説明

生体凍結装置

【課題】開腹せず体外から生体内の患部に直接刺し込む生体凍結装置であり、三重管の製作が困難な細径でも製作可能で操作性の良好な凍結装置を提供する。
【解決手段】可撓性部材で形成され、内側から順に内管2、中管3、外管4を配置してなる三重管構造を有し、前記外管と中管の間のリング状空間13を真空にして真空断熱層を形成するとともに、前記内管内側の液冷媒導入路11より噴出した液冷媒を、三重管先側に配され、金属製良伝熱体で形成したプローブ裏面側空間6で膨張気化させ、該気化した冷媒を前記中管3と内管2の間の排出路12より排出する生体凍結用装置において、前記真空断熱層先端を封止するリング状の支持部材20を設け、前記リング状支持部材20より先側に内管2を延出させるとともに、該延出部の内管外周を空隙介して被包する被包管を設けて、二重管部10を形成し、該内管と被包管の間の空間を、前記気化した冷媒の排出路の一部とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結療法により、咽喉、食道、胃等の生体組織上に生成したポリープや癌細胞等の患部を除去するために用いる生体凍結装置に関するものであり、特に生体に刺し込み凍結させるプローブ部を従来よりも細径化可能である生体凍結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
凍結療法とは、異常細胞を凍結し死滅させる術式であって、従来行われていた開腹を伴う手術の代替法として、例えば、拡大していない肝癌、他部位から肝臓へ拡大した癌、前立腺に限局している前立腺癌、子宮頚部の前癌病変、骨の癌性及び非癌性腫瘍等の種々の癌、前癌性又は非癌性疾患の治療に用いられる。
従来の開腹を伴う術式を伴う手術では、手術を受ける患者には長時間にわたる手術に耐えうる体力が要求されることに加え、開腹に伴う副作用、費用、家族等の知人の心配・配慮の面でも負担が大きい。一方、凍結療法は開腹を行わないため、体力面での負担、副作用が発生する可能性が低く、費用も低額であるため注目されている術式である。
【0003】
凍結療法を体内に生じた疾患の治療に用いる場合、凍結用プローブと呼ばれる中空針中に液体窒素等の液体冷媒を循環させて冷却し、該プローブを、開腹することなく体外から刺し込んで患部に接触させることで患部の異常細胞を凍結させる。このとき、治療をおこなう医師は超音波やMRI等を利用して凍結用プローブを誘導し、患部の凍結具合を監視することで周囲の健常な細胞への損傷を抑える。
【0004】
このような凍結治療に用いる凍結装置として、図5にその概略構成図を示し、図6に要部断面図を示したような三重管プローブ装置が知られており、特許文献1に開示されている。
図5及び図6に基づき、従来の同心三重管の凍結用プローブ装置について説明する。従来用いられている三重管の生体用凍結装置101は、内管102、中管103、外管104から構成される同心三重管部101aと、該同心三重管部101aの先端部に封着された先端部材105から成る。該金属製先端部材105によって外管104と中管103の間にできるリング状空間113の先端を封止するとともに、該先端部材105内に設けた空間106を介して、中管103と内管102の間にできるリング状空間112と、内管102の内側にできる円柱状空間111を連通可能に形成している。また、太径管体107に設けたテーパ部107a先端には前記外管104が挿入され溶着封止されている。外管104と中管103の間の環状空間113は、太径管体107内の太径管真空空間117と連通し、該太径管真空空間117は太経管体107の後部に設けられた真空排気管108に連通し、真空吸引している。また中管103は保持輪115Aに保持されて太径管体107の後部の排気管110に延設・溶着封止されており、中管103の内壁と内管102の外壁の間の間隙に形成された戻りガス環路112は排気管110に開口しており、更に排気管109に連通している。また、前記排気管110を貫通した内管102は、保持輪115Bに保持されて、内管102より大きな内径を有するフレキシブルパイプ111に案内されて図示しないクライオポットに至っている。
