生体異物の生体利用率又は生物学的同等性の遺伝情報を活用する試験方法
本発明は、生体異物に対する薬物動態学(PK:Pharmacokinetics)又は薬力学(PD:Pharmacodynamics)的に影響を与える代謝酵素(metabolic enzyme)又は輸送体(transporter)などの遺伝的情報(genetic profiling)に基づいて試験対象(ヒト又は動物)を選定し、これらに対して生体利用率又は生物学的同等性試験を実施する方法、及び、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後に、試験対象の遺伝的情報を活用して生体利用率又は生物学的同等性試験の解釈に利用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体異物(xenobiotics)の生体利用率(Bioavailability)又は生物学的同等性(Bioequivalence)試験方法に関する。より詳細には、生体異物に対して薬物動態学(PK;Pharmacokinetics)又は薬力学(PD;Pharmacodynamics)的に影響を与える代謝酵素(matabolic enzyme)又は輸送体(transporter)などの遺伝的情報(genetic profiling)に基づいて試験対象(ヒト又は動物)を選定し、これらに対して生体利用率又は生物学的同等性試験を実施する方法、及び生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した以後における試験対象の遺伝的情報を活用して、生体利用率、又は、生物学的同等性試験の解釈に利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体利用率(以下、BAと略記することもある)とは、“医薬品の有効成分又は活性成分が生体内の作用部位に到達する速度(rate)及び程度 陽(extent)”と定義されている。1,2(先行技術文献の番号を示し、以下、数字だけで表記する)
一方、生物学的同等性(以下、BEと略記することもある)とは、“2つの製剤が同一の投与量、同一の投与経路、同一の投与方法によって投与されたとき、医薬品の有効成分又は活性成分が生体内の作用部位に到達する速度(rate)及び程度 陽(extent)において比較する2つの製剤の間に統計的に有意性のある差異がないこと”と定義されている。1,2
前記BA及びBEは、医薬品の有効成分又は活性成分が体内でどれ程吸収されるかを示す吸収量の指標であるAUC(area under the blood concentration versus time curve)と、どれ程早く吸収されるかを示す指標であるCmax(the peak blood concentration of drug)のPKパラメータなどによって表現される。血中濃度の測定が困難である場合には、尿中への累積排泄量が吸収量の指標として使用されることもある。特に、BE試験は、試験製剤が対照製剤と治療学的に同等であることを立証するために厳格な統計的基準を満足させなければならない。1、2
また、BE試験の目的が、試験製剤と対照製剤との間に製剤から起因する差異があるかを判定することにあるため、製剤による誤差以外の他の誤差などを最小限に減らすことができる場合は、試験製剤と対照製剤との差異の有無をより明瞭に判断することができる。
したがって、BE試験は一般的に次のような2×2交差試験法(cross−over study)によって試験を実施するようになる。Standard two period、two−sequence cross−over designにおいて被験者などはtwo treatment sequenceにグループ化される。
第1のシーケンスにおいては、被験者は第1時期(period−1)に対照薬Rを、第2時期(period−2)に試験薬Tを服用するようになり、第2のシーケンスに属する被験者は、第1時期に試験薬を、第2時期に対照薬を服用するようになる。また、第1時期と第2時期との間には、十分に長いwashout periodがなければならない。このような試験設計をRT/TRデザインという(表1参照)。
【0003】
【表1】
【0004】
前記のような交差試験は、residual variationで個体間の誤差(between−subject variability)を除去するので、BE試験には最適の試験設計である。このような理由によってFDA1、CPMP3においても交差設計によるBE試験を推奨している。但し、薬物の半減期が長すぎる場合には、並行試験設計(parallel study design)も許容しているが、この時にはBE試験の基本的仮定である被験者の薬物に対するクリアランスが第1時期と第2時期に亘って変わらない(一定である)という仮定が成立されないこともあることから注意する必要がある。しかし、実際においては並行試験設計は交差試験設計に比べて使用しなければならない被験者の数があまり多すぎるため、その使用は好ましくない。
US FDA、EMEA、KFDAのBEガイダンス1、2、3、4によると、試験薬と対照薬のPKパラメータ(AUC、Cmax)の平均値をログ変換して比較するとき、ログ変換された試験薬と対照薬とのPKパラメータの平均値の差異の90%信頼区間が80〜125%の範囲内にあることによって、生物学的同等性(bioequivalent)の認定を受けることができる。
このときの信頼区間(CI)は下記の式1によって与えられる。
(式1)
【0005】
前記式1からBE試験での信頼区間の範囲は、個体内誤差のサイズに比例し、サンプルサイズに反比例することを確認することができる。
すなわち、個体内誤差が微少な薬物の場合には、式1から分るように、信頼区間の範囲が狭いので同等性を立証することが容易であるが(図1参照)、Highly Variable Drug(HVDと略記する)のように個体内誤差が非常に大きな薬物の場合には、信頼区間に入ることが容易ではないことを確認することができる。図1はこれを模式的に表している。
一般的にBA/BE試験においてAUC又はCmaxのwithin−subject(または、intra−subject)variabilityが30%以上である薬物をHVDという。5、6
因に、2003年から2005年の間に米国のFDAに提出された生物学的同等性試験報告書の中で、HVDが占めている比率に対してFDAから発表された資料を下記表2に示した。7
【0006】
【表2】
【0007】
提出された生同性試験の約11%がHVDに該当する薬物であって、111個の生同性試験に該当していた。このように多い薬物がHVDに該当し、したがって、これらの薬物の個体内誤差が30%以上であることによって信頼区間の範囲が広がることになり、生物学的同等性試験のガイドラインで指定している80〜125%の範囲内に入ることが難しくなる(図1参照)。
前記のようなHVD薬物のように個体内誤差が非常に大きな薬物の場合、生物学的同等性を立証するためには、非常に多い数の被験者を使用しなければならない。これは、生物学的同等性試験を実施する製薬会社の立場から見るとき、コストの面や試験の成功確率の面で非常に難しい与件となっている。また、試験に参加する被験者の立場から見るときも必要以上に多くのヒトに薬物を投与して試験を実施しなければならないため、被験者の健康保護の観点からも決して好ましくない。
このような事情を鑑みて本発明においては、遺伝情報を活用することによって、HVD薬物のように個体内誤差が大きい生体異物の生体利用率及び/又は生物学的同等性試験の成功確率を高めることのできる方法を提示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】US Food and Drug Administration,Guidance for Industry:bioavailability and bioequivalence studies for orally administered drug products−general considerations,Center for Drug Evaluation and Research.Rockville,MD.,2003。
【非特許文献2】US Food and Drug Administration,Statistical approaches to establishing bioequivalence.Guidance for industry.Rockville,MD.,2001。
【非特許文献3】EMEA/CPMP/EWP/1401/98.Note for guidance on the investigation of bioavailability and bioequivalence.EMEA,London,2001。
【非特許文献4】生物学的同等性試験基準、韓国食品医薬品安全庁(KFDA)告示第2008−22号。
【非特許文献5】C.E.Diliberti.Why bioequivalence of highly variable drugs is an issue.Advisory Committee for Pharmaceutical Sciences Meeting Transcript,2004。http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/04/transcripts/4034T2.pdf.
【非特許文献6】K.K.Midha,M.J.Rawson and J.W.Hubbard.The bioequivalence of highly variable drugs and drug products.Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.43,485〜498,2005.
