説明

生体情報検出装置

【課題】 生体信号の検出漏れや誤検出を抑え、より正確に生体の振動を検出できる生体情報検出装置を提供する。
【解決手段】 生体情報検出装置1は、生体を支持する支持体2に配置され、検出される振動に応じた信号を出力する複数の検出部10と、検出対象とする生体の振動に対応した所定の周波数範囲の信号を抽出する抽出部20と、抽出部20の各々により抽出された信号から各々の特徴点の振動タイミングを検出するタイミング検出部30と、タイミング検出部により検出される振動タイミングである記憶振動タイミングを記憶するタイミング記憶部40と、検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合するか否かを判定する判定部50と、検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合する場合に検出振動タイミングを生体の生体情報として出力するタイミング出力部60とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸、心拍および体動等の生体振動を含む生体情報を検出する生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド、マットおよびシート等の支持体に支持される生体の呼吸、心拍および体動等の生体振動を検出する生体情報検出装置として、生体より発生した圧力変動を検出する感圧手段と、感圧手段を生体の圧力を受ける受圧部に設置し、感圧手段の信号を処理して生体信号を検出する制御手段とを備え、感圧手段は受圧部で部分的に設置密度を異ならせて設置した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−185409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の生体情報検出装置では、例えば、ベッドに感圧手段を設置する場合、必要な信号を得やすい部分、つまり呼吸の発生タイミングを検出するなら胸部の近傍となる位置に感圧手段の設置密度を高くなるよう設置される。しかし、感圧手段の設置密度の低い箇所に生体が位置する場合では、所望の生体信号を検出し難くなる。よって、生体信号の発生タイミングの検出漏れや誤検出を生じる問題がある。
【0005】
また、同一の振動源からの生体振動を、感圧手段の振動源の近傍で検出し、さらに、感圧手段の振動源から離れた部分で、振動源から伝搬した振動を検出するというように、別々の位置・時間で重複検出がなされて誤検出につながるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、生体信号の検出漏れや誤検出を抑え、より正確に生体振動を検出できる生体情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の課題解決手段は、生体情報検出装置は、生体を支持する支持体に配置され、検出される振動に応じた信号を出力する複数の検出部と、前記各検出部から出力された信号ごとに、検出対象とする前記生体の振動に対応した所定の周波数範囲の信号を抽出する抽出部と、前記抽出部の各々により抽出された信号から各々の特徴点の振動タイミングを検出振動タイミングとして検出するタイミング検出部と、前記タイミング検出部により検出された前記検出振動タイミングを記憶振動タイミングとして記憶するタイミング記憶部と、前記検出振動タイミングが前記記憶振動タイミングに適合するか否かを判定する判定部と、前記検出振動タイミングが前記記憶振動タイミングに適合する場合に少なくとも一つの前記検出部について検出された前記検出振動タイミングを前記生体の生体情報として出力するタイミング出力部と、を備えたことである。
【0008】
また、第2の課題解決手段は、前記タイミング検出部により検出された前記検出振動タイミングに応じて前記記憶振動タイミングを更新するタイミング更新部をさらに備えたことである。
【0009】
また、第3の課題解決手段は、前記タイミング更新部は、前記タイミング検出部により検出された前記検出振動タイミングの各々について、複数の前記検出振動タイミングの特徴点が所定範囲内であるときは、前記複数の検出振動タイミングに応じて前記記憶振動タイミングを更新することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、判定部により、検出対象とする生体の振動に応じて各検出部から出力された信号から所定の周波数範囲を抽出した信号の検出振動タイミングが、検出振動タイミングを記憶する記憶振動タイミングに適合するか否かが判定され、タイミング出力部により検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合する場合に少なくとも一つの検出部について検出された検出振動タイミングを生体の生体情報として出力されるため、生体の振動以外の要因による振動(ノイズ)を除いて検出対象とする生体の振動をより正確にとらえられる。
【0011】
