説明

生体情報の一括表示方法及び一括表示装置

【課題】心電情報の12誘導ST計測値を同一表示画面上に相互に区別のつく態様で一括表示することによって、どの誘導(心臓の部位)において虚血性心疾患が発生しているかを簡単に把握することが可能な12誘導ST計測値の一括表示方法及び一括表示装置を提供する。
【解決手段】生体情報を構成する複数のST計測値を同一画面上に一括表示する生体情報の一括表示方法であって、ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義するステップと、被測定対象から前記複数のST計測値を取得するステップと、前記取得された複数のST計測値に対して、前記ステップで定義された色階調の表示要素を決定するステップと、前記決定された色階調の表示要素を前記複数のST計測値毎に、時間軸に沿って表示画面上に帯状に表示するステップとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報である心電情報を構成する12誘導ST計測値の一括表示方法及び一括表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心電情報の12誘導ST計測値の表示例として以下のものが知られている。(特許文献1参照)
特許文献1には以下のことが記載されている。
図4において、例示として、12誘導の中のいくつかの誘導波形由来のSTレベルが異常値である場合を示している。以下、それぞれの異常値について説明する。
誘導IIIの誘導波形のSTレベルを示す線70は、上限値を超えており、異常値色X(グラフ表示形態)で描画(プロット)されている。
また、誘導III由来のSTレベルが上限値を超えたことを示すために、図では、ディスプレイ上部の(誘導III用の)誘導アイコン60を線70と同様の異常値色Xで表示する(データの種類の表示形態を、そのデータのグラフ表示形態と同様にする)。
誘導V5の誘導波形のSTレベルを示す線72は、下限値を超えており、その下限値を超えた部分が異常値色Yで描画されている。
また、誘導V5由来のSTレベルが下限値を超えたことを示すために、図では、ディスプレイ下部の(誘導V5用の)誘導アイコン62を線72と同様の異常値色Yで表示する。
誘導aVFの誘導波形のSTレベルを示す線71は、上限値を超えた部分があり、その上限値を超えた部分が異常値色Zで描画されている。
また、誘導aVF由来のSTレベルが上限値を超えたことを示すために、図では、ディスプレイ上部の(誘導aVF用の)誘導アイコンの外枠61を線71の上限値を超えた部分と同様の異常値色Zで表示する。
ただし、現在の誘導aVF由来のSTレベルは正常値の範囲に戻っているので、誘導アイコンの内枠61aは正常値色で表示する。
【0003】
【特許文献1】WO2004−023994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のものは、図4に示す如く、複数のST計測値を時間軸に沿って折れ線グラフで表示しているので、複数のST計測値が交錯して個々のST計測値の変動の確認をすることが容易ではなかった。
【0005】
本発明の課題(目的)は、心電情報の12誘導ST計測値を同一表示画面上に相互に区別のつく態様で一括表示することによって、どの誘導(心臓の部位)において虚血性心疾患などが発生しているかを簡単に把握することが可能な12誘導ST計測値の一括表示方法及び一括表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、生体情報を構成する複数のST計測値を同一画面上に一括表示する生体情報の一括表示方法であって、ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義するステップと、被測定対象から前記複数のST計測値を取得するステップと、前記取得された複数のST計測値に対して、前記ステップで定義された色階調の表示要素を決定するステップと、前記決定された色階調の表示要素を前記複数のST計測値毎に、時間軸に沿って表示画面上に帯状に表示するステップとを含むことを特徴とする。(請求項1)
【0007】
また、前記生体情報は、心電情報であり、前記複数のST計測値は、前記心電情報を構成する12誘導ST計測値であることを特徴とする。(請求項2)
また、前記所定の色階調を定義するステップでは、ST値の異常値に対して特有の色階調を設定することを特徴とする。(請求項3)
【0008】
また、心電情報を構成する12誘導ST計測値を同一画面上に一括表示する心電情報の一括表示装置であって、ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義する色階調設定手段と、前記12誘導ST計測値を取得するST計測値取得手段と、前記取得された12誘導ST計測値に対して、前記定義された色階調の表示要素を決定する色階調割当手段と、前記決定された色階調の表示要素を前記12誘導ST計測値毎に、時間軸に沿って表示画面上に帯状に表示する表示手段とを含むことを特徴とする。(請求項4)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、心電情報の12誘導ST計測値を同一表示画面上に相互に区別のつく態様で一括表示することによって、どの誘導(心臓の部位)において虚血性心疾患などが発生しているかを簡単に把握することが可能な12誘導ST計測値の一括表示方法及び一括表示装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の心電情報を構成する12誘導ST計測値の一括表示方法及び一括表示装置について図1〜図3を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の心電情報を構成する12誘導計測値の一括表示装置の構成を示すブロック図である。