【非特許文献7】B.M.Davit at al.Highly variable drugs:observations from bioequivalence data submitted to the FDA for new generic drug applications.The AAPS J.10,148〜156,2008。
【非特許文献8】D.Hauschke,et al.Presentation of the intrasubject coefficient of variation for sample size planning in bioequivalence studies.Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.Toxicol.32,376〜378,1994。
【非特許文献9】J.A.Williams et al.PhRMA White paper of ADME pharmacogenomics.J.Clin.Pharmacol.48,849〜889,2008。
【非特許文献10】Norio Yasui−Furukori et al.Effects of CYP2D6 genotypes on plasma concentrations of risperidone and enantiomers of 9−hydroxyrisperidone in Japanese patients with schizophrenia.J.Clin.Pharmacol.2003:43,122〜127。
【非特許文献11】A.Marzo Open questions on bioequivalence:some problems and some solutions.Pharmacol.Res.40,357〜368,1999。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、試験対象に対して生体異物の薬物動態学(以下、薬動学と略記することもある)又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を利用する生体異物の生体利用率又は生物学的同等性(以下、生同性と略記することもある)試験方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生体異物の生体利用率又は生同性試験において、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体利用率又は生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後に、試験対象の遺伝情報を活用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、試験対象に対して生体異物の薬物動態学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型(wild type)、ヘテロ型(heterozygous type)、又は、突然変異型(mutant type)であるかを確認する段階と、前記遺伝子型に従って試験対象に包含させるかの可否を決定する段階とを含める生体異物の生体利用率又は生物学的同等性の試験方法を提供する。
本発明による試験方法において、前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がない場合、前記試験対象に包含させることが好ましい。
一方、本発明による試験方法において、前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がある場合、試験対象に包含させないことが好ましい。
本発明による試験方法において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が突然変異型であるとき、試験対象に包含させないことが好ましい。
また、本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
また、本発明は、生体利用率又は生物学的同等性試験解釈の結論に影響を与える異常値(outlier)がある場合、試験対象の遺伝子型に対するプロファイリング(profiling)を実施する段階と、遺伝子型を野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型に分類して各遺伝子型別に薬動学又は薬力学的パラメータを比較する段階と、前記遺伝子型によって薬動学又は薬力学的パラメータとの間に有意性のある差異が認定される場合、前記遺伝子型による異常値を除いて結果を解釈する段階とを包含する、生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後の試験対象の遺伝情報を活用する方法を提供する。
また、本発明は、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することによって、試験対象から観察される副作用を減少させる生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して試験を実施することによって、試験時間を短縮させる生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、薬動学的パラメータに対して個体内誤差と個体間誤差との間に正 陽の比例関係が存在するという事実を活用して、前記生体異物の生体利用率試験の結果を、交差試験(cross−over study)、並行試験(parallel study)及び反復試験(repeated study)で構成された群から選択されるいずれか1つ以上の方法によって設計するか、又は、平均生物学的同等性(average BE)、個体生物学的同等性(individual BE)、及び集団生物学的同等性(population BE)で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法を活用する生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
本発明による前記試験方法において、前記薬動学的パラメータはAUC(area under the blood concentration versus time curve)及びCmax(the peak blood concentration of drug)で構成された群から選択されるいずれか1つ以上であることが好ましい。
また、本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、生物学的半減期が5日以上である生体異物の個体間誤差を減少させるために、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型(genetic polymorphism)が同質であるか、又は、類似する試験対象を選択して並行生体利用率(parallel bioavailability)試験又は生物学的同等性試験を実施する生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することにおいて、生体異物に対する薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体などの遺伝的特性を考慮して試験対象を選定し、試験対象個体間及び個体内の差異を減少させることによって、生体利用率又は生物学的同等性試験の検定力を高めることができ、製剤間の差異をより明確に判別させることができるようにして試験の成功率を高めることができる。
また、本発明による方法によれば、生体利用率又は生物学的同等性試験の例数(被験者の数又は動物の数)を節減させることにより全般的なコスト及び時間を節減させる効果があり、生体利用率又は生物学的同等性試験に参加する試験対象に対する生体異物の副作用及び有害作用の発現頻度を減らすことによって、被験者の健康保護にも寄与することができる。
また、既に実施された生物学的利用率又は生物学的同等性試験の結果を解釈する時、前記のような遺伝情報を活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】BE試験において、ログ変換されたAUC又はCmax値の試験薬と対照薬との平均値の差の90%信頼区間を模式的に示した図面である。 前記図1において、信頼区間は個体内誤差のサイズに比例するので、製剤学的に同等であっても個体内誤差が大きいHVDはBE同等性基準を満足させない場合がある。
【図2】本発明で調査した50例のBE試験から得られたCmaxに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値と個体間誤差の変異係数(CVb)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図2において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点などの90%信頼区間を示す。
【図3】本発明で調査した50例のBE試験から得られたCmaxに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値とログ変換された試験薬と対照薬のCmax平均値の差異の90%信頼区間(CI)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図3において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点らの90%信頼区間を示す。
【図4】本発明で調査した50例のBE試験から得られたAUCに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値と個体間誤差の変異係数(CVb)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図4において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点らの90%信頼区間を示す。
【図5】本発明で調査した50例のBE試験から得られたAUCに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値とログ変換された試験薬と対照薬のCmax平均値の差異の90%信頼区間(CI)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図5において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点らの90%信頼区間を示す。
【図6】本発明においてリスペリドン製剤を健康な成人志願者に経口投与した後、血漿中濃度の経時的変化を示したグラフである。本試験に参加した17名の被験者全員の経時的変化を示した。
【図7】CYP2D6*10の野生型遺伝子を有するヒトのリスペリドン血漿中濃度の経時変化を示したグラフである。
【図8】CYP2D6*10のヘテロ型遺伝子を有するヒトのリスペリドン血漿中濃度の経時変化を示したグラフである。
【図9】CYP2D6*10の突然変異型遺伝子を有するヒトのリスペリドン血漿中濃度の経時変化を示したグラフである。
【図10】本発明において、BA/BE試験でPK/PDに影響を与える代謝酵素/輸送体の遺伝子多型に関する情報を活用して試験対象を選別するフロー図面である。
【図11】本発明において、BA/BE試験を実施した後にPK/PDに影響を与える代謝酵素/輸送体の遺伝子多型に関する情報を試験結果の解釈に活用するフロー図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体異物の生体利用率、又は、生同性試験方法は、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型であるかを確認する段階と、前記遺伝子型に従って試験対象に選択するかを決定する段階とによってなることを特徴とする。
前記の生体異物は、ヒトに適用する医薬品、動物に適用する動物用医薬品、バイオ医薬品、ヒト又は動物に適用するための医薬品として使用することのできる物質を意味する。
前記において、代謝酵素及び輸送体は、生体異物のPK又はPDに影響を与える代謝酵素及び輸送体を意味する。バイオ医薬品の場合、特異的輸送体(receptor)がPK/PDに関与する場合があるが、バイオ医薬品の場合、特異的輸送体は広い意味で代謝酵素及び輸送体の概念に包含される。
前記において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、PK又はPDに対して野生型と有意性のある差異が無い場合、試験対象に包含させることが好ましい。
前記において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、PK又はPDに対して野生型と有意性のある差異が有る場合、試験対象に包含させないことが好ましい。前記において有意性のある差異が無いということは、例えば、PKパラメータであるCmax又はAUCの野生型の平均値とヘテロ型の平均値との間に統計的検定法を適用するとき、有意水準5%又は1%で差異が無いとのことを意味する。
前記において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が突然変移型である場合は、試験対象に包含させないことが好ましい。
また、本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、試験対象に対して生体異物のPK/PDに影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験を設計するか、又は、生体利用率又は生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することが好ましい。
また、本発明は生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後、遺伝情報を活用して特定試験対象を最終分析に包含させるか、又は、除外させるかを決定することにおいて試験対象の遺伝情報を活用することができる。
本発明は生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後、試験対象の遺伝情報を活用することにおいて、生体利用率又は生物学的同等性試験解釈の結論に影響を与える異常値がある場合、試験対象の遺伝子型に対するプロファイリングを実施することが好ましい。
