説明

生体成分分析装置およびこの装置に用いられる抽出カートリッジ、ならびに抽出媒体収容具

【課題】液体収容部からの抽出媒体の蒸発や漏出を防止して、良好な測定精度を維持できる生体成分分析装置を提供する。
【解決手段】被験者の皮膚に接触可能であり、当該被験者の皮膚から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持することができる抽出媒体保持部53と、前記抽出物によって所定の反応を生じる反応部54と、この反応部54で生じる所定の反応に基づき前記抽出物を検出する検出部40と、前記抽出媒体を収容可能な抽出媒体収容部52と、この抽出媒体収容部52に収容された抽出媒体を前記抽出媒体保持部53に移送するとともに、当該抽出媒体保持部53に移送され、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を、前記抽出媒体保持部53から前記反応部54に移送する抽出媒体移送部と、前記検出部40による検出結果を分析する分析部17とを備えている。前記抽出媒体収容部52は、金属薄膜製の容器からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体成分分析装置およびこの装置に用いられる抽出カートリッジ、ならびに抽出媒体収容具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者からグルコースなどの分析物を抽出した後、グルコースオキシターゼなどの酵素を触媒として利用することによって、抽出したグルコースを反応させて分析を行う生体成分分析装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、グルコースがグルコースオキシターゼを触媒として反応する反応部と、被験者から抽出したグルコースを保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出部と、抽出媒体を収容し、当該抽出媒体を各部に提供(移送)するシリンジポンプとを備えた生体成分分析装置が開示されている。この生体成分分析装置では、シリンジポンプは、収容された抽出媒体を抽出部に提供するとともに、抽出部においてグルコースが抽出媒体に抽出された後、シリンジポンプからさらに抽出媒体を抽出部に提供することによって、グルコースを保持する抽出媒体を抽出部から反応部に移送する(押し出す)ように構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の生体成分分析装置では、抽出部においてグルコースが抽出媒体に抽出された後、シリンジポンプからさらに抽出媒体を抽出部に提供することによって、グルコースを保持する抽出媒体を抽出部から反応部に移送する(押し出す)ように構成されているので、抽出部内のグルコースを保持する抽出媒体を反応部側に押し出すためのシリンジポンプからの抽出媒体に、抽出部内のグルコースを保持する抽出媒体が接触して、グルコースがシリンジポンプからの抽出媒体に混和してしまう可能性がある。このようにグルコースが抽出部の外にある抽出媒体に混和してしまうと、抽出媒体中のグルコース濃度が不均一となり、分析精度が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本出願人は、抽出媒体を移送する手段としてシリンジポンプに代えてエアポンプを採用し、抽出部への抽出媒体の移送および抽出部から反応部への抽出媒体の移送をエアで行う装置を共同で提案している(特願2008−91599)。
【0006】
この特願2008−91599に係る生体成分分析装置では、抽出媒体保持部(被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された部分)によって保持可能な量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部を設けている。そして、エアポンプを備えた液体移送部によって、前記液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部へ移送するとともに、当該抽出媒体保持部に移送され、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を抽出媒体保持部から反応部に移送している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−246054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特願2008−91599に係る生体成分分析装置によれば、抽出媒体の混和を防止することで抽出物の濃度が不均一になるのを抑制することができるが、合成樹脂製の抽出カートリッジに形成された凹所からなる液体収容部に抽出媒体を保持させているので、当該抽出カートリッジを長期間放置しておくと、液体収容部から抽出媒体が蒸発したり、漏出したりする惧れがある。そして、蒸発などにより抽出媒体が所定量よりも減少すると測定精度が低下してしまう。
また、液体収容部から蒸発または漏出した抽出媒体が反応部に到達すると、当該反応部が劣化し、この劣化に起因して測定精度が低下する惧れもある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、液体収容部からの抽出媒体の蒸発や漏出を防止して、良好な測定精度を維持することができる生体成分分析装置およびこの装置に用いられる抽出カートリッジ、ならびに抽出媒体収容具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る生体成分分析装置は、被験者の皮膚に接触可能であり、当該被験者の皮膚から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持することができる抽出媒体保持部と、
前記抽出物によって所定の反応を生じる反応部と、
この反応部で生じる所定の反応に基づき前記抽出物を検出する検出部と、
前記抽出媒体を収容可能な抽出媒体収容部と、
この抽出媒体収容部に収容された抽出媒体を前記抽出媒体保持部に移送するとともに、当該抽出媒体保持部に移送され、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を、前記抽出媒体保持部から前記反応部に移送する抽出媒体移送部と、
