説明

生体監視装置

【課題】心拍振動のようなわずかな体動でも検出が可能で、被験者の載置位置がずれても確実に振動を検出できる生体監視装置を提供すること。
【解決手段】被験者を載置する共振板10と、共振板10の下面に貼り付けられる高分子圧電素子フィルムセンサー20と、共振板10との間に空間を形成する下ケース30とを備え、被験者の心拍及び呼吸の少なくとも一方の振動を検出する生体監視装置であって、下ケース30を、中央が四隅よりも共振板10から離れたドーム形状に構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の動きや振動を検出し、例えば無呼吸や心拍停止を監視する生体監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠中に起こる新生児の突然死亡症候群や、成人の無呼吸症候群が増加しており、これらの症候の早期発見のため、検出器具を直接身体に取り付けることなく、呼吸を含む身体の動きを測定できる装置が提案されている。
例えば、特許文献1では、感圧パイプを有する検出マットと、この感圧パイプの内部の圧力を圧力センサ部で所定時間毎に計測する圧力計測手段と、圧力計測手段からの信号を受けて感圧パイプの圧力変化から無呼吸状態を検出する無呼吸検出手段とを備えて無呼吸検出装置を構成し、検出マット上に被検者を寝かせることでコードやセンサ類を一切身につけずに呼吸を検出でき、被検者の呼吸を含む体動を確実に測定して無呼吸を知らせるものがある。
また、特許文献2では、一体型センサシートに接続された生体振動に基づく動的信号を検出する体動測定手段と、生体の体圧に基づく静的信号を検出する体圧測定手段とを設け、両者の出力を合成することで、体重、心拍、呼吸、活動量、生命状態等の生体信号を得るものがある。
また、特許文献3では、複数の通気孔が形成された可撓性を有する振動伝達板と、振動伝達板に取り付けられた圧電トランスデューサーとにより心拍・呼吸センサを構成している。この構成によれば、被験者の心音や呼吸音によって振動伝達板が振動させられ、その振動が圧電トランスデューサーに伝達されるため、センサが柔らかい布団の上に設置されている場合であっても心拍や呼吸を感度良く検出することができる。
また、特許文献4では、ピエゾ電気結晶変換器の対向面に一対の板状部材を設けている。一対の板状部材は、ピエゾ電気結晶変換器よりも大きな直径であり、比較的硬い材料でできており、それらは外側周縁において結合されており、変換器はそれらの間に中心配置されている。
また、特許文献5では、裏面側の中央部に接着剤などによってセンサが取り付けられた可撓性を有する振動伝達板と、複数のスペーサを介して振動伝達板を支持する支持板とを有している。そして、振動伝達板は、プラスチック樹脂や金属製の薄いシート状の部材で構成し、センサには、例えばピエゾセラミックからなる圧電素子あるいは高分子圧電素子フィルムセンサーを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−107154号公報
【特許文献2】特開平10−14889号公報
【特許文献3】特開2006−129933号公報
【特許文献4】特開平5−176898号公報
【特許文献5】国際公開2007/029326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、特に呼吸による振動を確実に検出することができるが、感圧パイプによる圧力変化を利用するため、呼吸に比べるとわずかな振動である心拍振動までを検出することは難しい。また、被験者の位置が感圧パイプの位置からずれることにより、振動を検出しにくくなる。
特許文献2によれば、センサシートが圧縮されることで心拍や呼吸を検出するように構成されており、センサシートが硬質材に設置されている場合には極めて高感度に検出が可能であるが、センサシートの下に布団を敷いた状態での設置場所の条件では、十分な検出が行えない。
特許文献3によれば、可撓性を有する振動伝達板を備えることで、圧電トランスデューサーを単体で用いた場合と比較して被験者の寝返りによる移動にも検出できるとしているが、振動伝達板は設置場所の条件による影響を受けることには変わりなく、更には振動伝達板には多数の通気孔を形成していることからも振動が伝達しにくく、被験者と圧電トランスデューサーとの位置ずれによる影響は大きい。
特許文献4によれば、一対の板状部材の間にピエゾ電気結晶変換器を設けているため、設置場所の条件による影響を受けにくいが、載置面となる上の板が凸状に膨らんでいるため、被験者が板の中心からずれやすく、被験者の位置ずれによって、振動を検出しにくくなる。
特許文献5は、被験者と比較して格段に軽い小動物を対象にしているため、振動伝達板は、四隅と中央のスペーサによって支持されている。そして、特に振動伝達板中央の撓みを防止するスペーサは、振動減衰を抑えるために円錐形で構成している。従って、仮に被験者に適用した場合には、支持板を有することから設置場所の条件による影響を受けにくいと考えられるが、被験者が板の中心からずれた場合や中央のスペーサによる振動検出への悪影響を解消しなければならない。
【0005】
