説明

生体試料測定装置

【課題】試料空間に誤った方法で生体試料が導入された場合に測定が開始されることを防止することが可能な、生体試料測定装置を提供する。
【解決手段】センサ部24は、試料空間の内部には、測定電極対と、測定電極対よりも導入口から離れた位置に配置された感知電極対とが設けられている。制御部23は、測定電極対に生体試料が接触したか否かの判断と、感知電極対に生体試料が接触したか否かの判断とを交互に繰り返す。制御部23は、測定電極対に生体試料が接触したと判断された後に感知電極対に生体試料が接触したと判断されたことを条件として、測定電極対が出力した電流に基づいて、生体試料に関する測定データを生成する。測定データが示す情報は、表示部21に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入された生体試料を測定可能な生体試料測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病の患者が各国において年々増加している。糖尿病の治療においては、例えば、インスリン療法がある。インスリンは血糖値をコントロールする薬物として知られている。この療法においては、糖尿病の治療薬であるインスリンが糖尿病患者に投与される。インスリンを投与する必要性は、糖尿病患者の血糖値に基づいて判断される。このため、糖尿病患者にとって、血糖値の把握が必須である。血糖値とは、血液中のグルコース濃度である。血糖値は、血液中のグルコース濃度を測定することによって得られる。よって、糖尿病患者が、家庭において簡単に扱える簡易型の自己血糖測定装置の開発が盛んに行われている。
【0003】
前述されたような簡易型の自己血糖測定装置において、バイオセンサを用いた方法が知られている(特許文献1〜4)。バイオセンサには、酵素が利用される。酵素の特異的な反応を利用して、血液中のグルコースが定量される。グルコースの定量法は、グルコースをグルコースオキシターゼ(以下、「GOD」と略されることがある。)によってグルコン酸に分解するGOD法と、グルコースをグルコースデヒドロゲナーゼ(以下、「GDH」と略されることがある。)によって、グルコノラクトンに分解するGDH法と、が知られている。
【0004】
酵素がグルコースを特異的に分解するときに、電子が発生する。発生した電子は、バイオセンサの電極対の作用極に移動する。この電子の動きにより、バイオセンサの電極対に電流が流される。この電流が血糖測定装置に検知されて血液中のグルコースの含有量が算出される。つまり、血糖値が得られる。また、電子を運ぶ電子メディエータが存在することにより、安定した測定値が得られる。電子メディエータとして、例えば、フェリシアン化カリウム、ヘキサアンミンルテニウムやキノン誘導体類等の有機化合物、又は有機−金属錯体などが挙げられる。
【0005】
血糖測定装置に使用されるバイオセンサには、血液を保持する試料空間が形成されている。測定の前段階において、血液は毛細管作用により試料空間に導入される。試料空間内部には上述された電極対が露出しており、導入された血液は、電極対の間に保持された状態となる。
【0006】
また、このような自己測定系については、血糖の測定の他、血液中の糖化アルブミン濃度および糖化ヘモグロビンの測定や、唾液中のアミラーゼ濃度の測定、尿中のアルブミン(変性したものおよび断片化されたものを含む)濃度の測定等にも応用されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−97877号公報
【特許文献2】特開2005−43280号公報
【特許文献3】特開2005−37335号公報
【特許文献4】特開2002−107325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的なバイオセンサの試料空間は、生体試料を導入するための導入口と試料空間の空気を逃がすための空気穴とによって外部空間と繋がっている。生体試料中の特定物質の濃度を測定する際、自己測定者は、採取した生体試料をバイオセンサの導入口に接触させる。毛細管作用により、生体試料が導入口から試料空間へ導入されると共に、試料空間内部の空気が空気穴より外部に放出される。自己測定者は、生体試料が試料空間に導入された後、生体試料測定装置の操作ボタン等を操作して測定の開始を指示する。しかしながら、生体試料測定装置の操作に不慣れな自己測定者が、誤った方法で試料空間に生体試料を導入してしまうケースが少なくない。特に、空気を逃がすための空気穴に血液を接触させ、空気穴から生体試料を導入してしまうことがある。生体試料が通常想定される穴とは異なる穴から導入された場合、試料空間に十分な量の血液が導入されず、測定が失敗したり、正確な測定結果が得られないおそれがある。
【0009】
一部のバイオセンサは、上述された電極対(以下、測定用の電極対とする。)とは異なる、導入された生体試料を検知するための電極対(以下、検知用の電極対とする。)をさらに備えている。検知用の電極対は、試料空間内部において、測定用の電極対よりも導入口から離れた位置に配置されている。したがって、導入口から生体試料が正しく導入された場合は、測定用の電極対に生体試料が接触した後に、検知用の電極対に生体試料が接触した状態となる。生体試料測定装置は、測定を行う際に検知用の電極対の間に電圧を印加する。検知用の電極対に生体試料が接触している場合、検知用の電極対には生体試料を介して微弱な電流が流れる。生体試料測定装置は、その電流を検知することで試料空間に十分な生体試料が導入されたと判断し、測定のため制御を開始する。
【0010】
しかしながら、誤って空気穴等から生体試料が導入された場合、測定用の電極対の間に十分な生体試料が満たされていないにも関わらず、検知用の電極対の間に生体試料が満たされた状態となることがある。その場合、検知用の電極対からの電流を検知した生体試料測定装置は、試料空間に十分な生体試料が導入されたと判断し、測定のための制御を開始してしまう。測定用の電極対の間に十分な血液が満たされていないため、測定が失敗したり、正確な測定結果が得られないおそれがある。
