説明

生コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置

【課題】 生コンクリートをミキサー車で搬送する際のドラムの温度上昇による、生コンクリートの固化または固着を防止することができる、簡便で経済的に安価であり、また、温度上昇を抑制する必要な時には当該関連設備を備え、不必要時には当該関連設備の脱着が容易に可能となる、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置を提供する。
【解決手段】 コンクリートミキサー車のドラムを覆うシートを有し、該ドラムと該シートとの間に形成される空間に、該ミキサー車の走行時に発生する気流の流通路を形成する。また、該シートは、該ミキサー車の前方側の端部に該気流を取り込むための傾斜開口部を有するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設分野における生コンクリートの輸送手段のひとつであるコンクリートミキサー車(トラックアジテータ)用の生コンクリート温度上昇抑制取付装置に関し、詳しくは、夏期の直射日光及び高外気温によるコンクリートミキサドラム内の生コンクリートの温度上昇を抑制する、着脱可能な取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートミキサー車(以下ミキサー車)は、コンクリート構造物建設現場に生コンクリート製造プラントから生コンクリートを輸送するために使用されており、ミキサードラムに収容した生コンクリートを該ミキサドラムの回転によって混練することで、凝固を抑制しながら、運搬している。
【0003】
しかし、輸送の際、直射日光及び高外気温により、ミキサードラムが加熱されてドラム内の生コンクリートも高温となり、内部温度の上昇により、生コンクリートの凝結の進行が促進され、流動性が低下する等の品質劣化が発生し易い。
これは、一般的に使用されているドラムの材質は鉄板であり、断熱性をほとんど有さないためである。
【0004】
このような問題点に鑑み、ドラム内の生コンクリートの温度上昇を抑制して冷却し、品質を保持させる方法が提案されている。
例えば、特開平9−277245号公報には、コンクリートミキサー車のドラム外郭部を二重構造とし断熱材を入れて、ドラム内生コンクリートの温度上昇を抑制する方法が、また、特開平11−277523号公報には、ドラムを断熱箱体で囲み冷却空気を吹き込んでドラム内生コンクリートを冷却する方法等が、更に、特開2003−94425号公報には、ドラム上部をカバーで覆い、ドラムに冷却水を直接散水し冷却する方法等が開示されている。
【0005】
具体的には、特開平9−277245号公報では、コンクリートミキサー車のドラム本体の外面を、ハニカムコア等をとりつけることにより形成される空洞部分に断熱材を入れた後、金属板をドラム全面に貼って蓋をし、二重構造としたことを特徴とするコンクリートミキサー車のドラムが示されている。
【0006】
また、特開平11−277523号公報では、ミキサードラムを配備したミキサー車の冷却方法であって、ミキサー車におけるミキサードラムを断熱筐体で覆って、ミキサードラム外面部と断熱筐体の間に外気と遮断された空間部を形成し、この空間部に冷却空気を供給してミキサードラムを外面から冷却するとともに、この冷却空気をミキサードラム内に移送することにより、ミキサードラムの周囲とその内部の両方を合わせて冷却し、ミキサードラム内の生コンクリートまたはミキサードラム内に残った生コンクリートを所定の温度に冷却し、その固化または固着を防止することを特徴とするミキサー車の冷却方法が示されている。
【0007】
更に、特開2003−94425号公報では、車台上にミキサードラムが円周方向に回転自在に搭載されたミキサー車において、前記車台上には、前記ミキサードラムの少なくとも上部を覆うカバー部材が設けられ、該カバー部は前記ミキサードラムの外周を囲むように車台上に設けられたフレーム材にシートが張設されるととるとともに、該フレームの一部を散水パイプとして兼用し、該散水パイプにはミキサードラムの外周面に冷却水を散水する散水ノズルが設けられている、ミキサードラムの外周面に冷却水を散水する冷却水散水手段が設けられたことを特徴とするミキサー車のミキサードラム冷却方法が示されている。
【0008】
しかし、上記したような、特開平9−277245号公報、特開平11−277523号公報及び特開2003−94425号公報に記載されたような従来の方法では、冷却するための設備を新設する必要があったり、コンクリートミキサー車の改造コストが大きく経済的な解決方法とはいえず、更には、夏期以外の、温度上昇を抑制する必要がない時に関連設備の脱着が容易にできない等の問題点がある。
【特許文献1】特開平9−277245号公報
