説明

生体分子検出装置および生体分子検出方法

【課題】高感度な測定が可能な生体分子検出装置を提供する。
【解決手段】レーザー117を溶液に照射することにより、溶液中のフリー分子13およびバインディング分子15に外力を加え、この外力によりフリー分子13およびバインディング分子15のブラウン運動を阻害した。レーザー117を照射された溶液中のフリー分子13およびバインディング分子15のブラウン運動を測定することで、バインディング分子15に付随する抗原の濃度を正確に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の検出対象物質を検出する技術に係り、特に、検体内の生体分子、ウイルス、核酸、蛋白質および細菌等を検出可能な生体分子検出装置および生体分子検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医師や技師等が診療の現場で生体分子検出を行い、その場で測定結果を得て診断や治療に役立てる生体分子検出法が注目されている。生体分子検出法は、抗原抗体反応等の特異的な反応を利用した高い選択性により、血液、尿、汗といった複数成分を有する体液の中から、検出対象物質だけを選択的に検出する方法である。特に、このような生体分子検出法は、ウイルス、核酸、蛋白質および細菌等の生体分子の微量検出、検査、定量および分析などに広く用いられている。
【0003】
生体分子検出法として、ラジオイムノアッセイが実用化されている。ラジオイムノアッセイは、アイソトープで標識された抗原または抗体を用い、その抗原または抗体と特異的に結合する抗体または抗原の有無を検出するものである。ラジオイムノアッセイは、アイソトープの放射線量を測定することにより抗体または抗原等の検出対象物質を定量するもので、高感度な測定が可能である。
【0004】
放射性物質を用いない生体分子検出法として蛍光イムノアッセイがある。蛍光イムノアッセイとしては、予め反応層に抗体を固定しておき(これを固相という)、当該反応層に、測定対象溶液および蛍光分子で標識された抗体を流し、反応層近傍の蛍光を測定することにより、抗体に特異的に結合した抗原の濃度を測定する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、固相を利用した蛍光イムノアッセイは、固相を作成するのにコストがかかるという問題があった。固相を用いず液体中で生体分子検出を行う(すなわち、液相のみを用いる)方法として、蛍光偏光法を利用して抗原抗体反応を確認する方法がある。蛍光偏光法は、蛍光標識した分子に別の分子が結合し分子の大きさが変化することにより生じる、ブラウン運動の変化に基づく蛍光偏光度の値の変化を検出する方法である。蛍光偏光法を利用した生体分子検出法は、検体中の検出対象物質の簡便かつ迅速な検知法として知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−120397号公報
【特許文献2】特開2008−298743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の蛍光偏光法では、ランダムな運動であるブラウン運度の速さの変化を検出する必要があるが、ブラウン運動の速さが顕著に変化するためには、蛍光標識した分子が検出対象物質と結合する前後で粒子の体積がある程度変化する必要がある。
【0008】
特許文献2には、粒子の体積を十分に変化させるために第三の分子を用いることが記載されているが、この場合予め第三の分子を用意する必要がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で高感度測定が可能な生体分子検出装置および生体分子検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る生体分子検出装置は、
検出対象物質に特異的に結合する物質と蛍光分子とが結合した第1の複合体と、第1の複合体と検出対象物質とが結合した第2の複合体とが溶液中に混在し、第1の複合体および第2の複合体から発生する蛍光を検出して検出対象物質の検出または定量を行う生体分子検出装置であって、
蛍光分子に向けて励起光を照射する光源と、
蛍光分子から発生する蛍光を受光する受光部と、
第1の複合体および第2の複合体に外力を付与する外力付与手段と、
外力の付与により変化した第1の複合体のブラウン運動の速さおよび第2の複合体のブラウン運動の速さに基づいて、検出対象物質の検出または定量を行う演算手段とを具備する。
【0011】
また、本発明に係る生体分子検出装置において、光源は、蛍光分子を励起する直線偏光した励起光を照射するものであり、受光部は、蛍光分子から発生した蛍光を、励起光の振動方向と平行な振動方向を有する第1の成分、および、励起光の振動方向と垂直な振動方向を有する第2の成分に分離する分離手段を有し、演算手段は、受光部が分離して受光した第1の成分および第2の成分の双方を用いて検出対象物質の検出または定量を行うことが好ましい。この場合において、演算手段は、第1の成分および第2の成分から蛍光の偏光度を求めて第2の複合体の検出または定量を行うことが好ましい。また、分離手段は偏光ビームスプリッタであることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る生体分子検出装置において、光源は、溶液中の特定領域に焦点を結ぶように励起光を照射するものであり、受光部は、特定領域における蛍光分子から発生する蛍光を受光するものであり、演算手段は、第1の複合体が特定領域を出入りする頻度を表すパラメータ、および、第2の複合体が特定領域を出入りする頻度を表すパラメータに基づいて、検出対象物質の検出または定量を行うものであることが好ましい。この場合において、演算手段は、自己相関器を備え、上記パラメータをブラウン運動の速さとして、第1の複合体および第2の複合体のブラウン運動の速さを自己相関法によって求め、溶液中に含まれる分子の平均的な大きさを求めることにより、検出対象物質の検出または定量を行うものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る生体分子検出装置において、受光部は、光を分光する分光手段と、分光手段により分光された光をそれぞれ受光する複数の受光手段とを備えることが好ましい。この場合において、分光手段は、透過する光の波長が互いに異なる複数の光学フィルタであり、受光部は、複数の光学フィルタから使用する光学フィルタを切り替える切り替え手段をさらに備え、蛍光の波長に応じて使用する光学フィルタを切り替えるものであることが好ましい。或いは、分光手段は回折格子であることが好ましい。
【0014】
また、外力付与手段は、励起光と波長が異なる光を照射する外力付与光源を備え、励起光と波長が異なる光を溶液に照射することにより第1の複合体および第2の複合体に外力を加えるものであることが好ましい。この場合において、外力付与光源は、溶液に対し複数の位置から励起光と波長が異なる上記光を照射するものであることが好ましい。
【0015】
また、外力付与手段が励起光と波長が異なる光を照射する外力付与光源である場合において、溶液を保持する溶液保持部であって少なくとも一面に平面を有する溶液保持部を備えることが好ましい。この場合において、外力付与光源は、溶液を通って上記平面から出射する方向に励起光と波長が異なる上記光を照射するものであり、かつ、溶液と上記平面との界面において励起光と波長が異なる上記光に焦点を結ばせるものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る生体分子検出装置において、演算手段は、第1の複合体および第2の複合体に対して外力付与手段によりそれぞれ異なる強度の外力が加えられることを利用して、第2の複合体の検出または定量を行うことが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る生体分子検出方法は、