試験対象の遺伝子型に対するプロファイリングを実施して前記試験対象の遺伝子型を野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型に分類した後、各遺伝子型別にPK又はPDパラメータを比較して、前記遺伝子型によってPK又はPDパラメータとの間に有意性のある差異が認定される場合、遺伝子型による異常値を除いた結果を解釈することが好ましい。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、その遺伝子型が野生型である試験対象のみを選別して生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することによって、試験対象から観察されることができる副作用を減らすことができるため、試験対象になった被験者の健康権を保護することができる。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して試験を実施することによって試験時間を短縮することができる。
野生型のみを有するヒトらにおいて、生体異物を投薬した後の血中濃度は突然変異型のヒトより早い時間内で減少する。したがって、野生型を有するヒトのみを試験対象に選定する場合、薬物によっては採血時間を大幅に短縮することができる。
また、血漿中の薬物濃度が相対的に低いため、薬物に起因する副作用の発現率も低めることが予想される。このように代謝酵素及び輸送体が野生型である被験者を使用することによって、BA又はBE試験を進行するときに発生する副作用を減らすことによって被験者の管理及び中途脱落者などの問題を予防することができる。
本発明は、PK又はPDに影響を与える代謝酵素、輸送体などの遺伝情報の概要(genetic profiling)に基づいて試験対象(ヒト又は動物)を選択し、これらを対象にしてBA又はBE試験を実施することを主旨とするものである。したがって、本発明は従来使用されているいろいろなBA又はBE試験方法、多様な遺伝子プロファイリング方法(RT−PCR,gene sequencing,gene chip,etc.)をそのまま活用することができる。
生体異物の代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型がPK又はPDの個体差に影響を与えるという多くの報告がある。
下記の表3にはcytochrome P450代謝酵素の遺伝子多型の例を示し、表4には第2相代謝酵素(phase−2 metabolic enzymes)の例を示した。また、表5には輸送体の遺伝子多型の例を整理した。9
【0014】
【表3】
【0015】
【表4】
【0016】
【表5】
【0017】
前記表3、4及び5に例示されているように、drug metabolizing enzyme(DME)又は輸送体によって輸送される生体異物であり、個体間の差異の主な原因が、これらの代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型に起因する場合に、このような遺伝情報をBA又はBE試験に体系的に活用してBA又はBE試験を改善させることのできる方法を提示する。
以下、本発明の内容を実施例を通じてより詳細に説明する。ただ、これらの実施例は本発明の内容を理解するために提示されるだけであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)
本発明においては、実施された50例の生物学的同等性試験から各試験別Cmaxに対する個体内誤差の変異係数(CVw)と、個体間誤差の変異係数(CVb)を式2及び式3を利用して求め、90%信頼区間(CI)を式1を利用して求めた。8
個体内誤差の変異係数CVw(within−subject coefficient of variation)は下記(式2)のように定義される。8
(式2)
【0018】
個体間誤差の変異係数CVb(Between−subject coefficient of variation)は下記(式3)のように定義される。8
(式3)
【0019】
自然ログに変換された個体内誤差の変異係数(CVw)と自然ログに変換された個体間誤差の変異係数(CVb)とをSASプログラム(SAS9.1.3,SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。また、図2にこれらの関係を示した。
【0020】
自然ログに変換されたCVwと自然ログに変換されたCVbとの間には直線的な比例関係が観察され、このときの傾度は0.618であった(p<0.0001)。すなわち、図2から分るように、Cmaxの個体内誤差と個体間誤差との間に比例関係があることが観察された。PKパラメータであるCmaxに対して個体間誤差と個体内誤差との間に下記式4のような正 陽の相関関係が存在することを確認したことは本発明の新規性と独創性に該当する。
(式4)
【0021】
生同性試験の場合、信頼区間のサイズは、式1から分るように、個体内誤差のサイズに比例するが、図2から分るように、個体内誤差と個体間誤差との間に式4のような比例関係が成立することが観察された。したがって、個体間誤差が減少されることになれば個体内誤差も減少されるとのことを意味する。
別途に50例の生物学的同等性試験の実施例からCmaxの90%信頼区間をSASプログラムを利用して計算し、自然ログに変換した90%信頼区間(CI)と、自然ログに変換した個体内誤差の変異係数(CVw)との間の関係をSASプログラムを利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。
【0022】
自然ログに変換されたCIと自然ログに変換されたCVwとの間には直線的な比例関係が観察され、このときの傾度は0.751であった(p<0.0001)。このときの関係を図3に示した。図3から分るように、個体内誤差のサイズと90%信頼区間との間には下記式5のような正 陽の相関関係があることを観察した。
(式5)
【0023】
したがって、図2と図3から個体間誤差を減らせることができた場合、個体内誤差が減られることになり、したがって、信頼区間の範囲を減少させることができ、かつ検定力も高めることができる。すなわち、被験者の例数を増加させることがなくても信頼区間の範囲を減少させる効果を期待することができる。
しかし、個体間誤差が生じるいろいろな原因の中で最も重要なこととしては、薬物の体内動態に関与する代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型を考えることができる。したがって、個体間誤差を減らすためには代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型が類似であるか、又は、同質の個体だけを選択した場合、個体間誤差を減らすことができる。したがって、本発明において新たに発見した個体間誤差と個体内誤差との比例関係から個体内誤差を減らすことができるようになる。
(実施例2)
本発明で実施された50例の生物学的同等性試験から各試験別にAUCに対する個体内誤差の変異係数(CVw)と個体間誤差の変異係数(CVb)を式2及び式3を利用して求め、90%信頼区間(CI)を式1を利用して求めた。
自然ログに変換された個体内誤差の変異係数(CVw)と自然ログに変換された個体間誤差の変異係数(CVb)とをSASプログラム(SAS9.1.3,SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。また、図4にこれらの関係を示した。
【0024】
自然ログに変換されたCVwと自然ログに変換されたCVbとの間には、式6のような直線的な比例関係が観察された(図4参照)。このときの傾度は0.668であった(p<0.0001)。すなわち、個体内誤差と個体間誤差との間に比例関係があることが観察された。PKパラメータであるAUCに対して個体間誤差と個体内誤差との間に式6のような正 陽の相関関係が存在することを確認したことは、本発明の新規性と独創性に該当する。
(式6)
【0025】
一方、以上50例の生物学的同等性試験の実施例からAUCの90%信頼区間を計算し、自然ログに変換した信頼区間と自然ログに変換した個体内誤差の変異係数(CVw)との間をSASプログラムを利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。
【0026】
自然ログに変換された90%CIと自然ログに変換されたCVwとの間には直線的な比例関係が観察された。このときの傾度は0.816であった(p<0.0001)。このときの関係を図5に示した。前記図5から分るように、個体内誤差のサイズと90%信頼区間との間には式7のような正 陽の相関関係があることが観察された。
(式7)
【0027】
しかし、AUCに対する個体間誤差が生じるいろいろな原因の中で最も重要なことは、薬物の体内動態に関与する代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型を考えることができる。したがって、個体間誤差を減らすためには代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型が類似であるか、又は、同質の個体だけを選択した場合、個体間誤差を減らすことができる。したがって、本発明において新規的に発見した個体間誤差と個体内誤差との比例関係から個体内誤差を減らすことができるようになる。
(実施例3)
シトクロム(cytochrome)代謝酵素であるCYP2D6によって主に代謝され、遺伝的多型(genetic polymorphism)が知られている10リスペリドン(risperidone、Janssen Korea,Ltd.製)を健康な成人男子17名にそれぞれ3mgを経口投与した後、経時的に採血した(0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、12、24、36、48時間)。血漿中のリスペリドン濃度はバリデーションされたLC−MS/MS法によって定量した。
リスペリドン定量方法(LC−MS/MS法)は次のようである。
リスペリドンを50%メタノールに溶解させ遊離塩基(free base)として1mg/mLになるように作製した後、冷蔵保管し、この溶液を冷凍保管していたブランク(blank)血漿によって希釈してリスペリドンの血漿中の濃度がそれぞれ0.2、0.5、1、5、10、30、40ng/mLになるように血漿試料を調製した。
それぞれの標準血漿200μLに内部標準物質であるデシプラミン(desipramine)(1μg/mL)50μLを加えてボルテックス(vortex)した後、2M水酸化ナトリウム水溶液25μL及び酢酸エチル1.2mLを加えてさらに2分間ボルテックスを実施した。
次いで12,000rpmで5分間遠心分離し、上澄液1mLを取って30分間蒸発・乾燥させた。このように前処理された血漿試料は次のLC/MS/MS条件で定量した。装置はWaters社のHPLCを、検出器はWaters社のtriple quadruple mass spectrometerを利用して、MRM(multiple reaction monitoring)法によってリスペリドン(m/z410.91>191.35)と内部標準物質であるデシプラミン(m/z267.09>208.22)を検出した。コラムはAlltech Replacement prefilter(4.0mm×2.0μm)を連結したCapcell Pak C18 UG120V(5μm、2.0mm×150mm)を、データ処理装置はWaters社のMassLynx integratorを使用した。移動相としては[10mM ammonium formate buffer(adjusted to pH3.5 with formic acid)/acetonitrile−15/85、v/v]混合溶液を使用し、流速0.25mL/minで測定した。
図6には、被験者17名全員のリスペリドン血漿中の濃度を示した。この血漿中のリスペリドン濃度の時間曲線からAUCLAST(最終濃度測定時間までのAUC)を台形公式(trapezoidal rule)の式8を使用して計算し、また、Cmaxは実測値を使用して求めた。
(式8)
【0028】
ここでCiは、測定時間tiにおける血中薬物濃度を示す。
一方、被験者の遺伝子検査は被験者の書面による事前同意を得た後、血球からDNAを抽出し、RT−PCR法によってCYP2D6*2、CYP2D6*5、CYP2D6*10の対立遺伝子(allele)に対して調査した。CYP2D6*2、CYP2D6*5の遺伝子型に従ってリスペリドンの血漿中濃度に影響が殆どないことが観察されたが、CYP2D6*10遺伝子型に従ってリスペリドンの血漿中濃度に大きな差異があることが観察された。
図7には、CYP2D6*10の野生型を有する被験者の血漿中リスペリドン濃度を、図8には、CYP2D6*10のヘテロ型を有する被験者の血漿中リスペリドン濃度を、図9には、CYP2D6*10の突然変異型を有する被験者の血漿中リスペリドン濃度を示した。
下記表6に、Cmax値をログ変換して、これらの平均、標準偏差、分散、個体間誤差、信頼区間などを求めてリスペリドンの主代謝酵素であるCYP2D6の遺伝子型別に整理した。
【0029】
【表6】
【0030】
前記表6から分るように、CYP2D6の代謝を受けるリスペリドンのCmax値は遺伝子型によって被験者を分類しなく、すべてを合わせた状態におけるリスペリドンのCmaxのCVb値は20.8%であることに対して、CYP2D6の遺伝子型が野生型である被験者だけを選択した場合には、CVb値が13.6%と著しく減少されていることを観察することができた。
個体間誤差と個体内誤差との間には、式4のような相関関係が観察されているので、リスペリドンのCmax値の個体間誤差の変異係数を式4に代入して個体内誤差の変異係数を計算すると、下記の表7のような結果が得られる。
【0031】
【表7】
【0032】
BE試験の検定力及び試料のサイズを計算するプログラムであるnQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)は、Dilettiなどが発表したアルゴリズムを使用するが8、検定力はwithin−subject CVを分れば計算することができる。
式4を利用して得られたCVw値を使用してBE試験で90%の検定力(1−β)を得るために、必要のサンプル数を試験製剤と対照製剤の比(T/R Ratio)が0.9〜1.1である場合に対して、nQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)を利用して計算した。前記表7にこの結果を整理した。
リスペリドンの場合、試験製剤と対照製剤のCmax平均値の比が1であるとき、90%の検定力を得るために、遺伝情報を使用しないときには26名の被験者が必要であることに比べて、CYP2D6*10の野生型である志願者だけを被験者に選定して実験を行うと、16名の被験者だけが必要であることを示している(表7参照)。