【0011】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、試料空間に誤った方法で生体試料が導入された場合に測定が開始されることを防止することが可能な、生体試料測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る生体試料測定装置は、液状の生体試料を導入可能な試料空間が形成され、導入された生体試料にそれぞれ接触可能な一対の測定電極と一対の感知電極とが当該試料空間の内部に設けられたセンサ部と、表示画面を備え、当該表示画面に画像を表示可能な表示部と、操作者の操作を受け付けて、各種の操作信号を出力する操作部と、上記センサ部、上記表示部、及び上記操作部とそれぞれ電気的に接続され、上記操作信号に基づき、上記センサ部及び上記表示部の動作を制御する制御部と、を備えたものである。上記試料空間は、生体試料が導入される導入口と、生体試料の導入に伴って上記試料空間内の空気が外部に排出される空気穴とによって外部空間と連続し、且つ上記一対の測定電極の少なくとも一部が上記一対の感知電極よりも上記導入口に近い位置に設けられたものである。上記制御部は、上記一対の測定電極に生体試料が接触したか否かの判断と、上記一対の感知電極に生体試料が接触したか否かの判断とを交互に繰り返す第1制御と、上記第1制御において、上記一対の測定電極に生体試料が接触したと判断された後に上記一対の感知電極に生体試料が接触したと判断されたことを条件として、上記一対の測定電極が出力した生体試料に関する測定信号に基づいて、数値表現された測定データを生成する第2制御と、上記測定データが保持する情報を上記表示部に表示させる第3制御と、を実行する。
【0013】
本発明における生体試料測定装置とは、生体試料に基づく固有の電気信号を発生させ、生体試料に関する情報を被験者に認識可能とするものである。生体試料とは、生物の体内から採取された物質であり、例えば、生体試料中の特定の成分の濃度が挙げられる。生体試料中の特定の成分の濃度としては、例えば、生体試料として血液が使用される場合は、血液中のグルコース濃度、血液中の糖化アルブミンの濃度および血液中の糖化ヘモグロビン濃度等が挙げられ、また、例えば、生体試料として唾液が使用される場合は、唾液アミラーゼの濃度が挙げられる。また、例えば、生体試料として尿が使用される場合は、アルブミン(変性したものおよび断片化されたものを含む)の濃度が挙げられる。
【0014】
測定の前段階において、制御部は、第1制御を実行する。即ち、一対の測定電極に生体試料が接触したか否かの判断と、一対の感知電極に生体試料が接触したか否かの判断とを交互に繰り返す。センサ部において、一対の測定電極の少なくとも一部が一対の感知電極よりも導入口に近い位置に設けられているため、被験者が導入口から正しく生体試料を導入した場合、まずは、一対の測定電極間に生体試料が接触し、続けて一対の感知電極間に生体試料が接触する。したがって、制御部は、一対の測定電極に生体試料が接触したと判断した後に、一対の感知電極に生体試料が接触したと判断する。これを条件として、制御部は、自動的に、あるいは操作部からの規定の操作信号を受けて第2制御を実行する。即ち、一対の測定電極が出力した測定信号に基づいて、数値表現された測定データを生成する。測定信号は、例えば生体試料中の特定の成分の化学反応によって生じる電気信号である。制御部は、測定信号の大きさに基づき、所定の演算を行うことで当該成分の例えば濃度等を算出して測定データとする。制御部は、自動的に、あるいは操作部からの規定の操作信号を受けて第3制御を実行する。即ち、測定データが保持する例えば濃度等の情報を上記表示部に表示させる。
【0015】
一方、被験者が誤って空気穴から生体試料を導入した場合、測定電極間に生体試料が満たされていないにも関わらず、感知電極間に生体試料が満たされることがある。この場合、制御部は、一対の測定電極に生体試料が接触したと判断していない状態で、一対の感知電極に生体試料が接触したと判断する。したがって、第2制御は実行されず、測定データを生成する演算は行われない。以上より、試料空間に正しく生体試料が導入された場合には測定が開始され、誤った方法で生体試料が導入された場合には測定が開始されない。それにより、誤った測定結果が表示画面に表示されてしまうことを回避することができる。
【0016】
(2) 上記第1制御において、上記制御部は、上記一対の感知電極間又は上記一対の測定電極間に電圧を印加して得られた検知信号に基づいて、上記一対の感知電極又は上記一対の測定電極に生体試料が接触したか否かを判断してもよい。
【0017】
検知信号は、例えば電極に流れる電流である。電極間に生体試料が満たされている場合、電極間に電圧が印加されることで、制御部には電極からの微弱な電流が流れる。制御部は、この電流を検知して電極に生体試料が接触したか否かを判断することができる。
【0018】
(3) 上記制御部は、上記第1制御において、上記一対の測定電極に生体試料が接触したと判断しておらず、かつ上記一対の感知電極に生体試料が接触したと判断したことを条件として、上記表示部にエラー表示を行わせてもよい。
【0019】
ここで、本発明におけるエラー表示とは、被験者に、異常を伝えるためのあらゆる表示を指す。エラー表示は、例えばエラーメッセージや、警告を想起させるマークを含んだ表示であってもよい。このような表示が行われることで、誤った操作を行ったことを被験者に通知することができ、再度、正しい方法による生体試料の導入を行うことを被験者に促すことができる。
【0020】
(4) 上記一対の測定電極の少なくとも一方には、生体試料中の特定の成分の化学反応を誘発する物質が固着されていてもよい。上記測定信号は、上記化学反応により生じた電気信号であってもよい。
【0021】
(5) 上記センサ部は、少なくとも一部が上記制御部に対して着脱可能なものであってもよく、上記制御部は、上記センサ部が上記制御部と電気的に接続されたことに伴い、上記第1制御を実行するものであってもよい。