検出対象物質に特異的に結合する物質と蛍光分子とが結合した第1の複合体と、第1の複合体と検出対象物質とが結合した第2の複合体とが溶液中に混在し、第1の複合体および第2の複合体から発生した蛍光を検出して検出対象物質の検出または定量を行う生体分子検出方法であって、
蛍光分子を励起する励起光を照射するステップと、
第1の複合体および第2の複合体に外力を加えるステップと、
励起光の照射により蛍光分子から発生した蛍光を検出するステップと、
外力の付与により変化した第1の複合体のブラウン運動の速さおよび第2の複合体のブラウン運動の速さに基づいて、検出対象物質の検出または定量を行うステップとを具備する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高感度な生体分子検出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】実施の形態1に係る生体分子検出装置の抗原抗体反応の概要を説明するための模式図である。
【図1B】実施の形態1に係る生体分子検出装置の抗原抗体反応の概要を説明するための模式図である。
【図2A】励起光の振動方向と蛍光分子の遷移モーメントとが互いに平行な場合を表した模式図である。
【図2B】励起光の振動方向と蛍光分子の遷移モーメントとが互いに垂直な場合を表した模式図である。
【図3A】フリー分子(抗原が結合していない抗体および蛍光分子)を表した模式図である。
【図3B】バインディング分子(抗原が結合した抗体および蛍光分子)を表した模式図である。
【図4A】実施の形態1に係る生体分子検出装置の外観斜視図である。
【図4B】実施の形態1に係る生体分子検出装置の開閉部を開けた場合の外観斜視図である。
【図5】生体分子検出装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図6】外力付与光源部から照射される外力付与光の照射方向を上面から見た模式図である。
【図7A】外力付与光を照射しない場合におけるブラウン運動の速さと分子の個数との関係を表したグラフである。
【図7B】外力付与光を照射した場合におけるブラウン運動の速さと分子の個数との関係を表したグラフである。
【図8】実施の形態1に係る生体分子検出装置における受光部の詳細な構成を表した模式図である。
【図9】検出対象物質の濃度と蛍光偏光度との関係を表した検量線の例である。
【図10】検体の準備から廃棄までの流れを模式的に表した図である。
【図11】実施の形態2に係る生体分子検出装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態2に係る生体分子検出装置における受光部の詳細な構成を表した模式図である。
【図13】拡散時間と相関関数との関係を表したグラフの例である。
【図14】抗原濃度と平均拡散時間との関係を表す検量線の例である。
【図15】試薬カップの多点に外力付与光を底面から入射させる場合を示す概念図である。
【図16】外力付与光を所定の方向から多点に入射させるための外力付与光源部の構造を示す概念図である。
【図17】外力付与光を所定の方向から多点に入射させるための光学系の一例を示す概念図である。
【図18】外力付与光を所定の方向から多点に入射させるための光学系の別の例を示す概念図である。
【図19】マイクロレンズアレイを示す概念図である。
【図20】試薬カップの形状の一例を示す概念図である。
【図21】集光された外力付与光の焦点と試薬カップとの位置関係の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。生体分子検出には様々な特異的な反応が利用されるが、各実施の形態では抗原および抗体の特異的な反応を利用し、当該抗体に標識された蛍光分子から発生する蛍光を基に、抗体と反応した抗原を検出対象物質として検出する装置を例にとって説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1Aおよび図1Bは、本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置における抗原抗体反応の概要を示した模式図である。図1Aおよび1Bを用いて、液中での抗原抗体反応について説明する。円筒形の試薬カップ10の中に乾燥した抗体12が入れられている場合を考える。抗体12は、蛍光分子14で標識されている。
【0022】
本実施の形態において、検体は全血から分離した血漿16である。試薬カップ10に血漿16を分注して撹拌すると、抗体12と特異的に結合する抗原18が血漿16中に存在する場合は、抗体12と抗原18との間で抗原抗体反応が起こり、図1Bに示すように抗原12および抗体18が特異的に結合して血漿16中に存在する。
【0023】
本実施の形態では、検体に全血から分離した血漿16を用い、検出対象物質である抗原18としてPSA(Prostate Specific Antigen)を検出する場合を考え、検出対象物質と特異的に結合する物質である抗体12として抗PSA抗体を用いた場合について示す。蛍光分子14としては、Alexa Fluor 568(Molecular Probes社の商品名)を用いた。Alexa Fluor 568は、波長610nm程度にピークを持ち、550nm−700nm程度の波長を持った蛍光を発する。
【0024】
抗体12は抗原18に対して十分に多い量が入れられているため、一部の抗体12は抗原抗体反応をしないまま血漿16に残る。以下、抗原抗体反応で結合した抗体12および抗原18ならびに蛍光分子14の複合体をバインディング分子、抗原抗体反応をせず液中に漂っている抗体12および蛍光分子14の複合体をフリー分子と呼ぶ。バインディング分子およびフリー分子は、血漿溶液中に混在している。なお、血漿16中には抗原18以外の成分も存在するが、説明を簡単にするため、図1Aおよび1Bでは抗原18以外の成分は省略してある。
【0025】
本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置は、液相であることによりフリー分子およびバインディング分子が混在している溶液に対し、励起光を照射し、蛍光分子14から発生する蛍光を受光して抗原18の検出および定量を行う。従って、抗原18を含むバインディング分子から発生する蛍光のみを検出することが望ましい。しかしながら、フリー分子およびバインディング分子は溶液中に混在しているため、溶液に励起光を照射すると、フリー分子に付随する蛍光分子14からも蛍光が発生する。この蛍光はバインディング分子に付随する蛍光分子14から発生する蛍光との関係で不要成分となる。そこで、本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置は、全蛍光データの中からバインディング分子に付随する蛍光分子14から発生する蛍光の寄与分を算出する。
【0026】
本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置100において、バインディング分子から発生する蛍光の寄与分とフリー分子から発生する蛍光の寄与分とを算出する原理を説明するために、直線偏光した励起光による蛍光分子14の励起効率について図2Aおよび2Bを用いて説明する。
【0027】
図2Aは、励起光19の振動方向と蛍光分子14の遷移モーメントとが互いに平行な場合を表す模式図、図2Bは、励起光19の振動方向と蛍光分子14の遷移モーメントとが互いに垂直な場合を表す模式図である。ここでは、説明を分かりやすくするため、蛍光分子14の向き(楕円で示された蛍光分子14の長軸方向)と、遷移モーメントの向きとを揃えて描いた図とした。なお本明細書において、光の「振動方向」とは電場の振動方向を意味し、光が偏光している場合にはその偏光方向と同義である。
【0028】
