説明

生体情報処理装置および方法、プログラム、記録媒体、並びに基板

【課題】蛍光の強度から、より正確に、定量的に発現量を知ることができる。
【解決手段】 蛍光強度取得部22は、蛍光強度取得用ピックアップ41のフォトダイオード54が出力した各スポットからの蛍光強度の入力を受ける。蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、スポット位置−混合比率記憶部26に記憶されている各スポットにおけるプローブとダミープローブとの比率、および画像処理部24から供給された各スポットの画像から、蛍光の強度とそれに対応するハイブリダイズ量との関係を一義的に決定する蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式を算出する。本発明は、生体情報を処理する生体情報処理装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報処理装置および方法、プログラム、記録媒体、並びに基板に関し、特に、生体物質に関する情報の処理に適した生体情報処理装置および方法、プログラム、記録媒体、並びに基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNA(deoxyribonucleic acid)チップ若しくはDNAマイクロアレイ(以下、本明細書では両者を区別する必要がない場合、まとめて単にDNAチップと称する)の実用化が進んでいる。DNAチップは、多種・多数のDNAオリゴ鎖を、検出用核酸として基板表面に集積して固定したものである。DNAチップを用いて、基板表面のスポットに固定されたプローブと、細胞などから採取したサンプル中のターゲットとのハイブリダイゼーションを検出することにより、採取した細胞内における遺伝子発現を網羅的に解析することができる。
【0003】
DNAチップを用いた遺伝子発現解析におけるハイブリダイゼーション検出技術の向上に伴い、単に、遺伝子発現の有無を検出するだけでなく、遺伝子発現量の定量的な測定が可能になりつつある。例えば、ハイブリダイゼーション検出の際に蛍光強度を定量的に測定することにより、遺伝子発現量を示す定量的な数値を取得する技術は、一部実用化されている。
【0004】
従来、1つのエレメントに対して、エレメントの濃度(スポット中に含まれるエレメントの量)が異なるものを複数個チップ上にスポッティングするものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−121441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、遺伝子発現量が一定であっても、蛍光強度が変化する場合があり、正しい遺伝子発現量を求めることができるとは限らないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、蛍光の強度から、より正確に、定量的に発現量を知ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域の蛍光の強度を取得する取得手段と、取得された反応領域の蛍光の強度に基づいて、蛍光の強度と、第1の生体物質および第2の生体物質の生体反応の状態との関係を表す関係情報を生成する生成手段とを備える生体情報処理装置である。
【0009】
本発明の第1の側面においては、第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域の蛍光の強度が取得され、取得された反応領域の蛍光の強度に基づいて、蛍光の強度と、第1の生体物質および第2の生体物質の生体反応の状態との関係を表す関係情報が生成される。
【0010】
取得手段は、第1の生体物質と第2の生体物質とが生体反応している複数の反応領域の蛍光の強度を取得するようにすることができる。
【0011】
反応領域に照射する励起光の強度を制御する制御手段をさらに設け、取得手段は、制御された強度の励起光が照射された反応領域の蛍光の強度を取得するようにすることができる。
【0012】
取得手段は、第2の生体物質と第3の生体物質との比率が基板上の位置に基づいて決められている反応領域の蛍光の強度を取得するようにすることができる。
【0013】
第1の生体物質と第2の生体物質は、相互に相補的な塩基配列を有する遺伝子またはそれから派生する物質であり、関係情報は、第1の生体物質と第2の生体物質とのハイブリダイゼーションの情報であるようにすることができる。
【0014】
ハイブリダイゼーションの情報は、第1の生体物質と第2の生体物質とがハイブリダイズして得られる蛍光の強度から関数に基づき一義的に決定される情報であるようにすることができる。
【0015】
生成手段は、蛍光の強度と、第1の生体物質および第2の生体物質の生体反応の状態との関係をBスプライン曲線で表す関係情報を生成するようにすることができる。
【0016】
生成手段は、蛍光の強度の単位量の変化に対する、第1の生体物質および第2の生体物質の生体反応の状態の変化の大きさが所定の閾値を超える区間を示す区間情報を含む関係情報を生成するようにすることができる。
【0017】
生成手段は、関係情報の信頼性を表す信頼度情報をさらに生成するようにすることができる。
【0018】
信頼度情報は、第1の生体物質と第2の生体物質とが第1の測定時にハイブリダイズして得られる第1の蛍光の強度と、第2の測定時にハイブリダイズして得られる第2の蛍光の強度の設定された範囲の分散の逆数により規定されるようにすることができる。
【0019】
本発明の第2の側面は、第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域が設けられている基板である。
【0020】
本発明の第2の側面においては、複数の反応領域に、第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている。
【0021】
反応領域における第2の生体物質と第3の生体物質との比率が位置に基づいて決められているようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、発現量を知ることができる。特に、蛍光の強度から、より正確に、定量的に発現量を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本明細書において使用する用語の意味を説明する。
【0024】
プローブとは、DNAチップなどのバイオアッセイ用の基板に固定された生体物質であって、ターゲットと生体反応するものをいう。
【0025】
ターゲットとは、DNAチップなどのバイオアッセイ用の基板に固定された生体物質に生体反応する生体物質をいう。
【0026】
生体物質とは、蛋白質、核酸、糖などの生体内において生成される物質の他、相互に相補的な塩基配列を有する遺伝子またはそれから派生する物質を含む。
【0027】
生体反応とは、2以上の生体物質が生化学的に反応することをいう。その代表例は、ハイブリダイゼーションである。
【0028】
ハイブリダイゼーションとは、相補的な塩基配列構造を備える核酸間の相補鎖(二本鎖)形成反応をいう。
【0029】
図1は、本発明の実施形態の生体情報処理装置の構成例を表している。この生体情報処理装置1は、DNAチップ11、ピックアップ部21、蛍光強度取得部22、励起光強度設定部23、画像処理部24、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25、スポット位置−混合比率記憶部26、並びに蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部27により構成されている。
【0030】
DNAチップ11は、スポット12とガイド13を有している。図2は、DNAチップ11のより詳細な構成例を表している。
【0031】
DNAチップ11は、その基板11A上に、反応槽101Aと反応槽101Bを有している。基板11Aの図中下側の端部には、直線状の開始位置ガイド13Aが設けられ、図中上側の端部には、終了位置ガイド13Bが設けられている。図1のガイド13は、具体的には、この開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bにより構成される。
【0032】
反応槽101Aと反応槽101Bは、この開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bの間に配置されている。
【0033】
反応槽101Aと反応槽101Bには、反応領域としての複数のスポット12が形成されており、各スポット12には、生体物質(第2の生体物質)としてのプローブ111、並びに生体物質(第3の生体物質)としてのダミープローブ112がそれぞれ所定の比率で固定されている。反応槽101Aにサンプルが滴下された場合、プローブ111には、その塩基と相補的構成を有する塩基を有する生体物質(第1の生体物質)としてのターゲット111Aがハイブリダイズする。ダミープローブ112には、ターゲット111Aがハイブリダイズしない。
【0034】
ハイブリダイズした(生体反応した)生体物質としてのプローブ111とターゲット111Aには、インターカレータ113が結合されている。インターカレータ113は励起光が照射されると蛍光を発生する。
【0035】