【0022】
センサ部を着脱可能とすることで、測定ごとにセンサ部を容易に交換することができるため、衛生的であると共に、残留した生体試料により2回目以降の測定が失敗することを防止することができる。また、センサ部の装着により自動的に第1制御が実行されるため、第1制御が実行されていない状態で被験者が生体試料を導入してしまうことを防止することができる。即ち、誤って空気穴から生態試料が導入されたことが確実に検知される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る生体試料測定装置によると、試料空間に誤った方法で生体試料が導入された場合に測定が開始されることを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、血糖測定装置10の斜視図である。
【図2】図2は、血糖測定装置10の機能単位の構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、バイオセンサ12の斜視図である。
【図4】図4は、バイオセンサ12の分解斜視図である。
【図5】図5は、バイオセンサ12の試料空間71周辺を示した要部拡大図である。
【図6】図6は、血糖値の測定の際に制御部23が行う制御を示したフローチャートである。
【図7】図7は、正しい方法によって試料空間71に血液80が導入された場合において、血液80が試料空間71に進入する途中過程を示した要部拡大図である。
【図8】図8は、正しい方法によって試料空間71に血液80が導入された場合において、血液80の導入が完了した状態を示した要部拡大図である。
【図9】図9は、誤って空気穴61から血液80が導入された状態を示した要部拡大図である。
【図10】図10は、本発明の変形例において、血糖値の測定の際に制御部23が行う制御を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態では、生体試料が血液であり、生体試料中の特定成分がグルコースである態様、いわゆる血糖測定装置を用いた測定の態様を挙げているが、この態様は本発明の一例に過ぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。
【0026】
[血糖測定装置10の概略構成]
図1に示されるように、血糖測定装置10(本発明の生体試料測定装置に相当)は、本体11に対してバイオセンサ12が着脱自在に構成されたものである。本体11は、薄平な箱形状である。本体11には、ディスプレイ13(本発明の表示画面に相当)及び3つの操作ボタン14A,14B,14Cが設けられている。ディスプレイ13は、後述される表示部21の一部をなすものであり、血糖測定装置10の操作に必要な各種の文字や画像を表示するためのものである。操作ボタン14A,14B,14Cは、後述される操作部22の一部をなすものであり、操作者(上述の自己測定者に相当、以下、糖尿病患者とも称される。)に押下されることによって、所定の操作信号を発生させる。
【0027】
本体11の側面にはセンサ挿入口15が設けられている。センサ挿入口15は、バイオセンサ12が挿入されて保持されるためのものである。同図には現れていないが、センサ挿入口15の奥には電極が設けられており、その電極を通じて後述される本体11の制御部23とバイオセンサ12とが電気的に接続される。バイオセンサ12は、測定対象の生試料である血液(本発明の生体試料に相当)が導入され、血液中のグルコースに化学的な反応を生じさせるものである。グルコースの化学的な反応によって生じた電流が、制御部23によって電気的に処理された結果、ディスプレイ13には、血液中のグルコース濃度、即ち血糖値が表示される。
【0028】
続けて、血糖測定装置10の詳細な構成が説明される。
【0029】
図2に示されるように、血糖測定装置10は、表示部21と、操作部22と、制御部23と、センサ部24とに機能的に大別される。表示部21、操作部22、及びセンサ部24は、バス25を通じて、制御部23と電気信号を送受信可能に接続されている。表示部21、操作部22、制御部23、及びセンサ部24を構成する電子回路が、薄平な箱形状の筐体に収容されたものが本体11である。表示部21、操作部22、制御部23、及びセンサ部24は、共通の電子基板上に一体に形成されていてもよい。上述されたバイオセンサ12は、センサ挿入口15に装着された状態でセンサ部24の一部をなすものである。血糖測定装置10を構成する各部の詳細が以下に説明される。
【0030】
[表示部21]
表示部21は、上述されたディスプレイ13と、制御部23に電気的に接続されてディスプレイ13の表示を制御する周辺回路とを有する。ディスプレイ13は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。制御部23及び周辺回路からの制御により、ディスプレイ13には文字や画像が表示されうる。例えば、ディスプレイ13には、糖尿病患者が、血糖測定装置10の操作に使用する操作画面が表示される。操作画面は、制御部23及び周辺回路からの制御によって動的に変化するものである。例えば、関連する操作のまとまりごとに複数の操作画面が用意されていてもよい。糖尿病患者は、操作ボタン14A,14B,14Cの押下により、各操作画面における操作を行ったり、操作画面を別のものに切り換えることができる。糖尿病患者は、特定の操作画面における操作により、血糖値の測定を開始したり、測定された血糖値をディスプレイ13に表示させることができる。
【0031】
[操作部22]