このような差異は、生産者の立場から見るとき、経済的側面や全体的なBE試験の管理側面で大きな意味を有する。また、図7から分るように、野生型の被験者においては、血漿中のリスペリドン濃度がヘテロ型(図8)、又は、突然変異型(図9)である被験者の血漿中濃度より低く、かつ、迅速に血漿中の濃度が減少することを確認することができる。
野生型のみを有するヒトにおいては、投薬後24時間程度経過した後の血漿中濃度は殆ど測定感度以下に減少されているが、突然変異型のヒトにおいては48時間経過した後まで血漿中の濃度が測定されることが観察された。したがって、野生型を有するヒトだけを試験対象に選定した場合には、採血時間を大幅に短縮することのできるメリットがある。また、血漿中の薬物濃度が相対的に低いため、薬物から起因する副作用の発現率も低くなることが予想される。
このように代謝酵素及び輸送体が野生型である被験者を使用することによって、BA又はBE試験進行の時に生じる副作用を減らすことができ、被験者の管理及び中途脱落者などの問題を予防することができる。
以上の実施例1〜実施例3において、PK/PDに影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型を検査して試験対象(ヒト又は動物)を選定し、これらに対してBA又はBE試験を実施することによって(図10)、同一の数の試験例数を使用するとき、生産者の危険率を減少させることができ(検定力の増加)、90%信頼区間の範囲を縮小してBE試験の成功率を高めることができる。
また、換言すると、BA/BE試験の一定の検定力を得ることに必要な試験対象の例数を大きく減らすことによって、試験に係る経費の節減及び試験の管理を大きく改善する効果が期待される。
(実施例4)
一方、本発明で実施したリスペリドンの試験結果からそれぞれの遺伝子型別にAUCLAST値の平均値、分散、標準偏差、個体間誤差を示す変異係数(CVb)値を下記表8に示した。
【0033】
【表8】
【0034】
前記表8から分るように、CYP2D6の代謝を受けるリスペリドンのAUC値は、遺伝子型によって被験者を分類しなく、すべてを合わせた状態におけるリスペリドンのAUCのCVb値は22.2%であることに対して、CYP2D6の遺伝子型が野生型である被験者だけを選択した場合には、CVb値が15%と著しく減少されていることが観察された。
個体間誤差と個体内誤差との間には、式6のような相関関係が観察されているので、リスペリドンのAUC値の個体間誤差の変異係数を式6に代入して個体内誤差の変異係数を計算すると、下記表9のような結果が得られる。
【0035】
【表9】
【0036】
BE試験の検定力及び試料のサイズを計算するプログラムであるnQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)は、Dilettiなどが発表したアルゴリズムを使用するが8、検定力はwithin−subject CVを分れば計算することができる。
式6を利用して得られたCVw値を使用してBE試験で90%の検定力(1−β)を得るために必要のサンプル数を試験製剤と対照製剤との比(T/R Ratio)が0.9〜1.1である場合に対して、nQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)を利用して計算した。この結果を下記表10に整理した。
【0037】
【表10】
【0038】
前記表10から分るように、リスペリドンの場合、試験製剤と対照製剤とのAUC平均値の比が1であるとき、90%の検定力を得るために遺伝情報を使用しないときには、12名の被験者が必要であることに比べてCYP2D6*10の野生型の志願者だけを被験者に選定して実験を行うときは、8名の被験者が必要であることを示している。
以上の実施例3及び実施例4のように遺伝情報を活用してBA/BE試験の設計及び実施に活用することによって得られるメリット及び利益は明白である。
BA/BE試験において、遺伝情報の活用は、試験を実施する以前に使用することもでき、試験が既に終了された以後にも遺伝情報を活用して一部の試験対象の資料を判定から除外させるか、又は、包含させるなどの分析や解釈にも活用することができる(図11)。また、試験に先立って試験例数を計算するとき、遺伝情報を活用する場合と活用しない場合に、例数がどのように変わるかなどに対しても使用することができる。
また、半減期が非常に長い(5日以上)薬物の場合11、BE試験の交差試験法によって試験を実施する場合、試験進行が非常に難しい。このときは、並行試験法によって試験することが有利であるが、並行試験法の場合、個体間誤差が大きいので多くの試験例数を必要とする。しかし、遺伝子プロファイリングを通じて個体間誤差を減らせることができるとすれば、半減期が非常に長い生体異物の並行試験法による生体利用率、又は、生物学的同等性試験の成功率を高めることができる。下記表11に半減期が長い薬物の例を示した。
【0039】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することにおいて、生体異物に対する薬物動態学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体などの遺伝的特性を考慮して試験対象を選定し、試験対象の個体間及び個体内の差異を減少させることによって、生体利用率又は生物学的同等性試験の検定力を高め、製剤間の差異をより明確に判別することができるので試験の成功率を高めることができる。
また、本発明による方法によると、生体利用率又は生物学的同等性試験の試験例数(被験者数又は動物数)を減少させることによって全般的なコスト及び時間を節減させる効果があり、生体利用率又は生物学的同等性試験に参加する試験対象に対する生体異物の副作用及び有害作用の発現頻度を減らすことによって被験者の健康権の保護にも寄与することができる。
また、既に実施された生物学的利用率又は生物学的同等性試験の結果を解釈する時、前記のような遺伝情報を活用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体異物(xenobiotics)の生体利用率(Bioavailability)又は生物学的同等性(Bioequivalence)試験方法に関する。より詳細には、生体異物に対して薬物動態学(PK;Pharmacokinetics)又は薬力学(PD;Pharmacodynamics)的に影響を与える代謝酵素(matabolic enzyme)又は輸送体(transporter)などの遺伝的情報(genetic profiling)に基づいて試験対象(ヒト又は動物)を選定し、これらに対して生体利用率又は生物学的同等性試験を実施する方法、及び生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した以後における試験対象の遺伝的情報を活用して、生体利用率、又は、生物学的同等性試験の解釈に利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体利用率(以下、BAと略記することもある)とは、“医薬品の有効成分又は活性成分が生体内の作用部位に到達する速度(rate)及び程度 陽(extent)”と定義されている。1,2(先行技術文献の番号を示し、以下、数字だけで表記する)
一方、生物学的同等性(以下、BEと略記することもある)とは、“2つの製剤が同一の投与量、同一の投与経路、同一の投与方法によって投与されたとき、医薬品の有効成分又は活性成分が生体内の作用部位に到達する速度(rate)及び程度 陽(extent)において比較する2つの製剤の間に統計的に有意性のある差異がないこと”と定義されている。1,2
前記BA及びBEは、医薬品の有効成分又は活性成分が体内でどれ程吸収されるかを示す吸収量の指標であるAUC(area under the blood concentration versus time curve)と、どれ程早く吸収されるかを示す指標であるCmax(the peak blood concentration of drug)のPKパラメータなどによって表現される。血中濃度の測定が困難である場合には、尿中への累積排泄量が吸収量の指標として使用されることもある。特に、BE試験は、試験製剤が対照製剤と治療学的に同等であることを立証するために厳格な統計的基準を満足させなければならない。1、2
また、BE試験の目的が、試験製剤と対照製剤との間に製剤から起因する差異があるかを判定することにあるため、製剤による誤差以外の他の誤差などを最小限に減らすことができる場合は、試験製剤と対照製剤との差異の有無をより明瞭に判断することができる。
したがって、BE試験は一般的に次のような2×2交差試験法(cross−over study)によって試験を実施するようになる。Standard two period、two−sequence cross−over designにおいて被験者などはtwo treatment sequenceにグループ化される。
第1のシーケンスにおいては、被験者は第1時期(period−1)に対照薬Rを、第2時期(period−2)に試験薬Tを服用するようになり、第2のシーケンスに属する被験者は、第1時期に試験薬を、第2時期に対照薬を服用するようになる。また、第1時期と第2時期との間には、十分に長いwashout periodがなければならない。このような試験設計をRT/TRデザインという(表1参照)。
【0003】
【表1】
【0004】
前記のような交差試験は、residual variationで個体間の誤差(between−subject variability)を除去するので、BE試験には最適の試験設計である。このような理由によってFDA1、CPMP3においても交差設計によるBE試験を推奨している。但し、薬物の半減期が長すぎる場合には、並行試験設計(parallel study design)も許容しているが、この時にはBE試験の基本的仮定である被験者の薬物に対するクリアランスが第1時期と第2時期に亘って変わらない(一定である)という仮定が成立されないこともあることから注意する必要がある。しかし、実際においては並行試験設計は交差試験設計に比べて使用しなければならない被験者の数があまり多すぎるため、その使用は好ましくない。
US FDA、EMEA、KFDAのBEガイダンス1、2、3、4によると、試験薬と対照薬のPKパラメータ(AUC、Cmax)の平均値をログ変換して比較するとき、ログ変換された試験薬と対照薬とのPKパラメータの平均値の差異の90%信頼区間が80〜125%の範囲内にあることによって、生物学的同等性(bioequivalent)の認定を受けることができる。
このときの信頼区間(CI)は下記の式1によって与えられる。
(式1)
【0005】
前記式1からBE試験での信頼区間の範囲は、個体内誤差のサイズに比例し、サンプルサイズに反比例することを確認することができる。
すなわち、個体内誤差が微少な薬物の場合には、式1から分るように、信頼区間の範囲が狭いので同等性を立証することが容易であるが(図1参照)、Highly Variable Drug(HVDと略記する)のように個体内誤差が非常に大きな薬物の場合には、信頼区間に入ることが容易ではないことを確認することができる。図1はこれを模式的に表している。
一般的にBA/BE試験においてAUC又はCmaxのwithin−subject(または、intra−subject)variabilityが30%以上である薬物をHVDという。5、6
因に、2003年から2005年の間に米国のFDAに提出された生物学的同等性試験報告書の中で、HVDが占めている比率に対してFDAから発表された資料を下記表2に示した。7
【0006】
【表2】
【0007】
提出された生同性試験の約11%がHVDに該当する薬物であって、111個の生同性試験に該当していた。このように多い薬物がHVDに該当し、したがって、これらの薬物の個体内誤差が30%以上であることによって信頼区間の範囲が広がることになり、生物学的同等性試験のガイドラインで指定している80〜125%の範囲内に入ることが難しくなる(図1参照)。
前記のようなHVD薬物のように個体内誤差が非常に大きな薬物の場合、生物学的同等性を立証するためには、非常に多い数の被験者を使用しなければならない。これは、生物学的同等性試験を実施する製薬会社の立場から見るとき、コストの面や試験の成功確率の面で非常に難しい与件となっている。また、試験に参加する被験者の立場から見るときも必要以上に多くのヒトに薬物を投与して試験を実施しなければならないため、被験者の健康保護の観点からも決して好ましくない。
このような事情を鑑みて本発明においては、遺伝情報を活用することによって、HVD薬物のように個体内誤差が大きい生体異物の生体利用率及び/又は生物学的同等性試験の成功確率を高めることのできる方法を提示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】US Food and Drug Administration,Guidance for Industry:bioavailability and bioequivalence studies for orally administered drug products−general considerations,Center for Drug Evaluation and Research.Rockville,MD.,2003。
【非特許文献2】US Food and Drug Administration,Statistical approaches to establishing bioequivalence.Guidance for industry.Rockville,MD.,2001。
【非特許文献3】EMEA/CPMP/EWP/1401/98.Note for guidance on the investigation of bioavailability and bioequivalence.EMEA,London,2001。
【非特許文献4】生物学的同等性試験基準、韓国食品医薬品安全庁(KFDA)告示第2008−22号。
【非特許文献5】C.E.Diliberti.Why bioequivalence of highly variable drugs is an issue.Advisory Committee for Pharmaceutical Sciences Meeting Transcript,2004。http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/04/transcripts/4034T2.pdf.
