説明

生体適合性材料の試験方法

【課題】創傷被覆材などの医療機器の開発における動物試験の実施を極力低減する若しくは回避する又は動物実験の必要性の可否判断ができる代替試験法を提供することを課題とする。
【解決手段】水不溶性のシート材が生体適合性材料であるかどうかを判定する試験方法であって、試験片となるシート材を培養培地に膨潤、浸漬したのち、細胞培養容器の底部に培養した付着性細胞と張り合わせることを特徴とする生体適合性材料の試験方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば創傷被覆材のような生体適合性材料の良否判定を、動物を用いた実験の替わりに培養細胞で代替する生体適合性材料の試験方法に関する。すなわち、本発明は、動物実験を必要とするかどうか又は動物実験の代替方法となり得るかどうかの予備的な試験方法に関する。なお、本明細書で使用する「生体適合性材料」は、生体適合性材料の良否判定を行うための材料としての意味で使用することとする。
【背景技術】
【0002】
創傷被覆材の開発にあたり、その効果を検討するのには、人介入試験の実施前に、動物試験が実施されている。例えば、麻酔下でウサギの背部を剃毛し、消毒した後、直径5cmほどの円形全層皮膚欠損創を背部の左右に2箇所作成し、試験片と比較片をテープ、ガーゼなどの適当な方法で固定し、1週間程度の治癒観察を行って、良否判定する試験方法が実施される。
【0003】
このような動物試験は動物愛護の観点から、また、試験設備、経費、研究期間を理由に出来るならば回避されるべきとして、代替試験法が考案されている。特許文献1に記述の実施例にマウスの皮膚構造を未変性のままで3次元培養構築し、それを皮膚の代替として皮膚毒性試験に供することができると開示がある。しかし、この皮膚モデルは、皮膚の再生に適した治療材料を探すための方法の開示ではない。
【0004】
また、皮膚刺激性試験は、被験物質が皮膚の最外層である角質層の破壊から、下部組織への浸透、炎症の誘導、細胞死などの過程を評価することである。前記特許文献に記載する皮膚毒性試験も基本は皮膚刺激性試験と同じく、完全な皮膚に与える損傷の程度を評価することが目的である。
したがって、その試験法を代替するには、単にヒト細胞を単層培養(2次元培養)するだけでは十分でなく、皮膚構造を再構成し、皮膚の表皮とその下部組織の真皮が構築されていないと正しく皮膚刺激性を評価することはできないからとして、3次元培養されたヒト組織による代替試験法が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、創傷治癒材は、損傷により不完全な構造となった皮膚の再生を目的としている。代替試験に求められる仕様は、皮膚の3次元構造の再構築をどのように支援できるかという立場である。
皮膚刺激性試験の代替試験は、いわば破壊的外乱物質にたいする代替モデルを要求するため、より完全な皮膚構造の代替モデルを追及するのに対して、創傷治癒向けの代替試験法は、不完全な皮膚構造からの再生を評価できるかの試験になる。
【0006】
皮膚の再生には、表皮にある基底細胞の残存が重要である(非特許文献1参照)。創傷被覆材の場合、皮膚の2次元構造からの皮膚構築を支援できるか否かを評価すべきことを示している。
この2次元構造への適合性は、創傷被覆材の開発にあたって留意すべきことで、新規の材料を研究開発するにあたり、動物試験の実施前に、生細胞と体内の滲出液を介して直接的な接触をおこなうモデルによって、生体適合性の可否について判断ができることが望ましい。
さらにまた、3次元組織培養は、動物試験の実施と比較して安価であるが、通常の付着性細胞を培養するいわゆる2次元培養と比較すると割高であるという欠点があるので、この点の改良が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2950519号公報
【特許文献2】特開平10−323184号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】溝上裕子「創傷管理」((株)メディカ出版)p12-14
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、創傷被覆材などの医療機器の開発における動物試験の実施を極力低減する若しくは回避する又は動物実験の必要性の可否判断ができる代替試験法を提供することを課題とする。
