説明

生体物質導入装置、生体物質導入方法およ生体物質導入用磁性担体

生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体に係り、生体物質のホスト内への導入を効率的に行うことができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することを目的とする。本発明は、使用の際に、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合した混合液を収容する1または2以上の収容部と、前記収容部内に及ぼす核力を制御して該磁性担体を前記ホストに対し相対的に動かし前記生体物質を該ホストに導入する導入処理部とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体に関し、詳細には、磁性担体を用いて、生物の細胞、細菌等に外来のDNA等の遺伝物質を導入して、DNA等のクローニング、遺伝子治療、植物または動物の品種改良、有用タンパク質の生産、生化学分析等を行う工業、医療保健業、薬剤製造業、農業、水産業、畜産業、生化学等のあらゆる分野で利用することができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体に関する。
【背景技術】
従来、遺伝子工学の分野で、DNAクローニング、遺伝子治療、または品種改良等を行うには、遺伝子を切ったり貼ったりする酵素の他に外来の目的遺伝子を生物細胞に持ち込む運び屋として、ベクターが必要である。このようなベクターとして、例えば、ホスト(宿主)として大腸菌等の細菌を用いる場合には、プラスミドまたはλファージを用い、大腸菌等と混合した後に電気ショックを与えて導入するようにしていた。また、このようにして導入された大腸菌を分離するためには、プラスミド等に抗生物質に対する抗生物質耐性遺伝子を組み込む一連の処理の後、該抗生物質で処理をして形質転換を起こした細胞だけを抽出するようにしていた。
また、外来の目的遺云子を動物細胞に持ち込むには、(1)外来遺伝子のまま導入するか、(2)マイクロインジェクションにより導入する方法、または、(3)レトロウイルスに運ばせる方法があった。
外来の目的遺伝子をそのまま動物細胞に導入するには、リン酸カルシウムを外来遺伝子に混ぜ、沈澱した遺伝子を動物細胞と混ぜることによって行っていた。こうすれば、細胞が沈澱した外来遺伝子をほんのわずかであるが取り込むからである。
マイクロインジェクションでは、直径0.1μmという非常に細かいガラス製のマイクロピペット(極細の毛細管)を利用して顕微鏡を見ながら外来遺伝子を細胞の核の中に直接入れるものである。
また、レトロウイルスをベクターとして利用するには、レトロウイルスのLTR(転写プロモータとポリA結合部位)で外来の目的遺伝子の両端を挟み込んで作成し、動物細胞に導入するものである。
さらに、生体物質を固定化した磁性微粒子を細胞、器官、組織に高速(初速が毎秒50〜400m)で撃ち込むことによって、該生体物質を磁性微粒子を導入する方法があった(例えば、特開平6−133784号公報の段落14,19,20参照)。これは磁力を用いることにより細胞の濃縮や分離を容易化するためのものである。
ところで、以上説明した従来の目的遺伝子の導入方法にあっては、ベクターとして、プラスミド等の寄生性遺伝因子(細菌の染色体外遺伝子で、染色体とは独立に自立増殖できるもの)やλファージ等のウイルスを用いているが、寄生性遺伝因子やウイルスは本来、病原性を持っている場合が多く、使用する際に、病原性を失わせたとしても、ホストに感染していた別の病原体と組換えを起こして病原性を取り戻してしまう可能性があるという問題点があった。また、導入の際に電気ショックを与えたとしても、それだけでは導入効率はあまり高くないという問題点を有していた。また、導入細胞を抽出する際に用いた抗生物質耐性遺伝子の存在によって、ホストに抗生物質耐性遺伝子の拡散による環境への悪影響を及ぼすおそれがあるという問題点を有していた。
また、ホストが動物細胞の場合にあっては、その第1の方法は、操作方法が簡単で容易に実行し得る方法であるが、この方法では、極めて効率が悪いという問題点を有していた。また、第2の方法は、細胞の核の中に確実に導入することができるが、この技術を会得するには、相当の技術的な訓練が必要であり、手間がかかるという問題点を有していた。
また、第3の方法は、レトロウイルスの安全確保のために自己複製能力を欠失させるとともに、増殖に必要な遺伝子を染色体に組み込んだパッケージ細胞株を用いているが、前述したプラスミド等と同様に、ホストに感染していた別の病原体と組換えを起こして病原性を取り戻してしまう可能性があるという問題点を有していた。
また、生体物質を固定した磁性微粒子を発射装置を用いて細胞内に高速で撃ち込む導入方法は、装置規模が大きくなるとともに、一旦発射されると、細胞を逸れた磁性微粒子を再度利用することができず、やはり、効率が低いという問題点を有していた。また、高速で撃ち込むため、強度の小さい細胞の場合には細胞との衝突の際に細胞が破壊されて生体物質を導入することができないという問題点もあった。
以上説明したように、いずれの方法であっても、ホストに生体物質を導入するには、これらの液中において懸濁または含有するホストと生体物質との自然な遭遇に任すか、人手により1個ずつ、または発射装置により1回だけホストに生体物質の導入を図るものであり、効率があまり良くないという問題点を有していた。
そこで、本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、第1の目的は、ホストと生体物質との自然な遭遇に任せるのではなく、磁力を用いて、その大きさ、方向、位置等を制御することによって、ホストに進入するまでは該磁性担体を動かすことによって衝突を促進し、または、生体物質を液中で高濃度化して遭遇を促進し、効率良くホストに外来の生体物質を導入することができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することである。
第2の目的は、種々の処理を一貫して、人手や熟練技術者にたよることなく自動的に、したがって、簡単にホストへの導入を行うことができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することである。
第3の目的は、ウイルスやプラスミド等の寄生性遺伝因子の組換え体を用いなくても導入を可能として、安全に生体物質導入を行うことができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することである。
第4の目的は、外来の生体物質を導入したホストを容易かつ確実に分離抽出することができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することである。
第5の目的は、抗生物質耐性遺伝子を組み込むことによる環境への影響を防止して安全に分離抽出することができる生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することである。
第6の目的は、ホストや生体物質の性質等に応じた、種々の条件で導入を行うことができる多様性または汎用性のある生体物質導入装置、生体物質導入方法および生体物質導入用磁性担体を提供することである。
【発明の開示】
以上の技術的課題を解決するために、第1の発明は、使用の際に、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合した混合液を収容する1または2以上の収容部と、前記収容部内に及ぼす磁力を制御して、前記磁性担体を液中で前記ホストに対して相対的に動かし前記生体物質を該ホストに導入する導入処理部とを有する生体物質導入装置である。
「ホスト」とは、外来の生体物質を導入し、または導入すべき対象であって、例えば、植物または動物細胞(ヒト細胞を含む)等の真核細胞、細菌等の原核細胞、タンパク質等が該当する。
「生体物質」とは、該ホストに所望の特性を付与するための物質であって、例えば、遺伝子、酵素、抗原、抗体、蛋白質、フェロモン、アロモン、ミトコンドリア、ウイルス、プラスミド等を含む。
磁性担体の生体物質の保持は、例えば、物理吸着、電気的相互作用、化学吸着、共有結合等によって行なう。
「磁性担体」は、全体または一部が磁化されて磁性を帯びまたは磁化可能な担体であって、その形状、大きさ、磁化率等の性質、量、濃度は、生体物質の導入の方法、ホストの性質、量、濃度等によって決定される。磁性担体の素材は、例えば、表面安定化物質をもった超常磁性単一ドメイン粒子である。粒子は、例えば、水酸化鉄、酸化鉄水和物、酸化鉄、混合酸化鉄、あるいは鉄からなる。
磁性担体のサイズは、ホストの種類もしくはサイズ等や生体物質の種類もしくはサイズ等の条件によって決定され、例えば、ホストが原核細胞の場合には、約100〜200nmであり、真核細胞、例えば、酵母の場合や動物細胞の場合には、1〜2μmである。
磁性担体をホストに付着させることによって生体物質を導入させる場合には、磁性担体の形状は、例えば球形であり、粒子表面コート物質は、ホストの表面への付着性の良い物質である必要がある。さらに、ホストへの付着ができず、または、ホストに細胞膜の強度が大きい場合や、細胞壁が存在する場合、または細胞の表面処理を行なわずにホストへの進入を行う場合には、磁性担体の形状は、先細りの形状をもつ端部を持たせるのが好ましい。
「前記収容部内に及ぼす磁力を制御して」とは、前記収容部内に及ぼす所定磁力の方向、大きさ、磁力源の収容部または液に対する相対的位置、磁力源の収容部または液に対する相対的速度もしくは加速度または磁力を及ぼす時間等を制御して、前記ホストと磁性担体との間を相対的に動かして衝突を促して衝突数を増加させもしくは衝突率(単位時間当りの平均衝突数)を高めること、または、例えば穿孔処理のされたホストや穿孔処理が不要な柔軟な境界部を持つホストに対しては、生体物質を保持している磁性担体を移動させて、その周囲よりも生体物質が高濃度化した領域を現出させて、ホストとの遭遇の機会を増加させて導入効率を高めることができる。
衝突または遭遇を促すには、ホストまたは液に対する磁性担体の相対的な移動距離が長くなればなるほど好ましい。例えば、往復直線運動、回転運動、振動、これらの組み合わせ運動、または、その他の閉曲線に沿った運動等の周期的運動または非周期的な繰返し運動が好ましい。
このためには、磁力を1方向のみから及ぼすようにするのではなく、収容部を挟んで、少なくとも2方向から、好ましくは独立に大きさ、方向、位置を制御可能となるように及ぼすようにする。これは、1方向のみから磁力を及ぼすのであれば、磁性担体はその磁力が及ぼされる1方向のみに極短時間で移動して、その方向に沿って収容部の壁部と衝突し、該壁部に吸着または凝集した状態となる。磁性担体が一旦壁部に吸着または凝集した状態となると、単に該磁力を除去しただけでは、磁性担体は吸着した状態から解放されない。その状態では、液中で広く離散し、又は液中の一部に凝集しているホストに向けて、衝突または遭遇を促すように動かすことは難しい。吸着した状態にある磁性担体を離脱させて液中でホストとの衝突または遭遇の機会を増加させるには、吸着した磁性担体を解放する方向、例えば、収容部を挟んで磁性担体を吸着させた磁力方向と逆方向に磁力を及ぼし、磁性担体を収容部の略中央部を通って逆方向に移動させるようにする。これを繰り返してホストとの衝突または遭遇の機会を増加させる。その際、磁性担体を吸着させた磁力を除去した上で他の方向から磁力を及ぼす場合、または、磁力を除去せずに磁力を加える場合等がある。
また、磁性担体の前記収容部の壁部への吸着を最初から回避又は緩和するようにして衝突または遭遇の機会を増加させるようにすることも可能である。例えば、一方向から及ぼされる磁力に対して、磁性担体が収容部の壁部へ吸着する前に、前記方向と異なる方向から磁力を及ぼすようにして往復運動をさせるようにする。さらには、例えば、少なくとも2方向から同時に同程度の大きさの磁力を水平方向に及ぼすようにして磁性担体に及ぼされる合成磁力を、水平面内においては相互に打ち消し合うようにするかまたはできるだけ小さくして、磁性担体を液中に展開状態にした状態にした上で、該磁力の及ぼず位置を同時に上下方向に往復運動や回転運動をするようにして、該磁性担体を上下方向に往復運動や回転運動をさせる。
以上のように制御することによって、より効率的に磁性担体とホストとの間の衝突または遭遇の機会の増加を図ることができる。
このようにして、液中で磁性担体を磁力によって前記ホストに対して相対的に動かし、収容部に吸着した場合には磁性担体を吸着状態から磁力によっていち早く解放して、前記ホストに対して相対的に動かし、または、最初から収容部との衝突による吸着による凝集状態となることを予め回避するようにした状態で、前記ホストに対して相対的に動かし、または、積極的に磁性担体を液中に展開した状態で前記ホストに対して相対的に動かすことによって、液中に懸濁している前記ホストと磁性担体との衝突または遭遇の機会を増加させることができる。
ここで、「2方向」とは、向きをも考慮した方向であり、向きが異なれば方向も異なる。「前記収容部を挟んで少なくとも2方向から磁力を及ぼす」とは、必ずしも、2方向が、前記収容部を挟んで一直線状に向かい合う場合のみならず、前記収容部を挟んである角度を持って向かい合う場合をも含む。また、各磁性担体に及ぼされる合成磁力が相互に打ち消し合う場合のみならず、有限の合成磁力である場合をも含む。さらに、各方向の磁力が同時に及ぼされる場合のみならず、時間差を置いて及ぼされる場合も含む。また、各方向における磁力の大きさは同一の場合に限られるものではない。なお、磁力は収容部に及ぼされているのであるから、磁力の方向は、収容部内を通過するように向けられている。好ましくは、各方向の磁力を関係付けてその大きさ、方向、位置を制御する。好ましくは、多方向から収容部に磁力を及ぼすように制御して液中に磁性担体を動き回らせ、または展開するように分布させる。
