説明

生体粒子捕捉装置及びその使用法

【課題】 その品質が既知のシステムの品質と少なくとも同等であり、その構造がより単純な、現存する細胞学的分析システム以外の代替システムムを提供すること。
【解決手段】 本発明は主として、液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する装置であって、
管の壁の断面上に接着剤により固定されたフィルタ膜(102)の表面により閉じられた第1の端部と、第2の端部とを備える管(101)と、
前記管(101)の壁に平行な軸に沿って摺動する、支持手段(108)に接続されたロッド(107)を含むピストン(104)と、
(i)フィルタ膜(102)の内面と(ii)ピストン(104)支持手段(108)の間に挿入された、管(101)内部に入れられた親水性吸収剤のブロック(103)と
を備える浮遊生体粒子を捕捉する装置
に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療診断に使用されることを目的とする細胞標本分析の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断分野、より詳細にはがん診断の分野には、後で細胞学的分析を実施するための生体試料を調製することを目的とする多数の技術と多くの装置が存在する。
【0003】
予防的又は早期の定期的細胞学的診断に対する関心の増大と共に細胞学的分析による医療診断行為の数がかなり増加してきたが、細胞学的分析の重要性は、長期の生存機会又は回復機会を非常に著しく増大するための患者の早期の治療管理の計画立てに対して明確に実証されてきた。
【0004】
細胞学的診断を一定の間隔で行うことは、そのような技術が、生命予後に付随する病気、大体の場合、乳癌、排泄−泌尿系腫瘍及び子宮癌を含む癌の検出を可能にするので、なおさら重要である。
【0005】
解剖学的病理学者が毎日受け取る多数の生体試料に対して行わねばならない組織学的及び細胞学的試験の迅速な結果を得るために、自動化された方法で生体試料を処理することを可能にする種々の統合されたシステムが開発されてきた。
【0006】
マイクロスライド上の凝固及び染色された細胞学的標本から医療診断を実行するための最も関連する細胞又は細胞群を技術者が特定するのを支援することを可能にする自動画像解析システムは知られている。
【0007】
さらに、細胞学的標本を読み取るステップの前に、初期生体試料から直ぐに分析できる細胞学的標本を提供することを可能にする、生体試料の処理のための種々の自動システムが開発されてきた。Cytyc社(米国、マサチューセッツ州、マールボロー)により市販されるこのタイプのシステムが特に引き合いに出される。
【0008】
液体媒体中に浮遊した分析用細胞試料の処理に適合したそのような自動システムは例えば、特許文献1又は特許文献2に述べられる。これらのシステムはフィルタを備え、それを通って液体媒体の全て又は一部が、まず運び去られた後にフィルタ上に保持される細胞と共に吸引される。フィルタ上に保持された細胞は次いで回収され、適当な方法に従って細胞学的試験に使用される。
【0009】
特許文献1に述べられるタイプのシステムにおいて、分析される細胞を含む液体媒体の吸引は真空チャンバによりフィルタの下流の区画に負圧をかけることにより実行される。しかしながら、信頼性のある細胞学的分析を後で行うために、予め収集された細胞母集団を統計的に代表する細胞試料を得るのに十分な数の細胞をフィルタ上に保持する必要がある。さらに、フィルタ上に過度の数の細胞を保持することは避けるべきであり、これは、細胞がブロック及び/又は積層を形成するような細胞試料、すなわち後続の細胞学的分析が実際に行えない試料の作成に通じる。詳細には、細胞のブロック又は積層がフィルタ上に保持されるときは、注目する細胞は細胞学的分析により評価できない細胞層に実質的に隠されるかもしれない。
【0010】
以上に述べられた欠陥を矯正するために、特許文献1に述べられる装置はフィルタの上に適切な量の細胞を吸引するように発生する真空の強度を調節するシステムを提供している。この調節システムでは、フィルタ上に保持される細胞の量は、フィルタと真空源の間の空気流速を測定する手段によりリアルタイムに間接的に評価される。
【0011】
実際には、細胞学的分析に使用されることを目的とする細胞標本を作成する自動システムは満足に機能する。しかしながら、これらのシステムに含まれる種々の電子調節装置は非常に複雑であり、これは機能不良の恐れ、あるいは故障中のシステムの機能停止の恐れさえ著しく増す。さらに、非常に複雑な自動システムは購入時(調節を行う必要性があるために)と専門技術者による定期保守時に非常に高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2008/076623号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/091704号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、その品質が既知のシステムの品質と少なくとも同等であり、その構造がより単純な、現存する細胞学的分析システム以外の代替システムに対する現状技術における必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図1及び4を参照して、本発明の目的は、
液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する装置であって、
管の壁の断面上に接着剤により固定されたフィルタ膜(102)の表面により閉じられた第1の端部と、第2の端部とを備える管(101)と、
管(101)の壁に平行な軸に沿って摺動する、支持手段(108)に接続されたロッド(107)を備えるピストン(104)と、
(i)フィルタ膜(102)の内面と(ii)ピストン(104)支持手段(108)の間に挿入された、管(101)内部に入れられた親水性吸収剤のブロック(103)と、
を備える浮遊生体粒子を捕捉する装置
を提供することである。
【0015】
発明はまた、上に述べられた装置が実施される、液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する方法に関する。
【0016】
本発明はまた、上に述べられた装置が実施される、浮遊生体粒子を含む液体媒体から生体学的標本を作成する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態による使用前の生体粒子捕捉装置の対称軸に沿う垂直断面を図解する図である。
【図2】装置がフィルタ膜の表面上に生体粒子を保持するのに十分な時間の間、処理される生体粒子懸濁液を容れた容器に(完全に浸されるのではなく)浸けられたときの、生体粒子捕捉装置の1つの実施形態の対称軸に沿う垂直断面を図解する図である。
【図3】フィルタ膜から生体粒子を取り除くことを目指して装置の外側に向かって液体流を発生させるように吸収剤ブロックに圧力をかけるためにピストンロッドが作動するときの、フィルタ膜上で生体粒子を保持した後の生体粒子捕捉装置の1つの実施形態の対称軸に沿う垂直断面を図解する図である。この図3において、矢印は、ピストンの作動方向を示す。
【図4】子宮頸部細胞診試料から得られた生体試料により与えられた、ガラススライド上に移転された細胞学的標本の光子顕微鏡画像を示す。次いで細胞学的標本はPRESERVCYT(登録商標)タイプの液体媒体中で凝固され、その後、PARANICOLAOU法に従って染色ステップが施された。
【図4A】発明の装置で得られた細胞学的標本を示す。
【図4B】真空下の吸引チャンバが設けられた自動システムで得られた細胞学的標本を示す。図4A及び4Bに提示された試料は同じ子宮頸部細胞診試料から抽出される。
【図5】生体粒子捕捉装置の1つの実施形態の対称軸に沿う垂直断面を図解し、分析される生体流体を容れた容器に前記装置を浸けた直後の図である。
【図6】生体粒子をフィルタ膜の表面上に保持するのに十分な時間の間、処理される生体粒子懸濁液を容れた容器に(完全に浸されるのではなく)装置が浸けられたときの、生体粒子捕捉装置の1つの実施形態の対称軸に沿う垂直断面を図解する図である。
【図7】フィルタ膜から生体粒子を取り除くことを目指して装置の外側に向かって液体流を発生させるように吸収剤ブロックに圧力をかけるためにピストンロッドが作動するときの、フィルタ膜上で生体粒子を保持した後の生体粒子捕捉装置の1つの実施形態の対称軸に沿う垂直断面を図解する図である。図7に図解された1つの特定の実施形態において、フィルタ膜の表面上に予め吸着された生体粒子はフィルタ膜から細胞学的分析支持体の表面上、例えば顕微鏡スライドの表面上に移転される。図7において、矢印はピストンが作動する方向を表わす。