操作部22は、本体11に設けられた操作ボタン14A,14B,14Cと、各操作ボタン14A,14B,14Cの押下に対応した所定の操作信号を発生させる周辺回路とを有する。糖尿病患者は、操作画面を確認しながら操作ボタン14A,14B,14Cを押下する。例えば、操作ボタン14Cが操作画面上のカーソル移動のための入力を受け付け、操作ボタン14Bがキャンセルのための入力を受け付け、操作ボタン14Aが決定のための入力を受け付ける。また、操作ボタン14A,14B,14Cには、特定の機能を直接呼び出すためのショートカットが割り当てられていてもよい。各操作画面において、操作ボタン14A,14B,14Cが所定の順序で押下されることで、操作部22は、各種の操作信号を出力する。操作信号を受けて、制御部23は操作信号に応じた各種制御を実行する。なお、操作ボタン14A,14B,14Cの数などは適宜設計されるものである。また、操作ボタン14A,14B,14Cは、必ずしも互いに独立した押釦スイッチである必要はない。例えば、感圧式又は静電式のタッチパネルセンサーがディスプレイ13に重畳されて、操作ボタン14A,14B,14C及びディスプレイ13は、タッチパネルディスプレイとして構成されてもよい。
【0032】
[制御部23]
制御部23は、表示部21、操作部22、及びセンサ部24と電気的に接続されたものである。制御部23は、各種の制御や演算を行うCPUやRAM、各部と電気信号を交換するためのバス25、制御用のプログラムや血糖値のデータを記憶するEEPROM、及びセンサ部24を通じてバイオセンサ12の電極に生じた電気信号を検知する検知回路等を有している。また、制御部23は、必要に応じてCPUを補助するコプロセッサやALU等を備えていてもよい。また、制御部23は、時刻信号を生成する時計を備えていてもよい。
【0033】
操作ボタン14A,14B,14Cの押下に基づく操作部22からの各種の操作信号よって、CPUは、EEPROMに記憶された操作信号に対応する各種のプログラムをRAMにロードして実行する。ここで実行されるプログラムは、例えば、血糖値の測定を実行するプログラム、及び測定された血糖値をディスプレイ13に表示させるプログラム等である。血糖値の測定を実行するプログラムは、例えば、検知回路が受信したセンサ部24からの電気信号に基づき、CPUに規定の数式に基づく演算を行わせる機能等を有している。これらのプログラムは、各部の詳細な動作を制御する一連のモジュール群を含むものである。モジュールの一例は、例えばディスプレイ13の表示を制御するモジュールやバス25による電気信号の交換を制御するモジュール等である。制御部23は、これらのプログラムに基づき、血糖測定装置10の動作を制御する。血糖値の測定を実行するプログラムによって血糖測定装置10が行う制御の詳細については後述される。
【0034】
[センサ部24]
センサ部24は、上述されたバイオセンサ12と、本体11の内部に設けられ、センサ挿入口15に挿入されたバイオセンサ12と電気的に接続される周辺回路とを有している。センサ部24は、バイオセンサ12で生じた電気信号を必要に応じて整形及び加工して制御部23の検知回路に送信する。また、センサ部24は、制御部23の制御に基づき、バイオセンサ12の電極間に規定の電圧を印加することができる。バイオセンサ12の詳細な構成が以下に説明される。
【0035】
[バイオセンサ12]
図3及び図4に示されるように、バイオセンサ12は、第1基板30と、第1測定電極41と、第2測定電極42と、第1感知電極45と、第2感知電極46と、スペーサ50と、第2基板60と、を有する。これらは、上側から順に、第2基板60、スペーサ50、各電極、第1基板30の順序で、上下方向91に積層されて一体にされている。但し、第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46の上部には、一部スペーサ50が存在しない領域(間欠部51)が存在し、第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、第2感知電極46、及び間欠部51により、試料空間72等が形成される。試料空間72は、試料としての血液が導入される内部空間であり、導入口71及び空気穴61を通じて、外部空間と連続している。第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46は、第1基板30上にそれぞれ配置されている。この上で第1基板30は、第2基板60にスペーサ50を介して接着されている。なお、図3及び図4に示される上下方向が上下方向91と称され、バイオセンサ12の長手方向が長手方向92と称され、バイオセンサ12の短手方向が短手方向93と称される。また、長手方向92における導入口71が開口した側の端がバイオセンサ12の先端側と称され、その反対側の端がバイオセンサ12の基端側と称される。
【0036】
[第1基板30]
第1基板30は、電気絶縁性の材料から構成される矩形の平板である。第1基板30の各寸法は、当業者が適宜決定できるものであるが、その一例として、第1基板30の長手方向102、短手方向93の寸法、即ち長方形の長辺、短辺の長さは、それぞれ約3cm、約1cmである。また、第1基板30の上下方向91の寸法、即ち厚みは約2mmである。第1基板30の片面には、第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46がそれぞれ積層されている。電気絶縁性の材料として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のポリエステルや、フッ素樹脂及びポリカーボネイトなどが挙げられる。第1基板30には、これらの電極を挟んで、スペーサ50が積層されている。
【0037】
[第1測定電極41,第2測定電極42,第1感知電極45,第2感知電極46]