図2には、このように、各プローブ111に対してターゲット111Aがハイブリダイズした状態が示されている。図2には便宜上、1つのスポット12に1つのプローブ111またはダミープローブ112のみが示されているが、実際には1つのスポット12に対して複数のプローブ111またはダミープローブ112が固定されている。また、各反応槽にはプローブ111またはダミープローブ112が固定された任意の数のスポット12が、予め定められた所定の位置に配置されている。
【0036】
プローブ111とハイブリダイズが飽和する十分な量のターゲット111Aがスポット12に滴下されると、ほぼ総てのプローブ111は、ターゲット111Aとハイブリダイズする。それぞれのスポット12におけるプローブ111とダミープローブ112との比率が既知なので、スポット12毎のハイブリダイズ量(正確には、スポット12内のプローブの総数に対するハイブリダイズしている本数の比率)がわかる。
【0037】
なお、反応槽101Aおよび反応槽101Bを個々に区別する必要がない場合、単に反応槽101と称する。
【0038】
図1のピックアップ部21は、蛍光強度取得用ピックアップ41、ガイド信号取得用ピックアップ部42、コントロール部43、対物座標計算部44、および畳み込み展開部45で構成されている。
【0039】
蛍光強度取得用ピックアップ41は、図2のDNAチップ11の反応槽101の画像を取得するピックアップである。これに対して、ガイド信号取得用ピックアップ部42は、開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bを読み取るためのピックアップである。
【0040】
蛍光強度取得用ピックアップ41は、対物レンズ51、プリズム52、半導体レーザ53、およびフォトダイオード54を有している。半導体レーザ53より出射されたレーザ光(励起光)は、プリズム52を介して対物レンズ51に入射され、対物レンズ51は、入射されたレーザ光を基板11A(スポット12)上に照射する。対物レンズ51はまた、スポット12からの光をプリズム52を介してフォトダイオード54に入射する。各スポット12には、複数のプローブ111またはダミープローブ112が固定されており、プローブ111とターゲット111Aがハイブリダイゼーションした場合、さらに両者にはインターカレータ113が結合される。すなわち、ダミープローブ112とターゲット111Aがハイブリダイゼーションしていない場合には、両者の間にインターカレータ113は存在せず、プローブ111とターゲット111Aがハイブリダイゼーションした場合においてのみ、両者の間にインターカレータ113が存在する。インターカレータ113は、励起光が照射されると蛍光を発生する。対物レンズ51により集光された蛍光はプリズム52により励起光と分離されて、フォトダイオード54に入射される。
【0041】
ハイブリダイゼーションしている量が多ければ、それだけインターカレータ113の量も多く、したがって、そこから発生する蛍光量も多い。
【0042】
それぞれのスポット12におけるプローブ111とダミープローブ112との総数を均等とすれば、上述したようにDNAチップ11のスポット12のそれぞれにおけるプローブ111とダミープローブ112との比率が既知なので、スポット12毎のハイブリダイズ量(正確には、スポット12内のプローブの総数に対するハイブリダイズしている本数の比率)がわかる。
【0043】
したがって、スポットの蛍光量とハイブリダイズ量との関係がわかる。これにより、蛍光の強度に基づいて、ハイブリダイゼーションの状態を測定する(ハイブリダイゼーションの情報を得る)ことが可能となる。
【0044】
なお、それぞれのスポット12におけるプローブ111とダミープローブ112との総数が既知であれば、スポットの蛍光量とハイブリダイズしている数との関係がわかる。
【0045】
コントロール部43は、半導体レーザ53の電流制御を行い、その励起光の強度を調整する。また、コントロール部43は、フォトダイオード54の出力(電流量変化)を読み取る。
【0046】
畳み込み展開部45は、フォトダイオード54より出力された電流量変化に基づく信号をコントロール部43から受け取り、ピクセル単位の画像データを生成する。
【0047】
ガイド信号取得用ピックアップ42は、対物レンズ61、プリズム62、半導体レーザ63、およびフォトダイオード64により構成されている。半導体レーザ63は、コントロール部43からの制御に基づいて、レーザ光を発生する(このレーザ光は、ガイド検出光として機能する)。プリズム62は、半導体レーザ63からのレーザ光を対物レンズ61に入射し、対物レンズ61はこのレーザ光を基板11Aに照射する。対物レンズ61は、基板11Aからの反射光を受光し、プリズム62はこの反射光を照射光から分離してフォトダイオード64に出射する。フォトダイオード64は、プリズム62より入射された反射光を光電変換し、ガイド信号としてコントロール部43に出力する。コントロール部43は、フォトダイオード64より入力されたガイド信号を対物座標計算部44に出力する。ガイド13(開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13B)は、基板11Aの他の領域に較べて反射率が高く(または低く)なるように形成されている。対物座標計算部44は、コントロール部43を介して、ガイド信号取得用ピックアップ42より供給されたガイド信号のレベルに基づいて、開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bの位置、並びに開始位置ガイド13Aから終了位置ガイド13Bに向けて等速度で移動されるガイド信号取得用ピックアップ42の位置(座標)を計算する。
【0048】
コントロール部43は、対物座標計算部44により計算されたガイド信号取得用ピックアップ42の位置に基づいて、蛍光強度取得用ピックアップ41(対物レンズ51)の位置を制御する。ガイド信号取得用ピックアップ42と蛍光強度取得用ピックアップ41は、相互に所定の位置関係に固定されており、蛍光強度取得用ピックアップ41を図2における開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bの間における所定の位置に配置することは、とりもなおさずガイド信号取得用ピックアップ42を開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bの間の所定の位置に配置することになる。
【0049】
蛍光強度取得部22は、蛍光強度取得用ピックアップ41のフォトダイオード54が出力した各スポット12(その座標(x,y))からの蛍光強度(pfx,y)の入力を受け、この蛍光強度に関するデータ(画像)を画像処理部24に出力する。蛍光強度取得部22はまた、蛍光強度取得用ピックアップ41の対物レンズ51の基板11A上の対物座標(x,y)並びに対物面積半径(r)を制御する制御信号をコントロール部43に出力する。蛍光強度取得部22はさらに、励起光強度設定部23からの設定に基づいて、励起光強度を制御する制御信号をコントロール部43に出力する。コントロール部43は、この制御信号に基づいて対物レンズ51を制御する。これにより、対物レンズ51が基板11A上の所定の座標(x,y)に配置され、対物レンズ51より出射されるレーザ光の照射範囲の半径(対物面積半径)(r)が所定の値に制御され、そのレーザ光の強度(励起光強度)が所定の値に調整される。
【0050】
励起光強度設定部23は、予め定めた励起光強度を蛍光強度取得部22に出力する。蛍光強度取得部22は、この励起光強度設定部23からの励起光強度に基づいて半導体レーザ53の電流を制御し、所定の強さの励起光を半導体レーザ53より出射させる。
【0051】
画像処理部24は、蛍光強度取得部22から供給された蛍光強度の画像から、既知であるスポット12の位置を示すテンプレートによりスポット12の画像と背景画像を分離し、ノイズを除去し、デブリ(観測を行う上において障害となる物質)の成分を除去し、スポット12毎の画像に分解するなどして、得られたスポット12毎の画像を蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25に供給する。
【0052】
蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、スポット位置−混合比率記憶部26に記憶されている各スポット12におけるプローブ111とダミープローブ112との比率、および画像処理部24から供給された各スポット12の画像から、蛍光の強度とそれに対応するハイブリダイズ量との関係を一義的に決定する蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式を算出する。また、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式の信頼度を算出する。
【0053】
蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、算出した蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式および信頼度を蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部27に供給する。