1は図示しない生体情報測定装置(例えば、心電情報測定装置)内に設けられる、本発明の心電情報を構成する12誘導ST計測値を同一画面上に一括表示する心電情報の一括表示装置である。
本発明の心電情報一括表示装置1は、12誘導ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義する色階調設定手段2と、患者の心電位を計測して12誘導ST計測値として取得するST計測値取得手段3と、取得された12誘導ST計測値に対して、前記色階調設定手段2で定義された色階調の表示要素を決定する色階調割当手段4と、決定された色階調の表示要素を前記12誘導ST計測値毎に、時間軸に沿って表示画面上に帯状に表示する表示手段5と、制御手段(CPU)6とで構成されている。
【0012】
前記色階調設定手段2は、次のようにして、ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義する。
ST値が、mV単位の場合には、−2.55〜+2.55mVの範囲で、ST値の大きさに応じて256色(あるいは、それ以上)を割り当てて、数値を色階調の変化として表現する。
また、mm単位の場合には、−25.5〜+25.5mmの範囲で、ST値の大きさに応じて256色(あるいは、それ以上)を割り当てて、数値を色階調の変化として表現する。
なお、ST値に対する色階調の割り当てに際しては、異常値に相当するST値に対しては、他と識別し易い色階調を割り当てるのが良い。
【0013】
しかし、実際のST値の変化は、測定範囲の極小さな範囲で発生することが多いので、例えば、−0.50〜+0.50mV等の小さな範囲においては、それ以外の範囲に比較して小さな刻みで色階調を定義しても良い。
【0014】
前記ST計測値取得手段3は、患者の生体に固定されたECG電極(例えば、患者の胸部誘導のための6箇所及び四肢誘導のための4箇所)によって、計測された心電位を演算処理して、標準12誘導の四肢6誘導波形(I、II、III、aVR、aVL、aVF)及び胸部6誘導波形(V1、V2、V3、V4、V5、V6)からなる心電情報を構成する12誘導ST計測値を取得する。
【0015】
色階調割当手段4は、前記ST計測値取得手段3で取得した12誘導ST計測値に、前記色階調設定手段2で定義された表示要素の色階調を割り当てる。
【0016】
表示手段5は、生体情報測定装置(例えば、心電情報測定装置)の測定結果を表示する表示部であって、当該表示手段は、生体情報測定装置と一体的に構成されているのが普通であるが、生体情報測定装置とは別に(例えば、ナースセンター等)設置しても良い。
【0017】
制御手段(CPU)6は、色階調設定手段2、ST計測値取得手段3、色階調割当手段4の出力に応じて、表示手段5に本発明による心電情報の一括表示のための制御を実行する。
なお、図1では、制御手段(CPU)は、一括表示装置1に特有のものとして記載されているが、生体情報測定装置の制御手段(CPU)にその機能を実行させることも可能である。
【0018】
次に、本発明の心電情報を構成する12誘導ST計測値を同一画面上に一括表示する手順について、図2を用いて説明する。
図2は、図1の表示手段5に表示される本発明に特有の心電情報を構成する12誘導ST計測値を同一画面上に一括表示した状態を示す図である。
【0019】
図2では、本発明の心電情報を構成する12誘導ST計測値である、四肢6誘導波形(I、II、III、aVR、aVL、aVF)及び胸部6誘導波形(V1、V2、V3、V4、V5、V6)をST特性表示部51に一括表示している。
図2では、上記12誘導の8時間(8:00〜16:00)に亘るST計測値を、それぞれ帯状に表示している状態を表している。
なお、図2では理解のし易さのため実際表示とは異なって、12誘導の内、aVR、II、aVFのみを表示して他の誘導の表示は省略している。
【0020】
符号52で示す領域は簡易イベント表示部であり、イベント項目表示部53に示されるイベントが発生したタイミングで前記簡易イベント表示部52にイベントマーク(例えば、符号54)がマーキングされる。
前記イベントとしては、ARRHYTHMIA(不整脈アラーム/イベント)、LIMIT(上下限アラーム)、TECHNICAL(テクニカルアラーム/イベント:コネクタ抜け等)、OPERATION(操作及び間歇的なパラメータ測定イベント:血圧測定等)が設定されている。
符号55はイベントカーソルであり、操作者がイベントスキップキー56を操作することによって所望のイベントマーク上にイベントカーソルを移動させると、詳細イベント表示部57にイベントの詳細が表示される。図2では、イベントマーク54にイベントカーソル55があって、2007年10月24日12時48分に誘導波形(II)のST値が上限リミット0.40mVを超えて上限アラームが発生したことを示している。