第1基板30の内側の面には、導電性の金属より形成された第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46が積層されている。第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46は、長手方向92に沿って概ね平行に延出されており、第1基板30の基端まで続いている。第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46の基端側の一部は、外部に露出されており、この露出された部分がそれぞれセンサ挿入口15の奥に設けられた電極と接触するものである。即ち、バイオセンサ12が本体11に装着された際、第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46は、センサ部24の周辺回路を通じて制御部23と電気的に接続される。以下、第1測定電極41と第2測定電極42との組が、測定電極対43(本発明の一対の測定電極に相当)とも称される。また、第1感知電極45と第2感知電極46との組が、感知電極対47(本発明の一対の感知電極に相当)とも称される。
【0038】
試料空間72周辺が拡大されたものが図5に示される。第1測定電極41及び第2測定電極42は、それぞれ短手方向93の内側に突出する鍵状部44を先端に有する。それぞれの鍵状部44は、長手方向92に互いにオフセットされて配置されている。互いの鍵状部44は、長手方向92に僅かに離間されており、鍵状部44の間には一定間隔の隙間が介在されている。各鍵状部44は、間欠部20に対応するように位置されている。バイオセンサ12に正常に血液が導入された場合、血液が鍵状部44の間の隙間を跨いで各鍵状部44にそれぞれ接触する。
【0039】
第2測定電極42の鍵状部44には、血液中のグルコースを分解する酵素(本発明の生体試料中の特定の成分の化学反応を誘発する物質に相当)が固定化されている。この酵素として、GODやGDHが挙げられる。また、これらの酵素に加えて、補酵素や電子メディエータが固定化されていてもよい。このような補酵素として、例えば電子伝達体として働くピロロキノリンキノンやニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸などが挙げられる。また、電子メディエータとして、例えば、ルテニウムやオスミニウム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト等の遷移金属を含む化合物が挙げられる。これら酵素等の固定化は、酵素等が含まれる溶液が第2測定電極42に塗布されて乾燥することで実現されている。
【0040】
第1感知電極45及び第2感知電極46は、第1測定電極41及び第2測定電極42の鍵状部44よりも長手方向92における基端側に、一方の端部である接触領域48を有する。即ち、接触領域48は、第1測定電極41及び第2測定電極42の鍵状部44よりも、導入口71から遠い位置にある。第1感知電極45及び第2感知電極46は、それぞれ短手方向93における第1感知電極45と第2感知電極46との内側に並設されている。導入される血液は、導入口71からバイオセンサ10の基端側に向かって進入する。導入口71から導入された血液は、第1測定電極41及び第2測定電極42の鍵状部44にそれぞれ接触した後、第1感知電極45及び第2感知電極46の接触領域48にそれぞれ接触する。
【0041】
[スペーサ50]
スペーサ50は、第1基板30と第2基板60との間に介在された平板状の部材である。スペーサ50として、両面テープ又は接着剤等が用いられる。スペーサ50の長手方向92の寸法は、第1基板11の長手方向92の寸法よりも所定の長さだけ短い。後述される第2基板60の長手方向92の寸法についても同様である。この寸法の違いにより、第1基板30の基端側の一部が、スペーサ50及び第2基板60によってカバーされておらず、その一部において第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46が外部に露出されている。第1基板11の短手方向93の寸法は、第1基板11の短手方向93の寸法と同様である。また、上下方向91の寸法、即ちスペーサ16の厚みは約0.1mmである。図4に示されるように、スペーサ50は間欠部51を有する。間欠部51は、バイオセンサ12の先端から基端側に向かって約1cm延出し、短手方向93の中央周辺に約3mmの拡がりを持つ。即ち、スペーサ16は、矩形板状の平板の一部が間欠部20により切り取られた略凹形状となっている。間欠部51によって形成される第1基板11と第2基板17との間の間隙が、本実施形態において試料空間72と称される。但し、スペーサ50の各寸法はこれに限定されるものではなく、導入口71に接触した血液が、毛細管作用によって導入されるのに適した寸法であればよい。各電極の鍵状部44及び接触領域48は、それぞれ間欠部20に位置しており、試料空間23に露出されている。
【0042】
[第2基板60]
第2基板60は、第1基板30と同様の材料から製造される矩形の平板である。上述されたように、第2基板60の長手方向92の寸法は、スペーサ50と同様に第1基板11の長手方向92の寸法よりも所定の長さだけ短い。第2基板60の他の部分の寸法は、第1基板30と同様である。第2基板60を上下方向91に貫通するように空気穴61が開口されている、空気穴61は試料空間72と外部空間とを連続するものであり、試料空間72に血液が導入される際、試料空間72内部の空気を外部空間に逃がすためのものである。試料空間72に導入された血液は、導入口71と空気穴61との間に満たされる。空気穴61は、第1感知電極45及び第2感知電極46の接触領域48の上方に開口されている。
【0043】
[血糖測定装置10の動作]
続けて、糖尿病患者が血糖測定装置10を使用して血糖値を測定する際の、血糖測定装置10の詳細な動作が説明される。導入口71から正しく血液が導入された場合の動作が説明された後に、誤って空気穴61から血液が導入された場合の動作が説明される。
【0044】
[導入口71から血液が導入された場合の動作]
まずは、導入口71から正しく血液が導入された場合の血糖測定装置10の動作が説明される。糖尿病患者は、バイオセンサ12の基端側を、血糖測定装置10のセンサ挿入口15に挿入する。これにより、第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46の露出された基端側の一部が、それぞれセンサ挿入口15の内部の接点と接触する。こうして、第1測定電極41、第2測定電極42、第1感知電極45、及び第2感知電極46が、それぞれ制御部23と電気的に接続された状態となる。