【非特許文献6】K.K.Midha,M.J.Rawson and J.W.Hubbard.The bioequivalence of highly variable drugs and drug products.Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.43,485〜498,2005.
【非特許文献7】B.M.Davit at al.Highly variable drugs:observations from bioequivalence data submitted to the FDA for new generic drug applications.The AAPS J.10,148〜156,2008。
【非特許文献8】D.Hauschke,et al.Presentation of the intrasubject coefficient of variation for sample size planning in bioequivalence studies.Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.Toxicol.32,376〜378,1994。
【非特許文献9】J.A.Williams et al.PhRMA White paper of ADME pharmacogenomics.J.Clin.Pharmacol.48,849〜889,2008。
【非特許文献10】Norio Yasui−Furukori et al.Effects of CYP2D6 genotypes on plasma concentrations of risperidone and enantiomers of 9−hydroxyrisperidone in Japanese patients with schizophrenia.J.Clin.Pharmacol.2003:43,122〜127。
【非特許文献11】A.Marzo Open questions on bioequivalence:some problems and some solutions.Pharmacol.Res.40,357〜368,1999。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、試験対象に対して生体異物の薬物動態学(以下、薬動学と略記することもある)又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を利用する生体異物の生体利用率又は生物学的同等性(以下、生同性と略記することもある)試験方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生体異物の生体利用率又は生同性試験において、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体利用率又は生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後に、試験対象の遺伝情報を活用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、試験対象に対して生体異物の薬物動態学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型(wild type)、ヘテロ型(heterozygous type)、又は、突然変異型(mutant type)であるかを確認する段階と、前記遺伝子型に従って試験対象に包含させるかの可否を決定する段階とを含める生体異物の生体利用率又は生物学的同等性の試験方法を提供する。
本発明による試験方法において、前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がない場合、前記試験対象に包含させることが好ましい。
一方、本発明による試験方法において、前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がある場合、試験対象に包含させないことが好ましい。
本発明による試験方法において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が突然変異型であるとき、試験対象に包含させないことが好ましい。
また、本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
また、本発明は、生体利用率又は生物学的同等性試験解釈の結論に影響を与える異常値(outlier)がある場合、試験対象の遺伝子型に対するプロファイリング(profiling)を実施する段階と、遺伝子型を野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型に分類して各遺伝子型別に薬動学又は薬力学的パラメータを比較する段階と、前記遺伝子型によって薬動学又は薬力学的パラメータとの間に有意性のある差異が認定される場合、前記遺伝子型による異常値を除いて結果を解釈する段階とを包含する、生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後の試験対象の遺伝情報を活用する方法を提供する。
また、本発明は、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することによって、試験対象から観察される副作用を減少させる生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して試験を実施することによって、試験時間を短縮させる生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、薬動学的パラメータに対して個体内誤差と個体間誤差との間に正 陽の比例関係が存在するという事実を活用して、前記生体異物の生体利用率試験の結果を、交差試験(cross−over study)、並行試験(parallel study)及び反復試験(repeated study)で構成された群から選択されるいずれか1つ以上の方法によって設計するか、又は、平均生物学的同等性(average BE)、個体生物学的同等性(individual BE)、及び集団生物学的同等性(population BE)で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法を活用する生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
本発明による前記試験方法において、前記薬動学的パラメータはAUC(area under the blood concentration versus time curve)及びCmax(the peak blood concentration of drug)で構成された群から選択されるいずれか1つ以上であることが好ましい。
また、本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、生物学的半減期が5日以上である生体異物の個体間誤差を減少させるために、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型(genetic polymorphism)が同質であるか、又は、類似する試験対象を選択して並行生体利用率(parallel bioavailability)試験又は生物学的同等性試験を実施する生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することにおいて、生体異物に対する薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体などの遺伝的特性を考慮して試験対象を選定し、試験対象個体間及び個体内の差異を減少させることによって、生体利用率又は生物学的同等性試験の検定力を高めることができ、製剤間の差異をより明確に判別させることができるようにして試験の成功率を高めることができる。
また、本発明による方法によれば、生体利用率又は生物学的同等性試験の例数(被験者の数又は動物の数)を節減させることにより全般的なコスト及び時間を節減させる効果があり、生体利用率又は生物学的同等性試験に参加する試験対象に対する生体異物の副作用及び有害作用の発現頻度を減らすことによって、被験者の健康保護にも寄与することができる。
また、既に実施された生物学的利用率又は生物学的同等性試験の結果を解釈する時、前記のような遺伝情報を活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】BE試験において、ログ変換されたAUC又はCmax値の試験薬と対照薬との平均値の差の90%信頼区間を模式的に示した図面である。 前記図1において、信頼区間は個体内誤差のサイズに比例するので、製剤学的に同等であっても個体内誤差が大きいHVDはBE同等性基準を満足させない場合がある。
【図2】本発明で調査した50例のBE試験から得られたCmaxに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値と個体間誤差の変異係数(CVb)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図2において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点などの90%信頼区間を示す。
【図3】本発明で調査した50例のBE試験から得られたCmaxに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値とログ変換された試験薬と対照薬のCmax平均値の差異の90%信頼区間(CI)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図3において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点らの90%信頼区間を示す。
【図4】本発明で調査した50例のBE試験から得られたAUCに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値と個体間誤差の変異係数(CVb)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図4において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点らの90%信頼区間を示す。
【図5】本発明で調査した50例のBE試験から得られたAUCに対して求めた個体内誤差の変異係数(CVw)値とログ変換された試験薬と対照薬のCmax平均値の差異の90%信頼区間(CI)値を自然ログに変換してこれらの間の相関性を示したグラフである。前記図5において、直線は回帰直線を示し、長い点線は回帰直線の90%信頼区間を示し、短い点線は各測定点らの90%信頼区間を示す。
【図6】本発明においてリスペリドン製剤を健康な成人志願者に経口投与した後、血漿中濃度の経時的変化を示したグラフである。本試験に参加した17名の被験者全員の経時的変化を示した。
【図7】CYP2D6*10の野生型遺伝子を有するヒトのリスペリドン血漿中濃度の経時変化を示したグラフである。
【図8】CYP2D6*10のヘテロ型遺伝子を有するヒトのリスペリドン血漿中濃度の経時変化を示したグラフである。
【図9】CYP2D6*10の突然変異型遺伝子を有するヒトのリスペリドン血漿中濃度の経時変化を示したグラフである。
【図10】本発明において、BA/BE試験でPK/PDに影響を与える代謝酵素/輸送体の遺伝子多型に関する情報を活用して試験対象を選別するフロー図面である。
【図11】本発明において、BA/BE試験を実施した後にPK/PDに影響を与える代謝酵素/輸送体の遺伝子多型に関する情報を試験結果の解釈に活用するフロー図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体異物の生体利用率、又は、生同性試験方法は、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型であるかを確認する段階と、前記遺伝子型に従って試験対象に選択するかを決定する段階とによってなることを特徴とする。
前記の生体異物は、ヒトに適用する医薬品、動物に適用する動物用医薬品、バイオ医薬品、ヒト又は動物に適用するための医薬品として使用することのできる物質を意味する。
前記において、代謝酵素及び輸送体は、生体異物のPK又はPDに影響を与える代謝酵素及び輸送体を意味する。バイオ医薬品の場合、特異的輸送体(receptor)がPK/PDに関与する場合があるが、バイオ医薬品の場合、特異的輸送体は広い意味で代謝酵素及び輸送体の概念に包含される。
前記において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、PK又はPDに対して野生型と有意性のある差異が無い場合、試験対象に包含させることが好ましい。
