生体関連物質の検出方法および生体関連物質充填容器装着用の蓋
【課題】微量の生体関連物質を安価で簡便かつ迅速に検出する方法と該検出方法に用いる生体関連物質検出用の蓋、並びに該蓋が装着されてなる容器の提供。
【解決手段】生体関連物質を含有している可能性のある試料が充填された容器に装着可能な蓋であって、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化されている蓋;係る蓋が装着されてなる容器;生体関連物質を含有している可能性のある試料及び該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、係る蓋を、前記容器に装着する工程と、前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有する生体関連物質の検出方法。
【解決手段】生体関連物質を含有している可能性のある試料が充填された容器に装着可能な蓋であって、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化されている蓋;係る蓋が装着されてなる容器;生体関連物質を含有している可能性のある試料及び該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、係る蓋を、前記容器に装着する工程と、前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有する生体関連物質の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質の検出方法、および容器へ装着して生体関連物質の検出に用いるための蓋、並びに該蓋が装着されてなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来臨床検査の分野では、例えば、血液、血清、血漿、尿などの生体サンプルを用いて様々な疾患の診断が行なわれている。これら診断で用いられている簡便で迅速な検査方法としては、ELISA法、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、凝集法などがある。これらの方法は高価で大規模な機器を必要とせず、比較的安価な検査キットを用いて迅速に検査することができるため、少数検体の検査や、結果がすぐに必要とされる臨床医による検査、患者のベッドサイドでの検査などで広く一般に採用されている。
【0003】
このような従来の検査方法として具体的には、例えば、24穴プレートまたは96穴プレートの表面に抗原または抗体を添加し、濃縮乾燥することによりこれら抗原または抗体を固相化したプレートを用いて、特にELISA法により免疫測定を行う方法(特許文献1参照)、検出対象成分に対する特異的抗体を結合させた担体試薬を、内部が減圧され観察部分が透明である容器に収納した、免疫反応測定用試薬キットを用いて、凝集法により測定を行う方法(特許文献2参照)が挙げられる。
【0004】
さらに近年では、新しい臨床検査として遺伝子検査が注目を集めている。一般的な遺伝子検査においては、医師により採血された血液サンプルから核酸を抽出し、抽出された核酸に対して増幅反応を行ない、増幅産物を検出するなどの作業が行なわれる。検出方法としては、電気泳動やマイクロアレイを用いる方法が挙げられる。
【特許文献1】特開平6−341990号公報
【特許文献2】特開平7−270411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、安価に検査を行なえるが、ブロッキングや洗浄工程等が必要であるため、測定に手間を要する上、判定にも時間を要するという問題点があった。
また、特許文献2に記載の方法では、患者から採取した検体の溶液を充填した容器と該試薬キットを連結することで、減圧された試薬キット内に検体溶液を吸入させて試薬と混合し、反応結果を目視で判定する。すなわち、ピペットなどを使用して検体溶液を凝集判定用プレート上に分注する必要がなく、反応結果を迅速かつ簡単に判定することができるという利点を有する。しかし、検体が極めて微量である場合に使用することができず、また、針を使用するキットであるため、安全上好ましくないという問題点があった。
一方、従来の遺伝子検査の場合は、電気泳動では作業に手間を要し検出までに時間を要し、またマイクロアレイは高価なため手軽に使用できないなど、検出方法に問題点があった。
【0006】
このように、臨床検査の分野においては、検体が微量であっても安価で簡便かつ迅速に測定結果を判定できる検査方法の開発が求められており、特に遺伝子検査の分野においてこの要望が強いのが現状である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、免疫学的方法による遺伝子検査に好適な、微量の生体関連物質を安価で簡便かつ迅速に検出する方法と該検出方法に用いる生体関連物質検出用の蓋、並びに該蓋が装着されてなる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行う工程と、前記標識化操作後の試料が充填された容器に対して、光透過性の材質からなり、該容器内の試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化された蓋を装着する工程と、前記標識化操作後の試料を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法である。
請求項2に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記標識物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法である。
請求項3に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質、および該特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記試料を前記標識物質および前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法である。
請求項4に記載の発明は、蓋装着後の容器を転倒させて、前記接触を行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
請求項5に記載の発明は、前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
請求項6に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
請求項7に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
【0009】
請求項8に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料が充填された容器に装着可能な蓋であって、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化されていることを特徴とする蓋である。
請求項9に記載の発明は、前記容器内の試料と接触可能な領域に、さらに、前記特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化されていることを特徴とする請求項8に記載の蓋である。
請求項10に記載の発明は、前記容器内の試料と接触可能な領域が、凸状とされていることを特徴とする請求項8または9に記載の蓋である。
請求項11に記載の発明は、前記容器内の試料と接触可能な領域のうち、20〜100%の領域に、前記特異的結合物質が固定化されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項12に記載の発明は、前記標識物質が、前記容器内の試料に溶解可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項13に記載の発明は、前記標識物質が、蛍光性物質、化学発光性物質および着色物質のいずれかを含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項14に記載の発明は、前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項15に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項16に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項17に記載の発明は、請求項8〜16のいずれか一項に記載の蓋が装着されてなることを特徴とする容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作が単純なので生体関連物質を安価で簡便かつ迅速に検出することができる。また、サンプルの分注操作等が不要なので、サンプルへの異物混入が防止でき、生体関連物質が微量でも高精度に検出することができる。さらに検出反応が限定されず、免疫学的反応、核酸のハイブリダイゼーション、リガンド―レセプター反応等種々の方法が適用できるため、幅広い生体関連物質を検出対象とすることができる。本発明は、特に免疫学的方法による遺伝子検査に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において生体関連物質とは、生体から抽出、単離等された物質、あるいはこれらを化学処理、化学修飾等したものを指す。具体的には、例えば、抗原、抗体、酵素、アブザイム、サイトカイン、腫瘍マーカー、その他のタンパク質、またはDNA、cDNA、RNA、その他の核酸、あるいはホルモン類、ハプテン等を挙げることができ、さらにこれらを化学処理あるいは化学修飾したもの等を挙げることができる。
例えば、核酸等は、ビオチン、ジゴキシゲン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)等、免疫反応を示すもので化学修飾すると好適である。
【0012】
そして、生体関連物質を含有している可能性のある試料としては、血液、血清、血漿、尿などの液状の生体試料を採取してそのまま用いても良いし、これらの生体試料に適宜濃度調整あるいは成分調整等の処理を行ってから用いても良いし、緩衝液等に生体試料を添加して用いても良い。さらには生体組織を適宜液状に加工して用いても良い。
また、試料中には、検出対象の生体関連物質以外にも、本発明の効果を妨げないものであれば、如何なる成分が含有されていても良い。
【0013】
本発明において特異的結合とは、特定の物質間で選択的に形成される、特異性の高い分子間力に基づく結合を意味する。具体的には、例えば、抗原および抗体間の免疫学的反応による結合、相補的な塩基配列を有するDNAやRNA等のハイブリダイゼーションによる結合、ビオチンおよびアビジン間の結合、糖およびレクチン間の結合、DNAおよびDNA結合性タンパク質間の結合、その他リガンドおよびレセプター間の結合等を挙げることができる。それ自体は免疫学的反応を示さないが、核酸等と結合して免疫学的反応を示すハプテンを用いても良い。これらの中でも、免疫学的反応による結合が本発明においては好適である。
【0014】
本発明においては、先に述べた生体関連物質とこのような結合を形成するものであれば、如何なるものも生体関連物質と特異的に結合する物質(以下、特異的結合物質と略記することがある)として用いることができる。そして、先に述べた生体関連物質とこのような結合を形成し、かつ標識されたものであれば、本発明において生体関連物質と特異的に結合する標識物質(以下、標識物質と略記することがある)として用いることができる。
【0015】
ただし、前記特異的結合物質と前記標識物質は、互いに前記生体関連物質の異なる部位において特異的に結合するものである。
【0016】
本発明において、標識物質は、特異的結合物質自体が標識能を有するものでも良く、特異的結合物質に標識能を有するものが直接あるいは間接に結合されたものでも良い。ここで、標識能を有するものとは、光学的に区別可能なものを指し、具体的には例えば、蛍光または化学発光を生じるもの、あるいは可視領域で呈色するもの等を指す。
蛍光を生じるものとしては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、アクリフラビン、アレクサ等を挙げることができる。
化学発光を生じるものとしては、例えば、ルミノール類および1,2−ジオキセタン類等を挙げることができる。
可視領域で呈色するものとしては、例えば、色付きの微粒子等を挙げることができる。
【0017】
さらに色付きの微粒子としては、例えば、金属コロイド、非金属コロイド、高分子材料からなる微粒子等が挙げられる。
金属コロイドとしては、例えば、周期表(長周期型)8〜11族に属する金属、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等のコロイドを挙げることができる。
非金属コロイドとしては、例えば、セレン(Se)、テルル(Te)あるいは硫黄(S)などのコロイド状非金属粒子等をあげることができる。
高分子材料からなる微粒子としては、例えば、ラテックス、不溶性アガロース、セルロースあるいは不溶性デキストランなどの天然高分子からなる微粒子や、ポリスチレン、スチレンースチレン−スルホン酸(塩)共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スルホン酸共重合体などの合成高分子からなる微粒子などを挙げることができる。なかでも好ましいものとして、容易に入手可能であるなどの理由からラテックス製微粒子が挙げられる。
【0018】
これら微粒子は、光の吸収・反射・散乱等の波長が異なること、あるいは粒径が異なること、形状が異なること、材質が異なること等により、可視領域で呈色するものとして区別することが可能であれば良いが、必要に応じて、染料等で着色を施したものであっても良い。また、塩化コバルト(II)等異なる色の無機化合物で着色を施したものであっても良い。これら色付きの微粒子は、市販のものを用いても良いし、従来公知の方法で作製したものを用いても良い。
【0019】
本発明においては、これら標識能を有するものが特異的結合物質でない場合は、これら標識能を有するものを特異的結合物質に結合させ、標識物質として用いれば良い。このような、標識能を有するものが特異的結合物質に結合されてなる標識物質は、市販されているものがあればそれを用いても良いし、従来公知の方法により作製して用いても良い。