【図8】ロッド(107)の特定の実施形態を図解する図である。
【図9】管(101)の1つの実施形態の上部の眺めを図解する図であり、その形状は図8に図解される実施形態によるロッド(107)を受けるのに特に適している。
【図10】マルチアッセイ・プラットフォームの部分図を、対称軸に沿う垂直断面で図解する図であり、前記プラットフォームに含まれる装置を、分析される生体流体を含む複数の容器に浸けた直後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
出願人は、基本的に細胞学的分析用の生体試料を調製するために液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する新しい装置を開発することに専念してきた。
【0019】
詳細には、出願人は、既知の装置より安価で、同時にその品質が既知の装置で調製された生体試料の品質と少なくとも同等である生体試料を得ることを可能にする上記のタイプの新しい装置を開発することを探求してきた。
【0020】
研究中に、出願人は、フィルタ膜の直ぐ下流に置かれた親水性吸収剤による液体の吸収によりフィルタを通過する液体流が生じることを特徴とするフィルタ膜装置により、特に後続の細胞学的分析用の非常に高品質の生体試料を得ることが可能であることを実証した。詳細には、出願人は、適当な吸収性を有するタイプの親水性吸収剤により、その力又は流速が、試験される試料内に含まれる生体粒子を静止状態にある装置のフィルタ膜に向かって運び去るのに十分な液体流が作り出され、従って、これは試験試料中に浸された静止装置に関連する前記試料に対する如何なる変位も必要とせずに行われる。
【0021】
これらの驚くべき結果に基づいて、出願人は、その第1の実施形態が図1ないし4に図解され、その第2の実施形態が図5ないし7に図解される新しい装置を開発した。さらに、装置の特定の実施形態がより詳細に図8及び9に図解される。
【0022】
液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する発明の装置はまず第1に図1及び5の図面を参照して述べられる。
【0023】
本発明の目的は、
液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する装置であって、
第1および第2端部を有する管(101)を備え、
この管の第1端部が、該管の壁の横断面上に接着剤により固定されたフィルタ膜(102)の表面により閉じられており、
更に、支持手段(108)に接続され、管(101)の壁に平行な軸に沿って摺動するロッド(107)を有するピストン(104)と、
管(101)内部に入れられ、(i)フィルタ膜(102)の内面と(ii)ピストン(104)の支持手段(108)の間に挿入された親水性吸収剤のブロック(103)と
を備える浮遊生体粒子を捕捉する装置
を提供することである。
【0024】
本願で用いられる「生体粒子」は動物又は植物多細胞生命体、好都合には動物多細胞生命体、好ましくは人を含む哺乳動物の多細胞生命体から収集された生体物質中に存在し得る、水性液体媒体に不溶の何れの固体粒子をも意味する。生体粒子は組織の微細フラグメント、場合によっては微生物、生きた細胞、死んだ細胞、無核細胞体、例えば赤血球及び血小板、フラグメント、細胞残屑や場合によっては結晶及び軽い固体異物を包含する。生体粒子は従って不溶の蛋白質、例えばペクチン、又はフィブロネクチンから抽出された蛋白質、例えば早期産の恐れを示す臨床パラメータを表す胎児フィブロネクチンから抽出された蛋白質を含む水性液体媒体に不溶の何れの物質をも包含する。
【0025】
本発明の装置は、特に複数の特有の構造的特徴の説明、及び該当する場合にはそれらの構造的特徴から生じる技術的効果の説明を通して、更に詳細に以下に述べられる。発明の装置の種々の実施形態は諸図に示される雑多な構造的特徴の図解を特に参照して以下に述べられる。本発明の装置の特定の実施形態は以下の述べられる多数の特有の技術的特徴の1つのみを備えても、あるいは多くの組み合わされた特有の特徴を備えてもよいことに注目すべきである。しかしながら、ただ記述の簡潔性と明確性のために、諸図は、以下に詳述される特有の技術的特徴のいくつかが組み合わされた発明の装置の実施形態を図解し、それらの特徴のそれぞれは本発明の装置において個別に存在しても、1つ以上の他の特有の特徴と組み合わせて存在してもよい。
【0026】
明細書にさらに詳細に述べられるように、本発明の装置による生体粒子の捕捉は、(i)装置の上端自身は浸されることなく浮遊生体粒子を含む液体媒体に装置のフィルタ膜を有する端部を少なくともを浸け、(ii)吸収剤のブロックにより前記液体の吸収から生じる液体流の寄与により粒子をフィルタ膜上に捕捉するのに十分な時間の間、好ましくは前記液体体内の完全に静止した位置で前記液体内に装置を維持することにより行われる。吸収剤は、例えば図2及び6のそれぞれの示されるように、吸収された液体の量を増すにつれ徐々に膨張する親水性吸収剤で構成されることに注目すべきである。一般的に、出願人は、装置が浮遊生体粒子を中に含む液体から引き出された後でも吸収剤の膨張が続くことを観察した。出願人は、装置が浮遊生体粒子を中に含む液体から引き出された後に、吸収剤の膨張の持続が、フィルタ膜への接触時に、特にフィルタ膜の外面への接触時に吸収される液体を少量にすることを可能にし、装置と共に取り去られる液体が少量であるのは、特に表面張力や吸収剤のブロックにより発生する液体流の力によると信じる。出願人は、生体粒子を含む液体媒体から発明の装置を引き出した後に観察できる吸収剤のブロックの膨張は管内側(101)に向かう残留吸引力を発生させることができ、この残留吸引力はフィルタ膜(102)を通り抜け、前記生体粒子の物理的品位を同時に変化させることなく生体粒子を前記フィルタ膜(102)の外面上に効率的に保持することを助ける。
【0027】
従って、好ましい実施形態において、吸収剤のブロック(103)は液体媒体、特に水性液体媒体への接触時に膨張する親水性材料で出来ている。
【0028】
好ましくは、吸収剤のブロックはそれ自身の乾燥重量の少なくとも2倍、より好ましくはそれ自身の乾燥重量の少なくとも3倍又は4倍までの水性液体媒体の吸収容量を有する。
【0029】
好ましくは、吸収剤のブロックは液体媒体の吸収によりその初期乾燥体積と比較して体積が2倍に増加するまで、より好ましくは体積が3倍又は4倍に増加するまで膨張できる。
【0030】
一般的に言って、吸収剤のブロック(103)の寸法はブロック(103)の管(101)への容易な挿入を可能にするように構成される。
【0031】
装置のある実施形態において、ブロック(103)の寸法は、ブロック(103)が管(101)に沿って容易に変位できるように構成される。これらの実施形態において、吸収剤のブロック(103)は栓(105)を受けるようになっている管(101)の端部に挿入され、単純に重力によりフィルタ膜(102)との接触時に静止する。これらの装置の実施形態において、吸収剤のブロック(103)の膨張特性は、ブロック(103)の外壁が管(101)の内壁に直ぐに接触しないで、むしろフィルタ膜(102)が設けられた装置の下端の浸漬後の概ね15ないし20秒後に管(101)の上部に向かってピストンを押し戻すことによりその垂直軸の方向に膨張するような特性である。
【0032】
装置の他の実施形態において、ブロック(103)の寸法は、ブロック(103)がフィルタ膜(102)に接触する状態で管(101)の他端に位置するまで、管(101)内でブロック(103)の強制的な挿入と変位を必要とするような寸法である。装置の下端の浸漬後の必要な時間は変動する可能性がある。
【0033】
吸収剤のブロック(103)を製造するために、当業者は、一般に市販される上に述べられた膨張特性を有する何れのタイプの親水性吸収剤を使用してもよい。
【0034】
例示的に、当業者はビスコース、好ましくは圧縮されたビスコース材料で出来た吸収剤を使用してもよい。ある特定の実施形態において、適当な大きさの積層ビスコースブロックを形成するようにそれ自身の上に何度も折り畳まれた繊維「不織」ラップの形式のビスコース材料を使用してもよい。最も好ましくは、前記積層ビスコースブロックは、水性液体媒体との接触時に(i)ビスコースの水性液体媒体を吸収する高い能力と、(ii)圧縮されたビスコースの体積の高増加に起因する液体吸引力とにより際立った吸収特性を有する圧縮された積層ビスコースブロックを得るように圧縮を受ける。
