説明

生体組織用クリップをセッティングするための医療機器

【課題】生体組織用クリップまたは組織クリートを内側の臓器壁(結腸壁)の括約筋の近くで容易かつ安全にセッティングできる医療機器、望ましくは生体組織用クリップをセッティングするための直腸医療器具を提供する。
【解決手段】耐屈曲性管状シャフトの近位端部に取付られたハンドル部40と、耐屈曲性管状シャフトの遠位端部に固定又は形成されたキャップと、キャップにばね力によって弾性結合され、開放/引出手段によってキャップから引出されるように構成された生体組織用クリップ4と、を含む直腸医療器具。管状シャフトの遠位端部がキャップの直前領域で傾斜され、キャップ自体が予め決められた固定角度に傾斜されて、キャップによって規定されるクリップの引出方向が管状シャフトの軸に対し所定の角度に規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織用クリップをセッティングする医療機器、詳しくは直腸医療器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直腸医療器具は、例えば、痔瘻及びそのような病理的組織変化などの組織損傷を修復するために、生体組織用クリップの軸形態供給手段を用いる。
【0003】
従来(例えば、US 6,849,078 B2)では、このような生体組織用クリップを基本構造とするものが一般的に知られているが、以下、図1を参照して詳しく説明する。
【0004】
図1に示すように、クリップ100は、2つの側面ヒンジ130または柔軟性を有するモールディングを介在して開閉できる歯が形成された2つの顎部110、120を有する口腔型の固定手段から構成される。ヒンジ130または柔軟性を有するモールディングは、顎部110、120を開くときにばね力を蓄えるばね弾性ストラップから形成され、蓄えられたばね力は、顎部110、120が開放されるとき、即ちヒンジ130または柔軟性を有するモールディングの決められた締め力によって顎部110、120を閉じる。
【0005】
具体的には、前記クリップ100は、ばね鋼板から一体にパンチングまたはレーザー処理によって、部分的に異なる幅を有するリングに形成される。幅広の直径方向に対向する2つのリングの部分は2つの顎部110、120を構成し、両顎部110、120の間に配置されて狭幅の2つのリングの部分はヒンジ130または柔軟性を有する(弾性)モールディングを形成する。顎部110、120は、幅広のリング部分の平面全体を曲線形状の弓形にすることで形成され、狭幅の2つのリング部分は、ヒンジを形成するために長手方向の軸を中心に略180°ねじられる。このようなばね鋼板の特殊形状は、対向して動く2列の歯を有するサメの口のような形状を生成し、2列の歯は幅広のリング部分をレーザー溶接することで形成される。
【0006】
以下、このような医療用生体組織用クリップ100の機能について説明する。
【0007】
一般的に、医療用機器の内視鏡の挿入は、患者が耐えることができるように全体的に構成される。この場合、医療用機器は管腔臓器の内部から管腔臓器に固定する必要がある。このために、多数(少なくとも1つ)の前述の組織のクリート、クリップまたはアンカーが内視鏡または類似の軸形態の供給手段によって管腔臓器内に挿入され、臓器内側の予め決められた部位に配置される。従って、それぞれのクリップまたはアンカーは臓器組織に近く接近して、クリップまたはアンカーに働くばね力が開放される。そして、クリップまたはアンカーは顎部、フックまたは針の間に挟まる組織を予め決められた締め力または拡張力によって固定または保持する。このとき、それぞれの顎部の歯、フック、針または尖った突出端は組織内に入り込み、望ましくは突刺される。
【0008】
図1には詳しく図示されないが、内視鏡または軸形態の供給手段は、一般的に内視鏡ヘッドまたは内視鏡キャップを有する。このような内視鏡ヘッドまたは内視鏡キャップは、内視鏡に一般的に要求される機能とは別に、照明装置、光学システム及び洗浄手段などを含み、必要に応じて生体組織用クリップに用いる保持及び引出手段をさらに含むことができる。なお、この明細書では、洗浄機能及び別途の照明、光学システムを有しない簡単な挿入補助器具も内視鏡としてみなすことに留意されたい。
【0009】
