説明

生体情報処理装置および生体情報処理方法

【課題】生体情報の入力の手間を軽減すること。
【解決手段】生体情報処理装置は、生体情報の計測値のトレンドにおける計測時刻のいずれかを選択する時刻選択部と、選択された計測時刻を含む期間内の複数の計測時刻における複数の計測値を記憶装置から取得する取得部と、取得された複数の計測値を表示装置の画面に表示する表示部と、表示された複数の計測値のいずれかを選択する値選択部と、選択された計測時刻におけるトレンド内の計測値を、選択された計測値に変更する変更部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理装置および生体情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイタルデータは、一般に、医療、保健、福祉など、様々な目的で計測される。計測されたバイタルデータを処理する技術としては、これまで、様々なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、医療機関、特に医療機関の急性期医療部門では、患者の状態を正確に把握して適切な治療を施すために、バイタルデータのような生体情報が、継続的、定期的または不定期に計測され、管理される。また、近年では、各種機器および医療機関内設備の高度化および情報システム化が進んだことに伴って、それぞれの計測機器で計測されまたは取得された生体情報を一元管理するシステムの利用が増えてきている。
【0004】
このような管理システムでの生体情報収集方法の一例としては、マウスやキーボードなどの複数の入力機器を併用して、生体情報の計測値を入力する方法が挙げられる。また、他の例としては、計測機器と管理システムとをオンラインで結び計測値をオンラインで伝送することにより、計測値を管理システムに取得させる方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−312665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した生体情報収集方法には、幾つかの問題がある。例えば、複数の入力機器を併用して計測値の手入力を行う手法では、複数の入力機器の使い分けが、操作者(一般には、看護師)にとって、操作上の手間となる。また、計測機器から管理システムにオンライン入力を行う手法では、入力された計測値を画面に表示させ、医師または看護師がそれを確認する必要がある。確認の結果、入力された値の修正が必要になった場合は、何らかの入力機器を用いることにより手入力が行われることとなり、結局、前者の手法と同様に、操作上、煩雑な手間を要する。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、生体情報の入力の手間を軽減することができる生体情報処理装置および生体情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体情報処理装置は、生体情報の計測値のトレンドにおける計測時刻のいずれかを選択する時刻選択部と、選択された計測時刻を含む期間内の複数の計測時刻における複数の計測値を記憶装置から取得する取得部と、取得された複数の計測値を表示装置の画面に表示する表示部と、表示された複数の計測値のいずれかを選択する値選択部と、選択された計測時刻におけるトレンド内の計測値を、選択された計測値に変更する変更部と、を有する構成を採る。
【0009】
本発明の生体情報処理方法は、生体情報の計測値のトレンドにおける計測時刻のいずれかを選択するステップと、選択された計測時刻を含む期間内の複数の計測時刻における複数の計測値を記憶装置から取得するステップと、取得された複数の計測値を表示装置の画面に表示するステップと、表示された複数の計測値のいずれかを選択するステップと、選択された計測時刻におけるトレンド内の計測値を、選択された計測値に変更するステップと、を有するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生体情報の入力の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る生体情報管理システムの構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係るワークステーションの構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1に係るバイタルデータ処理の一例を示すフロー図
【図4】図3のバイタルデータ処理における計測値入力処理の一例を示すフロー図
【図5】図3のバイタルデータ処理の際の表示画面の要部を例示する図