【0035】
吸収剤のブロック(103)を得るもう1つの実例によれば、当業者に周知の高吸収剤が使用されてもよい。
【0036】
当業者はヒドロゲルタイプの高吸収剤を使用してもよい。例えば、当業者は架橋したポリアクリル酸ナトリウム重合体タイプの重合体を親水性吸収剤として使用してもよく、これは重合開始剤の存在の下に水酸化ナトリウムと結合したアクリル酸の重合反応により得てもよい。架橋したポリアクリル酸ナトリウム系高吸収剤はそれ自身知られており、広く市販されている。
【0037】
高吸収剤タイプの吸収剤として、ポリアクリルアミドの共重合体、無水マレイン酸とエチレンの共重合体、架橋したカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールの共重合体、又は架橋したポリエチレンオキシドが使用されてもよい。
【0038】
上記の高吸収剤の膨張能力は変動するが、その乾燥体積の少なくとも10倍、あるいは少なくとも20倍に相当する。例として、架橋したポリアクリル酸ナトリウムタイプの高吸収剤の膨張能力はその乾燥体積の30ないし60倍に達する可能性がある。
【0039】
一般的に言って、管(101)、栓(105)、ピストン(102)及びフィルタ膜(102)は従来タイプのものである。
【0040】
例えば、フィルタ膜(102)が取り付けられた管(101)は細胞学的分析用の自動生体試料処理システムに使用されるフィルタとして一般に使用されるタイプのものでよい。一般的に、フィルタ膜は管(101)の両端の一方の壁厚部に単純に接着又は溶着される。
【0041】
例示的に、チューブ(101)は、ロッド(107)及びピストン(104)支持手段(108)と同様に、ポリ塩化ビニル(PVC)、プリスチレン又はポリエチレンを含む何れのタイプのプラスチックで出来ていてもよい。
【0042】
好ましくは、考えられる実施形が何であれ、管(101)は単一部品の形式をし、これは例えば成形工程により作られてもよい。
【0043】
さらなる例示として、ピストン(104)の支持手段(108)は別の材料、例えばエラストマ、ラテックス又はシリコーンで出来ていてもよい。
【0044】
好都合には、フィルタ膜は細胞学の分野において既知のタイプの細胞濾過用のフィルタ、例えばポリエステルフィルタ又はポリカーボネートフィルタで構成される。例示的に、Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ)により市販される適当なフィルタ膜を使用してもよい。Whatman-GE Healthcare社(仏国、ベルサイユ)により市販されている適当なフィルタ膜も引き合いに出される。
【0045】
一般的に言って、本発明の生体粒子捕捉装置では1μmないし25μmの範囲で選択された所定の孔径を有するフィルタ膜が使用されてもよい。
【0046】
本発明の生体粒子捕捉装置のある実施形態では1.5μmないし2.5μmの範囲で選択された、好ましくは2μmの所定の孔径を有するフィルタ膜が使用される。例えばWhatman-GE Healthcare社により市販されている参照番号7060−2511のフィルタ膜が使用されてもよい。このタイプのフィルタ膜により、本発明の装置は、収集された初期生体試料の組織の性質や由来が何であれ、後続の細胞学的分析のための注目する生体粒子の全てを捕捉することができる。
【0047】
本発明の生体粒子捕捉装置の他の実施形態では3μmないし10μmの範囲で選択された、好ましくは5μm又は7μm又は8μmの所定の孔径を有するフィルタ膜が使用される。例えばMillipore社により市販されている参照番号TMT−P02500のフィルタ膜が使用されてもよい。Millipore社により市販されている参照番号TTT−P02500のフィルタ膜も使用されてもよい。Whatman-GE Healthcare社により市販されている5μm膜(参照番号7060−2513、7060−4713)、8μm膜(参照番号7060−2514、7060−4714)又は10μm膜(参照番号7060−2525、7060−4715)等のフィルタ膜であるCyclopore(登録商標)PCも使用されてもよい。このタイプのフィルタ膜により、発明の装置は、大きいサイズの細胞、例えば膣試料又は頸膣部標本からの初期生体試料に含まれる上皮細胞タイプの細胞のみを保持できる。
【0048】
図4A及び4Bに示されるように、本出願人は、本発明の装置が、その品質が既知の装置で得られる細胞学的標本のものと少なくとも同様に良好な細胞学的標本を後で実現するために、もっぱら、静止状態の装置に含まれる吸収剤のブロック(103)の膨張に起因する吸引力により発生する液体流によりフィルタ膜(102)に向かって運ばれる生体粒子の捕捉を可能にすることを実証した。本発明による装置を用いて、例えばフィルタ膜の表面上に吸着された生体粒子を分析媒体中又は適切な分析支持体上に移転することにより、それ自体は既知の方法により非常に多様な細胞学的標本を実現することもできる。フィルタ膜の表面上に吸着された生体粒子は例えば、分析液体媒体、例えば細胞凝固剤を含む生体粒子を凝固する物質を含むタイプのものに移転されてもよい。別の従来代替方法によれば、前記生体粒子は生体分析支持体の表面上、例えばガラススライドの表面上に移転されてもよい。
【0049】
本出願人は、本発明の装置で得られた細胞学的標本が試験試料に含まれる生体粒子の物理的又は生物学的品位を保存することを可能にすることを示した。最終の細胞学的標本に存在する生体粒子の物理的又は生物学的品位が保存されるのは、フィルタ膜の表面を細胞学的分析支持体に接触させ、ピストンに短い圧力を例えば0.5ないし5秒間かけるだけで第1の表面から第2の表面に生体粒子を移転することによりフィルタ膜(102)の表面上に吸着された生体粒子が細胞学的分析支持体、一般的にはガラスプレートの表面に簡単に移転されるという事実にも起因する。
【0050】
装置のフィルタ膜から分析媒体、例えば細胞学的分析支持体の表面への生体粒子の移転はこのように細胞学的分析支持体の表面へのフィルタ膜(102)の圧力を何も必要とせずに単純な接触によりもたらされる。実際、フィルタ膜(102)を細胞学的分析支持体に圧迫して生体粒子を前記フィルタ膜から前記支持体の表面に生体粒子を移転することは生体粒子の少なくとも一部を崩壊させることになり、その場合、そのような生体粒子の物理的損傷は悪い品質の最終細胞学的標本を作り出すかもしれず、最悪の場合、診断結果を実質的に変化させるかもしれない。
【0051】
前に述べたように、本発明の装置のピストン(104)は前記管(101)の円筒壁の軸に平行な軸に沿って管(101)の内側を摺動する。ある実施形態では、ピストン(104)の摺動軸は吸収剤のブロック(103)の上面に垂直となるように決定されるので、発明の装置はピストン(104)の摺動を期待された軸に無理に沿わせる特別な手段は何も備えない。他の実施形態では、発明の装置は、例えば図1及び5にそれぞれ図解される装置の実施形態のように、ピストン(104)の摺動を期待された軸に無理に沿わせる少なくとも1つの特別な手段を備える。
【0052】
図1に図解される実施形態において、管(101)の第2の端部は中心穴(106)を備える栓(105)により閉じられる。装置のこの特定の実施形態において、ピストン(104)のロッド(107)は栓壁(105)のどちらの側からも中心穴(106)を通って摺動する。中心穴(106)はロッド(107)に対する摺動案内として働いて管(101)の壁に平行な軸に沿うロッド(107)の垂直摺動を保証する。
【0053】
図5及び8に図解される本発明の装置の実施形態において、ピストン(104)のロッド(107)はロッド(107)上に固定された円板(110)が存在するために管(101)の壁の軸に平行な軸に沿って垂直に摺動する。装置のこの特定の実施形態は本明細書においてさらにより詳しく述べられる。
【0054】
本発明の装置の形状、特に管(101)の水平断面の形状は非常に多様であってもよい。
【0055】
従って、図1に図解される本発明の装置のある好ましい実施形態において、管(101)は円形の水平断面を有し、従って、管(101)は円筒である。この特定の実施形態において、吸収剤のブロック(103)も好ましくは円筒形を有する。最も好ましくは、吸収剤のブロック(103)の直径は管(101)内壁径よりわずかに小さく、従って、吸収剤のブロック(103)の外壁は、装置の下端が生体粒子を容れた容器に浸された後に管(101)の内壁に接触しない。
【0056】