磁性担体とホストとの遭遇とは、ホストへの穿孔を伴わずに該磁性担体と該ホストとが接触することである。これによって該磁性担体がホストに付着しまたは該磁姓担体をホスト内に進入させる。一方、磁性担体のホストへの衝突とは、ホストへの穿孔を伴って該磁性担体と該ホストとが接触することである。これによって磁性担体がホストに付着しまたは進入する。したがって、遭遇による生体物質の導入には、ホストの性質によっては、電気穿孔法(electroporation)等により生体物質を導入しやすい状態にすること、即ちホストへ穿孔する機能等を有することが好ましい。なお、前記収容部は、例えば、ガラス、または、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の合成樹脂で形成され、透明体または半透明体が好ましい。
遭遇を促すには、例えば、磁性担体を、液中で該磁力の方向にある領域に集めて、該領域を他領域よりも生体物質で高濃度化することによって行なう。このような高濃度化が有効なのは穿孔処理が行なわれたホストまたは磁性担体の進入にとって性質上穿孔の必要のないホストに対して磁性担体の進入を行わせる場合である。
第1の発明によれば、生体物質の導入を、磁性担体を利用することにより、ウィルス等のベクターを用いることなく機械的または物理的に行うことができるので、安全に生体物質の導入をはかることができる。また、ホストとの自然な遭遇または衝突に任せるのではなく、磁力を制御して該生体物質を保持した磁性担体と前記ホストとの間を相対的に液中で動かし、前記磁性担体と前記ホストとの間の衝突数を増加させ、もしくは衝突率を高め、または、ホストに対して遭遇の機会を増加させることにより、ホストへの生体物質の導入を促進することができる。また、剛性があり、質量のある磁性担体を用いることによって、生体物質のみの場合よりも、液中での推進力を高め移動を容易化し、前記ホストとの衝突または遭遇の機会を増加しホスト内への進入を容易化する。
また、磁力を制御して導入を行うようにしているので、ホストや生体物質の性質等に応じた最適な磁力の大きさ、速度、加速度等の衝突態様を実現することによって、ホストの破壊を防止し、磁性担体を高濃度化した領域を現出し、または磁性担体をホストの存在する濃度の高い箇所に意のままに移動させることによって遭遇の機会を増加させることにより、またはこれらを組み合わせることによって、汎用性、多様性があり、確実で信頼性の高い効率の良い導入を行うことができる。
第2の発明では、前記導入処理部は、前記収容部内に磁力を及ぼすことが可能な磁力源と、前記収容部もしくは前記混合液と前記磁力源との間の相対的な位置もしくは速度、または、前記磁力源による磁力自体を変えることによって、前記磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かすように制御する磁力制御部とを有する生体物質導入装置である。
「相対的」であるから、ホスト、または、ホストを含有する混合液を静止状態または略静止状態にして前記磁性担体を動かすことによって、前記磁性担体を静止または略静止状態にしてホストを含有する液を動かすことによって、または、ホストを含有する液と前記磁性担体の双方を異なる態様で動かすことによって、磁性担体をホストに対して相対的に動かす。前記ホストが細胞等の生体でかつ強度が低い場合には、前記磁性担体を動かす方が好ましい。なお、前記磁性担体の前記収容部への衝突を回避しまたは緩和するようにするには、前記磁力源は、該収容部を挟んで少なくとも2方向から磁力を及ぼす。「位置もしくは速度を変える」のであるから、等速度運動、加速度運動、振動、回転等を含む。「速度」は速度の大きさのみならず、その方向をも含む。
前記磁力源は、永久磁石または電磁石を移動可能に収容部の周囲に配設するか、固定した電磁石を収容部の周囲に配設したものである。前記磁力制御部は、前記磁力源を前記収容部に相対的に動かす磁力移動部、または、前記電磁石の磁力の大きさを変更する磁力変更部である。該磁力移動部は、例えば、前記磁力源を前記収容部の周側面方向、上下方向に沿って動かし(振動等を含む。以下同じ)、または、前記収容部に対して接離可能(接近および離間可能)に移動させ、または、前記収容部を、前記磁力源に対して相対的に、上下方向に沿って動かし、回転させ、もしくは水平方向に沿って動かすものである。磁力の変更と、磁力源の位置の移動を組み合わせることによって、磁性担体に対する多様な処理を行うことができる。
第2の発明によれば、前記収容部もしくは前記混合液との間で相対的な位置もしくは速度または磁力自体の変更が可能な磁力源を設けることによって、磁性担体とホストとの間を相対的に動かすように制御して、磁性担体とホストとの衝突数を増加させもしくは衝突率を高め、または磁性担体を高濃度化することによって、またはその双方によって、生体物質の導入を促進することができる。なお、その際、磁力源の磁力を外部から前記収容部を挟んで少なくとも2方向から及ぼすことによって、磁性担体に及ぼされる合成力が一方向にのみに偏らないように打ち消し合うようにして、重力に抗し、かつ、磁性担体が壁部に吸着するまでの時間を長引かすようにする。この場合、例えば、前記収容部を挟んで相対する方向に同程度の磁力を水平に及ぼすと、磁性担体層を得ることができる。さらに、前記収容部または磁力源の位置を周方向に沿って変えることによって、該磁性担体層が前記収容部内に一様に広がり、その状態で上下方向に移動させるようにすると、衝突数を増加しもしくは衝突率を高めまたは遭遇の機会を増加させることができる。
第3の発明は、前記導入処理部は、前記収容部に収容された液中の多数の前記磁性担体を磁力で展開させた状態で、該磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かす生体物質導入装置である。
ここで、「多数の磁性担体を磁力で液中に展開させた状態」とは、多数の磁性担体が磁力を受けて液中のある領域内に広がって分布している状態をいう。この展開状態としては、平面的な場合、立体的な場合があり、前記ホストの分布状態に合わせて決定される。展開状態にある磁性担体は、磁力を動かさなければ浮遊状態にある。前記磁力を動かすことによって磁性担体を容易に動かすことができる。
例えば、前記ホストが液中内に広く離散している状態では、多数の前記磁性担体を前記収容部を仕切るように平面状に周囲よりも高濃度な状態で展開させて、該展開面の法線方向に動かすように制御するのが好ましい。また、前記ホストが一部領域に凝集している場合には、多数の磁性担体は該領域を覆う程度の断面積をもつように液中で展開して、該領域方向に向けて、前記展開面の法線方向に動かす。このように、前記ホストの分布状態に合わせて、液中に多数の磁性担体を展開させた状態で、該磁性担体の展開面の法線方向に沿って、該磁性担体が前記ホストと衝突または遭遇する可能性が高い方向に動かす。
ここで、「磁力で展開させた状態」を実現するには、収容部を挟むように少なくとも2方向から磁力を及ぼすことが必要である。
第3の発明は、磁性担体を収容部の液中に展開させた状態で、該磁性担体とホストとの間を相対的に動かして、磁性担体を衝突数もしくは衝突率を高めまたは遭遇の機会を増加させるものである。したがって、収容部との衝突による吸着を避け、また磁性担体層を形成しているので、より幅広く磁性担体との衝突数を増加もしくは衝突率を高めまたは遭遇の機会を増加させることができる。
第4の発明は、前記磁性担体は、1の長軸をもつ粒子であって、該長軸方向に沿って前記ホスト内に進入可能な大きさをもつ生体物質導入装置である。
ここで、該磁性担体は、長軸方向に沿って磁化され、または磁化されやすいことが好ましい。これによって、磁性担体を磁力方向に沿って移動させることができるので制御しやすい。また、前記磁性担体は、前記長軸方向に沿った回転対称軸をもつようにすれば、磁性担体の進行に応じてスピンを与えることによって、意図する方向への正確な進行をさせることができて制御しやすい。
第4の発明は、磁性担体を1軸が他軸よりも長く形成された長軸をもち、生体物質を保持可能であり、また、該長軸方向に沿って前記ホスト内に進入可能な大きさをもっているので、前記ホスト内に進入しやすい。
第5の発明は、前記収容部内には、生体物質とともに、前記ホストへの生体物質の導入を補助するための導入補助剤が収容されている生体物質導入装置である。ここで、「導入補助剤」には、例えば、バクテリアの遺伝子導入の際、細胞膜の流動性を高めて、プラスミドを取り込みやすくする塩化カルシウム、動物細胞の細胞膜をプロトプラスト化するPEG(ポリエチレングリコール)や細胞壁を溶かすチティナーゼまたは、ホストとの接触の機会を増やすことによって導入を促進するため、ホスト同士の凝集を促進させる凝集促進剤がある。凝集促進剤としては、例えば、細胞間に架橋を与える2価の金属イオン等がある。
第5の発明は、生体物質とともに、ホストへの生体物質の導入を補助するための導入補助剤を前記収容部内に収容している。これによって、前記ホストが前記生体物質を取り込みやすくし、または、ホストと磁性担体との接触の機会を増大することによって導入効率を高めることができる。
第6の発明は、前記磁性担体は、前記生体物質を保持する保持部を有する生体物質導入装置である。
ここで、前記保持部は、生体物質または前記導入補助剤との接触面積を広げて、物理吸着または電気的相互作用等により、磁性担体がホスト内に進入しまたはホストと接触しまたは付着した際に、該生体物質等を乖離容易な態様での保持を可能とするものである。例えば、磁性担体自体に設けた凹部、多孔、隙間等、または該磁性担体に固定または結合させた他の物質や担体である。該凹部の例としては、前記磁性担体の側面の略中央の周囲に沿って設けた環状の溝がある。多孔の例としては、該磁性物質そのものを加工する場合、該磁性物質に多孔性物質をコーティング等によって保持させたもの、または、セルロースゲル、ハイドロキシアパタイト(hydroxy−apatite)等の多孔性ゲル物質に、前記磁性物質または/および生体物質を保持させたものがある。なお、前記保持部は、前記磁性担体の内部に設けるようにしても良い。
また、該磁性担体に固定または結合させた他の物質や担体の例として、例えば、1または2以上の糸状担体がある。該糸状担体に、生体物質が保持されることになる。この糸状担体は、細胞膜の強度が弱い場合のように、前記ホストの強度が弱く温和な条件下での導入が必要な場合、または、希薄菌液や、凝集させた方が扱いやすい場合に用いる。この場合、ホストへ糸ごとに導入する訳ではなく、糸に絡めた菌体に磁石でコントロールすることにより負荷をかけ、点ではなく線として力を加えダメージを軽減することができる。この場合には、磁性担体を直接加工する必要がないので、作成が容易である。
また、2以上の磁性粒子を連結させた複合粒子を磁性担体として、その連結によって生じた磁性粒子間の隙間や連結箇所のくびれ等を保持部として用いることができる。
第6の発明では、磁性担体に保持部を設けることによって生体物質等の保持能力を高め確実な導入を行うことができる。
第7の発明は、前記磁性担体は、前記長軸方向に沿った両端または一端が先細り形状に形成された生体物質導入装置である。これによって、磁性担体がホスト内に進入しやすくなる。第7の発明では、磁性担体の前記長軸方向に沿った両端または一端を先細りの形状に形成している。したがって、硬い細胞壁や、前記導入補助剤等で表面処理のされていない細胞膜をもつ細胞等のホストへの進入を容易化し、また、確実に進入をすることが可能である。
第8の発明は、前記導入処理部は、前記ホスト、前記生体物質または前記磁性担体の性質、量または濃度に基づいて導入制御を行う生体物質導入装置である。
ここで、性質には、物理的性質、生体的性質または化学的性質があり、物理的性質には、例えば、強度、大きさ、形状、質量、磁化率等があり、生体的性質には、最適な温度等の環境条件等がある。化学的性質には、ホストや生体物質の酸やアルカリに対する性質、金属に対する毒性等がある。表面処理をして磁性担体が進入しやすいか否かは、物理的性質である。例えば、強度の小さいホストに対しては、該ホストに衝突すべき磁性担体の運動量を小さくして、衝突させまたは遭遇させることによってホストの破壊を防止する。また、細胞壁のある植物細胞のような強度のあるホストに対しては、該ホストに衝突すべき磁性担体の運動量を大きくして、細胞壁を貫通するような力を与えるようにする。これらの性質、量、濃度データは、該装置に設けた入力装置に入力することによって、該生体物質導入装置と接続した情報処理装置を通じて処理し、最適な磁力源を含む磁力の制御を行うことになる。
第8の発明は、前記ホスト、生体物質、または磁性担体の性質、量、濃度等に基づいて導入制御を行うものであるため、種々のホスト、種々の生体物質について最適なやり方で、多様性かつ汎用性のある導入処理を行うことができる。
第9の発明は、前記収容部は、前記混合液が通過可能な液通過路を有し、前記磁力制御部として、該液通過路内の圧力を調節して液体の吸引吐出を行う圧力調節部を有する生体物質導入装置である。
ここで、該収容部には、前記液通過路の他、液を貯留可能な貯留部を設けるようにしても良い。該液通過路または前記収容部全体が、前記圧力調節部が有するノズルに着脱可能に装着されるようにしても良い。
第9の発明に係る生体物質導入装置では、前記収容部に前記混合液が通過可能な液通過路を設けている。したがって、液体の吸引吐出により混合液を収容部に容易に収容し、または排出することができる。また吸引吐出運動によって動かされる混合液に含有するホストと、前記磁力源によって動かされる磁性担体との間の相対的な種々の運動を引き起こして、衝突または遭遇の機会を増すことができる。