前記検出部による検出結果を分析する分析部と
を備え、前記抽出媒体収容部が、金属薄膜製の容器からなることを特徴としている。
【0011】
本発明の第1の観点に係る生体成分分析装置では、抽出媒体を収容する抽出媒体収容部が合成樹脂に比べて液透過性の低い金属薄膜製の容器からなっているので、長期間保存した場合でも、当該容器に収容されている抽出媒体の蒸発や漏出を抑制することができる。これにより、抽出媒体が減少するのを防ぐことができ、当該抽出媒体の減少に起因する測定精度の低下を防止することができる。また、蒸発または漏出した抽出媒体によって反応部が劣化することがないので、良好な測定精度を維持することができる。
ここで、抽出媒体保持部に保持される抽出媒体の所定量は、抽出媒体を収容可能な抽出媒体収容部の容量と略等しい量とするのが、分析精度を高める上で好ましい。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係る抽出カートリッジは、前記第1の観点に係る生体成分分析装置に用いることができ、前記抽出媒体収容部および抽出媒体保持部を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の第3の観点に係る抽出媒体収容具は、被験者の皮膚から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を収容する容器を備えており、この容器が金属薄膜で作製されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生体成分分析装置およびこの装置に用いられる抽出カートリッジ、ならびに抽出媒体収容具によれば、液体収容部からの抽出媒体の蒸発や漏出を防止して、良好な測定精度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の生体成分分析装置およびこの装置に用いられる抽出カートリッジ、ならびに抽出媒体収容具の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の生体成分分析装置の一実施の形態としての血糖値推定装置100の全体構成について説明する。
【0016】
[血糖値推定装置の全体構成]
図1は、本発明の生体成分分析装置の一実施の形態としての血糖値推定装置100を示す斜視図であり、図2は、図1に示される血糖値推定装置100の装置本体を開いた状態を示す斜視図であり、図3は、図1に示される血糖値推定装置100の分析ユニットを図2の状態で被験者の腕に装着した状態を示す斜視図である。また、図4は、図1に示される血糖値推定装置100の装置本体の構成を説明する概略説明図である。なお、図4では分かり易くするために、実際には紙面貫通方向に重なるように配置されている要素を紙面左右方向に並べて表現しているものもある。
【0017】
本実施の形態に係る血糖値推定装置100は、生体から生化学成分の一つであるグルコースを抽出するとともに、抽出されたグルコースを分析することにより血糖値を推定する装置である。この血糖値推定装置100は、図1および図2に示されるように、分析ユニット1と、抽出カートリッジ50(図2参照)とを備えている。分析ユニット1は、抽出カートリッジ50を着脱可能に保持する装置本体10と、この装置本体10を矢印Aおよび矢印B方向に回動可能に保持する保持部材20と、この保持部材20を被験者の腕110(図3参照)に装着するための装着部材30とを含んでいる。
【0018】
分析ユニット1の装置本体10は、図1〜3に示されるように、表面側に配置された表示部11(図1参照)および操作ボタン12(図1参照)と、使用時の状態(装置本体10が閉じられた状態)で矢印X1方向の端部側に配置される解除ボタン13と、裏面側に配置された抽出カートリッジ取付部14(図2および図3参照)および係合孔15(図2および図3参照)と、内部に配置された直流方式の定電圧電源として機能するとともに、交流方式の高周波電源としても機能する電源16(図4参照)と、後述する検出部40によるグルコースの検出結果に基づいてグルコース量および血糖値を推定(分析)する分析部としての制御部17と、抽出媒体を移送させるためのエアを送風する、抽出媒体移送部としてのポンプ18とを含んでいる。
【0019】
装置本体10の表示部11は、制御部17により算出されたグルコース量、および/または、推定された血糖値を表示するために設けられている。装置本体10の操作ボタン12は、測定の開始など、被験者が血糖値推定装置100を操作するために設けられている。装置本体10の解除ボタン13は、後述する保持部材20の係合部21eと、装置本体10の係合孔15(図2および図3参照)との係合を解除するために設けられている。
【0020】
装置本体10の抽出カートリッジ取付部14は、図2および図3に示されように、抽出カートリッジ50を取り付ける際のガイドとして機能する一対のリブ状の突出部14aと、抽出カートリッジ50(図2参照)を取り付けるための4つの係合部14bと、装置本体10の電源16(図4参照)と接続されている端子部14c(図3参照)と、検出部40(図4参照)を構成する光源部41および受光部42と、ポンプ18から送風されるエアを抽出カートリッジ取付部14の外側に噴出する噴出部14dとを含んでいる。また、抽出カートリッジ取付部14の4つの係合部14bは、弾性変形可能に設けられることによって、抽出カートリッジ50(図2参照)を着脱することができるように構成されている。また、噴出部14dは、半球形状を有し、図示しないバネ部材により抽出カートリッジ取付部14の外側方向に突出するように付勢されている。さらに、抽出カートリッジ取付部14には、後述する抽出媒体収容部(容器)を押圧して当該抽出媒体収容部内の抽出媒体を液溜め部に供給するための凸部5が形成されている。
【0021】
装置本体10の係合孔15は、当該装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、保持部材20の係合部21eと係合するように設けられている。
また、保持部材20は、図2および図3に示されように、装置本体10を回動可能に保持する保持部材本体部21と、ラチェット機構を構成する係合部材22と、保持部材本体部21の一方端部側(矢印Y1方向の端部側)を覆うカバー部材23とを含んでいる。