【図6】本発明の実施の形態2に係るバイタルデータ処理の一例を示すフロー図
【図7】図6のバイタルデータ処理の際の表示画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る生体情報管理システムの構成を示す図である。生体情報管理システム1は、主に医療機関において、特にICU(intensive-care unit)や手術室のような急性期医療部門などにおいて、好適に使用することができる。また、生体情報管理システム1は、本発明の実施の形態1に係る生体情報処理装置としてのワークステーション10と、ワークステーション10と通信可能に接続している記憶装置としてのサーバシステム20とを有する。
【0014】
また、生体情報管理システム1は、人工呼吸器30やベッドサイドモニタ40、呼吸管理モニタ50、大静脈バルーンポンプ60、心拍出量計70などを含む各種の医療機器や計測機器と通信可能に接続されている。なお、生体情報管理システム1は、前述のもの以外の様々な医療機器や計測機器、あるいは医療機関内の様々な設備にも接続することができる。
【0015】
サーバシステム20は、ワークステーション10から入力されたデータを内部に記憶するほか、患者情報などの様々なデータも記憶することができる。
【0016】
以下、ワークステーション10の内部構成について、図2を用いて説明する。ワークステーション10は、表示装置102、表示処理部104、データ処理部106、実測データ通信部108、サーバデータ通信部110、操作処理部112、キーボード114、およびマウス116を有する。
【0017】
表示装置102は、例えばCRT(cathode ray tube)ディスプレイや液晶ディスプレイなどのような表示装置であり、表示処理部104からの入力信号が表示される画面を有する。
【0018】
表示部としての表示処理部104は、患者の属性情報を表示装置102の画面に表示するほか、その患者について計測されたバイタルデータをグラフ形式または表形式で、表示装置102の画面に表示する。グラフ形式では、バイタルデータの計測時刻および計測値がそれぞれX軸およびY軸として表示される。グラフの一例としては、バイタルデータのトレンドを示すトレンドグラフが挙げられる。トレンドは、バイタルデータの計測値の経時変動を意味するものであり、トレンドグラフは、トレンドを例えば折れ線グラフで表現するものである。なお、表形式でもトレンドを示すことができる。
【0019】
また、表示処理部104は、データ処理部106から入力されたバイタルデータの計測時刻および計測値を、画面のグラフまたは表において表示する。さらに、表示処理部104は、画面上に、様々なオブジェクト、例えば、カーソルやアイコン、マウスポインタ、マークなどを表示する。
【0020】
また、表示処理部104は、操作処理部112からの操作信号、またはデータ処理部106からの制御信号に応答して、画面の表示内容を制御することができる。
【0021】
実測データ通信部108は、例えばネットワークケーブルを介して各種の計測機器(例えば、図1のベッドサイドモニタ、呼吸管理モニタおよび心拍出量計)と通信可能に接続されており、これらの機器からバイタルデータの実測値を受信し、この実測値をデータ処理部106に出力する。ここで、バイタルデータの例としては、心拍数(HR:heart rate)や、収縮期血圧(SysBP:systolic blood pressure)、拡張期血圧(DiaBP:diastolic blood pressure)、収縮期非観血血圧(SysNIBP:systolic non-invasive blood pressure)、拡張期非観血血圧(DiaNIBP:diastolic non-invasive blood pressure)、呼吸数(RR:respiratory rate)、体温(T:temperature)、中心静脈圧(CVP:central venous pressure)などが挙げられる。
【0022】
なお、本実施の形態では、「実測値」なる語は、生体情報管理システム1においてバイタルデータの計測値として扱われる値のうち各種計測機器で実際に測定された値として定義される。よって、各種計測機器からオンラインで取り込まれる計測値は実測値である。一方、後述するようにデータ処理部106により決定される計測値は、各種計測機器からオンラインで取り込まれるものではない。このため、ごくまれに実測値と異なる可能性があるものの、通常は決定される計測値と実測値とは一致するため、決定される計測値は実測値として扱うことができる。ちなみに、「修正値」なる語は、生体情報管理システム1においてバイタルデータの計測値として扱われる値のうち、すでにサーバシステム20に保存されている計測値を修正するために操作者によって手入力された値を意味する。