保持及び引出手段は、実質的に、手動または遠隔操作により内視鏡の長手方向に移動可能なスライドおよび拡張スリーブから構成される。拡張スリーブは、クリップが管腔臓器内に挿入される際後方に滑るのを防止し、開いた状態の生体組織クリップがスリーブ上に配置されるように設計されている。このために、スライドがクリップの軸方向後方に配置され、即ちクリップに対する軸方向のストッパーの役割を果たす。
【0010】
クリップが特定の位置に配置されるとき、スライドは軸方向に対して前方に移動すると共に拡張スリーブ上のクリップを取り外す。クリップは、拡張スリーブから取り外される際に動かされ、即ち図1のクリップ内のバイアスメカニズムが開放されて、生体組織クリップの2つの顎部は閉じられて、その間に供給された組織を固定する。しかし、従来技術による生体組織クリップの正確なセッティング、特に括約筋の近くのセッティングは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 6,849,078 B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来技術の問題点に鑑みて、本発明の目的は、生体組織用クリップまたは組織クリートを内側の臓器壁(結腸壁)の括約筋の近くで容易かつ安全にセッティングできる医療機器、望ましくは生体組織用クリップをセッティングするための直腸医療器具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、請求項1に係る技術的特徴を含む医療機器、望ましくは直腸医療器具によって達成される。本発明の有利な構成は従属項を構成する。
【0014】
本発明によれば、直腸医療器具は、硬質管状シャフトの近位端部に取付られたハンドル部と、硬質管状シャフトの遠位端部に固定または形成されたキャップと、前記キャップにばね力によって弾性結合され、開放/引出手段によって前記キャップから引出されるように構成された生体組織用クリップとを含む。前記管状シャフトの遠位端部が前記キャップの直前領域で傾斜されるか、または前記キャップ自体が予め決められた固定角度(0°より大きい)に傾斜されて、キャップによって規定されるクリップに対する引出方向が管状シャフト軸に対して対応する角度をなすようにする。この方法によれば、キャップを臓器壁の表面へより良好に付着でき、その結果クリップをより正確に配置することができる。ここで、硬質("rigid")とは、金属、アルミニウム、硬質樹脂等のように実際の使用時に変形しない特性をいう。換言すれば、シャフトの強度は患者の身体組織の強度よりはるかに高い。
【0015】
開放/引出手段は、管状シャフトに固定された少なくとも1つの外側機能チャネル内に管状シャフトに沿って延長されて、ハンドル部の操作レバーに連結されるプル又はプッシュ要素を含むように形成される。前記プル又はプッシュ要素は遠位端部でストリップリングに連結され、ストリップリングはキャップ上で長手方向に移動可能に装着されてクリップが引出されるようにする。これによって、クリップが引出動作中にねじれることを防止することができる。
【0016】
管状シャフトの遠位端部をキャップの直前でS字形状に設計し、キャップの引出方向が管状シャフトの仮想直線の中心軸に対して固定角度で延長されることが望ましい。S字形状は仮想中心軸に平行するようにキャップを再セッティング(即ち、キャップが側面に突出しないように)することで、管腔臓器内へより良好に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にも用いることが可能な従来技術による生体組織用クリップ構成の例示図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る医療機器の側面図である。
【図2a】図2の医療機器の遠位端部の拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る医療機器の斜視図である。
【図4】図3の医療機器において、生体組織用クリップが放出された状態及び取付られた状態を示す側面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る医療機器の側面図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係る医療機器の下面図である。