そこで、本発明は、心拍振動のようなわずかな体動でも検出が可能で、被験者の載置位置がずれても確実に振動を検出できる生体監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の生体監視装置は、被験者を載置する共振板と、前記共振板の下面に貼り付けられる高分子圧電素子フィルムセンサーと、前記共振板との間に空間を形成する下ケースとを備え、前記被験者の心拍及び呼吸の少なくとも一方の振動を検出する生体監視装置であって、前記下ケースを、中央が四隅よりも前記共振板から離れたドーム形状に構成したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の生体監視装置において、前記下ケースの前記中央を前記共振板側に所定量変形させるために必要な第1の荷重が、前記共振板の前記中央を前記下ケース側に所定量変形させるために必要な第2の荷重よりも大きくなるように、前記下ケースの剛性を前記共振板の剛性よりも高くしたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の生体監視装置において、前記共振板及び前記下ケースを、それぞれ一対の短辺と一対の長辺とから構成し、前記共振板と前記下ケースとがそれぞれの四隅において当接し、前記四隅以外では前記共振板と前記下ケースとは隙間を有していることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体監視装置において、前記下ケースには、対角線の方向に延びる第1のリブと、前記長辺の方向に延びる第2のリブとを有することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体監視装置において、前記下ケースの前記中央には弾性材を設け、前記弾性材の高さを前記弾性材に近接するリブよりも高くし、無負荷状態では前記弾性材と前記高分子圧電素子フィルムセンサーとの間には隙間を有することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体監視装置において、前記共振板として、プラスチック製の段ボール板を用い、前記段ボール板を構成する縦板の筋目を長辺の方向としたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の生体監視装置において、前記共振板に導電性被膜を形成し、又は導電性材料を含んで前記共振板を成型したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高分子圧電素子フィルムセンサーを用い、この高分子圧電素子フィルムセンサーを共振板の下面に貼り付けた構成とすることで、心拍振動のようなわずかな振動を検出することができ、更に、下ケースがドーム形状であるため、被験者が寝返りなどによっていずれか一方に片寄った場合には、他方が浮き上がるため、被験者からの振動を共振板に確実に伝えることができ、高分子圧電素子フィルムセンサーによって振動による起電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態における生体監視装置の平面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】図1のB−B線断面図
【図4】同生体監視装置の下ケースの平面図
【図5】同下ケースの斜視図
【図6】本実施形態における生体監視装置の予定された通常状態における使用状況を示す図
【図7】本実施形態における生体監視装置の被験者が寝返りをした状態における使用状況を示す図
【図8】本実施形態における生体監視装置の被験者の体重が軽い場合における使用状況を示す図
【図9】本実施形態における生体監視装置の被験者の体重が重い場合における使用状況を示す図
【図10】本実施形態における生体監視装置の荷重別感度試験の結果を示す図
【図11】本実施形態における生体監視装置の共振板と下ケースとの剛性試験の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による生体監視装置は、被験者を載置する共振板と、共振板の下面に貼り付けられる高分子圧電素子フィルムセンサーと、共振板との間に空間を形成する下ケースとを備え、被験者の心拍及び呼吸の少なくとも一方の振動を検出する生体監視装置であって、下ケースを、中央が四隅よりも共振板から離れたドーム形状に構成したものである。本実施の形態によれば、高分子圧電素子フィルムセンサーを用い、この高分子圧電素子フィルムセンサーを共振板の下面に貼り付けた構成とすることで、心拍振動のようなわずかな振動を検出することができ、更に、下ケースがドーム形状であるため、被験者が寝返りなどによっていずれか一方に片寄った場合には、他方が浮き上がるため、被験者からの振動を共振板に確実に伝えることができ、高分子圧電素子フィルムセンサーによって振動による起電力を得ることができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による生体監視装置において、下ケースの中央を共振板側に所定量変形させるために必要な第1の荷重が、共振板の中央を下ケース側に所定量変形させるために必要な第2の荷重よりも大きくなるように、下ケースの剛性を共振板の剛性よりも高くしたものである。