前記において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、PK又はPDに対して野生型と有意性のある差異が有る場合、試験対象に包含させないことが好ましい。前記において有意性のある差異が無いということは、例えば、PKパラメータであるCmax又はAUCの野生型の平均値とヘテロ型の平均値との間に統計的検定法を適用するとき、有意水準5%又は1%で差異が無いとのことを意味する。
前記において、代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が突然変移型である場合は、試験対象に包含させないことが好ましい。
また、本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、試験対象に対して生体異物のPK/PDに影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験を設計するか、又は、生体利用率又は生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することが好ましい。
また、本発明は生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後、遺伝情報を活用して特定試験対象を最終分析に包含させるか、又は、除外させるかを決定することにおいて試験対象の遺伝情報を活用することができる。
本発明は生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後、試験対象の遺伝情報を活用することにおいて、生体利用率又は生物学的同等性試験解釈の結論に影響を与える異常値がある場合、試験対象の遺伝子型に対するプロファイリングを実施することが好ましい。
試験対象の遺伝子型に対するプロファイリングを実施して前記試験対象の遺伝子型を野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型に分類した後、各遺伝子型別にPK又はPDパラメータを比較して、前記遺伝子型によってPK又はPDパラメータとの間に有意性のある差異が認定される場合、遺伝子型による異常値を除いた結果を解釈することが好ましい。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、その遺伝子型が野生型である試験対象のみを選別して生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することによって、試験対象から観察されることができる副作用を減らすことができるため、試験対象になった被験者の健康権を保護することができる。
また、本発明は生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験において、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して試験を実施することによって試験時間を短縮することができる。
野生型のみを有するヒトらにおいて、生体異物を投薬した後の血中濃度は突然変異型のヒトより早い時間内で減少する。したがって、野生型を有するヒトのみを試験対象に選定する場合、薬物によっては採血時間を大幅に短縮することができる。
また、血漿中の薬物濃度が相対的に低いため、薬物に起因する副作用の発現率も低めることが予想される。このように代謝酵素及び輸送体が野生型である被験者を使用することによって、BA又はBE試験を進行するときに発生する副作用を減らすことによって被験者の管理及び中途脱落者などの問題を予防することができる。
本発明は、PK又はPDに影響を与える代謝酵素、輸送体などの遺伝情報の概要(genetic profiling)に基づいて試験対象(ヒト又は動物)を選択し、これらを対象にしてBA又はBE試験を実施することを主旨とするものである。したがって、本発明は従来使用されているいろいろなBA又はBE試験方法、多様な遺伝子プロファイリング方法(RT−PCR,gene sequencing,gene chip,etc.)をそのまま活用することができる。
生体異物の代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型がPK又はPDの個体差に影響を与えるという多くの報告がある。
下記の表3にはcytochrome P450代謝酵素の遺伝子多型の例を示し、表4には第2相代謝酵素(phase−2 metabolic enzymes)の例を示した。また、表5には輸送体の遺伝子多型の例を整理した。9
【0014】
【表3】
【0015】
【表4】
【0016】
【表5】
【0017】
前記表3、4及び5に例示されているように、drug metabolizing enzyme(DME)又は輸送体によって輸送される生体異物であり、個体間の差異の主な原因が、これらの代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型に起因する場合に、このような遺伝情報をBA又はBE試験に体系的に活用してBA又はBE試験を改善させることのできる方法を提示する。
以下、本発明の内容を実施例を通じてより詳細に説明する。ただ、これらの実施例は本発明の内容を理解するために提示されるだけであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)
本発明においては、実施された50例の生物学的同等性試験から各試験別Cmaxに対する個体内誤差の変異係数(CVw)と、個体間誤差の変異係数(CVb)を式2及び式3を利用して求め、90%信頼区間(CI)を式1を利用して求めた。8
個体内誤差の変異係数CVw(within−subject coefficient of variation)は下記(式2)のように定義される。8
(式2)
【0018】
個体間誤差の変異係数CVb(Between−subject coefficient of variation)は下記(式3)のように定義される。8
(式3)
【0019】
自然ログに変換された個体内誤差の変異係数(CVw)と自然ログに変換された個体間誤差の変異係数(CVb)とをSASプログラム(SAS9.1.3,SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。また、図2にこれらの関係を示した。
【0020】
自然ログに変換されたCVwと自然ログに変換されたCVbとの間には直線的な比例関係が観察され、このときの傾度は0.618であった(p<0.0001)。すなわち、図2から分るように、Cmaxの個体内誤差と個体間誤差との間に比例関係があることが観察された。PKパラメータであるCmaxに対して個体間誤差と個体内誤差との間に下記式4のような正 陽の相関関係が存在することを確認したことは本発明の新規性と独創性に該当する。
(式4)
【0021】
生同性試験の場合、信頼区間のサイズは、式1から分るように、個体内誤差のサイズに比例するが、図2から分るように、個体内誤差と個体間誤差との間に式4のような比例関係が成立することが観察された。したがって、個体間誤差が減少されることになれば個体内誤差も減少されるとのことを意味する。
別途に50例の生物学的同等性試験の実施例からCmaxの90%信頼区間をSASプログラムを利用して計算し、自然ログに変換した90%信頼区間(CI)と、自然ログに変換した個体内誤差の変異係数(CVw)との間の関係をSASプログラムを利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。
【0022】
自然ログに変換されたCIと自然ログに変換されたCVwとの間には直線的な比例関係が観察され、このときの傾度は0.751であった(p<0.0001)。このときの関係を図3に示した。図3から分るように、個体内誤差のサイズと90%信頼区間との間には下記式5のような正 陽の相関関係があることを観察した。
(式5)
【0023】
したがって、図2と図3から個体間誤差を減らせることができた場合、個体内誤差が減られることになり、したがって、信頼区間の範囲を減少させることができ、かつ検定力も高めることができる。すなわち、被験者の例数を増加させることがなくても信頼区間の範囲を減少させる効果を期待することができる。
しかし、個体間誤差が生じるいろいろな原因の中で最も重要なこととしては、薬物の体内動態に関与する代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型を考えることができる。したがって、個体間誤差を減らすためには代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型が類似であるか、又は、同質の個体だけを選択した場合、個体間誤差を減らすことができる。したがって、本発明において新たに発見した個体間誤差と個体内誤差との比例関係から個体内誤差を減らすことができるようになる。
(実施例2)
本発明で実施された50例の生物学的同等性試験から各試験別にAUCに対する個体内誤差の変異係数(CVw)と個体間誤差の変異係数(CVb)を式2及び式3を利用して求め、90%信頼区間(CI)を式1を利用して求めた。
自然ログに変換された個体内誤差の変異係数(CVw)と自然ログに変換された個体間誤差の変異係数(CVb)とをSASプログラム(SAS9.1.3,SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)を利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。また、図4にこれらの関係を示した。
【0024】
自然ログに変換されたCVwと自然ログに変換されたCVbとの間には、式6のような直線的な比例関係が観察された(図4参照)。このときの傾度は0.668であった(p<0.0001)。すなわち、個体内誤差と個体間誤差との間に比例関係があることが観察された。PKパラメータであるAUCに対して個体間誤差と個体内誤差との間に式6のような正 陽の相関関係が存在することを確認したことは、本発明の新規性と独創性に該当する。
(式6)
【0025】
一方、以上50例の生物学的同等性試験の実施例からAUCの90%信頼区間を計算し、自然ログに変換した信頼区間と自然ログに変換した個体内誤差の変異係数(CVw)との間をSASプログラムを利用して直線回帰を実施することにより下記のような結果を得た。
【0026】
自然ログに変換された90%CIと自然ログに変換されたCVwとの間には直線的な比例関係が観察された。このときの傾度は0.816であった(p<0.0001)。このときの関係を図5に示した。前記図5から分るように、個体内誤差のサイズと90%信頼区間との間には式7のような正 陽の相関関係があることが観察された。
(式7)
【0027】
しかし、AUCに対する個体間誤差が生じるいろいろな原因の中で最も重要なことは、薬物の体内動態に関与する代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型を考えることができる。したがって、個体間誤差を減らすためには代謝酵素及び/又は輸送体の遺伝子多型が類似であるか、又は、同質の個体だけを選択した場合、個体間誤差を減らすことができる。したがって、本発明において新規的に発見した個体間誤差と個体内誤差との比例関係から個体内誤差を減らすことができるようになる。
(実施例3)
シトクロム(cytochrome)代謝酵素であるCYP2D6によって主に代謝され、遺伝的多型(genetic polymorphism)が知られている10リスペリドン(risperidone、Janssen Korea,Ltd.製)を健康な成人男子17名にそれぞれ3mgを経口投与した後、経時的に採血した(0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、12、24、36、48時間)。血漿中のリスペリドン濃度はバリデーションされたLC−MS/MS法によって定量した。
リスペリドン定量方法(LC−MS/MS法)は次のようである。
リスペリドンを50%メタノールに溶解させ遊離塩基(free base)として1mg/mLになるように作製した後、冷蔵保管し、この溶液を冷凍保管していたブランク(blank)血漿によって希釈してリスペリドンの血漿中の濃度がそれぞれ0.2、0.5、1、5、10、30、40ng/mLになるように血漿試料を調製した。
それぞれの標準血漿200μLに内部標準物質であるデシプラミン(desipramine)(1μg/mL)50μLを加えてボルテックス(vortex)した後、2M水酸化ナトリウム水溶液25μL及び酢酸エチル1.2mLを加えてさらに2分間ボルテックスを実施した。
次いで12,000rpmで5分間遠心分離し、上澄液1mLを取って30分間蒸発・乾燥させた。このように前処理された血漿試料は次のLC/MS/MS条件で定量した。装置はWaters社のHPLCを、検出器はWaters社のtriple quadruple mass spectrometerを利用して、MRM(multiple reaction monitoring)法によってリスペリドン(m/z410.91>191.35)と内部標準物質であるデシプラミン(m/z267.09>208.22)を検出した。コラムはAlltech Replacement prefilter(4.0mm×2.0μm)を連結したCapcell Pak C18 UG120V(5μm、2.0mm×150mm)を、データ処理装置はWaters社のMassLynx integratorを使用した。移動相としては[10mM ammonium formate buffer(adjusted to pH3.5 with formic acid)/acetonitrile−15/85、v/v]混合溶液を使用し、流速0.25mL/minで測定した。