一般的に言って、吸収剤のブロック(103)は特別な固定手段を何も必要とせずにフィルタ膜(102)が取り付けられた管(101)の端部に配置される。吸収剤のブロック(103)の寸法が管(101)の壁の内面のものより小さい実施形態において、ブロック(103)は単純な重力により固定される。ブロック(103)の位置決めはピストン(104)重量によりさらに改善され、その支持手段(108)は最初はブロック(103)の上面に接触するように位置決めされてもよい。ブロック(103)の位置決めはロッド(107)に対する穏やかな直接の手動又は機械的圧力により保証されてもよい。ブロック(103)の寸法が管(101)の壁の内面のものと同じ又はそれより大きい実施形態において、ブロック(103)は重力と、管(101)の壁の内面にかかるブロック(103)の支持力との組合せにより固定される。
【0057】
本発明の装置の他の実施形態において、管(101)の水平断面は楕円でも、正方形でも、矩形その他であってもよい。単純に、実際的な製造及び使用の理由により、発明の装置の好ましい実施形態は、円形の管(101)断面を有するものであり、従って管(101)は円筒形である。明細書に後で論じられるように、円筒形を有する管(101)は、管(101)がその高さの一部のみ厳密に円筒形である実施形態を含み、その場合、前記管(101)は複合形状を有してもよく、さらには円筒区分に加えて少なくとも1つの円錐台区分を備えてもよい。図5に図解されるもののように、円錐台区分を頂く円筒区分を有する管(101)は、考察される区分が何であれ、その高さ全体に円形水平断面を有することに注目すべきである。
【0058】
本発明のもう1つの態様によれば、ピストン(104)支持手段(108)の寸法は、ピストン(104)が管(101)の垂直軸に沿って自由に移動するように選ばれる。従って、装置のこれらの好ましい実施形態において、ピストン(104)支持手段(108)の縁は管(101)の内壁の表面に永続的には接触していない。本発明の装置のこの特定の特性は、ガス又は液体流が、(i)フィルタ膜(102)と、ピストン(104)の支持手段(108)の下面とにより区切られる管(101)の下側区画、(ii)ピストン(104)の支持手段(108)の上面と、栓(105)に位置する管(101)の上端とにより区切られる管(101)の上側区画、及び(iii)栓(105)内容積がその中心穴(106)を介して連通する外気の間を自由に流れることができることを意味する。
【0059】
例示的に、管(101)が円筒管で構成されるときに、ピストン(104)支持手段(108)は好都合には円形であり、その直径は管(101)の内壁径よりわずかに小さく、管(101)の垂直軸に沿うピストンの容易な変位を保証する。例えば、本発明は、管(101)内壁径が21mmで、ピストン(104)の支持手段(108)径が20mmである実施形態を含む。
【0060】
液体媒体中に浮遊する生体粒子を捕捉する本発明の装置のもう1つの特定の実施形態は、それを実施する方法の異なる段階において、図5ないし7に図解される。
【0061】
図5をより詳細に参照すれば、本発明の装置のこの特定の実施形態は漏斗状の上部を備え、これは、分析、例えば生体組織試料の細胞学的分析に使用されるときに前記装置が浸される液体内のその安定性を向上する。
【0062】
図5に図解される実施形態において、管(101)は、連続する外面を形成する以下の2つの区分をそれぞれ備える。すなわち、
その一端が、フィルタ膜(102)の表面により閉じられた前記管の第1の端部で構成され、その他端が第2の区分と連続した外面を形成する円筒型の第1の区分S1と、
最小径を有するその端部が前記第1の円筒区分と連続した外面を形成し、最大径を有するその端部が管(101)の第2の端部で構成される円錐台型の第2の区分S2とである。
【0063】
図5において、本発明の装置は、分析される液体(121)で満たされた容器(120)に入れられた。図5で分かるように、管(101)の円錐台区分(S2)の外面は、容器(120)内の所定の位置で管(101)の垂直移動を阻止するように、容器(120)の縁(122)に重力より寄りかかりながら静止する。
【0064】
従って、管(101)の第2の端部、すなわち上端の外径D1は分析される液体を容れた容器の内径D2より大きいことが必要である。
【0065】
一般的に、生体試料を分析するのに適した容器、特に細胞学的分析に適した容器は所定の標準寸法を有する。その結果、発明の装置の寸法、特に円錐台区分S2の寸法や管(101)の全高の寸法はそれぞれ従来使用される生体分析容器に適するように予め決定されてもよい。
【0066】
図5に示されるように、(i)管(101)の区分S1の高さH1、(ii)区分S1とS2の外壁間の成す角度θ、及び(iii)区分S2の高さH2を適当に組み合わせることにより、管(101)の第1の端部に位置するフィルタ膜(102)の表面が分析容器(120)の底から適当に間隔をあけることが可能になり、従って、フィルタ膜(102)の外面は、
分析容器(120)の底面により支持もされず、それに全く接触もせず、また
分析容器(120)の底面からわずかな距離に位置決めされ、それにより浮遊生体粒子の最適回収を可能にし、従って一定の粒子、例えば容器(120)の下部に浮遊し得る高密度粒子に対する不完全な回収の恐れを少なくする。
【0067】
ある実施形態において、区分S1の高さH1は管(101)の全高Hの少なくとも3分の2に相当する。
【0068】
図5に図解される管(101)の実施形態において、前記管はさらにその上端に環状ショルダを備える。
【0069】
管(101)のこの実施形態において、管(101)の区分S2の最大径を有する端部は平坦な環状ショルダ(111)を備え、その平面は前記管(101)の区分S1の縁に垂直に横たわる。ショルダ(11)は平坦な区分、すなわち環状表面を形成し、その平面は管(101)の垂直軸に直角に横たわり、その内径は円錐台区分S2の最大径と一致する。好ましくは区分S2の端部とショルダ(115)は連続した外面を形成する。
【0070】
管(101)のこの実施形態において、好ましくは、管(101)の寸法は、(i)区分S2の最大径を有する端部の外径が容器(120)の垂直壁の内径より小さくなるように、また(ii)環状ショルダ(115)の外径が容器(120)の垂直壁の内径より大きくなるように選ばれる。この配置により、管(101)が分析容器(120)に係合したときに、ショルダ(115)の表面は容器(120)の上縁(図5には図示せず)と接触している。この実施形態において、管(101)の膜(102)の外面と容器(120)の底面との間の距離は、(i)それぞれ区分S1とS2の高さH1とH2の和である高さHと、(ii)(ii−1)容器(120)垂直壁と前記容器の底の内面との接合部と、(ii−2)容器(120)の壁の上縁との間の高さの差により決定される。
【0071】
図5に図解される本発明の装置の実施形態において、ピストン(104)のロッド(107)には円板(110)が取り付けられ、これは支持手段(108)とロッド(107)の上端との間の中間位置に置かれる。このタイプのピストン(104)の1つの実施形態は図8に詳細に示される。
【0072】
従って、本発明の生体粒子捕捉装置のある実施形態において、前記装置は、円板(110)がロッド(107)に固定され、前記円板(110)の直径は、ロッド(107)が管(101)の壁に平行な軸に沿って案内されるように決定されていることを特徴とする。装置のこれらの実施形態において、円板(110)は、ピストンが前記ピストンの全ストロークに対して垂直に維持される軸に沿って摺動できるようにする。
【0073】
図5及び8に示されているように、本発明の装置のある実施形態は円板(110)が取り付けられたピストン(104)のロッド(107)を有する。図8に図解されるピストン(104)の実施形態において、前記ピストンはピストンの最上部から底部まで垂直支持力を伝達することを目的とするプランジャ手段(111)を備え、それにより、フィルタ膜上に吸着された生体粒子を媒体又は細胞学的分析支持体に移転し、管(101)内、特に吸収剤のブロック内に含まれ得る液体の一部を放出さえする。
【0074】
図8に図解されるピストン(104)の1つの特定の実施形態において、プランジャ手段(111)を介してかけられる垂直支持力は、1つ以上の補強部材(113)の寄与によりプッシャ手段(108)の全面に実質的に均一に伝達される。各補強部材(113)は(i)その側面の内の第1の側面においてロッド(107)の壁と一体であり、(ii)第2の側面においてプッシャ手段(108)の上面と一体である。好ましくは、補強部材(113)は三角形であり、その3つの辺の1つがロッド(107)の外壁に固定され、その3つの辺のもう1つがプッシャ手段(108)の上面に固定されている。この好ましい実施形態において、補強部材(113)は直角定規の形をしている。最も好ましくは、プッシャ手段(108)と一体である補強部材(113)の辺の長さは、(i)プッシャ手段(108)の外縁と、(ii)プッシャ手段(108)に固定されるロッド(107)の端部の壁との間の距離の少なくとも半分、より好ましくは少なくともその3分の2に相当する。