【0023】
取得部としてのサーバデータ通信部110は、例えばネットワークケーブルを介してサーバシステム20と通信可能に接続されている。サーバデータ通信部110は、データ処理部106から入力された計測時刻およびそれに関連付けられた実測値または修正値をサーバシステム20に送信してサーバシステム20に記憶させる。ここで、実測値および修正値は、サーバシステム20においてはいずれも計測値として記憶される。また、サーバデータ通信部110は、サーバシステム20に記憶されているサーバデータ、すなわちバイタルデータの計測時刻および計測値を取得してデータ処理部106に出力する。
【0024】
データ処理部106は、決定部、制御部、変換部および変更部としての様々な機能を有する。データ処理部106は、実測データ通信部108から入力された実測値を、その実測値が計測された計測時刻と関連付ける。さらに、互いに関連付けられた計測時刻および実測値を、表示が必要な場合は表示処理部104に、保存が必要な場合はサーバデータ通信部110に、それぞれ出力する。
【0025】
また、データ処理部106は、サーバデータ通信部110から入力された計測時刻およびこれに関連付けられた計測値を、表示処理部104に出力する。なお、データ処理部106は、サーバデータ通信部110からの計測時刻およびそれに関連付けられた計測値を表示処理部104に出力する前に、必要に応じて変換したり編集したりすることができる。
【0026】
また、データ処理部106は、後述する指定操作の発生を示す操作信号が入力された場合に、その操作信号により指定された画面上の座標のX成分およびY成分を表示処理部104から取得し、取得したX成分およびY成分に対応するバイタルデータの計測時刻および計測値を決定する。ここで、決定した計測値は、実測値として扱うことができる。データ処理部106は、決定した計測時刻および実測値を、表示が必要な場合は表示処理部104に、保存が必要な場合はサーバデータ通信部110に、それぞれ出力する。なお、指定操作とは、操作者がバイタルデータを入力するためにマウス116のみで行う操作である。マウス116のみの操作によってバイタルデータを入力することを実現するバイタルデータ処理については、後で詳細に説明する。
【0027】
また、データ処理部106は、画面に表示されている計測値またはサーバシステム20に記憶されている計測値の修正を要求する操作に応じて、この計測値を修正値に修正することができる。
【0028】
また、データ処理部106は、制御信号を表示処理部104に出力して、画面上のグラフや表の表示形態の制御を行うことができる。
【0029】
操作処理部112は、時刻選択部および値選択部としての様々な機能を有する。操作処理部112は、例えばUSB(universal serial bus)ケーブルを介してキーボード114やマウス116などのような入力機器と通信可能に接続されている。操作処理部112は、操作者がキーボード114またはマウス116を操作したときに、その操作の内容を示す操作信号を生成して、生成した操作信号を表示処理部104およびデータ処理部106に出力する。
【0030】
例えば、操作内容が画面上のマークのドラッグアンドドロップである場合は、これを示す操作信号が、操作処理部112から表示処理部104およびデータ処理部106に入力されて、表示処理部104には、画面上のマークが移動して停止するように画面の表示を制御させ、データ処理部106には、マークの停止位置の座標を表示処理部104から取得させる。
【0031】
さらに、例えば、操作内容がキーボード114のテンキーを用いた修正値の入力である場合は、これを示す操作信号が、操作処理部112から表示処理部104およびデータ処理部106に入力されて、表示処理部104には、画面上の所定の入力欄に修正値が数字で表示されるように画面の表示を制御させ、データ処理部106には、修正対象の計測値を修正値に修正させる。
【0032】
以上、ワークステーション10の内部構成について説明した。なお、このワークステーション10は、内部で実行されるあらゆる処理を、機能的観点から、3種類の処理(すなわち、表示装置102の画面表示についての処理、バイタルデータの転送や変換、修正などについての処理、および入力機器操作についての処理)に大別し、それぞれの機能を実行するハードウェアを表示処理部104、データ処理部106および操作処理部112として別々に実装することにより形成されたものである。ただし、これらの機能は、ソフトウェアで実現することも可能である。例えば、それぞれの機能を実現するプログラムを予め例えばROM(read only memory)などの記録媒体に記録しておき、そのプログラムをCPU(central processing unit)によって動作させることでも、実現することができる。