【0005】
かかる生体用凍結装置101は、貯留槽130に貯留された液体窒素等の極低温液流体131を内管102の内側にできる円柱状空間111より導通させ、空間106より前記先端部材105内面に衝突させることにより膨張気化させ、その蒸発潜熱によって該先端部材105を冷却する。このように先端を冷却されたプローブを体外から刺し込んで患部に接触させて奪熱凍結し、その病根部分を除去する。
そして、前記奪熱された液体冷媒は、奪熱によって気化し、該気化冷媒は前記中管103と内管102の間のリング状空間112を介して吸引ポンプ134によって排気される。
【0006】
また、その他の生体用凍結装置に関する技術として、特許文献2には、三重管プローブであり、基側に内管内を流れる冷却流体を予冷するための熱交換構造を形成する通路を設けた技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、冷媒を溜めるタンク内に一端部が差し込まれると共に、タンク外に延出する他端側が断熱スリーブにより被覆され、さらに先端が冷凍部として断熱スリーブより露出する中空の熱伝導針手段を備えた冷凍治療装置が開示されている。
また、特許文献4には、課題は異なるが類似の技術として、肥大性瘢痕及びケロイドの治療のための二重管で形成された冷凍ゾンデが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平4−357946号公報
【特許文献2】特開2004−512075号公報
【特許文献3】特開2005−80988号公報
【特許文献4】特開2004−511274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、局所凍結プローブと呼ばれる径の小さなプローブを作成する場合には、患部に当接させるプローブの直径は外管径に依存するため、外管径を小さくしなくてはならず従って中管、内管の径はさらに小さくしなくてはならなくなり、三重管を製作することが困難となる。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術では、特許文献1に開示された技術と同じく、局所凍結プローブと呼ばれる径の小さなプローブを作成する場合には、患部に当接させるプローブの直径は外管径に依存するため、外管径を小さくしなくてはならず従って中管、内管の径はさらに小さくしなくてはならなくなり、三重管を製作することが困難となる。さらに、予冷部はその構造上細径化することが出来ず、プローブを細径化するためには予冷部よりも先側のみを細径化しなくてはならず、そのため生体凍結装置全体が長くなり医師による操作性に課題が残る。
【0010】
また、特許文献3に開示された技術では、冷媒を溜めるタンクに熱伝導が差し込まれているため、熱伝導材を患者の体内に差し込む際に冷媒を溜めるタンクも一緒に動かさなければ成らず、医師による操作性に課題が残る。
【0011】
また、特許文献4に開示された技術を体内に生じた疾患の凍結治療に流用すると、体内に刺し込んだ管部全てが凍結部として作用するため、患部以外の部分も凍結させてしまう。従って特許文献4に開示された技術を体内に生じた疾患の凍結治療に流用することはできない。
【0012】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、開腹することなく体外から生体内の患部に直接刺し込む生体凍結装置であり、三重管の製作が困難なほど細径であっても製作可能で、かつ医師による操作性の良好な凍結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明においては、
可撓性を有する部材で形成され、内側から順に内管、中管、外管を配置してなる三重管構造を有し、前記外管と中管の間のリング状空間を真空にして真空断熱層を形成するとともに、前記内管内側の液冷媒導入路より噴出した液冷媒を、三重管先側に配され、金属製良伝熱体で形成したプローブ裏面側空間で膨張気化させ、該気化した冷媒を前記中管と内管の間の排出路より排出する生体凍結用装置において、前記真空断熱層先端を封止するリング状の支持部材を設け、前記リング状支持部材より先側に内管を延出させるとともに、該延出部の内管外周を空隙介して被包する被包管を設けて、二重管部を形成し、該内管と被包管の間の空間を、前記気化した冷媒の排出路の一部としたことを特徴とする。
