説明

環状搬送装置

【課題】 円滑な環状搬送を可能にするとともに、環状に配置される走行体に対するテークアップ等のメンテナンスを不要にする環状搬送装置を提供する。
【解決手段】 連結体1の長手方向両端から外方に突設可能な接続部材3,4と、接続部材のうち、連結体の外方に位置する領域に設けられた長孔部33,43と、走行体2の端部付近に設けられた貫通孔23,24と、接続部材の長孔部と走行体の貫通孔とを同時に挿通可能な連結軸5とを備え、環状の搬送レールLの全周に配置してなる複数の走行体のうち、任意の走行体には、ワークを搭載する搬送トレイ6と、搬送トレイを支持する支柱7とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送装置に関するものであり、特に、床上に設置する環状の搬送レールに沿って走行する走行体にワークを支持させつつ搬送する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送装置は、搬送すべき軌道に沿って搬送レールが設けられるとともに、この搬送レール内を走行する走行体で構成されており、この走行体を移動させるために駆動チェーンを巡回させ、走行体が駆動チェーンから駆動力を付与される構成であった(特許文献1参照)。
【0003】
上記搬送装置は、本願の発明者が開発したものであって、三次元を可能にするとともに、個々の走行体について駆動力の伝達および停止を可能にするステージ機能を有する搬送装置であり、長区間を搬送させつつ、所定の位置において走行体を停止させる必要がある場合には好適なものであった。
【0004】
しかしながら、駆動力の伝達機構として駆動チェーンが必要となるため、搬送レールに沿って駆動チェーンが移動できる構成としなければならず、その設置領域を設けるために高さ寸法が大きくならざるを得ず、設置スペースの小型化が困難なものとなっていた。また、駆動力を付与するために駆動チェーンを採用する関係上、いわゆるテークアップ機構が必要となり、これまた装置全体の低床化を困難にすることとなっていた。
【0005】
そこで、本願の出願人は、駆動チェーンを不要にすることにより当該駆動チェーン用のテークアップ装置をも不要にし、さらに搬送装置の全体の高さ寸法を小さくすることのできる搬送装置を開発した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実登第3086461号公報
【特許文献2】特開2007−126268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術における走行体は、車輪を有する走行本体部と、車輪を有することなく上記走行本体部に連結される走行体連結部とで構成されたものであって、上記構成の走行体を順次連結することにより環状の搬送レールの全周に走行体を配置するものであることから、隣接する走行本体部(すなわち搬送トレイを有する部分)の間には走行体連結部が存在する構成となり、その走行本体部同士の間隔は走行体連結部の長さによって調整されるものであった。そして、搬送レールが弧状に形成された範囲を走行体連結部が移動する場合には、上記搬送レールの弧に対して当該走行体連結部が弦となる状態を生じさせ、弧状の搬送レールの曲線的な距離に対し、直線的に走行体連結部が位置することとなり、走行体連結部の実際の長さ寸法よりも長い曲線状の範囲に跨る状態となっていた。その結果、走行体の位置によって、環状の搬送レールの実際の全周に対し、連結された走行体全体の長さが長短変化することとなっていた。そこで、連結端の一方を長孔とし、連結端が長さ方向に摺動可能にすることによって、上記長さの変化を吸収させていた。
【0008】
しかしながら、走行本体部同士の間隔を広くしなければならない場合(つまり、比較的大型のワークを搬送すべき場合)には、走行体連結部の長さ寸法を長尺にしなければならなかった。このように、走行体連結部を長尺に設計する場合には、上記のような長さの変化が大きく、長孔を比較的長尺に構成する必要があり、走行体の円滑内移動(すなわちワークの円滑な搬送)を阻害する要因の一つとなっていた。