【0020】
例えば、色付きのラテックス製微粒子を特異的結合物質に結合させる場合には、表面にカルボキシル基やアミノ基等が露出されている官能基タイプのラテックス製微粒子を用い、この官能基に、特異的結合物質中の官能基を結合させれば良い。これら官能基同士を結合させる方法は、従来公知の方法を適用することができ、例えば、水溶性カルボジイミドでカルボキシル基とアミノ基を結合させるEDAC方法、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とをあらかじめ混合してカルボキシル基とアミノ基とを結合させる方法、双極性を有するリンカーを用いてアミノ基同士を架橋する方法、活性化したアルデヒド基やトシル基と官能基を結合させる方法等が挙げられる。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のいかなる方法を適用しても良いが、EDAC法が好ましい。
【0021】
前記標識物質は、生体関連物質を含有している可能性のある試料に溶解可能なものが好ましい。このようにすることで、試料中の生体関連物質との特異的結合を、より確実に行うことができる。
さらに該標識物質は、特に蓋に固定化されている場合には、前記試料に溶解時に色が変化するものが好ましい。このようにすれば、標識物質と前記試料との接触前後における該試料の色の変化を確認することで、標識物質の前記試料への溶解を確実に確認することができる。そして例えば、蓋が有する標識が、生体関連物質の検出によるもの(本発明においては陽性反応と言う)なのか、標識物質の前記試料への溶解が不完全であったために、生体関連物質と結合せず蓋に固定化されたままの該標識物質の検出によるもの(本発明においては擬陽性反応と言う)なのかを容易に判断することができる。
【0022】
このように試料への溶解時に色が変化する標識物質としては、例えば、その分子中に溶解時に色が変化する物質を含有するものが挙げられる。そしてこのような標識物質は、溶解時に色が変化する物質を、特異的結合物質の構成成分のいずれかに、例えば、化学結合あるいは吸着等の方法により固定化することで得られる。この時の固定化方法は従来公知の方法を適用すれば良い。
【0023】
前記試料への溶解時に色が変化する標識物質としては、用いる試料の種類に応じて適宜選択して用いれば良い。例えば、前記試料として最も汎用される水溶液へ溶解した時に色が変化するものとして、塩化コバルト(II)を含有するものを好ましいものとして挙げることができる。塩化コバルト(II)は青色結晶であるが、水に溶解すると赤色に変化することが知られている。したがって、水溶液の色の変化により、標識物質の溶解を容易に確認することができ、擬陽性反応を誤って陽性反応と判定することを防止することができる。
【0024】
本発明においては、生体関連物質を含有している可能性のある試料を充填する容器の形状および大きさは、後述する蓋が装着できる限り特に限定されず、目的に応じて適宜選択すれば良い。図1に蓋を装着した状態の容器を例示する。形状であれば、例えば、図1(a)に示すマイクロチューブ状容器10、あるいは図1(b)および(c)に示すマイクロプレート状容器11等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、マイクロチューブ状容器であれば、ここに示すもの以外にも、八連タイプ等のチューブ状容器が複数個連結されたものを挙げることもできる。また、マイクロプレート状容器であれば、ここに挙げた96穴タイプ以外にも、384穴タイプ、1536穴タイプ等、種々のものを挙げることもできる。なお、図1(a)は、単独型の蓋12を装着した状態でのマイクロチューブ状容器10の正面図、図1(b)は、連続型の蓋13を装着した状態でのマイクロプレート状容器11の平面図、図1(c)は正面図である。
【0025】
前記容器の材質は特に限定されないが、光透過性を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ガラス、ポリスチレン、ビニルポリマー等が挙げられる。このような光透過性を有するものであれば、後述するように、生体関連物質検出時に試料溶液の様子を容易に確認でき好適である。
【0026】
本発明においては、前記容器に装着する蓋として、前記特異的結合物質が固定化された蓋を用いる。
前記蓋の大きさおよび特異的結合物質固定部位以外の形状は、前記容器に装着可能であれば特に限定されず、容器に合わせて適宜選定すれば良い。形状であれば、例えば、図1(a)に示すように、マイクロチューブ状容器10に対しては単独型の蓋12を挙げることができる。そして、図1(b)および(c)に示すように、マイクロプレート状容器11に対しては、複数の単独型の蓋が一体に設けられた連続型の蓋13を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記蓋の材質は、該蓋を介して外部より標識が光学的に検出できる光透過性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス、ポリスチレン、ビニルポリマー等が挙げられる。ただし、標識として蛍光を検出する場合には、それ自体が発する蛍光量が少ないものを用いることが好ましく、このような好ましいものとして具体的には、例えば、ガラス、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0028】
特異的結合物質は、蓋の容器内へ向けて露出された表面、すなわち、前記容器に装着時に、容器内の前記試料と接触可能な領域に固定化されている。
そして、特異的結合物質は、蓋の前記接触可能領域のうち、20〜100%の領域に固定化されていることが好ましく、20〜80%の領域に固定化されていることがより好ましい。
図2は、このような本発明の蓋の縦断面を例示する概念図である。特異的結合物質21は、蓋20の、容器装着時に試料と接触可能な領域のうち中心よりに固定化されており、前記接触可能領域周縁部には固定化されていない。このようにすれば、蓋の前記接触可能領域全域で標識が検出された際に、生体関連物質と結合せずに蓋に付着しているいわゆる擬陽性反応であることを明確に判断することができる。
このように、蓋の前記接触可能領域に占める特異的結合物質の固定化領域が20%以上であれば、生体関連物質をより明確に検出することができ、上限を80%程度とすれば、検出結果の誤判定防止に好適である。
【0029】
特異的結合物質は、検出対象である生体関連物質の種類に応じて、複数種類用いることができる。この場合、複数種類の特異的結合物質は、蓋の所定箇所に、種類ごとに区分されることなく混合して固定化されていても良いが、種類ごとに区分されて蓋の所定箇所に固定化されていることが好ましい。このような好ましい固定形態とすれば、試料中に複数種類の生体関連物質が含有されている可能性がある場合に、いずれの生体関連物質が検出されたのか容易に判定することができる。種類ごとに区分する場合には、区分の仕方は特に限定されず、任意に設定することができる。ただし、特異的結合物質の固定化位置と種類との対応を明確化しておくことが好ましい。
【0030】
特異的結合物質を蓋に固定化する方法は特に限定されない。該特異的結合物質および蓋の材質を考慮して、従来公知の方法を適用すれば良い。
【0031】
蓋の前記領域には、後述するように前記標識物質が固定化されていても良い。この場合、標識物質は、容器内で試料と接触させた際に、試料中へ移行する必要があるので、蓋から離脱可能に固定化されることが必要である。このような固定化方法としては、例えば、該標識物質を含有する溶液を蓋の固定化領域に滴下した後、凍結乾燥、減圧乾燥、風乾等により溶媒を除去する方法が挙げられる。この場合、標識物質を含有する溶液中には、標識物質の固定化を補助するものが含有されていることが好ましい。例えば、生体関連物質を含有している可能性のある試料として汎用される水溶液を用いる場合には、水溶性の高分子化合物、具体的には例えば、トレハロース等の多糖類が含有されていることが好ましい。
【0032】
特異的結合物質を複数種類用いる場合には、例えば先に述べた通り、これら特異的結合物質がその種類ごとに区分されて蓋の所定箇所に固定化され、特異的結合物質の固定化位置と種類との対応が明確化されていれば、用いる標識物質は一種類でも良い。この場合、検出対象の生体関連物質がたとえ複数であっても、蓋における標識の検出位置により、検出された生体関連物質の種類を特定することができるからである。
ただし、特異的結合物質を複数種類用いる場合には、標識物質も特異的結合物質にあわせて同数の種類を用いることが好ましい。このようにすることで、複数種類の生体関連物質を、蓋における標識の検出位置だけでなく標識の種類からも、より明確に区別して検出することができるからである。
【0033】
蓋の、容器装着時に試料と接触可能な領域は、凸状とされていることが好ましい。このようにすることで、生体関連物質を含有している可能性のある試料を前記特異的結合物質と容易に接触させることができる。また、標識を光学的に検出する際に、前記領域における液の残存を低減することができる。そして、前記領域の表面積を増やすことができるので、特異的結合物質の固定化量、および前記標識物質を蓋に固定化する場合には該標識物質の固定化量を増やすことができる。これにより、標識の光学的検出をより高感度に行うことができる。また、後述するように固定化された標識物質を前記試料と混合する際に、容易に混合できるので、標識の光学的検出をより高精度に行うことができる。
【0034】
図3は、このような本発明の蓋の縦断面を例示する概念図であり、ここでは蓋30の前記領域は半球状となっている。このようにすることで、凸状とされていない場合と比べると、より多くの特異的結合物質21を固定化できる。ただしここに示すものは一例であって、前記領域は凸状であれば、その形状はこれに限定されるものではない。
【0035】
本発明の蓋が装着された容器は、生体関連物質の検出に好適である。容器内の試料が容器外へ漏出することが無い限り、本発明の蓋を容器へ装着する方法は特に限定されない。
【0036】
次に、ここまで述べた容器装着用の蓋を用いて、生体関連物質を検出する方法について説明する。
(第一の実施形態)
本発明の検出方法の第一の実施形態は、生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記標識物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0037】
生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する時は、前記試料および前記標識物質を別々に容器に充填しても良く、この場合、充填する順序は特に限定されない。
【0038】
生体関連物質として核酸を含有している可能性のある試料を用いる場合には、あらかじめポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と略記する)等により核酸増幅操作を行ってから、接触工程に供しても良い。この場合、該接触工程で用いる容器中で核酸増幅操作を行えば、試料を移す必要がなく検出工程まで行うことができ、簡便に検出を行うことができる。これは以下に述べる第二および第三の実施形態においても同様である。
【0039】
蓋に固定化されている特異的結合物質に、容器内の標識物質を含有する試料を接触させる方法は特に限定されないが、例えば、蓋装着後に容器を転倒させる方法が挙げられる。(以下、生体関連物質を含有している可能性のある試料、特異的結合物質および標識物質を、容器を転倒させて接触させることを、転倒混和と略記することがある。)
【0040】
前記接触工程の条件は、特異的結合の形成が妨げられない限り特に限定されないが、15℃以上38℃以下の温度であれば、時間は5〜60分であることが好ましく、4℃以上〜15℃未満の温度であれば、時間は1〜10時間程度であることが好ましい。
【0041】
接触後は、容器を静置して、蓋が有する標識を光学的に検出すれば良い。例えば、容器がマイクロプレート状である場合にはこれを平置き静置し、マイクロチューブ状である場合には一般に広く使用されているチューブスタンドを使用して静置することが好ましい。
接触後の蓋が有する標識を検出する時は、容器から蓋をはずして該当箇所を直接観察しても良いが、蓋は光透過性の材質からなるので、蓋を容器に装着したまま容器外部から蓋を通じて該当箇所を観察することもできる。この場合、容器も蓋同様に光透過性の材質からなるものであれば、容器を通じて該当箇所を観察することもできる。
【0042】
接触工程後の蓋が有する標識を光学的に検出する方法は特に限定されず、標識の種類に応じて適宜従来公知の方法を適用すれば良い。例えば、可視領域で呈色するものを検出する場合には、検出装置を用いても良いが、目視で検出することもでき、簡便に結果を判定することができる。また、蛍光または化学発光を検出する場合には、一般的に使用されている蛍光光度計または化学発光検出装置を使用すれば良い。
【0043】
標識検出工程における、容器へ装着された状態の蓋の様子を図4に例示する。図4(a)および(b)は一種類の生体関連物質を検出した時(陽性反応)の図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。そして図4(c)および(d)は生体関連物質が検出されなかった時(本発明において陰性反応と言う)の図で、(c)は平面図、(d)は正面図である。図4(a)および(b)に示すように、陽性反応の場合には、蓋4の特異的結合物質固定化領域には、生体関連物質が結合し、該生体関連物質には標識物質41が結合しているので、該領域は呈色する。一方、図4(c)および(d)に示すように、陰性反応の場合には、標識物質41は試料中に含有されている。
【0044】
検出対象の生体関連物質が複数種類である場合には、先に述べた通り、特異的結合物質を複数種類用い、その種類ごとに区分して蓋の所定箇所に固定化すれば、用いる標識物質は一種類でも良い。標識物質も複数種類用いれば、複数種類の特異的結合物質は、その種類ごとに区分して蓋の所定箇所に固定化する必要はないが、区分して固定化しておけば、複数種類の生体関連物質をより明確に検出することができる。すなわち、特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とは同数であることが好ましい。