【0014】
前記真空断熱層先端を封止するリング状の支持部材を設け、前記リング状支持部材より先側に内管を延出させるとともに、該延出部の内管外周を空隙介して被包する被包管を設けて、二重管部を形成することで、液冷媒噴出先側に位置する金属製良伝熱体で形成されたプローブ径は二重管を形成する被包管径に依存することとなる。従って三重管を製作することが困難であっても、二重管を製作することができる径までプローブを細径化することができる。
二重管部では、被包管と内管の間のリング状の空間を流れるガス化した冷媒が防熱の役目を果たすため、二重管部でも内管内部を通流する液冷媒の冷熱が被包管外へ伝わり、患部以外の生体組織を凍結してしまうことを防止することができる。
三重管部では、中管と外管の間のリング状の空間が真空下に置かれているため、外管外表面は中管及び内管内部とは熱的に遮断されており、医師は三重管部を持って凍結装置を操作することができるため、操作性も良好である。
【0015】
また、前記被包管の外径寸法を、前記中管の外径寸法よりも小さくすると、気化した排出される冷媒33通路は途中で広くなるため、吸引されて排出されやすくなる。
【0016】
さらに、前記被包管が、前記リング状の支持部材から延出された中管であり、該中管と内管で二重管部を形成したことを特徴とする。
このことにより、中管と別途被包管を設ける必要がないため、冷凍装置の製作が容易となる。
【0017】
さらに、可撓性を有する部材で形成され、内側から順に内管、中管、外管を配置してなる三重管構造を有し、前記外管と中管の間のリング状空間を真空にして真空断熱層を形成するとともに、前記内管内側の液冷媒導入路より噴出した液冷媒を、三重管先側に配され、金属製良伝熱体で形成したプローブ裏面側空間で膨張気化させ、該気化した冷媒を前記中管と内管の間の排出路より排出する生体凍結用装置において、前記プローブで、中管開口先端を封止し、前記中管開口先端封止部より先側に外管を延出させるとともに、該延出部で外管先側を縮径し、前記中管開口先端を封止したプローブを、前記外管の縮径部内を細管状に延在させ、該延在端を厚肉状に形成して外管縮径部先端開口を封止するように構成したことを特徴とする。
【0018】
このことにより、液冷媒噴出先側に位置する金属製良伝熱体で形成されたプローブ径は外管の縮径部の径に依存することとなる。従って三重管を製作することが困難であっても、管を製作することができる径までプローブを細径化することができる。
また、冷却されるプローブは患部を凍結する先端部以外はその周囲を真空化に置かれているため、プローブの冷熱が外管の縮径部外へ伝わり、患部以外の生体組織を凍結してしまうことを防止することができる。
また、三重管部では、中管と外管の間のリング状の空間が真空下に置かれているため、外管外表面は中管及び内管内部とは熱的に遮断されており、医師は三重管部を持って凍結装置を操作することができるため、操作性も良好である。
【0019】
また、前記金属製良伝熱体で形成したプローブ表面が金又はチタンで鍍金されていることを特徴とする。
金やチタンは人体内に挿入してもアレルギーや拒否反応を生じにくい。しかし、前記プローブを金製とすると、金は比重が大きいためプローブが重くなり操作性に課題が残る。
そこで、金属製良伝熱体で形成したプローブ表面を金又はチタンで鍍金することで、金又はチタンを使用することに関する問題は生ぜず、人体内に挿入してもアレルギーや拒否反応を生じにくくなる。
また、前記プローブをチタン製としても、プローブを人体内に挿入してもアレルギーや拒否反応を生じにくくなる。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明によれば、開腹することなく体外から生体内の患部に直接刺し込む生体凍結装置であり、三重管の製作が困難なほど細径であっても製作可能で、かつ医師による操作性の良好な凍結装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1に係る生体用凍結装置の先端近傍の要部断面図である。図1に基づいて生体用凍結装置1の構成について説明する。