【0009】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、円滑な環状搬送を可能にするとともに、環状に配置される走行体に対するテークアップ等のメンテナンスを不要にする環状搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、搬送経路を無端縁に構成する環状の搬送レールと、この搬送レールに沿って移動する所定長さの走行体と、この走行体に設けられ上記搬送レールの一部表面を転動する車輪と、上記走行体に接続されて前後の走行体の間に配置される所定長さの連結体とを備え、上記走行体および連結体を交互に連結して上記環状の搬送レールの全周に配置してなる環状搬送装置であって、上記連結体の長手方向両端から外方に突設可能な接続部材と、この接続部材のうち、連結体の外方に位置する領域に設けられた長孔部と、上記走行体の端部付近に設けられた貫通孔と、上記接続部材の長孔部と上記走行体の貫通孔とを同時に挿通可能な連結軸とを備え、上記環状の搬送レールの全周に配置してなる複数の走行体のうち、任意の走行体には、ワークを搭載する搬送トレイと、この搬送トレイを支持する支柱とが備えられていることを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、複数の走行体を連結体によって連結することができ、かつ、走行体のすべてに搬送トレイが設けられることがないので、ワークの大きさにかかわらず連結体の長さを変更する必要がなく、しかも連結体の長さ寸法を比較的短尺にすることができる。また、走行体は、搬送トレイの有無にかかわらず、車輪を備えていることから、当該車輪が搬送レールに沿って移動することができる。そして、搬送レールが弧状に形成される範囲においても、連結体によって連結された環状の走行体全体の列(走行体列)は、搬送レールに近似した形状で移動することができる。これにより、走行体の位置によって、走行体列の全長の変化を小さくすることができ、その変化を吸収させるための調整範囲を小さくさせることができる。なお、接続部材は連結体に設けられるが、これを着脱可能にすることにより、この接続部材を交換することができ、走行体同士の間隔を変更する場合には、接続部材の交換により対応することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記構成の環状搬送装置であって、前記接続部材が、前記走行体の上部表面に当接可能な状態で前記連結体に固定される接続部材であり、前記連結軸が、その上端を該連結軸本体よりも大径にしてなる頭部を有する連結軸であることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、連結軸は接続部材の上方から挿通することができ、その際、接続部材の上部表面に連結部材の頭部が到達した状態で当該連結軸の挿通を完了させることができる。このとき、連結軸の大部分は、走行体の貫通孔内に収容されることとなり、連結軸の位置が固定的となることから、接続部材は、その長孔部の範囲で固定軸に対する相対的な位置を変更することが可能となる。特に、連結部材の頭部と接続部材の表面の間に座金を介在することにより、上記接続部材の位置変更を容易な状態とすることができる。
【0014】
さらに、本発明は、上記構成の環状搬送装置であって、前記接続部材の表面と前記連結軸の頭部の間に所定容量を有する略皿状の油溜部が介在されてなり、該油溜部の底部が、前記連結軸を挿通可能で、かつ、該連結軸の本体部表面に摺接可能な貫通部を有していることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、略皿状とは、適宜深さを有する容器状であって、適宜面積の底面を有する形状を意味し、上記深さは必要に応じて浅くし、または深くしたもののいずれでもよい。
【0016】
上記構成によれば、連結軸の頭部と接続部材の上部表面との間に油溜部が介在されることから、この油溜部に潤滑油を貯留することにより、連結軸と接続部材との摺接部分に潤滑油を供給することができる。そして、この油溜部は所定容量の略皿状であることから、液体の潤滑油を貯留することができるほか、グリースのような潤滑剤を保持させることも可能である。また、油溜部の底部に設けられる貫通孔は、連結軸を挿通可能かつ摺接可能であることから、油溜部に貯留した潤滑油は、貫通孔と連結軸との僅かな間隙に潤滑油が浸透し、連結軸の周辺、特に、接続部材の長孔部および走行体端部の貫通孔と、連結軸とが摺接する部分に潤滑油を供給することができる。
【0017】
他方、油溜部を備えない前記発明においては、前記接続部材もしくは前記連結軸またはその双方が、自己潤滑性を有する材料により構成してもよい。
【0018】
ここで、自己潤滑性とは、合成樹脂に添加された特殊潤滑剤によって摩擦係数を小さくする特性をいい、このような特性を有する材料を自己潤滑剤という。このような自己潤滑剤としては、例えばMCナイロン(登録商標)がある。
【0019】
上記のような構成にすれば、少なくとも接続部材と連結軸との摺接部分については潤滑油の供給を不要とすることができる。また、接続部材は、連結部に固定されるものであるが、これは交換可能である場合には、自己潤滑性の効果が低下したときには、接続部材および連結軸を交換することにより、再び自己潤滑性を発揮させることができる。