【図7】特に痔瘻を治療するために開発された本発明の望ましい実施例に係る生体組織用クリップの斜視図である。
【図8】図7の生体組織クリップの他の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を望ましい実施例によって、添付された図面を参照しながら詳しく説明する。
【0019】
図2及び図2aに示すように、医療(直腸用)器具は、近位端部に操作ハンドル40が取付けられ、遠位端部にシャフトヘッド1が装着された硬質または耐屈曲性の管状シャフト6(例えば、耐蝕性鋼からなる)を含み、シャフトヘッド1は、シャフトヘッド1に取付けられる生体組織用クリップ4に用いる開放/引出手段を含む。
【0020】
プラスチックにより成型されるハンドル40は、管状シャフト6が挿入、圧入、または成型によって形成される取付部40a及び管状シャフト6に対し所定の角度で延長される把持部40bを含む。また、ハンドル40は管状シャフト6に沿って管状シャフト6上を移動可能に導かれる操作レバー41を含み、把持部40bにはヒンジが形成される。移動可能に導かれる操作レバー41は、例えばボーデンケーブルの形態により、管状シャフト6に固定されたガイド部42で管状シャフト6に沿って支持されるプル及び/又はプッシュ要素11に直接連結され、ヒンジが形成された操作レバー41は、歯車列、類似の移動伝達部または偏向メカニズム(図示されない)を介在してプル及び/又はプッシュ要素11に連結される。プル及び/又はプッシュ要素11は、ばね力による弾性でシャフトヘッド1に摺動して結合される生体組織用クリップ4が、前述の図1の機構によって摺動する放出手段に連結される。
【0021】
具体的には、図2aに示すように、シャフトヘッド1は、取付けられた状態で硬質管状シャフト6の遠位端部の部分を取り囲む摺動部分1a(望ましくはシリコンノズル)を有するキャップ(プラスチック材からなる)から構成される。
【0022】
本実施例において、キャップ1は、摺動部分1aに全体的に接続(クリップ)される拡張スリーブ(拡張スリーブの部分)3の内部またはこれを含むシース側から、摺動部分1aの軸方向距離に形成される。また、キャップ1は摺動部分1aに一体に接続または接着、あるいは溶接される。図1によって詳述されたように、本発明の生体組織用クリップ4は、拡張スリーブ3上に圧入されるように構成される。拡張スリーブ3は管状シャフト6の遠位端部の表面から軸方向に突出されることで、その前方の端部で半径方向の外側に向かって丸くなるカップ形状のスリーブ部分を形成する。
【0023】
摺動部分1aは管状シャフト6の遠位端部上で摩擦力によって摺動する。摺動部分は、接着または押圧、あるいは成型によって管状シャフト6と共に形成される。
【0024】
本発明の拡張スリーブ3は、シース側のキャップまたはスリーブ壁に、拡張スリーブの遠位端部の表面から軸方向に形成される前方溝7を含む。前方溝は、拡張スリーブ3の遠位前方側からピッチ円または鎌形状(円周状)のスリットのように開放され、溝の底は軸方向の後方地点、望ましくは略拡張スリーブ3の軸方向中心の部分にストッパー部8を形成する。前方溝7の半径は拡張スリーブ3の外側の半径より大きく形成されることで、スリーブ壁は円周方向に所定の距離離隔された2つのスリットを得ることができる。このような前方溝のスリットを形成することで、キャップのシース壁は、この領域で長手方向に分割され、これによって半径方向の外側の溝壁を規定する一種のタブまたは舌状部9がキャップ壁の外部に形成される。
【0025】
図2aに示すように、上記のような前方溝を提供する他の実施例は、軸方向に湾曲するタブまたは舌状部の付属構造物として、その根元はキャップと一体に形成され、キャップのシース壁からの半径距離に溝を形成しながら軸方向に対して拡張スリーブの方向に延長される。したがって、この場合、シース壁は(上述のように)分割されないが、タブ形態の構成がキャップのシース壁上に導かれる。このタブは、断面寸法が非常に狭いので、断面が直線状(半径方向ではなく)にすることができる。タブは、必ずしもキャップの外周に沿って形成する必要はない。また、タブの平面形状は任意に大きく設計することができる。即ち、より大きい強度を得るようにタブの根元(タブとキャップの間の遷移領域)の方向に厚くまたは広くなるようにすることができる。また、タブの根元自体が最大強度を得るように、実施例の範囲内で自由に寸法を設計することができる。