【0075】
ピストン(104)は、補強部材(113)が取り付けられるときには、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも4つの補強部材(113)を備える。一般的に補強部材(113)の数は2、3、4、5又は6つの補強部材である。
【0076】
補強部材(113)の存在は装置の使用時に親水性吸収剤のブロック(103)の表面全体に実質的に均一に垂直圧力を伝えることを保証し、従って、フィルタ膜(102)の表面全体に実質的に均一に分布する圧力により、装置内に含まれる液体をフィルタ膜(102)を介して放出することを可能にする。従って、発明の装置のこの特別な実施形態を実施するときに、媒体又は細胞学的分析支持体に移転されるべき、フィルタ膜(102)の表面上に先に吸着されたかもしれない生体粒子の分離もまた、前記フィルタ膜(102)の外面全体から概ね細胞学的分析支持体の表面まで実質的に均一にもたらされる。
【0077】
図8に図解されるピストン(104)の実施形態において、円板(110)は2つの凹み又はスロット(112)を備える。ピストン(104)のこの実施形態は図9に図解される管(101)の実施形態で使用されることを目的とする。図9は、フィルタ膜(102)が固定される端部と反対側の、図5の管(101)の上端の図である。図9は以下を含む管(101)の上端を示す。すなわち、
環状ショルダ(115)と、
管(101)に至るその内面が図9で明確に見え、その外面が斜視図のためにほとんど全部隠される円錐台区分S2と、
この実施形態では一連の突出要素又はピン(117)を備える環状ショルダ(116)の存在によりその接合部が実現する、管(101)の円錐台区分S2と円筒区分S1間の接合部の内面とである。
【0078】
図には示されない装置のある実施形態において、図9に図解されるタイプの一連の突出要素又はピンは管(101)の区分S1の中心部に配置される。この特有の一連の突出要素又はピンは中間の高さの位置でピストン(104)を止めることを目的としてもよく、これは吸収剤のブロックの体積膨張を管(101)内の所望の高さ、従って所望の体積レベルで止めることを可能にする。吸収剤のブロックの体積膨張を止めることにより、本発明の装置に向かう試料の液体流が途切れてフィルタ膜の表面上の余分な生体粒子の吸着を止めることができる。本発明の装置のこれらの特定の実施形態は生体粒子収集段階の終わりにおいてフィルタ膜の表面上に吸着される生体粒子の数を制御することを可能にし、従って、フィルタ膜の表面上に吸着される生体粒子の密度も制御することを可能にする。フィルタ膜上に吸着された粒子の密度を制御することを含む、試料から収集された生体粒子の数を制御することは分析される標本の品質をさらに改良することに寄与することは言うまでもない。
【0079】
図8及び9に図解される発明の装置の実施形態において、ピストン(104)は、該当する場合、ロッド(107)の軸と管(101)の垂直軸の間に角度をつけて管(101)の内部に挿入され、それにより難なくプッシャ手段(108)を係合する。次いで、プッシャ手段(108)を管(101)の内部に係合した後に、管(101)の垂直軸に平行にピストン(104)に垂直移動が与えられ、(i)ピストン(104)の円板(110)の1つ以上のスロット(112)が管(101)の1つ以上の対応する突出要素(117)と一致するようにずらされる。次いで、ピストン(104)が管(101)内に完全に係合されるまで、すなわちプッシャ手段(108)の下面が吸収剤のブロック(103)と接触するまで並進運動が継続される。(i)1つ以上のスロット(112)が設けられた円板(110)を備えるピストン(104)と、(ii)1つ以上の対応する突出要素(117)が設けられたショルダ(116)を備える管(101)との組合せを含むこの実施形態は管(101)の内部へのピストン(104)の容易な係合を可能にし、それと同時に、前記ピストン(104)の望まない脱離を防止する。装置のこの特定の実施形態では、一旦ピストン(104)が管(101)の内部に係合されると、1つ以上のスロット(112)と1つ以上の対応する突出要素(117)が再び一致する(これは前記ピストンの脱離を生じることとなる)確率は低い。
【0080】
本発明の装置の管(101)の区分S1の中心部に一連の突出要素又はピンが設けられた前述のこれらの実施形態において、吸収剤のブロックの体積膨張に起因するピストン(104)の垂直移動は、円板(110)の前記突出要素又はピンとの接触により止められる。
【0081】
本発明の装置のさらに他の実施形態において、プッシャ手段(108)も1つ以上のスロット(112)を備え、一般的にその大きさと位置は円板(110)に存在するスロット(112)のものと同じである。ある好ましい実施形態において、円板(110)の1つ以上のスロット(112)とプッシャ手段(108)の1つ以上のスロット(112)はそれぞれロッド(107)の主軸に沿って互いに垂直方向に整列している。他の好ましい実施形態において、プッシャ手段(108)の1つ以上のスロット(112)はロッド(107)の主軸に沿って互いにずらされ、これはピストン(104)の脱離の恐れをさらに少なくする。あらゆる場合、装置のこれらの他の実施形態において、管(101)の内部へのピストン(104)の係合は、前記ピストンの脱離の恐れを増すことなく容易である。
【0082】
本発明の目的はまた以下のステップを含む液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する方法を提供することである。すなわち
a)生体粒子が中に浮遊する液体媒体を容れた容器の中に前述のような生体粒子捕捉装置を入れるステップと、
b)液体媒体中に含まれる生体粒子の少なくとも一部を装置(101)のフィルタ膜(102)の外面上に捕捉するのに十分な時間の間、前記容器内に装置を維持するステップとである。
【0083】
上記の方法のステップa)の初めに現れる本発明の装置はそれぞれ、図1ないし5のそれぞれに図解されている。
【0084】
好都合には、生体粒子懸濁液を容れた容器は既知のタイプのもの、例えば細胞学的及び組織学的分析を含む生体分析用の細胞又は組織試料を調整するために伝統的に使用されるフラスコである。
【0085】
さらに、浮遊生体粒子を含む液体媒体は既知のタイプのものである。ほとんどの場合、計画された細胞学的分析がマイクロスライド上の細胞タイプの分析で構成されるときは、前記液体は浮遊する細胞又は細胞体を凝固させる物質を含む緩衝水溶液で構成される。凝固剤としてアルコール系の混合物が特に引き合いに出される。例えば、SURGIPATH社により商品名SEDFIX(登録商標)で市販されているアルコール系凝固剤、Cytyc社により商品名PRESERVCYT(登録商標)で市販されているアルコール系凝固剤、又はLabonord社により商品名EASYFIX(登録商標)で市販されているアルコール系凝固剤が使用されてもよい。他の実施形態において、例えば後続の細胞学的分析が生きた細胞により行われるときは、前記液体は生理食塩水緩衝媒体、好ましくは適当な細胞培養媒体で構成されてもよい。さらに他の実施形態において、前記液体は尿のような自然体液で構成されても、あるいは腹水、浸出液、嚢胞又は分泌液のような病理学的に分泌された体液で構成されてもよい。
【0086】
ステップa)の時間は変動する。それは本発明の装置がその保管位置から処理される生体粒子懸濁液に接触する位置へ移動するのに必要な時間に相当する。
【0087】
ステップb)において、一般的にフィルタ膜(102)が設けられた管(101)の端部は液体媒体に接触し、フィルタ膜の外面全体が前記液体媒体に浸されることだけが必要である。そのときフィルタ膜(102)を通って管(101)の内部への、より詳細には管(101)のこの端部に位置決めされた吸収剤のブロック(103)への液体媒体流が発生する。流入する液体媒体流は(i)吸収剤のブロック(103)の表面エネルギー特性に起因する表面張力と(ii)ブロック(103)を構成する吸収剤の体積の穏やかな増加に起因する液体媒体の機械的吸引作用の両方により発生する。
【0088】