【0021】
また、図2におけるaVR、II、aVFの表示では、白黒の濃淡で示しているが、各ST計測値に応じて、複数の色階調(例えば、256階調)を割り当てて表示することによって、より視覚的に判別がし易くなる。
また、それぞれのST計測値の異常値には、特有の色階調を設定すると、異常状態の視認を容易にすることが可能になる。
図2の12誘導の表示の順(並び)は、図2に示すものに限定するものではなく、I〜III、V1〜V6等に単純に並べることや、カブレラ誘導を意識した並びにすることも可能である。
表示手段5には、図2の心電情報を構成する12誘導ST計測値の一括表示以外に、生体情報測定装置で測定した他の情報(例えば、心電図、脈波波形、脈拍数等)を同一画面上に表示しても良いことはいうまでもない。
【0022】
次に、図2の表示形態では、各誘導毎のST計測値の表示が同一画面上で8時間という長期間に亘っているため、各ST計測値毎の表示の区別がつきにくいので、図3の拡大図を用いてST計測値毎の表示について説明する。
【0023】
図3は、12誘導のうちの1つ(この場合は、誘導波形(II))のST計測値の時間軸上の一部を拡大したものである。
なお、図2の表示とは一致していない。
図3では、ST計測値毎に色階調が割当てられていることを示している。
図3では、(a)の区間は、4個のST計測値が−0.40mVであったので、細破線が4本表示され、次の(b)の区間は、8個のST計測値が−0.5mVであったので、太破線が8本表示されている。
また、次に(c)の区間は、5個のST計測値が+0.40mVであったので、細実線が5本表示され、次の(d)の区間は、5個のST計測値が+0.45mVであったので、中実線が5本表示され、次の(e)の区間は、3個のST計測値が+0.5mVであったので、太実線が3本表示され、次の(f)の区間は、8個のST計測値が+0.40mVであったので、8本細実線が表示されている。
【0024】
上述の如く、ST計測値に対して、時間軸に沿って色階調が割り当てられた線の表示が連続することによって、図2の如き長時間に亘ったトレンドを示す表示形態となる。
なお、図3の1本毎の線表示は、ST計測値の1回毎の値に基づいて色階調として割り当てられるのが原則ではあるが、複数回のST計測値の平均値に対して、1本の線の色階調を割り当てても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の心電情報を構成する12誘導計測値の一括表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の心電情報を構成する12誘導ST計測値を同一画面上に一括表示状態を示す図である。
【図3】12誘導のうちの1つ(この場合は、誘導波形(II))のST計測値の時間軸上の一部を拡大した図である。
【図4】従来の12誘導の中のいくつかの誘導波形由来のSTレベルが異常値である場合を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1:心電情報一括表示装置
2:色階調設定手段
3:ST計測値取得手段
4:色階調割当手段
5:表示手段
6:制御手段(CPU)
51:ST特性表示部
52:簡易イベント表示部
53:イベント項目表示部
54:イベントマーク
55:イベントカーソル
56:イベントスキップキー
57:詳細イベント表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を構成する複数のST計測値を同一画面上に一括表示する生体情報の一括表示方法であって、
ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義するステップと、
被測定対象から前記複数のST計測値を取得するステップと、
前記取得された複数のST計測値に対して、前記ステップで定義された色階調の表示要素を決定するステップと、
前記決定された色階調の表示要素を前記複数のST計測値毎に、時間軸に沿って表示画面上に帯状に表示するステップと、
を含むことを特徴とする生体情報の一括表示方法。
【請求項2】
前記生体情報は、心電情報であり、前記複数のST計測値は、前記心電情報を構成する12誘導ST計測値であることを特徴とする請求項1に記載の生体情報の一括表示方法。
【請求項3】
前記所定の色階調を定義するステップでは、
ST値の異常値に対して特有の色階調を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の生体情報の一括表示方法。
【請求項4】
心電情報を構成する12誘導ST計測値を同一画面上に一括表示する心電情報の一括表示装置であって、
ST値の大きさに応じた所定の色階調を定義する色階調設定手段と、
前記12誘導ST計測値を取得するST計測値取得手段と、
前記取得された12誘導ST計測値に対して、前記定義された色階調の表示要素を決定する色階調割当手段と、
前記決定された色階調の表示要素を前記12誘導ST計測値毎に、時間軸に沿って表示画面上に帯状に表示する表示手段と、
を含むことを特徴とする生体情報の一括表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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