【0045】
一方、複数種類の特異的結合物質が、すべての種類が区分されることなく所定領域に固定化された蓋を用いても、複数種類の生体関連物質を検出することができる。すなわち、生体関連物質の種類に応じた、すべての標識の光学的特徴が検出される。
例えば、成分Aが赤色の標識物質で、成分Bが青色の標識物質で検出される場合、いずれか一方の成分のみが蓋に付着すれば、その成分に対応した色のみが検出される。そして、双方の成分が共に蓋に付着すれば、双方の色の混色、すなわち紫色が検出される。
【0046】
(第二の実施形態)
本発明の検出方法の第二の実施形態は、生体関連物質を含有している可能性のある試料を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質、および該特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記試料を前記標識物質および前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0047】
本実施形態は、標識物質を、生体関連物質を含有している可能性のある試料と共に容器に充填するのではなく、標識物質が、蓋の容器内へ向けて露出された表面、すなわち、前記容器に装着時に、容器内の前記試料と接触可能な領域に固定化されている蓋を用いる点を除けば、第一の実施形態と同様である。接触工程も転倒混和で行うことが好ましい。
図5は、本実施形態の手順を例示するフローチャートである。
【0048】
(第三の実施形態)
本発明の検出方法の第三の実施形態は、生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行う工程と、前記標識化操作後の試料が充填された容器に対して、光透過性の材質からなり、該容器内の試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化された蓋を装着する工程と、前記標識化操作後の試料を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0049】
生体関連物質を標識化する操作とは、試料中に生体関連物質が含有されている場合に、該生体関連物質を光学的に区別できるようにすることを指す。具体的には、生体関連物質に、標識能を有するものを直接あるいは間接に結合させることを指す。ここで、標識能を有するものとは、例えば、蛍光または化学発光を生じるもの、あるいは可視領域で呈色するもの等を指す。これらは、先に標識物質の説明で述べたものを用いることができる。
【0050】
標識能を有するものを、直接あるいは間接に生体関連物質に結合させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適用すれば良い。例えば、生体関連物質が核酸である場合には、標識能を有するものが結合されたプライマーを用いて、PCR法等で該核酸を増幅する方法が挙げられる。
【0051】
また、生体関連物質として核酸を含有している可能性のある試料を用いる場合には、あらかじめPCR法等により核酸増幅操作を行ってから、標識化する操作を行っても良い。
【0052】
本実施形態は、標識物質を、生体関連物質を含有している可能性のある試料および特異的結合物質と接触させるのではなく、生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行うこと以外は、第一および第二の実施形態と同様である。標識化操作後の試料を特異的結合物質と接触させる工程も、容器を転倒させて行うことが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]ハプテンで修飾した核酸の検出
(サンプル溶液の調製)
取り外し可能な蓋が付属した200μlマイクロチューブ(株式会社アシスト製)内において、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAを有するヒトゲノムDNAを約5ng、配列番号1に示す塩基配列の5’−末端にジゴキシゲンを結合させたプライマーおよび配列番号2に示す塩基配列の5’−末端にビオチンを結合させたプライマーを各々20pmol、10×Ex Taq緩衝液を1×、dNTPmixを0.2mMとなるように混合し、全体の液量を50μlとした。この混合液にTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)を1.25units加え、付属のフタを装着し、94℃/30秒、55℃/30秒、74℃/30秒の熱サイクルを30回繰り返して、PCR増幅を行った。得られたDNA溶液を試料溶液とした。
【0054】
(検出用蓋の作製)
図6に示す本発明の検出用蓋6を作製した。図6は、検出用蓋6を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記PCR増幅で用いたマイクロチューブに適合するサイズで、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋61に、抗ジゴキシゲン抗体62をエチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、抗ビオチン抗体64が付加された赤色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)63の溶液30μlを、ビニルポリマー製の蓋61の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、凍結乾燥させ、検出用蓋6を作製した。
【0055】
(DNAの検出)
PCR増幅を行なったマイクロチューブの付属の蓋をはずし、前記検出用蓋6を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和して、十分な反応を行なった後、遠心機プチはちR(商品名、トミー工業社製)を用いて1 秒間遠心した。遠心後、マイクロチューブをチューブスタンドに立てた。
【0056】
(判定)
結果を図7に示す。図7は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋6を例示する概念図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。
図7に示すように、検出対象であるハプテン付DNA断片と抗ジゴキシゲン抗体62、赤色ラテックスビーズ63が特異的に結合し、検出用蓋6の所定領域に赤色ラテックスビーズ63が付着して陽性反応を示した。
【0057】
[実施例2]
配列番号3に示す塩基配列においてC→GのSNPが生じたものである配列番号4に示す塩基配列からなるDNAを、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAの代わりに有するヒトゲノムDNAをサンプルとして、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、SNPにより、配列番号4のDNAは、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅されず、赤色ラテックスビーズ63は、検出用蓋6の所定領域に付着せずに陰性反応を示し、赤色ラテックスビーズ63は試料中に含有されていることが確認された。結果を図8に示す。図8は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋6を例示する概念図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図である。
【0058】
実施例1および2においては、PCR増幅で用いたサンプルチューブをそのまま用いて検出を行なったので、全量50μlと微量のサンプル溶液を用いても無駄なく簡単に検出対象の核酸の有無を確認することができた。また、標識物質はあらかじめ検出用蓋に固定されており、分注操作が不要なので、不純物混入を抑制しつつ短時間で検査することができた。さらに、検出は目視による観察で行えるので検出装置等が不要であり、安価に検査を行えることが確認された。実施例1および2の手順をフローチャートとして図9に示す。
【0059】
[実施例3]抗原の検出
(サンプル溶液の調製)
96人の患者より、抗原であるCRP(C−reactive protein)を含有している可能性のある血清を試料として採取し、96穴マイクロプレート(Corning社製)に、それぞれ 100μlずつ分注した。
【0060】
(検出用蓋の作製)
図10に示す本発明の検出用蓋7を作製した。図10は、検出用蓋7を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記マイクロプレートに適合するサイズであり、容器内へ向けて露出される表面が凸状で、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋71に、抗CRP抗体72をエチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、塩化コバルト(II)で標識されたビーズ付き抗CRP抗体(ROCKLAND社製、Cat.No.209−1132)73の溶液30μlを、ビニルポリマー製の蓋71の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、減圧乾燥させ、検出用蓋7を作製した。なお、図10においては、抗CRP抗体72およびビーズ付き抗CRP抗体73が固定化されている様子を見易くするために、蓋71に固定化されている一部の抗CRP抗体72およびビーズ付き抗CRP抗体73の図示を省略している。これは、同様の形状の蓋を用いている以下の実施例においても同様である。
【0061】
(抗原の検出)
患者血清を分注したマイクロプレートに、前記検出用蓋7を装着した。次いでマイクロプレートを転倒混和し、十分な反応を行なった後、静置した。
【0062】
(判定)
結果を図11および12に示す。図11は、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋7を、マイクロプレート中の個々の容器ごとに例示する概念図であり、図11(a)および(c)は平面図、図11(b)および(d)は正面図である。そして図12は、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋7全体を例示する概念図である。
図11(a)および(b)に示すように、CRPが血清中に存在した試料では、CRPと抗CRP抗体72、ビーズ付き抗CRP抗体73が特異的に結合し、検出用蓋7の所定領域にビーズ付き抗CRP抗体73が付着して陽性反応を示した。検出用蓋7に付着したビーズ付き抗CRP抗体73が、試料である血清に溶解すると、溶解前は青色であった検出用蓋7の所定領域は、赤色を呈した。
一方、CRPが血清中に存在しなかった試料では、ビーズ付き抗CRP抗体73は、検出用蓋7の所定領域に付着せず陰性反応を示し、ビーズ付き抗CRP抗体73は試料中に含有されていることが確認された。結果を図11に示す。図11(c)は平面図、図11(d)は正面図である。陰性の場合は、試料が赤色を呈した。
なお、図12の着色された部分が、図11(c)および(d)で例示される容器に該当する。
【0063】
実施例3においては、小児検体のように微量の試料でも、無駄なく簡単に検出対象の抗原の有無を確認することができた。さらに96穴マイクロプレートを用いたので、多数の試料を一度に検査することができた。また、標識物質はあらかじめ検出用蓋に固定されており、分注操作が不要なので、不純物混入を抑制しつつ短時間で検査することができた。さらに、検出用蓋の容器内へ向けて露出される表面を凸状とすることにより、試料を特異的結合物質および標識物質と容易に接触させることができ、標識物質を容易に試料と混合できた。また、表面積を増加させて特異的結合物質の固定化量を増やしたので検出感度を高めることができ、試料の液切れを良くすることができたので、擬陽性反応の発生を抑制することができた。さらに、検出は目視による観察で行えるので、検出装置等が不要であり、安価に検査を行えることが確認された。実施例3の手順をフローチャートとして図13に示す。
【0064】
[実施例4]リガンドの蛍光検出
(試料溶液の調製)
1.5mLマイクロチューブ(Eppendorf社製)に、0、0.05、0.2および1mg/mLの四種類の濃度のビオチン付加アルブミン100μlを別々に、さらにFITC標識抗アルブミン抗体溶液10μlを分注した。
【0065】
(検出用蓋の作製)
図14に示す本発明の検出用蓋8を作製した。図14は、検出用蓋8を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記マイクロチューブに適合するサイズのガラス製の蓋81のうち、容器内へ向けて露出される表面に、ストレプトアビジン82を滴下して吸着させた。
【0066】
(リガンドの蛍光検出)
マイクロチューブに付属の蓋をはずし、検出用蓋8を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和し、十分な反応を行った。次いで検出用蓋8をはずし、蛍光顕微鏡IX70(商品名、オリンパス株式会社製)を用いて試料の接触部位を観察し、CCDを用いて蛍光画像を撮影した。結果を図15に示す。図15は、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋8を例示する概念図であり、図15(a)および(c)は平面図、図15(b)および(d)は正面図である。
図15(a)および(b)に示すように、ビオチン標識したアルブミンが存在した試料では、ビオチン付加アルブミンとストレプトアビジン82、FITC標識抗アルブミン抗体83が特異的に結合し、検出用蓋8の所定領域にFITC標識抗アルブミン抗体83が付着して陽性反応を示した。
一方、ビオチン標識したアルブミンが存在しなかった試料では、FITC標識抗アルブミン抗体83は、検出用蓋8の所定領域に付着せず陰性反応を示し、FITC標識抗アルブミン抗体83は試料中に含有されていることが確認された。
