説明

生体情報モニタ

【課題】患者のみならず、患者の面会人および医療従事者に与える精神的ストレスを軽減するような癒し効果を有する生体情報モニタを提供する。
【解決手段】患者の生体信号を演算して生体情報データを得る演算部と、前記生体情報データを表示処理する表示処理部と、表示部と、を備えた生体情報モニタであって、
更に、複数の画像データを記憶した画像記憶部と、前記表示部に表示する表示モードと前記画像データとを指定する入力部と、前記複数の画像データの中から前記入力部で指定された画像データを選択する選択部と、を備え、前記表示モードとして画像表示モードが指定された場合、前記表示処理部において、前記指定された画像表示モード及び前記選択された画像データに応じた表示処理をして前記表示部に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の生体情報を連続して測定することにより患者の容体を監視する生体情報モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、入院中の患者の容体を監視するために、1種以上の生体情報を連続して測定することにより患者の容体を監視する生体情報モニタが使用される。生体情報モニタは、例えば、生体情報として心電位、心拍数HR、呼吸数RR、酸素飽和度SpO等を連続して測定し、その測定された生体情報が数値あるいは波形の形式で、生体情報モニタに設けられた表示部に表示される。
一般的に、この生体情報モニタとは、病室の患者の近傍に設置されるベッドサイドモニタである。また、通常、ベッドサイドモニタは、ナースステーション等に設置されたセントラルモニタと接続されており、医療従事者によって患者の容体を常に監視できるようになっている。
【0003】
しかし、従来のベッドサイドモニタは、測定された数値や波形のみを整然と並べて表示部に表示するのみであるので、その表示部の画面は無機質な態様になりがちで、且つ、表示された測定値や波形は時々刻々変化しているので、病室にいる医療従事者、患者及びその面会者に精神的なストレスを与えている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、患者の不安を取り除くと共に、管理スタッフには生体情報の値が認識できる生体情報モニタとして、血圧値やSpO値等の計測値をトレンド表示する場合に、折れ線や単なる点で表示するのではなく、ハートマーク等の記号を使って表示している。
【0005】
【特許文献1】特開2001−29318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のベッドサイドモニタ等の生体情報モニタの表示は、上述の如く、病室にいる医療従事者、患者及びその面会者に精神的なストレスを与えているので、そのストレスを軽減することが望まれている。
また、ベッドサイドモニタの表示部に表示される患者の測定された数値や波形は、医療従事者のみが認識できれば十分であって、数値や波形の意味を十分には理解していない面会者や患者に時々刻々変化している表示をみせることは好ましいことではない。
また、患者の臨終後でも、生体情報モニタは継続して作動しているためノイズ等によりベッドサイドモニタの表示部に生体情報に関係のない数値変化や波形変化を表示してしまう場合もあって、患者の親族等に余計なストレスを与えることがある。
そこで、本発明は、患者のみならず、患者の面会人および医療従事者に与える精神的ストレスを軽減するような癒し効果を有する生体情報モニタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題に基づいてなされたものであり、下記の通りである。
患者の生体信号を演算して生体情報データを得る演算部と、
前記生体情報データを表示処理する表示処理部と、
表示部と、を備えた生体情報モニタであって、
更に、複数の画像データを記憶した画像記憶部と、
前記表示部に表示する表示モードと前記画像データとを指定する入力部と、
前記複数の画像データの中から前記入力部で指定された画像データを選択する選択部と、を備え、
前記表示モードとして画像表示モードが指定された場合、前記表示処理部において、前記指定された画像表示モード及び前記選択された画像データに応じた表示処理をして前記表示部に表示することを特徴とする。(請求項1)
【0008】
また、前記画像データには、背景画像データ種と前記生体情報データを表示する複数個の表示エリアが形成された図柄画像データ種とが含まれることを特徴とする。(請求項2)
また、前記表示処理部は、画像表示モードが重畳表示モードで、選択された画像データが図柄画像データ種の場合には、前記生体情報データに含まれる特定表示情報データを前記選択された図柄画像データの表示エリアに重畳して表示することを特徴とする。(請求項3)
【0009】
また、前記特定表示情報データは前記生体情報データに含まれる数値データであって、前記選択された図柄画像データの表示エリアに数値として重畳して表示することを特徴とする。(請求項4)
また、前記表示処理部は、画像表示モードが非重畳表示モードで、選択された画像データが図柄画像データ種の場合には、当該図柄画像データのみを表示することを特徴とする。(請求項5)
【0010】
また、前記表示処理部は、選択された画像データが背景画像データの場合には、選択された背景画像データのみを表示することを特徴とする。(請求項6)