また、タイミング検出部により検出された検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新されるため、生体の振動であるにも関わらず各検出部により検出された検出振動タイミングがタイミング記憶部に記憶された記憶振動タイミングに適合しないような場合でも、各検出部により検出された検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新可能となる。そして、検出振動タイミングと更新された記憶振動タイミングとが比較可能となり、あらかじめ記憶された記憶振動タイミングにとらわれず、生体の振動をより正確に検出できる。
【0012】
また、タイミング検出部により検出された検出振動タイミングの各々について、複数の検出振動タイミングの特徴点が所定範囲内であるときは、複数の検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新されるため、実際に抽出された信号の特徴点の振動タイミングに合わせてより正確な特徴点の振動タイミングに記憶振動タイミングを更新可能となる。また、複数の特徴点が所定範囲外の特徴点を含む場合には記憶振動タイミングが更新されないため、実際に抽出された信号の特徴点の振動タイミングから遠ざかる方向への記憶振動タイミングの更新は行われない。よって、さらに正確に実際の生体の振動を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】生体情報検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】生体情報検出装置を車両用シートに適用した例を示す説明図である。
【図3】第一実施例に係る生体情報検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】胸式呼吸を行っている生体の振動を測定した場合に第一ローパスフィルタ〜第五ローパスフィルタから出力される信号を示すグラフである。
【図5】腹式呼吸を行っている生体の振動を測定した場合に第一ローパスフィルタ〜第五ローパスフィルタから出力される信号を示すグラフである。
【図6】第二実施例に係る生体情報検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本実施例に係る生体情報検出装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
生体情報検出装置1は、生体を支持する支持体2に配置され、検出される振動に応じた信号を出力する複数の検出部10と、各検出部10から出力された信号ごとに、検出対象とする生体の振動に対応した所定の周波数範囲の信号を抽出する抽出部20と、抽出部20の各々により抽出された信号から各々の特徴点の振動タイミングを検出振動タイミングとして検出するタイミング検出部30と、タイミング検出部30により検出された検出振動タイミングを記憶振動タイミングとして記憶するタイミング記憶部40と、検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合するか否かを判定する判定部50と、検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合する場合に少なくとも一つの検出部10について検出された検出振動タイミングを生体の生体情報として出力するタイミング出力部60と、を備える。
【0017】
検出部10は、生体を支持する支持体に複数設けられる。検出部10には、呼吸、心拍、体動などの生体による振動に応じて電気信号を出力する振動センサ、生体の振動により検出部10にかかる圧力に応じて電気信号を出力する圧力センサなどが用いられる。
【0018】
抽出部20は、検出部10により出力された検出信号から、呼吸、心拍、体動などの生体の振動について予測される周波数の最小値から最大値までの周波数範囲の全部または一部(所定周波数範囲)の電気信号を抽出した信号を出力する。抽出部20がローパスフィルタとして機能する場合、カットオフ周波数は、少なくとも、呼吸、心拍、体動などの生体の振動について予測される周波数の最小値より高く設定される。
【0019】
カットオフ周波数が、呼吸、心拍、体動などの生体の振動について予測される周波数の最大値より高く設定されると、生体の振動について予測される最小値から最大値までの周波数範囲の電気信号が抽出部20を通過する。抽出部20がバンドパスフィルタとして機能する場合、通過させる周波数範囲は、呼吸、心拍、体動などの生体の振動について予測される周波数の最小値から最大値までの全部または一部を含むように設定される。
【0020】
タイミング検出部30は、抽出部20の各々により抽出された信号から、各々の特徴点の振動タイミングである検出振動タイミングを検出する。特徴点としては、例えば、信号の極値(ピーク)、信号の電圧が負から正に切り替わる点、また、信号の極値(ピーク)のうち所定値を超える点等が挙げられる。ここでは、タイミング検出部30は、特徴点として、極値(ピーク)を検出するとして説明する。検出振動タイミングの検出は、各検出部10について行われる。
【0021】
タイミング記憶部40は、各検出部10により特徴点が検出される振動タイミングを記憶振動タイミングとして記憶する。検出対象とする生体の振動が各検出部10により検出される振動タイミングは、生体の振動の振動源と各検出部10との位置関係(距離)により決まる。生体の振動は、呼吸によるものか心拍によるものか、呼吸の中でも腹式呼吸によるものか胸式呼吸によるものかによって振動源が異なるため、検出対象とする生体の振動の種類によっても、各検出部10により検出される振動タイミングが異なる。よって、タイミング記憶部40は、検出対象とする生体の振動に応じた各検出部10についての記憶振動タイミングを記憶する。