蛍光分子14は、光エネルギーを吸収すると励起状態に遷移し、基底状態に戻る過程で蛍光を発する。蛍光分子14が励起される場合、蛍光分子14の分子構造によって決まる遷移モーメントという蛍光分子14内のベクトルが励起光19と相互作用する。遷移モーメントは蛍光分子14内で、ある固有の方向を持っており、遷移モーメントの方向と励起光19の振動方向との関係が蛍光分子14の励起効率を決定する。具体的には、蛍光分子14は、遷移モーメントと平行な方向に振動する光を選択的に吸収する。従って、図2Aおよび2Bに示すように、励起光19が紙面上下に振動しながら紙面左から右に進行して蛍光分子14に吸収される場合、直線偏光した励起光19の振動方向が蛍光分子14の遷移モーメントの方向と平行な場合(図2A)に最も励起効率が高くなり、直線偏光した励起光19の振動方向と蛍光分子14の遷移モーメントの方向とのなす角の角度が大きくなるほど励起効率は下がり、直線偏光した励起光19の振動方向が蛍光分子14の遷移モーメントと直交している場合(図2B)に励起効率が0となる。遷移モーメントの向きは、蛍光分子14の向きによって変わるため、溶液中における蛍光分子14の向きは、蛍光分子14の励起効率に影響を与える。
【0029】
溶液中における蛍光分子14の向きを考えるため、図3Aおよび3Bを用いて、溶液中におけるフリー分子13およびバインディング分子15の運動について説明する。図3Aは、フリー分子13を構成する抗体12および蛍光分子14を示した模式図である。図3Bは、バインディング分子を構成する抗体12、抗原18および蛍光分子14を示した模式図である。
【0030】
フリー分子13およびバインディング分子15は、溶液中で不規則に運動(ブラウン運動)しており、溶液中で移動および回転運動を行っている。溶液中での分子のブラウン運動は、絶対温度、分子の体積、分子の質量および溶媒の粘度等の影響を受けることが知られている。バインディング分子15は、抗原18の分だけフリー分子13より体積が大きく、溶液中でブラウン運動しにくい。
【0031】
例えば、蛍光標識した分子が検出対象物質と結合して分子の大きさが変化することに起因するブラウン運動の変化を、蛍光の偏光度の変化によって検出して検出対象物質の検出を行う方法(蛍光偏光法)が知られている。偏光度とは、光の偏光状態を表す尺度であり、0から1の値をとり、完全偏光(例えば直線偏光)は1、非偏光は0で表される。
【0032】
一般に、直線偏光した励起光で蛍光分子14を励起すると、蛍光分子14は励起光の振動方向と平行な方向に偏光した蛍光を発する。蛍光分子14が発する蛍光の偏光度は、蛍光分子14のブラウン運動の速さに依存する。蛍光分子14がブラウン運動していなければ、蛍光分子14は当該励起光の振動方向と平行な方向に偏光した蛍光を発し、蛍光分子14のブラウン運動が速いほど、蛍光分子14から発生する蛍光の偏光度は低い。
【0033】
フリー分子13とバインディング分子15とでは、それぞれの質量および体積等の要因から溶液中におけるこれらの回転運動の速さが互いに異なる。そのため、フリー分子13に付随する蛍光分子14から発生する蛍光の偏光度と、バインディング分子15に付随する蛍光分子14から発生する蛍光の偏光度とは互いに異なり、バインディング分子15に付随する蛍光分子14から発生する蛍光の偏光度の方が大きい。
【0034】
蛍光偏光度Pは次式(1)で定義され、励起から蛍光発光までの間に蛍光分子が回転した程度を示す。I1は直線偏光した励起光の振動方向と平行な方向に偏光した蛍光、I2は直線偏光した励起光の振動方向と垂直な方向に偏光した蛍光を表す。
P=(I1−I2)/(I1+I2)・・・(1)
【0035】
本実施の形態で示すフリー分子13およびバインディング分子15と蛍光偏光度との関係は、抗原18の分だけフリー分子13に比べて体積および質量が大きくブラウン運動が遅いバインディング分子15が溶液中に多いほど、すなわち直線偏光した励起光の振動方向と平行な方向に偏光した蛍光を発生する蛍光分子が多いほど、蛍光偏光度が増加するという関係にある。
【0036】
しかし、蛍光偏光法は、ブラウン運動というランダムな運動の変化による蛍光偏光度の変化を検出しているため検出感度に限界がある。特に、検出対象物質(ここでは抗原)の体積および質量が小さい場合等は、フリー分子13のブラウン運度の速さとバインディング分子15のブラウン運動の速さとの間で顕著な差が表れず、蛍光偏光度があまり変化しない場合がある。
【0037】
そこで、本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置は、レーザーを利用して溶液中のフリー分子13およびバインディング分子15に外力を加え、フリー分子13のブラウン運動の速さとバインディング分子15のブラウン運動の速さとに顕著な差を生じさせ、高精度に蛍光偏光度を測定する。
【0038】
溶液中のフリー分子13およびバインディング分子15にレーザーを照射すると、溶液中のフリー分子13およびバインディング分子15は外力を受けてブラウン運動を阻害される。レーザーによりバインディング分子15が受ける外力をFb、フリー分子13が受ける外力Ffとすると、フリー分子13およびバインディング分子15は、抗原18の有無により体積および質量が互いに異なるため、レーザーを照射された場合に受ける外力の大きさも互いに異なり、Fb>Ffとなる。
【0039】
本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置は、レーザーによりフリー分子13およびバインディング分子15にそれぞれ異なった強さの外力を加えることで、フリー分子13およびバインディング分子15のブラウン運動を阻害し、蛍光偏光度に顕著な差を生じさせる。
【0040】
本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置100の構成について説明する。図4Aは、生体分子検出装置100の外観斜視図である。生体分子検出装置100の側面には、表示部102、ユーザー入力部104および開閉部106がある。表示部102は、測定結果等を表示する。ユーザー入力部104は、ユーザーがモードの設定および検体情報の入力等を行う部分である。開閉部106は、上蓋の開閉が可能な構成となっており、検体のセット時には上蓋が開けられ、測定時には上蓋が閉じられる。この構成により、外部の光が測定に影響を与えることを防いでいる。
【0041】
図4Bは、開閉部106が開いた場合における生体分子検出装置100の外観斜視図である。開閉部106を開くと、試薬カップ108および保持台110が外部に露出する。試薬カップ108は、保持台110に保持されており、保持台110から着脱可能となっている。試薬カップ108は、溶液を入れる円柱状の容器である。ユーザーは、試薬カップ108に検体を分注し、上蓋を閉じて測定を行う。図示しないが、生体分子検出装置100内には試薬タンクおよび分注部が設けられており、測定が開始されると、分注部は試薬タンク内から試薬を吸い上げて試薬カップ108内に分注する。
【0042】
図5は、生体分子検出装置100の主要な構成を説明するための機能ブロック図である。生体分子検出装置100は、表示部102、ユーザー入力部104、試薬カップ108、試薬タンク112、分注部114、外力付与光源部116、励起光源部118、FG(Function Generator)122、受光部124、増幅部126、ロックインアンプ127、A/D変換部128、サンプリングクロック発生部130、CPU132およびダイクロイックミラー138を有する。
【0043】
試薬カップ108は、試薬タンク112に保存してある試薬と患者等から採取された検体とを反応させる容器である。試薬カップ108は、生体分子検出装置100から着脱可能となっている。試薬カップ108の容量は、例えば約120μLである。
【0044】
試薬タンク112は複数種類の試薬を貯めておくタンクである。フリー分子13は試薬タンク112中に試薬として保存されている。
【0045】
分注部114は、着脱可能なピペットや吸引器によって構成される。分注部114は、CPU132からの命令に従い、測定に使用する試薬を試薬タンク112からピペットで吸い上げ、試薬カップ108へ分注する。
【0046】