【0054】
なお、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式は、必ずしも式を構成せずとも、変換のためのデータであってもよい。
【0055】
スポット位置−混合比率記憶部26は、DNAチップ11のスポット12のそれぞれついて、スポット12に固定されているプローブ111とダミープローブ112との比率を記憶する。
【0056】
蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部27は、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25から供給された蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式および信頼度を記憶する。
【0057】
図3を参照して、遺伝子の発現量を定量的に測定する生体情報の処理を説明する。ステップS11において、実際に測定する前の事前作業が行われ、ステップS12において、遺伝子の発現量が定量的に測定される、実験過程が行われる。
【0058】
次に、図4を参照して、図3のステップS11の事前作業の処理について説明する。ステップS31において、プローブが設計される。
【0059】
ステップS32において、ステップS31の処理で設計されたプローブを固定したDNAチップが作成される。ステップS33において、生体情報処理装置1は、DNAチップに所定の励起光を照射して得られた蛍光の蛍光強度とそれに対応する、プローブとターゲットとのハイブリダイズ量との関係を一義的に決定する変換式である蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式を取得する。ステップS34において、作成したDNAチップに、合成した所定のターゲットを所定の量ずつ滴下して、蛍光強度を取得することにより、複数のプローブの量と、これに結合する複数のターゲットのそれぞれの量との関係を示すプローブ−ターゲット結合強度行列が取得される。
【0060】
図5は、図4のステップS33の蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式取得の処理を説明するフローチャートである。ステップS51において、プローブ111が設計される。また、プローブ111の塩基配列と相補的な塩基配列のターゲット111Aが設計される。なお、実験過程において用いるプローブをプローブ111として用いるようにしてもよい。ステップS52において、ダミープローブ112が設計される。ダミープローブ112は、ターゲット111Aとハイブリダイズしない塩基配列とされる。すなわち、ターゲット111Aに対する結合強度がより小さくなるように、ダミープローブ112が選択される。
【0061】
ステップS53において、プローブ111とダミープローブ112とを固定したDNAチップ11が作成される。
【0062】
ここで、プローブ111とダミープローブ112とが固定されるDNAチップ11のスポット12について説明する。図6乃至図8は、DNAチップ11上のスポット12の配置を説明する図である。
【0063】
図6で示されるようにスポットセット151は、所定の数のスポット12の集合である。1つのスポットセット151に属する複数のスポット12のそれぞれのプローブ111とダミープローブ112の数の比率(以下、プローブ比率と称する)は、相互に異なる。例えば、スポット121乃至126のプローブ比率は、20%を単位として変化させられる。
【0064】
より具体的には、プローブ111を含む溶液131およびダミープローブ112を含む溶液132が用意される。そして、図7で示されるように、プローブ111とダミープローブ112との数の比率が0:10になるように溶液131と溶液132が混合される。例えば、溶液131と溶液132の混合は、プローブ111およびダミープローブ112のモル数を基にして管理される。このように混合された溶液131と溶液132がスポット121に滴下されて、スポット121には、0:10であるプローブ比率のプローブ111とダミープローブ112が固定される。すなわち、スポット121には、ダミープローブ112だけが固定される。
【0065】
次に、プローブ111とダミープローブ112との数の比率が2:8になるように溶液131と溶液132が混合される。このように混合された溶液131と溶液132がスポット122に滴下されて、スポット122には、2:8であるプローブ比率のプローブ111とダミープローブ112が固定される。
【0066】
同様に、プローブ111とダミープローブ112との数の比率を20%を単位として変化させて、プローブ111とダミープローブ112との数の比率が4:6乃至10:0のいずれかになるように混合された溶液131と溶液132がスポット123乃至126のそれぞれに滴下される。スポット123乃至126には、それぞれ、4:6乃至10:0であるプローブ比率のプローブ111とダミープローブ112が固定される。
【0067】
図8は、スポットセット151の配置を説明する図である。スポットセット1511には、プローブ比率を、それぞれ、0:10、2:8、4:6、6:4、8:2、10:0とした6つのスポット12が図中の左から順に配置されている。スポットセット1511の上側のスポットセット1512には、プローブ比率を、それぞれ、4:6、6:4、8:2、10:0、0:10、2:8とした6つのスポット12が図中の左から順に配置されている。さらに、スポットセット1512の上側のスポットセット1513には、プローブ比率を、それぞれ、8:2、10:0、0:10、2:8、4:6、6:4とした6つのスポット12が図中の左から順に配置されている。
【0068】
すなわち、スポットセット1512のスポット12の配置は、スポットセット1511の左側の2つのスポット12を右側に移動したものと同様である。より詳細に説明すれば、スポットセット1511におけるスポット12のうち、左側の2つの、プローブ比率を0:10または2:8としたスポット12を、その順序を維持したまま、右側に移動してから、2つのスポット12分だけスポットセット151全体を移動させたものと同様にスポットセット1512のスポット12が配置される。言い換えれば、スポットセット1512のスポット12の配置は、スポットセット1511を2進数のデータとし、それぞれのスポット12をそのデータの1桁(1ビット)と見なした場合に、スポットセット1511に相当するデータを左側に2桁(2ビット)ローテイトシフトさせたときと同様とされる。
【0069】
同様に、スポットセット1513のスポット12の配置は、スポットセット1511の左側の4つのスポット12を右側に移動したものと同様である。
【0070】
また、スポットセット1511の下側のスポットセット1514には、プローブ比率を、それぞれ、10:0、8:2、6:4、4:6、2:8、0:10とした6つのスポット12が図中の左から順に配置されている。言い換えれば、スポットセット1514のスポット12の配置は、スポットセット1511のスポット12の配置を左右逆にしたものと同様である。
【0071】
スポットセット1514の下側のスポットセット1515には、プローブ比率を、それぞれ、6:4、4:6、2:8、0:10、10:0、8:2とした6つのスポット12が図中の左から順に配置されている。スポットセット1515の下側のスポットセット1516には、プローブ比率を、それぞれ、2:8、0:10、10:0、8:2、6:4、4:6とした6つのスポット12が図中の左から順に配置されている。
【0072】
すなわち、スポットセット1515のスポット12の配置は、スポットセット1514の左側の2つのスポット12を右側に移動したものと同様であり、スポットセット1516のスポット12の配置は、スポットセット1514の左側の4つのスポット12を右側に移動したものと同様である。
【0073】
このようにすることで、横1列に並ぶスポット12のそれぞれのプローブ比率が異なると共に、縦1列に並ぶスポット12のそれぞれのプローブ比率が異なるように、スポット12を配置することができる。このような配置とすることで、DNAチップ11におけるスポット12の位置による蛍光強度の揺らぎを求めることができる。
【0074】
以上のように、スポット12(反応領域)のプローブ111(第2の生体物質)とダミープローブ112(第3の生体物質)との比率は、DNAチップ11(基板)上の位置に基づいて決められている。
【0075】
ステップS54において、スポット位置−混合比率記憶部26は、スポット毎の、プローブ111とダミープローブ112との比率であるプローブ比率を記憶する。
【0076】
ステップS55において、DNAチップ11の各スポット12に、十分な量のターゲット111Aを含む溶液が滴下されて、プローブ111とターゲット111Aとがハイブリダイズさせられる。
【0077】
ステップS56において、励起光強度設定部23は、蛍光強度取得部22に対して、励起光の強度を初期値に設定する。蛍光強度取得部22は、励起光強度設定部23からの設定に基づいて、励起光強度を初期値とする制御信号をコントロール部43に出力する。コントロール部43は、この制御信号に基づいて蛍光強度取得用ピックアップ41の半導体レーザ53から出射される励起光であるレーザ光の強度(励起光強度)を初期値となるように調整する。