図6には、被験者17名全員のリスペリドン血漿中の濃度を示した。この血漿中のリスペリドン濃度の時間曲線からAUCLAST(最終濃度測定時間までのAUC)を台形公式(trapezoidal rule)の式8を使用して計算し、また、Cmaxは実測値を使用して求めた。
(式8)
【0028】
ここでCiは、測定時間tiにおける血中薬物濃度を示す。
一方、被験者の遺伝子検査は被験者の書面による事前同意を得た後、血球からDNAを抽出し、RT−PCR法によってCYP2D6*2、CYP2D6*5、CYP2D6*10の対立遺伝子(allele)に対して調査した。CYP2D6*2、CYP2D6*5の遺伝子型に従ってリスペリドンの血漿中濃度に影響が殆どないことが観察されたが、CYP2D6*10遺伝子型に従ってリスペリドンの血漿中濃度に大きな差異があることが観察された。
図7には、CYP2D6*10の野生型を有する被験者の血漿中リスペリドン濃度を、図8には、CYP2D6*10のヘテロ型を有する被験者の血漿中リスペリドン濃度を、図9には、CYP2D6*10の突然変異型を有する被験者の血漿中リスペリドン濃度を示した。
下記表6に、Cmax値をログ変換して、これらの平均、標準偏差、分散、個体間誤差、信頼区間などを求めてリスペリドンの主代謝酵素であるCYP2D6の遺伝子型別に整理した。
【0029】
【表6】
【0030】
前記表6から分るように、CYP2D6の代謝を受けるリスペリドンのCmax値は遺伝子型によって被験者を分類しなく、すべてを合わせた状態におけるリスペリドンのCmaxのCVb値は20.8%であることに対して、CYP2D6の遺伝子型が野生型である被験者だけを選択した場合には、CVb値が13.6%と著しく減少されていることを観察することができた。
個体間誤差と個体内誤差との間には、式4のような相関関係が観察されているので、リスペリドンのCmax値の個体間誤差の変異係数を式4に代入して個体内誤差の変異係数を計算すると、下記の表7のような結果が得られる。
【0031】
【表7】
【0032】
BE試験の検定力及び試料のサイズを計算するプログラムであるnQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)は、Dilettiなどが発表したアルゴリズムを使用するが8、検定力はwithin−subject CVを分れば計算することができる。
式4を利用して得られたCVw値を使用してBE試験で90%の検定力(1−β)を得るために、必要のサンプル数を試験製剤と対照製剤の比(T/R Ratio)が0.9〜1.1である場合に対して、nQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)を利用して計算した。前記表7にこの結果を整理した。
リスペリドンの場合、試験製剤と対照製剤のCmax平均値の比が1であるとき、90%の検定力を得るために、遺伝情報を使用しないときには26名の被験者が必要であることに比べて、CYP2D6*10の野生型である志願者だけを被験者に選定して実験を行うと、16名の被験者だけが必要であることを示している(表7参照)。
このような差異は、生産者の立場から見るとき、経済的側面や全体的なBE試験の管理側面で大きな意味を有する。また、図7から分るように、野生型の被験者においては、血漿中のリスペリドン濃度がヘテロ型(図8)、又は、突然変異型(図9)である被験者の血漿中濃度より低く、かつ、迅速に血漿中の濃度が減少することを確認することができる。
野生型のみを有するヒトにおいては、投薬後24時間程度経過した後の血漿中濃度は殆ど測定感度以下に減少されているが、突然変異型のヒトにおいては48時間経過した後まで血漿中の濃度が測定されることが観察された。したがって、野生型を有するヒトだけを試験対象に選定した場合には、採血時間を大幅に短縮することのできるメリットがある。また、血漿中の薬物濃度が相対的に低いため、薬物から起因する副作用の発現率も低くなることが予想される。
このように代謝酵素及び輸送体が野生型である被験者を使用することによって、BA又はBE試験進行の時に生じる副作用を減らすことができ、被験者の管理及び中途脱落者などの問題を予防することができる。
以上の実施例1〜実施例3において、PK/PDに影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型を検査して試験対象(ヒト又は動物)を選定し、これらに対してBA又はBE試験を実施することによって(図10)、同一の数の試験例数を使用するとき、生産者の危険率を減少させることができ(検定力の増加)、90%信頼区間の範囲を縮小してBE試験の成功率を高めることができる。
また、換言すると、BA/BE試験の一定の検定力を得ることに必要な試験対象の例数を大きく減らすことによって、試験に係る経費の節減及び試験の管理を大きく改善する効果が期待される。
(実施例4)
一方、本発明で実施したリスペリドンの試験結果からそれぞれの遺伝子型別にAUCLAST値の平均値、分散、標準偏差、個体間誤差を示す変異係数(CVb)値を下記表8に示した。
【0033】
【表8】
【0034】
前記表8から分るように、CYP2D6の代謝を受けるリスペリドンのAUC値は、遺伝子型によって被験者を分類しなく、すべてを合わせた状態におけるリスペリドンのAUCのCVb値は22.2%であることに対して、CYP2D6の遺伝子型が野生型である被験者だけを選択した場合には、CVb値が15%と著しく減少されていることが観察された。
個体間誤差と個体内誤差との間には、式6のような相関関係が観察されているので、リスペリドンのAUC値の個体間誤差の変異係数を式6に代入して個体内誤差の変異係数を計算すると、下記表9のような結果が得られる。
【0035】
【表9】
【0036】
BE試験の検定力及び試料のサイズを計算するプログラムであるnQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)は、Dilettiなどが発表したアルゴリズムを使用するが8、検定力はwithin−subject CVを分れば計算することができる。
式6を利用して得られたCVw値を使用してBE試験で90%の検定力(1−β)を得るために必要のサンプル数を試験製剤と対照製剤との比(T/R Ratio)が0.9〜1.1である場合に対して、nQuery Advisor(登録商標)(Ver.6.0,Statistical Solutions,MA,USA)を利用して計算した。この結果を下記表10に整理した。
【0037】
【表10】
【0038】
前記表10から分るように、リスペリドンの場合、試験製剤と対照製剤とのAUC平均値の比が1であるとき、90%の検定力を得るために遺伝情報を使用しないときには、12名の被験者が必要であることに比べてCYP2D6*10の野生型の志願者だけを被験者に選定して実験を行うときは、8名の被験者が必要であることを示している。
以上の実施例3及び実施例4のように遺伝情報を活用してBA/BE試験の設計及び実施に活用することによって得られるメリット及び利益は明白である。
BA/BE試験において、遺伝情報の活用は、試験を実施する以前に使用することもでき、試験が既に終了された以後にも遺伝情報を活用して一部の試験対象の資料を判定から除外させるか、又は、包含させるなどの分析や解釈にも活用することができる(図11)。また、試験に先立って試験例数を計算するとき、遺伝情報を活用する場合と活用しない場合に、例数がどのように変わるかなどに対しても使用することができる。
また、半減期が非常に長い(5日以上)薬物の場合11、BE試験の交差試験法によって試験を実施する場合、試験進行が非常に難しい。このときは、並行試験法によって試験することが有利であるが、並行試験法の場合、個体間誤差が大きいので多くの試験例数を必要とする。しかし、遺伝子プロファイリングを通じて個体間誤差を減らせることができるとすれば、半減期が非常に長い生体異物の並行試験法による生体利用率、又は、生物学的同等性試験の成功率を高めることができる。下記表11に半減期が長い薬物の例を示した。
【0039】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、生体異物の生体利用率又は生物学的同等性試験を実施することにおいて、生体異物に対する薬物動態学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体などの遺伝的特性を考慮して試験対象を選定し、試験対象の個体間及び個体内の差異を減少させることによって、生体利用率又は生物学的同等性試験の検定力を高め、製剤間の差異をより明確に判別することができるので試験の成功率を高めることができる。
また、本発明による方法によると、生体利用率又は生物学的同等性試験の試験例数(被験者数又は動物数)を減少させることによって全般的なコスト及び時間を節減させる効果があり、生体利用率又は生物学的同等性試験に参加する試験対象に対する生体異物の副作用及び有害作用の発現頻度を減らすことによって被験者の健康権の保護にも寄与することができる。
また、既に実施された生物学的利用率又は生物学的同等性試験の結果を解釈する時、前記のような遺伝情報を活用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象に対して生体異物の薬物動態学(以下、薬動学と略記することもある)(pharmacokinetics)又は薬力学(pharmacodynamics)的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、
代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型(wild type)、ヘテロ型(heterozygous type)、又は、突然変異型(mutant type)であるかを確認する段階と、
前記遺伝子型に従って試験対象に包含させるかの可否を決定する段階とを含めてなることを特徴とする生体異物(xenobiotics)の生体利用率(bioavailability)の試験方法。
【請求項2】
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、
代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型であるかを確認する段階と、
前記遺伝子型に従って試験対象に包含させるかの可否を決定する段階とを包含してなることを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項3】
前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がない場合、前記試験対象に包含させることを特徴とする請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がある場合、試験対象に包含させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項5】
前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が突然変異であるとき、試験対象に包含させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項6】
生体異物の生体利用率試験において、
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体異物の生体利用率試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項7】
生体異物の生物学的同等性試験において、
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体異物の生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項8】
生体利用率又は生物学的同等性試験解釈の結論に影響を与える異常値(outlier)がある場合、試験対象の遺伝子型に対するプロファイリングを実施する段階と、
遺伝子型を野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型に分類して各遺伝子型別に薬動学又は薬力学的パラメータを比較する段階と、
前記遺伝子型に従って薬動学又は薬力学的パラメータとの間に有意性のある差異が認定される場合、前記遺伝子型による異常値を除いて結果を解釈する段階とを包含してなることを特徴とする生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後に試験対象の遺伝情報を活用する方法。
【請求項9】
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、生体利用率試験を実施することによって、試験対象から観察される副作用を減少させることを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項10】