本発明の試験方法は、動物試験の実施の低減化及び小動物の代わりに培養細胞を用いて大幅な研究開発経費の削減化を狙うものである。また、本発明は、培養細胞にヒト由来の正常細胞を利用すると共に、3次元培養をすることなく、従来既知の細胞培養技術により細胞の増殖を可能する技術を提供する。
さらに本発明は、生体適合性材料の研究開発において、多くの試験片を、必要な数だけ、同時に検討することが可能であり、創傷被覆材に代表されるような医療機器の開発研究期間を短縮させるのに好適な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本願は以下の発明を提供する。
1)水不溶性のシート材が生体適合性材料であるかどうかを判定する試験方法であって、試験片となるシート材を培養培地に膨潤、浸漬したのち、細胞培養容器の底部に培養した付着性細胞と張り合わせることを特徴とする生体適合性材料の試験方法
2)前記張り合わせのときに、培養容器内にある過剰の培地を吸引除去することによって、試験片となるシート材と付着性細胞層との間に薄い水膜を介して密着をおこない、培養細胞に与える物理的なダメージを避け、生体適合性の判定の精度を高めることを特徴とする前記1)記載の生体適合性材料の試験方法
【0011】
また、本願は以下の発明を提供する。
3)試験片となるシート材と付着性細胞の張り合わせを固定するため、加温した寒天を含有する培地もしくは生理緩衝液をシート材の周辺に流しこみ、放冷により固形化させてシート材を細胞培養容器に固定する前記1)又は2)記載の生体適合性材料の試験方法
4)試験片となるシート材の生体適合性を判断するために培養細胞を利用する際に、同一容器内で複数枚のシート材を寒天固定した場合と、同一の容器内で複数に間仕切りしたそれぞれの区画に単数枚で寒天固定された場合との、二つの方法を用いて、試験片の生体適合性の可否を判断する前記1)〜3)のいずれか一項に記載の生体適合性材料の試験方法
【0012】
また、本願は以下の発明を提供する。
5)前記二つ方法によって得られた結果の同一性を判断した後、動物試験を実施するか、あるいは動物試験の実施を見送るかの判断を行うことを特徴とする前記1)〜4)のいずれか一項に記載の生体適合性材料の試験方法
6)細胞培養容器の底部に単層培養した後、付着性細胞と張り合わせることを特徴とする前記1)〜5)のいずれか一項に記載の生体適合性材料の試験方法
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小動物の代わりに培養細胞を用いるので、創傷被覆材などの医療機器の開発における動物試験の実施を極力低減するあるいは回避することが可能である。また、本発明は、培養細胞にヒト由来の正常細胞を利用すると共に、3次元培養をすることなく、従来既知の細胞培養技術により細胞の増殖が可能となる効果を有する。さらに本発明は、生体適合性材料の研究開発において、多くの試験片を、必要な数だけ、同時に検討することができ、創傷被覆材に代表されるような医療機器の開発研究期間を短縮させることができるという著しい効果を有する。
具体的には、既に医療機器として認定された市販品を比較片に選択することで、試験片となる材料が、市販品より優れた材料として開発できたか否かを判断できる。最終的な承認申請にあたっての動物データの蓄積をすべて省略できるわけではないが、開発段階における多くの試験片を同時に、複数比較できるのであるから、その素材研究開発における莫大な労力を省略し、目標とするより優れた材料を探し当てることが可能になる大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のA式判定法に用いる試験装置の説明図である。
【図2】本発明の試験方法に用いる試験装置の断面を示す説明図である。図の上はA式判定法に用いる装置の断面図、下の図はB式判定法に用いる装置の断面図である。
【図3】本発明の試験方法を用いて、良否判定の結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、適当な培養容器3に培養させた正常ヒト細胞に、試験片を2種類以上、同一の培養容器3内に貼り付け、寒天6固定して培養を継続したのち、細胞の染色をおこない観察する。染色された細胞群の密度などから、試験片2の生体適合性を判断する(A式判定法)。通常、単層培養する。図における符号4は細胞培養層である。
【0016】