第10の発明は、前記収容部が、前記導入処理部が該収容部に対して導入処理を可能とする導入処理位置との間を相対的に移動可能とする移動機構を設けた生体物質導入装置である。ここで、導入処理位置とは、例えば、磁力源に近接した位置である。該移動機構による移動と、前記導入処理部による導入処理のための磁力源または収容部の移動とは一般的には異なるが、共通の機構を用いて実行することはできる。
第10の発明は、前記収容部を、前記導入処理部が該収容部に対する導入処理を可能とする導入処理位置との間で相対的に移動可能とする移動機構を設けるようにしている。したがって、前記導入処理を行うために必要な装置、例えば磁力源を各収容部に近接して設けておく必要がなく、導入処理を行う場合だけ、該収容部を導入処理を行うために必要な装置、例えば、磁力源が用いられる位置に移動するだけで足りる。したがって、多数の収容部に対して、少数の導入処理位置を設ければ済むので、装置構造を簡単化し、かつ製造コストを削減することができる。また、各収容部ごとに、近接して磁力源等を設ける必要がないので、装置構造を集積化してコンパクトに製造することができる。さらに、目的に応じた、種々の磁力を与える磁力源を有するような導入処理位置を用意することによって、1の収容部について各種の導入処理を行うことができるので多様性、汎用性が高い。また、導入処理を含めた名種処理を該収容部を用いて一貫して自動的に行うことを可能とする。
第11の発明は、前記磁力源は、2以上の電磁石を前記収容部の周囲に設けたものであり、前記磁力制御部は、該電磁石の磁力の大きさを電気的に変更する生体物質導入装置である。前記磁性担体は、磁力の大きい方に向けて移動し、ある程度の距離を移動したところで、磁力の大きさを変えれば、逆向きに移動する。これを繰り返すように制御すれば、磁性担体とホストとの衝突または遭遇を促進することができる。この場合、前記磁力源は、前記電磁石を前記収容部の周囲に、例えば、収容部を挟んで2個ずつが向かい合うように配置して磁力を切り換えるように制御すれば、液中で磁性担体の往復運動等を容易に実現することができ、磁性担体が液中で長い時間動きまわることができる。
第11の発明は、磁力源として2以上の電磁石を前記収容部の周囲に配置し、該電磁石の磁力の大きさの制御のみで、導入処理を行うようにしているので、機構的に動く部分を設ける必要がないので、構造を簡単化し、装置寿命を長くすることができる。
第12の発明は、前記磁力源として、2以上の永久磁石ブロックまたは電磁石を有し、前記収容部の周囲に、移動可能に設けたものであり、前記磁力制御部は、該各磁力源を該収容部に対して動かす生体物質導入装置である。磁力源の動きは、例えば、磁力源を収容部に対して接近し、離間し、上下方向に沿って、および周方向に沿って行う。その際、2個ずつが該収容部を挟んで向かい合うように設け、磁力源を接近させたり離間させたりすることによって、容易に往復運動等の周期運動が可能となり、磁性担体を長く動き回らせることができる。
第12の発明は、磁力源として、2以上の永久磁石ブロックまたは電磁石を有し、前記収容部の周囲に、移動可能に設けることによって、該磁力源を接近させたり離間させたりすることによって、振動、加速度運動等の種々の複雑な動きをさせることができる。
第13の発明は、前記磁力源は、円管状の前記収容部の周囲を囲むように設けた所定磁極をもつ円環状の磁石であって、前記磁力制御部は、該磁力源を前記収容部の半径方向、その軸方向およびその周方向に沿って移動可能とする磁力源移動部または前記収容部を移動可能とする収容部移動部またはその混合液を移動する混合液移動部を有する生体物質導入装置である。
「その混合液を移動する混合液移動部」は、前記混合液を収容部内で移動させるものであり、液通過路を有する場合には、混合液を吸引および吐出可能な圧力調整部に相当する。前記円環状の磁石の軸線は、前記収容部の軸線に対して、略同軸に、平行にまたは傾斜するように移動できるのが好ましい。「所定磁極」として、多方向から磁力を及ぼすことができるように、円環に沿ってなるべく広い範囲に磁極が略均一に分布するのが好ましい。これによって、前記磁性担体が前記収容部を上下に略仕切るように層平面状に分布させることができる。したがって、該層を上下に動かすことによって該液中のホストと広く遭遇する機会をより一層増加させる。
第13の発明は、収容部の周囲を囲む円環状の磁石を用いることによって、多方向から収容部に対して容易に磁力を及ぼすことによって、磁性担体を収容部内に該収容部を略仕切るように平面状に他領域よりも高濃度な状態で展開して所定方向に動かすことにより、磁性担体とホストとの間の衝突または遭遇の機会を増加させる。また、磁石の個数が1個だけなので、装置構造または支持構造を簡単化する。
第14の発明は、複数個の前記収容部が水平ラインに沿って設けられ、前記導入処理部は、前記収容部を挟んで前記水平ライン方向に沿って設けられ各収容部に対応する位置に各々磁極が設けられた2本のライン状磁力源と、前記収容部もしくは前記混合液と前記ライン状磁力源との間の相対的な位置、または、前記ライン状磁力源による磁力自体を変えることによって、前記磁性担体とホストとの間を相対的に移動可能とする磁力制御部とを有する生体物質導入装置である。
ここで、「収容部若しくは前記混合液と前記ライン状磁力源との間の相対的な位置を変える」とは、例えば、ライン状磁力源を前記収容部若しくは混合液に対して接近しもしくは離間し、上下方向に移動し、または水平ライン方向に沿って移動することである。または、収容部を前記ライン状磁力源に対して、接近し、離間し、上下方向に移動し、または水平ライン方向に沿って移動し、または各収容部がその軸周りに回転し、または混合液を収容部に対して移動させることである。これによって、ライン状磁力源の磁力の方向を種々の方向から及ぼすように制御することができるので、衝突数もしくは衝突率、または遭遇の機会をより高めることができる。
第14の発明は、複数個の収容部を水平ライン状に平行に配設するとともに、該収容部のラインに平行に沿って水平ライン状の磁力源を該収容部群を挟んで設けるようにしている。したがって、装置構造を簡単化するとともに、集積して導入処理を行うことができるので、導入処理をより一層効率的に行うことができる。
第15の発明は、前記ライン状磁力源は、配列された前記収容部を挟んだ両側に前記水平ライン方向に沿って設けられ2本のライン状支持体と、該ライン状支持体に、各収容部に対応する間隔および位置に配設された複数個の永久磁石または電磁石とを有する生体物質導入装置である。
前記永久磁石または電磁石は、各々が前記各収容部の半分を囲むように半円環状に湾曲して形成して多方向から磁力を及ぼすように設けても良い。
第15の発明は、前記ライン状磁力源は、ライン状支持体に配設された前記収容部の間隔および位置に配設されている。したがって、各収容部ごとに永久磁石または電磁石が設けられていることになり、構造を簡単化して、処理を容易化することができる。
第16の発明は、前記各収容部は、混合液が通過可能な液通過路と、各液通過路内の圧力を調節して液体の吸引および吐出を行う圧力調節部とを有する生体物質導入装置である。
第16の発明は、前記各収容部は、混合液が通過可能な液通過路を有している。したがって、液体の吸引吐出を行うことによって、ホストと磁性担体をの間の相対的な移動を可能として、より衝突数を増加しもしくは衝突率を高めまたは遭遇の機会を増加させることができる。
第17の発明は、前記導入処理部は、前記収容部に収容された混合液中から前記磁性担体が進入しまたは付着したホストを、前記収容部内に及ぼす前記磁力を制御して、前記収容部の内壁に吸着させて分離する磁気分離部を有する生体物質導入装置である。
該磁気分離部の該磁力によって分離された混合物の中から、ホストに進入または付着されていない未使用磁性担体を分離するために、該ホストのサイズと該磁性担体のサイズとの中間のポアーサイズをもつフィルターを前記液通過路の所定箇所に仕切るように設け、または該フィルターを有するホルダーを該液通過路の先端部に着脱自在に装着させることが可能とするのが好ましい。それには、導入処理後、前記磁力によって前記収容部の内壁に吸着させて分離された混合物のみを再懸濁した液体を前記フィルターを通して吸引または吐出を収容部に対して行うことによって、該フィルターに磁性担体に進入または付着されたホストのみを抽出し、未使用磁性担体を除去する。または、導入処理後、磁力による分離の前に、前記フィルタを通して、前記混合液を前記収容部に吸引吐出を行うことにより、未使用磁性担体を除去し、その後に、磁力による分離を行うようにして、磁性担体が進入または付着したホストを抽出するようにしても良い。
なお、前記液通過路は、前記圧力調節部が有するノズルに対して、着脱自在に設けたチップであっても良い。前記フィルターが、該チップに設けられていても良い。また、フィルターは、目的とするホスト以外の他の各種夾雑物を除去するために、ポアーサイズの異なった1種類以上のフィルターを、前記液通過路に設けまたはホルダーに設けるようにしても良い。また、前記液通過路には、フィルターの設けられた複数個のホルダーを多段に装着可能とするようにしても良い。これによって、磁性担体に進入されまたは付着されたホスト、すなわち、目的とする生体物質が導入されたホストのみを分離することができるので、未使用磁性担体、不純物等の不必要な物質が除去されて信頼性の高い生体物質の導入を行うことができる。
第17の発明は、前記磁性担体が進入しまたは付着したホストを磁力によって、前記収容部の内壁に吸着させて分離する磁気分離部は、該磁性担体をホストに衝突させまたは遭遇の機会を増加させるために用いる磁力源を利用することができるので、構造が簡単化され、また、分離を効率良くかつ迅速に行うことができる。
第18の発明は、前記磁気分離部は、前記収容部の壁方向に向かう1方向の磁力のみが及ぶように、前記磁力移動部に指示する分離指示部を有する生体物質導入装置である。
これによって、磁性担体は該方向に沿って収容部の内壁と衝突し、吸着されることになる。
第18の発明は、前記磁気分離部は、前記磁力源に対して、前記収容部の壁方向に向かう1方向の磁力のみが及ぶように指示すれば足りるので、構造を簡単化し、かつ、製造コストを削減することができる。
第19の発明は、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合して混合液を作成して1または2以上の収容部に収容する混合工程と、前記収容部に及ぼす磁力を制御して、該磁性担体を前記ホストに対し相対的に動かし、前記生体物質を前記ホストに導入する導入処理工程とを有する生体物質導入方法である。
本発明において、前記磁性担体を磁力で収容部に収容した液中で前記ホストに対して動き回らせることによって、該液中に懸濁または含有する前記ホストとの衝突または遭遇の機会を増加させることができる。これによって、ホストに対する生体物質の導入を促進するものである。その際、前記収容部を挟むようにして、少なくとも2方向から磁力を及ぼすようにすれば、液中で、磁性担体は単に磁力が及ぼされて一方向の運動によって収容部への吸着で運動を終了させることなく、吸着状態から離脱を図り、または、最初から吸着状態を作らないようにして、長く液中で運動を続けさせることができる。
第19の発明によれば、第1の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第20の発明は、前記導入処理工程では、前記収容部または混合液と該磁場との間の相対的位置もしくは速度、または磁力自体を変えることによって前記磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かす生体物質導入方法である。
ここで、前記収容部内に前記収容部を挟んで、該収容部の外部から少なくとも2方向から磁力を及ぼすようにすることによって、前記磁性担体が一方向の磁力によって収容部に吸着したままとなったり、収容部の底に沈澱する事態を避けて、液中で磁性担体を動き回らせて、前記ホストとの衝突または遭遇の可能性を高めて、生体物質のホストへの導入を促進することができる。
第20の発明によれば、第2の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第21の発明は、前記導入処理工程では、前記収容部に収容された液中の多数の前記磁性担体を磁力で液中に展開させた状態で、該磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かす生体物質導入方法である。
第21の発明によると、第3の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第22の発明は、前記導入処理工程は、1の長軸をもつ粒子状であって、長軸方向に前記ホスト内に進入可能な大きさをもつ磁性担体を用いて、該磁性担体を動かし前記ホスト内に進入させることによって生体物質を導入する生体物質導入方法である。ここで,前記磁性担体は、前記長軸方向に沿って磁化しまたは磁化しやすいように形成することによって、該磁性担体を長軸方向に沿って動かすことを可能にして、磁力による進入を容易化する。
第22の発明によると、第4の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第23の発明は、前記導入処理工程の後、該磁性担体が付着しまたは進入した前記ホストを、前記収容部内に、磁力を制御することによって前記収容部の内壁に吸着して分離する分離工程を有する生体物質導入方法である。
