説明

瓦用釉薬

【課題】釉薬としての液の流動性および粘度安定性に優れ、さらに、瓦基材への接着性、付着量安定性および乾燥性などに優れた瓦用釉薬を提供することを目的とする。
【解決手段】全単量体単位を基準とした重量比で、(メタ)アクリルアミド:50〜95質量%と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩:5〜50質量%、とを含む単量体混合物を重合して得られる水溶性重合体ならびに釉薬原料を混合してなる瓦用釉薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦に使用される釉薬に関するものであり、釉薬としての液の流動性および粘度安定性に優れ、さらに、瓦基材への接着性、付着量安定性および乾燥性などに優れた瓦用釉薬に関する。
【背景技術】
【0002】
瓦、タイル、陶磁器等の製造時において、表面を釉薬で覆うことにより、素地の表面を液体および気体に対して不透過性とし、素地の表面を覆って被膜の役目をすることにより美感を与え、同時に強度を向上させることができる。
【0003】
一般的に釉薬は、フリット、長石、粘土および炭酸カルシウムなどの釉薬原料にのり剤などの添加物および水を混合したものであり、液の流動性や基材への接着性を高めるために、のり剤としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)が用いられている。しかしながら、外気温が高くなるとCMCは腐敗し保存安定性が悪くなるため、防腐剤を併用する必要がある。しかしながら、その際に用いられる防腐剤が塩素系または臭素系の有機化合物であるため、人体への影響および環境への影響が懸念されている。さらに、長期的には防腐剤に適応できる雑菌が繁殖するため、防腐剤を定常的に使用することも困難な状況である。
【0004】
このため、防腐剤を併用する必要がないとの観点から、CMCの代替品としてさまざまな合成高分子が釉薬用のり剤として検討されている。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリル酸塩からなる共重合体が開示されており、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)や(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させることも記載されている。しかしながら、その具体的な組成比などの開示はなく、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリル酸塩からなる共重合体を使用した場合には、釉薬としての液の流動性は不十分である。
【0005】
また、特許文献2には、糖類とアクリルアミド系重合体の併用による釉薬用のり剤が開示され、アクリルアミド系重合体の単量体として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)も記載されているが、糖類の併用が必須であるため、適用範囲が制限されるなどの問題がある。また、アクリルアミド系単独重合体を使用した場合には、釉薬としての液の流動性は不十分である。
【0006】
さらに、特許文献3には、ポリビニルアルコールをベースとした変性ポリビニルアルコールが開示され、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)をマイケル付加で導入した釉薬用のり剤が開示されている。上記特許文献1および特許文献2の分散剤と比較すれば改善されているが、釉薬としての長期的な液の流動性についてはまだ不十分である。
【0007】
上記のとおり、特許文献1、2および3に記載の合成高分子を釉薬用のり剤に使用した釉薬は、液の流動性および粘度安定性が十分ではなく、また基材との接着性、付着量安定性及び乾燥性のバランスが取りにくく、実用上十分に満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭52−139111号公報
【特許文献2】特開昭54−73812号公報
【特許文献3】特開平9−225284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、釉薬としての液の流動性、粘度安定性に優れ、また、基材との接着性、付着量安定性及び乾燥性に優れ、さらに、焼成後の表面状態のあれの少ない瓦用釉薬を提供することを目的とする。なお、本発明における釉薬において、釉薬に含まれ、のり剤としての機能を発現する水溶性高分子に特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、(メタ)アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩を含む水溶性重合体が釉薬用のり剤として、優れた機能を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の瓦用釉薬は、全単量体単位を基準とした重量比で、(メタ)アクリルアミド:50〜95質量%と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩:5〜50質量%、とを含む単量体混合物を重合して得られる水溶性重合体ならびに釉薬原料を混合してなる瓦用釉薬である。
【0012】
請求項2に記載の瓦用釉薬は、釉薬における水溶性重合体の割合が0.1〜2.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の瓦用釉薬である。
【0013】
請求項3に記載の瓦用釉薬は、水溶性共重合体の10質量%水溶液のブルックフィールド粘度が、100〜50,000mPa・sであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の瓦用釉薬である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の瓦用釉薬は、長期間保存しても液の流動性が安定しており、さらに、瓦への接着性、付着量安定性および乾燥性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、特定な水溶性重合体および釉薬原料を混合してなる瓦用釉薬である。
【0016】
本発明に用いられる水溶性重合体を構成する必須の単量体は、(メタ)アクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩である。
【0017】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸は、スルホン酸基のままの未中和の状態で使用しても良いが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アルキルアミン、アルカノールアミンなどにより中和した形態で使用しても良い。また、スルホン酸の状態で重合を行った後で、前記アルカリなどでスルホン酸基を中和しても良い。なお、汎用的に使用できる点、取扱いの簡便さから、水酸化ナトリウムを用いて中和するのが好ましい。