【0026】
最終的にタブ9が如何なる製造変化により形成されるかに関わらず、本発明によれば、タブはストッパー部8を構成する溝の底からキャップ1または拡張スリーブ3の遠位端部の表面方向に延長されるが、このときタブの丸い開放縁部は拡張スリーブ3の遠位前方縁部と対向するように軸方向に再配置される。
【0027】
図2aに示すように、前方溝7はキャップの中心軸に正確に平行するようには延長されないが、挿入されたクリップ4がより容易に前方に摺動できるように、中心軸に向かって遠位端部の表面方向に傾斜する。また、溝7は直線型ではないが、溝壁、少なくとも外側溝壁は軸方向に若干湾曲され、溝7、少なくともタブ9はその中心軸部分で半径方向に対し外側にアーチ形態を構成する。このような図1による機構によって、生体組織用クリップ4が摺動して保持される動作が幾何学的に許容され、容易になる。
【0028】
タブ9の軸方向前方端部には、細線11、ケーブルまたは組織が溝の内部からキャップ1の外部に向かって導かれて固定される半径方向の外側貫通孔10が設けられる。細線11、ケーブルまたは組織は前記プル要素を構成する。望ましくは細線の一方の端部はタブの外側で結んで結び目を作ることで、細線11が半径方向の貫通孔10から引出されないようにする。また、前記貫通孔10に実質的に半径方向に対向する位置で、即ち軸方向に突出された拡張スリーブ3の遠位端部領域で、キャップ1には、細線11が溝の内部から拡張スリーブ3の内部へと導かれる半径方向の内側貫通孔12が設けられる。この場合、溝を横切るスレッドの部分はクリップに用いられる前記開放/引出手段を形成する。
【0029】
図2aから分かるように、内側貫通孔12は管状シャフト6の遠位端部より前方の軸方向に提供され、内側貫通孔12から抜け出る細線11がシャフト端部の表面に開放されている機能チャネル(ガイド部)42内に入り込むようにし、機能チャネルはプル要素11の前記ガイド部を構成する。
【0030】
また、管状シャフト6は遠位端部の領域(即ち、キャップ1の直前領域)で傾斜または曲げられ、拡張スリーブ3によって規定される生体組織用クリップ4に対する放出方向が、管状シャフトに対して固定された角度(0°より大きい角度)で延長される。
【0031】
以下、生体組織用クリップ4に対する保持及び引出機能を含む本発明による医療機器の操作モードについて詳しく説明する。
【0032】
例えば、図1の生体組織用クリップ4を予め決められた位置に移動させるためには、先ず、生体組織用クリップはシャフトのキャップ1の拡張スリーブ3上で引張られる必要がある。このために、生体組織用クリップ4の下顎部及び上顎部は手動で開けられた後、クリップ4が拡張スリーブ3の丸い前方縁部に圧入されて取付けられる。生体組織用クリップ4の後方縁部がシャフトのキャップ1の前方溝7に挿入されることで、細線11はシャフト6に提供された機能チャネル30の外部へと引っ張り出される。
【0033】
最終的には、クリップ4を押入れると、クリップが溝の底8と接触されるときに停止状態となり、このときクリップ4及び引出された細線11は、図2に示す位置をとる。即ち、この位置で、クリップ4はキャップ1上に完全に密着され、管状シャフト6を介在して管腔臓器内に導入することができる。細線11はクリップ4の後方縁部をU字状に包むことになる。
【0034】
本発明による直腸医療器具が管腔臓器内の患部に到達すると、拡張スリーブ3は臓器壁によって押圧される。クリップ4を取り外す場合は、機能チャネル42を介在して近位の操作レバー41に導かれる細線11が操作レバー41の長手方向の変位分引かれることで、前方溝7を半径方向に横切る細線の部分が減少する。細線11が外側貫通孔10に固定されるので、滑車の原理により適切な比率でクリップ4に軸方向の力を加える。これによってクリップ4は内視鏡キャップ1の遠位端部方向に配置される。前方拡張スリーブ縁部の外側の丸い部分と前方溝7(特に、タブ9)のなめらかな弓形の成型物は、拡張スリーブ3の前方縁部の上でクリップ4の摺動を容易にし、細線11を介在して作用される最大変位力をさらに減少させる。クリップ4の後方縁部が前方溝7を離れ、これ以上タブ9により固定されなくなると、クリップ4に蓄えられたバイアスされた力はクリップ4を拡張スリーブ3から取り外すようにし、臓器壁は拡張スリーブ3の直前領域に挟まれるようになる。