外力付与光源部116は、外力付与光117をダイクロイックミラー138に向けて照射し、試薬カップ108内の溶液中に存在するフリー分子13およびバインディング分子15に外力を加える。外力付与光源部116のON/OFFは、FG122から出力された電圧信号により周期的に切り替えられる。外力付与光117としては、例えば、波長980nm、出力100mWのレーザーを用いる。外力付与光117は、試薬カップ108の溶液全体を照らす程度の幅を有している。
【0047】
励起光源部118は、内部に備えた偏光子により直線偏光した励起光119を、ダイクロイックミラー138を介して試薬カップ108に向けて照射して蛍光分子14を励起する。励起光としては、例えば波長532nm、出力1mWの光を用いる。
【0048】
ダイクロイックミラー138は、特定波長の光を反射し、その他の波長の光を透過するミラーである。ダイクロイックミラー138は、外力付与光117を反射し、励起光119を透過させる。
【0049】
FG122は、様々な周波数と波形をもった電圧信号を発生させることのできる装置で、CPU132から出力された命令を受信して、外力付与光源部116、励起光源部118、ロックインアンプ127およびサンプリングクロック発生部130へ電圧信号を出力する。
【0050】
受光部124は、フィルタやフォトダイオード等によって構成される。受光部124は、試薬カップ108の下部に設けられ、試薬カップ108内の蛍光分子14から発生する蛍光123を試薬カップ108の下部で受光し、受光した光の信号をアナログ電気信号(アナログ蛍光データ)に変換して増幅部126へ出力する。
【0051】
増幅部126は、受光部124から出力されたアナログ蛍光データを増幅してロックインアンプ127へ出力する。
【0052】
ロックインアンプ127は、アナログ蛍光データを直流に周波数変換する。ロックインアンプ127には、FG122から参照信号である方形波が入力される。この方形波は、FG122から外力付与光源部116へ出力された電圧信号と同じ周期を有する。ロックインアンプ127は、増幅部126から出力されたアナログ蛍光データから、参照信号と等しい周波数成分の検出を行う。具体的には、ロックインアンプ127は、参照信号と等しい周波数成分のみを同期検波により直流信号に変換し、内部に設けられたローパスフィルタにより直流信号のみを通過させる。ロックインアンプ127は、直流信号をA/D変換部128へ出力する。ロックインアンプ127は、増幅部126から出力されたアナログ蛍光データから、外力付与光源部116が発光する周期と同一の周期を有する成分を検出する。外力付与光源部116が発光する周期と同一の周期を有する成分を検出することにより、ロックインアンプ127は、アナログ蛍光データに含まれる迷光やエレキノイズ等の影響を低減する。
【0053】
サンプリングクロック発生部130は、FG122から出力された電圧信号に基づいて、A/D変換部128がアナログ蛍光データをサンプリングするタイミングを指定するサンプリングクロックをA/D変換部128に出力する。
【0054】
A/D変換部128は、サンプリングクロック発生部130から出力されたサンプリングクロックに基づいて、ロックインアンプ127から出力されたアナログ蛍光データのサンプリングを行い、サンプリングしたアナログ蛍光データをデジタルデータに変換してCPU132へ出力する。
【0055】
CPU132は、A/D変換部128から出力されたデジタルデータの演算を行い、その結果を表示部102へ出力する。また、CPU132は、ユーザー入力部104から入力を受けて、外力付与光源部116、励起光源部118、分注部114およびFG122の動作の指示命令を行う。具体的には、CPU132は、外力付与光源部116および励起光源部118に対してはそのON/OFF命令を行い、分注部114に対しては使用する試薬を指定する命令および分注動作開始命令を行い、FG122に対しては出力する電圧信号の波形の指示命令およびその出力命令を行う。
【0056】
図6は、外力付与光源部116から照射される外力付与光の照射方向を説明するため、生体分子検出装置100の内部を上面側から見た模式図である。
【0057】
外力付与光源部116から照射された外力付与光117は、ダイクロイックミラー138によって反射されて試薬カップ108の側面へ照射される。
【0058】
ダイクロイックミラー138は、外力付与光117に用いた波長の光を反射し、その他の波長の光を透過させる。
【0059】
励起光源部118から照射された励起光119は、ダイクロイックミラー138を透過し、ダイクロイックミラー138で反射した外力付与光117と同じ方向に進行して試薬カップ108の側面へ入射する。
【0060】
試薬カップ108へ入射した外力付与光117は、試薬カップ108内のフリー分子13およびバインディング分子15に外力を与え、それぞれの分子のブラウン運動を阻害する。
【0061】
図7Aは外力付与光を照射しない場合におけるブラウン運動の速さと分子の個数との関係を表したグラフ、図7Bは外力付与光を照射した場合におけるブラウン運動の速さと分子の個数との関係を表したグラフである。なお、図7Aおよび7Bでは、説明を分かりやすくするためにグラフを模式的に描いてある。
【0062】
曲線700は、バインディング分子のブラウン運動の速さと分子の個数との関係を表すグラフである。曲線702は、フリー分子のブラウン運動の速さと分子の個数との関係を表すグラフである。フリー分子のブラウン運動よりバインディング分子のブラウン運動の方が遅い。また、この例では、フリー分子の個数よりバインディング分子の個数の方が多い。
【0063】
外力付与光117を照射された試薬カップ108内のフリー分子13およびバインディング分子15のブラウン運動は、外力によって阻害される。外力付与光117は体積が大きい分子ほど大きな力を及ぼすため、バインディング分子15が受ける外力の方が、フリー分子13が受ける外力よりも大きい。従って、バインディング分子15のブラウン運動はフリー分子13のブラウン運動よりも強い力で阻害され、バインディング分子15のブラウン運動は通常よりも遅くなる(図7Bの曲線704に示す)。
【0064】
外力付与光117が照射されたバインディング分子15から発生した蛍光は、バインディング分子15のブラウン運動の速さが外力付与光117を照射しない場合に比べて遅いため、高い偏光度を有し、励起光119の振動方向と平行な方向に偏光した成分を多く含む。
【0065】
一方、フリー分子13の体積がバインディング分子15の体積よりも小さいため、外力付与光117によりフリー分子13が受ける外力は、バインディング分子15が受ける外力よりも小さい。そのため、外力付与光117の有無によってフリー分子13のブラウン運動の速さはあまり変わらない(図7Bの曲線706に示す)。従って、フリー分子13に付随する蛍光分子14から発生する蛍光の偏光度の外力付与光117の有無による変化は少ない。
【0066】
つまり、外力付与光117をフリー分子13およびバインディング分子15に照射すると、外力付与光117を照射しない場合に比べて、フリー分子13のブラウン運動の速さとバインディング分子15のブラウン運動の速さとに顕著な差が生じ、それぞれの分子に付随する蛍光分子から発生する蛍光の偏光度の差が大きくなる。そのため、生体分子検出装置100は、蛍光偏光度測定を高精度に行うことができる。
【0067】
続いて図8を用いて受光部124の詳細な構成について説明する。図8は、受光部124の詳細な構成を表した模式図である。受光部124は、レンズ142、フィルタ144、偏光ビームスプリッタ146、レンズ147、レンズ148、PD(フォトダイオード)149およびPD150を含む。
【0068】
受光部124は、試薬カップ108の底面側から蛍光を受光する。試薬カップ108内の蛍光分子14から発生して受光部124の紙面左側部分に入射する蛍光123aおよび受光部124の紙面右側部分に入射する蛍光123bは、レンズ142によって集光、平行化され、フィルタ144を通って偏光ビームスプリッタ146へ入射する。なお、図示しないが蛍光123aと蛍光123bとの間にも蛍光が存在し、それらの挙動は当業者であれば予測可能であるので説明を省略する。
【0069】
