説明

生体信号検出装置及び離床予兆検出システム

【課題】睡眠姿勢の違いによる生体信号の検出することができる生体信号検出装置を提供すること。
【解決手段】ベッドB上を横切る方向に、複数配置される圧力センサー(圧電センサー)11R、11Lと、圧力センサー(圧電センサー)11R、11L毎に設けられ、対応している圧力センサー(圧電センサー)の出力信号を処理して、少なくとも、呼吸信号、脈波信号及び体動信号を示す生体信号をそれぞれ生成するセンサーインターフェース12R、12Lと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの睡眠姿勢における生体信号を検出する生体信号検出装置及びこの生体信号検出装置から検出される生体信号に基づいて離床の予兆を検出する離床予兆検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ベッド、布団等の寝床に配置して、例えばヒトの呼吸、脈波、体動、イビキ等の生体信号を検出する生体信号検出装置が知られている。このような生体信号検出装置においては、検出した生体信号を、例えばヒトの離床等の検出に用いる。
【0003】
このような生体信号検出装置においては、生体信号の検出に、例えば(i)圧力センサー、(ii)圧電センサー等のセンサーが用いられる。
【0004】
(i)圧力センサーを用いた生体信号検出装置(圧力センサー式)の場合
圧力センサー式による生体信号の検出は、周辺の圧力から隔離されたような空間内の圧力の変化を検出することにより行われる。この空間を形成するために、例えば内部に空気を充填したエアマットが用いられる。
【0005】
このエアマットは、周辺の圧力から隔離し、遮蔽空間を作る膜として機能する。またエアマットは、人体の振動波や直接振動等を、内部の空間に伝達できるように、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、高分子化合物シリコーン等の可塑性のある樹脂材により形成される。なおエアマットは、ベッドや布団等の寝床(以下、ベッドという。)に配置する場合には、ヒトがベッド上のどの位置に移動しても生体信号を検知することができるように、上半身付近に横断的に配置される。
【0006】
図9(a)は、従来の圧力センサーを用いた生体信号検出装置の1例を示す図である。この圧力センサーは、エアマット内に配置される。また図9(b)は、従来の圧力センサーを用いた生体信号検出装置の他の例を示す図である。このように圧力センサーは、エアマットから引き出されたビニルチューブ等のエアチューブを介してエアマット外に配置される場合もある。
【0007】
図10(a)は、圧力センサーの内部回路の1例を示す図である。この内部回路において、圧力を直接捉えるのがエレクトレットフィルムである。このエレクトレットフィルムは、圧力の変化を電荷の変化として変換し、容量C1の微小変化を両端電圧に変換する。この容量C1の両端電圧の変化は、抵抗R1を介して放電され、時定数C1×R1の電圧変化量となる。この容量C1の両端電圧の変化量が電圧信号として出力される。この電圧信号は、接合型FET(Field effect transistor)であるQ1のゲート電圧となって、ソース接地増幅回路により、電圧変化量がドレイン電流変化量に変換される。なお本内部回路において、ダイオードD1は、接合型FETであるQ1のゲート電圧が下がり過ぎるのを防止するために設けられている。
【0008】
この圧力センサーでは、出力される電圧(Vout)を、次式(1)に基づく次式(2)により表すことができる。なおIは、ドレイン電流であり、IDSSは、ドレイン飽和出力電流であり、Vは、ゲートピンチオフ電圧であり、Vは、ゲートに印加される電圧であり、Voutは、圧力センサーから出力される電圧であり、VDDは、電源電圧であり、R2は抵抗R2の抵抗値である。
【0009】
【数1】

【0010】
【数2】

【0011】
図10(b)は、圧力センサーの構造の1例を示す概念図である。この圧力センサーは、一端に圧力穴が形成され、他端は過大圧力を開放する機構を有する管とし構成される。また圧力センサーの内部には、圧力穴側に、フロントワッシャーと、エレクトレットフィルムと、ギャップワッシャと、エレクトロードと、が配置され、残りの空間には、バックチャンバーが形成される。
【0012】
この圧力センサーでは、圧力穴側から入力される圧力が圧力穴を介して、エレクトレットフィルムに加わる。そして圧力センサーでは、基準電極であるエレクトロードとエレクトレットフィルムとの間隙が変化することによりエレクトレットフィルムの容量C1が変化する。さらに圧力センサーでは、この容量C1が変化すると、図10(a)に示すように、抵抗R1を介して、接合型FETのQ1のゲート電圧となる。