該分離工程の後、前記収容部の内壁に吸着された吸着物の中から、ホストに進入または付着していない未使用磁性担体等を除去する除去工程を設けるようにしても良い。該除去工程は、例えば、前記収容部に設けた液通過路内を仕切るように設けたフィルタまたは、該液通過路に着脱自在に装着したフィルタを有するホルダーを用い、該フィルターを通って収容部等に液体を吸引または吐出することによって行う。また、前記磁性担体以外の1または2以上の他の夾雑物を1または2種類以上のフィルターを用いて除去する除去工程を設けるようにしても良い。これによって、より一層信頼性の高い導入処理を行うことができる。
さらに、第23の発明によれば、第17の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第24の発明は、前記混合工程は、前記磁性担体および前記ホストに導入すべき前記生体物質とを液中で混合させることによって該生体物質を前記磁性担体に保持させる生体物質導入方法である。
第24の発明によれば、磁性担体と、ホストに導入すべき生体物質とを液中で混合させることによって、容易に保持させることができるので、処理の自動化に適している。
第25の発明は、前記分離工程の後、分離された前記磁性担体によって付着されまたは進入された前記ホストを前記収容部に収容させた状態で、培地が収容された容器内に相対的に移動し、該ホストを該容器内に収容して培養する培養工程を有する生体物質導入方法である。
第25の発明によれば、前記磁性担体が進入しまたは付着したホストを磁力を用いて分離して前記収容部の内壁に吸着させた状態で、培地が収容された容器内に相対的に移動し、培地に投入することによって自動的に培養処理を行うことができるので、該処理を一貫して自動的に行うことができる。
第26の発明は、培養工程において、磁性担体が進入しまたは付着した前記ホストを、磁力を及ぼすことにより培養ホストより分離して除去し、純粋に培養された培養ホストのみを得るようにした生体物質導入方法である。
第26の発明によれば、培養工程において、最初に培地に投入された磁性担体が進入しまたは付着した前記ホストを、磁力を及ぼすことにより、最初から培養ホストより分離した状態で培養することができるので、磁性担体が進入しまたは付着したホストの除去が容易である。これによって純粋に培養された培養ホストのみを容易かつ確実に得ることができる。したがって、磁性担体の細胞内への存在による、生体への悪影響を取り除くことができる。
第27の発明は、前記ホスト内に導入すべき前記生体物質を保持した磁性担体を磁力を用いて前記ホストに衝突または遭遇させて、該生体物質を該ホスト内に導入する導入工程と、前記磁性担体に進入されまたは付着されたホストを分離する分離工程と、分離された前記ホストを用いて該ホストの培養を行う培養工程と、培養ホスト内から最初に前記磁性担体によって進入されまたは付着されたホストを磁力によって分離して、純粋な培養ホストを抽出する抽出工程とを有する生体物質導入方法である。ここで、前記分離工程には、ホストに付着しまたは進入していない未使用磁性担体、夾雑物または不純物をフィルターを用いて除去する不純物除去工程を含めるようにするのが好ましい。
第27の発明によれば、生体物質のホスト内への導入から、生体物質が導入されたホストの培養までの処理を自動的かつ一貫して行うことができる。
第28の発明は、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持可能であって、1の長軸をもつ粒子状の磁性担体であって、長軸方向に沿って前記ホスト内に進入可能な大きさをもつ生体物質導入用磁性担体である。ここで、該磁性担体は、前記長軸方向に沿って磁化され、または磁化されやすく形成して、長軸方向に沿って容易に動力せるように形成するのが制御上好ましい。また、前記長軸に関して軸対称性をもつのが好ましい。
第28の発明によれば、第4の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第29の発明は、前記磁性担体は、前記生体物質を保持する保持部を有する生体物質導入用磁性担体である。ここで、保持部は、第6の発明で説明した通りである。
第29の発明によると、第6の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第30の発明は、前記磁性担体は、長軸方向に沿った両端または一端が先細りの形状に形成された生体物質導入用磁性担体である。先細りの程度は、第7の発明で説明した通りである。
第30の発明によれば、第7の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第31の発明は、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の該ホストを液中に混合した混合液を収容する1または2以上の収容部と、前記収容部内に及ぼす磁力を制御して、前記磁性担体を液中で前記ホストに対して相対的に動かし前記生体物質を該ホストに導入する導入処理部と、前記ホストを穿孔する穿孔処理部とを有する生体物質導入装置。
ここで、「ホストを穿孔する」とは、ホストが外界と接する境界部に孔を空けて外界にある磁性担体をホスト内に進入しまたは生体物質をホスト内に導入しやすくすることである。通常、収容部内のホストに対して穿孔処理を行うがこれに限られるものではない。ホストが細胞の場合には、境界部は細胞膜または細胞壁であり、ホストの境界部に孔を空けるには、例えば、放電や超音波のキャビテーションにより、ホストに穿孔力を加えることによって行なう。「穿孔力」とは、前記ホストの境界部に孔を空けるための何らかの力をいう。放電によるには、例えば、ホストが細胞である場合には、例えば、数1000ボルト/cmほどの高電圧を例えば、数10μ秒のパルスで与えることによって行なう。また、電圧の大きさを変更する場合には、それに応じてパルス幅を変更すれば良い。他の条件が同じであれば電圧が低い場合には、そのパルス幅は高電圧の場合よりも長くし、電圧が高い場合には、パルス幅を低電圧の場合よりも短くする。これによって、ホストの境界部、例えば細胞膜に、短時間、小さな孔を生じさせて、前記磁性担体が進入しまたは生体物質を導入しやすくできるようにする。本発明によれば、磁性担体をホストに衝突させなくても、磁性担体とホストとの遭遇の機会を増加させることによって、ホストへの、磁性担体の進入効率または生体物質の導入効率を高めることができる。したがって、制御が容易である。なお、本発明によれば細胞の細胞膜に穿孔して外界にある遺伝子のみを導入する電気穿孔法(electroporatin)の対象を、一般的なホストに拡張し、かつ該ホストに磁性担体を進入可能となるようにホストの外界との境界部を穿孔させるものである。
第32の発明は、前記導入処理部は、前記収容部内に磁力を及ぼすことが可能な磁力源と、前記収容部もしくは前記混合液と前記磁力源との間の相対的な位置もしくは速度、または、前記磁力源による磁力自体を変えることによって、前記磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かすように制御する磁力制御部とを有する生体物質導入装置である。
第32の発明によれば、第2の発明と同様な効果を奏する。
第33の発明は、前記穿孔処理部は、電場または超音波等による穿孔力を及ぼすことが可能な穿孔力源と、該穿孔力源を制御する穿孔力源制御部とを有する生体物質導入装置である。
前記穿孔力源は該収容部内に設けることが好ましい。これによって穿孔力を確実にかつ効率良く収容部内のホストに及ぼすことができる。
もし、収容部が、前記混合液が通過可能な液通過路を有し、前記磁力制御部が該液通渦路内の圧力を調節して液体の吸引吐出を行う圧力調節部を有する場合には、前記穿孔処理部は、前記液通過路を通過するホストに対して穿孔処理を行うように穿孔力源を設ける。
これによって、液通路において、穿孔処理部による処理が行われるので、該液通過路を通るホストに効率良く穿孔処理を及ぼすことができる。
また、前記収容部が、前記混合液を貯留する貯留部を有する場合には、前記穿孔処理部は、前記貯留部に貯留される前記混合液内のホストに対して穿孔処理を行うように穿孔力源を設けることができる。これによって、この場合には、導入処理が行われる位置で穿孔処理が行われるので、穿孔されたホストに対する磁性担体の進入をより制御しやすい。
なお、穿孔力源は収容部に設けなくても、該収容部に供給すべき液体を収容すべき外部にある容器に設けるようにしても良い。これによって、穿孔処理されたホストを収容部内に吸引することができる。
穿孔力源の制御には、穿孔力の種類、位置、大きさ、方向または時間の制御を含む。
穿孔力として放電を用いる場合には、該穿孔力源は、一対の向かい合う電極であり、穿孔力として超音波を用いる場合には超音波振動子である。電極に加えるべき電圧、電極の正極または負極の選択は、導入すべき生体物質、ホスト、磁性担体の大きさもしくは位置、動作方向、磁力源の位置もしくはその制御に応じて、または、時間によって変化させるようにしても良い。これによって、より一層効率的に磁性担体の進入または生体物質の導入を行うことができる。また、穿孔力源として、放電および超音波の双方を収容部内のホストに加えることを可能にしても良い。そのためには、複数種類の穿孔力源を設けるようにする。
第34の発明は、前記穿孔力源制御部は前記ホスト、前記生体物質もしくは前記磁性担体についての、性質、量もしくは濃度に基づいて前記穿孔力源を制御する生体物質導入装置である。
これによって、用いるホスト等に最適な穿孔力を加えることによって、確実で、効率良い生体物質の導入を図ることができる。
ここで、「性質」には、その大きさ、硬さ、形状等の物理的性質、分子構造、修復能力等の化学的性質をも含む。
第35の発明は、前記穿孔力制御部または前記磁力制御部は、導入処理と穿孔処理を空間的または時間的に関連付けて実行するように制御する生体物質導入装置である。
前記穿孔処理部により前記ホストに設けられた穿孔は、短時間で修復される可能性があり、穿孔処理および導入処理が行なわれる各位置および各時間を考慮する必要があるからである。また、ホストについて穿孔処理のされた方向に合致するように磁力を制御して磁性担体をホスト方向に動かすように制御すれば、磁性担体がホストに進入しやすい。
第36の発明は、前記収容部は、前記混合液が通過可能な液通過路を有し、前記磁力制御部として、該液通過路内の圧力を調節して液体の吸引吐出を行う圧力調節部を有する生体物質導入装置である。第36の発明によれば、第9の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第37の発明は、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合して混合液を作成して1または2以上の収容部に収容する混合工程と、前記細胞等のホストを穿孔する穿孔処理工程と、前記収容部に及ぼす磁力を制御して、該磁性担体を前記ホストに対し相対的に動かし、前記生体物質を前記ホストに導入する導入処理工程と、を有する生体物質導入方法。
ここで、穿孔処理工程は、必ずしも、混合工程の後に行われる場合に限られず、混合工程の前に外部容器等で行い、穿孔処理のされたホストを混合するようにしても良い。
また、穿孔処理工程が、混合工程の後にくる場合には、穿孔処理は収容部内で行われることになる。
第37の発明によれば、磁性担体をホストに衝突させなくても、磁性担体とホストとの遭遇の機会を増加させることによって、ホストへの、磁性担体の進入効率または生体物質の導入効率を高めることができる。したがって、制御が容易である。
第38の発明は、前記穿孔処理工程は、電場または超音波等の穿孔力を及ぼすことによって行なう生体物質導入方法である。
第38の発明によれば、第33の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第39の発明は、前記穿孔処理工程は、前記ホスト、前記生体物質もしくは前記磁性担体についての、性質、量もしくは濃度に基づいて穿孔力を及ぼす生体物質導入方法である。
第39の発明によれば、第34の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第40の発明は、前記穿孔処理工程および前記導入処理工程は、空間的または時間的に関連付けて実行される生体物質導入方法である。
第40の発明によれば、第35の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第41の発明は、前記導入処理部により処理された前記磁性担体が付着しまたは進入したホストを含有する液または磁性担体が付着しまたは進入したホストを分離して移送する移送手段と、培地が収容された容器と、該容器に収容された前記磁性担体および該磁性担体が付着しまたは進入したホストを分離するための分離部とをさらに有する生体物質導入装置である。
ここで、分離部としては、例えば、磁場を遮断しない樹脂等で形成された該容器の下方または側方に設けた永久磁石や電磁石からなる磁力部であったり、液通路、該液通路内の圧力を調節する圧力調節手段、および前記液通路の外部から前記液通路内に磁力を及ぼすことが可能な磁力手段を有し、移動機能をもった分注機であっても良い。複数のホールからなる容器の場合には、各ホールごとに永久磁石や電磁石を設けるのが好ましい。
第41の発明によれば、培地が収容された容器に磁力を及ぼすことによって、磁性担体が付着しまたは進入したホストを分離して、培養された純砕なホストを容易にかつ簡単な構造で得ることができるので、安全性および信頼性の高い導入処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体物質導入装置の主要部を示す図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る生体物質導入装置の動作説明図である。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る生体物質導入システムの平面図および正側面図である。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る生体物質導入装置を示す図である。