【0045】
制御部23は、バイオセンサ12の各電極が接続されたことに基づき、以下に説明される制御を実行する。各電極が接続されたことを制御部23が検知する方法は、当業者が適宜決定することができる。例えば、制御部23は、各電極が接続されたことを電気的な手段によって検知してもよいし、センサ挿入口15に設けられた機械式又は光学式のセンサによって検知してもよい。
【0046】
バイオセンサ12が挿入されたことを検知した制御部23は、EEPROMに記憶された、血糖値の測定を実行するプログラムを起動する。このプログラムに基づき制御部23が実行する制御の詳細が、図6のフローチャートに示される。なお、このフローチャートは一例に過ぎず、同等の機能を実現するものであれば、細部が異なっていてもよい。また、フローチャートに示される制御は、全てがプログラムに基づき実行される必要はなく、少なくとも部分的に結線論理(Wired Logic)によって実行されてもよいし、アナログ電子回路によって実行されてもよい。フローチャートに基づき制御部23が行う制御の詳細が以下に説明される。
【0047】
処理の開始時において、制御部23は、変数Flgを「0」に初期化する。変数Flgは、「0」または「1」の値を取りうる変数であり、プログラムの中で測定電極対43に血液が接触したことを示すフラグとして使用されるものである。
【0048】
まず制御部23は、センサ部24を経由して、測定電極対43の間に規定の電圧を印加する(S1に相当)。制御部23は、当該電圧に基づき、測定電極対43に電流が流れたか否かを判断する(S2に相当)。糖尿病患者が、試料空間72に血液を導入していない段階では、測定電極対43の間は開放された状態となっているため、電流は検知されない。したがって、S2の判定は「NO」に分岐される。
【0049】
制御部23は、同様に、センサ部24を経由して、感知電極対47の間に規定の電圧を印加する(S4に相当)。制御部23は、当該電圧に基づき、感知電極対47に電流が流れたか否かを判断する(S5に相当)。糖尿病患者が、試料空間72に血液を導入していない段階では、感知電極対47の間は開放された状態となっているため、電流は検知されない。したがって、S5の判定は「NO」に分岐される。
【0050】
S5の判定が「NO」に分岐されることで、再びS1の制御が実行される。即ち、試料空間72に血液が導入されていない状態では、制御部23は、S1、S2、S4、及びS5の制御を順に繰り返す。S1、S2、S4、S5、及び後述されるS3の制御が、本発明における第1制御に相当する。なお、図6のフローチャートには示されていないが、糖尿病患者がセンサ挿入口15からバイオセンサ12を抜き出したり、操作ボタン14A,14B,14Cの押下により測定を中止を指示する操作を行った場合、制御部23は、本フローチャートに基づく制御を強制的に終了する。
【0051】
S1及びS2の制御とS4及びS5の制御とは、規定のタイミングごとに繰り返されてもよく、好適には、S1及びS2の制御とS4及びS5の制御とは、0.3秒ごとに交互に実行される。このタイミングは、制御部23のクロックジェネレータが生成するクロック信号に同期されている。クロックジェネレータは、CPU内部のものが使用されてもよいし、制御部23において、CPUとは個別に設けられていてもよい。クロックジェネレータとして、例えば水晶発振器が使用可能である。また、S2及びS5において各電極対の電流を検知するために、各電極対ごとに異なる信号路及び検知回路が使用されてもよいし、各電極対に対して共通の信号路及び検知回路が使用されてもよい。共通の信号路及び検知回路が使用される構成では、制御部23は、検知回路によって検知した電流がどちらの電極対からのものであるかを、クロックのタイミングに基づき区別してもよい。
【0052】
S1、S2、S4、及びS5の一連の制御が繰り返される中で、糖尿病患者は、血液を試料空間72に導入する操作を行う。血液を試料空間72に導入する際、糖尿病患者は、手の平などを針で刺通して血液を滲出させる。糖尿病患者は、血糖測定装置10を保持し、この滲出した血液に対して、バイオセンサ12の導入口71を接触させる。
【0053】
導入口71に接触した血液は、毛細管作用によって、導入口71から試料空間72に進入する。試料空間23に充満していた空気は、空気穴61より外部に排出される。図7に示されるように、導入口71から試料空間72に進入した血液80は、まず測定電極対43の鍵状部44にそれぞれ接触し、測定電極対43を跨いだ状態となる。この状態でS1及びS2の制御が実行されると、制御部23は、S2において、血液80を伝って測定電極対43に流れた微弱な電流(本発明の検知信号に相当)を検知し、判定を「YES」に分岐させる。制御部23は、変数Flgを「1」に更新し(S3に相当)、続けてS4及びS5の制御を実行する。即ち、測定電極対43に血液が接触した状態では、制御部23は、S1、S2、S3、S4、及びS5の制御を順に繰り返す。
【0054】
図8に示されるように、測定電極対43に接触した血液80は、試料空間72のさらに奥に進入し、感知電極対47の接触領域48に接触し、感知電極対47を跨いだ状態となる。この状態でS4及びS5の制御が実行されると、制御部23は、S5において、血液80を伝って測定電極対43に流れた微弱な電流(本発明の検知信号に相当)を検知し、判定を「YES」に分岐させる。制御部23は、変数Flgが、「1」になっているかを確認する(S6に相当)。上述された通り、導入口71から進入した血液は、測定電極対43に接触した後に、感知電極対47に接触するため、S6の制御が実行される際には、変数Flgは、S3によって既に「1」に更新されている。したがって、制御部23は、S6の判定を「YES」に分岐させる。
【0055】