【0022】
検出対象とする生体の振動が複数種類である場合は、それぞれの検出対象(例えば腹式呼吸および胸式呼吸)についての記憶振動タイミングを記憶する。なお、生体の振動以外の要因により生じる振動(ノイズ)は、その振動源が支持体全体を同時に振動させる傾向があり、各検出部10によりノイズ由来の振動の特徴点が検出される振動タイミングはほぼ同時となるため、生体の振動に応じた各検出部10についての記憶振動タイミングと異なる。
【0023】
判定部50は、タイミング検出部30により各検出部10について検出された検出振動タイミングと、タイミング記憶部40により各検出部10について記憶された記憶振動タイミングとを比較し、適合するかどうかを判定する。適合するか否かは、タイミング検出部30により各検出部10について検出された検出振動タイミングの、タイミング記憶部40により各検出部10について記憶された記憶振動タイミングからのずれが、所定範囲内か否かによって判定される。
【0024】
なお、記憶振動タイミングとしては、ある特定のタイミングと、適合するか否かを判定するときの所定範囲(許容範囲)を設定してもよく、また、記憶振動タイミングそのものにある程度の範囲(許容範囲)を持たせて設定してもよい。検出対象とする生体の振動が複数種類である場合は、それぞれの検出対象についての記憶振動タイミングと比較する。
【0025】
比較のため、判定部50は、少なくとも一つの検出部10により出力され抽出部20により抽出された信号からタイミング検出部30により検出された振動タイミングを基準検出振動タイミングとし、各検出部10の検出振動タイミングと基準検出振動タイミングとの差を演算する。また、判定部50は、少なくとも一つの検出部10についての記憶振動タイミングを基準記憶振動タイミングとし、各検出部10についての記憶振動タイミングと基準記憶振動タイミングとの差を演算する。なお、タイミング検出部30によって各検出部10の検出振動タイミングと基準検出振動タイミングとの差が演算されてもよい。また、タイミング記憶部40に各検出部10についての記憶振動タイミングと基準記憶振動タイミングとの差が記憶されていてもよい。
【0026】
タイミング出力部60は、判定部50により、検出振動タイミングと記憶振動タイミングとが適合すると判定された場合、少なくとも一つの検出部10についての検出振動タイミングを生体の生体情報として出力する。なお、このとき、タイミング出力部60は、複数の検出部10についての検出振動タイミングの平均値を出力してもよい。
【0027】
このように、タイミング出力部60は、タイミング検出部30により検出される検出振動タイミングと、タイミング記憶部40に記憶された記憶振動タイミング(検出対象とする生体の振動が各検出部10により検出される振動タイミング)とが対応すると判定された場合に検出振動タイミングを出力するため、生体の振動以外の要因による振動(ノイズ)を除いて検出対象とする生体の振動をより正確にとらえられる。よって、生体情報検出装置1は、より正確にとらえられた生体の振動の情報に基づいて、生体の情報(単位時間あたりの呼吸回数、腹式呼吸と胸式呼吸のいずれがなされているか、単位時間あたりの心拍回数、また、これらの経時変化など)を検出できる。
【0028】
なお、タイミング記憶部40は、上述のように、検出対象とする生体の振動に応じた各検出部10についての記憶振動タイミングをあらかじめ記憶していてもよく、また、タイミング検出部30により検出された検出振動タイミングを記憶してその後のタイミング検出の際にそれと比較するようにしてもよい。また、タイミング検出部30により検出された検出振動タイミングを記憶する場合、検出振動タイミングを複数回検出してその結果に基づいて検出振動タイミングを決定して記憶してもよい。
【0029】
また、生体情報検出装置1は、さらに、タイミング検出部30により検出された検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングを更新するタイミング更新部70を備えてもよい。タイミング更新部70は、タイミング検出部により検出された検出振動タイミングの各々について、複数の検出振動タイミングの特徴点が所定範囲内であるときは、複数の検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングを更新する。
【0030】
タイミング更新部70により記憶振動タイミングが更新されると、生体の振動により生じた振動であるにも関わらず、各検出部10についての検出振動タイミングが、あらかじめタイミング記憶部40に記憶された記憶振動タイミングに対応しないような場合でも、各検出部10についての検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新され、検出振動タイミングと更新された記憶振動タイミングとが比較される。従って、あらかじめ記憶された記憶振動タイミングに依らず、生体の振動をより正確に検出できる。
【0031】
また、生体の振動により検出した検出振動タイミングが、記憶振動タイミングに適合すると判定される範囲より狭い範囲で検出される場合には、タイミング更新部70により、記憶振動タイミングに適合すると判定される範囲が狭まるように更新できるため、実際の生体の振動に応じてさらに正確に検出できる。