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る生体物質導入装置の他の例を示す平面図である。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るノズルヘッドを示す図
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る生体物質導入装置の動作説明図である。
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る生体物質導入装置の動作説明図である。
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る生体物質導入装置の動作説明図である。
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る磁性担体の拡大図である。
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る遺伝子治療の例を示す流れ図である。
図12は、本発明の第5の実施の形態に係るタンパク質合成の例を示す流れ図である。
図13は、本発明の第6の実施の形態に係る生体導入装置の主要部を示す断面図である。
図14は、本発明の第6の実施の形態の係る生体導入装置の主要部の他の例を示す断面図である。
図15は、本発明の第7の実施の形態に係る生体導入装置の分離部を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施の形態に係る生体物質導入装置および生体物質導入方法について、図面に基づいて説明する。本実施の形態の説明は、特に指定のない限り、本発明を制限するものと解釈してはならない。
図1は、第1の実施の形態に係る生体物質導入装置1の主要部を示すものである。
該生体物質導入装置1は、ノズル2に着脱自在に装着された略円管状のチップ3と、円環状永久磁石4と、ここでは図示していない磁力源移動部とを有する。該チップ3は、使用の際には、細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合した混合液を収容する1個の収容部に相当する。前記円環状永久磁石4は、該チップ3に収容された液中の前記磁性担体を、所定磁力を制御することによって、該磁性担体を液中で動かし、該磁性担体と前記ホストとの間を相対的に移動させて該磁性担体を前記ホストと衝突させまたは遭遇させるための移動可能に設けた磁力源に相当する。また、前記磁力源移動部は、前記円環状永久磁石4を前記チップ3に対して動かすためのものである。
前記チップ3は、外部に設けた容器(図示せず)に対して液体の吸引および吐出を行うための細径の液通過路5と、前記磁性担体を含有する混合液を貯留する太径の貯留部6と、前記液通過路5と前記貯留部6との間に設けられた中空の略円錐台状の中径部7とを有する。前記円環状永久磁石4は、前記貯留部6の周囲で軸方向、半径方向、周方向またはこれらを任意に組合わせた方向に移動可能となるように、該軸線が、該貯留部6の軸線に対して、略同軸になったり、傾斜したりまたは平行になることができるように設けるのが望ましい。
また、前記貯留部6の上方には、前記ノズル2との間で装着を行うための装着部8が設けられている。前記ノズル2は、ここでは図示しない管路を介してピストンと連通し、圧力調節部に相当する。
該円環状永久磁石4は、半円環状の2つの永久磁石を組み合わせたものであって、一方の半円環状永久磁石が、その中央を含む領域がN極、両端にS極をもち、他方の半円環状永久磁石は、その中央を含む領域がS極で、両端にN極をもち、これらの両端同士を結合して円環状に形成したものである。磁力線は、前記収容部である前記チップ3の前記貯留部6を挟む2つの向かい合った密度が均一で最も高いその中央を含む領域から、円環に沿って該領域から遠ざかるにつれて次第に密度が低くなるように分布している。
該円環状永久磁石4は図1において、実直線の矢印9、10で示す方向に、前記磁力移動部によって振動可能である。また、前記ノズル2、およびそれに装着されている前記チップ3はここでは図示していないノズル回転部によって実曲線の矢印11の示す方向に回転可能である。
なお、点線の矢印12は、前記磁性担体を前記チップ3の壁部に吸着させて分離する場合に前記円環状永久磁石4を前記磁極を結ぶ方向に沿って、一方の磁極のみが前記チップ3の貯留部6に十分に接近するように移動することによって行う場合を示すものである。これらの磁力源移動部、ノズル回転部および前記該圧力調節部は、磁力制御部を構成し、前記磁力源である円環状永久磁石4とともに前記導入処理部を構成する。
図2は、図1で示した生体物質導入装置1の動作を説明するものである。
前記チップ3の液通過路5を通って外部の容器から吸引された、ホストである細胞に導入すべき前記生体物質を保持した磁性担体および前記ホストである細胞を含有した混合液を前記貯留部6に収容する。その際、前記円環状永久磁石4による磁力が前記混合液に含有される磁性担体に及んでいる。
また、前記磁性担体は、前記円環状永久磁石4によって、向かい合うように主として該チップ3を挟む2方向から略同程度の磁力が及ぼされているため、釣り合いが取れ、各磁性担体においては、合成された磁力はほぼ打ち消し合い、一方的に一方向に引き付けられて前記チップ3の壁部へ吸着されることはなく、また、重力による磁性担体の下方向への落下も磁力で阻止されて浮遊し、磁性担体は液中に層平面状に高濃度に展開された状態にある。該混合液中にある該酸性担体は、図2(a)に示すように前記円環状永久磁石4の存在する高さで、図2(b)に示すような略8の字状の水平面状の磁性担体層13を形成する。
このような展開状態にある前記磁性担体層13を、図示しない前記磁力源移動部により前記円環状永久磁石4を上下方向の矢印10に沿って振動また繰り返して動かすとともに、前記ノズノ回転部によって、前記ノズル2を回転させる。すると、図2(a)に示すように、前記磁性担体層13は矢印14の方向に振動するとともに、図2(b)の矢印で示すように前記層13を前記チップ3内で回転させる。
したがって、該磁性担体層13は、前記チップ3内の略中間に設けたフィルタまたはろ紙のように、該チップ3内を水平に上下に仕切るように広がっているので、該磁性担体層13を前記磁力源移動部によって上下方向に振動させることによって、該磁性担体層13を通過する液に拡散している前記ホストと磁性担体との接近を一層促進し、衝突数を増加させもしくは衝突率を高めまたは遭遇の機会を増加させることができる。
これによって、液中のホストが該磁性担体層13を構成する前記磁性担体と衝突または遭遇させて、該磁性担体が前記ホストと接触し、または該ホストに該磁性担体に付着し、または該ホスト内に該磁性担体が進入する可能性が高くなる。
次に、第2の実施の形態に係る生体物質導入システム15について図3ないし図9に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態で説明したものと同一のものは同一の符号で表し、説明を省略する。
図3(a)の平面図に示すように、該生体物質導入システム15は、該生体物質導入処理を行うステージ16と、該ステージ16に設けられた前述のノズル2を各軸が上下方向に平行でかつ、水平ライン方向に沿って間隔を空けて8個連設し、該ノズル2に各々チップ3が着脱自在に装着された8連ノズルユニット17と、ホストの種類に応じた種々の培地が設けられている試薬槽18と、8連の前記ノズル2に装着すべき未使用のチップ3が8列ずつマトリクス状に配列されたチップラック19と、前記生体物質導入処理を行うための液、すなわち、細胞等のホストに導入すべき目的の生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合した混合液を収容する液収容部20が8列×12行のマトリクス状に配列されたマイクロプレート21と、DNA溶液が収容された8列×2行の液収容部22からなる容器23と、前記ホストとしての細胞を懸濁した液が収容されている8列×2行の液収容部24からなる容器25とを有する。該容器25の1行の液収容部は、PCR用容器26である。
さらに、該ステージ16には、前記8連ノズル2に装着されたチップ3に対して一斉に磁力を及ぼすことが可能な、前記導入処理部に相当する磁力処理部27と、導入処理した結果物を収容する8列×2行の液収容部28からなる容器29と、使用済みの前記チップ3を廃棄するための廃棄口30とを有する。なお、符号31、32、33は、それぞれ該領域内に収容されている容器を加熱しまたは冷却するための温度制御部が設けられている温度制御可能な加熱/冷却領域であることを示すものである。
前記8連のノズルユニット17は、8連のノズル2および該ノズル2に装着した8連のチップ3を有するとともに、該ノズルユニット17には種々の機構部を設けたノズルヘッド77が設けられている。該ノズルヘッド77には、前記ノズルユニット17を上下方向に移動させるZ軸駆動モータ81が設けられている。
また、該生体物質導入システム15には、該ノズルヘッド77をY軸方向に移動することができるY軸搬送部82と、該ノズルヘッド77をX軸方向に移動することができるX軸搬送部83とを有している。したがって、該ノズルヘッド77は、少なくとも前記ステージ16上の範囲で水平方向および上下方向で移動可能である。符号84は、前記X軸搬送部83を駆動するためのモータである。図3(b)の正面図に示すように、該モータ84は、ベルト85を回転駆動することによって前記ノズルヘッド77をX軸方向に移動させる。ここで、該Y軸搬送部82、X軸搬送部83およびZ軸駆動モータ等は、移動部に相当する。
符号86は、前記ノズル2およびチップ3内の圧力を調整する前記ノズル2と連通する圧力調整部のピストンを駆動するP軸モータである。該P軸モータ86は、カップリング87を介してボールねじ88を回転駆動し、該ボールねじ88と螺合するナット部89がプレート89aを介してガイド用支柱89b、89cに固定されている。したがって、前記ボールねじ88は回転によって上下動し、該ボールねじ88の下端に設けられている部材90に設けられた8連のピストン(図示せず)を一斉に上下動させる。符号80は、前記ノズル2をその軸周りに回転させるための回転機構部が設けられた部分である。
図4は、ノズルユニット17の各ノズル2に装着されたチップ3の先端が、各ホール95に挿入された状態の前記磁力処理部27を示すものである。
前記チップ3内に磁力を及ぼすには、該ノズルユニット17を前記ステージ16上で前記移動機構82,83によって前記磁力処理部27にまで移動し、該磁力処理部27に前記チップ3を挿入する。
図4に示すように、前記8連のノズル2、したがってチップ3は水平ライン方向に沿って配列され、前記磁力処理部27は、前記チップ3を挟んだ両側に前記水平ライン方向に沿って平行に設けられたロッド状の前記支持部34と、前記各チップ3に対応する位置に配設された8個の永久磁石ブロック35とを有する2本のライン状磁力源36,37を有している。
ここで、各ライン状磁力源36,37の向かい合う磁石ブロック35の磁極のS極N極は同じ場合と異なる場合がある。また、各ライン状磁力源36,37の各磁極を交互に異ならせるように並べる場合と、同じ磁極を並べる場合がある。
該各ライン状磁力源36,37は、接離方向移動機構によってノズルユニット17に対して接離可能に、配列方向移動機構によってノズルユニット17のノズル2の配列方向に沿って移動可能に設けられている。前記接離方向移動機構は、該モータ91と、該モータ91によって回転駆動されるボールねじ92と、該ボールねじ92と螺合するように設けられ前記ステージ16に対し水平面内で移動可能に設けられた前記配列方向移動機構の各座板(図示せず)に固定された固定部材93と、前記固定部材93を貫通して前記支持部34と接続する2本の支柱95と、前記モータ91、ボールねじ92および前記支柱95を支持する可動部材94とを有する。前記モータ91を駆動することにより、前記支持部34を前記ノズルユニット17に対して進退可能に動かすことができる。前記配列方向移動機構は、前記ライン状磁力源36、37を、前記ノズルユニット17の前記ノズル2の配列方向に沿った水平面内で、所定距離(隣接するノズル2間の距離程度)独立して移動させる機構である。該移動機構は、前記接離方向移動機構において、前記ライン状磁力源36、37の代わりに、前記ステージ16に設けた配列方向に沿ったレール(図示せず)上に沿って独立に移動可能に設けられた2枚の前記座板を設け、前記固定部材93の代わりに、前記ステージ16に固定された固定部材を各々設けたものである。
このようにして、前記チップ3に対して、チップ3自体をZ方向に移動することによって磁力線を動かし、前記支持部34を該チップ3に対して進退可能に動かすことにより、磁力線を動かし、また、前記支持部34をそのノズル2の配列方向に沿って水平方向に動かすことによって前記磁力線を動かすことができる。ここで、前記移動機構は、前記磁力源移動部に相当する。
図5に示す例は、半円環状永久磁石97,98を各チップ3に対応する間隔で配列したライン状磁力源99,100を示すものである。個々の半円環状の永久磁石97,98は、各々、図1で説明した円環状永久磁石4の半円環状の2つの永久磁石に対応するものである。