さらに、取得した画像からImagePro(商品名、Media Cybarnetics社製)を用いて蛍光強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例4においては、微量の試料でも無駄なく簡単に検出対象のリガンドの蛍光を検出することができた。本実施例では、標識物質は分注操作により添加しており、検出用蓋に固定化できないものでも使用可能であることが確認された。また、検出は蛍光強度の測定により行ったので、高感度且つ高精度に検出することができ、定量化することができた。実施例4の手順をフローチャートとして図16に示す。
【0069】
[実施例5]ハプテンで修飾した2種類の核酸の検出〜その1
(試料溶液の調製)
取り外し可能な蓋が付属した200μlマイクロチューブ(株式会社アシスト製)内において、配列番号3に示す塩基配列からなるハプテン結合DNAを有するヒトゲノムDNAを約5ng、配列番号1に示す塩基配列の5’−末端にジゴキシゲンを結合させたプライマー、配列番号2に示す塩基配列の5’−末端にビオチンを結合させたプライマー、配列番号5に示す塩基配列の5’−末端にFITCを結合させたプライマーおよび配列番号6に示す塩基配列の5’−末端にDNPを結合させたプライマーを各々20pmol、10×Ex Taq緩衝液を1×、dNTPmixを0.2mMとなるように混合し、全体の液量を50μlとした。この混合液にTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)を1.25units加え、付属の蓋を装着し、94℃/30秒、55℃/30秒、74℃/30秒の熱サイクルを30回繰り返して、PCR増幅を行った。得られたDNA溶液を試料溶液とした。
【0070】
(検出用蓋の作製)
図17に示す本発明の検出用蓋9を作製した。図17は、検出用蓋9を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記PCR増幅で用いたマイクロチューブに適合するサイズで、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋91に、抗ジゴキシゲン抗体92および抗FITC抗体95を二つの区分に分けて別々に、エチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、抗ビオチン抗体94が付加された赤色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)93の溶液15μl、および抗DNP抗体97が付加された青色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)96の溶液15μlを、それぞれビニルポリマー製の蓋91の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、凍結乾燥させ、検出用蓋9を作製した。
【0071】
(DNAの検出)
PCR増幅を行なったマイクロチューブの付属の蓋をはずし、前記検出用蓋9を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和して、十分な反応を行なった後、遠心機プチはちR(商品名、トミー工業社製)を用いて1 秒間遠心した。遠心後、マイクロチューブをチューブスタンドに立てた。
【0072】
(判定)
結果を図18に示す。図18は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋9を例示する概念図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は正面図である。
図18に示すように、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅された配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗ジゴキシゲン抗体92、抗ビオチン抗体94が付加された赤色ラテックスビーズ93と特異的に結合し、検出用蓋9の所定領域に赤色ラテックスビーズ93が付着して陽性反応を示した。一方、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅可能な配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNAは、用いたヒトゲノム中には含まれていなかったため、PCR増幅されず、青色ラテックスビーズ96は、検出用蓋9の所定領域に付着せずに陰性反応を示し、青色ラテックスビーズ96は試料中に含有されていることが確認された。その結果、図18(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋9は、左側半面のみが赤色となった。
【0073】
[実施例6]
実施例5で用いたものとは異なるヒトゲノムDNAを用いて、実施例5と同様の操作を行なった。結果を図19に示す。図19は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋9を例示する概念図であり、図19(a)は平面図、図19(b)は正面図である。
図19に示すように、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅された配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗FITC抗体95、抗DNP抗体97が付加された青色ラテックスビーズ96と特異的に結合し、検出用蓋9の所定領域に青色ラテックスビーズ96が付着して陽性反応を示した。一方、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅可能な配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNAは、用いたヒトゲノム中には含まれていなかったため、PCR増幅されず、赤色ラテックスビーズ93は、検出用蓋9の所定領域に付着せずに陰性反応を示し、赤色ラテックスビーズ93は試料中に含有されていることが確認された。その結果、図19(b)に示すように、上部から観察すると検出用蓋9は、右側半面のみが青色となった。
【0074】
実施例5および6より、微量の試料で二種類の生体関連物質の検出が行えることが確認された。これら実施例では、検出対象である生体関連物質として二種類を想定して行ったが、特異的結合物質および標識物質の種類、並びに検出用蓋における固定化区分をさらに増やすことで、本発明では、三種類以上の生体関連物質の検出を同時に行なうことができる。
また、抗抗体付きラテックスビーズと、該抗抗体付きラテックスビーズと特異的に結合する抗体を共通化して、フタ内面の色素が検出された位置により検出を行なうことも可能である。
実施例5および6の手順をフローチャートとして図20に示す。
【0075】
[実施例7]ハプテンで修飾した2種類の核酸の検出〜その2
(試料溶液の調製)
実施例5と同様の方法により、PCR増幅したDNAを含有する試料溶液を得た。
【0076】
(検出用蓋の作製)
図21に示す本発明の検出用蓋10を作製した。図21は、検出用蓋10を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記PCR増幅で用いたマイクロチューブに適合するサイズで、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋101に、抗ジゴキシゲン抗体102および抗FITC抗体105を、区分することなく混合してエチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、抗ビオチン抗体104が付加された赤色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)103の溶液15μl、および抗DNP抗体107が付加された青色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)106の溶液15μlを、それぞれビニルポリマー製の蓋101の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、凍結乾燥させ、検出用蓋10を作製した。
【0077】
(DNAの検出)
実施例5と同様に、PCR増幅を行なったマイクロチューブの付属の蓋をはずし、前記検出用蓋10を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和して、十分な反応を行なった後、遠心機プチはちR(商品名、トミー工業社製)を用いて1 秒間遠心した。遠心後、マイクロチューブをチューブスタンドに立てた。
【0078】
(判定)
結果を図22に示す。図22は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋10を例示する概念図であり、図22(a)は平面図、図22(b)は正面図である。
図22に示すように、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅された配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗ジゴキシゲン抗体102、抗ビオチン抗体104が付加された赤色ラテックスビーズ103と特異的に結合し、検出用蓋10の所定領域に赤色ラテックスビーズ103が付着した。一方、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅可能な配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNAは、用いたヒトゲノム中には含まれていなかったため、PCR増幅されず、青色ラテックスビーズ106は、検出用蓋10の所定領域に付着せずに、試料中に含有されていることが確認された。その結果、図22(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋10は、赤色となる陽性反応を示した。
【0079】
[実施例8]
実施例7で用いたものとは異なるヒトゲノムDNAを用いて、実施例7と同様の操作を行なった。結果を図23に示す。図23は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋10を例示する概念図であり、図23(a)は平面図、図23(b)は正面図である。
図23に示すように、検出用蓋10の所定領域に青色ラテックスビーズ106が付着し、赤色ラテックスビーズ103は付着せず、その結果、図23(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋10は、青色となる陽性反応を示した。これは、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅された配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗FITC抗体105、抗DNP抗体107が付加された青色ラテックスビーズ106と特異的に結合したのに対し、配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNAはPCR増幅されなかったことを示した。すなわち、試料に用いたヒトゲノムDNA中には、配列番号7のDNAが含まれ、配列番号3のDNAが含まれていないことが確認された。
【0080】
[実施例9]
実施例7および8で用いたものとは異なるヒトゲノムDNAを用いて、実施例7と同様の操作を行なった。結果を図24に示す。図24は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋10を例示する概念図であり、図24(a)は平面図、図24(b)は正面図である。
図24に示すように、検出用蓋10の所定領域に、赤色ラテックスビーズ103および青色ラテックスビーズ106が付着し、その結果、図24(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋10は、紫色となる陽性反応を示した。これは、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅された配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗ジゴキシゲン抗体102、抗ビオチン抗体104が付加された赤色ラテックスビーズ103と特異的に結合し、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅された配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗FITC抗体105、抗DNP抗体107が付加された青色ラテックスビーズ106と特異的に結合していることを示した。すなわち、試料に用いたヒトゲノムDNA中には、配列番号3および7のDNAがいずれも含まれていることが確認された。
【0081】
実施例7〜9より、微量の試料で二種類の生体関連物質の検出が行えることが確認された。これら実施例では、検出対象である生体関連物質は二種類であったが、特異的結合物質および標識物質の種類をさらに増やすことで、本発明では、三種類以上の生体関連物質の検出を同時に行なうことができる。
実施例7〜9の手順をフローチャートとして図25に示す。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、臨床検査、衛生検査および生化学研究の分野において、生体試料の解析に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】生体関連物質を含有している可能性のある試料の充填に用いる容器を例示する図である。
【図2】本発明の蓋の縦断面を例示する概念図である。
【図3】本発明の蓋の縦断面を例示する概念図である。
【図4】標識検出工程における、容器へ装着された状態の本発明の蓋を例示する図である。
【図5】本発明の生体関連物質検出方法の手順を例示するフローチャートである。