【0022】
また、保持部材20の保持部材本体部21は、平面的に見て中央部近傍に設けられた開口部21a、4つの逃げ部21b、段差部21cおよび21dと、矢印X1方向の端部側に設けられた係合部21eとを含んでいる。前記保持部材本体部21はABSなどの合成樹脂により作製されており、当該保持部材本体部21の下面部21fはX2方向から見て円弧形状に形成されている。これにより、保持部材20が被験者の腕110に装着された際に、被験者の腕110との密着性を向上させることが可能となる。
【0023】
また、保持部材本体部21の開口部21aは平面的に見て正方形状に形成されている。また、開口部21aは、図3に示されように、保持部材20が装着部材30により被験者の腕110に装着されることによって、被験者の腕110の測定対象領域110aを規定する機能を有している。このとき、被験者の腕110の測定対象領域110aは、開口部21aを介して矢印Z2方向に突出する。
【0024】
保持部材本体部21の4つの逃げ部21bは、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、それぞれ、装置本体10の4つの係合部14b(図2および図3参照)を収容するために設けられている。保持部材本体部21の段差部21cは、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、装置本体10の抽出カートリッジ取付部14(図2および図3参照)を収容するために設けられている。また、保持部材本体部21の段差部21dには、図2に示されるように、一対の係合突起21gが形成されている。また、段差部21dおよび係合突起21gは、後述する微細孔形成装置120を使用する際の位置決めを行う機能を有している。
【0025】
保持部材本体部21の係合部21e(図2および図3参照)は、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、装置本体10の係合孔15(図2および図3参照)と係合することにより、装置本体10が保持部材本体部21に対してA方向(開く方向)に回動するのを規制する機能を有している。このとき、装置本体10に抽出カートリッジ50(図2参照)が取り付けられている場合には、図4に示されるように、抽出カートリッジ50は、保持部材本体部21の開口部21aから露出された被験者の腕110の表面に接触する。
【0026】
また、保持部材本体部21の下面部21fには、電源16と電気的に接続された導電性材料からなるシート(図示せず)が貼り付けられている。これにより、保持部材本体部21は、電極として機能するように構成されている。
【0027】
また、係合部材22は、ポリアセタールなどの合成樹脂により作製されているとともに、押圧部22aを含んでいる。前記係合部材22は、保持部材20に対する装着部材30の移動方向を一方向(矢印Z2方向)に規制するラチェット機構を構成している。また、係合部材22は、ラチェット機構の規制を解除する解除機能を有しており、押圧部22aを押圧した際に、装着部材30に対して、ラチェット機構の規制が解除されるように構成されている。一方、押圧部22aの押圧を解除した際には、装着部材30に対して、ラチェット機構による規制が行われるように構成されている。
【0028】
また、保持部材20のカバー部材23は、装着部材30が通過する一対の通過孔23aと、係合部材22の押圧部22aが配置される穴部23bとを含んでいる。また、カバー部材23はABSなどの合成樹脂により作製されており、ねじ81により保持部材本体部21に取り付けられている。
【0029】
また、装着部材30は、図1および図2に示されるように、連結部31と、連結部31の下端部(矢印Z1方向側の端部)から矢印Y2方向に延びる2つの挟み部32とを含んでいる。前記装着部材30は、ABSなどの合成樹脂(剛性体)により作製されている。また、装着部材30の内面には、保持部材本体部21の下面部21fに貼り付けられたシートと同様に、電源16と電気的に接続された導電性材料からなるシート(図示せず)が貼り付けられている。これにより、装着部材30は、電極として機能するように構成されている。
【0030】
また、装着部材30の連結部31は、複数の係合爪31aを有する一対の係合領域31bと、抜け止め用係合溝31cと、矢印Y2方向に突出する突起部31dとを含んでいる。連結部31は、挟み部32と保持部材20との間の距離を変更することが可能なように構成されている。また、複数の係合爪31aは、装着部材30が保持部材20に対して矢印Z2方向(上方向)に移動するのを許容するとともに、装着部材30が保持部材20に対して矢印Z1方向(下方向)に移動するのを規制するように構成されている。また、抜け止め用係合溝31cは、連結部31を矢印Z1方向にスライド移動させた場合に、装着部材30が保持部材20から抜け落ちるのを防止するために設けられている。また、矢印Y2方向に突出する突起部31dには、矢印X1方向および矢印X2方向に延びる貫通孔311dが設けられている。
【0031】
前記装着部材30の挟み部32は、矢印X2方向から見て湾曲板状に構成されているとともに、弾性変形可能に構成されている。また、挟み部32は、連結部31により挟み部32と保持部材20との間の距離が変更されることによって、保持部材20との間に被験者の腕110(図3参照)を上下方向から挟むことが可能なように構成されている。また、挟み部32には、矢印Y1方向側の端部に2つの突起部32aが設けられている。また、2つの突起部32aには、それぞれ、矢印X1方向および矢印X2方向に延びる貫通孔(図示せず)が形成されている。これらの貫通孔は、連結部31の貫通孔311dと同軸になるように形成されており、連結部31の貫通孔311dおよび突起部32aの貫通孔には、ステンレス製の軸部材33が挿入されている。これにより、挟み部32を、連結部31に対して、軸部材33を中心に回動させることが可能となるとともに、挟み部32を連結部31側に折りたたむことが可能となる。
【0032】
[抽出カートリッジ]
次に抽出カートリッジ50について説明する。
図5は、図1に示される血糖値推定装置100の抽出カートリッジ50を上側から見た場合の平面図であり、図6は、図5に示される抽出カートリッジ50を下側から見た場合の平面図である。また、図7は、図5のA−A線断面説明図であり、図8は、図5のB―B線断面説明図である。