【0013】
以上を構成要素とする生体信号検出装置においては、ヒトがエアマット上に寝ることによって、脈波、呼吸、イビキ、体動等の複数の生体信号が合成された1つの圧力信号を圧力センサーから検出することができる。生体信号検出装置においては、圧力信号の強弱や有無等の変化から、例えば着床・離床等の姿勢の状態、さらに生体信号を分析することにより、睡眠の有無、眠りが浅い・深い等の睡眠状態を検知する。
【0014】
(ii)圧電センサーを用いた生体信号検出装置(圧電センサー式)の場合
圧電センサーによる生体信号の検出は、物体の応力がセンサーに与えるひずみを検出することにより行われる。
【0015】
図11は、従来の圧電センサーを用いた生体信号検出装置の1例を示す図である。この生体信号検出装置においては、生体信号の検出部を、上面パネル、下面パネル及び両パネルに挟まれた圧電センサーにより構成する。なお両パネル及び圧電センサーは、上述した圧力センサーと同様に、ヒトがベッド上のどの位置に移動しても生体信号を検知できるように、上半身付近に横断的に配置される。
【0016】
図12(a)は、圧電センサーの構成の1例を示す外観図であり、図12(b)は、圧電センサーの内部回路の1例を示す図である。この圧電センサーは、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のセラミックを素材とする。このような素材は、機械⇔電気の可逆性がある素子であるが、圧電センサーとして用いる場合には、機械的応力を電気信号として検出するように構成される。
【0017】
圧電効果は、一般的には、次式(3)及び次式(4)として表されるが、圧電センサーとして機能させる場合には、次式(4)を用いる。なおSは、ひずみであり、sは、弾性コンプライアンス定数であり、Tは、応力であり、dは、圧電定数であり、Eは、電界であり、Dは電束密度であり、εは比誘電率である。
【0018】
【数3】

【0019】
【数4】

【0020】
このような圧電センサーは、上面パネル上にヒトが横たわることでパネルに生じる応力によりひずみが与えられ、このひずみにより脈波、呼吸、体動、イビキ等の複数の生体信号が合成された1つの応力として検出することができる。生体信号検出装置では、この応力の強弱や有無等の変化から、例えば着床・離床等の姿勢の状態、さらに生体信号を分析することにより、睡眠の有無、眠りが浅い・深い等の睡眠状態を検知する。この機械的応力は図12(b)の等価的回路にVoutとして出力される。
【0021】
また特開2008−284001号公報には、設置性と収納性のよい圧電センサーを用いた生体信号検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2008−284001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述したような従来の圧力センサー式及び圧電センサー式の生体信号検出装置においては、ベッド上において上半身付近に横断的に配置されるために、検出される生体信号から着床や離床を検出することはできるが、ヒトの睡眠姿勢やベッドでの睡眠位置を検出することはできない。この結果、従来の生体信号検出装置を利用する場合には、安静な姿勢で睡眠している条件でのみ生体信号の検出が可能である。
【0024】
図13は、従来の生体信号検出装置において検出される生体信号(呼吸信号・脈波信号・体動信号)の1例を示す図である。従来の生体信号検出装置では、体動信号の変化により離床があったことを検出する。
【0025】
ここで実際の睡眠姿勢は、安静な睡眠姿勢で睡眠している以外にもあり、睡眠姿勢は大きく3種類に分類される。まずヒトがベッド正面から見て左側(壁側)に位置している睡眠姿勢(図14(a)参照)、次にベッド正面から見てヒトが右側(床側)に位置している睡眠姿勢(図14(b)参照)、最後にベッド正面から見てヒトが中央に位置している睡眠姿勢(図14(c)参照)である。これらの3種類の睡眠姿勢は、各睡眠姿勢から離床する場合のヒトの動き(離床行動)が大きく異なる。
【0026】
しかし、図13における生体信号の波形の変化からは、睡眠姿勢を識別することができない。すなわち、従来の生体信号検出装置においては、睡眠姿勢の変化は、体動信号の変化として捉えることができるが、図14(a)〜図14(c)に示す睡眠姿勢のいずれかの睡眠姿勢であるかについては、検出することができない。なお、図14は、従来技術によるベッド上のヒトの睡眠姿勢を示す図である。
【0027】