【0078】
ステップS57において、ピックアップ部21の蛍光強度取得用ピックアップ41は、コントロール部43の制御の基に、設定された強度の励起光をDNAチップ11に照射する。ステップS58において、ピックアップ部21は、励起光がDNAチップ11に照射されることにより生じた蛍光の強度を測定する。
【0079】
具体的には、蛍光強度取得部22は、コントロール部43を介して蛍光強度取得用ピックアップ41を駆動し、半導体レーザ53にレーザ光を励起光として出射させる。この励起光は、プリズム52を介して対物レンズ51に入射され、対物レンズ51は、これを基板11A上の反応槽101に照射する。
【0080】
インターカレータ113は励起光が照射されると蛍光を発生する。この蛍光が対物レンズ51により集光され、プリズム52を介してフォトダイオード54に入射される。フォトダイオード54は蛍光に対応する電流を出力する。コントロール部43は、この電流に対応する信号を畳み込み展開部45により画像信号に変換させ、変換により生成された蛍光強度に対応する信号を、蛍光強度取得部22に出力する。
【0081】
コントロール部43は、対物レンズ51の位置を開始位置ガイド13Aから終了位置ガイド13Bの方向に向けて移動させる。このとき、ガイド信号取得用ピックアップ42の半導体レーザ63が出射するガイド検出光としてのレーザ光が、プリズム62を介して対物レンズ61に入射され、対物レンズ61がこのガイド検出光を基板11Aに照射する。ガイド検出光の反射光の強度は、開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bに照射されたとき強くなる。この反射光が対物レンズ61を介してプリズム62に入射され、プリズム62からフォトダイオード64に入射される。対物座標計算部44はコントロール部43を介してフォトダイオード64からのガイド信号を取得し、この信号に基づいて、ガイド信号取得用ピックアップ42(したがって、それと一体化している蛍光強度取得用ピックアップ41)が基板11Aの開始位置ガイド13Aと終了位置ガイド13Bの間のいずれの位置に位置するのか、その座標を計算する。コントロール部43はその座標に基づいてガイド信号取得用ピックアップ42(蛍光強度取得用ピックアップ41)を開始位置ガイド13Aから終了位置ガイド13Bまで一定の速度で移動させる(走査させる)。
【0082】
このようにして、蛍光強度取得用ピックアップ41が、図2において、開始位置ガイド13Aから終了位置ガイド13Bの位置まで移動されるとともに、さらに、その走査位置が、開始位置ガイド13A(終了位置ガイド13B)と平行な方向(図中x座標方向)に1ピッチ分だけ移動され、新たな移動位置において同様に、開始位置ガイド13Aから終了位置ガイド13Bまで移動される。このようにして、反応槽101の全体(総てのスポット12)が走査され、各座標における画像信号が蛍光強度取得用ピックアップ41より出力される。
【0083】
このように、ステップS57およびステップS58において、コントロール部43は、DNAチップ11の総てのスポット12の全体について、設定された一定の強度の励起光を照射し、総てのスポット12における蛍光強度を取得できるように、蛍光強度取得用ピックアップ41(対物レンズ51)の位置(移動)を制御する。そして、ステップS57およびステップS58の処理により、ピックアップ部21は、総てのスポット12の蛍光強度の画像を蛍光強度取得部22に供給する。蛍光強度取得部22は、この画像を画像処理部24に供給する。
【0084】
ステップS59において、画像処理部24は、蛍光強度の画像からスポット12の画像を抽出する。例えば、画像処理部24は、蛍光強度の画像から、既知であるスポット12の位置を示すテンプレートによりスポット12の画像と背景画像を分離する。画像処理部24は、スポット12の画像と背景画像に分離された画像からノイズを除去する。さらに、画像処理部24は、デブリの成分を除去するなどして、スポット12毎の画像に分解する。画像処理部24は、スポット12毎の画像を蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25に供給する。
【0085】
ステップS60において、励起光強度設定部23は、蛍光強度取得部22に対して、次の励起光の強度を設定する。ステップS60において、励起光強度設定部23は、前回の励起光の強度と同じ、次の励起光の強度を設定するか、または、前回の励起光の強度と異なる、次の励起光の強度を設定する。
【0086】
ステップS61において、蛍光強度取得部22は、予め定めた所定の回数だけ測定したか否かを判定し、その回数だけ測定していないと判定された場合、手続きは、ステップS57に戻り、前回と異なる励起光の強度で、スポット12の画像を取得する処理を繰り返す。
【0087】
ステップS57乃至ステップS60の処理が繰り返されることにより、同じ強度の励起光を照射した場合のスポット12の蛍光の画像、および異なる強度の励起光を照射した場合のスポット12の蛍光の画像が取得されることになる。
【0088】
ステップS61において、所定の回数だけ測定したと判定された場合、ステップS62に進み、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、スポット位置−混合比率記憶部26に記憶されている各スポット12におけるプローブ比率、および画像処理部24から供給された各スポット12の画像から、蛍光の強度とそれに対応するハイブリダイズ量との関係を一義的に決定する蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)を算出する。さらに、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、信頼度confidencee(pf)を算出する。
【0089】
蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)および信頼度confidencee(pf)を蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部27に供給する。蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部27は、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25から供給された蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)および信頼度confidencee(pf)を記憶して、処理は終了する。
【0090】
図9は、ハイブリダイズ量と蛍光強度との関係の例を示す図である。図9において、横方向は、ハイブリダイズ量を示し、縦方向は、蛍光強度を示す。
【0091】
曲線171は、ハイブリダイズ量に対する蛍光強度を示す。図9で示される1本の曲線171は、所定の強さ(一定の強さ)の励起光について求められる。ハイブリダイズ量が0である場合の蛍光強度172は、ノイズである背景蛍光値を示す。このノイズは、例えば、ダミープローブ112とターゲット111Aとのミスハイブリダイズにより生じる。
【0092】
例えば、図6のスポット121には、ダミープローブ112だけが固定されているので、スポット121の画像から、ノイズである背景蛍光値を示す蛍光強度172を求めることができる。これにより、ミスハイブリダイズなどにより生じるノイズを蛍光強度から除去することができる。
【0093】
励起光の強度を変化させることによって、ハイブリダイズ量と蛍光強度との関係を示す複数の曲線が求められる。
【0094】
図10は、励起光の強度を変化させた場合の、ハイブリダイズ量と蛍光強度との関係を示す図である。図10において、横方向は、蛍光強度を示し、縦方向は、ハイブリダイズ量を示す。
【0095】
同図に示されるように、蛍光強度が与えられると対応するハイブリダイズ量は関数(曲線191乃至曲線194)に基づき一義的に決定される。ただし、同図に示されるように、図中最も上側に示される曲線191が、蛍光強度のレベルが最も弱い場合の曲線を表し、以下、より下側の曲線192、曲線193と、順次励起光強度のレベルが強くなり、最も下側の曲線194が励起光強度のレベルが最も強い場合の曲線を表している。
【0096】
図11で示されるように、各曲線191乃至194は、いずれも図中左側の端部の領域の部分191A乃至194Aと、図中右側の端部の領域の部分191B乃至194Bにおいて、蛍光強度のわずかな変化に対して、ハイブリダイズ量が著しく変化しているので、これらの領域においては、蛍光強度に対応するハイブリダイ量を一義的に決定することが困難になる。したがって、これらの部分191A乃至194A、並びに部分191B乃至194Bを除く中央の部分だけが、蛍光強度に対応するハイブリダイズ量の演算に利用される。
【0097】
例えば、各曲線191乃至194の微分値が求められる。その微分値が、外部から与えた閾値または予め定めた閾値を超えるか否かが判定される。微分値が閾値を超えると判定された部分191A乃至194A、並びに部分191B乃至194Bの区間が低信頼度区間とされる。各曲線191乃至194の残りの区間が高信頼度区間とされる。
【0098】