【特許文献2】特開平11−277523号公報
【特許文献3】特開2003−94425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、生コンクリートをミキサー車で搬送する際のドラムの温度上昇による、生コンクリートの固化または固着を防止することができ、簡便で経済的に安価な、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置を提供することである。
更にまた、本発明の目的は、温度上昇を抑制する必要な時には当該関連設備を備え、不必要時には当該関連設備の脱着が容易に可能となる、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置は、コンクリートミキサー車のドラムを覆うシートを有し、該ドラムと該シートとの間に形成される空間に、該ミキサー車の走行時に発生する気流の流通路を形成することを特徴とするものである。
好適には、本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置においては、該シートが、該ミキサー車の前方側の端部に該気流を取り込むための傾斜開口部を有していることを特徴とするものである。
【0011】
更に好適には、本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付け装置においては、該シートの傾斜開口部が、傾斜角度又は開口面積を可変調整可能なように構成されていることを特徴とするものである。
また、更に好適には、本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置においては、該シートが、複数のサポートバーで支持されると共に、該サポートバーは該ミキサー車に対し所定方向に可動自在に支持されていることを特徴とするものである。
また、更に好適には、本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置においては、該シートが、日光に対する遮光性及び断熱性を有する材料で形成されていることを特徴とするものである。
なお、本発明における「断熱性」には、低吸熱性のものも含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置によれば、ミキサードラムを遮光・断熱シートで覆うとともに、ミキサードラムと該シートとの間に空気流通路を設けることで、遮光・断熱シート自体が直射日光等によるミキサードラムの温度上昇を抑制するとともに、特に走行時に効率良く正面気流を取りこみ、該空気が前記シートとミキサードラムの間の空間に流通してミキサードラムの温度上昇を抑制して、内部のコンクリートの固化・固着を阻止することが可能となる。
従って、積載生コンクリートの流動性低下等の品質劣化を抑え、適正な状態で生コンクリートを運搬でき、また、生コンクリートの荷卸し後に残る生コンクリートや、ドラム内壁及び攪拌羽に付着した生コンクリートの凝結促進が抑制され、排出処理も効率化できるという効果が得られる。
更にまた、本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置は、前記シートの脱着が容易に行え、例えば蛇腹形状等によってコンパクトに収納することができ、また、装置自体が簡便であり、低コストで加工、据付が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を図面を参照しながら、好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
図1は、温度上昇抑制する遮光・断熱シート3で覆われたミキサー車の側面全体の概略外観図を、図2は、当該ミキサー車の前面全体の概略外観図を示している。
すなわち、本発明は、ミキサー車のミキサードラム5を、シートサポートバー4を骨組みとして、遮光・断熱シート3で覆って、走行時に発生する気流の流通路を設けることで、日光からドラムを遮断し、ドラム内の生コンクリートの温度上昇を抑制する温度上昇抑制取付装置である。
【0014】
また、最も運転席に近い遮光・断熱シートの前方部に取風部2を設け、その末端天蓋部に傾斜を付けて、走行時の正面気流を効率よく取り込み、遮光・断熱シート3とドラム5との空間に外気流を流通させることで、こもった熱を逃がしドラム3内の生コンクリートの温度上昇を抑制するものである。
【0015】
具体的には、図に示すように、車台(図示せず)には、駆動装置により円周方向に回転自在に回転されるように、ミキサードラム5が搭載されている。
該ミキサドラム5の回転によりその内部に設けられた螺旋状のブレード(図示省略)の作用によって、生コンクリートの投入、混練、排出を行うことができる。