【0020】
また、上記各発明において、前記連結体の全長は、前記走行体の全長よりも短くしてなる構成とすることができる。
【0021】
上記構成によれば、連結体は車輪を有していないことから、この連結体は走行体に牽引されるものであり、搬送レールの形状とは無関係に前後に連結する走行体との接続位置の範囲において、直線的に配置されることとなるものであるが、その全長を短くすることにより、搬送レールが弧状となっている範囲を移動する際において、搬送レールを逸脱して弦方向に配置される距離を短くすることができる。これにより、弧状に形成される搬送レールに沿って移動する走行体の位置関係により、走行体列全体の長さの変化を小さくすることができる。
【0022】
さらに、上記各発明において、前記走行体の本体部は、断面形状を略四角形状とする部材の一つの表面を水平にしつつ横長にしてなり、連結体の本体部は、断面形状を上記走行体の本体部と同形とする部材の一つの表面を水平にしつつ横長にしてなる構成としてもよい。
【0023】
上記構成によれば、走行体および連結体の各一つの表面が水平に維持されることから、連結体の水平面に接続部材を設けることにより、当該接続部材の突出部分が走行体の水平面に当接または近接させることができる。これにより、連結軸による連結(貫通孔等への挿通)を容易にすることができる。また、上記両本体部の断面形状が矩形である場合には、いずれの本体部についても側面が垂直な平面となり、この垂直な平面を使用してフリクション駆動装置による推進駆動を得ることも可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、走行体が弧状の搬送レールを移動するときであっても、当該走行体の位置が異なる場合の走行体列の全長が変化することを小さくできる。従って、その長さの変化を吸収させるための調整範囲を小さくさせることができることから、全体として円滑な走行体の移動を実現することができ、その結果として、環状搬送を円滑にすることができる。このことは、連結体の全長を短く構成する場合において顕著である。また、走行体列に対して駆動力が押出し方向に作用する場合には、押し出される走行体または連結体と、その直前の走行体または連結体との距離が短縮される部分を長孔が吸収し、走行体および連結体の走行方向を安定させることができる。さらに、上記の長孔によって吸収できない状態となる場合には、走行体および連結体が接近し過ぎることから、両者の長手方向が有角的になるが、このような場合であっても、走行体および連結体は比較的長尺であることにより、その角度を緩やかにすることができる。このように、走行体と連結体との距離は、駆動力が引張り方向に作用する場合も押出し方向に作用する場合も大きく異なることがないことから、走行体列に対するテークアップ機構を不要とすることができる。
【0025】
さらに、走行体および連結体の本体部を、断面形状略四辺形状に構成する場合には、駆動装置としてフリクション駆動装置を採用すれば、シリンダ機構等による間欠的な駆動装置とはことなり、連続的な推進駆動を可能にし、一層円滑な搬送を実現することができる。
【0026】
また、連結体に設けられる接続部材と走行体との連結位置において、油溜部が設けられる構成により、連結軸が摺接する部分に対する潤滑油の頻繁な供給を回避でき、また、修正する部材を自己潤滑剤で構成することにより、潤滑油の供給を回避することができる。従って、装置全体のメンテナンスとして、前記テークアップ機構の設置のほか、潤滑油の管理をも不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の概略を示す説明図である。
【図3】連結体と走行体との連結状態を示す説明図である。
【図4】連結体と走行体との連結状態を示す説明図である。
【図5】搬送レールの湾曲部分における走行体の状態を示す説明図である。
【図6】第二の実施形態を示す説明図である。
【図7】第二の実施形態を示す説明図である。
【図8】実施形態の変形例を示す説明図である。
【図9】実施形態の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第一の実施形態における走行体および連結体の連結状態を示す図である。この図に示すように、連結体1と走行体2とが、交互に連結されて全体として走行体列(環状に走行体が連結された全体)が形成されるものである。連結体1と走行体2とは接続部材3,4を介して連結されるものであって、両者1,2を同時に挿通する連結軸5によって連結される。
【0029】