その一方で、別の適当な同一の培養容器3内に仕切り7を設けて制作された複数の区画(ウエル)に培養させた正常ヒト細胞に対して、試験片2を各区画あたり、1種類を寒天6固定し、同様に培養を継続したのち、細胞の染色をおこない、同様に試験片2の生体適合性を判断する(B式判定法)。
【0017】
図2の下図に示すように、同一の培養容器に試験片2と比較片5を2種類入れた場合(A式判定法)と同一の培養容器に試験片2と比較片5を各個に入れた場合(B式判定法)の両方を試験して、染色結果を判定することができる。
この場合、A式判定法とB式判定法が一致した場合に、比較片5より試験片2の生体適合性が高いと判定する方法である。
【0018】
A式判定法は、はん種された細胞数が不同一であることの実験誤差を排除できるが、試験片か比較片のどちらかに含まれるかも知れない未知の水溶性物質(残留成分など)については、これらが均一化して相互干渉を起こし、試験片2の生体適合性を判断するための外乱となる虞がある。
【0019】
これに対して、B式判定法は、試験片2か比較片5のどちらかに含まれるかも知れない未知の水溶性物質(残留成分など)を均一化して相互干渉を起こし、試験片2の生体適合性を判断するための外乱となる虞はないが、判定結果は、試験片2と比較片5の区画にあるはん種された細胞数が不同一によることに起因する誤差を排除できない。
しかしながら、A式判定法とB式判定法を組み合わせることで、細胞はん種数の実験誤差と試験片2と比較片5にある水溶性物質の影響を排除できる。したがって、より正確な試験のためには、両者を併用することが望ましいと言える。
【0020】
適当な培養容器3とは、付着性の細胞培養に適した滅菌容器のことであり、培養状態の細胞を倒立位相差顕微鏡で観察できるように底部が透明な容器であって、試験片2の投入が可能な蓋1もしくは栓のある構造を持つ容器のことである。操作が容易な蓋式が望ましい。この容器はいわゆる炭酸ガスインキュベータという培養器で細胞培養が行われるに適当な大きさである。
【0021】
正常ヒト細胞とは、ガン化していない人体を構成する細胞のことで、例えば表皮角化細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞、筋細胞などを示している。これは、現在市販されており、入手は難しくない。
【0022】
試験片2は、本実験で創傷被覆材への利用を目的として生体適合性があるかどうかを判断するために用意する試料であって、適当な容器に投入できる大きさに切断された滅菌済み材料のことである。この大きさは容器の大きさによるが、概ね1辺が1〜2平方cmの四角形に調製される。厚さは数ミリメートルである。
【0023】
試験片2は、未知の材料で新たに製作した試料であるが、複数枚のうち、一枚は既知の生体適合材料を用いる。望ましくは既知の医療機器承認済みの材料でできた試料を比較片5として用いるがよい。
【0024】
試験片2と比較片5は貼り付け作業をおこなう。貼り付けを行う理由は、被覆材は、傷口に手当てされるとき、細胞と直接、生体からの滲出液を介在しながら接触するからである。
貼り付け作業は、望ましくは試験片2と比較片5を適当な培養容器3に、細胞接触が想定される面を下にして、滅菌ピンセットなどで、液体培地に投入し、浸透、膨潤させる。その後、余分な液体培地をピペットなどで吸引し、除去することでおこなう。このとき試験片は柔軟である必要がある。
この方法で貼り付けを行うと、接触面に気泡の混入をさけることが出来る。A式判定の場合は、望ましくは試験片同士の1辺は接触させておくと、後で判定が容易になる。
【0025】
細胞培養容器3の底部と試験片2を貼り付けたら、培地や生理緩衝液(例えばダルベッコのリン酸緩衝液)を含む寒天6で試験片2の周りを充填し、固定化する。寒天の濃度は0.25%〜1.5%が使える。寒天の流し込む温度は45°Cから60°Cが適当である。
放冷により寒天が固化したら、細胞培養用炭酸ガスインキュベータのなかで、望ましくは37°C、5%炭酸濃度の環境で細胞培養をおこなう。シート材の平面性から、寒天が底部に浸透する場合は、ショ糖やグリセロールなどの安定的な密度勾配をつくる成分を0〜50%用いることもできる。
【0026】
培養時間は、最低でも1日から6日程度である。望ましくは複数の培養容器3を用意し、毎日、判定を行って経時的変化を記録することもよい。判定は、試験片と寒天をピンセットなどで剥ぎ取り、染色することでおこなう。
染色の前に、底部には適当な筆記具で試験片の位置をマーキングするか、写真や実体コピーを作成しておく。
【0027】