フィルタ144は、蛍光分子14から発生する蛍光以外の光をカットするバンドパスフィルタであり、励起光等の蛍光以外の光がPD149およびPD150へ入射することを防いでいる。
【0070】
偏光ビームスプリッタ146は、励起光119の振動方向と平行な方向に振動する光を透過させ、励起光119の振動方向と垂直な方向に振動する光を反射する。
【0071】
偏光ビームスプリッタ146を透過した蛍光は、レンズ148によって集光され、PD149へ入射する。偏光ビームスプリッタ146によって反射された蛍光は、レンズ147によって集光され、PD150へ入射する。
【0072】
PD149は、APD(Avalanche Photodiode)によって構成され、レンズ148によって集光された蛍光の強度に応じた電流を発生して増幅部126へ出力する。
【0073】
PD150は、APDによって構成され、レンズ147によって集光された蛍光の強度に応じた電流を発生して増幅部126へ出力する。
【0074】
このようにして受光部124は、蛍光分子14から発生した蛍光を、励起光119の振動方向と平行な振動方向を有する成分と、励起光119の振動方向と垂直な振動方向を有する成分とに分け、それぞれの成分量に基づく電流を発生させる。また、受光部124は、試薬カップ108の底面側で蛍光を受光するため、外力付与光117および励起光119の影響を受けにくい。
【0075】
CPU132は、受光部124で分離された蛍光に基づく電流成分から、式(1)に示す蛍光偏光度を求める計算と同様の計算を行って蛍光偏光度を求める。外力付与光117が照射されると、フリー分子13のブラウン運動の速さとバインディング分子15のブラウン運動の速さとは顕著な差が生じるため、それらの分子の個数の比が蛍光偏光度となって表れる。
【0076】
CPU132は、測定項目ごとに異なる検量線関数を予め記憶しておき、蛍光偏光度を抗原の濃度に変換する。図9に検量線関数の一例を示す。検量線関数は、予め特定の物質の濃度等が分かっている試料等により測定したものである。CPU132は、算出された抗原の濃度を表示部102へ出力する。
【0077】
続いて生体分子検出装置100の測定時における動作について説明する。図10は、検体の準備から廃棄までの流れを模式的に表した図である。
【0078】
測定の準備にあたり、まず患者から採集した全血156を50μL遠心分離し、血漿16を分離する。分離して取り出した血漿16を、生体分子検出装置100の検体セット部152にセットする。ここまでの作業はユーザーが行う。
【0079】
生体分子検出装置100は、検体セット部152にセットされた血漿16を、試薬カップストック部160にストックしてある未使用の試薬カップ108の中に分注する。続いて、生体分子検出装置100は、試薬タンク112の中にある抗PSA抗体をピペット158で吸い上げ、試薬カップ108の中に分注する。試薬カップ108内に血漿および抗PSA抗体を入れた生体分子検出装置100は、試薬カップ108を37℃で温調しながら、内蔵したボルテックスミキサーによって振動させて抗原抗体反応を起こさせる。その後、生体分子検出装置100は、励起光の照射および蛍光の検出を行い、蛍光の検出終了後に試薬カップ108を内蔵のごみ箱154へ廃棄する。
【0080】
以上説明したように、本発明の実施の形態1に係る生体分子検出装置100によれば、外力付与光117の照射により、溶液中のフリー分子およびバインディング分子に外力を与え、これらの分子のブラウン運動を阻害する構成とした。このような構成においては、外力付与光117による外力が体積の大きいバインディング分子に与える影響は大きく、体積の小さいフリー分子に与える影響は小さい。すなわち生体分子検出装置100は、外力付与光117の照射により、フリー分子およびバインディング分子に互いに異なる強さの外力を与えることで、フリー分子のブラウン運動の速さとバインディング分子のブラウン運動の速さとに顕著な差を生じさせる。これによりフリー分子の個数とバインディング分子の個数との比の変化が蛍光偏光度の変化となってより明確に表れるため、蛍光偏光度の変化を演算することで検出対象物質の濃度をより正確に演算することができる。なお、本実施の形態では、検出対象物質の濃度を検出または定量する演算手段はCPUに相当する。
【0081】
また、以上の構成において、生体分子検出装置100は、外力付与光117による外力によって、フリー分子およびバインディング分子にそれぞれ互いに異なる強さの外力を加えるため、ブラウン運動というランダムな運動を利用して蛍光偏光度を測定する場合に比べて、高感度な測定をすることができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、抗原抗体反応を利用する場合を例にとって説明したが、検出対象物質と検出対象物質に特異的に結合する物質との組み合わせは、ここで説明した場合に限られない。例えば本願発明は、抗原を用いて抗体を検出する場合や、特定の核酸を用いて当該核酸とハイブリダイゼーションをする核酸を検出する場合、核酸を用いて核酸結合性たんぱく質を結合する場合、リガンドを用いてレセプターを検出する場合、糖を用いてレクチンを検出する場合、プロテアーゼ検出を利用する場合、高次構造変化を用いる場合等にも適用することができる。
【0083】
また、本実施の形態では、外力付与光117として波長980nm、出力100mWのレーザーを用いたが、外力付与光117として用いるレーザーはこの波長および出力のレーザーに限られない。外力付与光117の波長および出力は、フリー分子およびバインディング分子の体積、質量、溶媒の粘度、絶対温度等に起因する溶液中でのフリー分子およびバインディング分子の回転しやすさに基づいて、フリー分子のブラウン運度の速さおよびバインディング分子のブラウン運動の速さに顕著な差が表れる光を用いることが望ましい。
【0084】
また、本実施の形態では、励起光119として波長532nm、出力1mWの光を用いたが、励起光119として用いる光はこの波長および出力の光に限られない。励起光の波長は、蛍光分子が吸収する波長帯に基づいて適宜選択される。
【0085】
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2に係る生体分子検出装置200の主要な構成を示すブロック図である。なお、実施の形態1で示した生体分子検出装置100と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
生体分子検出装置200は、実施の形態1で示した生体分子検出装置100の構成に対して、励起光源部202、受光部204、および自己相関器210が主に異なる。生体分子検出装置200は、蛍光相関分光法(FCS法)の原理を用いてバインディング分子の検出を行う。
【0087】
励起光源部202は、レーザー光源と高倍率の対物レンズによって構成される。励起光源部202から照射された励起光206は、試薬カップ108内の溶液中で1フェムトリットル程度の領域まで焦点が絞られる。
【0088】
受光部204は、試薬カップ108内の蛍光分子から発生した蛍光を検出するものである。
【0089】
溶液中のフリー分子およびバインディング分子はブラウン運動をしているため、上記励起光206が焦点を結ぶ領域内にランダムに出入りする。領域内に入ったフリー分子およびバインディング分子は、励起光206により励起される。フリー分子はバインディング分子に比べて体積および質量が小さいためブラウン運動が速く、領域を速く通過するため蛍光強度の変化が速い。バインディング分子はフリー分子に比べて体積および質量が大きいためブラウン運動が遅く、領域を遅く通過するため蛍光強度の変化が遅い。
【0090】
生体分子検出装置200は、外力付与光117をフリー分子およびバインディング分子に照射しているため、外力付与光117を照射しない場合に比べて、フリー分子のブラウン運動の速さとバインディング分子のブラウン運動の速さとに顕著な差が生じる。従って、バインディング分子は、外力付与光117を照射されない場合に比べてさらに遅く上記領域を通過する。一方、フリー分子は、外力付与光117を照射されない場合に比べてブラウン運動の速さはあまり変わらないため、上記領域を速く通過する。