図6は、前記ノズルユニット17に設けられた前記回転機構部80を示すものである。該回転機構部80には、支持プレート101と、該支持プレート101に設けられた前記各ノズル2を軸周りに回転させるためのモータ102と、該支持プレート101上に設けられ、前記モータ102の駆動プーリ108、各ノズル2に設けられたノズルプーリ109、プーリ104,105,106に掛け渡されてノズル2を回転駆動するタイミングベルト103とを有する。符号107は、軸方向に沿って回転可能に接続するためのロータリージョイントであり、上側において前記ピストンが接続される。符号110、111は軸受ベアリングである。
図7および図8は、前記磁力処理部27における前記ノズルユニット17の各チップ3とライン状磁力源36,37との位置関係を模式的に示すものである。
図7(1)は、前記ライン状磁力源36,37の前記ノズルユニット17からの距離が、前記チップ3内に及ぼす磁力が十分に弱くなる程度離れている場合を模式的に表す。その場合、各チップ3内での磁力は弱いので、図7(2)に示すように、各チップ3内に磁力を表す矢印を示していない。
図7(3)は、該各ライン状磁力源36,37を、前記移動部によって、前記ノズルユニット17に両側から接近させた場合を示す。この場合には、図4(4)に示すように、各チップ3では、上下方向から磁力を受けることになる。
図7(5)は、一方のライン状磁力源36を前記ノズルユニット17により一層接近させ、他方のライン状磁力源37を該ノズルユニット17からより一層離間させた場合を示す。この場合には、図7(6)に示すように、磁力は、一方向のみに加えられる。したがって、該チップ3内に収容されている磁性担体は、一方向にのみ引き寄せられて、該チップ3の内壁に吸着して分離されることになる。
図8は、前記ライン状磁力源36及び37を前記ノズルユニット17に接近した状態で、前記水平ライン方向に沿ってライン状磁力源36,37を、隣接する前記チップ3間の距離よりも短い距離内で変位させた場合を示す。図8(1)は、前記ライン状磁力源36を図上左方向に、前記ライン状磁力源37は右方向に、隣接チップ3間の距離の半分程度移動させたものである。その場合の各チップ3内の磁力は、図8(2)に示す方向に及ぼされることになる。図8(3)、(4)は、図8(1)、(2)の場合と、図上左右逆方向に変位させた場合を示す。本例のように、ライン状磁力源36,37を移動させることによって、前記各チップ3を挟んで向かい合うように磁力が及ぼされるので、チップ3内の磁性担体を展開するように及ぼすことができる。
図9は、前記8連ノズル2に装着したライン状に配列されたチップ3を前記磁力処理部27にまで移動して、その開口部に挿入した際の状態を水平ライン方向に沿って水平方向から示すものである。したがって、図9では、前記チップ3は8本のうちの1本のみが描かれ、磁力処理部27は、該チップ3を挟んだ両側に、前記8連のノズル2に平行に設けられたロッド状のライン状磁力源36,37は、各々8個のうちの1個ずつの永久磁石ブロック35が支持部34に設けられているように表されている。
前記ライン状磁力源36,37は、図9における横方向の矢印で示すように、前記チップ3に対して、接近しまたは離間可能(図7、図8参照)となるように設けられているのみならず、各々チップ3の軸方向に沿った矢印に示すように上下方向に移動可能である。また、チップ3自体も曲線の矢印で示すように各々その軸周りに回転可能である。
また、前記各ライン状磁力源36,37を前記チップ3の軸方向および接離方向の双方に沿って同時に移動させることによって、図の点線の曲線で示すような経路で磁力を及ぼすことが可能である。なお、これらの例では専ら前記磁力処理部27の前記ライン状磁力源36,37を移動させることによって前記チップ3内に種々の磁力を及ぼすようにしている。しかし、同種の磁力を及ぼすためにノズルユニット17自体を移動させることによって実現することも可能である。この場合には、前記ライン状磁力源36,37は磁力源に相当し、前記ノズルユニットの移動部は、前記磁力源移動部に相当する。
本実施の形態によれば、少なくとも2方向から前記各収容部であるチップに対して磁力を及ぼすようにしているので、磁性担体が前記収容部の壁部および底部に吸着したり沈澱しようとする状況を磁力によって阻むとともに、前記ライン状磁力源を上下方向および水平方向に移動させまたは前記各チップを回動させることによって該磁性担体を収容部内の他領域よりも高濃度の状態で展開した状態でホストに対して相対的に移動させて該磁性担体とホストとの衝突数もしくは衝突率を高め、または遭遇の機会を増加させて効率的に導入処理を行うことができる。
なお、以上の例において、前記収容部、圧力調整部、磁力源、磁力移動部、および移動部等の動作は図示しない情報処理装置によって制御されている。該情報処理装置は、CPUと、導入処理の手順等の各種プログラムまたは生体物質、ホスト、磁性担体、磁力源、環境条件等に関する各種データが格納されるメモリ、CDROM、フレキシブルディスク、DVD等と、キーボード、マウス等の、前記ホストデータ、前記生体物質データ、試薬データ等の各種データや、各種の操作等の指示を入力する入力装置と、導入結果、処理状況、衝突率、衝突数または遭遇の確率(磁性担体またはホストの濃度またはその分布)を表示する表示装置またはプリンタ等の出力装置と、モデム等の通信機能部とを有している。
続いて、第3の実施の形態に係る7種類の磁性担体を図10に示す。
図10(1)に示す第1の種類の磁性担体は球形の粒子であって、例えば、100nm以上数μmの大きさをもち、粒子表面コートとホストとの付着性が良い場合に用いられる。素材としては、磁化が可能な超常磁性体を用い、例えば、水酸化鉄、酸化鉄水和物、酸化鉄、混合酸化鉄または鉄からなる。
図10(2)に示す第2の種類の磁性担体は、1軸が他軸よりも長く形成された長軸をもち、該長軸に関する回転対称体であり、該長軸方向に沿った両端が先細りに形成されている。長軸方向に磁化されまたは磁化しやすく形成すれば、長軸方向に沿って磁力により移動可能となり制御しやすい。該磁性担体のサイズは、例えば、100nm以上数μm程度の大きさであり、素材は、第1の種類の磁性担体で説明したものと同様のものである。本例は、該磁性担体は前記ホスト内に進入しやすい構造となっており、例えば、細胞壁をもったり、細胞膜の強度がある場合、または、細胞表面処理を行わない場合に用いる。
図10(3)に示す第3の種類の磁性担体はその表面が多孔性を有し、または他の多孔性物質を保持しているものである。これによって生体物質を確実に保持することができる。
図10(4)に示す第4の種類の磁性担体は球状であり、該磁性担体自体または、該磁性担体が保持した物の表面に多数の突起を有するものである。これによって突起間に生体物質を確実に保持するものである。
図10(5)に示す第5の種類の磁性担体は、例えば、第1の種類ないし第4の種類の磁性担体が、例えば、2個またはそれ以上連結したものである。この連結部分が保持部として利用されるものである。該磁性担体は作成が容易でありかつ安価である。
図10(6)に示す第6の種類の磁性担体は、1軸が他軸よりも長く形成された長軸をもち、該長軸に関する回転対称体であり、該長軸方向に沿った両端が先細りに形成されている。また、その側面に環状の溝をもった保持部が設けられている。これによって、磁性担体への目的生体物質の保持性能を高めることができる。素材としては、例えば、第1の種類の磁性担体と同様である。
図10(7)に示す第7の種類の磁性担体は、例えば、球形の粒子状のものに、保持部として糸状の担体が結合した複合担体である。この場合には、例えば、比較的細胞膜の強度が弱く、温和な条件下での導入が必要な場合、希薄菌液の場合または、凝集させた方が扱いやすい場合に用いる。糸状担体ごとにホスト内に導入するわけではなく、糸状担体に絡めたホストに磁力を及ぼすことにより負荷をかけ、点ではなく線として力を加えダメージを軽減する。この方法は粒子と担体を別扱いとして扱えるため製造が容易である。
なお、前記目的生体物質は前記磁性担体に物理的吸着により、または電気的相互作用により付着または結合させるようにすれば、ホスト内で乖離しやすくなる。また、磁性担体がホストへの進入を容易化するための導入補助剤を磁性担体に保持するようにしても良い。例えば、バクテリアの遺伝子導入の際、塩化カルシウムにより膜の流動性を高めて、プラスミドを取り込みやすいようにする。動物細胞の場合、ポリエチレングリコールを用いてプロトプラスト化して導入する。また、細胞との接触の機械を増加するため細胞同士の凝集を促進させ(2価の金属イオン等による細胞間の架橋)細胞が密集した状態で導入操作を行うことができる。
次に、第4の実施の形態に係る該生体物質導入装置および生体物質導入方法を用いた遺伝子治療について図11に基づいて説明する。
図11に示すように、ステップS1において、がん患者からがん細胞を採取したものを容器内に収容する。がん細胞の採取は、がんの患部近傍にFe(Cu)等のがん細胞組織に吸着する性質をもつ造影剤を注射により投与し、X線で照射しながら採取し、前記容器25の液収容部24に収容しておく。ステップS2で、磁性担体とタンパク質p53とを液中で混合し、軽く前記ノズルユニット17で吸引および吐出を繰り返すことによって該磁性担体に前記タンパク質p53を保持させる。
ここで、「p53」はタンパク質の一種であって、細胞内のDNAにダメージがないか否かを常に監視し、DNAにダメージがない場合にのみDNAの複製を許可する。また、DNAの異変を発見すると転写因子による転写を禁止してダメージの発生したDNAの複製を停止し、大量にできたp53がDNAのダメージを急ピッチで修理する。その際、ダメージが大きい場合には該細胞の修理をあきらめて細胞を消滅させる指示を与えるものである。
したがって、がん細胞にp53を導入することによって、そのがん細胞の複製を停止し、DNAのダメージを急ピッチで修理する性質をもっている。
ステップS3で、前記補助剤に相当するPEG(ポリエチレングリコール)溶液と、前記生体物質であるp53を保持した前記磁性担体とをマイクロプレート21の所定液収容部内において混合し、前記ノズルユニット17を用いて吸引および吐出を繰り返すことで軽く攪拌して前記磁性担体に保持させる。ここで、前記PEG溶液は、前記細胞膜を柔軟にして、前記磁性担体が進入しやすくするものである。
ステップS4で、前記がん細胞と該p53およびPEGを保持した前記磁性担体とを液中で混合して、前記マイクロプレート21の液収容部中で前記混合液を作成する。
ステップS5で、前記ノズルユニット17を該マイクロプレート21の前記混合液が収容されている液収容部にまで移動し、該混合液を前記チップ3の貯留部6にまで吸引する。
ステップS6で、該混合液を吸引した前記ノズルユニット17を、該混合液を保持したまま前記磁力処理部27にまで移動し、該磁力処理部27の開口部に前記チップ3を挿入する。
次に、該磁力処理部27の前記ライン状磁力源36,37をライン状に連設された該チップ3に接近させ、該ラインに平行に略チップ3幅程度移動することによって、または、上下方向に沿って移動することによって、前記磁性担体を前記チップ3内に展開させるとともに、展開した状態で該磁性担体を前記チップ3内で移動させることによって、該磁性担体を前記ホストであるがん細胞との衝突数もしくは衡突率を増加させまたは遭遇の機会を増加させ、前記磁性担体を前記がん細胞内に進入させるようにする。
ステップS7で、前記磁性担体をがん細胞に進入させて、前記p53を前記がん細胞に導入した後、前記磁力処理部27の一方の前記ライン状磁力源36を該ノズルユニット17に接近させ、他方の前記ライン状磁力源37を前記ノズルユニット17から所定距離以上離間させることによって、前記磁性担体に一方向の磁力を及ぼして該磁性担体が進入した前記がん細胞を前記チップ3の内壁部に吸着させて分離する。残液を吐出した後、分離された該がん細胞は前記チップ3の内壁に吸着させたまま該ノズルユニット17ごと前記容器29にまで移動させ、該容器29内に収容されている液の吸引および吐出を繰り返すことによって液中に再懸濁させて吐出させて該液を該液収容部に収容する。
ステップS8で、分離抽出され、導入された前記p53の働きによってDNAの異常が修復され磁性担体が進入した細胞を含有する溶液は再び前記ノズルユニット17により吸引保持されて、前記試薬槽18にまで移動し、収容されている培地に吐出され培養される。
ステップS9で、前記ノズルユニット17によって再びp53が導入されて修復された細胞を含有する溶液を吸引して保持し、前記磁力処理部27にまで移動し、一方のライン状磁力源36を該ノズルユニット17に接近させ、他方のライン状磁力源37を離間させることによって前記酸性担体が進入して内部に残留している修復細胞を該チップ3の内壁に吸着させて分離して除去し、残りの液を前記容器29の液収容部28に吐出して収容する。磁性担体を含有する細胞が吸着した使用済みのチップ3は前記廃棄口30において脱着して廃棄する。
ステップS10で、このようにして純粋に培養によって得られた前記p53が導入されて修復された細胞は、がん細胞に吸着する性質をもつFe(Cu)に付着させて前記患者の患部に注射によって投入される。p53が導入された細胞が大量に患部に投与されると該p53の作用によって、がん細胞を除去しまたはがん細胞を修復してがんの治療を行うことができる。
続いて、第5の実施の形態に係るタンパク質製造方法について図12に基づいて説明する。該方法は分離に磁力を必要としない例を示すものである。
ステップS11で、合成しようとする有用タンパク質を細胞内で作らせる目的遺伝子を乗せた組み換えプラスミドを作成する。該組み換えプラスミド(Pbr322)は、リング状のプラスミドに制限酵素を加えて切断して直線状にし、前記目的遺伝子のDNAを混ぜてDNAリガーゼを加えてリング状にした組換えプラスミドを作成する。
ステップS12で、多数の前記組換えプラスミドを多数の磁性担体と液中で混合させることによって、該組換えプラスミドを該磁性担体に保持させる。