このため介護等において、必須となる被介護者の離床の予兆を検知することに従来の生体信号検出装置を利用する場合には、例えば図14(b)に示すような睡眠姿勢のときに検出される生体信号と、図14(a)及び図14(c)に示すような睡眠姿勢のときに検出される生体信号の識別がつかないために、離床予兆の誤検出をしてしまう可能性を排除することができない。
【0028】
このように従来の生体信号検出装置においては、離床の有無を識別できるだけであり、睡眠姿勢により異なる離床行動を検出することができないために、離床の予兆の検出精度を高めることには限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、睡眠姿勢の違いによる生体信号を検出することができる生体信号検出装置を提供することを目的とする。
また別の本発明は、検出された睡眠姿勢の変化を検出することにより、精度の高い離床予兆を検出することができる離床予兆検出システムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の技術的事項から構成される。
【0030】
(1)寝床面上を横切る方向に、複数配置される感圧センサーと、
前記感圧センサー毎に設けられ、対応している感圧センサーの出力信号を処理して、少なくとも、呼吸信号、脈波信号及び体動信号を示す生体信号をそれぞれ生成するフィルタ部と、
を備えることを特徴とする生体信号検出装置。
【0031】
(1)によれば、複数配置される感圧センサー毎に、生体信号を生成することができるために、例えばベッド上のヒトの睡眠姿勢を検出することができる。
【0032】
(2)(1)において、前記感圧センサーは、圧力センサー又は圧電センサーであることを特徴とする。
【0033】
(2)によれば、感圧センサーが圧力センサー又は圧電センサーであるために、例えばベッド等の上に設置して、センサーから出力される1の信号から複数の生体信号を取得することができる。
【0034】
(3)(1)又は(2)において、前記感圧センサーは、
前記寝床面上に対称的に2つ配置され、
前記寝床面の離床位置に対応して一方を離床側とし、他方を非離床側として定義され、
前記離床位置に変更があった場合には、配置を逆にして対応することを特徴とする。
【0035】
(3)によれば、離床位置が逆になっても、感圧センサーの位置を離床位置に合わせて逆に変更するだけで、例えばソフトウェアの設定の変更等をする必要がなく、装置としての汎用性を高めることができる。
【0036】
(4)(1)から(3)に記載の前記生体信号検出装置と、
前記フィルタ部で生成された前記感圧センサー毎の生体信号に基づいて、睡眠姿勢を特定する睡眠姿勢特定部と、
前記睡眠姿勢特定部により特定される睡眠姿勢の変化に基づいて、離床の予兆を示す離床予兆信号を検出する離床予兆検出部と、
を備えることを特徴とする離床予兆検出システム。
【0037】
(4)によれば、検出された睡眠姿勢の変化を検出することにより、精度の高い離床予兆を検出することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、睡眠姿勢の違いによる生体信号を検出することができる。また別の本発明によれば、検出された睡眠姿勢の変化を検出することにより、精度の高い離床予兆を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】離床予兆検出システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る生体信号検出装置の1例を示す概要図である。
【図3】ベッドの設置状況におけるエアマット及び圧力センサーの配置例を示す概要図である。
【図4】生体信号検出装置におけるフィルタシステム図である。
【図5】本発明によるベッド上のヒトの睡眠姿勢を示す図である。
【図6】各睡眠姿勢での、生体信号の波形の変化を示す図である。
【図7】離床動作及び寝返り動作の波形を示す図である。
【図8】エアマット及び圧力センサーの他の配置例を示す図である。
【図9】従来の圧力センサーを用いた生体信号検出装置の1例を示す図である。
【図10】従来の圧力センサーの構成の1例を示す図である。
【図11】従来の圧電センサーを用いた生体信号検出装置の1例を示す図である。
【図12】従来の圧電センサーの1例を示す概念図である。
【図13】従来の生体信号検出装置において検出される生体信号の1例を示す図である。
【図14】従来技術によるベッド上のヒトの睡眠姿勢を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
図1は、離床予兆検出システムSの構成を示すブロック図である。
離床予兆検出システムSは、布団やベッド等の寝床(本実施形態においては、ベッドB)上での、ヒトの睡眠姿勢の変化から離床の予兆を検出するシステムである。この離床予兆検出システムSは、図1に示すように、生体信号検出装置1、2と、CPU3とを備える。