このように、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、蛍光の強度の単位量の変化に対する、ターゲット111A(第1の生体物質)およびプローブ111(第2の生体物質)の生体反応の状態の変化の大きさが所定の閾値を超える区間を示す区間情報を含む蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式(関係情報)を生成する。
【0099】
曲線191乃至194は、各スポット12の蛍光強度pfとハイブリダイズ量の関係を規定する式である蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)を表している。
【0100】
蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、このような、蛍光強度pfとハイブリダイズ量の関係を規定する式である蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)を算出する。例えば、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、Bスプライン曲線で表す蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)を算出する。モデル曲線としてのBスプライン曲線は、3次Bスプライン曲線を用いることができる。なお、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)をn次曲線で補間するようにしてもよい。
【0101】
また、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、信頼度confidencee(pf)を算出する。
【0102】
図12は、信頼度confidencee(pf)を説明する図である。信頼度confidencee(pf)は、次の式(1)で表される。
【0103】
confidencee(pf)=Wc×Wsat×variance(pf)-1 ・・・(1)
【0104】
式(1)における重み係数wcは、図11の曲線191乃至194の部分191A乃至194A,191B乃至194B以外の区間(高信頼度区間)の重み係数を表し、重み係数wsatは、図11の曲線191乃至194の部分191A乃至194A,191B乃至194Bの区間(低信頼度区間)の重みを表す。
【0105】
1つのDNAチップ11について、同じ励起光強度による2回の測定における対応するスポット12の対応するピクセルの蛍光強度を、1回目の測定の蛍光強度を横軸とし、2回目の測定の蛍光強度を縦軸とする座標空間にプロットすると、図12に示されるように、2回の測定の蛍光強度により規定される点211は傾きが45度の直線212の近傍に散在する。理想的には、対応するスポット12の対応する位置のピクセルの蛍光強度は一致するので、点211は、直線212上に位置することになる。しかしながら、実際にはばらつきが発生し、完全に直線212上に位置するわけではなく、その近傍に分布することになる。その分布214のばらつきは、蛍光強度が比較的小さい場合に大きく、大きい場合に小さくなる傾向がある。すなわち、蛍光強度が小さい値ph1の設定された範囲213においては、分散が比較的大きく、蛍光強度が値ph1より大きい値ph2では、分散の値がそれより小さくなり、蛍光強度がさらに大きい値ph3では、範囲213の分散が最も小さくなる。式(1)の分散(variance(pf))は、あらかじめ設定された所定の範囲213の内部に位置する点211の分散として計算された値とされる。すなわち、式(1)のconfidence(pf)(信頼度情報)は、2つの生体物質(第1の生体物質と第2の生体物質)が第1の測定時にハイブリダイズして得られる第1の蛍光強度と、第2の測定時にハイブリダイズして得られる第2の蛍光強度の設定された範囲の分散の逆数(1/variance(pf))により規定される。
【0106】
このように、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、信頼度confidencee(pf)を算出する。蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25は、ピクセルの蛍光強度に対するハイブリダイズ量と、ピクセルの蛍光強度に対する測定点の分散を曲線によってモデル化すると言える。信頼度confidencee(pf)を算出することにより、DNAチップ11におけるスポット12の位置による揺らぎを求めることができる。
【0107】
以上のように、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部25によって算出された蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)および信頼度confidencee(pf)が蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部27に記憶される。
【0108】
実験過程の処理において、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)に基づいて、蛍光の強度から、より正確に、定量的に発現量を知ることができるようになる。また、信頼度confidencee(pf)に基づいて、より信頼できる、定量的な発現量を知ることができるようになる。
【0109】
次に、実験過程の処理および実験過程の処理を実行する装置について説明する。
【0110】
遺伝子発現量の定量的な測定は、図13に示される実験過程処理装置301により行われる。
【0111】
実験過程処理装置301は、調整部321、ハイブリダイズ部322、取得部323、発現量推定部324、標準化部325、出力部326、および記憶部327により構成されている。
【0112】
調整部321はターゲットの調整を行う。ハイブリダイズ部322はプローブとターゲットとのハイブリダイズを行う。取得部323は蛍光強度を取得する。発現量推定部324は発現量の推定処理を行う。標準化部325はデータの標準化を行う。出力部326は発現プロファイルデータを出力する。記憶部327は発現プロファイルデータを記憶する。
【0113】
図14は、図13の実験過程処理装置301の一部を構成する生体情報処理装置の構成例を表している。図1で示される生体情報処理装置1と同様の部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0114】
この生体情報処理装置331は、DNAチップ351、ピックアップ部21、蛍光強度取得部352、励起光強度計算部353、ハイブリダイズ量推定部354、発現量計算部355、標準化部356、出力部357、発現プロファイルデータ記憶部358、表示部359Aを有するユーザインターフェース(UI)部359、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部360、並びに機械的学習部361により構成されている。
【0115】
なお、実験過程処理装置301の取得部323、発現量推定部324、標準化部325、出力部326および記憶部327が、生体情報処理装置331により構成されている。具体的には、取得部323は、ピックアップ部21、蛍光強度取得部352、励起光強度計算部353、および蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部360により構成され、発現量推定部324は、ハイブリダイズ量推定部354、発現量計算部355、および機械的学習部361により構成され、標準化部325は標準化部356により構成され、出力部326は出力部357により構成され、記憶部327は発現プロファイルデータ記憶部358により構成される。
【0116】
DNAチップ351は、スポット371とガイド372を有している。図15は、DNAチップ351のより詳細な構成例を表している。
【0117】
DNAチップ351は、その基板351A上に、発現解析用反応槽401と細胞数計数用反応槽402を有している。基板351Aの図中下側の端部には、直線状の開始位置ガイド372Aが設けられ、図中上側の端部には、終了位置ガイド372Bが設けられている。図14のガイド372は、具体的には、この開始位置ガイド372Aと終了位置ガイド372Bにより構成される。
【0118】
発現解析用反応槽401と細胞数計数用反応槽402は、この開始位置ガイド372Aと終了位置ガイド372Bの間に配置されている。
【0119】
発現解析用反応槽401には、反応領域としての複数のスポット371が形成されており、各スポット371には、生体物質としてのハイブリダイズ検証用プローブ411、発現解析用プローブ412、並びに発現標準化用コントロールプローブ413が固定されている。発現解析用反応槽401にサンプルが滴下された場合、ハイブリダイズ検証用プローブ411には、その塩基と相補的構成を有する塩基を有する生体物質としてのターゲット411Aがハイブリダイズする。同様に、発現解析用プローブ412には、その塩基と相補的構成を有する塩基を有する生体物質としてのターゲット412Aがハイブリダイズする。
【0120】
また、発現標準化用コントロールプローブ413には、その塩基と相補的構成の塩基を有する生体物質としてのターゲット413Aがハイブリダイズする。