一方、ステップS13で、ホストとしての大腸菌を含有する液を収容している容器から前記ノズルユニット17を用いて吸引し、ステップS14で、該大腸菌の表面を柔軟にする前記導入補助剤としての表面処理試薬が収容されている容器内にまで移動して吐出し混合する。
ステップS15で、緩やかに攪拌しながら、該大腸菌と前記組換えプラスミドを保持した磁性担体とを液中で混合して混合液を作成し図4の前記マイクロプレート21の液収容部20に収容しておく。
ステップS16で、該マイクロプレート21に対して、前記加熱/冷却領域31でインキュベーション冷却(冷却4℃)して、前記試薬との混合や移動の際に、ダメージを受けた細胞の回復を図る。
ステップS17で、前記大腸菌への前記磁性担体に保持した目的生体物質としてのプラスミドを導入を容易に行うために、前記マイクロプレート21において前記加熱/冷却領域31で42℃で約30〜90秒の加熱による熱ショックを与える。
ステップS18で、前記マイクロプレート21に前記ノズルユニット17を移動させ、前記混合液を吸引して保持したまま、前記磁力処理部27にまで移動し、前記ライン状磁力源36,37を所定方向に移動することによって、磁力を前記ノズルユニット17に及ぼす。これによって、前記磁性担体を磁力により前記混合液中で展開させた状態で、前記ホストとの間で相対的に移動させ、衝突数もしくは衝突率を高めまたは遭遇の機会を高めて前記各大腸菌内に前記磁性担体を進入させる。
ステップS19で、導入処理が終わった該混合液を前記ノズルユニット17の各チップ3内に吸引して保持したまま、前記マイクロプレート21に移動して吐出させ、前記加熱/冷却領域31で、混合液をインキュベーションにより、4℃に急冷して、前記大腸菌の細胞膜を閉じて導入処理を完成する。
ステップS20で、導入処理の完成した前記混合液に対して、前記目的生体物質が乗せられたプラスミドが導入された大腸菌を分離抽出するために、抗生物質を加えて、組換えプラスミドの導入されていない大腸菌を殺し、前記プラスミドが導入された大腸菌を分離する。
ステップS21で、プラスミドが導入された大腸菌を含有する混合液は、前記ノズルユニット17によって、吸引保持して、前記試薬槽18の培地にまで移送され、該培地に前記混合液が吐出される。
該培地上に吐出された混合液は、インキュベーションによって、37℃で、30分から60分の間で培養が行われるとともに該ホストの細胞を修復して安定化させる。
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解させるために具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、以上の説明では、前記導入処理部の磁力源として、チップを挟んだ円環状磁石または2本のライン状磁石を用いた場合のみを説明したが該例に限られず、例えば、永久磁石ブロックまたは電磁石を用いる場合であっても良い。
また、該永久磁石ブロックまたは電磁石が、円管状の前記収容部の周囲に3個以上が互いに同じ中心角をもつように配列されたもので、前記磁力源移動部は、代わりに所定の周期で順次、前記各磁力を変更する磁力変更部を設けるようにしても良い。
または、前記磁力源として、永久磁石ブロックまたは電磁石ブロックを有し、円管状の前記収容部の周囲に3個以上が互いに同じ中心角をもつように設け、前記磁力源移動部は、前記磁力源を前記収容部に対して半径方向に接離可能、軸方向に沿って、かつ、周方向に沿って移動可能とするものであっても良い。また、前記磁力処理部に、ライン状磁力源の代わりに円環状永久磁石を複数個配置するようにしても良い。またライン状磁力源を前期収容部に設けるようにしても良い。
また、ライン状磁力源の2つの相対するように設けた磁石または磁極は、同極同士でも良く、また反対極同士でも良い。さらに、ライン状磁力源に配列している永久磁石ブロックは交互に磁極が異なるように配列し、向かい合うライン状磁石は対応する磁極と異なる磁極を設けるのが装置の構造の安定上好ましい。
ライン状ノズルユニットは、8連の場合についてのみ説明したが、「8」に限定されることなく、使用するマイクロプレートの容器のウェル数等に基づいて選択する。前記収容部は図示したチップに限られることはなく種々の形状がある。前記ホスト、生体物質についても前記実施の形態の例に限られず種々のものがありうる。また、複数の収容部はライン状に配列される場合のみならず行列状に配列しても良い。この場合には、前記導入処理部の磁力源は該収容部の配列に対応して行列状に配列されることになる。これによって、より一層集積化がされてより一層効率的に導入処理を行うことができる。なお、配列はライン状または行列状の場合のみならず、曲線状に配列するようにしても良い。
続いて、第6の実施の形態に係る生体物質導入装置を、図13および図14に基づいて説明する。なお、第2の実施の形態で説明したものと同一ものは、同一の符号で表し、説明を省略する。
第6の実施の形態に係る生体物質導入装置は、収容部内の細胞等のホストにおける外界との境界部である細胞膜等を穿孔する穿孔処理部を設けたものである。穿孔処理部は、ホストに穿孔力を与えるために収容部に相当するチップに設けられた穿孔力源と、該穿孔力源を制御する穿孔力源制御部を有する。該穿孔力源の例を図に基づいて説明する。
図13(1)は、第2の実施の形態で説明した、ノズル2を各軸が上下方向に並行でかつ、水平ライン方向に沿って間隔を空けて8個連接し、該ノズル2に各々チップ40が着脱自在に挿着されたノズルユニット39を示すものである。また、第2の実施の形態で説明したように、前記8連のノズル2、したがって、チップ40は水平ライン方向に沿って配列され、前記磁力処理部は、前記チップ3を挟んだ両側に水平ライン方向に沿って並行に設けられたロッド状の支持部34と、前記各チップ3に対応する位置に配設された8個の永久磁石ブロック35とを有する2本のライン状磁力源36、37を有している。
図13(1)では、放電パルスを発生する穿孔力源として、該チップ40の細径の液通過路5の内壁に一対の向かい合う電極41、42が、前記ライン状磁力源36、37に対応する高さ位置に設けられ、該各電極41、42から導線43,44が、中径部7および太径の貯留部6の内壁を通って軸方向に沿って装着部8にまで達している。該各導線43,44の端部は、ノズル2の外面に設けられた図示しない電源回路と導線47,48を介して接続する端子45、46に装着時において接続するものである。前記ライン状磁力源36、37による磁力が加えられている状態で前記一対の電極41,42間に前記電源回路から所定の放電パルスを加えることによって、該液通過路5を通過するホストに対して穿孔処理を施すものである。
図13(2)では、図13(1)で説明したノズルユニット39の代わりに、ノズルユニット49を用いたものである。
該ノズルユニット49では、放電パルスを発生する穿孔力源として一対の向かい合う電極51,52は、前記ライン状磁力源36、37に対応する高さ位置に設けられ、チップ50の太径の貯留部6の内壁に設けられたものである。該各電極51、52からの導線53、54は貯留部6の内壁に沿ってその上側に向かって延び前記装着部8にまで達している。該各導線53,54の端部は、ノズル2の外面に設けられた図示しない電源回路と導線57、58を介して接続する端子55、56に装着時において接続するものである。前記一対の電極51、52間に前記電源回路から所定の放電パルスを加えることによって、前記貯留部6に貯留するホストに対して穿孔処理を施すものである。
図13(1)または図13(2)のチップ39,49によると、該チップ39,49を前記ノズル2に装着するだけで、穿孔処理部である電極に電圧を印加することが可能であるので、取り扱いが容易である。
図14(1)は、ノズルユニット39、49の代わりに、ノズルユニット59を用いたものである。
該ノズルユニット59では、放電パルスを発生する穿孔力源としての一対の向かい合う電極61,62は、前記ライン状磁力源36,37に対応する高さ位置に設けられ、チップ60の太径の貯留部6の壁部を内部から外部に貫くように設けられている。該電極に電圧を印加するには、前記電極の外部に露出する部分63,64を介して電源回路と接続すればよい。したがって、該ノズルユニット39,49では、導線をチップ60内を通す必要がないので内部構造を単純化し、製造コストを低下させることができる。また、チップ60の内部での凸凹が小さいので、前記チップ60内での流体の流れを円滑にすることができる。
図14(2)は、ノズルユニット39、49、59の代わりに、ノズルユニット65を用いたものである。
該ノズルユニット65は、チップ66の貯留部6内に、超音波を発生させる穿孔力源として、超音波振動子67を前記ライン状磁力源36,37の対応する高さ位置に設けたものである。該超音波振動子67からは、導線58が軸方向に沿ってチップ66内に設けられ、該導線58の端部が、前記ノズル2の外面に設けた端子と、チップ66の装着時に接続するように設けたものである。
なお、前記穿孔力源を制御する穿孔力源制御部は、前述した図示しない情報処理装置および該情報処理装置に設けられたプログラムによって構成されている。該穿孔力源制御部は、前記ホスト、該ホストに導入すべき生体物質もしくは前記磁性担体についての、性質、量もしくは濃度、および前記ライン状磁力源36,37を制御する磁力制御部に基づいて穿孔力を制御する。すなわち、前記ホストに対する穿孔は、そのホストの固さ、進入すべき磁性担体のサイズ、または、ホストに磁性担体が付着した際に該磁性担体に固定された生体物質が導入可能なサイズ等によって、その穿孔力の強さを決定し、また、ホストや磁性担体の量や濃度に基づいて、その穿孔力の発生時間、発生頻度等を決定する。
穿孔力源制御部は、該ホストの性質に応じて、導入処理と空間的または時間的に関連付けて、穿孔力を発生させる。例えば、ホストが細胞の場合には、細胞膜に穿孔すると、短時間で修復が行なわれるため、導入処理は、穿孔処理と同時または導入処理の直後に穿孔処理を実行する必要がある。そのためには、導入処理と穿孔処理とは時間的または空間的に関連付けて実行する必要がある。
本実施の形態によれば、電場と磁場とを組合せて制御することにより、磁性担体が保持した生体物質をホストに効率良く導入することができることになる。
続いて、第7の実施の形態について説明する。
図15(1)には、前記8連のノズルユニット17(または39,49,59,65)を用いて一斉に挿入可能な8個のホール71を持つマイクロプレート70と、該マイクロプレート70がその上側に載置され、各ホール71の底部と対応する位置に配置された複数の永久磁石ブロック72を有する分離部73とを有する。前記マイクロプレート70の各ホールには培地が収容されている。
8連の前記ノズルユニット17を用いて導入処理(または導入処理および穿孔処理)が完了して磁性担体によって侵入されたホストを含有する溶液は吸引されて、各チップ3(39,49,59,65)内に収容された状態で、培地が収容された前記ホール71を有するマイクロプレート70にまで、前記ノズルユニット17自体を移動させることによって移送されて該培地が収容された各ホール71に一斉に吐出される。
各ホール71内では、所定時間所定温度でインキュベーションによってホストの培養が行なわれるが、最初に収容された第1世代の磁性担体に進入されたホストは、前記永久磁石ブロック72の磁力によって各ホール71の底部に移動することになる。
そこで、図15(2)に示すように、新たに装着されたチップ74を用いて、各ホール71において底部に吸着していない部分のみを吸引し、その際に、前記ライン状滋力源36(37)をその液通過路に近接させた状態で行なうことにより、生体物質が導入されて培養された純粋のホストを抽出することができる。
本実施の形態によれば、簡単な装置で効率的かつ確実に純粋の培養物質を抽出することができる。
また、以上の各構成要素、部品、装置、例えば、収容部、容器、磁力源、液通過路、フィルターホルダー、ノズル、チップ、磁力源移動部、磁力変更部、永久磁石、電磁石、磁性担体、保持部、試薬、ホスト、生体物質、磁力処理部、導入処理部、移動機構、穿孔処理部、穿孔力源(電極、超音波振動子)、導線、端子等は、必要があれば、適当に変形しながら任意に組み合わせることができる。特に、第31の発明における収容部、導入処理部について、第3の発明から第18の発明を適用すること、第37の発明における混合工程、導入処理工程について、第20の発明から第27の発明を適用することが可能である。
また、例えば、未使用の収容部、チップ状の前記液通過路、チップ状のフィルター付液通過路、フィルターホルダー等をラックに収納しておき、前記移動機構によって前記収容部の保持部、前記圧力調節部のノズル、前記収容部または前記液通過路を移動させて装着可能としたり、使用済みのこれらの保持部や液通過路等を、脱着させて収容するラックを設けるようにしても良い。これによって、人手に頼らず、自動的に導入処理を一貫して行うことができる。また、前記移動機構は、前記収容部、液通過路を外部に設けた容器間、磁力源、前記ラックを含めて移動可能に設けるようにしても良い。
なお、第1の実施の形態に係る生体物質導入装置については、それを実現する機構について特に説明しなかったが、第2の実施の形態に係る生体導入システムで説明した機構を一のノズルのみに適用することによって実現することができる。
また、穿孔処理部について、上記説明では、8連のノズルユニットに適用した場合のみを説明したが、1本のノズルユニットにのみ適用することも可能であり、そのノズルユニットの連設数も、8連の場合に限られるものではない。以上説明した各実施の形態に示す各機構、その各部品、その形状等は1例を示したものにすぎず、これらの例に限定されるものではない。また、生体物質の導入効率を上げるために、ホストの境界部の透過性を増加させた後で、導入処理を行うようにしても良い。そのためには、例えば、Caを代表とする2価イオンによりホストを誘導した上で行なったり、有機溶媒でホストを誘導した上で導入を行う場合がある。