【0032】
また、抽出部20により抽出された信号それぞれについて、複数の特徴点の振動タイミングが所定範囲内であるときは、複数の特徴点の振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新されるため、実際に抽出された信号の特徴点の振動タイミングに合わせてより正確な特徴点の振動タイミングに記憶振動タイミングを更新可能となる。また、複数の特徴点が所定範囲外の特徴点を含む場合には記憶振動タイミングが更新されないため、実際に抽出された信号の特徴点の振動タイミングから遠ざかる方向への記憶振動タイミングの更新は行われない。よって、さらに正確に実際の生体の振動を検出できる。
【0033】
以下、本実施例の生体情報検出装置を車両用シートに適用した例を説明する。
【0034】
図2は、本実施例に係る生体情報検出装置を車両用シート100に適用した例を示す説明図である。
【0035】
図2に示すように、支持体2としての車両用シート100に着座する生体の呼吸、心拍、体動などの振動を検出する検出部10としての第一圧力センサ111、第二圧力センサ112、第三圧力センサ113、第四圧力センサ114、第五圧力センサ115が、車両用シート100に配置されている。第一圧力センサ111、第二圧力センサ112は背もたれ部101に、第三圧力センサ113、第四圧力センサ114、第五圧力センサ115は座部102に配置されている。
【0036】
図1のように、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115のそれぞれは、電子回路130の各チャンネルに接続されている。電子回路130は、抽出部20、タイミング検出部30、タイミング記憶部40、判定部50、タイミング出力部60として機能するプログラムを備えている。ここでは、抽出部20はローパスフィルタとして機能するとし、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115から出力される信号からフィルタした信号を抽出する第一ローパスフィルタ121〜第五ローパスフィルタ125を備えるとして説明する。第一ローパスフィルタ121〜第五ローパスフィルタ125のカットオフ周波数は、生体の呼吸により生じる振動の周波数に応じて設定される。
【0037】
なお、抽出部20は、電子回路130によらず、アナログフィルタ(ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ)を用いて構成してもよい。
【0038】
図3は、第一実施例に係る生体情報検出装置1の動作を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、第一ローパスフィルタ121〜第二ローパスフィルタ125により抽出した信号から検出振動タイミングを検出し、検出した検出振動タイミングが記憶振動タイミングに対応すると判定した場合に検出振動タイミングを出力する処理を行うルーチンを表す。電子回路130は、ステップS1にて、第一ローパスフィルタ121〜第五ローパスフィルタ125により抽出された信号から検出振動タイミングを検出する。
【0039】
図4は、胸式呼吸を行っている生体の振動を測定した場合に第一ローパスフィルタ121〜第五ローパスフィルタ125から抽出された第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115の信号を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は抽出された信号の電圧である。また、生体の振動の測定と共に呼吸計による測定を行った結果を同じグラフに示す。電子回路130は、各信号から特徴点の振動タイミングである検出振動タイミングを検出する。ここでは、電子回路130が検出する特徴点は各信号の極値(ピーク)であり、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115のそれぞれについて、検出振動タイミングt1〜t5を検出する。
【0040】
図5は、腹式呼吸を行っている生体の振動を測定した場合に第一ローパスフィルタ121〜第五ローパスフィルタ125から抽出された第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115の信号を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は抽出された信号の電圧である。また、生体の振動の測定と共に呼吸計による測定を行った結果を同じグラフに示す。電子回路130は、各信号から特徴点の振動タイミングである検出振動タイミングを検出する。ここでは、電子回路130が検出する特徴点は各信号の極値(ピーク)であり、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115のそれぞれについて、検出振動タイミングt1〜t5を検出する。
【0041】