【図6】実施例1および2で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図7】実施例1における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図8】実施例2における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図9】実施例1および2の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施例3で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図11】実施例3における、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋を、マイクロプレート中の個々の容器ごとに例示する概念図である。
【図12】実施例3における、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋全体を例示する概念図である。
【図13】実施例3の手順を示すフローチャートである。
【図14】実施例4で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図15】実施例4における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図16】実施例4の手順を示すフローチャートである。
【図17】実施例5および6で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図18】実施例5における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図19】実施例6における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図20】実施例5および6の手順を示すフローチャートである。
【図21】実施例7〜9で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図22】実施例7における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図23】実施例8における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図24】実施例9における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図25】実施例7〜9の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
4,6,7,8,9,10,20,30・・・蓋、21・・・特異的結合物質、41・・・標識物質、62,92,102・・・抗ジゴキシゲン抗体、63,73,93,96,103,106・・・ビーズ、64,94,104・・・抗ビオチン抗体、72・・・抗CRP抗体、82・・・ストレプトアビジン、83・・・FITC標識抗アルブミン抗体、95,105・・・抗FITC抗体、97,107・・・抗DNP抗体
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質の検出方法、および容器へ装着して生体関連物質の検出に用いるための蓋、並びに該蓋が装着されてなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来臨床検査の分野では、例えば、血液、血清、血漿、尿などの生体サンプルを用いて様々な疾患の診断が行なわれている。これら診断で用いられている簡便で迅速な検査方法としては、ELISA法、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、凝集法などがある。これらの方法は高価で大規模な機器を必要とせず、比較的安価な検査キットを用いて迅速に検査することができるため、少数検体の検査や、結果がすぐに必要とされる臨床医による検査、患者のベッドサイドでの検査などで広く一般に採用されている。
【0003】
このような従来の検査方法として具体的には、例えば、24穴プレートまたは96穴プレートの表面に抗原または抗体を添加し、濃縮乾燥することによりこれら抗原または抗体を固相化したプレートを用いて、特にELISA法により免疫測定を行う方法(特許文献1参照)、検出対象成分に対する特異的抗体を結合させた担体試薬を、内部が減圧され観察部分が透明である容器に収納した、免疫反応測定用試薬キットを用いて、凝集法により測定を行う方法(特許文献2参照)が挙げられる。
【0004】
さらに近年では、新しい臨床検査として遺伝子検査が注目を集めている。一般的な遺伝子検査においては、医師により採血された血液サンプルから核酸を抽出し、抽出された核酸に対して増幅反応を行ない、増幅産物を検出するなどの作業が行なわれる。検出方法としては、電気泳動やマイクロアレイを用いる方法が挙げられる。
【特許文献1】特開平6−341990号公報
【特許文献2】特開平7−270411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、安価に検査を行なえるが、ブロッキングや洗浄工程等が必要であるため、測定に手間を要する上、判定にも時間を要するという問題点があった。
また、特許文献2に記載の方法では、患者から採取した検体の溶液を充填した容器と該試薬キットを連結することで、減圧された試薬キット内に検体溶液を吸入させて試薬と混合し、反応結果を目視で判定する。すなわち、ピペットなどを使用して検体溶液を凝集判定用プレート上に分注する必要がなく、反応結果を迅速かつ簡単に判定することができるという利点を有する。しかし、検体が極めて微量である場合に使用することができず、また、針を使用するキットであるため、安全上好ましくないという問題点があった。
一方、従来の遺伝子検査の場合は、電気泳動では作業に手間を要し検出までに時間を要し、またマイクロアレイは高価なため手軽に使用できないなど、検出方法に問題点があった。
【0006】
このように、臨床検査の分野においては、検体が微量であっても安価で簡便かつ迅速に測定結果を判定できる検査方法の開発が求められており、特に遺伝子検査の分野においてこの要望が強いのが現状である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、免疫学的方法による遺伝子検査に好適な、微量の生体関連物質を安価で簡便かつ迅速に検出する方法と該検出方法に用いる生体関連物質検出用の蓋、並びに該蓋が装着されてなる容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行う工程と、前記標識化操作後の試料が充填された容器に対して、光透過性の材質からなり、該容器内の試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化された蓋を装着する工程と、前記標識化操作後の試料を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法である。
請求項2に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記標識物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法である。
請求項3に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質、および該特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記試料を前記標識物質および前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法である。
請求項4に記載の発明は、蓋装着後の容器を転倒させて、前記接触を行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
請求項5に記載の発明は、前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
請求項6に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
請求項7に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法である。
【0009】
請求項8に記載の発明は、生体関連物質を含有している可能性のある試料が充填された容器に装着可能な蓋であって、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化されていることを特徴とする蓋である。
請求項9に記載の発明は、前記容器内の試料と接触可能な領域に、さらに、前記特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化されていることを特徴とする請求項8に記載の蓋である。
請求項10に記載の発明は、前記容器内の試料と接触可能な領域が、凸状とされていることを特徴とする請求項8または9に記載の蓋である。
請求項11に記載の発明は、前記容器内の試料と接触可能な領域のうち、20〜100%の領域に、前記特異的結合物質が固定化されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項12に記載の発明は、前記標識物質が、前記容器内の試料に溶解可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項13に記載の発明は、前記標識物質が、蛍光性物質、化学発光性物質および着色物質のいずれかを含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項14に記載の発明は、前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項15に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項16に記載の発明は、前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋である。
請求項17に記載の発明は、請求項8〜16のいずれか一項に記載の蓋が装着されてなることを特徴とする容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作が単純なので生体関連物質を安価で簡便かつ迅速に検出することができる。また、サンプルの分注操作等が不要なので、サンプルへの異物混入が防止でき、生体関連物質が微量でも高精度に検出することができる。さらに検出反応が限定されず、免疫学的反応、核酸のハイブリダイゼーション、リガンド―レセプター反応等種々の方法が適用できるため、幅広い生体関連物質を検出対象とすることができる。本発明は、特に免疫学的方法による遺伝子検査に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において生体関連物質とは、生体から抽出、単離等された物質、あるいはこれらを化学処理、化学修飾等したものを指す。具体的には、例えば、抗原、抗体、酵素、アブザイム、サイトカイン、腫瘍マーカー、その他のタンパク質、またはDNA、cDNA、RNA、その他の核酸、あるいはホルモン類、ハプテン等を挙げることができ、さらにこれらを化学処理あるいは化学修飾したもの等を挙げることができる。
例えば、核酸等は、ビオチン、ジゴキシゲン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)等、免疫反応を示すもので化学修飾すると好適である。
【0012】
そして、生体関連物質を含有している可能性のある試料としては、血液、血清、血漿、尿などの液状の生体試料を採取してそのまま用いても良いし、これらの生体試料に適宜濃度調整あるいは成分調整等の処理を行ってから用いても良いし、緩衝液等に生体試料を添加して用いても良い。さらには生体組織を適宜液状に加工して用いても良い。
また、試料中には、検出対象の生体関連物質以外にも、本発明の効果を妨げないものであれば、如何なる成分が含有されていても良い。
【0013】
本発明において特異的結合とは、特定の物質間で選択的に形成される、特異性の高い分子間力に基づく結合を意味する。具体的には、例えば、抗原および抗体間の免疫学的反応による結合、相補的な塩基配列を有するDNAやRNA等のハイブリダイゼーションによる結合、ビオチンおよびアビジン間の結合、糖およびレクチン間の結合、DNAおよびDNA結合性タンパク質間の結合、その他リガンドおよびレセプター間の結合等を挙げることができる。それ自体は免疫学的反応を示さないが、核酸等と結合して免疫学的反応を示すハプテンを用いても良い。これらの中でも、免疫学的反応による結合が本発明においては好適である。
【0014】
本発明においては、先に述べた生体関連物質とこのような結合を形成するものであれば、如何なるものも生体関連物質と特異的に結合する物質(以下、特異的結合物質と略記することがある)として用いることができる。そして、先に述べた生体関連物質とこのような結合を形成し、かつ標識されたものであれば、本発明において生体関連物質と特異的に結合する標識物質(以下、標識物質と略記することがある)として用いることができる。
【0015】
ただし、前記特異的結合物質と前記標識物質は、互いに前記生体関連物質の異なる部位において特異的に結合するものである。
【0016】
本発明において、標識物質は、特異的結合物質自体が標識能を有するものでも良く、特異的結合物質に標識能を有するものが直接あるいは間接に結合されたものでも良い。ここで、標識能を有するものとは、光学的に区別可能なものを指し、具体的には例えば、蛍光または化学発光を生じるもの、あるいは可視領域で呈色するもの等を指す。
蛍光を生じるものとしては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、アクリフラビン、アレクサ等を挙げることができる。
化学発光を生じるものとしては、例えば、ルミノール類および1,2−ジオキセタン類等を挙げることができる。
可視領域で呈色するものとしては、例えば、色付きの微粒子等を挙げることができる。
【0017】
さらに色付きの微粒子としては、例えば、金属コロイド、非金属コロイド、高分子材料からなる微粒子等が挙げられる。
金属コロイドとしては、例えば、周期表(長周期型)8〜11族に属する金属、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等のコロイドを挙げることができる。