【0091】
自己相関器210は、蛍光強度の揺らぎの速さから分子の運動速度を自己相関法により求め、分子の平均的な大きさを推測する。バインディング分子の方が抗原の分だけフリー分子より体積が大きいため、バインディング分子が多いほど分子の平均的な大きさが大きくなる。
【0092】
図12は、実施の形態2に係る生体分子検出装置200における受光部204の詳細な構成を表した模式図である。受光部204は、レンズ214、フィルタ144、レンズ148、ピンホール212およびPD150を有する。試薬カップ108内の蛍光分子14から発生して受光部204の紙面左側部分に入射する蛍光123aおよび受光部204の紙面右側部分に入射する蛍光123bは、レンズ214によって集光、平行化され、フィルタ144を通ってレンズ148によって集光され、ピンホール212を通過してPD150へ入射する。なお、図示しないが蛍光123aと蛍光123bとの間にも蛍光が存在し、それらの挙動は当業者であれば予測可能であるので説明を省略する。
【0093】
レンズ214は、高倍率の対物レンズであり、試薬カップ108内で励起光が焦点を結ぶ微小領域において発生した蛍光を集光、平行化する。
【0094】
ピンホール212は、励起光206の焦点面以外から返ってくる光を除去し、焦点面から発光した蛍光だけを通過させる。
【0095】
図13は、自己相関器210が出力する拡散時間と相関関数との関係を表したグラフである。曲線216は、軽い分子の拡散時間と相関関数との関係を表した例であり、曲線218は、重い分子の拡散時間と相関関数との関係を表した例である。重い分子ほどブラウン運動による動きが遅いため、拡散時間は大きい。
【0096】
相関関数の最大値を100%とすると、相関関数50%における拡散時間が平均拡散時間と定義される。図13においては、曲線216の平均拡散時間はT1、曲線218の平均拡散時間はT2である。平均拡散時間は、溶液中に重い分子が含まれている割合が大きいほど大きい。CPU132は、自己相関器210から出力された拡散時間と相関関数との関係を表す式から平均拡散時間を算出することで、溶液中のバインディング分子の割合を算出する。
【0097】
図14は、抗原濃度と平均拡散時間との関係を表す検量線の例である。CPU132は、図14に示すような検量線を用いて、算出した平均拡散時間を抗原濃度に変換する。CPU132は、求めた抗原濃度を表示部102に表示させる。
【0098】
以上説明したように、本発明の実施の形態2に係る生体分子検出装置200によれば、外力付与光117の照射により、溶液中のフリー分子およびバインディング分子に外力を与え、これらの分子のブラウン運動を阻害する構成とした。このような構成においては、外力付与光117による外力が体積の大きいバインディング分子に与える影響は大きく、体積の小さいフリー分子に与える影響は小さい。すなわち生体分子検出装置200は、外力付与光117の照射により、フリー分子およびバインディング分子に互いに異なる強さの外力を与えることで、フリー分子のブラウン運動の速さとバインディング分子のブラウン運動の速さとに顕著な差を生じさせる。これにより、励起光が焦点を結ぶ微小領域をフリー分子およびバインディング分子が通過する速さに顕著な差が生じ、自己相関器によりバインディング分子の割合をより正確に求めることができる。そのため、検出対象物質の濃度をより正確に演算することができる。なお、本実施の形態では、検出対象物質を検出または定量する演算手段は、自己相関器210およびCPU132が相当する。
【0099】
なお、本実施の形態では、抗原抗体反応を利用する場合を例にとって説明したが、検出対象物質と、検出対象物質に特異的に結合する物質との組み合わせは、これに限られない。例えば本願発明は、抗原を用いて抗体を検出する場合や、特定の核酸と当該核酸とハイブリダイゼーションをする核酸、核酸と核酸結合性たんぱく質、リガンドとレセプター、糖とレクチン、プロテアーゼ検出、高次構造変化等にも適用することができる。
【0100】
(実施の形態1および実施の形態2の設計変更)
なお、以上説明した本発明に係る各実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明の構成を限定するものではない。本発明に係る生体分子検出装置は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で以下の通り種々変更して実施することが可能である。
【0101】
例えば、溶液中のフリー分子およびバインディング分子への外力の付与は、外力付与光としてのレーザーによるものに限られず、フリー分子およびバインディング分子に異なる大きさの力を付与することができれば磁気的な方法や電気的な方法を用いても良い。
【0102】
外力付与光により分子に外力の付与を行うと、磁力等によって分子に外力を付与する場合に比べ複雑な機構が必要ない。例えば、磁力を用いて分子に外力を付与するためには、それぞれの分子が磁性を持ったものであるか、磁性を持った分子を用意して外力を付与する分子に結合させる必要があり、測定にあたって準備が煩雑となる。
【0103】
なお、本発明に係る各実施の形態では、蛍光分子をAlexa Fluor568としたが、蛍光分子はこれに限られない。
【0104】
また、本発明に係る各実施の形態では、生体分子検出装置内に試薬カップを1つ設ける場合を説明したが、必ずしも試薬カップは1つである必要はなく、装置内に複数の試薬カップを設けて複数の検体をセットできる構成としても良い。その場合は、装置が試薬カップを順に測定位置に移動させて測定を行う構成とすれば、自動で複数の検体を測定することができる。
【0105】
なお、本発明に係る各実施の形態では、蛍光分子で標識化された抗体を用いた例を説明したが、必ずしも蛍光分子で標識済みの抗体を用いる必要はない。例えば、抗体および抗原の結合と、抗体および蛍光分子の結合とを同時に試薬カップ内で行っても良い。この場合、ユーザーは、抗体および蛍光分子をそれぞれ別の試薬タンクに用意しておき、測定時に生体分子検出装置が、抗体、蛍光分子および検体をそれぞれ試薬カップへ分注して、反応させる。
【0106】
また、外力付与光源部116や励起光源部118は、着脱可能な構成として、検出対象物質および蛍光分子等に応じて、適切なものに交換できるような構成としても良い。
【0107】
なお、本発明に係る各実施の形態では、検体として全血から分離した血漿を用いる場合を例にとって説明したが、検体は全血から分離した血漿に限られず、検出対象物質が溶液中に分散していれば尿や隋液等の体液を検体とすることもできる。
【0108】
なお、本発明に係る各実施の形態では、検出対象物質が1種類の場合を例にとって説明したが、検出対象物質は必ずしも1種類でなくて良い。検出対象物質が2種類の場合は、例えば、2種類の検出対象物質それぞれに特異的に吸着する2種類の分子を用い、当該2種類の分子のそれぞれを異なる発光波長を有する蛍光分子で標識する。受光部に2種類のフィルタを設けて、測定する分子に標識された蛍光分子の発光波長に応じて使用するフィルタを切り替え、これらの分子から発生する蛍光を分離して受光すれば、それぞれの蛍光分子から発生した蛍光を定量することができる。また、蛍光分子は励起波長や蛍光寿命等が異なるものを用いても良い。
【0109】
また、本発明に係る各実施の形態では、受光部において光を分光する分光手段としてフィルタを用いたが、必ずしもフィルタを用いる必要はない。例えば、回折格子やプリズムを用いて光を分光して、特定の波長を有する光のみをフォトダイオードで受光してもよい。
【0110】
また、検出対象物質は2種類より多くても良い。その場合においても、それぞれの検出対象物質とそれぞれ特異的に結合する物質を用い、当該物質のそれぞれを互いに異なる蛍光分子で標識し、それぞれの蛍光分子から発生する蛍光を、それぞれの蛍光に対応したフィルタで分離して検出することで、それぞれの検出対象物質を分離して検出することができる。
【0111】