図4および図5より、生体が行う呼吸の種類によって、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115それぞれの検出振動タイミングt1〜t5が異なることがわかる。電子回路130には、検出対象とする生体の振動の種類(複数種類のときは複数種類分)に応じて、生体の振動をとらえた場合に抽出された信号が特徴点となる振動タイミングを、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115についてあらかじめ測定されたデータに基づいて設定された、記憶振動タイミングが記憶されている。
【0042】
なお、記憶振動タイミングは、第一圧力センサ111についての記憶振動タイミングを基準記憶振動タイミング(t1=0)とし、第二圧力センサ112〜第五圧力センサ115についての記憶振動タイミングを基準記憶振動タイミングとの差として電子回路130に記憶してもよい。
【0043】
電子回路130は、ステップS2にて、ステップS1で検出された検出振動タイミングt1〜t5と、記憶振動タイミングとを比較する。電子回路130は、比較を行うために、第一圧力センサ111について検出振動タイミングを基準検出振動タイミングとして、第二圧力センサ112〜第五圧力センサ115についての検出振動タイミングt1との差を演算し、第一圧力センサ111についての基準記憶振動タイミング(t=0)と、第二圧力センサ112〜第五圧力センサ115についての記憶振動タイミング(基準記憶振動タイミングとの差)と比較する。電子回路130は、各圧力センサ111〜115について、検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合するかどうか(検出振動タイミングの、記憶振動タイミングからのずれが所定範囲内かどうか)を判定する。
【0044】
電子回路130は、各圧力センサ111〜115について、検出振動タイミングが記憶振動タイミングと適合すると判定すると、ステップS3にて、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115の少なくとも一つの検出振動タイミング(基準検出振動タイミングとの差ではなく、特徴点が検出された振動タイミングである検出振動タイミング)を出力して、このルーチンでの一連の処理を終了する。ここで、出力される検出振動タイミングは、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115の少なくとも一つの検出振動タイミングでもよく、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115の検出振動タイミングの平均値でもよい。電子回路130から出力された検出振動タイミングは、その後のプロセスにより、例えば、単位時間あたりの心拍数、呼吸数等の測定等に使用できる。
【0045】
電子回路130は、各圧力センサ111〜115について、検出振動タイミングが記憶振動タイミングと適合しないと判定すると、引き続き検出振動タイミングの検出を行う。
【0046】
このように、電子回路130は、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115により検出される検出振動タイミングと記憶振動タイミングとが適合すると判定した場合に、検出振動タイミングを出力するため、生体の振動以外の要因による振動(ノイズ)を除いて、検出対象とする生体の振動をより正確にとらえられる。
【0047】
第一実施例のように、車両用シートに適用される場合、例えば、車両が段差などへ乗り上げることにより生じる振動(ノイズ)は、車両用シート全体を同時に振動させる傾向があるため、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115についての検出振動タイミングが同時(第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115についての検出振動タイミングと基準検出振動タイミングの差が全て0)となり、記憶振動タイミングと異なるため、電子回路130によって出力されないこととなる。
【0048】
このように、ノイズを除くことができるため、第一実施例の生体情報検出装置1は、生体の振動による振動の情報に基づいて、生体の情報(単位時間あたりの呼吸回数、腹式呼吸と胸式呼吸のいずれをしているか、単位時間あたりの心拍回数、また、これらの経時変化など)を検出できる。
【0049】
図6は、第二実施例に係る生体情報検出装置1の動作を示すフローチャートである。第二実施例は第一実施例とほぼ同じであるため、第一実施例との相違点を主に説明する。図6のフローチャートは、検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングを更新する処理を行うルーチンを表す。
【0050】
第二実施例に係る生体情報検出装置1は、電子回路130が、ステップS1にて検出振動タイミングを検出し、ステップS2にて検出振動タイミングが記憶振動タイミングに適合するかを判定し、適合すると判定した場合はステップS3にて検出振動タイミングを出力してステップS4に進み、対応しないと判定した場合はそのままステップS4へ進む。
【0051】