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、生物学的同等性試験を実施することによって、試験対象から観察される副作用を減少させることを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項11】
生体異物の生体利用率試験において、
生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して実施することによって、試験時間を短縮させることを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項12】
生体異物の生物学的同等性試験において、
生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して試験を実施することによって、試験時間を短縮させることを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項13】
生体異物の生体利用率試験において、
薬動学的パラメータに対して個体内誤差と個体間誤差との間に正 陽の比例関係が存在するという事実を活用して、前記生体異物の生体利用率試験結果を、交差試験(cross−over study)、並行試験(parallel study)及び反復試験(repeated study)で構成された群から選択されるいずれか1つ以上の評価方法によって設計するか、
又は、平均生物学的同等性(average BE)、個体生物学的同等性(individual BE)、及び集団生物学的同等性(population BE)で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法を活用することを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項14】
生体異物の生物学的同等性試験において、
薬動学的パラメータに対して個体内誤差と個体間誤差との間に正 陽の比例関係が存在するという事実を活用して、前記生体異物の生物学的同等性試験の結果を、交差試験、並行試験、及び反復試験で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法によって設計するか、
又は、平均生物学的同等性、個体生物学的同等性、及び集団生物学的同等性で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法を活用することを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項15】
前記薬動学的パラメータがAUC(area under the blood concentration versus time curve)及びCmax(the peak blood concentration of drug)で構成されることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
生体異物の生体利用率試験において、
生物学的半減期が非常に長い(5日以上)生体異物の個体間誤差を減少させるために、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型が同質であるか、又は、類似する試験対象を選択して並行生体利用率試験を実施することを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項17】
生体異物の生物学的同等性試験において、
生物学的半減期が非常に長い(5日以上)生体異物の個体間誤差を減少させるために、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型が同質であるか、又は、類似する試験対象を選択して並行生物学的同等性試験を実施することを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項1】
試験対象に対して生体異物の薬物動態学(以下、薬動学と略記することもある)(pharmacokinetics)又は薬力学(pharmacodynamics)的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、
代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型(wild type)、ヘテロ型(heterozygous type)、又は、突然変異型(mutant type)であるかを確認する段階と、
前記遺伝子型に従って試験対象に包含させるかの可否を決定する段階とを含めてなることを特徴とする生体異物(xenobiotics)の生体利用率(bioavailability)の試験方法。
【請求項2】
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型をスクリーニングする段階と、
代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型であるかを確認する段階と、
前記遺伝子型に従って試験対象に包含させるかの可否を決定する段階とを包含してなることを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項3】
前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がない場合、前記試験対象に包含させることを特徴とする請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型がヘテロ型であるとき、野生型の薬動学又は薬力学的に有意性のある差異がある場合、試験対象に包含させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項5】
前記代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が突然変異であるとき、試験対象に包含させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項6】
生体異物の生体利用率試験において、
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体異物の生体利用率試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項7】
生体異物の生物学的同等性試験において、
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝情報を分析して試験法を設計するか、又は、生体異物の生物学的同等性試験に必要とする試験対象の例数を計算することを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項8】
生体利用率又は生物学的同等性試験解釈の結論に影響を与える異常値(outlier)がある場合、試験対象の遺伝子型に対するプロファイリングを実施する段階と、
遺伝子型を野生型、ヘテロ型、又は、突然変異型に分類して各遺伝子型別に薬動学又は薬力学的パラメータを比較する段階と、
前記遺伝子型に従って薬動学又は薬力学的パラメータとの間に有意性のある差異が認定される場合、前記遺伝子型による異常値を除いて結果を解釈する段階とを包含してなることを特徴とする生体利用率又は生物学的同等性試験を実施した後に試験対象の遺伝情報を活用する方法。
【請求項9】
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、生体利用率試験を実施することによって、試験対象から観察される副作用を減少させることを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項10】
試験対象に対して生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型を考慮して、生物学的同等性試験を実施することによって、試験対象から観察される副作用を減少させることを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項11】
生体異物の生体利用率試験において、
生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して実施することによって、試験時間を短縮させることを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項12】
生体異物の生物学的同等性試験において、
生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子型が野生型である試験対象を選択して試験を実施することによって、試験時間を短縮させることを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項13】
生体異物の生体利用率試験において、
薬動学的パラメータに対して個体内誤差と個体間誤差との間に正 陽の比例関係が存在するという事実を活用して、前記生体異物の生体利用率試験結果を、交差試験(cross−over study)、並行試験(parallel study)及び反復試験(repeated study)で構成された群から選択されるいずれか1つ以上の評価方法によって設計するか、
又は、平均生物学的同等性(average BE)、個体生物学的同等性(individual BE)、及び集団生物学的同等性(population BE)で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法を活用することを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項14】
生体異物の生物学的同等性試験において、
薬動学的パラメータに対して個体内誤差と個体間誤差との間に正 陽の比例関係が存在するという事実を活用して、前記生体異物の生物学的同等性試験の結果を、交差試験、並行試験、及び反復試験で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法によって設計するか、
又は、平均生物学的同等性、個体生物学的同等性、及び集団生物学的同等性で構成される評価方法の中から選択されるいずれか1つ以上の評価方法を活用することを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【請求項15】
前記薬動学的パラメータがAUC(area under the blood concentration versus time curve)及びCmax(the peak blood concentration of drug)で構成されることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
生体異物の生体利用率試験において、
生物学的半減期が非常に長い(5日以上)生体異物の個体間誤差を減少させるために、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型が同質であるか、又は、類似する試験対象を選択して並行生体利用率試験を実施することを特徴とする生体異物の生体利用率の試験方法。
【請求項17】
生体異物の生物学的同等性試験において、
生物学的半減期が非常に長い(5日以上)生体異物の個体間誤差を減少させるために、生体異物の薬動学又は薬力学的に影響を与える代謝酵素又は輸送体の遺伝子多型が同質であるか、又は、類似する試験対象を選択して並行生物学的同等性試験を実施することを特徴とする生体異物の生物学的同等性の試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−523108(P2010−523108A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502042(P2010−502042)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000077
【国際公開番号】WO2009/088222
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509272573)アイバイオファーム シーオー., エルティーディー. (1)
【氏名又は名称原語表記】IBIOPHARM CO., LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000077
【国際公開番号】WO2009/088222
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509272573)アイバイオファーム シーオー., エルティーディー. (1)
【氏名又は名称原語表記】IBIOPHARM CO., LTD.
【Fターム(参考)】
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