【0018】
(メタ)アクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩の割合は、質量比で50〜95:5〜50の範囲であり、好ましくは、60〜90:10〜40、さらに好ましくは、75〜85:15〜25である。
【0019】
(メタ)アクリルアミドの割合が50質量%より少ないと高重合度の重合体が得られない恐れがあるため好ましくない。逆に(メタ)アクリルアミドが95質量%を超えると、釉薬原料に含まれる高価金属による影響を受けやすくなるため、保存安定性に劣る恐れがあり好ましくない。
【0020】
一方、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩の割合が50質量%を超えると、乾燥性、接着性などの優れた特徴が消失する恐れがあり好ましくない。
【0021】
本発明における水溶性共重合体には、(メタ)アクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩以外のビニル単量体を、水溶性を損なわない限りにおいて、単量体全体の30質量%未満の範囲において使用しても差し支えない。
【0022】
その他のビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルニトリル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびそれらのエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、アルキルの炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸アルキルエステル)は、本発明における水溶性重合体に油性の性質を与え、釉薬の安定性を向上することができる効果があるため、併用することが好ましい。
その他のビニル単量体の割合が30質量%を超えた量を使用した場合は、重合体の水溶性を阻害する恐れがあるため好ましくない。
【0023】
本発明の水溶性重合体には、その他の単量体として架橋性単量体を用いることができる。架橋性単量体としては、ポリアルケニルポリエーテール単量体、多価ビニル単量体などが挙げられ、具体的には、テトラアリルオキシエタン、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、アリルサッカロース、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
架橋性単量体を用いた架橋型水溶性重合体を使用した場合は、揺変性(チキソトロピー)が発現するため、釉薬原料の沈降が抑制され、釉薬の流動性および安定性向上が期待できる。
【0024】
前記架橋性単量体の使用量は、得られる水溶性架橋共重合体の増粘特性によるが、全単量体100質量部に対して2.0質量部以下で使用することが好ましく、さらに好ましくは1.0質量部以下である。架橋性単量体が2.0質量部を超えると、得られる重合体が水溶性でなくなったり、場合によっては、水に溶解しても水溶液が増粘しなくなることもある。
【0025】
本発明における水溶性重合体は、一般的なラジカル重合開始剤により、前記単量体を重合させて製造する。ラジカル重合開始剤としては過酸化物、アゾ系開始剤などから選ばれた化合物またはそれらの混合物が使用でき、ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などが挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を併用して用いることができる。
【0026】
ラジカル重合開始剤の使用量は全単量体100質量部に対して、0.001〜2.0質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.02〜1.0質量部である。
ラジカル重合開始剤が、0.001重量部より少ないと、重合反応が進まなく、大量の未反応単量体が残存する恐れがある。
逆に、ラジカル重合開始剤を2.0質量部より多く使用すると、重合が急激に進むため、重合反応の制御が難しくなり、場合によっては制御が出来ない恐れもある。仮に重合反応が制御できたとしても、ポリマー鎖が短くなるため、増粘水溶液の粘度が低くなってしまう結果となる傾向が強い。
【0027】
本発明における水溶性重合体は、水溶液重合または水可溶性有機溶剤中での沈殿重合によって得られたものが好ましい。
水溶液重合は水を媒体として重合させる方法であり、重合熱が制御しやすい、連鎖移動が起こらないため重合度が高くなりやすく、また、イソプロピルアルコールなどの連鎖移動剤を併用することで重合度の調整が容易になるなどの利点がある。
【0028】
一方、沈殿重合の場合は、重合の制御などは複雑になるが、重合工程の終了後、ろ過・乾燥などによって容易に粉末状の重合体を得ることができるなどの利点がある。
【0029】
水可溶性有機溶剤中での沈殿重合の場合は、単量体は溶解するが、重合体は溶解しない溶剤が用いられる。水可溶性有機溶剤は公知の有機溶剤を用いることが可能であって、例えば、ケトン、エステル、アルコールなどが例示され、これらを少なくとも1種以上からなる有機溶剤を使用する。
【0030】
なお、使用した有機溶剤を回収再使用する観点から、1種類の有機溶剤を使用することが好ましく、市場からの入手状況から、また連鎖移動の比較的少ないという理由から、メタノールが好ましい。連鎖移動が少ない溶剤を使用した方が、ポリマー鎖が長くなり、一般的に高粘度の水溶性重合体を製造できる。
【0031】
水可溶性有機溶剤中での沈殿重合の場合は、水可溶性有機溶剤をろ過または遠心分離などで除去した後に、さらに水可溶性有機溶剤を熱によって除去して粉末を得ることができる。
また、水溶液重合の場合は、重合液をスプレー乾燥、ドラムドライヤー乾燥などによって容易に粉末を得ることができる。
【0032】
水溶性重合体が水溶液で供給されると、調合する際に固形分換算して配合量を決めなければならないので、粉末状態を使用することが好ましい。逆に粉末状態であると再溶解が必要であるので、水溶性タイプで供給する方が好ましいこともあり、実際の釉薬組成物を製造する状況によって、水溶性の状態で使用するか、粉末の状態で使用するか選択することができる。
【0033】
本発明における水溶性重合体の10質量%水溶液のブルックフィールド粘度が、100〜50,000mPa・sであることが好ましい。さらに好ましくは、1,000〜20,000mPa・sである。10質量%水溶液のブルックフィールド粘度が100mPa・s未満の水溶性重合体では、得られる釉薬の粘度が低くなるため、液の流動性が得られにくい。逆に、50,000mPa・sを超えた水溶性重合体では、釉薬組成物の粘度が高くなりすぎ、瓦基材に均一に塗布できなくなる恐れがある。