非金属コロイドとしては、例えば、セレン(Se)、テルル(Te)あるいは硫黄(S)などのコロイド状非金属粒子等をあげることができる。
高分子材料からなる微粒子としては、例えば、ラテックス、不溶性アガロース、セルロースあるいは不溶性デキストランなどの天然高分子からなる微粒子や、ポリスチレン、スチレンースチレン−スルホン酸(塩)共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スルホン酸共重合体などの合成高分子からなる微粒子などを挙げることができる。なかでも好ましいものとして、容易に入手可能であるなどの理由からラテックス製微粒子が挙げられる。
【0018】
これら微粒子は、光の吸収・反射・散乱等の波長が異なること、あるいは粒径が異なること、形状が異なること、材質が異なること等により、可視領域で呈色するものとして区別することが可能であれば良いが、必要に応じて、染料等で着色を施したものであっても良い。また、塩化コバルト(II)等異なる色の無機化合物で着色を施したものであっても良い。これら色付きの微粒子は、市販のものを用いても良いし、従来公知の方法で作製したものを用いても良い。
【0019】
本発明においては、これら標識能を有するものが特異的結合物質でない場合は、これら標識能を有するものを特異的結合物質に結合させ、標識物質として用いれば良い。このような、標識能を有するものが特異的結合物質に結合されてなる標識物質は、市販されているものがあればそれを用いても良いし、従来公知の方法により作製して用いても良い。
【0020】
例えば、色付きのラテックス製微粒子を特異的結合物質に結合させる場合には、表面にカルボキシル基やアミノ基等が露出されている官能基タイプのラテックス製微粒子を用い、この官能基に、特異的結合物質中の官能基を結合させれば良い。これら官能基同士を結合させる方法は、従来公知の方法を適用することができ、例えば、水溶性カルボジイミドでカルボキシル基とアミノ基を結合させるEDAC方法、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とをあらかじめ混合してカルボキシル基とアミノ基とを結合させる方法、双極性を有するリンカーを用いてアミノ基同士を架橋する方法、活性化したアルデヒド基やトシル基と官能基を結合させる方法等が挙げられる。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のいかなる方法を適用しても良いが、EDAC法が好ましい。
【0021】
前記標識物質は、生体関連物質を含有している可能性のある試料に溶解可能なものが好ましい。このようにすることで、試料中の生体関連物質との特異的結合を、より確実に行うことができる。
さらに該標識物質は、特に蓋に固定化されている場合には、前記試料に溶解時に色が変化するものが好ましい。このようにすれば、標識物質と前記試料との接触前後における該試料の色の変化を確認することで、標識物質の前記試料への溶解を確実に確認することができる。そして例えば、蓋が有する標識が、生体関連物質の検出によるもの(本発明においては陽性反応と言う)なのか、標識物質の前記試料への溶解が不完全であったために、生体関連物質と結合せず蓋に固定化されたままの該標識物質の検出によるもの(本発明においては擬陽性反応と言う)なのかを容易に判断することができる。
【0022】
このように試料への溶解時に色が変化する標識物質としては、例えば、その分子中に溶解時に色が変化する物質を含有するものが挙げられる。そしてこのような標識物質は、溶解時に色が変化する物質を、特異的結合物質の構成成分のいずれかに、例えば、化学結合あるいは吸着等の方法により固定化することで得られる。この時の固定化方法は従来公知の方法を適用すれば良い。
【0023】
前記試料への溶解時に色が変化する標識物質としては、用いる試料の種類に応じて適宜選択して用いれば良い。例えば、前記試料として最も汎用される水溶液へ溶解した時に色が変化するものとして、塩化コバルト(II)を含有するものを好ましいものとして挙げることができる。塩化コバルト(II)は青色結晶であるが、水に溶解すると赤色に変化することが知られている。したがって、水溶液の色の変化により、標識物質の溶解を容易に確認することができ、擬陽性反応を誤って陽性反応と判定することを防止することができる。
【0024】
本発明においては、生体関連物質を含有している可能性のある試料を充填する容器の形状および大きさは、後述する蓋が装着できる限り特に限定されず、目的に応じて適宜選択すれば良い。図1に蓋を装着した状態の容器を例示する。形状であれば、例えば、図1(a)に示すマイクロチューブ状容器10、あるいは図1(b)および(c)に示すマイクロプレート状容器11等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、マイクロチューブ状容器であれば、ここに示すもの以外にも、八連タイプ等のチューブ状容器が複数個連結されたものを挙げることもできる。また、マイクロプレート状容器であれば、ここに挙げた96穴タイプ以外にも、384穴タイプ、1536穴タイプ等、種々のものを挙げることもできる。なお、図1(a)は、単独型の蓋12を装着した状態でのマイクロチューブ状容器10の正面図、図1(b)は、連続型の蓋13を装着した状態でのマイクロプレート状容器11の平面図、図1(c)は正面図である。
【0025】
前記容器の材質は特に限定されないが、光透過性を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ガラス、ポリスチレン、ビニルポリマー等が挙げられる。このような光透過性を有するものであれば、後述するように、生体関連物質検出時に試料溶液の様子を容易に確認でき好適である。
【0026】
本発明においては、前記容器に装着する蓋として、前記特異的結合物質が固定化された蓋を用いる。
前記蓋の大きさおよび特異的結合物質固定部位以外の形状は、前記容器に装着可能であれば特に限定されず、容器に合わせて適宜選定すれば良い。形状であれば、例えば、図1(a)に示すように、マイクロチューブ状容器10に対しては単独型の蓋12を挙げることができる。そして、図1(b)および(c)に示すように、マイクロプレート状容器11に対しては、複数の単独型の蓋が一体に設けられた連続型の蓋13を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記蓋の材質は、該蓋を介して外部より標識が光学的に検出できる光透過性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス、ポリスチレン、ビニルポリマー等が挙げられる。ただし、標識として蛍光を検出する場合には、それ自体が発する蛍光量が少ないものを用いることが好ましく、このような好ましいものとして具体的には、例えば、ガラス、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0028】
特異的結合物質は、蓋の容器内へ向けて露出された表面、すなわち、前記容器に装着時に、容器内の前記試料と接触可能な領域に固定化されている。
そして、特異的結合物質は、蓋の前記接触可能領域のうち、20〜100%の領域に固定化されていることが好ましく、20〜80%の領域に固定化されていることがより好ましい。
図2は、このような本発明の蓋の縦断面を例示する概念図である。特異的結合物質21は、蓋20の、容器装着時に試料と接触可能な領域のうち中心よりに固定化されており、前記接触可能領域周縁部には固定化されていない。このようにすれば、蓋の前記接触可能領域全域で標識が検出された際に、生体関連物質と結合せずに蓋に付着しているいわゆる擬陽性反応であることを明確に判断することができる。
このように、蓋の前記接触可能領域に占める特異的結合物質の固定化領域が20%以上であれば、生体関連物質をより明確に検出することができ、上限を80%程度とすれば、検出結果の誤判定防止に好適である。
【0029】
特異的結合物質は、検出対象である生体関連物質の種類に応じて、複数種類用いることができる。この場合、複数種類の特異的結合物質は、蓋の所定箇所に、種類ごとに区分されることなく混合して固定化されていても良いが、種類ごとに区分されて蓋の所定箇所に固定化されていることが好ましい。このような好ましい固定形態とすれば、試料中に複数種類の生体関連物質が含有されている可能性がある場合に、いずれの生体関連物質が検出されたのか容易に判定することができる。種類ごとに区分する場合には、区分の仕方は特に限定されず、任意に設定することができる。ただし、特異的結合物質の固定化位置と種類との対応を明確化しておくことが好ましい。
【0030】
特異的結合物質を蓋に固定化する方法は特に限定されない。該特異的結合物質および蓋の材質を考慮して、従来公知の方法を適用すれば良い。
【0031】
蓋の前記領域には、後述するように前記標識物質が固定化されていても良い。この場合、標識物質は、容器内で試料と接触させた際に、試料中へ移行する必要があるので、蓋から離脱可能に固定化されることが必要である。このような固定化方法としては、例えば、該標識物質を含有する溶液を蓋の固定化領域に滴下した後、凍結乾燥、減圧乾燥、風乾等により溶媒を除去する方法が挙げられる。この場合、標識物質を含有する溶液中には、標識物質の固定化を補助するものが含有されていることが好ましい。例えば、生体関連物質を含有している可能性のある試料として汎用される水溶液を用いる場合には、水溶性の高分子化合物、具体的には例えば、トレハロース等の多糖類が含有されていることが好ましい。
【0032】
特異的結合物質を複数種類用いる場合には、例えば先に述べた通り、これら特異的結合物質がその種類ごとに区分されて蓋の所定箇所に固定化され、特異的結合物質の固定化位置と種類との対応が明確化されていれば、用いる標識物質は一種類でも良い。この場合、検出対象の生体関連物質がたとえ複数であっても、蓋における標識の検出位置により、検出された生体関連物質の種類を特定することができるからである。
ただし、特異的結合物質を複数種類用いる場合には、標識物質も特異的結合物質にあわせて同数の種類を用いることが好ましい。このようにすることで、複数種類の生体関連物質を、蓋における標識の検出位置だけでなく標識の種類からも、より明確に区別して検出することができるからである。
【0033】
蓋の、容器装着時に試料と接触可能な領域は、凸状とされていることが好ましい。このようにすることで、生体関連物質を含有している可能性のある試料を前記特異的結合物質と容易に接触させることができる。また、標識を光学的に検出する際に、前記領域における液の残存を低減することができる。そして、前記領域の表面積を増やすことができるので、特異的結合物質の固定化量、および前記標識物質を蓋に固定化する場合には該標識物質の固定化量を増やすことができる。これにより、標識の光学的検出をより高感度に行うことができる。また、後述するように固定化された標識物質を前記試料と混合する際に、容易に混合できるので、標識の光学的検出をより高精度に行うことができる。
【0034】
図3は、このような本発明の蓋の縦断面を例示する概念図であり、ここでは蓋30の前記領域は半球状となっている。このようにすることで、凸状とされていない場合と比べると、より多くの特異的結合物質21を固定化できる。ただしここに示すものは一例であって、前記領域は凸状であれば、その形状はこれに限定されるものではない。
【0035】
本発明の蓋が装着された容器は、生体関連物質の検出に好適である。容器内の試料が容器外へ漏出することが無い限り、本発明の蓋を容器へ装着する方法は特に限定されない。
【0036】
次に、ここまで述べた容器装着用の蓋を用いて、生体関連物質を検出する方法について説明する。
(第一の実施形態)
本発明の検出方法の第一の実施形態は、生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記標識物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0037】
生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する時は、前記試料および前記標識物質を別々に容器に充填しても良く、この場合、充填する順序は特に限定されない。
【0038】
生体関連物質として核酸を含有している可能性のある試料を用いる場合には、あらかじめポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と略記する)等により核酸増幅操作を行ってから、接触工程に供しても良い。この場合、該接触工程で用いる容器中で核酸増幅操作を行えば、試料を移す必要がなく検出工程まで行うことができ、簡便に検出を行うことができる。これは以下に述べる第二および第三の実施形態においても同様である。
【0039】
蓋に固定化されている特異的結合物質に、容器内の標識物質を含有する試料を接触させる方法は特に限定されないが、例えば、蓋装着後に容器を転倒させる方法が挙げられる。(以下、生体関連物質を含有している可能性のある試料、特異的結合物質および標識物質を、容器を転倒させて接触させることを、転倒混和と略記することがある。)
【0040】
前記接触工程の条件は、特異的結合の形成が妨げられない限り特に限定されないが、15℃以上38℃以下の温度であれば、時間は5〜60分であることが好ましく、4℃以上〜15℃未満の温度であれば、時間は1〜10時間程度であることが好ましい。
【0041】
接触後は、容器を静置して、蓋が有する標識を光学的に検出すれば良い。例えば、容器がマイクロプレート状である場合にはこれを平置き静置し、マイクロチューブ状である場合には一般に広く使用されているチューブスタンドを使用して静置することが好ましい。
接触後の蓋が有する標識を検出する時は、容器から蓋をはずして該当箇所を直接観察しても良いが、蓋は光透過性の材質からなるので、蓋を容器に装着したまま容器外部から蓋を通じて該当箇所を観察することもできる。この場合、容器も蓋同様に光透過性の材質からなるものであれば、容器を通じて該当箇所を観察することもできる。
【0042】
接触工程後の蓋が有する標識を光学的に検出する方法は特に限定されず、標識の種類に応じて適宜従来公知の方法を適用すれば良い。例えば、可視領域で呈色するものを検出する場合には、検出装置を用いても良いが、目視で検出することもでき、簡便に結果を判定することができる。また、蛍光または化学発光を検出する場合には、一般的に使用されている蛍光光度計または化学発光検出装置を使用すれば良い。