続けて、制御部23は、演算によって血糖値を算出する(S7に相当)。上述された通り、第2測定電極42の鍵状部44には、血液中のグルコースを分解する酵素が固定化されている。測定電極対43血液が接触すると、グルコースの分解によって発生した電子によって測定電極対43には血液中のグルコース濃度に応じた電流(本発明の測定信号に相当)が流れる。制御部23は、測定電極対43に流れる電流をサンプリング及び量子化して数値データとする。制御部23は、得られた数値データに対して規定の数式に基づく演算を行うことで、血糖値の情報を保持する測定データをRAMに生成する。ここで、S6及びS7の制御が、本発明における第2制御に相当する。
【0056】
制御部23は、自動的に、あるいは操作部22から血糖値の表示を指示する操作信号を受けて、血糖値をディスプレイ13に表示させるプログラムを起動する(S8に相当)。当該プログラムに基づき、制御部23は、表示部21を制御して、測定データに記憶された血糖値をディスプレイ13に表示させる。制御部23は、血糖値がディスプレイ13に表示された状態で、表示の終了を指示する操作信号を操作部22から受けると、ディスプレイ13に血糖値の表示を終了させ、フローチャートに示される制御を終了する。ここで、S8の制御が、本発明における第3制御に相当する。
【0057】
なお、制御部23が時計を備えている構成では、制御部23は、測定データが生成された日時を測定日時として血糖値と共にディスプレイ13に表示させてもよい。また、制御部23は、操作部22から血糖値の保存を指示する操作信号を受けて、測定データと測定日時とを関連付けてEEPROMに記憶させてもよい。血糖測定装置10は、記憶された測定データが示す血糖値を医師や糖尿病患者が事後的に参照できるように構成されてもよい。
【0058】
[空気穴61から血液が導入された場合の動作]
続けて、糖尿病患者が誤って空気穴61から試料空間72に血液を導入した場合の血糖測定装置10の動作が説明される。上述された通り、バイオセンサ12がセンサ挿入口15に挿入されて、且つ血液が試料空間72に導入されていない状態では、制御部23はS1、S2、S4、及びS5の制御を繰り返す。糖尿病患者が、滲出した血液にバイオセンサ12の空気穴61を接触させた場合、血液は、空気穴61から導入口71に向けて試料空間72内部を進入する。空気穴61は、感知電極対47の接触領域48の上方に開口されているため、図9に示されるように、血液80は、測定電極対43の鍵状部44に接触する前に、感知電極対47の接触領域48に接触し、感知電極対47を跨いだ状態となる。そうすると、S2の判定が一度も「YES」に分岐されていない状態、即ち変数Flgが「0」の状態で、S5の判定が「YES」に分岐される。変数Flgが「0」のため、続くS6の判定は「NO」に分岐される。
【0059】
制御部23は、表示部21を制御して、誤った方法で血液が導入されたことを糖尿病患者に通知するためのエラーメッセージ(本発明のエラー表示に相当)をディスプレイ13に表示させる(S9に相当)。なお、エラーメッセージに代えて、糖尿病患者が一見して警告を認識することができる他の表示が行われてもよい。例えば、警告を想起させるマークが表示されたり、画面の色が警告色である赤色に変更されてもよい。またこれらの表示を組み合わせたものがエラー表示として使用されてもよい。また正しい方法によって再度測定のための操作を行うことを促すメッセージが併せて表示されてもよい。制御部23は、操作部22からエラー表示の終了を指示する操作信号を受けて、ディスプレイ13にエラー表示を終了させ、フローチャートに示される制御を終了する。糖尿病患者は、バイオセンサ12をセンサ挿入口15から抜き出し、新たなバイオセンサ12をセンサ挿入口15に挿入して、再度血糖値の測定のための操作を行うことができる。
【0060】
[実施形態の作用効果]
本実施形態に係る血糖測定装置10では、空気穴61から誤って血液が導入されたことを制御部23が判断可能であるため、試料空間72に正しく血液が導入された場合には測定が開始され、誤った方法で血液が導入された場合には測定が開始されない。それにより、誤った測定結果がディスプレイ13に表示されてしまうことを回避することができる。
【0061】
また、制御部23が、感知電極対47及び測定電極対43に電圧を印加して各電極対の電流を検知することで、各電極対に血液が接触したか否かを容易に判断することができる。
【0062】
また、ディスプレイ13にエラーメッセージが表示されることで、再度、正しい方法による血液の導入を行うことを糖尿病患者に促すことができる。
【0063】
また、バイオセンサ12が血糖測定装置10から着脱可能であるため、測定ごとにバイオセンサ12を容易に交換することができ、衛生的であると共に、残留した血液により2回目以降の測定が失敗することを防止することができる。また、センサ部の装着により自動的に血糖値の測定を実行するプログラムが起動されるため、当該プログラムが起動されていない状態で被験者が血液を導入してしまうことを防止することができる。即ち、誤って空気穴61から血液が導入されたことが確実に検知される。
【0064】
[変形例]
続けて、上述の実施形態に係る血糖測定装置10の変形例が以下に説明される。本変形例では、血糖値の測定を実行するプログラムによって制御部23が実行する制御の内容が上述の実施形態のものと相違する。図10のフローチャートに示されるように、本変形例では、S5の判定が「NO」に分岐された後に、変数Flgが「1」であるか否かの判定が行われている(S10に相当)。測定電極対43に血液が接触していない状態では、変数Flgは「1」に更新されていないため、S10の判定は「NO」に分岐される。即ち、血液が試料空間72に導入されていない状態では、制御部23は、S1、S2、S3、S4、及びS10の制御を順に繰り返す。即ち、ループの中にS10が追加された点以外は、上述の実施形態の制御と同様である。
【0065】