【0121】
細胞数計数用反応槽402においては、生体物質としてのハイブリダイズ検証用プローブ414と細胞数計数用コントロールプローブ415が、それぞれ反応領域としてのスポット371に取り付けられている。細胞数計数用反応槽402にサンプルが滴下された場合、ハイブリダイズ検証用プローブ414には、その塩基と相補的構成の塩基を有する生体物質としてのターゲット414Aがハイブリダイズし、細胞数計数用コントロールプローブ415には、その塩基と相補的構成の塩基を有する生体物質としてのターゲット415Aがハイブリダイズする。
【0122】
ハイブリダイズした(生体反応した)生体物質としてのプローブとターゲットには、インターカレータ416が結合されている。インターカレータ416は励起光が照射されると蛍光を発生する。
【0123】
図15には、このように、各プローブに対してターゲットがハイブリダイズした状態が示されている。なお、図15には便宜上、1つのスポット371に1つのプローブのみが示されているが、実際には1つのスポット371に対して同一種類の複数のプローブが固定されている。また、各反応槽には同一種類のプローブが固定された任意の数のスポットが、予め定められた所定の位置に配置されている。
【0124】
図14のピックアップ部21は、蛍光強度取得用ピックアップ41、ガイド信号取得用ピックアップ42、コントロール部43、対物座標計算部44、および畳み込み展開部45で構成されている。
【0125】
蛍光強度取得部352は、蛍光強度取得用ピックアップ41のフォトダイオード54が出力した各スポット371(その座標(x,y))からの蛍光強度(pfx,y)の入力を受け、この蛍光強度に関するデータをハイブリダイズ量推定部354の励起光強度推定部381に出力する。蛍光強度取得部352はまた、蛍光強度取得用ピックアップ41の対物レンズ51の基板351A上の対物座標(x,y)、対物面積半径(r)、並びに励起光強度を制御する制御信号をコントロール部43に出力する。コントロール部43は、この制御信号に基づいて対物レンズ51を制御する。これにより、対物レンズ51が基板351A上の所定の座標(x,y)に配置され、対物レンズ51より出射されるレーザ光の照射範囲の半径(対物面積半径)(r)が所定の値に制御され、そのレーザ光の強度(励起光強度)が所定の値に調整される。
【0126】
蛍光強度取得部352は、コントロール部43から供給された蛍光強度を、励起光強度計算部353に出力する。励起光強度計算部353は、蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部360に記憶されている変換式に基づいて、プリスキャン時に蛍光強度取得部352から入力された蛍光強度に基づいて、最適な励起光強度を計算し、その計算して得られた励起光強度を蛍光強度取得部352に出力する。本スキャン時、蛍光強度取得部352は、この励起光強度計算部353からの励起光強度に基づいて半導体レーザ53の電流を制御し、所定の強さの励起光を半導体レーザ53より出射させる。
【0127】
ハイブリダイズ量推定部354は、励起光強度推定部381、作成部382、画像処理部383、検証部384、並びにハイブリダイズ量計算部385により構成されている。
【0128】
励起光強度推定部381は、蛍光強度取得部352より供給された蛍光強度に基づく画像データ、または発現プロファイルデータ記憶部358にあらかじめ記憶されている発現プロファイルデータなどの画像情報の入力を受け、必要に応じて励起光強度を推定する処理を行う。作成部382は励起光強度推定部381からのデータに基づいて、蛍光強度からハイブリダイズ量を一義的に決定する式hybridize(pf)を作成する。画像処理部383は、作成部382より入力された画像データを処理し、検証部384とユーザインターフェース部359に出力する。ユーザインターフェース部359は、画像処理部383より入力された画像を表示部359Aに表示する。画像処理部383は、ユーザインターフェース部359を介して、ユーザより指示される入力に基づいて、DNAチップ351の画像からデブリ(観測を行う上において障害となる物質)の成分を除去し、各スポット371毎の画像へ分解する処理を行う。
【0129】
検証部384は、画像処理部383より入力された画像データのうち、ハイブリダイズ検証用プローブ411,414のスポット371におけるハイブリダイズ量に基づいて、ハイブリダイズが正しく行われていることを検証する。
【0130】
ハイブリダイズ量計算部385は、スポット内領域を分割し、スポット内領域単位でハイブリダイズ値と信頼度の計算を行い、スポット単位でのハイブリダイズ値と信頼度を出力する。
【0131】
発現量計算部355は、ハイブリダイズ量計算部385からの出力に基づいて、プローブに対するターゲットの結合強度を求めることで、蛍光強度に対応する発現量を推定する。標準化部356は発現標準化用コントロールプローブ413と細胞数計数用コントロールプローブ415を利用した標準化処理を行う。出力部357は標準化されたデータを発現プロファイルデータ記憶部358に供給する。発現プロファイルデータ記憶部358は、出力部357より供給されたデータを、発現プロファイルデータとして記憶する。発現プロファイルデータ記憶部358に記憶されたデータは、必要に応じて、ユーザインターフェース部359に供給され、表示部359Aに表示される。発現量計算部355より出力されたデータも必要に応じて、表示部359Aに表示される。
【0132】
蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部360は、生体情報処理装置1によって取得された、蛍光強度とそれに対応する、プローブとターゲットとのハイブリダイズ量との関係を一義的に決定する変換式である蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式をあらかじめ記憶している。
【0133】
機械的学習部361は、機械的学習の手段としてのSVM(Support Vector Machine)391とスポット除去パターンデータベース392を有している。SVM391は学習モード時、ユーザインターフェース部359と発現プロファイルデータ記憶部358からのデータに基づいて学習を行い、学習結果をスポット除去パターンデータベース392に記憶させる。SVM391はまた、判定モード時、発現プロファイルデータ記憶部358からのデータを、スポット除去パターンデータベース392に記憶されているパターンに基づいて判定し、その判定結果をハイブリダイズ量計算部385に出力する。
【0134】
なお、SVMについては、Nello Cristianini, John Shawe-Taylor, An Introduction to Support Vector Machines and other kernel-based learning methods, Cambridgeに詳細な説明がある。
【0135】
また、機械的学習としては、SVMのほかにニューラルネットワークなどを採用することも可能である。
【0136】
次に、図13の実験過程処理装置301による、図3のステップS12の実験過程の処理を、図16のフローチャートを参照して説明する。
【0137】
最初に、ステップS311において、調整部321はターゲットを調整する。具体的には、細胞が含まれるサンプルが取り出され、その中から蛋白質を変性させて除去する処理が行われ、RNA(ribonucleic acid)の抽出、断片化、並びにDNA(deoxyribonucleic acid)の抽出、断片化によりターゲット(発現解析用プローブ412に対するターゲット412A)が生成される。
【0138】
ステップS312において、ハイブリダイズ部322はハイブリダイズする処理を実行する。具体的には、ステップS311の処理で生成されたターゲットが入った溶液に、さらにハイブリダイズ検証用プローブ411,414に対するターゲット411A,414A、発現標準化用コントロールプローブ413に対するターゲット413A、並びに細胞数計数用コントロールプローブ415に対するターゲット415Aが加えられ、この溶液を発現解析用反応槽401と細胞数計数用反応槽402に滴下することで、ターゲットとプローブとがハイブリダイズされる。そして、インターカレータ416が導入され、ハイブリダイズしたターゲットとプローブに結合され、図15に示されるようなDNAチップ351が得られる。同図に示されるように、発現解析用反応槽401のスポット371では、発現解析用プローブ412に対してターゲット412Aがハイブリダイズしている他、発現標準化用コントロールプローブ413に対してターゲット413Aがハイブリダイズしており、ハイブリダイズ検証用プローブ411に対してターゲット411Aがハイブリダイズしている。そして、それらの2本鎖結合したプローブとターゲットの間にはインターカレータ416が結合している。
【0139】
同様に、細胞数計数用反応槽402のスポット371においても、ハイブリダイズ検証用プローブ414に対してターゲット414Aがハイブリダイズしており、細胞数計数用コントロールプローブ415に対してターゲット415Aがハイブリダイズしている。そして、これらのハイブリダイズしたプローブとターゲットの間にも、インターカレータ416が結合されている。