【0016】
ミキサードラム5の後端部には、生コンクリートをミキサードラム5内に投入する生コン受入ホッパ6が配置されており、該ホッパ6の下方には左右に一対のスクープ(図示せず)が設けられ、このスクープ4はミキサードラム5の回転によりブレードの後端から排出される生コンクリートを受け、さらに、当該スクープの下方にはこのスクープで受けた生コンクリートを排出する生コン排出シュート7が配設されている。
【0017】
このように構成されたミキサー車には、前記ミキサードラム5の外周面を覆うようにシート部材3が設置されており、前記シート部材3は、車台上にミキサードラム2の外周を囲むようにして立設された複数のシートサポートバー4を骨組みに張設されてなる。
このシート部材3によってミキサードラム5のほぼ全体は、当該ミキサードラム5の外周面から所定の間隔を隔てて空間が形成されて覆われるように構成されている。
シート部材3は、図1及び図2において、編み掛けで表示されている部分である。
【0018】
詳しくは、ミキサードラム5の周囲と、シート部材3との間に形成された空間部は、コンクリートミキサー車の走行時における空気流通路となって外部と連結されており、当該シート部材3は、生コンクリートの出し入れ口である生コン受け入れホッパ6及び生コン排出シュート7は覆わないように設置されている。
【0019】
ミキサー車のドラム5を覆う遮光・断熱シート3は、その外面が太陽の光を反射する特性に優れた銀色及び白色系で形成され、遮光性が高く、吸熱性が低いビニールや帆布を素材とし、かつ蛇腹状に折りたたむことが可能な軟らかさと風雨や走行中の風圧に耐えうる耐久性を有するものが好適に用いられる。
更に、シート部材の内側面にアルミやFRP等を用いることにより、その強度をさらに強化することもできる。
シート部材3の形状は、ミキサードラム5全体を包み込んで、その間に一定の空気流通路となる空間を設けることができるものであれば直方型、蒲鉾型、球体型等の任意の形状が採用できる。
【0020】
ミキサードラム5の外周面とシート部材3との間に形成された空間部は、空気の流通路として機能し、コンクリートミキサー車が走行することにより、遮光・断熱シート取風部2から、積極的に空気が取り入れられ、取り入れられた空気はミキサードラム5の外周表面から熱を吸収し、当該ミキサードラム5の温度上昇を防止する。
この空間部の空気は、シート部材3の後方の開放部から外部へ自然放出される。
【0021】
該シート3は、該ミキサー車の前方側の端部に該気流を取り込むための傾斜開口部である遮光・断熱シート取風部2を有しており、更に好適には、本発明のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置においては、該シート3の傾斜開口部である取風部2は、効率よく空気を取り入れ、流通させるために、傾斜角度又は開口面積を可変調整可能なように構成されている。
【0022】
遮光・断熱シート3を支持するシートサポートバー4は、所定の間隔を隔ててミキサードラム5の側部形状及び上部形状に対応して、車台上に、所定方向に可動自在に支持されて、複数立設されている。
シーとサポートバー4は、防食加工した鋼製または、ステンレス製とし、遮光・断熱シート3にかかる風圧に耐えうる強度を有するものとする。
また、シートサポートバー4の端部は、シートサポートバー可動ガイド8で支持され、遮光・断熱シート3が必要時には固定でき、不必要時はシートを蛇腹状に折りたためるよう可動式となる構造を有する。
従って、生コンクリートの温度上昇を抑制する必要のない季節においては、コンクリートミキサー車から本発明の温度上昇抑制取付装置を脱着することができる。
【0023】
また、好ましくは、走行時の正面気流による風圧に対する対策として、数本の脱着・可変長式シートサポートバー1を、運転席天蓋後端部と、遮光・断熱シート取風部2のシートサポートバー4とに固定する。
当該脱着・可変長式シートサポートバー1は、防食加工した鋼製または、ステンレス製等とすることができ、また、容易に長さを変えられ、かつ、運転席天蓋後端部及び遮光・断熱シート取風部2のシートサポートバー4固定部の脱着ができる構造とする。
【0024】
当該シート部材3は、当該シートサポートバー4に各区画ごとに分割して張設されていても、又は一枚ものが張設されているもいずれのものでもよい。
走行時の正面気流を効率良く取り込むため、最も運転席に近い遮光・断熱シート取風部2の末端天蓋部は、傾斜角度又は開口面積を可変調整可能なように構成されており、かかる傾斜角度は、脱着・可変長式シートサポートバー1の長さを変えることで、水平に対し0〜45°に調整することができる。
【0025】