【0034】
本発明の瓦用釉薬の主要な成分である釉薬原料としては、一般的に用いられている釉薬原料が適用できる。
例えば、特開平7−242477号公報の実施例に記載されたような、有鉛フリット、珪石粉、カオリン、アルミナ粉、酸化チタン、珪酸ジルコニウム、酸化バナジウム、二酸化マンガン、酸化鉄等からなる釉薬原料が例示される。
これらの釉薬原料の配合割合についての制限はなく、最終製品である瓦の色調、光沢などに応じて適時配合されるものである。
【0035】
本発明における釉薬において、水溶性重合体の添加部数は釉薬原料100質量部に対して、0.01〜5.0質量部であるのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜2.0質量部である。
水溶性重合体の添加部数が0.01重量部よりも少ないと、釉薬としての液の流動性、沈降防止、接着性、付着量安定性などが十分に発現しない恐れがあり、5.0質量部を超えると粘度が高くなりすぎる恐れがある。
【0036】
本発明の瓦用釉薬において、他ののり剤の併用も可能であり、(メタ)アクリル酸系ポリマー、(メタ)アクリルアミド系ポリマー、ポリエチレンオキサイド、アルギン酸ソーダ、CMC、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)など一般的に使用されている分散材が併用可能である。
【0037】
また、本発明における上記釉薬原料とのり剤を混合する方法は、一般的に釉薬製造に使用されているボールミルおよびプランジャーで混合・粉砕する方法が適用でき、特に制限はない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例によってこの発明をさらに具体的に説明する。
<水溶性重合体の製造>
<製造例1>
ジブロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管および攪拌翼を備えた2リットルの4つ口フラスコに、800gのイオン交換水を投入し82℃に昇温した。窒素を2L/時間の流量で底部より1時間吹込んだ後、0.6gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を投入し、直ちに、予め300gのイオン交換水にアクリルアミドを275g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ATBSという)を25g溶解させた単量体水溶液と、予め30gのイオン交換水に2.4gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を溶解しておいた触媒水溶液を各々4時間かけて連続投入を行った。
重合中は0.2L/時間の窒素吹込みを継続した。連続投入が終了してから82℃で2時間熟成し、さらに、追加触媒として0.1gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を加えた後、82℃で3時間熟成した後、冷却し30℃以下になってから、ATBSと同モル量の水酸化ナトリウムを内温が40℃を超えないようにゆっくりと加えて水溶性共重合体水溶液を得た。
得られた共重合体は、アクリルアミド91質量%および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム9質量%の共重合体である。
得られた水溶性共重合体水溶液を4インチφの小型ドラムドライヤー(表面温度150℃)で乾燥し、さらに粉砕をして水溶性共重合体粉末を得た。
【0039】
<製造例2>
単量体として、アクリルアミドを240g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を60g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド78質量%および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム22質量%の共重合体を得た。
【0040】
<製造例3>
単量体として、アクリルアミドを180g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を120g使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.15g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.45g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド58質量%および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム42質量%の共重合体を得た。
【0041】
<製造例4>
単量体として、アクリルアミドを165g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を60gおよびアクリル酸メチルを75g使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.1g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.4g使用し、アクリル酸メチルは水に不溶のため、単独で別の注入口より連続投入した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド54質量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム22質量%およびアクリル酸メチル24質量%の共重合体を得た。
【0042】
<製造例5>
単量体として、アクリルアミドを300gのみを使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.1g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.4g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド100質量%の重合体を得た。
【0043】
<製造例6>
単量体として、アクリルアミドを180g、アクリル酸を120g使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.1g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.25g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド53質量%およびアクリル酸ナトリウム47質量%の共重合体を得た。
【0044】
<製造例7>