染色の方法は、染色液を培養容器に張り込んでも可能であるし、染色操作が便利なように工夫された容器を用いることで、染色液に容器を漬け込んでもよい。染色方法は、各種知られているが、望ましくはヘマトキシリン・エオシン染色などが利用できる。存在する細胞数が多ければ、それに比例して多く染色分布が目視で確認できる。
【0028】
(判定)
染色後、試験片の位置を確認しながら、染色の程度を観察する。結果は、目視でできる。染色された細胞の密度、分布を比較し、比較片よりも試験片の位置に染色程度が高く、A式判定法 (同一容器内での複数枚試験)とB式判定法(個々の容器区画での単数枚試験)とが、どちらも同じく試験片のあった場所の染色程度が高いときは、生存する細胞が多いことを意味するので比較片よりも生体適合性が高いと判断できる。
もし、染色程度がひくければ、既知の比較片よりも生体適合性が高いと判断できないから、改良すべき点がないか、検討することで、動物試験の実施を見送りできる。判定が微妙な場合は、顕微鏡で染色細胞を詳細に観察することで判定できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の特徴を具体的に説明する。以下の説明は本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、他の実施態様、他の例等は、いずれも本願発明に含まれるものである。
【0030】
(細胞のはん種)
図1の構造を持つようなスライドグラス培養容器(BDFalcon社製カルチャースライド1区画型と2区画型(図2))に、正常ヒト表皮角化細胞(成人由来、三光純薬販売品CC2501)を指定の培養培地(ブレットキットKGM−2、品番CC3107)中に、3500Cells/cmの推奨密度で、37度、炭酸ガス濃度5%中の培養器で培養する。
細胞培養の操作は無菌的おこなわれなくてはいけないので、クリーンベンチなどの設備内で実施した。
【0031】
(試験片の投入と密着)
培養細胞がコンフルエント(過密な状態)になる前、概ね3日〜5日経過後になったら、自作した試験片Aと、すでに「医療機器承認番号を取得した医療用品」の比較片Bを図1の培養容器に細胞と接触する面を下にして、各一枚を投入し、培養培地を吸収、膨潤させる時間を置く。その後、ピペットにより過剰となる培養培地を吸引除去する。
この操作によって、試験片は、気泡の混入をさけて培養容器の底に培養された細胞と接触させることができる。A式判定を実施するときは、試験片Aと比較片Bは一辺をお互いに接触させておいた。
【0032】
(試験片の固定)
あらかじめ、ダルベッコPBS(―)で加温溶解した1.5%の濃度寒天溶液と培養培地を混合し、培養培地を含む軟寒天(濃度0.75%)を60度前後に保温しておき、試験片を密着させておいた培養スライドに流し込み、放冷して試験片の回りを軟寒天で固定した。
放冷により寒天が固まったたら、底面、側面から、試験片Aや比較片Bと培養容器の底面との間に、浮き上がりや、気泡などが発生してないか確認し、1日から3日培養した。
【0033】
(マーキング)
試験片を寒天で固定したあと、染色操作を行う前に、試験片の固定された位置を、ピクトロスタット330(富士写真フィルム(株)社製)で実体コピーを作成、さらに、耐性マジックペンで目印をつけて記録しておいた。
【0034】
(染色)
スライドグラスは、2.5%のグルタルアルデヒドを含むダルベッコPBS(−)に30分浸し固定化する。その後、HE染色(ヘマトキシリン・マイヤー染色)で細胞を染色した。
【0035】
(判定)
図3には、最も明快な結果の例をしめした。細胞の染色分布を観察した結果、A式判定とB式判定がどちらも、試験片2が比較片5よりも、より多くの細胞存在が目視で確認できた。すなわち、図3は、A式判定法とB式判定法において結果が一致した例を示すものである。各判定の左側は組立時の写真であり、右側は染色後の写真である。
実際の染色は赤桃色であるため鮮明であるが、図3では、白黒であるために見え難いかも知れないので、染色の状態を詳しく説明する。
【0036】
この試験方法において、細胞の生存があると染色班が現れる。染色班は、染色された個々の細胞の集合であり、細胞の集合密度と分布を反映している。
図3中に塗料を吹き付けたような無数の黒点の痕が見えるが、これが染色班である。図3中のA,B式判定法の写真のどちらも右側に注目し、試験片を貼り付けた部分をしめす黒枠のマーキングされた区画(右上)の内側と、比較片の貼りつけた区画(右下)とを比較観察すると、右上の試験片の区画には、右下の比較片の区画よりも強い染色班のあることが共通していることが判る。