本実施の形態によれば、共振板を撓ませることができるとともに、下ケースのドーム形状は維持されるため、被験者からの振動を共振板で確実に得ることができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による生体監視装置において、共振板及び下ケースを、それぞれ一対の短辺と一対の長辺とから構成し、共振板と下ケースとがそれぞれの四隅において当接し、四隅以外では共振板と下ケースとは隙間を有しているものである。本実施の形態によれば、四隅でテンションバランスを取ることで、広い範囲の体重に対応できる。
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3の実施の形態による生体監視装置において、下ケースには、対角線の方向に延びる第1のリブと、長辺の方向に延びる第2のリブとを有するものである。本実施の形態によれば、特に対角線方向及び長手方向に対する剛性を高めてドーム形状を維持することができる。
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態による生体監視装置において、下ケースの中央には弾性材を設け、弾性材の高さを弾性材に近接するリブよりも高くし、無負荷状態では弾性材と高分子圧電素子フィルムセンサーとの間には隙間を有するものである。本実施の形態によれば、高分子圧電素子フィルムセンサーが弾性材に当接するまでの間は被験者の体重撓みにより共振板に引っ張り応力が働き、高分子圧電素子フィルムセンサーが弾性材に当接した後にはポアソン効果による歪みが付加されるため、2段階の検知を可能とすることで幅広い重量に対する振動検知を行うことができる。
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5の実施の形態による生体監視装置において、共振板として、プラスチック製の段ボール板を用い、段ボール板を構成する縦板の筋目を長辺の方向としたものである。本実施の形態によれば、長辺方向の剛性にも優れ、超低周波の共振を得ることができる。
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による生体監視装置において、共振板に導電性被膜を形成し、又は導電性材料を含んで共振板を成型したものである。本実施の形態によれば、静電気の発生を防止し、ノイズの影響を除去できる。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の生体監視装置の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態における生体監視装置の平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は同生体監視装置の下ケースの平面図、図5は同下ケースの斜視図である。
本実施形態における生体監視装置は、被験者を載置する共振板10と、共振板10の下面に貼り付けられる高分子圧電素子フィルムセンサー20と、共振板10との間に空間を形成する下ケース30とを備え、被験者の体動、特に呼吸による振動や心拍振動を検出することができる。
【0011】
共振板10には、たとえばポリプロピレン等のプラスチック製の段ボール板を用いる。従って、共振板10は、表板11、縦板12、及び裏板13の中空構造によって段ボール板を構成している。縦板12は、図2に示すように断面がはしご状で、軽量かつ押し圧強度を持たせた連続構成となっている。
共振板10は、一対の短辺と一対の長辺とから構成され、四隅を円弧状に構成している。
なお、縦板12の筋目は、共振板10の長辺の方向としている。また、共振板10には導電性被膜を形成するか、導電性材料を含んで共振板10を成型することが好ましい。
高分子圧電素子フィルムセンサー20は、高分子材料としてポリフッ化ビニリデンを用いたものが知られている。高分子圧電素子フィルムセンサー20は、共振板10の中央下面に貼り付けられ、共振板10に生じる荷重撓みによって引っ張り応力が働くことで起電力を生じる。
図1に示すように、高分子圧電素子フィルムセンサー20には、リード線21が設けられている。
【0012】
下ケース30は、一対の短辺と一対の長辺とから構成され、四隅を円弧状に構成している。そして、下ケース30は、ポリスチレンを用いて真空成型され、中央が四隅よりも共振板10から離れたドーム形状に構成している。従って、図2及び図3に示すように、下ケース30は、中央で設置面Xに接している状態では、両側が設置面Xから浮き上がった状態となっている。
共振板10と下ケース30とは四隅において当接し(図1における破線位置)、四隅以外では共振板10と下ケース30とは隙間を有している。
【0013】