【0033】
本実施の形態における抽出カートリッジ50は、図4〜5に示されるように、アクリルなどの合成樹脂からなるカートリッジ本体51と、被験者の腕110から抽出されるグルコースを保持するための抽出媒体として機能する純水を収容する抽出媒体収容部である容器52と、被験者の腕110から抽出されるグルコースを保持するための所定量の純水を保持することができる抽出媒体保持部53と、グルコースに所定の反応を生じさせる反応部54と、噴出部14dから噴出されるエアが流入されるエア流入口55と、前記容器52から供給された純水を一時的に収容する液溜め部6とを含んでいる。前記容器52は、前記液溜め部6に隣接して配置された、容器設置部としての第4凹部51d内に配設されている。なお、図5〜6において、59は装置本体10から後述する電極63、64への配線を通すための長孔である。
【0034】
また、図4および図6に示されるように、カートリッジ本体51の下面のほぼ中央部には、長方形状の開口部511aを有する第1凹部51aが形成されている。抽出媒体保持部53は、この第1凹部51aにより構成されている。また、長方形状の開口部511aは、矢印Y1および矢印Y2方向に延びるように形成されている。第1凹部51a内の第1底面512aには、外側方向(矢印Z1方向)に向かって延びる円柱形状の複数の侵入防止部513aが形成されている。また、侵入防止部513aは、その高さが第1凹部51aの深さとほぼ同じになるように形成されている。このため、侵入防止部513aの先端面は、カートリッジ本体51の下面とほぼ同一平面上に位置している。また、複数の侵入防止部513aは、開口部511aの全域にわたって、矢印Y1および矢印Y2方向に所定の間隔を隔てて1列に配置されている。これにより、被験者の腕110の表面が抽出媒体保持部53内に侵入するのを防止することができる。また、抽出媒体保持部53は、所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の液体を保持可能な容積を有している。
【0035】
また、図5に示されるように、カートリッジ本体51の上面には、平面的に見て、抽出媒体保持部53(第1凹部51a)の矢印Y1方向側の端部付近と重なるように第2凹部51bが形成されている。液溜め部6は、この第2凹部51bにより構成されている。また、図4に示されるように、第2凹部51bの第2底面511bは、第1凹部51aの第1底面512aよりも上側(矢印Z2方向側)に配置されている。すなわち、液溜め部6および抽出媒体保持部53は、高さ方向(矢印Z1および矢印Z2方向)において重ならないように配置されている。また、第2底面511bの、平面的に見て液溜め部6および抽出媒体保持部53が重なる部分には、第1凹部51aの第1底面512aまで貫通する第1流路56が形成されている。これにより、液溜め部6および抽出媒体保持部53は、第1流路56を介して空間的に接続される。また、液溜め部6は、抽出媒体保持部53が保持可能な所定量とほぼ同量(たとえば、約5μl〜約6μl)の液体を収容することが可能な容積を有している。
【0036】
また、図4および図5に示されるように、カートリッジ本体51の上面には、第2凹部51bから矢印Z1方向に所定距離だけ延び、ついで矢印X2方向に所定距離だけ延び、さらに矢印Y1方向に所定距離だけ延び、最後に矢印Z2方向に所定距離だけ延びる第2流路57が形成されている。この第2流路57のカートリッジ本体51上面における開口がポンプ接続口55となっている。
【0037】
このポンプ接続口55は、平面的に見て円形形状を有している。ポンプ接続口55の直径は、半球形状を有する噴出部14dの直径よりも小さくなるように設定されている。これにより、抽出カートリッジ50が抽出カートリッジ取付部14に取り付けられた状態において、当該ポンプ接続口55を、噴出部14dの外側表面によりふさぐことが可能である。この際、噴出部14は、図示しないバネ部材によって抽出カートリッジ取付部14の外側方向に付勢されているので、噴出部14dの外側表面およびポンプ接続口55の縁部は所定の付勢力がかかった状態で互いに当接している。これにより、噴出部14dから噴出されるエアが、ポンプ接続口55から漏れてしまうのを抑制することができる。
【0038】
また、図5に示されるように、カートリッジ本体51の上面には、平面的に見て、抽出媒体保持部53(第1凹部51a)の矢印Y2方向側の端部と重なるように第3凹部51cが長方形状に形成されている。図4に示されるように、第3凹部51cの第3底面511cは、第1凹部51aの第1底面512aよりも上側(矢印Z2方向側)に配置されている。すなわち、第3凹部51dおよび抽出媒体保持部53は、高さ方向(矢印Z1および矢印Z2方向)において重ならないように配置されている。また、第3底面511cの、平面的に見て第3凹部51cおよび抽出媒体保持部53が重なる部分には、第1凹部51aの第1底面512aまで貫通する第3流路58が形成されている。また、図5に示されるように、カートリッジ本体51の矢印X1および矢印X2方向側のほぼ中央部には、第3凹部51cからカートリッジ本体51の矢印Y2方向側の端部まで延びる溝部61が形成されている。また、溝部61は、その深さが第3凹部51cの深さとほぼ同じ深さになるように形成されている。
【0039】
また、本実施の形態では、図5に示されるように、第3凹部51cの第3底面511cには、平面的に見て、第3底面511cのほぼ中央部を長方形状に取り囲むように、所定の高さを有する2つの遮光テープ71および72が配置されている。具体的には、一方の遮光テープ71は、長方形状を有するとともに、他方の遮光テープ72は、L字形状を有している。また、一方の遮光テープ71は、他方の遮光テープ72に対して矢印X1方向側で、かつ、第3凹部51cの内側面から所定距離だけ離間した位置に配置されている。また、他方のL字形状を有する遮光テープ72は、一方の遮光テープ71に対して矢印X2方向側で、かつ、第3凹部51cの内側面から所定距離だけ離間した位置に配置されている。また、L字形状を有する遮光テープ72の矢印X1方向に延びる部分72aは、その先端部が一方の遮光テープ71から所定距離だけ離間した位置に配置されるように形成されている。また、遮光テープ71および72は、検出部40によるグルコースの検出の際に、光を遮光する機能を有している。