1,14…生体物質導入装置
2…ノズル
3、40,50,60,66…チップ
4…円環状永久磁石
5…液通過路
6…貯留部
13…磁性担体層
17,39,49,59,65…ノズルユニット
27…磁力処理部
31,32,33…加熱/冷却領域
36,37…ライン状磁力源
41,42,51,52,61,62…電極
67…超音波振動子
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の該ホストを液中に混合した混合液を収容する1または2以上の収容部と、
前記収容部内に及ぼす磁力を制御して、前記磁性担体を液中で前記ホストに対して相対的に動かし前記生体物質を該ホストに導入する導入処理部とを有する生体物質導入装置。
【請求項2】
前記導入処理部は、前記収容部内に磁力を及ぼすことが可能な磁力源と、前記収容部もしくは前記混合液と前記磁力源との間の相対的な位置もしくは速度、または、前記磁力源による磁力自体を変えることによって、前記磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かすように制御する磁力制御部とを有する請求項1に記載の生体物質導入装置。
【請求項3】
前記導入処理部は、前記収容部に収容した液中の多数の前記磁性担体を磁力で液中に展開させた状態で、該磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かす請求項1または請求項2のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項4】
前記磁性担体は、1の長軸をもつ粒子であって、長軸方向に沿って前記ホスト内に進入可能な大きさをもつ請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項5】
前記収容部内には、前記生体物質とともに、前記ホストへの生体物質の導入を補助するための導入補助剤が収容されている請求項1または請求項4のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項6】
前記磁性担体は、前記生体物質を保持する保持部を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項7】
前記磁性担体は、前記長軸方向に沿った両端または一端が先細りの形状に形成された請求項4に記載の生体物質導入装置。
【請求項8】
前記導入処理部は、前記ホスト、前記生体物質または前記磁性担体についての、性質、量または濃度に基づいて導入処理を行う請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項9】
前記収容部は、前記混合液が通過可能な液通過路を有し、前記磁力制御部として、該液通過路内の圧力を調節して液体の吸引吐出を行う圧力調節部を有する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項10】
前記収容部と、前記導入処理部が該収容部に対して導入処理を可能とする導入処理位置との間を相対的に移動可能とする移動機構を設けた請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項11】
前記磁力源は、2以上の電磁石を前記収容部の周囲に設けたものであり、前記磁力制御部は、該電磁石の磁力の大きさを電気的に変更するものである請求項1または請求項10のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項12】
前記磁力源として、2以上の永久磁石ブロックまたは電磁石を有し、前記収容部の周囲に、移動可能に設けたものであり、前記磁力制御部は、該各磁力源を該収容部に対して動かす請求項1または請求項11のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項13】
前記磁力源は、円管状の前記収容部の周囲を囲むように設けた所定磁極をもつ円環状の磁石であって、前記磁力制御部は、該磁力源を前記収容部の半径方向、その軸方向およびその周方向に沿って移動可能とする磁力源移動部または前記収容部を移動可能とする収容部移動部またはその混合液を移動する混合液移動部を有する請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項14】
複数個の前記収容部は水平ラインに沿って設けられ、前記導入処理部は、前記収容部を挟んで前記水平ライン方向に沿って設けられ各収容部に対応する位置に各々磁極が設けられた2本のライン状磁力源と、前記収容部もしくは前記混合液と前記ライン状磁力源との間の相対的な位置、または、前記ライン状磁力源による磁力自体を変えることによって、前記磁性担体とホストとの間を相対的に移動可能とする磁力制御部とを有する請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項15】
前記ライン状磁力源は、配列された前記収容部を挟んだ両側に前記水平ライン方向に沿って設けられ2本のライン状支持体と、該ライン状支持体に、各収容部に対応する間隔および位置に配設された複数個の永久磁石または電磁石とを有する請求項14に記載の生体物質導入装置。
【請求項16】
前記各収容部は、混合液が通過可能な液通過路と、各液通過路内の圧力を調節して液体の吸引および吐出を行う圧力調節部とを有する請求項14または請求項15のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項17】
前記導入処理部は、前記収容部に収容された混合液中から前記磁性担体が進入しまたは付着したホストを、前記収容部内に及ぼす前記磁力を制御して、前記収容部の内壁に吸着させて分離する磁気分離部を有する請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項18】
前記磁気分離部は、前記収容部の壁方向に向かう1方向の磁力のみが及ぶように、前記磁力制御部に指示する分離指示部を有する請求項17に記載の生体物質導入装置。
【請求項19】
細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合して混合液を作成して1または2以上の収容部に収容する混合工程と、前記収容部に及ぼす磁力を制御して、該磁性担体を前記ホストに対し相対的に動かし、前記生体物質を前記ホストに導入する導入処理工程とを有する生体物質導入方法。
【請求項20】
前記導入処理工程では、前記収容部または混合液と該磁場との間の相対的位置もしくは速度、または磁場自体を変えることによって前記磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かす請求項19に記載の生体物質導入方法。
【請求項21】
前記導入処理工程では、前記収容部に収容された液中の多数の前記磁性担体を磁力で液中に展開させた状態で、該磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かす請求項19または請求項20に記載の生体物質導入方法。
【請求項22】
前記導入処理工程は、1の長軸をもつ粒子状であって、長軸方向に前記ホスト内に進入可能な大きさをもつ磁性担体を用いて、該磁性担体を動かし前記ホスト内に進入させることによって生体物質を導入する請求項19または請求項21のいずれかに記載の生体物質導入方法。
【請求項23】
前記導入処理工程の後、該磁性担体が付着しまたは進入した前記ホストを、前記収容部内に、磁力を制御することによって前記収容部の内壁に吸着して分離する分離工程を有する請求項19ないし請求項22のいずれかに記載の生体物質導入方法。
【請求項24】
前記混合工程は、前記磁性担体および前記ホストに導入すべき前記生体物質とを液中で混合させることによって該生体物質を前記磁性担体に保持させる請求項19ないし請求項23のいずれかに記載の生体物質導入方法。
【請求項25】
前記分離工程の後、分離された前記磁性担体によって付着されまたは進入された前記ホストを前記収容部に収容した状態で、培地が収容された容器内に相対的に移動し、該ホストを該容器内に収容して培養する培養工程を有する請求項23に記載の生体物質導入方法。
【請求項26】
培養工程において、磁性担体が進入しまたは付着した前記ホストを、磁力を及ぼすことにより培養ホストより分離して除去し、純粋に培養された培養ホストのみを得るようにした請求項25に記載の生体物質導入方法。
【請求項27】
前記ホスト内に導入すべき前記生体物質を保持した磁性担体を磁力を用いて前記ホストに衝突させまたは遭遇させて、該生体物質を該ホスト内に導入する導入工程と、前記磁性担体に進入されまたは付着されたホストを分離する分離工程と、分離された前記ホストを用いて該ホストの培養を行う培養工程と、培養ホスト内から最初に前記磁性担体によって進入されまたは付着されたホストを磁力によって分離して、純粋な培養ホストを抽出する抽出工程とを有する生体物質導入方法。
【請求項28】
細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持可能であって、1の長軸をもつ粒子状の磁性担体であって、長軸方向に沿って前記ホスト内に進入可能な大きさをもつ生体物質導入用磁性担体。
【請求項29】
前記磁性担体は、前記生体物質を保持する保持部を有する請求項28に記載の生体物質用磁性担体。
【請求項30】
前記磁性担体は、長軸方向に沿った両端または一端が先細りの形状に形成された請求項27または請求項28のいずれかに記載の生体物質用磁性担体。
【請求項31】
細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の該ホストを液中に混合した混合液を収容する1または2以上の収容部と、
前記収容部内に及ぼす磁力を制御して、前記磁性担体を液中で前記ホストに対して相対的に動かし前記生体物質を該ホストに導入する導入処理部と、
前記ホストを穿孔する穿孔処理部とを有する生体物質導入装置。
【請求項32】
前記導入処理部は、前記収容部内に磁力を及ぼすことが可能な磁力源と、前記収容部もしくは前記混合液と前記磁力源との間の相対的な位置もしくは速度、または、前記磁力源による磁力自体を変えることによって、前記磁性担体と前記ホストとの間を相対的に動かすように制御する磁力制御部とを有する請求項31に記載の生体物質導入装置。
【請求項33】
前記穿孔処理部は、電場または超音波等による穿孔力を及ぼすことが可能な穿孔力源と、該穿孔力源を制御する穿孔力源制御部とを有する請求項31に記載の生体物質導入装置。
【請求項34】
前記穿孔力源制御部は、前記ホスト、前記生体物質もしくは前記磁性担体についての、性質、量もしくは濃度に基づいて穿孔力源を制御する請求項31または請求項32のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項35】
前記穿孔力制御部または前記磁力制御部は、導入処理と穿孔処理を空間的または時間的に関連付けて実行するように制御する請求項31乃至請求項33のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項36】
前記収容部は、前記混合液が通過可能な液通過路を有し、前記磁力制御部として、該液通過路内の圧力を調節して液体の吸引吐出を行う圧力調節部を有する請求項31ないし請求項35のいずれかに記載の生体物質導入装置。
【請求項37】
細胞等のホストに導入すべき生体物質を保持した多数の磁性担体および多数の前記ホストを液中に混合して混合液を作成して1または2以上の収容部に収容する混合工程と、前記細胞等のホストを穿孔する穿孔処理工程と、前記収容部に及ぼす磁力を制御して、該磁性担体を前記ホストに対し相対的に動かし、前記生体物質を前記ホストに導入する導入処理工程と、を有する生体物質導入方法。
【請求項38】
前記穿孔処哩工程は、電場または超音波等の穿孔力を及ぼすことによって行なう請求項37に記載の生体物質導入方法。
【請求項39】
前記穿孔処理工程は、前記ホスト、前記生体物質もしくは前記磁性担体についての、性質、量もしくは濃度に基づいて穿孔力を及ぼす請求項37または請求項38のいずれかに記載の生体物質導入方法。
【請求項40】
前記穿孔処理工程および前記導入処理工程は、空間的または時間的に関連付けて実行される請求項37乃至請求項39のいずれかに記載の生体物質導入方法。
【請求項41】
前記導入処理部により処理された前記磁性担体が付着しまたは進入したホストを含有する液をまたは磁性担体が付着しまたは進入したホストを分離して移送する移送手段と、培地が収容された容器と、該容器に収容された前記磁性担体および該磁性担体が付着しまたは進入したホストを分離するための分離部とをさらに有する請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の生体物質導入装置。

【国際公開番号】WO2004/035776
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544969(P2004−544969)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013254
【国際出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【出願人】(592030735)
【Fターム(参考)】