単量体として、アクリルアミドを290g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を10g使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.1g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.3g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド96質量%および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム4質量%の共重合体を得た。
【0045】
<製造例8>
単量体として、アクリルアミドを140g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を150g使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.1g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.45g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリルアミド46質量%および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム54質量%の共重合体を得た。
【0046】
<製造例9>
単量体として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を70g、アクリル酸を230g使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.15g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.45g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム20質量%およびアクリル酸ナトリウム80質量%の共重合体を得た。
【0047】
<製造例10>
単量体として、アクリル酸300gのみを使用し、初期の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.1g、連続投入の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.35g使用した以外は、製造例1と同様に重合を行い、アクリル酸ナトリウム100質量%の重合体を得た。
【0048】
<水溶性共重合体の粘度測定>
粉末状の水溶性共重合体の10質量%水溶液は、通常のビーカーを用い、イオン交換水90質量部に対して水溶性共重合体10質量部をマグネチックスターラーなどで攪拌しながら、出来る限り少量づつ加えて、共重合体が完全に溶解するまで攪拌して作製した。10質量%水溶液粘度は、25℃の条件で、ブルックフィールド粘度計を用いて測定した。その結果を表1に記載する。
【0049】
【表1】

【0050】
<瓦用釉薬の作成>
製造例1〜10で製造した粉状の水溶性共重合体またはCMCと、釉薬原料とを下記割合にてボールミルで3時間粉砕して釉薬を作成した。
フリット 100g
珪石 420g
カオリン 540g
炭酸カルシウム 200g
黒顔料 740g
水 1000g
水溶性共重合体またはCMC(ダイセルファンケム株式会社製番号1260)
10g
【0051】
<瓦用釉薬の評価>
上記で調整した釉薬を付着量80g/J形桟瓦白地になるように水を加えて調整し、以下の手順にて評価し、その結果は表2に記載する。
(1) 乾燥性
25℃に調整した室内において、上記釉薬をJ形桟瓦白地に流し掛け、目視で 表面が乾くまでの時間をCMCで作成した釉薬(比較例7)と同時に測定して、 下記の基準で評価した。
○:比較例7とほぼ同じ(±5分間)。
△:比較例7と比較して乾燥時間が5分間以上長い。
×:比較例7と比較して乾燥時間が10分間以上長い。
【0052】
(2) 付着量
上記の釉薬(付着量80g/J形桟)を40℃に調整した室内で、一昼夜攪拌
し、付着量差をCMCで作成した釉薬(比較例7)と比較した。
○:比較例7とほぼ同じ(±10g)。
△:比較例7と比較して付着量が10〜30g少ない。
×:比較例7と比較して付着量が30g以上少ない。
【0053】
(3) 接着性
上記釉薬をJ形桟瓦白地に流し掛け、一昼夜放置し、HBの硬度0.5mmの芯で引き書き、乾燥した釉薬の剥がれ具合を観察し、下記の評価を行った。
○:書いた線の周りは殆ど剥がれない。
△:書いた線の周りが少し剥がれる。
×:書いた線の周りもかなり剥がれ落ちる。
【0054】
(4) 釉薬の保存安定性(流動性)
釉薬を25℃に調整した室内に静止状態で14日間保管して、上水の有無で確
認した。具体的には、200mlビーカー(80mmφ)で200mlの釉薬を入れて、上水の深さをmm単位で測定した。
◎:上水が観察されなかった(0mm)
○:5mm以下の上水が観察された。
△:5〜10mmの上水が観察された。
×:10mmを超える上水が観察された。
【0055】
【表2】

【0056】
上記表2に記載のとおり、(メタ)アクリルアミド:50〜95質量%と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩:5〜50質量%、とを含む単量体混合物を重合して得られる水溶性重合体をのり剤とする本願発明の瓦用釉薬は、従来技術であるCMCをのり剤とする瓦用釉薬や他ののり剤を含む瓦用釉薬と比較して、釉薬の流動性や保存安定性に優れたものであり、各種瓦用の釉薬として広く使用可能である。






























【特許請求の範囲】
【請求項1】
全単量体単位を基準とした重量比で、(メタ)アクリルアミド:50〜95質量%と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/またはその塩:5〜50質量%、とを含む単量体混合物を重合して得られる水溶性重合体ならびに釉薬原料を混合してなる瓦用釉薬。
【請求項2】
水溶性重合体の割合が、釉薬原料100質量部に対して0.1〜2.0質量部であることを特徴とする請求項1記載の瓦用釉薬。
【請求項3】
前記水溶性共重合体の10質量%水溶液のブルックフィールド粘度が、100〜50,000mPa・sであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の瓦用釉薬。

【公開番号】特開2011−246312(P2011−246312A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122593(P2010−122593)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(000161633)宮脇グレイズ工業株式会社 (7)