図3及び図4に示すように、下ケース30には、中央から四隅に向かう、対角線の方向に延びる第1のリブ31と、長辺の方向に延びる第2のリブ32と、短辺の方向に延びる第3のリブ33とを有する。一対の第1のリブ31の中央側端部は第2のリブ32によって連続している。また、下ケース30の外周に位置する第2のリブ32と第3のリブ33とはそれぞれの端部が連続している。なお、これらのリブ31、32、33は、下ケース30の裏面から表面に向かって突出させた溝によって構成している。
また、図2から図5に示すように、下ケース30の中央には弾性材40を設けている。弾性材40の高さは、弾性材40に最も近接する第2のリブ32よりも高く、共振板10が無負荷状態では弾性材40と高分子圧電素子フィルムセンサー20との間には隙間を設けている。
【0014】
次に、本実施形態における生体監視装置の使用状態について説明する。
図6は予定された通常状態における使用状況を示す図、図7は被験者が寝返りをした状態における使用状況を示す図である。
図においては、本実施形態における生体監視装置は、ベッドや床面などの設置面Xに置かれた状態を示しており、被験者Yを載置している。
共振板10は、前述の通り、下ケース30と四隅で接して支持されているため、図示のような硬質な載置面Xではなく、載置面Xが布団などであっても、被験者からの振動を共振板10に正確に伝えることができる。
また、図7に示すように、被験者Yが寝返りなどによっていずれか一方に片寄った場合には、他方が浮き上がるため、被験者Yからの振動を共振板10に確実に伝えることができる。
【0015】
図8は被験者の体重が軽い場合における使用状況を示す図、図9は被験者の体重が重い場合における使用状況を示す図である。
図8に示すように、被験者Yの体重が軽い場合には、高分子圧電素子フィルムセンサー20が弾性材40に当接しないため、被験者Yの体重撓みにより共振板10に引っ張り応力が働き、この状態で呼吸や心拍による振動を応力変動によって検出することができる。
図9に示すように、被験者Yの体重が重い場合には、高分子圧電素子フィルムセンサー20が弾性材40に当接した状態となり、被験者Yの体重撓みにより共振板10に引っ張り応力が働くとともに、高分子圧電素子フィルムセンサー20が弾性材40で押圧されることによるポアソン効果による歪みが付加され、この状態で呼吸や心拍による振動を応力変動によって検出することができる。
【0016】
図10に本実施形態における生体監視装置の荷重別感度試験の結果を示す。
同試験は、共振板10として板厚3mm、4mm、5mmのポリプロピレンのプラスチック製の段ボール板を用い、下ケース30としてポリスチレンを用いて真空成型した板厚4mmのドーム型成型品を用いた。なお、共振板10における縦板12の筋目は、共振板10の長辺の方向としたものである。
負荷荷重を0.5kg〜10.5kgとして、それぞれの負荷荷重におけるアンプ出力値(mV)を測定した。板厚3mmの共振板を実施例1、板厚4mmの共振板を実施例2、板厚5mmの共振板を実施例3としている。
実施例1では、0.5kg〜5.0kgの範囲、実施例2では、0.5kg〜6.5kgの範囲、実施例3では、0.5kg〜6.0kgの範囲の負荷荷重に対して良好な感度を得ることができた。
また、実施例1では、0.5kgと4.0kg、実施例2では、1.0kgと4.5kg、実施例3では、1.0kgと4.0kgで特に良好な感度を得ることができており、本実施形態では、2段階の検知を可能とすることで、2つの感度の良い山を得ることができ、幅広い重量に対する振動検知を行うことができることが分かった。
【0017】
以上のように、共振板10の板厚を3mm〜5mmとしたところ、高分子圧電素子フィルムセンサー20から良好な起電力の発生を得られた。
なお、感度試験において、比較例1として、ポリプロピレン製の平板(3mm)を共振板として用いたもの、比較例2として、縦板12の筋目を共振板10の短辺の方向としたポリプロピレンのプラスチック製の段ボール板(3mm)を共振板として用いたもので実験を行ったところ、振動が干渉してしまい、呼吸や心拍による振動とは異なる出力となってしまった。
【0018】
図11に本実施形態における生体監視装置の共振板と下ケースとの剛性試験の結果を示す。
同試験における実施例1から実施例3は、図10で説明したものと同じサンプルである。
図11に示すように、下ケース30の中央を共振板10側に所定量変形させるために必要な第1の荷重Bが、共振板10の中央を下ケース30側に所定量変形させるために必要な第2の荷重Aよりも大きくなるように、下ケース30の剛性を共振板10の剛性よりも高くしている。
【0019】
以上のように本実施形態によれば、高分子圧電素子フィルムセンサー20を用い、この高分子圧電素子フィルムセンサー20を共振板10の下面に貼り付けた構成とすることで、心拍振動のようなわずかな振動を検出することができ、更に、下ケース30がドーム形状であるため、被験者Yが寝返りなどによっていずれか一方に片寄った場合には、他方が浮き上がるため、被験者Yからの振動を共振板10に確実に伝えることができ、高分子圧電素子フィルムセンサー20によって振動による起電力を得ることができる。
また本実施形態によれば、下ケース30の中央を共振板10側に所定量変形させるために必要な第1の荷重Bが、共振板10の中央を下ケース30側に所定量変形させるために必要な第2の荷重Aよりも大きくなるように、下ケース30の剛性を共振板10の剛性よりも高くしたことで、共振板10を撓ませることができるとともに、下ケース30のドーム形状は維持されるため、被験者Yからの振動を共振板10で確実に得ることができる。