このように、ドラム内の生コンクリートの温度上昇を抑制するためには、まず直射日光によるドラムの自体の温度上昇を防ぐ対策が必要であり、本発明では、遮光・断熱シート3でミキサードラム5全体を覆うことで日光から該ドラム5を遮断し、かつ、ミキサードラム5の外周面への直射日光の照射を反射能力に優れた銀色で形成されたシート部材3の外面で遮ることで、直射日光によるミキサードラム5内部の温度上昇を抑制することができる。
【0026】
また、遮光・断熱シート3とドラム5との間に空間を設けて、トラック走行時の正面気流を積極的に取り込み、流通させることで温度上昇を防ぐことができ、シート3も脱着が容易に行え、かつ、蛇腹形状によって、コンパクトに収納できる。
更に、材料もシートとそれを支持する鉄骨類やガイドレールが主であり、低コストで加工、据付が可能である。
【0027】
本発明においては、夏季において、外気温が30℃を超え、直射日光が当たる晴天時でも、ドラム内の生コンクリートの温度上昇を、低コストで抑制することが可能となる。
これにより、建築工事標準仕様書・同解説 「JASS 5:鉄筋コンクリート工事」において、暑中コンクリートの品質は、荷卸し時のコンクリート温度は、35℃以下であることが必要であるとの条件、及び、土木学会コンクリート標準示方書「施工編」において、打込み時のコンクリート温度は35℃以下でなければならないとの条件を十分に満足することができる。
【0028】
従って、生コンクリートの運搬途中におけるミキサードラム5内部の温度上昇を適正に抑制することができ、ミキサドードラム5内部の温度上昇に伴って生じる生コンクリートの凝固などの品質劣化を防止することができ、生コンクリートを良質な状態で目的地に運搬することが可能となる
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、コンクリートの打設現場とバッチャープラントとの間を往復して生コンクリートを搬送するためのコンクリートミキサー車、特に夏季に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のコンクリートミキサー車用の温度抑制取付装置を備えるミキサー車の概略構成を示す側面図を示す。
【図2】図1のミキサー車の前面図を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 脱着・可変長式シートサポートバー
2 遮光・断熱シート取風部
3 遮光・断熱シート(網掛部分)
4 シートサポートバー
5 ミキサードラム
6 生コン受入ホッパ
7 生コン排出シュート
8 シートサポートバー可動ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートミキサー車のドラムを覆うシートを有し、該ドラムと該シートとの間に形成される空間に、該ミキサー車の走行時に発生する気流の流通路を形成することを特徴とする、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置において、該シートは、該ミキサー車の前方側の端部に該気流を取り込むための傾斜開口部を有していることを特徴とする、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置において、該シートの傾斜開口部は、傾斜角度又は開口面積を可変調整可能なように構成されていることを特徴とする、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの項に記載のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置において、該シートは、複数のサポートバーで支持されると共に、該サポートバーが該ミキサー車に対し所定方向に可動自在に支持されていることを特徴とする、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの項に記載のコンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置において、該シートは、日光に対する遮光性及び断熱性を有する材料で形成されていることを特徴とする、コンクリートミキサー車用の温度上昇抑制取付装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−98612(P2007−98612A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288022(P2005−288022)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(500172302)東京エスオーシー株式会社 (8)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】