【発明の効果】
【0011】
本発明では、患者のみならず、患者の面会人および医療従事者に与える精神的ストレスを軽減するような癒し効果を有する生体情報モニタを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る生体情報モニタの実施形態の一例を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る生体情報モニタの機能ブロック図である。
【0013】
本発明に係る生体情報モニタ10は、ベッドサイドモニタとして構成されており、患者の体表面等に取り付けられる心電電極、SpOプローブ、カフ圧センサ等で構成され、それぞれ心電信号、酸素飽和度、血圧等に関連した生体信号11を検出する測定部1と、前記生体信号11を演算して、心電波形、脈拍波形および呼吸流量波形等の波形データ、並びに、脈拍数、ST値、酸素飽和度、呼吸数および血圧等の数値データからなる生体情報データ12を得る演算部2と、前記生体情報データ12を表示部4に表示できるように処理する表示処理部3と、LCD等からなる前記表示部4とで構成される。(ここまでの構成は、従来の生体情報モニタと同じである。)
【0014】
本発明の生体情報モニタ10は、上述の構成に更に、前記表示部4に表示する後述の表示モードや画像データを指定する入力部5と、複数の前記画像データを記憶する画像記憶部6と、前記複数の画像データの中から前記入力部5で指定された画像データ7を選択する選択部8とを備える。尚、前記入力部5は独立した構成でも良いし、前記表示部4の画面上にタッチスイッチとして構成しても良い。
【0015】
前記画像データには、後述する、生体情報データと組み合わせて表示する重畳表示モードのときの使用に適した図柄画像データと、単独での使用に適した背景画像データとがあるが、それらの中には両者に共に適した画像データもある。また、画像データには、画像表示される一部に、前記生体情報データ12の中の数値データである特定表示情報データを表示させる表示エリアが設けてある。
【0016】
前記表示モードには、前記生体情報データ12の波形および/または数値を表示する通常表示モード(図2に示す通常のモニタリング画面を表示するモード)と、前記選択された画像データ7を表示する画像表示モードとがある。さらに当該画像表示モードには、前記選択された画像データ7に前記生体情報データの一部を重畳して表示する重畳表示モードと、画像データ7のみを表示する非重畳表示モードとがある。
尚、前記通常表示モードは、図2に示される画面表示に限定されず、複数設定することができる。
前記入力部5では、表示モードとして前記通常表示モードまたは前記画像表示モードを指定することができ、前記画像表示モードのとき前記重畳表示モードまたは前記非重畳表示モードを指定することができる。また、前記画像表示モードが指定された場合に前記複数の画像データの中の任意の画像データ7を指定することができる。
そして、前記表示処理部3には、表示モードとして画像表示モードが指定された場合、前記指定された画像表示モード及び前記指定された画像データ7に応じた本発明特有の表示処理を実行させる機能を追加している。
【0017】
次に、上記構成の本発明に係る生体情報モニタ10の動作を説明する。
測定部1で検出された患者の生体信号11は、演算部2において、それぞれ所定のディジタル処理を施されて生体情報データ12として表示処理部3に出力される。
入力部5で指定された表示モードが通常表示モードの場合、表示処理部3は前記生体情報データ12の波形および/または数値を前記表示部4に表示できるように処理し、表示部4には図2に示すように表示される。
【0018】
入力部5で指定された表示モードが画像表示モードの場合、重畳表示モードか非重畳表示モードかによって、前記表示処理部3の処理が異なる。
入力部5で、画像表示モードとして重畳表示モードが指定され、画像データ7としていずれかの図柄画像データが指定された場合には、表示処理部3は前記指定された図柄画像データと組み合わせる前記特定表示情報データを前記指定された図柄画像データの表示エリアに重畳して表示部4に表示する。
【0019】
この表示部4における表示状態を図3〜図5に示す。
図3〜図5では、図柄画像データとして、癒し効果が生じて親しみ易い「ぞう」と「パンダ」とが描かれているが、図柄画像データとしては、この画像に限られるものではなく、他の画像データでも良いことはいうまでもない。
【0020】
図3では、「ぞう」の画像の両耳の位置に、「心拍数(HR)を表す180」、「酸素飽和度(SpO値)を表す99」及び鼻の先の位置に「呼吸数(RR)を表す62」が画像と共に重畳表示されている。
【0021】
図4では、「ぞう」の鼻の先の位置に数値の表示エリアが明確には区別されていない点で相違しているが、図3の場合と実質的には同様である。
【0022】
図5では、図柄画像データが、「パンダ」であって、3匹の「パンダ」の腹部にそれぞれ、「心拍数(HR)を表す180」、「酸素飽和度(SpO値)を表す99」及び「呼吸数(RR)を表す62」が画像と共に重畳表示されている。
【0023】
図3〜5に示すような図柄に限定されるものではなく、また、図柄画像データとしては、単一の図柄のみではなく、複数の図柄を組み合わせても良いことはいうまでもない。