連結体1は、所定長さの筒状体(図は断面形状四角形の筒状体)を横向きにした構成であって、この連結体1の両端には、接続部材3,4が一部を突出しつつ着脱可能に設けられている。すなわち、接続部材3,4は、基端部分31,41が連結体1の上部表面11にボルトによって締着されており、先端部分32,42は、連結体1の外方に突出する状態で設けられている。また、接続部材3,4のうち、連結体1から突出する領域には、長孔部33,43が穿設されており、連結軸5が挿通できるように構成されている。この長孔部33,34は、短尺側が連結軸5と同じ径であり、長尺側は短尺側の1.1倍〜1.2倍となっており、走行体2に挿入されて固定的に立設される連結軸5が、長孔部33,34に挿通された状態において、長尺側にのみ10%〜20%の可動領域が設けられている。ただし、連結軸5に対して回動は自在である。
【0030】
走行体2は、所定長さの棒状体(図は断面形状四角形の角柱体)を横向きにした構成であり、その両端下部には、車輪21,22が設けられている。また、この走行体2の両端付近には、垂直方向に貫設された貫通孔23,24を有しており、前記連結体1の長孔部33,43と同軸の連結軸5を挿通できるようになっている。
【0031】
なお、走行体2は、上記構成のものが複数連結されるが、これら複数の走行体2のうちの任意のものには、搬送トレイ6と、この搬送トレイ6を支持する支柱7とが設けられている。支柱7は、走行体2の本体部分にボルトで固定され、走行体2の移動に伴って搬送トレイ6を移動させるものである。また、搬送トレイ6は、搬送すべきワークの形状により、適宜形状および適宜寸法のものが支柱7の先端に装着されるものである。なお、トレイという名称を使用するが容器のみを意味するものではなく、広くワークを搭載できるものを意味するものである。
【0032】
そこで、搬送すべきワークが小型のものである場合には、全ての走行体2に搬送トレイ6と支柱7を備えるものを連結することができ、また、ワークが大型のものである場合には、搬送トレイ6および支柱7を備えない走行体8を中間に1台または2台連結することもできる。
【0033】
上記走行体2の車輪21,22は、走行体2の本体部20の長手方向に直交する二つの水平軸の両端に、それぞれ水平軸を中心に回動自在に設けられており、走行体2の本体部20の両側において搬送レールLの表面上を転動可能になっている。搬送レールLは、二つの断面コ字状のレール構成部材L1,L2によって構成され、二つのレール構成部材L1,L2を、各端縁同士を対向しつつ所定間隔で配置されているものである。従って、走行体2の車輪21,22が、レール構成部材L1,L2の内部底面上を転動できることとなり、このように、走行体2の各車輪21,22が、搬送レールLに内部を転動することにより、走行体2が搬送レールLに沿って移動することができるようになっているのである。
【0034】
上記構成の連結体1と走行体2とが、接続部材3,4を介在しつつ連結軸5によって連結されることにより、環状に形成する搬送レールLの全周に沿った走行体列を形成させることができるのである。この状態を図2に示す。
【0035】
この図に示すように、搬送レールLは、搬送すべき方向・距離等によって直線部分STと湾曲部分CVとが混在している。そして、湾曲部分CVでは、その曲率に応じて、当該湾曲部分CVを通過するために必要な連結体1または走行体2の数が異なるものである。また、直線部分STを通過する際の両者の間隔と、湾曲部分CVを通過する際の両者の間隔とは異なることとなる。従って、搬送レールLの全体に配置される連結体1および走行体2の総数は変化せず、直線部分STを通過する数と湾曲部分CVの数が異なる場合には、走行体列の全長は異なることとなり、当該全長の差異を解消しなければならない。また、連結体1または走行体2が、直線部分STから湾曲部分CVに移行する際、または、その逆に移行する際には、両部分ST,CVにおける連結体1または走行体2の速度は異なることとなり、この速度の変化によっても両者間の間隔は変化することとなる。
【0036】
そこで、上記のような連結体1と走行体2との間隔の変化を接続部材3,4の長孔部33,43によって調整するのである。すなわち、図3に示すように、搬送レールLの直線部分STを通過する場合には、連結体1および走行体2は、ほぼ等間隔で移動することとなり、しかも、進行方向に引っ張り力が作用するときには、両者の間隔は最大となるため、接続部材3,4の長孔部33,43に挿通される連結軸5は、長孔部33,43の最も外側(離れる状態)に位置することとなる。
【0037】