【0040】
また、遮光テープ71および72の上面には、後述するセンサ部材80が配置されている。センサ部材80は、平面的に見て、第3凹部51cとほぼ同じ大きさの長方形状を有しており、第3凹部51cの開口部を塞ぐように当該第3凹部51cに嵌め込まれている。また、遮光テープ71および72がスペーサとして機能することによって、センサ部材80が第3凹部51cの第3底面511cから所定距離(ほぼ遮光テープの高さ分の距離)だけ離間する位置に配置されている。ここで、反応部54は、平面的に見て第3凹部51cのほぼ中央部において、遮光テープ71および72と、第3凹部51cの第3底面511cと、センサ部材80の下面80aとにより取り囲まれることにより構成されている。また、第3凹部51c内において、第3凹部51cの内側面と、遮光テープ71および72と、第3凹部51cの底面511cと、センサ部材80の下面80aとにより取り囲まれた反応部54以外の部分は、反応部54のエア抜き、および、余剰分の液体を溝部61に逃がすための流路として機能する。また、反応部54は、抽出媒体保持部53が保持可能な所定量よりも少ない量(たとえば、約2.5μl〜約3μl)の液体を保持可能に構成されている。また、反応部54には、反応部54全域にわたって、遮光テープ71および72とほぼ同じ高さを有するメッシュシート62が配置されている。これにより、反応部54に移送された液体がメッシュシート62に吸収されるので、反応部54内に一定量以上の液体を確実に保持することが可能であるとともに、反応部54内に移送された液体をセンサ部材80の下面80aに容易に接触させることが可能となる。
【0041】
また、図6に示されるように、カートリッジ本体51の下面には、開口部511aの矢印X1方向および矢印X2方向にそれぞれ第1電極63および第2電極64が取り付けられている。また、抽出カートリッジ50が装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付けられている状態において、第1電極63および第2電極64は、抽出カートリッジ取付部14の端子部14cおよび端子部14cと当接される抽出カートリッジ50の端子部51eを介して、装置本体10の電源16に電気的に接続されている。また、第1電極63は、開口部511aの矢印Y1方向側の端部から矢印Y2方向側の端部近傍まで延びるように配置されている。また、第2電極64は、第1電極63に接触されないように、開口部511aの矢印Y2方向側の端部から矢印Y1方向に微小距離だけ延びるように配置されている。すなわち、第1電極63と第2電極64とは、開口部511aの矢印Y2方向側の端部近傍において離間するように配置されている。なお、第1電極63および第2電極64は、実際には図4には現れない位置に配置されているが、ここでは、説明のために便宜上、図4に第1電極63および第2電極64を記載している。
【0042】
また、カートリッジ本体51の下面には、抽出媒体保持部53の開口部511a以外の領域に両面テープ65が貼り付けられている。これにより、カートリッジ本体51を被験者の腕110に密着させることが可能となる。また、図4および図5に示されるように、カートリッジ本体51の上面側に開放された第2凹部51bを塞ぐように、カートリッジ本体51の上面にテープ66が貼り付けられている。
【0043】
また、センサ部材80の下面80aの反応部54内に露出される部分には、グルコースが反応することに起因して発色する発色色素と、所定の酵素とを含む混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。具体的には、センサ部材80の下面80aには、グルコースに対する触媒としての酸化酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOD)と、グルコースがGODを触媒として反応することによって生成される過酸化水素(H22)に対する触媒としての酸化還元酵素であるペルオキシダーゼ(POD)と、H22がPODを触媒として反応することによって生成されるO*(活性酸素)と反応して発色する発色色素とをゲルに混合した混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。
【0044】
[抽出媒体収容部]
図9は、前記容器設置部を構成する第4凹部51d内に配設される容器52の平面説明図である。この容器52は、厚さ0.1mm程度のアルミニウム薄膜から形成された容器本体52aと、この容器本体52a内に収容された純水(抽出媒体)が排出される排出口52bを備えた筒状の口部52cとで構成されている。
【0045】
容器本体52aは、短辺が3〜4mm程度、長辺が4〜5mm程度の矩形状のアルミニウム薄膜を2枚重ね合わせ、その周縁領域52dに合成樹脂製の薄膜を介在させてヒートシールにより互いに固着したものである。
口部52cはABSなどの合成樹脂や真鍮などの金属で作製されており、外径が1〜1.5mm程度、内径が0.5〜1.0mm程度の筒体からなっている。前記口部52cを、容器本体52aを構成する2枚のアルミニウム薄膜の間に配設した状態で前記周縁領域52dがヒートシールされ、これにより当該口部52cが容器本体52aに固定される。
【0046】
前記口部52cの容器内部側端部の近傍には、容器内部と口部52cの通路52eとの間を遮断するシール手段としてのイージーピール7が設けられている。このイージーピール7は、容器本体52aの周縁領域52dと同様にヒートシールによって形成されており、その固着の程度(強さ)を、純水が封入された容器本体52aのふくらみ部分が所定の方法で押圧することで破れるように設定されている。具体的には、ヒートシールに用いるホットメルト接着剤の種類や帯状のヒートシール領域の幅を適宜選定することで所望の固着強度を有するイージーピール7を得ることができる。
容器52は、図8に示されるように、容器本体52が第4凹部51dに位置し、且つ、口部52cが第2凹部51bと第4凹部51dとを連通する連通路60内に位置するように配設される。
【0047】
なお、シール手段としては、イージーピール7に代えて厚さ0.03mm程度のナイロンフィルムなどの合成樹脂フィルムを採用することもでき、このフィルムは筒状の口部52cの両端面のいずれか一方の端面に固着される。