このような離床予兆検出システムSにおいては、生体信号検出装置1、2により検出された生体信号に基づいて、CPU3により離床の予兆(離床を行う前の動作)を検出する。本離床予兆検出システムSを介護における被介護者の管理に用いる場合には、離床の予兆の検出結果を、例えば表示部(図示せず)に表示する等の管理者への報知を行って、介護者の離床に対応することができる。
【0041】
生体信号検出装置1は、図1に示すように、右側用信号処理としてヒトの生体信号を検出するセンサーの配置場所を識別可能に構成され、右側用信号処理として、圧力センサー11Rと、センサーインターフェース12Rとを備える。
一方、生体信号検出装置2は、左側用信号処理としてヒトの生体信号を検出するセンサーの配置場所を識別可能に構成され、圧力センサー11Lと、センサーインターフェース12Lを備える。
【0042】
圧力センサー11は、圧力の変化を圧力信号として出力する。本実施形態においては、圧力センサー11は、ベッドB上において対称的に配置され、右側に配置される圧力センサー11Rと、左側に配置される圧力センサー11Lとが設けられる。圧力センサー11の構成の詳細については、後述する。
【0043】
センサーインターフェース12(フィルタ部)は、圧力センサー11から出力される圧力信号を各生体信号として検出するために信号処理を行い、この信号処理の結果をCPU3に出力する。本実施形態においては、センサーインターフェース12は、圧力センサー11Rに対応するセンサーインターフェース12Rと、圧力センサー11Lに対応するセンサーインターフェース12Lとが設けられる。
【0044】
このセンサーインターフェース12R(センサーインターフェース12L)は、右側用信号処理(左側用信号処理)の場合には、脈波信号を出力するように信号処理1(信号処理4)を行い、呼吸信号を出力するように信号処理2(信号処理5)を行い、体動信号を出力するように信号処理3(信号処理6)を行う。なお生体信号検出装置1、2における信号処理の詳細については、後に詳述する。
【0045】
図2(a)は、本発明に係る生体信号検出装置1、2のエアマットM及び圧力センサー11をベッドBに配置した状態を示す図である。
【0046】
エアマットMは、周辺の圧力から隔離する遮蔽空間を作る膜として機能する。このようなエアマットMは、人体の振動波や直接振動等を、内部の空間で伝達できるように、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、高分子化合物シリコーン等の可塑性のある樹脂材により形成される。なお本実施形態においては、エアマットMは、圧力センサー11Rに対応するエアマットM(Right)と圧力センサー11Lに対応するエアマットM(Left)が設けられる。
【0047】
ここで圧力センサー11は、エアマットM内に配置される。したがって、圧力センサー11は、周辺圧力から隔離されたような密閉された空間であるエアマットM内の空気の圧力の変化を圧力信号として出力する。例えば圧力センサー11は、上述した従来の圧力センサー11の構成をとることができる。
【0048】
これらのエアマットM及び圧力センサー11は、図2(a)に示すように、ベッドB上の上半身付近においてベッドBを横切るように2組間隔を空けて配置される。
【0049】
図3(a)は、左側が壁側であり、右側が床側となる場所に設置されるベッドBにエアマットM及び圧力センサー11を配置した状態を示す図である。このようにエアマットM及び圧力センサー11は、本実施形態においては、左が壁側であり、右が床側となるような場所に設置されるベッドBに配置される。なお、本離床予兆検出システムSは、右が壁側であり、左が床側となる場合でも使用することができる。右が壁側であり、左が床側の状況での使用については、後に詳述する。
【0050】
このような場所に設置されるベッドBにおいては、ベッドBの壁側(非離床側)は、ベッドBから落ちる可能性のない側となり、離床のために向かない方向となる。一方、ベッドBの床側(離床側)は、ベッドBから落ちる可能性のある側となり、離床のために向く方向となる。これらの方向におけるヒトの動きを特定することは、特に被介護者の行動把握にとって重要であり、転落や離床を予め知ることは、重要である。
生体信号検出装置1、2では、上述したように、圧力センサー11R、11Lの識別が可能な構成になっている。すなわち、本実施形態においては、圧力センサー11が右側(壁側)に配置されているか、左側(床側)に配置されているかが識別可能となる。したがって、上述したように壁側と床側において離床に関する特性が異なる場合には、より高い精度で離床を検出することができる。
【0051】