また、図柄画像データの表示エリアとしては、図3及び図5の如く表示エリアが明確に区別されているもののみではなく、図4の「ぞう」の鼻の先の位置の如く、表示エリアとして明確な区別がなくても良い。
【0024】
入力部5で、画像表示モードとして非重畳表示モードが指定され、画像データ7としていずれかの図柄画像データが指定された場合には、表示処理部3は図柄画像データのみを表示部4に表示する。
この表示部4における表示状態を図6に示す。
図6では、図柄画像データとして、癒し効果が生じて親しみ易い「パンダ」が表示され、図5では重畳して表示されていた「心拍数(HR)を表す180」、「酸素飽和度(SpO値)を表す99」及び「呼吸数(RR)を表す62」は表示されていない。
【0025】
この、図柄画像データのいずれかが指定され、非重畳表示モードを指定する状況は、病室に患者の親族等の面会者がいる場合に、生体情報モニタ10で計測される数値や波形の意味を十分には理解していない面会者や患者に時々刻々変化している表示をみせることは好ましくはないことに配慮している場合である。
この画像表示モードとして、非重畳表示モードの指定は、生体情報モニタ10に付属する入力部からの指定が可能であると共に、面会者の存在を認知できるナースセンター等の別の場所からの指定も可能である。
また、この非重畳表示モードでは、ベッドサイドモニタへの表示を省略された患者の表示データは、ベッドサイドモニタとは別に、ナースセンター等に設置されたモニタに表示を継続させることができる。
【0026】
入力部5によって、画像データ7として背景画像データのいずれかが指定された場合には、表示処理部3は背景画像データのみを表示部4に表示する。
この表示部4における表示状態を図7に示す。
図7では、風景等の画像データを表示部4に表示している。
図7では、風景画像に予め「面会モード」と文字が重畳されているが、必ずしも「面会モード」の文字は必要ではない。
また、患者の臨終後でも、生体情報モニタ10は継続して作動しているため、ベッドサイドモニタの表示部4に生体情報に関係のない数値変化や波形変化が表示される恐れがある。それを防止するために、表示部4に、風景画像のみを表示することによって、患者の親族等に余計なストレスを与えないことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例である生体情報モニタ10の機能ブロック図である。
【図2】通常表示モード画面(通常のモニタリング画面)の一例を示す図である。
【図3】画像表示モード画面の一例を示す図である。
【図4】画像表示モード画面の一例を示す図である。
【図5】画像表示モード画面の一例を示す図である。
【図6】画像表示モード画面の一例を示す図である。
【図7】画像表示モード画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…測定部、 2…演算部、 3…表示処理部、 4…表示部、 5…入力部、 6…画像記憶部、 7…画像データ、 8…選択部、 10…生体情報モニタ、 11…生体信号、 12…生体情報データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生体信号を演算して生体情報データを得る演算部と、
前記生体情報データを表示処理する表示処理部と、
表示部と、を備えた生体情報モニタであって、
更に、複数の画像データを記憶した画像記憶部と、
前記表示部に表示する表示モードと前記画像データとを指定する入力部と、
前記複数の画像データの中から前記入力部で指定された画像データを選択する選択部と、を備え、
前記表示モードとして画像表示モードが指定された場合、前記表示処理部において、前記指定された画像表示モード及び前記選択された画像データに応じた表示処理をして前記表示部に表示することを特徴とする生体情報モニタ。
【請求項2】
前記画像データには、背景画像データ種と前記生体情報データを表示する複数個の表示エリアが形成された図柄画像データ種とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の生体情報モニタ。
【請求項3】
前記表示処理部は、画像表示モードが重畳表示モードで、選択された画像データが図柄画像データ種の場合には、前記生体情報データに含まれる特定表示情報データを前記選択された図柄画像データの表示エリアに重畳して表示することを特徴とする請求項2に記載の生体情報モニタ。
【請求項4】
前記特定表示情報データは前記生体情報データに含まれる数値データであって、前記選択された図柄画像データの表示エリアに数値として重畳して表示することを特徴とする請求項3に記載の生体情報モニタ。
【請求項5】
前記表示処理部は、画像表示モードが非重畳表示モードで、選択された画像データが図柄画像データ種の場合には、当該図柄画像データのみを表示することを特徴とする請求項2に記載の生体情報モニタ。
【請求項6】
前記表示処理部は、選択された画像データが背景画像データの場合には、選択された背景画像データのみを表示することを特徴とする請求項2に記載の生体情報モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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