これに対し、図4に示すように、湾曲部分CVを通過する場合には、連結体1および走行体2の速度の相違により、または、進行方向後方から駆動力が付与されることにより、連結体1と走行体2との間隔が縮小することとなる。このとき、連結軸5は、接続部材3,4の長孔部33,34の中間的な位置または最も内側(接近する状態)に位置することとなる。
【0038】
上記のように、連結体1と走行体2との間隔を各連結部分において調整することにより、駆動力が付与される位置、または、搬送レールLの曲率等により、両者の間隔を変更すべき状況に応じて、逐次間隔調整を可能にするのである。
【0039】
ここで、本実施形態における連結体1は、走行体2よりも短尺なものを使用している(図2ないし図4参照)。このように、連結体1の長さを走行体2よりも短くすることにより、連結体1を専ら間隔調整として機能させることができるのである。
【0040】
すなわち、図5に示すように、連結体1を長尺にした場合(または長尺な走行体2のみを使用する場合)には、長尺な連結体1が、搬送レールLの湾曲部分CVにおいて、その曲率から大きく逸れて弦のように配置されることとなり、その結果、搬送レールLの現実の長さよりも走行体列の長さが短くなる(図5(a))。これに対して、短尺な連結体1を使用することにより、少なくとも、当該連結体1が存在する位置では、湾曲部分CVの曲率からの逸脱が小さくなり、搬送レールLの現実の長さに対し、走行体列の長さの短縮量が少なくなる(図5(b))。従って、連結体1が短尺であることにより、搬送レールLの湾曲部分CVを通過する際の、搬送レールLからの逸脱を抑制することとなり、直線部分STと湾曲部分CVとに存在する連結体1または走行体2の数によって、走行体列の全長の長さの際を小さくすることができるのである。
【0041】
本実施形態は、上記のような構成であるから、搬送レールLの湾曲部分CVを容易に通過できるとともに、各連結部分において、走行体列の全長の長さ変更に対応することができる。また、走行体列全体の長さに限らず、局所的に連結体1と走行体2との間隔が変化する場合、例えば、駆動力が引っ張り力として作用している状態から、後方より押し出されるような力として作用する状態に変化する場合、または、搬送レールLの直線部分STから湾曲部分CVに移行する場合などのように、一時的に両者の間隔が変化するときにも、その間隔の変化を調整することができる。
【0042】
そして、走行体列の全体および局所的な間隔の変更を調整することによって、走行体列の全体が円滑に移動することができることから、環状搬送が円滑に行えるのである。従って、環状に連続する走行体列に対して部分的(所定位置)でのみ駆動力を付与する場合であっても、これら走行体列の弛みを解消するためのテークアップ装置が不要となるのである。
【0043】
なお、本実施形態における連結体1および走行体2の本体部分10,20は、図1に示したように、いずれも四角柱体または四角管体により構成されており、しかも、いずれも断面形状を同じ矩形とすることにより、フリクション駆動装置FRによる駆動力を付与し得る(図2参照)。フリクション駆動装置とは、二つの回転体により本体部分10,20を両側から押圧し、一方の駆動輪を回転することにより、その回転力を摩擦伝達により推進力として付与する装置である。このようなフリクション駆動により、連続的な推進力を走行体列に付与することができるから、連続搬送をも可能にするものである。
【0044】
次に、第二の実施形態について説明する。本実施形態は、図6に示すように、連結軸105に頭部151を形成するものである。この連結軸105の頭部151は、連結軸105の本体部152よりも大きい径に構成されており、本来的には連結軸105の脱落防止の目的であるが、頭部151を円盤状に形成することにより、当該頭部151の裏面側を接続部材3の表面に摺接させることができる。
【0045】
この場合、図7に示すように、接続部材3が走行体2の上部表面と連結軸105の頭部151との間に介在することとなり、走行体2の上部表面と頭部151の裏面の両方に接続部材3が摺接される。従って、接続部材3は、上記両面に当接されつつ摺動できることとなるから、接続部材3は水平方向に移動可能となる。そして、この接続部材3移動により、連結体1と走行体2との間隔を調整することが可能となるのであり、長孔部33の長尺側の長さによる移動の許容範囲内において、自由に位置を変動できることとなる。
【0046】