電子回路130は、ステップS4にて、検出振動タイミングの検出回数Iをカウントし、ステップS5にて、検出回数Iが所定回数であるか否かを判定する。検出回数Iが所定回数であると判定した場合、電子回路130は、ステップS6に進み、検出回数Iが所定回数でないと判定した場合、電子回路130は、ステップS1に戻る。ステップ6にて、検出振動タイミングが所定回数続けて所定範囲内であったかどうかを判定する。
【0052】
検出振動タイミングが所定回数続けて所定範囲内であったと判定した場合、電子回路130は、ステップS7に進み、検出振動タイミングの所定回数分の検出結果に応じて記憶振動タイミングを更新してこのルーチンでの一連の処理を終了する。検出振動タイミングが所定回数続けて所定範囲内でなかったと判定した場合、電子回路130は、このルーチンでの一連の処理を終了する。
【0053】
記憶振動タイミングの更新は、例えば、所定回数分の検出振動タイミングの平均値を演算し、その平均値を新しい記憶振動タイミングとして記憶して行われる。また、ステップS2にて、検出振動タイミングが記憶振動タイミングに対応するか否かを、電子回路130が判定する際に使用する所定範囲(許容範囲)を、ステップS6で電子回路130が、検出振動タイミングが所定回数続けて所定範囲内であったと判定するのに用いた範囲へと更新することもできる。
【0054】
記憶振動タイミングが更新されると、生体の振動であるにも関わらず第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115についての検出振動タイミングがあらかじめ記憶された記憶振動タイミングに適合しないような場合でも、第一圧力センサ111〜第五圧力センサ115についての検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新され、検出振動タイミングと更新された記憶振動タイミングとが比較される。よって、あらかじめ記憶された記憶振動タイミングにとらわれず、生体の振動をより正確に検出できる。
【0055】
また、抽出部20により抽出された信号それぞれについて、複数の特徴点の振動タイミングが所定範囲内であるときは、複数の特徴点の振動タイミングに応じて記憶振動タイミングが更新されるため、実際に抽出された信号の特徴点の振動タイミングに合わせてより正確な特徴点の振動タイミングに記憶振動タイミングを更新可能となる。また、複数の特徴点が所定範囲外の特徴点を含む場合には記憶振動タイミングが更新されないため、実際に抽出された信号の特徴点のタイミングから遠ざかる方向への記憶振動タイミングの更新は行われない。よって、さらに正確に実際の生体の振動を検出できる。
【0056】
また、あらかじめ第一圧力センサ〜第五圧力センサ115についての記憶振動タイミングを電子回路130に記憶させる場合、生体の様々な体格や状態に応じて記憶振動タイミングとの適合を判定する際の所定範囲(許容範囲)は一般にある程度広く設定されるが、検出振動タイミングに応じて記憶振動タイミングや記憶振動タイミングからの許容範囲(または記憶振動タイミングの範囲)を更新することで、記憶振動タイミングに適合すると判定する検出振動タイミングの幅を、実際の生体の体格や状態に応じて狭められるため、生体の振動をより正確に検出できる。
【符号の説明】
【0057】
1 生体情報検出装置
2 支持体
10 検出部
20 抽出部
30 タイミング検出部
40 タイミング記憶部
50 判定部
60 タイミング出力部
70 タイミング更新部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を支持する支持体に配置され、検出される振動に応じた信号を出力する複数の検出部と、
前記各検出部から出力された信号ごとに、検出対象とする前記生体の振動に対応した所定の周波数範囲の信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部の各々により抽出された信号から各々の特徴点の振動タイミングを検出振動タイミングとして検出するタイミング検出部と、
前記タイミング検出部により検出された前記検出振動タイミングを記憶振動タイミングとして記憶するタイミング記憶部と、
前記検出振動タイミングが前記記憶振動タイミングに適合するか否かを判定する判定部と、
前記検出振動タイミングが前記記憶振動タイミングに適合する場合に少なくとも一つの前記検出部について検出された前記検出振動タイミングを前記生体の生体情報として出力するタイミング出力部と、を備えた生体情報検出装置。
【請求項2】
前記タイミング検出部により検出された前記検出振動タイミングに応じて前記記憶振動タイミングを更新するタイミング更新部をさらに備えた請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記タイミング更新部は、前記タイミング検出部により検出された前記検出振動タイミングの各々について、複数の前記検出振動タイミングの特徴点が所定範囲内であるときは、前記複数の検出振動タイミングに応じて前記記憶振動タイミングを更新する請求項2に記載の生体情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200509(P2011−200509A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71693(P2010−71693)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】