【0048】
[装置の使用手順]
図10は、被験者が血糖値推定装置を使用する際の手順を説明するためのフローチャートであり、図11は、図1に示される血糖値推定装置の使用手順を説明するための図である。
【0049】
まず、ステップS1において、図11に示されるように、保持部材20と装着部材30の挟み部32との間に被験者の腕110が挟み込まれるように、血糖値推定装置100を被験者の腕110に装着する。これにより、保持部材20の開口部21aによって測定対象領域110aが規定される。そして、ステップS2において、微細孔形成装置120を用いて、被験者の腕110の開口部21aによって規定された測定対象領域110aに微細孔(抽出孔)111(図12参照)を形成する。具体的には、微細孔形成装置120のガイド部122を保持部材本体部21の段差部21dに嵌め込んだ後、被験者が、ボタン部121を押圧することにより、微細孔形成装置120の内部から微細針(図示せず)が突出する。これにより、被験者の腕110の開口部21aに規定された測定対象領域110aに微細孔(抽出孔)111(図12参照)が形成される。その際、図12に示されるように、被験者の腕110に、表皮を貫通し、真皮までは到達するが、皮下組織までは到達しない微細孔(抽出孔)111が形成されるので、これらの複数の微細孔(抽出孔)111を介して被験者の腕110から体液を抽出することが可能となる。これにより、血糖値推定装置100を用いて被験者の腕110からグルコースを抽出する際に、被験者が感じる痛みを軽減することが可能である。この後、微細孔形成装置120を保持部材本体部21から取り外す。
【0050】
次に、ステップS3において、抽出カートリッジ50を装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付ける。具体的には、図13に示されるように、未使用の抽出カートリッジ50には、カートリッジ本体51の上面および下面のほぼ全域を覆うようにフィルム90が貼り付けられており、カートリッジ本体51の上面および下面に露出されたすべての開口がフィルム90により塞がれている。これにより、カートリッジ本体51に設けられた各部に不純物が付着するのを防止している。この状態で、被験者は、カートリッジ本体51の下面側の矢印Y1方向側に配置されたフィルム90の端部を矢印Y2方向に引っ張ることにより、カートリッジ本体51からフィルム90を剥がす。また、カートリッジ本体51内部の各部は、エア(気体)で満たされている。そして、被験者は、抽出カートリッジ50を装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付ける。
【0051】
抽出カートリッジ50を装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付けると、容器52の位置に対応するように前記抽出カートリッジ取付部14に形成された凸部5によって当該容器52のふくらみ部分が押圧される。その結果、容器52のイージーピール7が破れ、当該容器52内部の純水が液溜め部6へ排出される。
その後、装置本体10をB方向に回動させて装置本体10を閉状態にし、操作ボタン12を操作することにより測定を開始する。
【0052】
[測定処理]
図14は、図1に示される血糖値推定装置の制御部による測定処理を説明するためのフローチャートである。図15〜20は、図1に示される血糖値推定装置の制御部による測定処理を説明するための図である。次に、図14〜20を参照しつつ、本実施の形態に係る血糖値推定装置100の制御部17による測定処理について説明する。
【0053】
図15および図16に示されるように、測定が開始された直後は、容器52から供給された所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の純水(液体)が液溜め部6に収容されている。そして、ステップS11において、ポンプ18から送風されたエアが噴出部14dからエア流入部55に噴出される。これにより、第2流路57に存在するエアが液溜め部6側に移送されるので、当該液溜め部6に収容された純水が、第2流路57から流入されるエアに押し出されるように、第1流路56を介して抽出媒体保持部53に移送される。そして、ステップS12において、制御部17により、液溜め部6から抽出媒体保持部53への純水の移送完了を確認する動作が行われる。具体的には、電源16により、第1電極63および第2電極64に高周波の電圧を印加するとともに、制御部17により、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスの変化を検知する。すなわち、抽出媒体保持部53の矢印Y1方向側に配置された第1流路56から抽出媒体保持部53に流入される純水が、抽出媒体保持部53の矢印Y2方向側の端部近傍にある、第1電極63と第2電極64との離間部分まで到達されると、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスが低下するので、その低下を制御部17により検知する。これにより、抽出媒体保持部53のほぼ全域に純水が移送されたことを確認することが可能となる。
【0054】
そして、ステップS13において、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスの変化の検知結果に基づいて、液溜め部6から抽出媒体保持部53への純水の移送が完了されたか否かが判断される。なお、この判断において、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスが所定の閾値を下回った場合に液溜め部6から抽出媒体保持部53への純水の移送が完了されたと判断するように制御部17を構成してもよいし、所定時間内のインピーダンスの低下量が閾値を超えた場合に液溜め部6から抽出媒体保持部53への純水の移送が完了されたと判断するように制御部17を構成してもよい。そして、所定時間が経過しても移送が完了しない場合には、ステップS19において、エラーとして取り扱われて、そのまま測定処理の動作が終了される。
【0055】