ここで離床予兆システムSにおける信号処理の詳細について説明する。図4は、生体信号検出装置1、2におけるフィルタシステム図である。なお以下においては、図1対応して右側信号処理について説明する。左側信号処理については右側信号処理と同様であるため説明を省略する。
【0052】
まず離床予兆システムSにおいては、例えばヒトが右側のエアマットM(生体信号検出装置1)に着床した場合には、右側の圧力センサー11R(図4ではSensor1R)から出力される圧力信号が複数の生体信号が合成(重合)された形で、1の信号として出力される。
【0053】
そして第1のセンサーインターフェース12R用増幅器AMP1Rは、入力された1の圧力信号を、抽出する各生体信号(脈波信号、呼吸信号及び体動信号)に対応したフィルタへ分波する(振り分ける)。具体的には、圧力信号は、脈波信号を抽出するためにフィルタFilter1Rによって分波される。また圧力信号は、呼吸信号を抽出するためにフィルタFilter2Rによって分波される。また圧力信号は、体動信号を抽出するためにフィルタFilter3Rによって分波される。なお脈波信号の抽出に関しては、フィルタFilter1Rの後に検波器1Rにより検波処理を行う。各フィルタFilter1R、2R、3Rでは、分波された圧力信号が出力される生体信号に対応した周波数帯の信号が抽出されるように帯域制限される。
【0054】
その後第2のセンサーインターフェース12R用増幅器AMP2Rは、抽出された信号を増幅して、脈波信号(R)をSignal1Rとして出力する。なお脈波信号に関しては、第2のセンサーインターフェース12R用増幅器AMP2Rによる増幅後にローパスフィルタLPF1Rを介して出力される。
また第3のセンサーインターフェース12R用増幅器AMP3Rは、抽出された信号を増幅して、呼吸信号(R)をSignal2Rとして出力する。
また第4のセンサーインターフェース12R用増幅器AMP4Rは、抽出された信号を増幅して、体動信号(R)をSignal3Rとして出力する。
【0055】
次に睡眠姿勢と、生体信号との関係について説明する。図5は、本発明によるベッドB上のヒトの睡眠姿勢を示す図であり、(a)はベッドBの正面から見て左側(壁側)に位置している睡眠姿勢を示す図であり、(b)はベッドBの正面から見て右側(床側)に位置している睡眠姿勢を示す図であり、(c)はベッドBの中央に位置している睡眠姿勢を示す図である。また図6は、各睡眠姿勢での、生体信号の波形の変化を示す図であり、(a)は図5(a)の睡眠姿勢での、生体信号の波形の変化を示す図であり、(b)は図5(b)の睡眠姿勢での、生体信号の波形の変化を示す図であり、(c)は図5(c)の睡眠姿勢での、生体信号の波形の変化を示す図である。
【0056】
例えばヒトが右側のエアマットM(生体信号検出装置1)上に寝ている睡眠姿勢、すなわち、図5(b)に示すような睡眠姿勢の場合の各生体信号の波形について説明する。図5(b)に示す睡眠姿勢の場合には、図6(b)に示すように、ヒトが右側(Right)のエアマットM(Right)上に寝ており、右側の圧力センサー11Rに圧力がかかっているため、左側(Left)では、呼吸信号及び脈波信号のほとんど波形の変化は見られず、体動信号にいたっては検出されない。一方、右側(Right)では、各信号の波形が高くなっている。
【0057】
また図5(b)に示す睡眠姿勢から離床行動が行われた場合の各信号の波形の変化について説明する。図7は、離床動作及び寝返り動作の波形を示す図であり、(a)は図5(b)に示す睡眠姿勢から離床した場合の各信号の波形を示す図であり、(b)は図5(a)に示す睡眠姿勢から図5(b)の状態に寝返りを行った場合の各信号の波形を示す図である。
【0058】
まず図5(b)に示す睡眠姿勢から離床が行われた場合には、図7(a)に示すように、ヒトが右側(Right)のエアマットM(Right)上に寝ており、右側の圧力センサー11Rに圧力がかかっているため、左側(Left)では、呼吸信号及び脈波信号の波形の変化はほとんど見られず、体動信号にいたっては検出されていない。一方、右側(Right)では、各信号の波形が高くなっている。
【0059】
この睡眠姿勢から離床が行われる場合には、右側(Right)の体動信号において、離床を予兆する離床予兆信号となる加圧信号(正方向電圧)が検出され、その後、減圧信号である離床信号(負方向電圧)が検出される。この時、他の生体信号(脈波信号及び呼吸信号)は、離床によって、ヒトの体とエアマットMとの接触が行われなくなるために、検出されなくなる。つまり、図7(a)に見られる、右側の一連の信号変化に係る信号を離床予兆信号として検出することができる。特に、左側に壁がある本実施形態においては、より高い精度で離床の予兆を検出することができる。