なお、頭部151の外径を接続部材3の長孔部33の短尺側内径よりも大きい径とすることにより、長孔部33が頭部151から抜け落ちることがない。また、連結軸105の本体部152が、走行体2の貫通孔24と同径であれば、連結軸105の位置は固定的となり、接続部材3は、当該連結軸105を中心に長孔部33の長尺側にのみ摺動可能となる。このときの貫通孔24と連結軸本体部152の嵌め合いの公差を中間嵌めまたはしまり嵌めとすることにより、当該連結軸105を固定的に装着できる。また、連結軸105の本体部152の先端(下端)にピン孔153を設け、走行体2の貫通孔24に本体部152を挿通した後、そのピン孔153に固定ピン154を挿入することによって、引き抜きを防止する構成としてもよい(図6参照)。
【0047】
また、本実施形態には、図8に示すように、座金108を接続部材103と連結軸105の頭部151との間に介在させる形態とすることもできる。この場合、接続部材3は連結軸105の頭部151に直接摺接することがなく、頭部151が座金108を介して垂直方向の移動を規制することとなる。この場合、座金108が接続部材3の表面に摺接することとなるから、連結軸105が強固に挿入されて頭部151が座金108に密着したとしても、座金108の存在により接続部材3は摺動可能となる。つまり、この連結軸105を中心に接続部材3は回動自在であり、また、長孔部33の長尺方向の摺動も自在となるのである。
【0048】
このような構成であれば、連結軸105をボルトで構成することも可能となる。すなわち、走行体2の貫通孔24に雌ネジを刻設することにより、この貫通孔24に連結軸105を螺着させることができるのである。そして、その際の連結軸105は強固な固着状態となるが、ボルトの頭部151と接続部材3の表面との間に座金108を介在させることにより、接続部材3の摺動を可能にすることができるのである。
【0049】
さらに、本実施形態の変形例としては、上記の座金108に代えて、油溜部109を介在させる形態とするものがある。この変形例を図9に示す。この図に示すように、この形態は、連結軸105の頭部151と接続部材3との間に油溜部109が介在されたものである。油溜部109は、全体形状が略皿状に形成されており、かつ、適宜な深さを有している。すなわち、底部191の下面が平滑な平面になっており、この底部191の下面が接続部材3の上部表面に摺接できるものであり、また、側面部192が設けられており、この側面部192の高さに応じて、容器としての適宜容量を備えるものである。なお、上記のように適宜容量を備えることにより、潤滑油等の液体を貯留することができるのである。そして、側面部192の高さ寸法は、供給すべき潤滑油の量によって決定され、少量であれば低く(油溜部109の全体としては浅く)構成され、多量であれば高く(油溜部109の全体としては深く)構成されるものである。
【0050】
また、この油溜部109の底部191には、貫通孔193が設けられており、連結軸105を挿通可能にしている。この貫通孔193は、座金108(図8)のように、緩やかに連結軸105が挿通できるものではなく、連結軸105の本体部152の表面に摺接可能にしている。すなわち、貫通孔193の内径は連結軸105の本体部152の外径と同径に設けられているのである。なお、この場合の嵌め合い公差をすきま嵌めの公差とすることが望ましい。つまり、両者間に遊びを有するほどの間隙を設けることなく、嵌め合い公差によって当接面が緩やかに接することにより、油溜部109が連結軸105の本体部152の表面において摺接可能となる。しかも、このような嵌め合いの状態により、油溜部109に貯留される潤滑油等の液体は、僅かな間隙に染み込むように連結軸105の本体部152を流下し、油溜部109の直下に存在する接続部材3の長孔部33に供給することができるのである。
【0051】
このような形態とすることにより、最も頻繁に接触する連結軸105と長孔部33との間に潤滑油を供給することができるのである。特に、僅かな量の潤滑油を継続的に長期間供給することが可能となるから、継続的に走行体2を移動させる(継続的に搬送装置全体を稼動させる)場合においても、頻繁に潤滑油を供給する手間が排除され、油溜部109に貯留する潤滑油の残量を定期的にチェックし、残量が少なくなった時点で油溜部109に潤滑油を追加することで十分となる。
【0052】
これにより、頻繁なメンテナンスから開放され、ある程度のメンテナンスフリーとすることができる。このようなメンテナンスフリーとするための手段としては、前述の実施形態において、座金や油溜部を介在させず、接続部材もしくは連結軸または両者双方について、自己潤滑性を有する材料により構成するようにしてもよい。すなわち、連結体1と走行体2との間隔調整には、接続部材3(特に長孔部33)と連結軸5とが頻繁に接触(摩擦)することとなることから、これらの一方または双方が自己潤滑性を有していれば、摩擦抵抗を低下させることが可能となるからである。