また本実施形態によれば、共振板10及び下ケース30を、それぞれ一対の短辺と一対の長辺とから構成し、共振板10及び下ケース30のそれぞれの四隅を円弧状に構成し、共振板10と下ケース30とが四隅において当接し、四隅以外では共振板10と下ケース30とは隙間を有しているため、四隅でテンションバランスを取ることで、広い範囲の体重に対応できる。
また本実施形態によれば、下ケース30には、対角線の方向に延びる第1のリブ31と、長辺の方向に延びる第2のリブ32とを有することで、特に対角線方向及び長手方向に対する剛性を高めてドーム形状を維持することができる。
また本実施形態によれば、下ケース30の中央には弾性材40を設け、弾性材40の高さを弾性材40に近接する第2のリブ32よりも高くし、無負荷状態では弾性材40と高分子圧電素子フィルムセンサー20との間には隙間を設けることで、高分子圧電素子フィルムセンサー20が弾性材40に当接するまでの間は被験者Yの体重撓みにより共振板10に引っ張り応力が働き、高分子圧電素子フィルムセンサー20が弾性材40に当接した後にはポアソン効果による歪みが付加されるため、2段階の検知を可能とすることで幅広い重量に対する振動検知を行うことができる。
また本実施形態によれば、共振板10として、プラスチック製の段ボール板を用い、段ボール板を構成する縦板12の筋目を長辺の方向としたことで、長辺方向の剛性にも優れ、超低周波の共振を得ることができる。
また本実施形態によれば、共振板10に導電性被膜を形成し、又は導電性材料を含んで共振板10を成型したことで、静電気の発生を防止し、ノイズの影響を除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように本実施形態によれば、特に無呼吸、心拍停止を早期に検出できる生体監視装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 共振板
20 高分子圧電素子フィルムセンサー
30 下ケース
31 第1のリブ
32 第2のリブ
40 弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者を載置する共振板と、前記共振板の下面に貼り付けられる高分子圧電素子フィルムセンサーと、前記共振板との間に空間を形成する下ケースとを備え、前記被験者の心拍及び呼吸の少なくとも一方の振動を検出する生体監視装置であって、前記下ケースを、中央が四隅よりも前記共振板から離れたドーム形状に構成したことを特徴とする生体監視装置。
【請求項2】
前記下ケースの前記中央を前記共振板側に所定量変形させるために必要な第1の荷重が、前記共振板の前記中央を前記下ケース側に所定量変形させるために必要な第2の荷重よりも大きくなるように、前記下ケースの剛性を前記共振板の剛性よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載の生体監視装置。
【請求項3】
前記共振板及び前記下ケースを、それぞれ一対の短辺と一対の長辺とから構成し、前記共振板と前記下ケースとがそれぞれの四隅において当接し、前記四隅以外では前記共振板と前記下ケースとは隙間を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体監視装置。
【請求項4】
前記下ケースには、対角線の方向に延びる第1のリブと、前記長辺の方向に延びる第2のリブとを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体監視装置。
【請求項5】
前記下ケースの前記中央には弾性材を設け、前記弾性材の高さを前記弾性材に近接するリブよりも高くし、無負荷状態では前記弾性材と前記高分子圧電素子フィルムセンサーとの間には隙間を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体監視装置。
【請求項6】
前記共振板として、プラスチック製の段ボール板を用い、前記段ボール板を構成する縦板の筋目を長辺の方向としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体監視装置。
【請求項7】
前記共振板に導電性被膜を形成し、又は導電性材料を含んで前記共振板を成型したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の生体監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−245143(P2011−245143A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123394(P2010−123394)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(594170990)株式会社スカイネット (4)
【Fターム(参考)】