生体用凍結装置1は内側から順に内管2、中管3、外管4から構成される三重管を形成しており、内管2の内側に円柱状空間11、内管2と中管3の間に第1のリング状空間12、中管3と外管4の間に第2のリング状空間13が形成されている。また、前記円柱状の空間11は冷凍流体である液体窒素を貯留した貯留槽(図示せず)と連結されており、また第1のリング状の空間12は患部を奪熱凍結させることで気化した窒素を排出する吸引ポンプ(図示せず)が連結されている。また、前記リング状の空間13の先端部はリング状の支持部材20で封止されており、さらに前記中管3の先端に円筒栓状の金属製のプローブ5を取り付け、前記円柱状の空間11及び前記リング状の空間12を外部と遮断するとともに、該プローブ5内に設けた空間6を介して前記円柱状の空間11と前記リング状の空間12を連通可能としている。
【0023】
以下、これらの部材についてさらに説明する。
プローブ5は、中管3と略同径の円筒栓状をなし、その後端側に凹状の空間6を設けるとともに、生体組織と接触する前端側をR状に形成し、凍結装置1の体内挿入時に体内組織を傷付けることなく体内への刺し込み可能としている。なお、体内へ刺し込みやすくするために、前端側を中管中心側へむけて斜めに切削しても効果的である。また、プローブ5は後端部にL字状の切り欠き部を設けるとともに、該L字状の切り欠き部を中管3の内側及び先端部に当接させて溶着することによって前記凹状の空間6、リング状の空間12及び円柱状の空間13を外部と遮断している。
またプローブ5は、前記空間6内の冷熱を生体組織と接触する前端側に伝える必要があるため、例えば銅、ニッケル等の熱伝導率の大きい金属製とするとよい。
【0024】
内管2は、その内部に円柱状の空間11を形成し、その先端部は前記プローブ5に接触しない位置であり、前記図示しない液体窒素の貯留槽から円柱状の空間11内に挿入された液体窒素がジェット気流状にプローブ5の内壁面に衝突する位置まで延在するように構成している。
【0025】
中管3は、前記内管2との間にリング状の空間12を形成し、その先端部は前記プローブ5に設けたL字状の切り欠き部が当接可能となるように形成する。
【0026】
外管4は、前記中管3との間にリング状の空間13を形成し、その先端部は前記内管2及び中管3の先端の何れよりも凍結装置1の後端側に位置している。即ち生体用凍結装置1の先側には外管4が存在しない二重管部10が存在している。また前記リング状の空間13の先端部に、後端部にL字状の切り欠き部を設けたリング状の支持部材20を、該切り欠き部が外管4の内側及び先端部に当接するように溶着することによって、リング状空間13内を気密的にシールしている。
従って、先端の冷却部となる二重管部10は、外管径ではなく中管径に依存する。即ち、三重管を製作することが困難であっても、二重管を製作することができる径まで冷却プローブの冷却部の径を細径化することができる。
【0027】
また、生体用凍結装置1は、一般に開腹することなく体外から生体内に刺し込むため、前記二重管部10以外の凍結装置1外周面が正常な生体組織と接触した場合に誤って凍結融着してしまうことを防止する必要があり、そのため前記外管4と中管3の間にできるリング状空間111内を減圧又は真空下におき、断熱性を維持するようにしている。
【0028】
図2は本発明に係る生体用凍結装置1の使用状態を示す概略図である。図1及び図2に基づいて、実施例1の作用について説明する。
医師は、医師は超音波又はMRI(何れも図示せず)等を利用して凍結装置1を体外から刺し込み、生体用凍結装置1の二重管部10を患部31に刺し込む。次いで、前記円柱状の空間11より前記図示しない貯留層からの液体窒素をプローブ5内に設けた空間6に向けて噴射させることにより、プローブ5に衝突・吸熱・蒸発・ガス化して、その蒸発潜熱が凍結熱として働いた後、吸熱・気化したガスは反転して前記リング状の空間12を介して前記図示しない吸引ポンプによって排出される。このとき、前記液体窒素の蒸発潜熱による凍結熱は、前記プローブ5を介して患部を冷却凍結する。