【0043】
標識検出工程における、容器へ装着された状態の蓋の様子を図4に例示する。図4(a)および(b)は一種類の生体関連物質を検出した時(陽性反応)の図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。そして図4(c)および(d)は生体関連物質が検出されなかった時(本発明において陰性反応と言う)の図で、(c)は平面図、(d)は正面図である。図4(a)および(b)に示すように、陽性反応の場合には、蓋4の特異的結合物質固定化領域には、生体関連物質が結合し、該生体関連物質には標識物質41が結合しているので、該領域は呈色する。一方、図4(c)および(d)に示すように、陰性反応の場合には、標識物質41は試料中に含有されている。
【0044】
検出対象の生体関連物質が複数種類である場合には、先に述べた通り、特異的結合物質を複数種類用い、その種類ごとに区分して蓋の所定箇所に固定化すれば、用いる標識物質は一種類でも良い。標識物質も複数種類用いれば、複数種類の特異的結合物質は、その種類ごとに区分して蓋の所定箇所に固定化する必要はないが、区分して固定化しておけば、複数種類の生体関連物質をより明確に検出することができる。すなわち、特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とは同数であることが好ましい。
【0045】
一方、複数種類の特異的結合物質が、すべての種類が区分されることなく所定領域に固定化された蓋を用いても、複数種類の生体関連物質を検出することができる。すなわち、生体関連物質の種類に応じた、すべての標識の光学的特徴が検出される。
例えば、成分Aが赤色の標識物質で、成分Bが青色の標識物質で検出される場合、いずれか一方の成分のみが蓋に付着すれば、その成分に対応した色のみが検出される。そして、双方の成分が共に蓋に付着すれば、双方の色の混色、すなわち紫色が検出される。
【0046】
(第二の実施形態)
本発明の検出方法の第二の実施形態は、生体関連物質を含有している可能性のある試料を容器に充填する工程と、光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質、および該特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、前記試料を前記標識物質および前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0047】
本実施形態は、標識物質を、生体関連物質を含有している可能性のある試料と共に容器に充填するのではなく、標識物質が、蓋の容器内へ向けて露出された表面、すなわち、前記容器に装着時に、容器内の前記試料と接触可能な領域に固定化されている蓋を用いる点を除けば、第一の実施形態と同様である。接触工程も転倒混和で行うことが好ましい。
図5は、本実施形態の手順を例示するフローチャートである。
【0048】
(第三の実施形態)
本発明の検出方法の第三の実施形態は、生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行う工程と、前記標識化操作後の試料が充填された容器に対して、光透過性の材質からなり、該容器内の試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化された蓋を装着する工程と、前記標識化操作後の試料を前記特異的結合物質と接触させる工程と、接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、を有することを特徴とする。
【0049】
生体関連物質を標識化する操作とは、試料中に生体関連物質が含有されている場合に、該生体関連物質を光学的に区別できるようにすることを指す。具体的には、生体関連物質に、標識能を有するものを直接あるいは間接に結合させることを指す。ここで、標識能を有するものとは、例えば、蛍光または化学発光を生じるもの、あるいは可視領域で呈色するもの等を指す。これらは、先に標識物質の説明で述べたものを用いることができる。
【0050】
標識能を有するものを、直接あるいは間接に生体関連物質に結合させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適用すれば良い。例えば、生体関連物質が核酸である場合には、標識能を有するものが結合されたプライマーを用いて、PCR法等で該核酸を増幅する方法が挙げられる。
【0051】
また、生体関連物質として核酸を含有している可能性のある試料を用いる場合には、あらかじめPCR法等により核酸増幅操作を行ってから、標識化する操作を行っても良い。
【0052】
本実施形態は、標識物質を、生体関連物質を含有している可能性のある試料および特異的結合物質と接触させるのではなく、生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行うこと以外は、第一および第二の実施形態と同様である。標識化操作後の試料を特異的結合物質と接触させる工程も、容器を転倒させて行うことが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]ハプテンで修飾した核酸の検出
(サンプル溶液の調製)
取り外し可能な蓋が付属した200μlマイクロチューブ(株式会社アシスト製)内において、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAを有するヒトゲノムDNAを約5ng、配列番号1に示す塩基配列の5’−末端にジゴキシゲンを結合させたプライマーおよび配列番号2に示す塩基配列の5’−末端にビオチンを結合させたプライマーを各々20pmol、10×Ex Taq緩衝液を1×、dNTPmixを0.2mMとなるように混合し、全体の液量を50μlとした。この混合液にTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)を1.25units加え、付属のフタを装着し、94℃/30秒、55℃/30秒、74℃/30秒の熱サイクルを30回繰り返して、PCR増幅を行った。得られたDNA溶液を試料溶液とした。
【0054】
(検出用蓋の作製)
図6に示す本発明の検出用蓋6を作製した。図6は、検出用蓋6を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記PCR増幅で用いたマイクロチューブに適合するサイズで、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋61に、抗ジゴキシゲン抗体62をエチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、抗ビオチン抗体64が付加された赤色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)63の溶液30μlを、ビニルポリマー製の蓋61の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、凍結乾燥させ、検出用蓋6を作製した。
【0055】
(DNAの検出)
PCR増幅を行なったマイクロチューブの付属の蓋をはずし、前記検出用蓋6を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和して、十分な反応を行なった後、遠心機プチはちR(商品名、トミー工業社製)を用いて1 秒間遠心した。遠心後、マイクロチューブをチューブスタンドに立てた。
【0056】
(判定)
結果を図7に示す。図7は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋6を例示する概念図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。
図7に示すように、検出対象であるハプテン付DNA断片と抗ジゴキシゲン抗体62、赤色ラテックスビーズ63が特異的に結合し、検出用蓋6の所定領域に赤色ラテックスビーズ63が付着して陽性反応を示した。
【0057】
[実施例2]
配列番号3に示す塩基配列においてC→GのSNPが生じたものである配列番号4に示す塩基配列からなるDNAを、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAの代わりに有するヒトゲノムDNAをサンプルとして、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、SNPにより、配列番号4のDNAは、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅されず、赤色ラテックスビーズ63は、検出用蓋6の所定領域に付着せずに陰性反応を示し、赤色ラテックスビーズ63は試料中に含有されていることが確認された。結果を図8に示す。図8は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋6を例示する概念図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図である。
【0058】
実施例1および2においては、PCR増幅で用いたサンプルチューブをそのまま用いて検出を行なったので、全量50μlと微量のサンプル溶液を用いても無駄なく簡単に検出対象の核酸の有無を確認することができた。また、標識物質はあらかじめ検出用蓋に固定されており、分注操作が不要なので、不純物混入を抑制しつつ短時間で検査することができた。さらに、検出は目視による観察で行えるので検出装置等が不要であり、安価に検査を行えることが確認された。実施例1および2の手順をフローチャートとして図9に示す。
【0059】
[実施例3]抗原の検出
(サンプル溶液の調製)
96人の患者より、抗原であるCRP(C−reactive protein)を含有している可能性のある血清を試料として採取し、96穴マイクロプレート(Corning社製)に、それぞれ 100μlずつ分注した。
【0060】
(検出用蓋の作製)
図10に示す本発明の検出用蓋7を作製した。図10は、検出用蓋7を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記マイクロプレートに適合するサイズであり、容器内へ向けて露出される表面が凸状で、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋71に、抗CRP抗体72をエチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、塩化コバルト(II)で標識されたビーズ付き抗CRP抗体(ROCKLAND社製、Cat.No.209−1132)73の溶液30μlを、ビニルポリマー製の蓋71の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、減圧乾燥させ、検出用蓋7を作製した。なお、図10においては、抗CRP抗体72およびビーズ付き抗CRP抗体73が固定化されている様子を見易くするために、蓋71に固定化されている一部の抗CRP抗体72およびビーズ付き抗CRP抗体73の図示を省略している。これは、同様の形状の蓋を用いている以下の実施例においても同様である。
【0061】
(抗原の検出)
患者血清を分注したマイクロプレートに、前記検出用蓋7を装着した。次いでマイクロプレートを転倒混和し、十分な反応を行なった後、静置した。
【0062】
(判定)
結果を図11および12に示す。図11は、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋7を、マイクロプレート中の個々の容器ごとに例示する概念図であり、図11(a)および(c)は平面図、図11(b)および(d)は正面図である。そして図12は、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋7全体を例示する概念図である。
図11(a)および(b)に示すように、CRPが血清中に存在した試料では、CRPと抗CRP抗体72、ビーズ付き抗CRP抗体73が特異的に結合し、検出用蓋7の所定領域にビーズ付き抗CRP抗体73が付着して陽性反応を示した。検出用蓋7に付着したビーズ付き抗CRP抗体73が、試料である血清に溶解すると、溶解前は青色であった検出用蓋7の所定領域は、赤色を呈した。
一方、CRPが血清中に存在しなかった試料では、ビーズ付き抗CRP抗体73は、検出用蓋7の所定領域に付着せず陰性反応を示し、ビーズ付き抗CRP抗体73は試料中に含有されていることが確認された。結果を図11に示す。図11(c)は平面図、図11(d)は正面図である。陰性の場合は、試料が赤色を呈した。
なお、図12の着色された部分が、図11(c)および(d)で例示される容器に該当する。
【0063】
実施例3においては、小児検体のように微量の試料でも、無駄なく簡単に検出対象の抗原の有無を確認することができた。さらに96穴マイクロプレートを用いたので、多数の試料を一度に検査することができた。また、標識物質はあらかじめ検出用蓋に固定されており、分注操作が不要なので、不純物混入を抑制しつつ短時間で検査することができた。さらに、検出用蓋の容器内へ向けて露出される表面を凸状とすることにより、試料を特異的結合物質および標識物質と容易に接触させることができ、標識物質を容易に試料と混合できた。また、表面積を増加させて特異的結合物質の固定化量を増やしたので検出感度を高めることができ、試料の液切れを良くすることができたので、擬陽性反応の発生を抑制することができた。さらに、検出は目視による観察で行えるので、検出装置等が不要であり、安価に検査を行えることが確認された。実施例3の手順をフローチャートとして図13に示す。
【0064】
[実施例4]リガンドの蛍光検出
(試料溶液の調製)
1.5mLマイクロチューブ(Eppendorf社製)に、0、0.05、0.2および1mg/mLの四種類の濃度のビオチン付加アルブミン100μlを別々に、さらにFITC標識抗アルブミン抗体溶液10μlを分注した。
【0065】
(検出用蓋の作製)
図14に示す本発明の検出用蓋8を作製した。図14は、検出用蓋8を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記マイクロチューブに適合するサイズのガラス製の蓋81のうち、容器内へ向けて露出される表面に、ストレプトアビジン82を滴下して吸着させた。