なお、検出対象物質の種類が増えるほど蛍光分子の種類も増え、複数の蛍光分子から発生する互いに波長が異なる蛍光が混在することになるため、フィルタのみで蛍光を分離することが困難となる場合がある。その場合は、励起光の種類を増やすことで蛍光の分離を容易にすることができる。蛍光分子の吸光度は励起光の波長に依存し、蛍光分子の種類ごとに吸収しやすい波長帯がある。そのため、励起光の波長を変えることで、一部の蛍光分子のみが蛍光を発生するようになり、フィルタでの蛍光の分離が容易となる。また、より狭い通過帯域を持つバンドパスフィルタを用いることで、目的の蛍光分子から発生する蛍光が検出されやすくなる。
【0112】
また、本発明に係る各実施の形態では、抗原、抗体および蛍光分子が液体中に分散している液相で測定ができるため、抗原等を反応層に固定して測定を行う固相での測定に比べ、前処理が簡単であるという利点がある。また、抗原およびフリー分子が固相に固定されていないため、抗原およびフリー分子が溶液中を自由に動き回ることができ、固相での測定に比べて反応が早いという利点もある。
【0113】
また、本発明に係る生体分子検出装置および生体分子検出方法は、RICS(Raster Imaging Correlation Spectroscopy)やFRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)解析、FIDA(Fluorescence Intensity Distribution Analysis),FIDA−PO(Fluorescence Intensity Distribution Analysis Polarization system)等にも用いることができる。
【0114】
また、本発明に係る各実施の形態では、外力付与光源部は必ずしも1つである必要はなく、複数の外力付与光源部を設けて、同一方向に複数の外力付与光を照射しても良い。
【0115】
また、より大きな外力を付与するため外力付与光を集光させた場合には、外力付与光で照射することができる溶液の範囲が減少するという問題がある。そこで、外力付与光による照射範囲をより広くするため、外力付与光を所定の方向から同時に多点に入射させることが好ましい。
【0116】
外力付与光をある方向から同時に多点に照射して照射範囲をより広くする方法としては、例えば光学系を複数段用意する方法が挙げられる。複数段の光学系は、少なくとも試薬カップに外力付与光が入射する前の段階で光路が複数存在していればよい。例えば、光源も含めた同様の光学系を3段重ねれば、3つの外力付与光源部からそれぞれ外力付与光が照射され、試薬カップへある方向から3点に外力付与光を照射することができる。また例えば、光源が1つであっても2次元レーザーアレイやマイクロレンズアレイ等を用いて外力付与光を分岐すれば、分岐した分だけの複数の点で外力付与光を照射することができる。
【0117】
例えば分岐された外力付与光を利用した方法としては、図15(試薬カップ108の上面図)に示すように、360a〜360iの9点にそれぞれ対応した9本の外力付与光を試薬カップ108に入射させるような態様でも良い。このようにすると、外力付与光で照射することができる溶液の範囲が増えるため、上記問題を回避することができる。なお、ここでは9点に外力付与光を入射させる例を示したが、外力付与光を入射させる点は9点に限られず、9点より多くても少なくても良い。外力付与光を絞るほど、多くの点に入射させることが望ましい。その結果、突発的な蛍光強度の変動を低下させることができ、相対的な散らばりを表す指標である変動係数(Coefficient of Variation)を改善することができる。
【0118】
このように、外力付与光を所定の方向から同時に多点に入射させるための外力付与光源部402の構造について図16に示す。外力付与光源部402は、3×3の2次元レーザーアレイである。外力付与光源部402は、発光点404a〜404iの9点が発光する。発光点の大きさは縦が1μmで横が100μmである。発光点の間の距離は約100μmである。
【0119】
図16に示される外力付与光源部402を用いた光学系の一例を図17に示す。なお図17では、外力付与光および励起光の光学系以外の構成要素は省略して描いてある。
【0120】
外力付与光源部402から出力された外力付与光422は、コリメータレンズ406を通って焦点において平行光線となる。コリメータレンズ406を通った外力付与光422は、ビームエキスパンダ408およびビームエキスパンダ410を透過する。ビームエキスパンダ408およびビームエキスパンダ410を通った外力付与光422は、特定の倍率の平行光束に広げられる。その後、外力付与光422は、ダイクロイックミラー418で反射してレンズ420により集光されて試薬カップ108の底面から上方に向かって入射する。
【0121】
光源部414から出力された励起光424は、レンズ426を通ってダイクロイックミラー416により反射される。ダイクロイックミラー416により反射された励起光424は、ダイクロイックミラー418を透過してレンズ420により集光されて試薬カップ108の底面から上方に向かって入射する。
【0122】
図17に示される光学系において、コリメータレンズ406の焦点距離を3.1mm、レンズ420の焦点距離を4mmとすると、倍率は1.29倍となる。そのため、試薬カップ108の底面において、外力付与光422の大きさは約1.3μm×130μmとなり、ピッチは約129μmとなる。
【0123】
また、外力付与光を所定の方向から同時に多点に入射させるための別の光学系の例について図18を用いて説明する。なお図18においても、外力付与光および励起光の光学系以外は省略して描いてある。また、図17と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0124】
図18に示される光学系において、外力付与光源部116は実施の形態1と同様のものである。外力付与光432は、コリメータレンズ406、ビームエキスパンダ408およびビームエキスパンダ410を通り、マイクロレンズアレイ428へ入射する。マイクロレンズアレイ428は、図19に示されるように、複数のマイクロレンズ428aを格子状に並べたものである。マイクロレンズアレイ428を通った外力付与光432は、複数の光源から照射された光のように、異なる位置で焦点を結ぶ複数の光束となる。外力付与光432は、ピンホールアレイ430によって絞られ、ダイクロイックミラー418で反射し、レンズ420を通って試薬カップ108の底面から上方に向かって入射する。このようにマイクロレンズアレイを用いても、外力付与光を所定の方向から同時に多点に入射させることができる。
【0125】
また、上記各実施の形態では試薬カップを円柱状の形状としたが、試薬カップは必ずしも円柱状の形状とする必要は無い。例えば、図20に示されるように、四角柱状の形状を有し、内部に四角柱状の溶液保持部を有する試薬カップ432を用いても良い。このような四角柱状の溶液保持部を有する試薬カップ432は、特に、外力付与光の進行方向に働く外力付与光による圧力を利用してフリー分子およびバインディング分子を試薬カップ432の内部側壁面に押しつける場合に適している。これは、フリー分子およびバインディング分子の質量が軽い場合に起こる現象であり、外力付与光による圧力を受けてフリー分子およびバインディング分子が溶液中を移動することが原因である。この場合、溶液保持部が四角柱であると、フリー分子およびバインディング分子は溶液と試薬カップ432との界面に押しつけられながらブラウン運動が阻害される。当該界面が平面でありかつ外力付与光による圧力が当該界面に垂直な方向に作用する場合には、フリー分子およびバインディング分子は当該界面に平行な方向に移動して外力付与光の照射範囲の外に出ることがない。
【0126】