【0033】
次いで、上記構成を有するワークステーション10におけるバイタルデータ処理について説明する。ここでは、操作者がマウス116のみを操作することによってバイタルデータの入力を行うことを実現するための処理について、図3、図4および図5を用いて説明する。図3は、バイタルデータ処理全体を示し、図4は、バイタルデータ処理内の計測値入力処理を示し、図5は、バイタルデータ処理の際の表示画面の要部を例示している。なお、図3および図4に示した手順は一例であり、手順に含まれる工程およびその順番などは種々変更可能である。
【0034】
まず、図3を参照する。ステップS1100では、表示処理部104が、バイタルデータの計測時刻および計測値をそれぞれX軸およびY軸として表示可能なバイタルデータ入力用グラフを生成し、ステップS1200では、生成したグラフ(図5の参照番号120)を表示装置102の画面に表示する。そして、ステップS1300では、計測値入力処理が行われる。この計測値入力処理は、図4に示されたステップS1310〜S1340からなる。
【0035】
ステップS1310では、入力対象項目(指定操作の対象生体情報)の選択が行われる。具体的には、表示処理部104が、入力対象項目の複数の候補を含む項目選択メニュー(図5の参照番号122)を、画面に表示する。なお、項目選択メニュー122は、バイタルデータ入力用グラフ120と同時に表示されてもよいし、操作者による何らかの計測値入力要求操作がバイタルデータ入力用グラフ120の表示中に検出されたときに表示されてもよい。
【0036】
ここで、項目選択メニュー122には、入力対象項目の候補としてのバイタルデータの名称(例えば「体温」)または略称(例えば「T」)と、各バイタルデータの計測値の入力可能範囲(例えば「32〜44」)とが示されている。これにより、計測値の誤入力の可能性を低減させることができる。なお、計測値の誤入力を一層軽減させるために、計測値の入力可能範囲に該当するグラフ領域の背景色を変色させてもよい。
【0037】
項目選択メニュー122が画面に表示された後、操作者が項目選択メニュー122中の例えば「T」のセルをマウス116のクリックにより選択する選択操作が行われると、操作処理部112は、そのような選択操作の発生を示す操作信号を表示処理部104およびデータ処理部106に出力する。選択操作の発生を示す操作信号が操作処理部112からデータ処理部106に入力されると、データ処理部106は、指定操作を待機する状態に移行する。
【0038】
ステップS1320では、表示処理部104が、表示グラフ120の座標を視覚化するマーク(図5の参照番号124)を表示グラフ120上に表示する。このように、選択操作が完了したときにマーク126が表示されるため、指定操作を待機する状態、言い換えれば、計測値の入力を待機する状態に移行したことを操作者に対して明確に通知することができる。本実施の形態では、マーク124として、X軸およびY軸にそれぞれ沿った双方向矢印を交差させてなる十字型矢印が用いられている。表示処理部104は、表示されたマーク124の座標(例えば、2つの双方向矢印が交差する座標)のX成分およびY成分をそれぞれ認識している。なお、使用可能なマーク124の形状は図示されたものだけに限定されない。
【0039】
ステップS1330では、表示処理部104は、入力対象項目となったバイタルデータの名称を表す情報(図5の参照番号126)を表示グラフ120上に表示する。本実施の形態では、情報126として、入力対象項目となったバイタルデータの略称を示すアイコンが用いられている。このように、項目の名称を表す情報126を画面に表示させることにより、計測値の誤入力の可能性を低減させることができる。なお、使用可能な情報126の種類は図示されたものだけに限定されない。
【0040】
ステップS1340では、計測値の対応座標の指定が行われる。指定操作は、操作者が表示グラフ120の座標をマウス116で指定する操作を意味する。指定操作は、例えば、マウス116でマーク124を所望の座標にドラッグアンドドロップした後、所定位置でワンクリックまたはダブルクリックすることにより実現される。あるいは、マウス116でマーク124を所望の座標にドラッグアンドドロップした後、所定時間放置することにより実現される。なお、指定操作の具体的手順は、前述のものだけに限定されるべきではなく、他の様々な手順もあり得る。
【0041】