【0060】
次に、図5(a)に示す睡眠姿勢から図5(b)に示す睡眠姿勢に寝返りを行った場合の各信号の波形の変化について、図7(b)を用いて説明する。図7(b)は、図5(a)の睡眠姿勢から寝返りを行った場合の各信号の波形を示す図である。
【0061】
図7(b)に示すように、ヒトが左側(Left)のエアマットM(Left)上に寝ており、左側の圧力センサー11Lに圧力がかかっているため、右側(Right)では、呼吸信号及び脈波信号の波形の変化はほとんど見られず、体動信号にいたっては検出されていない。一方、左側(Left)では、各信号の波形が高くなっている。このような状態から、体動信号においては、左側(Left)後に、右側(Right)で波形に変化が生じることから、壁側:左側(Left)から床側:右側(Right)への寝返りであることが検知できる。
また逆に右側(Right)で各信号の波形が高くなっている状態から、右側(Right)で波形の変化が生じた場合には、さらなる床側への移動、つまり離床する場合があるために、この信号の変化を離床予兆信号として捉えることができる。
【0062】
以上、離床予兆システムSは、図3(a)に示すように、ベッドBの正面から見て壁が左側にあり、床が右側にある場合について説明した。しかし、実際のベッドBが配置される状況は、図3(b)に示すように、壁とベッドBの相対位置方向が逆向き、すなわち、ベッドBの正面から見て壁が右側にあり、床が左側にある場合も存在する。この場合には、離床予兆システムSは、生体信号検出装置1、2の位置を逆にする、すなわち、図3(a)に示すように右側で使用されているエアマットM(Right)及び圧力センサー11Rと、左側で使用されているエアマットM(Left)及び圧力センサー11Lとを、図3(b)に示すように逆(右側にエアマットM(Left)及び圧力センサー11L、左側にエアマットM(Right)及び圧力センサー11R)にして使用するように位置を変更する。生体信号検出装置1、2は、上述した2つの場合について利用可能に構成するために、信号処理をハードウェアで対処するのは、モード設定等の煩雑な作業を伴う上に、それによる設定ミスも懸念される。そこで、本発明に係る生体信号検出装置においては、2組のエアマットM及び圧力センサー11R、11Lの組み合わせを、壁側と床側という定義に改め、ベッドBと壁(床)との配置方向によってエアマットM及び圧力センサー11の配置方向を変更できる構成としている。具体的には、エアマットMを横方向に反転しても利用できる構成としている。
【0063】
以下、他のエアマットM及び圧力センサー11の配置例について説明する。
上述した本発明に係る生体信号検出装置では、ベッドBを横切るように2組(偶数)の独立したエアマットM及び圧力センサー11を並べて設けるように構成したが、エアマットM及び圧力センサー11の組を複数設けてもよい。
本発明に係る生体信号検出装置では、例えば図8(a)に示すように、エアマットM及び圧力センサー11を、ベッドBを横切るように2組並べたものをベッドBの長手方向に4組設けるように構成した場合には、壁側上、床側上、壁側下及び床側下の4つの睡眠姿勢を識別することが可能となり、離床の検出の精度を向上させることができる。
【0064】
また本発明に係る生体信号検出装置では、ベッドBの幅が広い場合には、図8(b)に示すように、ベッドBを横切るように3組(奇数)のエアマットM及び圧力センサー11R、11C、11Lでも同等の効果を得ることができる。このように構成した場合には、壁側、ベッドB中央及び床側の3つの睡眠姿勢を識別することが可能であり、離床の検出の精度を向上させることができる。
【0065】
このように構成される生体信号検出装置1、2は、圧力センサー11R、11Lと、センサーインターフェース12R、12Lと、を備える。
圧力センサー11R、11Lは、ベッドB上を横切る方向に、複数配置される。
センサーインターフェース12R、12Lは、圧力センサー11R、11L毎に設けられ、対応している圧力センサー11R、11Lの出力信号を処理して、少なくとも、呼吸信号、脈波信号及び体動信号を示す生体信号をそれぞれ生成する。
【0066】
したがって生体信号検出装置1、2においては、左右に配置される圧力センサー11R、11L毎に、生体信号を生成することができるために、ベッドB上のヒトの睡眠姿勢を検出することができる。また生体信号検出装置1、2においては、生体信号を取得するセンサーが圧力センサー11R、11Lであるために、ベッド等の上に設置すればよく、また取得される1の信号から周波数帯域を制限することにより、複数の生体信号を取得することができる。
【0067】
また圧力センサー11R、11Lは、ベッドB上に対称的に2つ配置され、ベッドBの離床位置に対応して一方を壁側とし、他方を床側として定義される。