また、フリー分子およびバインディング分子を試薬カップ432の内部側壁面に押しつける場合には、外力付与光の焦点の位置を工夫することによりこれらの分子のブラウン運動をより容易に阻害することができる。図21は、集光された外力付与光の焦点と試薬カップとの位置関係の一例を示す図である。外力付与光434は、レンズ436に入射し、血漿16と試薬カップの側壁部432bとの界面(側壁部432bの内部側壁面)において焦点434aを結ぶ。外力付与光434の焦点434aの位置では、外力付与光434の強度が最も強いため、より強い圧力でフリー分子およびバインディング分子を押しつけることができる。従って、図21のように外力付与光434を入射させると、焦点434aの位置においてフリー分子およびバインディング分子を側壁部432bの内部側壁面に押しつけつつ、より効率的にフリー分子およびバインディング分子のブラウン運動を阻害することができる。
【0127】
なお、溶液保持部は必ずしも四角柱状の形状を有している必要はなく、少なくとも一面に平面を有していれば良い。その平面において焦点を結ぶように外力付与光を照射すれば、フリー分子およびバインディング分子は、当該平面に平行な方向に移動して外力付与光の照射範囲の外に出ることがなく平面に押しつけられながら、これらの分子のブラウン運動が阻害される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る生体分子検出装置および生体分子検出方法は、例えば、検出対象物質と、その検出対象物質に特異的に結合する物質との相互作用を利用して、検出対象物質の検出又は定量を行う装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0129】
12 抗体
13 フリー分子
14 蛍光分子
15 バインディング分子
16 血漿
18 抗原
100 生体分子検出装置
116 外力付与光源部
117 外力付与光
118 励起光源部
119 励起光
123 蛍光
124 受光部
144 フィルタ
146 偏光ビームスプリッタ
149 PD
150 PD
200 生体分子検出装置
202 励起光源部
204 受光部
210 自己相関器
212 ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物質に特異的に結合する物質と蛍光分子とが結合した第1の複合体と、該第1の複合体と前記検出対象物質とが結合した第2の複合体とが溶液中に混在し、前記第1の複合体および前記第2の複合体から発生する蛍光を検出して前記検出対象物質の検出または定量を行う生体分子検出装置であって、
前記蛍光分子に向けて励起光を照射する光源と、
前記蛍光分子から発生する蛍光を受光する受光部と、
前記第1の複合体および前記第2の複合体に外力を付与する外力付与手段と、
前記外力の付与により変化した前記第1の複合体のブラウン運動の速さおよび前記第2の複合体のブラウン運動の速さに基づいて、前記検出対象物質の検出または定量を行う演算手段とを備えることを特徴とする生体分子検出装置。
【請求項2】
前記光源は、前記蛍光分子を励起する直線偏光した励起光を照射するものであり、
前記受光部は、前記蛍光分子から発生した蛍光を、前記励起光の振動方向と平行な振動方向を有する第1の成分、および、前記励起光の振動方向と垂直な振動方向を有する第2の成分に分離する分離手段を有し、
前記演算手段は、前記受光部が分離して受光した前記第1の成分および前記第2の成分の双方を用いて前記検出対象物質の検出または定量を行うことを特徴とする請求項1に記載の生体分子検出装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第1の成分および前記第2の成分から蛍光の偏光度を求めて前記第2の複合体の検出または定量を行うことを特徴とする請求項2に記載の生体分子検出装置。
【請求項4】
前記分離手段は偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項2または3に記載の生体分子検出装置。
【請求項5】
前記光源は、前記溶液中の特定領域に焦点を結ぶように前記励起光を照射するものであり、
前記受光部は、前記特定領域における前記蛍光分子から発生する蛍光を受光するものであり、
前記演算手段は、前記第1の複合体が前記特定領域を出入りする頻度を表すパラメータ、および、前記第2の複合体が前記特定領域を出入りする頻度を表すパラメータに基づいて、前記検出対象物質の検出または定量を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の生体分子検出装置。
【請求項6】
前記演算手段は、自己相関器を備え、前記パラメータをブラウン運動の速さとして、前記第1の複合体および前記第2の複合体のブラウン運動の速さを自己相関法によって求め、前記溶液中に含まれる分子の平均的な大きさを求めることにより、前記検出対象物質の検出または定量を行うものであることを特徴とする請求項5に記載の生体分子検出装置。
【請求項7】
前記受光部は、光を分光する分光手段と、該分光手段により分光された光をそれぞれ受光する複数の受光手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の生体分子検出装置。
【請求項8】
前記分光手段は、透過する光の波長が互いに異なる複数の光学フィルタであり、
前記受光部は、前記複数の光学フィルタから使用する光学フィルタを切り替える切り替え手段をさらに備え、前記蛍光の波長に応じて前記使用する光学フィルタを切り替えるものであることを特徴とする請求項7に記載の生体分子検出装置。
【請求項9】
前記分光手段は回折格子であることを特徴とする請求項7に記載の生体分子検出装置。
【請求項10】
前記外力付与手段は、前記励起光と波長が異なる光を照射する外力付与光源を備え、前記励起光と波長が異なる光を前記溶液に照射することにより前記第1の複合体および前記第2の複合体に外力を加えるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の生体分子検出装置。
【請求項11】
前記外力付与光源は、前記溶液に対し複数の位置から前記励起光と波長が異なる前記光を照射するものであることを特徴とする請求項10に記載の生体分子検出装置。
【請求項12】
前記溶液を保持する溶液保持部であって少なくとも一面に平面を有する溶液保持部を備えることを特徴とする請求項10または11に記載の生体分子検出装置。
【請求項13】
前記外力付与光源は、前記溶液を通って前記平面から出射する方向に前記励起光と波長が異なる前記光を照射するものであり、かつ、前記溶液と前記平面との界面において前記励起光と波長が異なる前記光に焦点を結ばせるものであることを特徴とする請求項12に記載の生体分子検出装置。
【請求項14】
前記演算手段は、前記第1の複合体および前記第2の複合体に対して前記外力付与手段によりそれぞれ異なる強度の外力が加えられることを利用して、前記第2の複合体の検出または定量を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の生体分子検出装置。
【請求項15】
検出対象物質に特異的に結合する物質と蛍光分子とが結合した第1の複合体と、該第1の複合体と前記検出対象物質とが結合した第2の複合体とが溶液中に混在し、前記第1の複合体および前記第2の複合体から発生した蛍光を検出して前記検出対象物質の検出または定量を行う生体分子検出方法であって、
前記蛍光分子を励起する励起光を照射するステップと、
前記第1の複合体および前記第2の複合体に外力を加えるステップと、
前記励起光の照射により前記蛍光分子から発生した蛍光を検出するステップと、
前記外力の付与により変化した前記第1の複合体のブラウン運動の速さおよび前記第2の複合体のブラウン運動の速さに基づいて、前記検出対象物質の検出または定量を行うステップとを備えることを特徴とする生体分子検出方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−93338(P2012−93338A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123100(P2011−123100)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】