この際、前記リング状の空間12を流れるガス化した窒素はガス体であるため防熱の役目を果たすことになり、前記円柱状の空間11の冷熱が中管3外に伝わり、患部以外の生体組織を凍結してしまうことを防止することができる。
また、三重管部では、中管3と外管4の間のリング状の空間が前記の通り真空下に置かれているため、内管2の内側の円柱状の空間から内管2と中管3の間のリング状の空間に伝熱した液体窒素31の冷熱を完全に遮断することができる。医師は三重管部を持って凍結装置1を操作することができるため、操作性も良好である。
【0029】
このようにして患部を冷却凍結することと、液体窒素31の供給を止め解凍させることを数度繰り返し行うことによって、患部を所謂凍傷欠落させ、その患部の病根部分を除去することができる。
そして、生体用凍結装置1は空間6を介して円柱状の空間11とリング状の空間12が連通されているため、液体窒素32の導入量と、気化窒素33の排出量とを図示しない調節機構によって調節することにより、二重管部10に当接された生体組織の凍結深度及び凍結範囲を任意に設定することができ、例えば外部よりのレントゲン等の判断により液体窒素の噴射を停止して凍結患部を解凍し、さらに前記凍結と解凍を繰り返すことにより完全に患部の病根部分のみを凍傷を起こさせて死滅除去することができる。凍傷部は自然に排出作用によって排除され、この結果外科的回復手術を行うことなく患部の摘出治療が可能となる。
【0030】
特に、本発明の冷却部である二重管部を細径化した凍結用プローブを用いることで、患部が非常に小さな初期段階の疾病においても、患部周囲の正常な生体組織を凍結させることなく患部のみを凍結させることが可能である。
【実施例2】
【0031】
図3は、実施例2に係る凍結用プローブの先端近傍の要部断面図である。構成については中管3の形状及び被包管3a以外は実施例1と同じであるので、実施例1と同様の箇所については説明を省略する。
【0032】
中管3は、前記内管2との間にリング状の空間12を形成し、その先端部はリング状の支持部材20に溶着されている。
また中管4先端部よりも先側では、内管2外周を空隙介して被包する被包管3aを設け、さらに該被包管3aの外径寸法を、前記中管の外径寸法よりも小さくしている。また、中管3と外管4の間にできるリング状空間12と、被包管3aと中管3との間にできるリング状空間は連通可能にしている。
このことで、気化した排出される冷媒33通路は途中で広くなるため、吸引されて排出されやすくなる。
【実施例3】
【0033】
図4は、実施例3に係る凍結装置1の先端近傍の要部断面図である。図4に基づいて生体用凍結装置1の構成について説明する。
生体用凍結装置1は内側から順に内管2、中管3、外管4から構成される三重管を形成しており、内管2の内側に円柱状空間11、内管2と中管3の間に第1のリング状空間12、中管3と外管4の間に第2のリング状空間13が形成されている。また、前記円柱状の空間11は冷凍流体である液体窒素を貯留した貯留槽(図示せず)と連結されており、また第1のリング状の空間12は患部を奪熱凍結させることで気化した窒素を排出する吸引ポンプ(図示せず)が連結されている。また、前記リング状の空間13の先端部は良伝導性のプローブ9で封止し、前記円柱状の空間11及び前記リング状の空間12を外部と遮断するとともに、空間8を介して前記円柱状の空間11と前記リング状の空間12を連通可能としている。さらに、前記外管4は前記中管3先端部より先側まで延出しており、その先側に縮径部7を有している。縮径部7の外径は、縮径部以外の外管4の径より小さくする。縮径部7の先端部は前記プローブ9で封止されている。
なお、プローブ9は後端部及び縮径部7の封止部にL字状の切り欠き部を設けるとともに、該L字状の切り欠き部を中管3の内側及び先端部、縮径部7の内側及び先端部に当接させて溶着することによって中管3の先端開口部及び外管4の縮径部7の開口部を封止している。