【0035】
本明細書では、図2の移動可能に支持される操作レバー41の代わりに、図3のようにハンドル2の把持部のヒンジを介在して旋回されるときに、細線11が連動して把持部40bに向かって引かれるレバー41を設けることができる。
【0036】
図3及び図4は、本発明の他の実施例を図示したものであり、以下では前記実施例と異なる特徴だけを説明する。
【0037】
図3及び図4から分かるように、本発明の第2の実施例の開放装置は、拡張スリーブ3上で引張られ、シャフトのキャップ1の中心領域から外側のショルダー51に隣接するストリップリング50から構成される。別の実施形態として、ストリップリング50は、前述の実施例による前方溝の底に軸方向に隣接することができる。
【0038】
しかし、第2実施例では何らタブまたは前方溝を有しない。その代わりに、細線11が導かれて固定される貫通孔を通してストリップリング50(長手方向に)に導入され、前述の内側貫通孔を介在して導かれる細線はストリップリング50によって直接締められる。また、拡張スリーブ3の外側円周の軸方向バー53または軸方向溝が、ストリップリング50または軸方向内部バーの軸方向内部溝で噛合い、ストリップリング50のための軸方向ガイドを構成する。他の形状に関しては、ストリップリング50は、生体組織用クリップがリング50に実質的に密着して取付けられることで、拡張スリーブ3上に予め決められた(回転)位置を導入するように生体組織用クリップに対応して構成される。また、2つの細線は勿論2つの機能チャネル42に適用することができる。
【0039】
以下、図4を参照して本発明の第2実施例の医療機器の機能について説明する。
【0040】
拡張スリーブ3が臓器壁の患部に付着すると(傾斜された管状シャフト6が拡張スリーブ3の広い領域への付着を容易にする)、生体組織用クリップ4が引出される。このために、細線11が管状シャフト6に沿って引張られることで、ストリップリング50は拡張スリーブ3の遠位前方縁部の方向に前方移動する。その結果、クリップ4は、ばね力によって拡張スリーブ3の遠位前方縁部上から取り外され、クリップ4は顎部の間に臓器組織が挟まれるまで前方移動する。
【0041】
次に、前記細線に対するプル及び/又はプッシュ要素の実施例について説明する。
【0042】
これまでは、生体組織用クリップ4に用いる開放/引出手段は、細線11を引く動きによって作動していた。しかし、操作レバー41の動作がプッシュ要素を押す動きとなり、開放及び引出手段が引かれるのではなく前方に押される場合を含むことができる。この実施形態は、図4に示される。この場合、例えばワイヤまたは柔軟な押し出し棒60は管状シャフト6で横方向に配置され、遠位端部がストリップリング5に連結される2つのガイドチャネル42に支持される。ヒンジが形成されるか、または移動可能に支持される操作レバー41が旋回/シフトされると、この動きは2つの押し出し棒60によりストリップリング5に伝えられ、これによってクリップ4が開放される。
【0043】
最後に、図5により、第2実施例に基づく本発明の第3の実施例を説明する。したがって、以下では第2実施例とは異なる特徴だけを説明することにする。
【0044】
図5に示すように、硬質管状シャフト6は遠位端部の部分で単純に傾斜されるのではなく、この領域で雁首状またはS字形状に形成され、このとき拡張スリーブ3によって規定される放出方向は、管状シャフト6の中心領域及び隣接領域の直線型管状シャフトの部分に対して所定の角度(0°より大きい角度)をなす。
【0045】
このような形状のために、拡張スリーブ3は、患者の直腸内に挿入された器具が臓器壁を拡張させず、またはわずかに拡張させるだけで済むように、管状シャフト6の(仮想の)中心線に対して平行となるように再調整される。
【0046】
また、図6に示すように、ハンドル部40の把持部40bは管状シャフト6に対して折りたたむことができる。このために、把持部40bはハンドル40の取付部40aにヒンジを介在して連結され、必要であればそこに固定される。把持部40bを折りたたむことで、挿入された器具の操作性を改善できるドライバー(ねじ回し)状のハンドルが得られる。