一方、導入口71から正しく導入された血液が、測定電極対43の鍵状部44に接触した場合、S3の制御によって変数Flgが「1」に更新されるため、続くS10の判定は、「YES」に分岐され、S4の制御が実行される。即ち、導入口71から正しく導入された血液が、測定電極対43の鍵状部44に接触した状態では、制御部23は、S4、S5、及びS10の制御を順に繰り返す。
【0066】
以上より、制御部23は、ひとたび測定電極対43に電流を検知した後は、測定電極対43に電圧を印加して電流を検知する制御(S1及びS2に相当)を中止して、感知電極対47に電圧を印加して電流を検知する制御(S4、S5、及びS10に相当)のみを繰り返す。このとき、制御部23は、感知電極対47に電圧を印加し続けてもよい。一方、誤って空気穴61から血液が導入された場合は、変数Flgが「1」に更新される前にS5の判定が「YES」に分岐されるため、上述の実施形態による場合と同様の制御が行われる。
【0067】
本変形例によると、制御部23は、測定電極対43に電流を検知した後は、感知電極対47に電圧を印加して電流を検知する制御のみを繰り返すので、感知電極対47に血液が接触したことを即座に判断することができる。
【0068】
また、上述の実施形態において、導入口71は、バイオセンサ12の先端に開口されているが、導入口71は、バイオセンサ12の短手方向93の側縁に開口されていてもよく、好適には、短手方向93の両側縁に対向して一対の導入口71が開口されていてもよい。その場合、対向する導入口71は、試料空間72によって繋がっており、一方の導入口71から導入された血液は、短手方向93の中央に向かって試料空間に進入する。このような構成においても、測定電極対43の少なくとも一部が、感知電極対47よりも導入口71に近い位置に設けられている点は上述の実施形態の構成と同様である。また、測定電極対43及び感知電極対47の形状は、試料空間72の形状に合わせて、適宜変更されるものである。
【0069】
また、上述の実施形態において、測定電極対43は、第1基板30に積層されているが、測定電極対43を構成する第1測定電極41又は第2測定電極42のどちらかが第2基板60のスペーサ50側に積層されて、その一部が試料空間72に露出されていてもよい。即ち、測定電極対43の2つの電極は、試料空間72を介して上下方向91に離間されて設けられてもよい。その場合、導入された血液は、上下方向91に離間された測定電極対43の間に介在される。感知電極対47に対しても同様の構成が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10・・・血糖測定装置
12・・・バイオセンサ(センサ部)
13・・・ディスプレイ(表示部)
14A・・・操作ボタン(操作部)
14B・・・操作ボタン(操作部)
14C・・・操作ボタン(操作部)
21・・・表示部
22・・・操作部
23・・・制御部
24・・・センサ部
43・・・測定電極対
47・・・感知電極対
61・・・空気穴
71・・・導入口
72・・・試料空間
80・・・血液(生体試料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の生体試料を導入可能な試料空間が形成され、導入された生体試料にそれぞれ接触可能な一対の測定電極と一対の感知電極とが当該試料空間の内部に設けられたセンサ部と、
表示画面を備え、当該表示画面に画像を表示可能な表示部と、
操作者の操作を受け付けて、各種の操作信号を出力する操作部と、
上記センサ部、上記表示部、及び上記操作部とそれぞれ電気的に接続され、上記操作信号に基づき、上記センサ部及び上記表示部の動作を制御する制御部と、を備え、
上記試料空間は、生体試料が導入される導入口と、生体試料の導入に伴って上記試料空間内の空気が外部に排出される空気穴とによって外部空間と連続し、且つ上記一対の測定電極の少なくとも一部が上記一対の感知電極よりも上記導入口に近い位置に設けられたものであり、
上記制御部は、
上記一対の測定電極に生体試料が接触したか否かの判断と、上記一対の感知電極に生体試料が接触したか否かの判断とを交互に繰り返す第1制御と、
上記第1制御において、上記一対の測定電極に生体試料が接触したと判断された後に上記一対の感知電極に生体試料が接触したと判断されたことを条件として、上記一対の測定電極が出力した生体試料に関する測定信号に基づいて、数値表現された測定データを生成する第2制御と、
上記測定データが保持する情報を上記表示部に表示させる第3制御と、を実行するものである生体試料測定装置。
【請求項2】
上記第1制御において、上記制御部は、上記一対の感知電極間又は上記一対の測定電極間に電圧を印加して得られた検知信号に基づいて、上記一対の感知電極又は上記一対の測定電極に生体試料が接触したか否かを判断する請求項1に記載の生体試料測定装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記第1制御において、上記一対の測定電極に生体試料が接触したと判断しておらず、かつ上記一対の感知電極に生体試料が接触したと判断したことを条件として、上記表示部にエラー表示を行わせる第4制御を実行するものである請求項1又は2に記載の生体試料測定装置。
【請求項4】
上記一対の測定電極の少なくとも一方には、生体試料中の特定の成分の化学反応を誘発する物質が固着されており、
上記測定信号は、上記化学反応により生じた電気信号である請求項1から3のいずれかに記載の生体試料測定装置。
【請求項5】
上記センサ部は、少なくとも一部が上記制御部に対して着脱可能なものであり、
上記制御部は、上記センサ部が上記制御部と電気的に接続されたことに伴い、上記第1制御を実行するものである請求項1から4のいずれかに記載の生体試料測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−220291(P2012−220291A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85038(P2011−85038)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)