【0034】
以下、これらの部材についてさらに説明する。
プローブ9は、中管3先端部と外管4の縮径部7の先端部を封止することができるように構成されているとともに、外管4の縮径部7内を細管状に延在し、さらに外管4の縮径部7より先に断面が半円状の露出部9aを有している。また、プローブ9は、例えば銅、ニッケル等の良伝導性材料からなり、その表面は金又はチタンで鍍金されるか、もしくはチタン製とする。生体組織と接触する前端側をR状に形成し、凍結装置1の体内挿入時に体内組織を傷付けることなく体内への刺し込み可能としている。なお、体内へ刺し込みやすくするために、前端側を外管の縮径部7中心側へむけて斜めに切削しても効果的である。
【0035】
内管2は、その内部に円柱状の空間11を形成し、その先端部は前記プローブ9に接触しない位置であり、前記図示しない液体窒素の貯留槽から円柱状の空間11内に挿入された液体窒素がジェット気流状にプローブ9の内壁面に衝突する位置まで延在するように構成している。
【0036】
中管3は、前記内管2との間にリング状の空間12を形成し、その先端部は前記プローブ9に設けたL字状の切り欠き部が当接可能となるように形成する。
【0037】
外管4は、前記中管3との間にリング状の空間13を形成し、前記中管先端部より先側に延出されている。さらに該延出部では縮径部を有している。
【0038】
以上のことより、実施例2においては、前記プローブ9の先端の外管4の縮径部7からの露出部9aが冷却部となり、冷却部の径は外管径ではなく外管4の縮径部7径に依存する。縮径部7では一重管構造であるため、三重管を製作することが困難であっても、一重管を製作することができる径まで冷却プローブの冷却部の径を細径化することができる。
【0039】
また、生体用凍結装置1は、一般に開腹することなく体外から生体内に刺し込むため、前記プローブ9の露出部9a以外の凍結装置1外周面が正常な生体組織と接触した場合に誤って凍結融着してしまうことを防止する必要があり、そのため前記外管4と中管3の間にできるリング状空間13内、及び外管4(又はその縮径部7)とプローブ9の間の空間14を真空下におき、断熱性を維持するようにしている。
【0040】
次に、図4に基づいて、実施例3の作用について説明する。
医師は超音波又はMRI(何れも図示せず)等を利用して凍結装置1を体外から刺し込み、生体用凍結装置1のプローブ露出部9aを患部に刺し込む。次いで、前記円柱状の空間11より前記図示しない貯留層からの液体窒素を空間8に向けて噴射させることにより、プローブ9に衝突・吸熱・蒸発・ガス化して、その蒸発潜熱が凍結熱として働いた後、吸熱・気化したガスは反転して前記リング状の空間12を介して前記図示しない吸引ポンプによって排出される。このとき、前記液体窒素の蒸発潜熱による凍結熱は、前記プローブ9を介してプローブ9の露出部9aで患部を冷却凍結する。
このとき、外管4(又はその縮径部7)とプローブ9の間の空間14が真空下に置かれているため、前記プローブ9の冷熱が外管4外に伝わり、患部以外の生体組織を凍結してしまうことを防止することができる。
また、三重管部では、中管3と外管4の間のリング状の空間が前記の通り真空下に置かれているため、内管2の内側の円柱状の空間から内管2と中管3の間のリング状の空間に伝熱した液体窒素31の冷熱を完全に遮断することができる。医師は三重管部を持って凍結装置1を操作することができるため、操作性も良好である。
【0041】
このようにして患部を冷却凍結することと、液体窒素31の供給を止め解凍させることを数度繰り返し行うことによって、患部を所謂凍傷欠落させ、その患部の病根部分を除去することができる。
そして、生体用凍結装置1は空間8を介して円柱状の空間11とリング状の空間12が連通されているため、液体窒素の導入量と、気化窒素32の排出量とを図示しない調節機構によって調節することにより、プローブ9の露出部9aに当接された生体組織の凍結深度及び凍結範囲を任意に設定することができ、例えば外部よりのレントゲン等の判断により液体窒素の噴射を停止して凍結患部を解凍し、さらに前記凍結と解凍を繰り返すことにより完全に患部の病根部分のみを凍傷を起こさせて死滅除去することができる。凍傷部は自然に排出作用によって排除され、この結果外科的回復手術を行うことなく患部の摘出治療が可能となる。