【0047】
図7及び図8は、本発明によって直腸医療器具のために特別に開発された生体組織用クリップを示す。
【0048】
このクリップ200は同じ歯状を有する上顎部210及び下顎部220を含む口腔型の固定手段から構成される。具体的には、本発明によるクリップ200は、シートまたは鋼板から一体にパンチングまたはレーザー処理される。クリップ200は、実質的に直径方向に対向し、それぞれが広いシート材からなる上顎部及び下顎部210、220と、上顎部及び下顎部210、220を連結させるために顎部に対向して90°にオフセットされて配置される2つの直径方向に対向するヒンジ部230、240を有する閉リングを含む。
【0049】
顎部210、220は、リングを横切って向い合う長手方向の縁部に、相互に嵌合する尖った突出端または歯250を有するように形成される。
【0050】
ヒンジ部230、240は、顎部210、220より狭く、円の円周に沿って内側に実質的に半円形になるように、即ちリングの中心方向に弓形を構成するように片状シート材から形成される。これによって、直径方向に対向する2つの半円形またはピッチ円状の突出部260、270が2つの顎部210、220のヒンジを形成するようにリングに形成される。
【0051】
また、リングは2つのヒンジ部の領域で略180°平坦な側面の上に曲げられるか、折りたたまれる。具体的には、2つのヒンジ部230、240は、半円形またはピッチ円状の突出部260、270が外側方向に、即ちリングの中心から離隔するように上顎部及び下顎部に対しそれぞれの遷移領域280、290でリングの平面に対して垂直に曲げられる。また、顎部210、220は円周の部分にわたりリングの平面に対して垂直方向であるが、ヒンジ部230、240とは反対方向に等しく曲げられ弓形をなす。
【0052】
このように弓形に形成することによって、ヒンジ部230、240(外側弓形)が顎部210、220の上方に位置し、顎部210、220方向に傾斜して放射状に外側方向に配列された3次元リングを構成する。また、本明細書において、クリップの材質は、少なくともヒンジ部230、240の領域及びクリップのリング全体にわたり弾性的であるものがさらに望ましい。
【0053】
図7の状態(弛緩状態)のクリップ200を弾性的に広げる場合、即ち顎部210、220を広げると、弾性的な変形が2つのヒンジ部230、240に伝えられ、半円形またはピッチ円状の突出部260、270が狭められる。これと同時に、ヒンジ部230、240がねじられて、突出部260、270が顎部の表面に対して90°の方向に回転される。2回の弾性的変形によって、予め決められた近接力により両顎部210、220にバイアスされたばねエネルギーが蓄えられる。
【0054】
最終的には、図7に示すように、顎部210の貫通孔300を通じて細線または類似の締め具要素(図示されない)が通される。この場合、生体組織用クリップ200は医療器具用アンカーなどとして用いることができる。
【0055】
図8は図7の生体組織用クリップ200の他の構成例を示すもので、以下では図7のクリップ200との幾何学的な差異点だけを説明する。
【0056】
図8のクリップでは、ヒンジ部230、240の半円形またはピッチ円状の突出部260、270は伸ばされた状態で外側方向に、即ちリングの中心から遠ざかるように規定されることで、リングの円周で直径方向に対向する2つの突出部を構成する。ヒンジ部230、240が前述されたように曲がっていると、元々外部に向かっている突出部が内側方向に向けられる。その結果、クリップ200の最終状態において、図8のヒンジ部230、240の突出部260、270は、図7のヒンジ部の突出部とちょうど180°で向き合うようになる。図8の生体組織用クリップ200は、他のすべての幾何学的特徴が図7と同一であり機能も図7のものと対応することから、前述の説明を参照することにして、その詳細説明を省略する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐屈曲性管状シャフト(6)の近位端部に取付られたハンドル部(40)と、耐屈曲性管状シャフト(6)の遠位端部に固定又は形成されたキャップ(1)と、前記キャップ(1)にばね力によって弾性結合され、開放/引出手段によって前記キャップ(1)から引出されるように構成された生体組織用クリップ(4、200)と、を含み、