【0140】
ステップS313において、取得部323は蛍光強度を取得する。具体的には、蛍光強度取得部352は、コントロール部43を介して蛍光強度取得用ピックアップ41を駆動し、半導体レーザ53にレーザ光を励起光として出射させる。この励起光は、プリズム52を介して対物レンズ51に入射され、対物レンズ51は、これを基板351A上の発現解析用反応槽401に照射する。
【0141】
インターカレータ416は励起光が照射されると蛍光を発生する。この蛍光が対物レンズ51により集光され、プリズム52を介してフォトダイオード54に入射される。フォトダイオード54は蛍光に対応する電流を出力する。コントロール部43は、この電流に対応する信号を畳み込み展開部45により画像信号に変換させ、変換により生成された蛍光強度に対応する信号を、蛍光強度取得部352に出力する。
【0142】
コントロール部43は、対物レンズ51の位置を開始位置ガイド372Aから終了位置ガイド372Bの方向に向けて移動させる。このとき、ガイド信号取得用ピックアップ42の半導体レーザ63が出射するガイド検出光としてのレーザ光が、プリズム62を介して対物レンズ61に入射され、対物レンズ61がこのガイド検出光を基板351Aに照射する。ガイド検出光の反射光の強度は、開始位置ガイド372Aと終了位置ガイド372Bに照射されたとき強くなる。この反射光が対物レンズ61を介してプリズム62に入射され、プリズム62からフォトダイオード64に入射される。対物座標計算部44はコントロール部43を介してフォトダイオード64からのガイド信号を取得し、この信号に基づいて、ガイド信号取得用ピックアップ42(したがって、それと一体化している蛍光強度取得用ピックアップ41)が基板351Aの開始位置ガイド372Aと終了位置ガイド372Bの間のいずれの位置に位置するのか、その座標を計算する。コントロール部43はその座標に基づいてガイド信号取得用ピックアップ42(蛍光強度取得用ピックアップ41)を開始位置ガイド372Aから終了位置ガイド372Bまで一定の速度で移動させる(走査させる)。
【0143】
このようにして、蛍光強度取得用ピックアップ41が、図15において、開始位置ガイド372Aから終了位置ガイド372Bの位置まで移動されるとともに、さらに、その走査位置が、開始位置ガイド372A(終了位置ガイド372B)と平行な方向(図中x座標方向)に1ピッチ分だけ移動され、新たな移動位置において同様に、開始位置ガイド372Aから終了位置ガイド372Bまで移動される。このようにして、発現解析用反応槽401と細胞数計数用反応槽402の全体が走査され、各座標における画像信号が蛍光強度取得用ピックアップ41より出力される。
【0144】
ステップS314において、発現量推定部324は発現量推定処理を実行する。この発現量推定処理の詳細は、図17を参照して後述するが、この処理によりハイブリダイズ量と信頼度の計算が行われ、発現量が計算される。
【0145】
次に、ステップS315において、標準化部325(標準化部356)により、データを標準化する処理が行われる。この標準化としては、発現標準化用コントロールプローブ413による標準化と、細胞数計数用コントロールプローブ415による標準化が行われる。
【0146】
さらに、ステップS316において、出力部326(出力部357)は、発現プロファイルデータを出力する。具体的には、以上のようにして得られた画像データが、記憶部327(発現プロファイルデータ記憶部358)に供給され、記録される。
【0147】
次に、図17のフローチャートを参照して、図16のステップS314の発現量推定処理について説明する。ステップS331において、励起光強度推定部381は画像情報を入力する。具体的には、蛍光強度取得部352より画像情報が入力される。ステップS332において、励起光強度推定部381は、ステップS331で入力された画像情報に励起光強度情報があるか(含まれているか)を判定する。
【0148】
励起光強度推定部381が蛍光強度取得部352より入力する画像情報は、セットとなる画像の枚数の他、各スポットの画像の励起光強度、縦横ピクセル数、および蛍光画像により構成されている画像データと、スポット位置テンテンプレート画像、スポット数、プローブ遺伝子インデックスなどにより構成されている共通データとからなる。
【0149】
したがって、少なくとも蛍光強度取得部352より供給される画像情報の場合、画像データに励起光強度が含まれているので、励起光強度情報があると判定される。これに対して、発現プロファイルデータ記憶部358からそこに記憶されている発現プロファイル画像が供給される場合、それが蛍光強度取得部352から供給され、記憶された画像である場合には上述したように励起光強度情報が存在するが、そうでない場合(他の装置から供給された画像データである場合)には、励起光強度情報が存在しないことがある。
【0150】
ステップS332において、励起光強度情報が存在しないと判定された場合、ステップS333において、励起光強度推定部381は、励起光強度を推定する処理を実行する。
【0151】
この励起光強度を推定する処理は、少なくとも2つの異なる強度の励起光に基づいて測定が行われた画像情報(画像データ)である場合に実行可能となる。励起光強度情報が存在する場合、または存在しないとしても、異なる少なくとも2つの励起光強度に基づく画像情報(画像データ)が存在しない場合、励起光強度を推定することができない。このため、これらの場合には、ステップS333の処理はスキップされる。
【0152】
次に、ステップS334において、作成部382は、入力された画像情報が複数の励起光強度で撮影した画像の画像情報かを判定する。複数の励起光強度で撮影した画像の画像情報である場合には、ステップS335において、作成部382は、蛍光強度に基づいてハイブリダイズ量を決定する式(2)(hybridize(pf))を作成する。
【0153】
【数1】

【0154】
ステップS334において、入力された画像データは、複数の励起光強度で撮影した画像の画像データではないと判定された場合には、ステップS335の処理は実行できないのでスキップされる。
【0155】
式hybridizee(pf)は、各スポットの蛍光強度とハイブリダイズ量の関係を規定する。蛍光強度が与えられると対応するハイブリダイズ量は関数に基づき一義的に決定される。ただし、励起光強度が変化すると、蛍光強度のレベルも変化する。
【0156】
式(2)中の式hybridizes(pfs)と式hybridizew(pfw)は、それぞれ、得られたデータのうちの、励起光強度が強い方の式hybridizee(pf)と、弱い方の式hybridizee(pf)を表している。
【0157】
次に、ステップS336において、画像処理部383は画像処理を行う。この処理により、DNAチップ351の画像からスポット境界を跨ぐデブリ領域が除去され、画像は各スポット毎の画像に分解される。
【0158】
ステップS337において、検証部384は、ハイブリダイズを検証する処理を実行する。具体的には、図15に示されるように、発現解析用反応槽401にはハイブリダイズ検証用プローブ411が、また細胞数計数用反応槽402にはハイブリダイズ検証用プローブ414が、それぞれスポット371に固定されている。ハイブリダイズ検証用プローブ411,414の蛍光値を測定することで、その蛍光値が、例えばあらかじめ設定されている基準値以上であれば、正しいハイブリダイズ処理が行われていることを検証することができる。
【0159】
ステップS338において、ハイブリダイズ量計算部385は、ハイブリダイズ量と信頼度の計算を行う。この処理によりスポット内領域にデブリが存在する場合、スポット内領域が複数の領域に分割され、各スポット内領域毎に、そして最終的にはスポット単位で、ハイブリダイズ値と信頼度が計算される。
【0160】
ステップS339において、発現量計算部355は、ステップS338の処理で、ハイブリダイズ量計算部385により計算されたハイブリダイズ値と信頼度に基づいて、発現量を計算する処理を実行する。この処理に基づいて、計算された(取得された)蛍光値に対応する発現量が計算される。
【0161】
このように、複数の遺伝子それぞれの発現量を定量的に測定することができる。
【0162】
以上、DNAチップのハイブリダイゼーションを測定する場合の実施形態を説明したが、本発明はDNAチップに限らず、各種の生体物質が、他の所定の生体物質と生体結合したかどうかを測定する場合に適用することが可能である。
【0163】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、生体情報処理装置1または生体情報処理装置331は、図18に示されるようなパーソナルコンピュータ901により構成される。
【0164】
図18において、CPU(Central Processing Unit)921は、ROM(Read Only Memory)922に記憶されているプログラム、または記憶部928からRAM(Random Access Memory)923にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM923にはまた、CPU921が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0165】