ステップb)において、流入する液体媒体流は管(101)の内部に生体粒子を運び、粒子は、初期生体試料の性質とフィルタ膜(102)の孔径によって全部又は一部のみが液体媒体に接触してフィルタ膜(102)の外面上に保持される。
【0089】
ステップb)の時間は以下のような種々の基準を考慮に入れることにより当業者により容易に適応される。すなわち、(i)フィルタ膜上に保持される生体粒子の予測最終密度、(ii)初期液体媒体中の浮遊生体粒子の濃度、及び(iii)吸収剤のブロック(103)の吸収能力である。
【0090】
一般的に言えば、使用される発明の装置の実施形態が何であれ、ステップa)の時間は少なくとも5秒であり、管(101)の内部容積に向かって液体流を発生させるのに必要な時間は、フィルタ膜(102)の表面上に最小十分の数の生体粒子を捕捉させる。
【0091】
圧縮されたビスコースで出来た吸収剤のブロック(103)を含む前述のような装置により、それらの後続の細胞学的分析に適した数の生体粒子のフィルタ膜(102)上での捕捉は、初期生体試料の性質、詳細には初期液体媒体中に浮遊する生体粒子の濃度により5秒ないし2分のステップb)の時間で得られる。ステップb)の時間は粒子によるフィルタ膜孔の目詰まりにより調整されてもよく、これにより複雑な測定具を必要とせずに、吸収がほとんど完全に阻止され、粒子の薄層が得られる。
【0092】
ステップb)の終わりにおける装置の位置は、図2及び6のそれぞれの図面に図解されている。図2及び6のそれぞれにおいて、本発明の装置は、浮遊する生体粒子を容れた容器の液体媒体に浸されて提示される。吸収剤のブロック(103)は図1及び5に図解されるその乾燥状態の初期体積に対して体積が増加した。初めは液体媒体中に浮遊し、その後に保持される生体粒子(109)は図2においてフィルタ膜(102)の外面上に図解されている。図2及び6のそれぞれにおいて、その支持手段(108)が吸収剤のブロック(103)になお接触しているピストン(104)は、吸収剤の膨張の結果としてその上側の位置まで移動する。
【0093】
方法のステップb)の終わりにおいて、フィルタ膜(102)の外面上に保持される生体粒子は細胞学的分析の伝統的方法に従って回収及び処理されてもよく、それは例えば、ブロック(103)にピストンの圧力をかけることにより、レプリカ平板法により、フィルタ膜(102)からマイクロスライドの表面に向かって移転し、次いで場合によってはその後に、細胞学的分析を行う前に標本の染色ステップを実施することにより行われ、そのような分析は一般的に光子顕微鏡により行われるようなる。
【0094】
驚いたことに、図4に図解されているように、本明細書に述べられる装置を使用することにより、本明細書に前に述べられた自動システムで得られるものを含む既知のシステムで得られる標本の品質と少なくとも同程度に良好な品質を有する細胞学的分析用の標本を得ることが可能になることが本発明により示された。
【0095】
従って、驚いたことに、本発明の装置により得られた細胞標本の分析は、細胞の品位が多くの場合、既知の装置を用いて作成された標本と比較して同等か又はずっと良好であることを示す。
【0096】
如何なる理論にも縛られることを望まずに、出願人は、本発明の装置で観測できる最良の細胞品位は、吸収剤のブロック(103)により発生する流入液体流の流速が既知のシステム、特に前記流入流がフィルタ膜の下流に置かれた区画を真空の下に置くことにより発生するシステムと比較して小さいという事実に起因すると考える。その結果、本発明の装置では、フィルタ膜により止められた粒子が、粒子のより低い減速をもたらし、それと同時にそれらの物理的品位のより少ない変化をもたらすか、又は変化の皆無をもたらす。
【0097】
本発明の装置の使用は、特に初期生体試料が、大量の線維素性凝固物が存在する「出血性」といわれる試料で構成されるときに他の利点を有する。このタイプの試料に既知のシステムを使用することにより、注目する生体粒子と一緒にフィルタに向かって運び去られる多数の線維素性凝固物の存在によりマイクロスライド上で分析するのが困難な細胞学的標本が典型的に得られる。
【0098】
それに反し、本発明の装置では、初期試料が出血性試料で構成される場合でも優れた品質の細胞学的標本がマイクロスライド上に得られる。すなわち得られた細胞学的標本に線維性凝固物がない、あるいは実質的にない。出願人は、発明の装置のこのさらなる利点は、注目する生体粒子と一緒に線維性凝固物を運ばないという装置への低い流入流速に起因すると考える。
【0099】
本発明の装置の使用は手術中、例えば即時検査における超音波ガイド下穿刺吸引生検中にも好都合である。収集された液体試料が満足なものであるかどうかを手術者に示すことが可能となり、収集された試料の品質が不十分であれば手順を繰り返すことを可能にする。吸引生検は乳腺腫瘤、肝転移又は深部器官における腫瘍に対するものを含む。本発明の装置のそのような使用は、その侵襲的性状が患者の不必要な精神的外傷を生じる度重なる外科的処置の恐れを少なくする。
【0100】
すでに上で述べられたように、本発明の装置は細胞学的標本を作成する方法に使用される。
【0101】
従って、本発明はまた以下のステップを含む浮遊生体粒子を含む液体媒体から細胞学的標本を作成する方法に関する。すなわち、
a)生体粒子が中に浮遊する液体媒体を容れた容器に本明細書において定義されるような装置を入れるステップと、
b)液体媒体中に含まれる生体粒子の少なくとも一部を装置のフィルタ膜(102)の外面上に捕捉するのに十分な時間の間、装置を前記容器中に維持するステップと、
c)該当する場合はピストン(104)のロッド(107)を引き上げることにより装置を前記容器から取り外すステップと、
d)装置のフィルタ膜上に保持される生体粒子の少なくとも一部を回収するステップとである。
【0102】
細胞学的標本を作成する上記の方法のステップd)の好都合な実施形態において、ピストン(104)を作動させることによりブロック(103)に圧力がかけられ、それにより、装置(101)の内側から外側に流出する液体流を発生させ、前記液体流は、初めはフィルタ膜上に保持された生体粒子を運び去られるようにする。方法のこの特定の実施形態は図3及び7のそれぞれに図解される。
【0103】
一旦フィルタ膜(102)から取り除かれると、注目する生体粒子が回収され、その後にそれらの細胞学的分析の前に前処理されるように1つ以上のステップが施される。
【0104】
一般的に、ステップd)において発明の装置のフィルタ膜(102)上に保持される粒子は解剖学的病理学者により伝統的に使用される方法、例えば、フィルタ膜から、図7に図解されているマイクロスライド(200)のようなマイクロスライドの支持体表面にレプリカ平板法により移転する方法に従って回収される。細胞学的標本、一般的にはマイクロスライドの表面に付着する細胞標本は次いで1つ以上のステップを踏んで観察前に前処理されるが、これらのステップは、例えば、May-Grumwald Giemsaによる染色ステップ、いわゆる「パパニコロウ」染色、みょうばん・カルミン、エオシン、エリスロシンによる染色、ショール染色、塩基性フクシン、マイヤーのヘマラム、ヘマテイン、ヘマトキシリン、スーダンブラック、ムチカルミン、ニグロシン、オルセイン、フロキシンb、キシリジン、ポンソー、シッフ試薬、コンゴーレッド等を含む、1つ以上の専用又は汎用の染色ステップである。
【0105】
上に述べられたように、細胞学的標本を作成する本発明の方法のステップd)のある実施形態において、前記フィルタ膜を細胞学的分析支持体の表面に接触させることにより、生体粒子の少なくとも一部は装置のフィルタ膜から細胞学的分析支持体の表面に移転される。
【0106】
さらに、ある実施形態において、前記方法は以下のさらなるステップを含む。すなわち、
e)前記細胞学的分析支持体の表面上に移転された生体粒子の染色を行うステップ。
【0107】
細胞学的標本を作成する発明の方法のステップd)のさらに他の実施形態において、生体粒子の少なくとも一部は、装置のフィルタ膜から適当な容器、例えば細胞培養チューブに移転されて細胞濃縮された懸濁液の形式の細胞学的標本を得る。
【0108】
ステップd)の終わりに得られる細胞濃縮された懸濁液は次いで、細胞学的分析の前に1つ以上の後続処理ステップを踏んでもよい。
【0109】
例示的に、ステップd)の終わりに得られた細胞濃縮された懸濁液は、細胞学的分析の前に、膜マーカ又は細胞内マーカに特有の検出可能な抗体の存在の下に培養されてもよく、これは、該当する場合は標識抗体による培養後、例えばフローサイトメトリー法を用いて行われてもよい
【0110】