操作処理部112は、指定操作が行われると、指定操作の内容を示す操作信号を生成して、表示処理部104およびデータ処理部106に出力する。表示処理部104は、この操作信号に従って、画面上のマーク124を移動させる。データ処理部106は、この操作信号が入力されると、指定操作によって指定された座標のX成分およびY成分を表示処理部104から取得し、取得したX成分およびY成分にそれぞれ対応するバイタルデータの計測時刻および計測値を決定する。図5に示した例では、マーク124の座標のX成分に対応する計測時刻および計測値はそれぞれ「10:05」、「39.0℃」に決定される。決定された計測時刻および計測値は、データ処理部106からサーバデータ通信部110を介してサーバシステム20に保存される。
【0042】
以上のようなバイタルデータ処理により、マウス116のみを利用してバイタルデータの入力を行うことができる。
【0043】
ところで、図5の表示グラフ120において、指定操作により決定可能な計測時刻の時間間隔は、例えば1分に予め設定されている。この時間間隔は、複数の入力対象項目に対して個別に設定可能である。例えば、体温については1分に、呼吸数については2分に、それぞれ予め設定することができる。したがって、データ処理部106は、入力対象項目の切り替えにより、指定操作により決定可能な計測時刻の時間間隔を切り替える制御を行うことができる。こうすることで、多数の入力対象項目について、ある計測時刻における計測値を立て続けに入力する場合に、この時間間隔を、入力対象項目の切り替えに伴っていちいち変更する手間を省くことができ、バイタルデータの入力操作を一層簡略化することができる。なお、この時間間隔は、操作者の操作によって適宜変更可能である。
【0044】
また、画面に表示可能な表示グラフには、前述したようなバイタルデータ入力用グラフだけでなく、トレンドグラフもある。トレンドグラフでは、操作者によって選択可能な多様な期間における計測値のトレンドつまり経時変動を示すことができる。そこで、データ処理部106は、サーバデータ通信部110から計測時刻およびこれに関連付けられた計測値を取得した後、取得した計測時刻を、トレンドグラフにおいて表示可能な計測時刻の時間間隔に適合した値に変換して、そして、変換された計測時刻と取得された計測値とを表示処理部104に出力する。そして、表示処理部104は、入力された計測値を、変換後の計測時刻における計測値として画面に表示する。
【0045】
このような構成によって得られる利点について、図5のように入力された体温を例に挙げて説明する。図5では、10:05に計測された体温が39.0℃である旨の入力がなされる。このデータは、サーバシステム20に保存される。このデータを、体温のトレンドを毎時0分、15分、30分および45分の15分刻みで示すトレンドグラフに表示する場合、10:05は表示不可能である。そこで、データ処理部106は、10:05を、10:00に変換する。その結果、トレンドグラフでは、10:00での体温が39.0℃であったものとして表示される。これにより、トレンドグラフの外観を良好に保つことができると同時に、正確な計測時刻を保存しておくこともできる。
【0046】
以上のように、本実施の形態によれば、表示グラフの座標をマウスで指定する指定操作により、指定された座標のX成分およびY成分に対応するバイタルデータの計測時刻および計測値を決定するため、マウスとキーボードとを使い分けることなくマウスだけでバイタルデータの計測値の入力を行うことができ、入力の手間を軽減させることができる。さらに、キーボードの利用頻度を低減させることができる。特に、例えば急性期医療部門のような環境では、ワークステーションの省スペース化などの目的で、通常時はキーボードが引き出しに格納されていることがあるため、計測値入力の度にキーボードを取り出すのは面倒である。これに対し、本実施の形態の上記構成によりキーボードの利用頻度を低減させることで、このような面倒な作業を省くことができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、ポインティングデバイスとしてマウスを用いる例を説明した。ただし、マウスの代わりに様々なポインティングデバイスを使用することが可能である。例えば、表示装置としてタッチパネルが用いられる場合は、スタイラスペンをポインティングデバイスとして用いることができる。あるいは、CRT装置のような走査線方式の表示装置が用いられる場合は、ライトペンをポインティングデバイスとして用いることができる。あるいは、本実施の形態の生体情報処理装置がノート型PC(personal computer)に設けられている場合は、ノート型PCに装備されているポインティングスティック、トラックボールまたはタッチパッドをポインティングデバイスとして用いることができる。あるいは、ペンタブレットが前述のキーボード114およびマウス116と同様に例えばUSBケーブルを介して通信可能に接続されている場合は、ペンタブレットをポインティングデバイスとして用いることができる。
