど、種々の手段が絶縁コーティング層22の切り欠きに採用され得る。
【0033】
図6から図8には、インピーダンス調節フィルム、アルミニウム箔部およびカバーフィルムの繰り出しについては示していないものの、前記上下のベースフィルムを繰り出すステップ3、4の説明を理解した当業者であれば、インピーダンス調節フィルム、アルミニウム箔部およびカバーフィルムのように未図示のフィルムをさらに付加する方法について理解できるであろう。
【0034】
図6から図8に示す製造方法によって得られたフレキシブルフラットケーブルを図9の一点鎖線に沿って切り取ると、図3に示すフレキシブルフラットケーブルが得られる。
【符号の説明】
【0035】
100 上フィルム層
200 下フィルム層
300 補強部
20 環状導体
110 上ベースフィルム
210 下ベースフィルム
500 絶縁フィルム
10 平角導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状導体と、前記環状導体の上下を被覆する上ベースフィルムおよび下ベースフィルムとを備えてなる、環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブルにおいて、
前記上ベースフィルムおよび前記下ベースフィルムを被覆する前に前記環状導体の一部を圧延して形成した平角導体が、前記フレキシブルフラットケーブルの端子部に露出し、
前記端子部に露出した前記平角導体は、前記環状導体および前記平角導体が前記下ベースフィルムに貼り付けられるに際して、前記下ベースフィルムに貼り付けられた形で前記下ベースフィルムに支持されており、
前記下ベースフィルムは、前記端子部を含む前記フレキシブルフラットケーブルの全長に亘って一体に形成されていることを特徴とする環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記上ベースフィルムの末端には帯状の絶縁フィルムが挿入されており、前記帯状の絶縁フィルムの一部は、前記上ベースフィルムによって被覆されていないことを特徴とする請求項1に記載の環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
前記環状導体の外面には、絶縁コーティング層がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環状導体を用いたフレキシブルフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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