さらに、ステップd)の終わりに得られた細胞濃縮された懸濁液は次いで分子生物学法を用いて処理されてもよく、例えば専用の核プローブを用いたインサイチュー・ハイブリダイゼーションの技術、あるいはRNA抽出して1つ以上の注目する遺伝子の発現レベルを量子化する技術、あるいはDNAを抽出して1つ以上の注目する遺伝子の配列内の変異を検出する技術により処理されてもよい。
【0111】
細胞学的標本を作成する発明の方法のステップd)のさらなる実施形態において、フィルタ膜上に保持される生体粒子の少なくとも一部は前記フィルタ膜から掻き取ることにより回収される。
【0112】
ある実施形態において、フィルタ膜(102)を装置の他の部分から分離し、フィルタ膜と保持された生体粒子全体のパラフィン包埋法を実行することが可能である。
【0113】
フィルタ膜からの掻き取りは既知のタイプの適当などんな装置によってもたらされてもよい。例示として、培養支持体に付着する培養細胞を浮遊させるための細胞培養に伝統的に使用されるヘラを使用してもよく、これらのヘラは「セルスクレーパ」とも呼ばれる。
【0114】
本発明の方法のこれらの後者の実施形態は、組織微細フラグメントを回収して分析しなければならないときに好都合に実施される。例示として、このように回収された微細フラグメントは次いで、該当する場合は1つ以上の適当な組織化学的染色又は免疫組織化学的染色ステップを踏んだ後に、顕微鏡技術により検討される組織切片を作成するためにパラフィン又は他の何れのタイプの適当な樹脂に包埋されてもよい。本発明の方法のこれらの実施形態は、掻き取りにより粘膜組織から収集された生体粒子の細胞学的分析を行うために特に実施される。
【0115】
特に、本発明の装置は、後で組織学的に分析される組織及び細胞微細フラグメントを回収することを可能にする。装置のこの態様は、医用画像システムで支援された内視鏡ガイドを用いた技術による針生検、あるいは組織の掻き取り又は細胞学的ブラッシングによる抽出技術の増大する現実の発展を考えれば、特に有用である。実際、今日ますます実施されるこの種の抽出は、「細胞診−生検」材料とも呼ばれる言わば「混合された」試料を収集することを可能にする。これは最大サイズの細胞と組織微細フラグメントの両方を含む複合生体材料である。
【0116】
本明細書に定義される生体粒子捕捉装置を用いた細胞学的分析手順の実施を最適化することを目的として、本発明の装置を複数備えるマルチアッセイ・プラットフォームが開発され、前記マルチアッセイ・プラットフォームは初期の生体試料から複数の細胞学的標本を同時に作成するために着想された。
【0117】
本発明のマルチアッセイ・プラットフォームの部分図の垂直断面である図10を参照すれば、前記プラットフォームは、前記プラットフォームの表面に所定の方法で配置された複数の生体粒子捕捉装置を含む。図10はマルチアッセイ・プラットフォーム内で一直線に配置された一連の3つの発明の装置を示す。
【0118】
本発明のマルチアッセイ・プラットフォームのある実施形態において、前記マルチアッセイ・プラットフォームは整列した複数の生体粒子捕捉装置を備える。これらの実施形態において、マルチアッセイ・プラットフォームは好都合には少なくとも2個のかつ100個以下の多くの生体粒子捕捉装置を備える。
【0119】
「少なくとも2個の」は少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個を含むことを意図する。「100個以下の」は多くとも99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、24、23、22、21又は20個を含むことを意図する。マルチアッセイ・プラットフォームのこれらの実施形態において、前記プラットフォームは1つの直線軸に沿って互いに配置された複数の生体粒子捕捉装置を備える配列の形式をしている。
【0120】
発明のマルチアッセイ・プラットフォームの他の実施形態において、複数の生体粒子捕捉装置は互いに平行な複数の行と、互いに平行でかつそれらの行に垂直な複数の列の両方に沿って配列される。各行と各列は複数の生体粒子捕捉装置を備える。各行内の発明の装置の数が各列内の装置の数と同じときは、マルチアッセイ・プラットフォームは正方形の形を有してもよい。マルチアッセイ・プラットフォームのこれらの実施形態において、各行と各列は好都合には最小2で最大100の多くの生体粒子捕捉装置を備える。
【0121】
容易に理解できるように、本発明のマルチアッセイ・プラットフォーム内の生体粒子捕捉装置の他の何れのタイプの相互配置も本発明に組み入れられる。
【0122】
図10に図解されているマルチアッセイ・プラットフォームの実施形態において、生体粒子捕捉装置は全て単一部品タイプの構造内に含まれる。この実施形態において、第1の管(101)の壁と第1の管の近傍にある第2の管(101)の壁はプラットフォームの上面を介して互いに接続される。この実施形態において、(a)第1の管(101)の壁、(b)第1の管の近傍にある第2の管(101)の壁及び(b)両方の壁を互いに接続するプラットフォームの表面は連続した外面を形成し、これが前記プラットフォームの単一部品タイプの構造を実現する。単一部品の形をしたこの実施形態において、中に含まれる管(101)のそれぞれの壁を含むマルチアッセイ・プラットフォームの構造は、当業者に周知の方法を用いてポリエチレン、ポリスチレン又はポリプロピレンのような重合体材料を単純に成形することにより作られてもよい。次いでフィルタ膜(102)が取り付けられ、両方の管(101)により支持される。その後、ピストン(104)の位置決めの前に、管(101)のそれぞれには次いで吸収剤のブロック(103)が取り付けられる。
【0123】
発明のマルチアッセイ・プラットフォームの他の実施形態において、プラットフォームの構造は、複数の凹部が秩序立って配列されたプレートの形をし、各凹部は、本明細書において上に詳細に述べられたその一般的実施形態による生体粒子捕捉装置を受容するようになっている。マルチアッセイ・プラットフォーム構造内の凹部の数と空間配置は単一部品タイプのプラットフォームに含まれる管(101)の空間配置に関して前に述べられた可能性を含む。
【0124】
図10に示されるように、マルチアッセイ・プラットフォームに含まれる各生体粒子捕捉装置は試験される生体試料を容れた容器に導入されるようになっている。実際には、容器の配置はマルチアッセイ・プラットフォームに含まれる装置の配置に適合すべきである。そのような技術的制約を満たすために、試験される生体試料を容れた容器は好都合には試料棚に予め設けられ、マルチアッセイ・プラットフォーム内の装置に対して適合した位置に前記容器を配置することを可能にする。
【0125】
プラットフォームに容れられた前記装置のそれぞれが前記試料棚に配置された容器のそれぞれに導入できるときに、試料棚内の試料容器に対する管の配置はマルチアッセイ・プラットフォームに含まれる装置の配置に「適合」している。もちろん、マルチアッセイ・プラットフォームは試料棚に実際に配置された容器の数と比較してもっと多くの数の生体粒子捕捉装置を備えてもよい。そのような状況において、マルチアッセイ・プラットフォームに容れられた全ての装置が使用されなくても、前記容器内に含まれる全ての試料の細胞学的分析が行われてもよい。
【0126】
最も好ましくは、マルチアッセイ・プラットフォーム内の生体粒子捕捉装置は対応する試料棚にある容器と同じ数だけ設けられる。
【0127】
さらに、本発明のマルチアッセイ・プラットフォームは、本明細書において上にすでに詳述された生体粒子捕捉装置と同じ方法で使用してもよい。
【0128】
従って、本発明はさらには本明細書で定義されるような複数の生体粒子捕捉装置を備えるマルチアッセイ・プラットフォームに関する。
【0129】
好ましくは、前記マルチアッセイ・プラットフォームは単一部品構造の形をしている。
【0130】
本発明はさらに、液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉するシステムに関係し、前記システムは以下の2つの要素の組合せを備える。すなわち、
所定の配置に従って前記プラットフォームに設けられた複数の生体粒子捕捉装置を含む上に定義されたマルチアッセイ・プラットフォームで構成される第1の要素と、
生体試料容器を受容する試料棚とであり、その場合、前記容器は前記マルチアッセイ・プラットフォーム内の装置の配置に適合する配置に従って前記試料棚に設けられてもよい。
【0131】
本発明はまた以下のステップを含む浮遊生体粒子を含む液体媒体から細胞学的標本を作成する方法に関する。すなわち、
a)生体粒子が中に浮遊する液体媒体をそれぞれ容れた1つ又は複数の容器に上に定義されるようなマルチアッセイ・プラットフォームに容れられた複数の生体粒子捕捉装置(101)の少なくとも一部を入れるステップと、