CPU921、ROM922、およびRAM923は、バス924を介して相互に接続されている。このバス924にはまた、入出力インタフェース925も接続されている。
【0166】
入出力インタフェース925には、キーボード、マウスなどよりなる入力部926、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部927、ハードディスクなどより構成される記憶部928、モデムなどより構成される通信部929が接続されている。通信部929は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0167】
入出力インタフェース925にはまた、必要に応じてドライブ930が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリなどのリムーバブルメディア931が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部928にインストールされる。
【0168】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0169】
この記録媒体は、図18に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disc)(商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア931により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM922や、記憶部928に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0170】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0171】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置(または特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物を意味し、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは問わない。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の実施形態の生体情報処理装置の構成例を表す図である。
【図2】DNAチップのより詳細な構成例を表す図である。
【図3】生体情報の処理を説明するフローチャートである。
【図4】事前作業の処理を説明するフローチャートである。
【図5】蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式取得の処理を説明するフローチャートである。
【図6】スポットの配置を説明する図である。
【図7】スポットの配置を説明する図である。
【図8】スポットの配置を説明する図である。
【図9】ハイブリダイズ量と蛍光強度との関係の例を示す図である。
【図10】ハイブリダイズ量と蛍光強度との関係の例を示す図である。
【図11】蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式hybridizee(pf)を説明する図である。
【図12】信頼度confidencee(pf)を説明する図である。
【図13】実験過程処理装置の構成例を表すブロック図である。
【図14】生体情報処理装置の構成例を表すブロック図である。
【図15】DNAチップの構成例を表す斜視図である。
【図16】実験過程の処理を説明するフローチャートである。
【図17】発現量推定処理を説明するフローチャートである。
【図18】パーソナルコンピュータの構成例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0173】
11 DNAチップ, 21 ピックアップ部, 22 蛍光強度取得部, 23 励起光強度設定部, 24 画像処理部, 25 蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式算出部, 26 スポット位置−混合比率記憶部, 27 蛍光強度−ハイブリダイズ量変換式記憶部, 111 プローブ, 112 ダミープローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、前記第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域の蛍光の強度を取得する取得手段と、
取得された前記反応領域の蛍光の強度に基づいて、蛍光の強度と、前記第1の生体物質および前記第2の生体物質の生体反応の状態との関係を表す関係情報を生成する生成手段と
を備える生体情報処理装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記第1の生体物質と前記第2の生体物質とが生体反応している複数の前記反応領域の蛍光の強度を取得する
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記反応領域に照射する励起光の強度を制御する制御手段をさらに備え、
前記取得手段は、制御された強度の前記励起光が照射された前記反応領域の蛍光の強度を取得する
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記第2の生体物質と前記第3の生体物質との比率が基板上の位置に基づいて決められている前記反応領域の蛍光の強度を取得する
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の生体物質と前記第2の生体物質は、相互に相補的な塩基配列を有する遺伝子またはそれから派生する物質であり、
前記関係情報は、前記第1の生体物質と前記第2の生体物質とのハイブリダイゼーションの情報である
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記ハイブリダイゼーションの情報は、前記第1の生体物質と前記第2の生体物質とがハイブリダイズして得られる蛍光の強度から関数に基づき一義的に決定される情報である
請求項5の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、蛍光の強度と、前記第1の生体物質および前記第2の生体物質の生体反応の状態との関係をBスプライン曲線で表す前記関係情報を生成する
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、蛍光の強度の単位量の変化に対する、前記第1の生体物質および前記第2の生体物質の生体反応の状態の変化の大きさが所定の閾値を超える区間を示す区間情報を含む前記関係情報を生成する
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項9】
前記生成手段は、前記関係情報の信頼性を表す信頼度情報をさらに生成する
請求項1の生体情報処理装置。
【請求項10】
前記信頼度情報は、前記第1の生体物質と前記第2の生体物質とが第1の測定時にハイブリダイズして得られる第1の蛍光の強度と、第2の測定時にハイブリダイズして得られる第2の蛍光の強度の設定された範囲の分散の逆数により規定される
請求項9の生体情報処理装置。
【請求項11】
第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、前記第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域の蛍光の強度を取得する取得ステップと、
取得された前記反応領域の蛍光の強度に基づいて、蛍光の強度と、前記第1の生体物質および前記第2の生体物質の生体反応の状態との関係を表す関係情報を生成する生成ステップと
を含む生体情報処理方法。
【請求項12】
第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、前記第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域の蛍光の強度の取得を制御する取得制御ステップと、
取得された前記反応領域の蛍光の強度に基づいて、蛍光の強度と、前記第1の生体物質および前記第2の生体物質の生体反応の状態との関係を表す関係情報を生成する生成ステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムが記録されている記録媒体。
【請求項14】
第1の生体物質に生体反応する第2の生体物質と、前記第1の生体物質に生体反応しない第3の生体物質とがそれぞれ所定の比率で固定されている複数の反応領域が設けられている基板。
【請求項15】
前記反応領域における前記第2の生体物質と前記第3の生体物質との比率が位置に基づいて決められている
請求項14の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−300797(P2006−300797A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124569(P2005−124569)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】