管状シャフト(6)の遠位端部が前記キャップの直前領域で傾斜され、及び/又は、前記キャップ(1)自体が予め決められた固定角度に傾斜されて、前記キャップ(1)によって規定されるクリップ(4、200)の引出方向が前記管状シャフトの軸に対し所定の角度に規定されていることを特徴とする直腸医療器具。
【請求項2】
前記耐屈曲性管状シャフト(6)の遠位端部領域は、S字形状に曲がっていることを特徴とする請求項1に記載の直腸医療器具。
【請求項3】
前記開放/引出手段は、前記管状シャフト(6)の外部に固定されたそれぞれの機能チャネル(42)内に前記管状シャフト(6)に沿って延長されて、近位端部で前記ハンドル部(40)の操作レバー(41)に連結され、遠位端部で前記キャップ(1)上で軸方向に移動可能に導かれるスリップリング(50)に連結される少なくとも1つのプル及び/又はプッシュ要素(11、60)を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直腸医療器具。
【請求項4】
2つの機能チャネル(42)は前記管状シャフト(6)の外部に直径方向に対向するように装着され、
前記プル及び/又はプッシュ要素(11、60)は、前記機能チャネルにおいて軸方向に移動可能に支持され、張力及び/又は押力を前記スリップリング(50)に軸対称に印加する2つの柔軟なワイヤ又はシャフトであることを特徴とする請求項3に記載の直腸医療器具。
【請求項5】
前記キャップ(1)の外部に、前記キャップ(1)と外側キャップ壁の間に前記クリップ(4、200)が挿入される溝状のギャップ(7)を形成する長手方向に延長されたタブ(9)を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直腸医療器具。
【請求項6】
前記プル及び/又はプッシュ要素は、前記クリップ(4)が摺動しながら引出されるとき、遠位端部が前記溝状のギャップを横断するように導かれて前記タブ(9)に固定され、前記操作レバー(41)の操作時に引張られるように近位端部で前記ハンドル部(40)の操作レバー(41)に取付けられ、前記ギャップ(7)内の細線部分が減少して前記クリップ(4、200)を前方に引出す細線(11)であることを特徴とする請求項5に記載の直腸医療器具。
【請求項7】
前記ハンドル部(40)は、前記管状シャフト(6)に対して角度を調整可能な把持部(40b)を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の直腸医療器具。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の直腸医療器具に用いる生体組織用クリップであって、
2つのヒンジ部(230、240)を介在して弾性的に連結される上顎部及び下顎部(210、220)を含み閉リング状に形成され、
前記リングの両前記ヒンジ部は、ピッチ円状の突出部(260、270)を有し、
前記ヒンジ部(230、240)は、それぞれの遷移領域(280、290)より前記リングの平面に垂直で略160°〜180°前記顎部(210、220)に向かって曲げられていることを特徴とする生体組織用クリップ。
【請求項9】
前記突出部(260、270)は、前記ヒンジ部(230、240)が曲げられた状態で半径方向に内側又は外側に向かって設けられていることを特徴とする請求項8に記載の生体組織用クリップ。
【請求項10】
前記顎部(210、220)は、前記ヒンジ部(230、240)の屈折方向と反対方向に前記リング平面に垂直して曲げられることにより突出部をなすことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の生体組織用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−120886(P2011−120886A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−242901(P2010−242901)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(510285610)オヴェスコ エンドスコピー アーゲー (6)
【Fターム(参考)】