【0042】
特に、本発明の冷却部であるプローブを細径化した凍結装置を用いることで、患部が非常に小さな初期段階の疾病においても、患部周囲の正常な生体組織を凍結させることなく患部のみを凍結させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
開腹することなく体外から生体内の患部に直接刺し込む生体凍結装置であり、三重管の製作が困難なほど細径であっても製作可能で、かつ医師による操作性の良好な凍結装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1に係る凍結装置の先端近傍の要部断面図である。
【図2】本発明に係る生体用凍結装置1の使用状態を示す概略図である。
【図3】実施例2に係る凍結装置の先端近傍の要部断面図である。
【図4】実施例3に係る凍結装置の先端近傍の要部断面図である。
【図5】従来の凍結装置の概略構成図である。
【図6】従来の凍結装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 凍結装置
2 内管
3 中管
4 外管
5 プローブ
6 プローブ裏面側空間
7 縮径部
8 プローブ裏面側空間
9 プローブ
10 二重管部
11 円柱状の空間(液冷媒導入路)
12 リング状の空間(排出路)
13 リング状の空間(真空断熱層)
20 支持部材
31 患部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する部材で形成され、内側から順に内管、中管、外管を配置してなる三重管構造を有し、前記外管と中管の間のリング状空間を真空にして真空断熱層を形成するとともに、前記内管内側の液冷媒導入路より噴出した液冷媒を、三重管先側に配され、金属製良伝熱体で形成したプローブ裏面側空間で膨張気化させ、該気化した冷媒を前記中管と内管の間の排出路より排出する生体凍結用装置において、
前記真空断熱層先端を封止するリング状の支持部材を設け、
前記リング状支持部材より先側に内管を延出させるとともに、該延出部の内管外周を空隙介して被包する被包管を設けて、二重管部を形成し、
該内管と被包管の間の空間を、前記気化した冷媒の排出路の一部としたことを特徴とする生体凍結装置。
【請求項2】
前記被包管が、前記リング状の支持部材から延出された中管であり、該中管と内管で二重管部を形成したことを特徴とする請求項1記載の生体凍結装置。
【請求項3】
可撓性を有する部材で形成され、内側から順に内管、中管、外管を配置してなる三重管構造を有し、前記外管と中管の間のリング状空間を真空にして真空断熱層を形成するとともに、前記内管内側の液冷媒導入路より噴出した液冷媒を、三重管先側に配され、金属製良伝熱体で形成したプローブ裏面側空間で膨張気化させ、該気化した冷媒を前記中管と内管の間の排出路より排出する生体凍結用装置において、
前記プローブで、中管開口先端を封止し、
前記中管開口先端封止部より先側に外管を延出させるとともに、該延出部で外管先側を縮径し、
前記中管開口先端を封止したプローブを、前記外管の縮径部内を細管状に延在させ、該延在端を厚肉状に形成して外管縮径部先端開口を封止するように構成したことを特徴とする生体凍結装置。
【請求項4】
前記金属製良伝熱体で形成したプローブ表面が金又はチタンで鍍金されていることを特徴とする請求項3記載の生体凍結装置。
【請求項5】
前記プローブをチタン製としたことを特徴とする請求項3記載の生体凍結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−112563(P2009−112563A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289532(P2007−289532)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】