【0048】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る生体情報処理装置について説明する。本実施の形態の生体情報処理装置の基本構成は、実施の形態1において説明した生体情報処理装置と同一である。よって、本実施の形態の生体情報処理装置の各構成要素についての詳細な説明は省略し、特定の構成要素に言及するときは、図2において同様のまたは対応する構成要素と同一の参照番号を付記する。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態2に係るバイタルデータ処理を示すフロー図である。なお、このバイタルデータ処理手順は一例であり、この手順に含まれる工程およびその順番などは種々変更可能である。
【0050】
まず、ステップS2100では、トレンドの生成が行われる。具体的には、サーバデータ通信部110が、サーバシステム20から、ある患者についてのバイタルデータの過去の一定期間内の計測時刻およびそれに対応する計測値を受信してこれらをデータ処理部106に入力する。そして、データ処理部106が、サーバデータ通信部110から入力された計測時刻およびそれに関連付けられた計測値を用いて、トレンドを生成する。そして、表示処理部104が、生成されたトレンドを表示装置102の画面上に表示する。ここで、トレンドに含まれる確認対象項目としてのバイタルデータ(言い換えれば、修正可能なバイタルデータ)は、対象患者に対して予めサーバシステム20に登録されたものを含む。例えば、確認対象項目は、心拍数(HR)、収縮期血圧(SysBP)、拡張期血圧(DiaBP)、収縮期非観血血圧(SysNIBP)、拡張期非観血血圧(DiaNIBP)、呼吸数(RR)、体温(T)および中心静脈圧(CVP)を含む。また、トレンド作成の対象期間は任意に設定可能である。
【0051】
ステップS2200では、日時の指定、つまりバイタルデータを計測した日付および時刻の指定が行われる。具体的には、操作者がキーボード114またはマウス116を用いて日時(例えば、2006年1月23日の12:00)を指定する操作を行う。指定される日時は、生成されたトレンドに含まれる計測値に対応する操作処理部112は、この操作の内容に基づいて操作信号を生成し、生成した操作信号を表示処理部104およびデータ処理部106に出力する。
【0052】
ステップS2300では、サーバデータの取得が行われる。具体的には、データ処理部106が、指定された日時を中心時刻としてその前後の2分間を含む期間(つまりこの期間の長さは5分)内のすべての計測時刻における計測値を、サーバデータ通信部110を介してサーバシステム20から取得する。また、このときに取得される計測値は、予め確認対象項目として登録されたバイタルデータの計測値である。取得された計測時刻および対応する計測値は、表示処理部104に出力される。
【0053】
ステップS2400では、表示処理部104が、データ処理部106から入力された計測時刻および計測値を、確認対象項目の一覧として表示装置102の画面に表示する。このとき、入力された計測時刻および計測値は、上記の5分間の期間よりも前の計測時刻における前回値としての計測値とともに、表形式で画面に表示される。図7は、表示画面の一例を示す。この表は、独立したウインドウにおいて表示されても、トレンドグラフと同じウインドウ内で表示されてもよい。なお、図7に示した表のように、表示処理部104は、計測機器からオンラインで取り込まれたもの以外の計測値、つまり、操作者により手入力された修正値や、実施の形態1で説明した指定操作により決定された測定値を、太字で表示することができる。
【0054】
ステップS2500では、表示された一覧から計測値の選択が行われる。具体的には、操作者がマウス116を用いて画面上のマウスポインタを移動させ、選択したい計測値が記入されたセルにてクリックする操作を行う。項目毎に選択される計測値の個数は、1個でも複数個でも0個でもよい。操作処理部112は、この操作を認識することにより、計測値の選択を行う。そして、この操作を示す操作信号を表示処理部104およびデータ処理部106に出力する。図7に示す例では、操作者は、マウス116の操作により、「11:59」の心拍数「85」、「12:00」の収縮期血圧「120」、拡張期血圧「82」および呼吸数「14」、ならびに「12:02」の中心静脈圧「8」を選択する。表示処理部104は、表内の該当するセルの背景色を変色させてこれらのセルを目立たせる。データ処理部106は、この選択操作によって選択された計測時刻および計測値を、操作信号から取得する。
【0055】
ステップS2600では、計測値選択が確定されたか否かが判定される。具体的には、操作者がマウス116を用いて画面上のマウスポインタを移動させ、「閉じる」または「保存」のボックスにてクリックする操作を行う。操作処理部112は、この操作を認識することにより、「閉じる」または「保存」のいずれかを選択する。そして、この操作を示す操作信号を表示処理部104およびデータ処理部106に出力する。