したがってベッドBと壁及び床との配置方向が逆の環境においては、エアマットM及び圧力センサー11R、11Lの位置を変える(反転する)ことにより、信号処理ハードウェア及びソフトウェアを変更する必要がなく、使用することができる。
【0068】
離床予兆検出システムSは、生体信号検出装置1、2と、CPU3と、を備える。
CPU3は、センサーインターフェース12R、12Lで生成された圧力センサー11R、11L毎の生体信号に基づいて、睡眠姿勢を特定し、特定される睡眠姿勢の変化に基づいて、離床の予兆を示す離床予兆信号を検出する。
【0069】
以上のように構成される離床予兆検出システムSにおいては、総じて以下の効果を奏することができる。
介護施設等における被介護者の離床予兆行動は、ベッドB上での上半身起床を起点とする場合と、ベッドB上での横転を起点とする場合とがある。どちらの場合も、その離床の予兆行動が壁側で行われているのか、床側で行われているのかは、ベッドBからの完全離床もしくはベッドBからの転落という危険性を検知する上で大きな差異がある。
しかし離床予兆検出システムSにおいては離床予兆が危険のない壁側の圧力センサー11Lから検出されたのか、逆に危険性の高い床側の圧力センサー11Rから検出されたのかが検出可能であり、離床予兆検出の精度を飛躍的に高めることができる。
【0070】
なお上述の実施形態では、本発明に好適な実施形態を上述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態に種々の変更を加えた形態等とすることができる。
【0071】
また上述の実施形態においては、圧力センサー11を、生体信号検出装置1、2のセンサーとして用いる例を説明したがこれに限られず、圧電センサーを生体信号検出装置1、2のセンサーとして用いることができる。この場合、エアマットMをパネルに、圧力センサー11を圧電センサーに、それぞれ読み替えることにより、圧電センサーを本システムに適用することができる。図2(b)は、本発明に係る生体信号検出装置1、2のパネル及び圧電センサーをベッドBに配置した状態を示す図である。パネル及び圧電センサーは、エアマットM及び圧力センサー11の場合と同様に、ベッドB上の上半身付近において、ベッドBを横切る方向に配置される。
【0072】
また上述の実施形態においては、生体信号を検出するセンサーとして圧力センサー又は圧電センサーをセンサーとして用いたがこれに限られず、種々感圧センサーを採用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、2 生体信号検出装置
3 CPU(睡眠姿勢特定部、離床予兆検出部)
11R、11L 圧力センサー、圧電センサー(感圧センサー)
12R、12L センサーインターフェース(フィルタ部)
B ベッド(寝床面)
S 離床予兆検出システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝床面上を横切る方向に、複数配置される感圧センサーと、
前記感圧センサー毎に設けられ、対応している感圧センサーの出力信号を処理して、少なくとも、呼吸信号、脈波信号及び体動信号を示す生体信号をそれぞれ生成するフィルタ部と、
を備えることを特徴とする生体信号検出装置。
【請求項2】
前記感圧センサーは、圧力センサー又は圧電センサーであることを特徴とする請求項1記載の生体信号検出装置。
【請求項3】
複数の前記感圧センサーは、
前記寝床面上に対称的に2つ配置され、
前記寝床面の離床位置に対応して一方を離床側とし、他方を非離床側として定義され、
前記離床位置に変更があった場合には、配置を逆にして対応することを特徴とする請求項1又は2記載の生体信号検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の前記生体信号検出装置と、
前記フィルタ部で生成された前記感圧センサー毎の生体信号に基づいて、睡眠姿勢を特定する睡眠姿勢特定部と、
前記睡眠姿勢特定部により特定される睡眠姿勢の変化に基づいて、離床の予兆を示す離床予兆信号を検出する離床予兆検出部と、
を備えることを特徴とする離床予兆検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−152283(P2012−152283A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12086(P2011−12086)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(500304132)株式会社ジェピコ (7)
【Fターム(参考)】