一方、制御部17により純水の移送が完了したと判断すると、ポンプ18によるエアの送風が停止され、純水の移送が停止される。その際、図17および図18に示されるように、所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の純水が抽出媒体保持部53だけに存在する状態となる(すなわち、図17および図18において、純水が存在している領域が抽出媒体保持部53である)。そして、ステップS14において、被験者の腕110の表面により開口部511aが塞がれた抽出媒体保持部53に純水を保持したまま、所定の時間、被験者の腕110(微細孔111)からグルコースが抽出される。具体的には、制御部17の制御に基づいて、電源16により第1電極63および第2電極64が負極、装着部材30の内面に貼り付けられた導電性材料からなるシートが正極となるように定電流を供給する。これにより、被験者の体内のグルコースが負の電圧が印加された第1電極63および第2電極64に向かって移動され易くなるので、抽出媒体保持部53内の純水に被験者の腕110(微細孔111)からスムーズにグルコースを抽出することが可能となる。そして、所定の時間経過後、電源16による第1電極63および第2電極64と、装着部材30の導電性材料からなるシートとに対する定電流の供給が停止され、グルコースの抽出が完了される。なお、電源16は、直流電流を供給してもよいし、交流電流を供給してもよいし、直流と交流とを混合した電流を供給してもよい。また、電源16は、定電圧を印加する定電圧電源であってもよい。
【0056】
その後、ステップS15において、ポンプ18によるエアの送風が再開される。これにより、第2流路57、液溜め部6および第1流路56に存在するエアがそれぞれ抽出媒体保持部53側に移送されるので、抽出したグルコースを保持する抽出媒体保持部53内の純水(以下、この液体をグルコース保持液とよぶ)の一部(たとえば、約2.5μl〜約3μl)が、第1流路56から流入されるエアに押し出されるように、第3流路58を介して反応部54に移送される(図19、図20を参照)。そして、反応部54に移送されたグルコース保持液は、反応部54に設置されたメッシュシート62に吸収されることによって、反応部54内に保持されるとともに、センサ部材80の下面80aに塗布された混合ゲルに接触される。また、グルコース保持液が移送される前に反応部54に存在したエアは、グルコース保持液の移送に伴って、溝部61を介して抽出カートリッジ50の外部に放出される。また、反応部54に移送されたグルコース保持液以外の余剰分のグルコース保持液は、第3凹部51c内の反応部54以外のスペース(流路)に逃がされる。
【0057】
そして、ステップS16において、グルコースの検出が開始される。具体的には、制御部17は、検出部40(図4参照)を構成する光源部41および受光部42を用いて、光源部41の光がセンサ部材80の発色色素により吸収された吸光度を所定時間、継続的に監視している。その後、ステップS17において、吸光度が実質的に飽和状態になった際の吸光度に基づいて、制御部17により血糖値が算出される。そして、ステップS18において、算出した血糖値が表示部11に表示され、制御部17による測定処理動作が終了する。
【0058】
なお、前述した実施の形態における容器52は、容器本体とは別に筒状の口部を備えているが、図21に示されるように金属薄膜だけで容器152を構成することもできる。この場合、容器152の周縁の一部を排出口152aとし、この排出口152aの近傍にシール手段としてのイージーピール107を設ける。図21に示される態様では、前述した実施の形態のような容器設置部(第4凹部51d)および装置本体10の凸部5を省略することができる。すなわち、カートリッジ本体51の平坦な面における所定箇所に容器152を配置し、この状態で装置本体10に抽出カートリッジ50を装着して、当該装置本体10とカートリッジ本体51とで容器152を挟むことにより容器内部に圧力を加えることができる。そして、この圧力によってイージーピール107を破って容器内部の抽出媒体を液溜め部6内に排出することができる。この場合、装置本体10から液溜め部6への抽出媒体の移動を容易にするために、排出口152aを長くして、その先端部分を液溜め部6内に配置するとともに、排出口152aが配設される部分のカートリッジ本体51表面に断面半円形の凹所を形成することができる。
【0059】
また、前述した実施の形態では、抽出媒体保持部、反応部および検出部が別々の場所に設定されているが、これらは同じ場所に設定することもできる。すなわち、抽出媒体によって被験者から抽出物を抽出させながら、同じ場所で抽出された抽出物の測定を行うことができる。
【0060】
また、前述した実施の形態では、容器52、152を構成する素材としてアルミニウムなどの金属薄膜を用いているが、金属薄膜に代えて、例えば比較的防湿度の高いポリテトラフルオロエチレン系の合成樹脂を用いることも可能である。
【0061】
さらに、前述した実施の形態に係る生体成分分析装置では、被験者から抽出物を抽出する抽出媒体保持部と、抽出された抽出物によって生じる所定の反応に基づいて当該抽出物を検出する検出部とが同一の装置内に配設されているが、本発明の抽出カートリッジおよび抽出媒体収容具は、抽出媒体保持部と検出部とが別々の装置に設けられている場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の生体成分分析装置の一実施の形態としての血糖値推定装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示される血糖値推定装置の装置本体を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示される血糖値推定装置の分析ユニットを被験者の腕に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示される血糖値推定装置の装置本体の構成を説明する概略説明図である。
【図5】図1に示される血糖値推定装置の抽出カートリッジを上側から見た場合の平面図である。
【図6】図5に示される抽出カートリッジを下側から見た場合の平面図である。
【図7】図5のA−A線断面説明図である。
【図8】図5のB―B線断面説明図である。
【図9】図1に示される血糖値推定装置の抽出媒体収容部の平面説明図である。