b)液体媒体に含まれる生体粒子の少なくとも一部を装置(101)のそれぞれのフィルタ膜(102)の外面上に捕捉するのに十分な時間の間、装置を前記容器中に維持するステップと、
c)マルチアッセイ・プラットフォームの並進を行って前記対応する容器から装置を取り外すステップと、
d)容器に入れられたマルチアッセイ・プラットフォームに容れられた装置のそれぞれのフィルタ膜上に保持される生体粒子の少なくとも一部を回収するステップとである。
【0132】
さらに、上記の方法の実施は生体粒子捕捉装置が1つだけ使用される方法のものと同じである。従って、そのような実施の詳細は単一の生体粒子捕捉装置を実施する方法に関連して本明細書において上に述べられている。
【符号の説明】
【0133】
101 管、装置
102 フィルタ膜
103 吸収剤のブロック(103)
104 ピストン
105 栓
106 栓の中心穴
107 ロッド
108 支持手段
109 生体粒子
110 円板
111 プランジャ手段
112 凹み又はスロット
113 補強部材
115 環状ショルダ
116 環状ショルダ
117 突出要素又はピン
120 容器
121 分析される液体
122 容器の縁
200 マイクロスライド
S1 円筒タイプの第1の区分
S2 円錐台タイプの第2の区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する装置であって、
管の壁の断面上に接着剤により固定されたフィルタ膜(102)の表面により閉じられた第1の端部と、第2の端部とを備える管(101)と、
前記管(101)の壁に平行な軸に沿って摺動する、支持手段(108)に接続されたロッド(107)を備えるピストン(104)と、
(i)前記フィルタ膜(102)の内面と(ii)前記ピストン(104)支持手段(108)の間に挿入された、前記管(101)内部に入れられた親水性吸収剤のブロック(103)と、
を備える浮遊生体粒子を捕捉する装置。
【請求項2】
前記ブロック(103)は水性液体媒体への接触時に膨張する親水性材料で出来ていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ブロック(103)は圧縮されたビスコースのブロックで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルタ膜は1μmないし25μmの孔径を有することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記管の前記第2の端部は中心穴(106)を備えた栓(105)により閉じられていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
前記ロッド(107)に円板(110)が固定され、前記円板(110)の直径は前記管(101)の壁に平行な軸に沿う前記ロッド(107)の摺動を許すように決定されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記管(101)は、連続した外面を形成する2つの区分、すなわちそれぞれ、その一端が、フィルタ膜(102)の表面により閉じられた前記管の前記第1の端部で構成され、その他端が第2の区分と連続した外面を形成する円筒型の第1の区分S1と、
最小径を有するその端部が前記第1の円筒区分と連続した外面を形成し、最大径を有するその端部が前記管(101)の前記第2の端部で構成される円錐台型の第2の区分S2とを備えることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の装置。
【請求項8】
前記管(101)の前記区分S2の最大径を有する前記端部は、前記管(101)の前記区分S1の縁に垂直に平坦な環状ショルダ(111)を備えていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
a)生体粒子が中に浮遊する液体媒体を容れた容器の中に請求項1ないし8の何れかに記載される装置を入れるステップと、
b)液体媒体中に含まれる前記生体粒子の少なくとも一部を前記装置(101)の前記フィルタ膜(102)の外面上に捕捉するのに十分な時間の間、前記容器内に装置を維持するステップと
を含む液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉する方法。
【請求項10】
a)生体粒子が中に浮遊する液体媒体を容れた容器に請求項1ないし8の何れかに記載される装置を入れるステップと、
b)前記液体媒体中に含まれる前記生体粒子の少なくとも一部を前記装置(101)の前記フィルタ膜(102)の外面上に捕捉するのに十分な時間の間、前記装置を前記容器中に維持するステップと、
c)前記装置を前記容器から取り外すステップと、
d)前記装置の前記フィルタ膜上に保持される前記生体粒子の少なくとも一部を回収するステップと
を含む浮遊生体粒子を含む液体媒体から細胞学的標本を作成する方法。
【請求項11】
ステップd)において、前記ピストン(104)を作動させることにより前記ブロック(103)に圧力がかけられ、それにより、前記装置(101)の内側から外側に液体流を発生させ、前記液体流は、初めは前記フィルタ膜上に保持された前記生体粒子を脱離させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)において、前記フィルタ膜を細胞学的分析支持体の表面に接触させることにより、前記生体粒子の少なくとも一部が前記装置の前記フィルタ膜から細胞学的分析支持体の表面上に移転されることを特徴とする請求項10及び11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
e)前記細胞学的分析支持体の表面上に移転された前記生体粒子の染色を行うさらなるステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)において、前記生体粒子の少なくとも一部は前記装置の前記フィルタ膜から容器に移転されて細胞濃縮された懸濁液の形式の細胞学的標本を得ることを特徴とする請求項10及び11の何れかに記載の方法。
【請求項15】
ステップd)において、前記フィルタ膜上に保持される前記生体粒子の少なくとも一部が前記フィルタ膜から掻き取ることにより回収されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし8の何れかに記載の複数の生体粒子捕捉装置を備えるマルチアッセイ・プラットフォーム。
【請求項17】
2つの要素、すなわち、
所定の配置に従って前記プラットフォームに設けられた複数の生体粒子捕捉装置を含む請求項16に記載のマルチアッセイ・プラットフォームで構成される第1の要素と、
前記生体試料容器を受容する試料棚と
の組合せを備え、
前記容器は前記マルチアッセイ・プラットフォーム内の前記装置の前記配置に適合する配置に従って前記試料棚に設けられてもよい
液体媒体中の浮遊生体粒子を捕捉するシステム。
【請求項18】
a)生体粒子が中に浮遊する液体媒体をそれぞれ容れた1つ又は複数の容器に請求項16に定義されるようなマルチアッセイ・プラットフォームに容れられた前記複数の生体粒子捕捉装置の少なくとも一部を入れるステップと、
b)前記液体媒体に含まれる前記生体粒子の少なくとも一部を前記装置(101)のそれぞれの前記フィルタ膜(102)の外面上に捕捉するのに十分な時間の間、前記装置を前記容器中に維持するステップと、
c)マルチアッセイ・プラットフォームの並進を行って前記対応する容器から装置を取り外すステップと、
d)容器に入れられたマルチアッセイ・プラットフォームに容れられた前記装置のそれぞれの前記フィルタ膜上に保持される前記生体粒子の少なくとも一部を回収するステップと
を含む
浮遊生体粒子を含む液体媒体から細胞学的標本を作成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−529573(P2011−529573A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520565(P2011−520565)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051497
【国際公開番号】WO2010/012941
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511025341)
【Fターム(参考)】