【0053】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態とすることができる。
【0054】
例えば、走行体2に設けられる車輪21,22は、水平軸によって転動部材を軸支させた構成でもよいが、転動部材を軸支する水平軸を、走行体2の本体部分20に貫通ボルトで支持する構成としてもよい。この場合、水平軸は貫通ボルトによって、その軸線周りに回動自在に設けられていることとなるから、搬送レールLが湾曲する範囲においても車輪21,22が貫通ボルトの軸線回りに回動し、搬送レールLの曲線に沿った方向に転動することができることとなる。すなわち、搬送レールLが湾曲している場合には、走行体2の本体部分20の向きは、車輪21,22の接地位置において、当該搬送レールLの接線に対して有角状態となるが(図5参照)、この場合においても、車輪21,22が回動することによって、当該本体部分20の向きとは異なる方向に転動でき、車輪21,22に抵抗力が少なくなる状態で転動させることが可能となるのである。
【符号の説明】
【0055】
1 連結体
2 走行体
3,4 接続部材
5,105 連結軸
6 搬送トレイ
7 支柱
10 連結体の本体部分
20 走行体の本体部分
21,22 車輪
31,41 接続部材の基端部分
32,42 接続部材の先端部分
33,43 長孔部
108 座金
109 油溜部
151 連結軸の頭部
152 連結軸の本体部
153 ピン孔
154 固定ピン
191 油溜部の底部
192 油溜部の側面部
193 油溜部の貫通孔
L 搬送レール
ST 搬送レールの直線部分
CV 搬送レールの湾曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を無端縁に構成する環状の搬送レールと、この搬送レールに沿って移動する所定長さの走行体と、この走行体に設けられ上記搬送レールの一部表面を転動する車輪と、上記走行体に接続されて前後の走行体の間に配置される所定長さの連結体とを備え、上記走行体および連結体を交互に連結して上記環状の搬送レールの全周に配置してなる環状搬送装置であって、上記連結体の長手方向両端から外方に突設可能な接続部材と、この接続部材のうち、連結体の外方に位置する領域に設けられた長孔部と、上記走行体の端部付近に設けられた貫通孔と、上記接続部材の長孔部と上記走行体の貫通孔とを同時に挿通可能な連結軸とを備え、上記環状の搬送レールの全周に配置してなる複数の走行体のうち、任意の走行体には、ワークを搭載する搬送トレイと、この搬送トレイを支持する支柱とが備えられていることを特徴とする環状搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環状搬送装置であって、前記接続部材は、前記走行体の上部表面に当接可能な状態で前記連結体に固定される接続部材であり、前記連結軸は、その上端を該連結軸本体よりも大径にしてなる頭部を有する連結軸であることを特徴とする環状搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の環状搬送装置であって、前記接続部材の表面と前記連結軸の頭部の間に所定容量を有する略皿状の油溜部が介在されてなり、該油溜部の底部は、前記連結軸を挿通可能で、かつ、該連結軸の本体部表面に摺接可能な貫通部を有していることを特徴とする請求項2に記載の環状搬送装置。
【請求項4】
前記接続部材もしくは前記連結軸またはその双方が、自己潤滑性を有する材料により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の環状搬送装置。
【請求項5】
前記連結体の全長は、前記走行体の全長よりも短くしてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の環状搬送装置。
【請求項6】
前記走行体の本体部は、断面形状を略四角形状とする部材の一つの表面を水平にしつつ横長にしてなり、連結体の本体部は、断面形状を上記走行体の本体部と同形とする部材の一つの表面を水平にしつつ横長にしてなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の環状搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95575(P2013−95575A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241846(P2011−241846)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(598096452)イズテック株式会社 (13)