【図10】被験者が血糖値推定装置を使用する際の手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】図1に示される血糖値推定装置の使用手順を説明するための図である。
【図12】図11に示される微細孔形成装置によって微細孔が形成された皮膚の状態を示す断面図である。
【図13】図1に示される血糖値推定装置に用いられる未使用の抽出カートリッジを示す概略図である。
【図14】図1に示される血糖値推定装置の制御部による測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】図1に示される血糖値推定装置において、液体収容部に液体が収容された状態の抽出カートリッジを示す平面説明図である。
【図16】図1に示される血糖値推定装置において、液体収容部に液体が収容された状態の抽出カートリッジを示す断面説明図である。
【図17】図1に示される血糖値推定装置において、抽出媒体保持部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示す平面説明図である。
【図18】図1に示される血糖値推定装置において、抽出媒体保持部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示す断面説明図である。
【図19】図1に示される血糖値推定装置において、反応部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示す平面説明図である。
【図20】図1に示される血糖値推定装置において、反応部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示す断面説明図である。
【図21】血糖値推定装置の抽出媒体収容部の他の態様の平面説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 分析ユニット
5 凸部
6 液溜め部
7 イージーピール
10 装置本体
11 表示部
12 操作ボタン
13 解除ボタン
14 抽出カートリッジ取付部
15 係合孔
16 電源
17 制御部
18 ポンプ
20 保持部材
21 保持部材本体部
22 係合部材
23 カバー部材
30 装着部材
31 連結部
32 挟み部
33 軸部材
40 検出部
41 光源部
42 受光部
51 カートリッジ本体
52 容器(抽出媒体収容部)
53 抽出媒体保持部
54 反応部
56 第1流路
57 第2流路
58 第3流路
59 連通路
60 長孔
80 センサ部材
90 フィルム
107 イージーピール
110 腕
152 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚に接触可能であり、当該被験者の皮膚から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持することができる抽出媒体保持部と、
前記抽出物によって所定の反応を生じる反応部と、
この反応部で生じる所定の反応に基づき前記抽出物を検出する検出部と、
前記抽出媒体を収容可能な抽出媒体収容部と、
この抽出媒体収容部に収容された抽出媒体を前記抽出媒体保持部に移送するとともに、当該抽出媒体保持部に移送され、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を、前記抽出媒体保持部から前記反応部に移送する抽出媒体移送部と、
前記検出部による検出結果を分析する分析部と
を備え、前記抽出媒体収容部が、金属薄膜製の容器からなることを特徴とする生体成分分析装置。
【請求項2】
前記容器から抽出媒体が排出される排出口近傍に、当該容器を構成する金属薄膜の押圧により密封性が解除されるシール手段が設けられている請求項1に記載の生体成分分析装置。
【請求項3】
前記シール手段が合成樹脂製薄膜のヒートシールによって形成されている請求項2に記載の生体成分分析装置。
【請求項4】
前記金属薄膜がアルミニウムからなる請求項1または2に記載の生体成分分析装置。
【請求項5】
前記生体成分分析装置は、前記抽出媒体収容部および抽出媒体保持部を含む抽出カートリッジが当該生体成分分析装置に装着されたときに、当該抽出媒体収容部に対応する位置に凸部を備えており、この凸部によって抽出媒体収容部を構成する金属薄膜製の容器が押圧されることで前記シール手段による密封が解除されて抽出媒体が所定の位置に供給される請求項2〜4のいずれかに記載の生体成分分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の生体成分分析装置に用いることができ、前記抽出媒体収容部および抽出媒体保持部を備えることを特徴とする抽出カートリッジ。
【請求項7】
前記容器から抽出媒体が排出される排出口近傍に、当該容器を構成する金属薄膜の押圧により密封性が解除されるシール手段が設けられている請求項6に記載の抽出カートリッジ。
【請求項8】
前記シール手段が合成樹脂製薄膜のヒートシールによって形成されている請求項7に記載の抽出カートリッジ。
【請求項9】
前記金属薄膜がアルミニウムからなる請求項6または7に記載の抽出カートリッジ。
【請求項10】
被験者の皮膚から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を収容する容器を備えており、この容器が金属薄膜で作製されていることを特徴とする抽出媒体収容具。
【請求項11】
前記容器から抽出媒体が排出される排出口近傍に、当該容器を構成する金属薄膜の押圧により密封性が解除されるシール手段が設けられている請求項10に記載の抽出媒体収容具。
【請求項12】
前記シール手段が合成樹脂製薄膜のヒートシールによって形成されている請求項11に記載の抽出媒体収容具。
【請求項13】
前記金属薄膜がアルミニウムからなる請求項10または11に記載の抽出媒体収容具。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−104417(P2010−104417A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276700(P2008−276700)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】