【0056】
「保存」がクリックされた場合(S2600:YES)、データ処理部106が、ステップS2100にて生成されたトレンド」内の、指定された日時の計測値を、ステップS2600にて選択された計測値に変更する(ステップS2700)。また、表示処理部104は、ステップS2400にて表示された表を画面から消すとともに、変更されたトレンドに基づいてトレンドグラフを画面に表示する。一方、「閉じる」がクリックされた場合(S2600:NO)、データ処理部106は、計測値の変更を行わない。また、表示処理部104は、ステップS2400にて表示された表を画面から消す。
【0057】
以上のようなバイタルデータ処理により、様々な種類のバイタルデータの計測値の確認作業を簡易化することができる。
【0058】
なお、上記のステップS2400において、一覧を表示する際に、データ処理部106が、各確認対象項目について、今回値の候補となっている5分間内の計測値のうち再頻値または平均値に最も近い値を有するものを特定し、表示処理部104が、特定された計測値の記入されたセルの背景色を変色させることによって、操作者の確認および変更を簡単化するようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、各実施の形態において説明した構成や構造、数値、用途などは一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更および修正が可能であることは明らかである。例えば、実施の形態1、2のそれぞれにおける特有の特徴を適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 生体情報管理システム
10 ワークステーション
20 サーバシステム
102 表示装置
104 表示処理部
106 データ処理部
108 実測データ通信部
110 サーバデータ通信部
112 操作処理部
114 キーボード
116 マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報の計測値のトレンドにおける計測時刻のいずれかを選択する時刻選択部と、
選択された計測時刻を含む期間内の複数の計測時刻における複数の計測値を記憶装置から取得する取得部と、
取得された複数の計測値を表示装置の画面に表示する表示部と、
表示された複数の計測値のいずれかを選択する値選択部と、
選択された計測時刻におけるトレンド内の計測値を、選択された計測値に変更する変更部と、
を有することを特徴とする生体情報処理装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記期間より前の計測時刻における計測値を前回値として表示する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記期間の中心時刻は、選択された計測時刻であり、
前記取得部は、前記期間内のすべての計測時刻における複数の計測値を前記記憶装置から取得する、
ことを特徴とする請求項2記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、複数の修正可能生体情報の各々について前記複数の計測値を取得し、
前記表示部は、取得された複数の計測値を、前記複数の修正可能生体情報の一覧として前記画面に表示する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
生体情報の計測値のトレンドにおける計測時刻のいずれかを選択するステップと、
選択された計測時刻を含む期間内の複数の計測時刻における複数の計測値を記憶装置から取得するステップと、
取得された複数の計測値を表示装置の画面に表示するステップと、
表示された複数の計測値のいずれかを選択するステップと、
選択された計測時刻におけるトレンド内の計測値を、選択された計測値に変更するステップと、
を有することを特徴とする生体情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86034(P2012−86034A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275923(P2011−275923)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2006−286661(P2006−286661)の分割
【原出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】