【0037】
特にB式判定法の右下の比較片は、黒枠の区画の外側(寒天固定側)よりも内側の貼り付け面の染色班が抜けているのが分かる。染色班がなく、透明に抜ける現象は、試験片の貼り付け前に培養していた細胞が増殖しなかったか、減少を意味している。一方、右上の試験片では、染色班があり細胞の生存又は増殖があることを示している。したがって、右上の試験片は、右下の比較片よりも、生体適合性があると判断できる。
この場合、表皮角化細胞を用いているので、皮膚との適合性が高いと判断できた。したがって、このときは、試験片1はすでに「医療機器承認番号を取得した医療用品」よりも優れているとして、動物試験などの実施を決断できる。
【0038】
(判定が劣る場合)
もしも、この場合、比較片5が試験片2よりも細胞存在が確認できる場合は、試験片2はすでに「医療機器承認番号を取得した医療用品」よりも劣るとして、動物試験などの実施の見送りを決断できる。この場合に生じる損益について回避されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、創傷被覆材などの医療機器の開発における動物試験の実施を、動物愛護の観点からも回避が可能である代替試験法であって、この発明の試験方法の実施により、小動物の代わりに培養細胞をもちいるので、大幅な研究開発経費の削減が可能になる。
また、この方法による生体適合性材料の研究開発は、多くの試験片を同時に検討することが可能になるので、医療機器の開発研究期間を短縮させるのに好適であり、医療機器製品の開発期間の短縮による産業の発展に寄与すると判断されるので、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0040】
1:蓋
2:試験片
3:培養容器
4:細胞培養層
5:比較片
6:寒天
7:間仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性のシート材が生体適合性材料であるかどうかを判定する試験方法であって、試験片となるシート材を培養培地に膨潤、浸漬したのち、細胞培養容器の底部に培養した付着性細胞と張り合わせることを特徴とする生体適合性材料の試験方法。
【請求項2】
前記張り合わせのときに、培養容器内にある過剰の培地を吸引除去することによって、試験片となるシート材と付着性細胞層との間に薄い水膜を介して密着をおこない、培養細胞に与える物理的なダメージを避け、生体適合性の判定の精度を高めることを特徴とする請求項1記載の生体適合性材料の試験方法。
【請求項3】
試験片となるシート材と付着性細胞の張り合わせを固定するため、加温した寒天を含有する培地もしくは生理緩衝液をシート材の周辺に流しこみ、放冷により固形化させてシート材を細胞培養容器に固定する請求項1又は2記載の生体適合性材料の試験方法。
【請求項4】
試験片となるシート材の生体適合性を判断するために培養細胞を利用する際に、同一容器内で複数枚のシート材を寒天固定した場合と、同一の容器内で複数に間仕切りしたそれぞれの区画に単数枚で寒天固定された場合との、二つの方法を用いて、試験片の生体適合性の可否を判断する請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体適合性材料の試験方法。
【請求項5】
前記二つ方法によって得られた結果の同一性を判断した後、動物試験を実施するか、あるいは動物試験の実施を見送るかの判断を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体適合性材料の試験方法。
【請求項6】
細胞培養容器の底部に単層培養した後、付着性細胞と張り合わせることを特徴とする試験方法請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体適合性材料の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207120(P2010−207120A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54854(P2009−54854)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000173511)財団法人函館地域産業振興財団 (32)
【Fターム(参考)】