【0066】
(リガンドの蛍光検出)
マイクロチューブに付属の蓋をはずし、検出用蓋8を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和し、十分な反応を行った。次いで検出用蓋8をはずし、蛍光顕微鏡IX70(商品名、オリンパス株式会社製)を用いて試料の接触部位を観察し、CCDを用いて蛍光画像を撮影した。結果を図15に示す。図15は、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋8を例示する概念図であり、図15(a)および(c)は平面図、図15(b)および(d)は正面図である。
図15(a)および(b)に示すように、ビオチン標識したアルブミンが存在した試料では、ビオチン付加アルブミンとストレプトアビジン82、FITC標識抗アルブミン抗体83が特異的に結合し、検出用蓋8の所定領域にFITC標識抗アルブミン抗体83が付着して陽性反応を示した。
一方、ビオチン標識したアルブミンが存在しなかった試料では、FITC標識抗アルブミン抗体83は、検出用蓋8の所定領域に付着せず陰性反応を示し、FITC標識抗アルブミン抗体83は試料中に含有されていることが確認された。
さらに、取得した画像からImagePro(商品名、Media Cybarnetics社製)を用いて蛍光強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例4においては、微量の試料でも無駄なく簡単に検出対象のリガンドの蛍光を検出することができた。本実施例では、標識物質は分注操作により添加しており、検出用蓋に固定化できないものでも使用可能であることが確認された。また、検出は蛍光強度の測定により行ったので、高感度且つ高精度に検出することができ、定量化することができた。実施例4の手順をフローチャートとして図16に示す。
【0069】
[実施例5]ハプテンで修飾した2種類の核酸の検出〜その1
(試料溶液の調製)
取り外し可能な蓋が付属した200μlマイクロチューブ(株式会社アシスト製)内において、配列番号3に示す塩基配列からなるハプテン結合DNAを有するヒトゲノムDNAを約5ng、配列番号1に示す塩基配列の5’−末端にジゴキシゲンを結合させたプライマー、配列番号2に示す塩基配列の5’−末端にビオチンを結合させたプライマー、配列番号5に示す塩基配列の5’−末端にFITCを結合させたプライマーおよび配列番号6に示す塩基配列の5’−末端にDNPを結合させたプライマーを各々20pmol、10×Ex Taq緩衝液を1×、dNTPmixを0.2mMとなるように混合し、全体の液量を50μlとした。この混合液にTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)を1.25units加え、付属の蓋を装着し、94℃/30秒、55℃/30秒、74℃/30秒の熱サイクルを30回繰り返して、PCR増幅を行った。得られたDNA溶液を試料溶液とした。
【0070】
(検出用蓋の作製)
図17に示す本発明の検出用蓋9を作製した。図17は、検出用蓋9を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記PCR増幅で用いたマイクロチューブに適合するサイズで、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋91に、抗ジゴキシゲン抗体92および抗FITC抗体95を二つの区分に分けて別々に、エチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、抗ビオチン抗体94が付加された赤色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)93の溶液15μl、および抗DNP抗体97が付加された青色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)96の溶液15μlを、それぞれビニルポリマー製の蓋91の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、凍結乾燥させ、検出用蓋9を作製した。
【0071】
(DNAの検出)
PCR増幅を行なったマイクロチューブの付属の蓋をはずし、前記検出用蓋9を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和して、十分な反応を行なった後、遠心機プチはちR(商品名、トミー工業社製)を用いて1 秒間遠心した。遠心後、マイクロチューブをチューブスタンドに立てた。
【0072】
(判定)
結果を図18に示す。図18は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋9を例示する概念図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は正面図である。
図18に示すように、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅された配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗ジゴキシゲン抗体92、抗ビオチン抗体94が付加された赤色ラテックスビーズ93と特異的に結合し、検出用蓋9の所定領域に赤色ラテックスビーズ93が付着して陽性反応を示した。一方、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅可能な配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNAは、用いたヒトゲノム中には含まれていなかったため、PCR増幅されず、青色ラテックスビーズ96は、検出用蓋9の所定領域に付着せずに陰性反応を示し、青色ラテックスビーズ96は試料中に含有されていることが確認された。その結果、図18(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋9は、左側半面のみが赤色となった。
【0073】
[実施例6]
実施例5で用いたものとは異なるヒトゲノムDNAを用いて、実施例5と同様の操作を行なった。結果を図19に示す。図19は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋9を例示する概念図であり、図19(a)は平面図、図19(b)は正面図である。
図19に示すように、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅された配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗FITC抗体95、抗DNP抗体97が付加された青色ラテックスビーズ96と特異的に結合し、検出用蓋9の所定領域に青色ラテックスビーズ96が付着して陽性反応を示した。一方、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅可能な配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNAは、用いたヒトゲノム中には含まれていなかったため、PCR増幅されず、赤色ラテックスビーズ93は、検出用蓋9の所定領域に付着せずに陰性反応を示し、赤色ラテックスビーズ93は試料中に含有されていることが確認された。その結果、図19(b)に示すように、上部から観察すると検出用蓋9は、右側半面のみが青色となった。
【0074】
実施例5および6より、微量の試料で二種類の生体関連物質の検出が行えることが確認された。これら実施例では、検出対象である生体関連物質として二種類を想定して行ったが、特異的結合物質および標識物質の種類、並びに検出用蓋における固定化区分をさらに増やすことで、本発明では、三種類以上の生体関連物質の検出を同時に行なうことができる。
また、抗抗体付きラテックスビーズと、該抗抗体付きラテックスビーズと特異的に結合する抗体を共通化して、フタ内面の色素が検出された位置により検出を行なうことも可能である。
実施例5および6の手順をフローチャートとして図20に示す。
【0075】
[実施例7]ハプテンで修飾した2種類の核酸の検出〜その2
(試料溶液の調製)
実施例5と同様の方法により、PCR増幅したDNAを含有する試料溶液を得た。
【0076】
(検出用蓋の作製)
図21に示す本発明の検出用蓋10を作製した。図21は、検出用蓋10を正面から見た時の様子を例示する概念図である。すなわち、前記PCR増幅で用いたマイクロチューブに適合するサイズで、且つ表面にカルボキシル基を有するビニルポリマー製の蓋101に、抗ジゴキシゲン抗体102および抗FITC抗体105を、区分することなく混合してエチレンジアミノカルボジイミド(pierce社製)を用いて固定化した。
また、抗ビオチン抗体104が付加された赤色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)103の溶液15μl、および抗DNP抗体107が付加された青色ラテックスビーズ(φ0.3μm、Seradyn社製)106の溶液15μlを、それぞれビニルポリマー製の蓋101の容器内へ向けて露出される表面中央に滴下し、凍結乾燥させ、検出用蓋10を作製した。
【0077】
(DNAの検出)
実施例5と同様に、PCR増幅を行なったマイクロチューブの付属の蓋をはずし、前記検出用蓋10を装着した。次いでマイクロチューブを転倒混和して、十分な反応を行なった後、遠心機プチはちR(商品名、トミー工業社製)を用いて1 秒間遠心した。遠心後、マイクロチューブをチューブスタンドに立てた。
【0078】
(判定)
結果を図22に示す。図22は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋10を例示する概念図であり、図22(a)は平面図、図22(b)は正面図である。
図22に示すように、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅された配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗ジゴキシゲン抗体102、抗ビオチン抗体104が付加された赤色ラテックスビーズ103と特異的に結合し、検出用蓋10の所定領域に赤色ラテックスビーズ103が付着した。一方、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅可能な配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNAは、用いたヒトゲノム中には含まれていなかったため、PCR増幅されず、青色ラテックスビーズ106は、検出用蓋10の所定領域に付着せずに、試料中に含有されていることが確認された。その結果、図22(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋10は、赤色となる陽性反応を示した。
【0079】
[実施例8]
実施例7で用いたものとは異なるヒトゲノムDNAを用いて、実施例7と同様の操作を行なった。結果を図23に示す。図23は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋10を例示する概念図であり、図23(a)は平面図、図23(b)は正面図である。
図23に示すように、検出用蓋10の所定領域に青色ラテックスビーズ106が付着し、赤色ラテックスビーズ103は付着せず、その結果、図23(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋10は、青色となる陽性反応を示した。これは、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅された配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗FITC抗体105、抗DNP抗体107が付加された青色ラテックスビーズ106と特異的に結合したのに対し、配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNAはPCR増幅されなかったことを示した。すなわち、試料に用いたヒトゲノムDNA中には、配列番号7のDNAが含まれ、配列番号3のDNAが含まれていないことが確認された。
【0080】
[実施例9]
実施例7および8で用いたものとは異なるヒトゲノムDNAを用いて、実施例7と同様の操作を行なった。結果を図24に示す。図24は、マイクロチューブに装着された状態の検出用蓋10を例示する概念図であり、図24(a)は平面図、図24(b)は正面図である。
図24に示すように、検出用蓋10の所定領域に、赤色ラテックスビーズ103および青色ラテックスビーズ106が付着し、その結果、図24(a)に示すように、上部から観察すると検出用蓋10は、紫色となる陽性反応を示した。これは、配列番号1および2のプライマーによりPCR増幅された配列番号3に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗ジゴキシゲン抗体102、抗ビオチン抗体104が付加された赤色ラテックスビーズ103と特異的に結合し、配列番号5および6のプライマーによりPCR増幅された配列番号7に示す塩基配列のハプテン結合DNA断片が、抗FITC抗体105、抗DNP抗体107が付加された青色ラテックスビーズ106と特異的に結合していることを示した。すなわち、試料に用いたヒトゲノムDNA中には、配列番号3および7のDNAがいずれも含まれていることが確認された。
【0081】
実施例7〜9より、微量の試料で二種類の生体関連物質の検出が行えることが確認された。これら実施例では、検出対象である生体関連物質は二種類であったが、特異的結合物質および標識物質の種類をさらに増やすことで、本発明では、三種類以上の生体関連物質の検出を同時に行なうことができる。
実施例7〜9の手順をフローチャートとして図25に示す。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、臨床検査、衛生検査および生化学研究の分野において、生体試料の解析に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】生体関連物質を含有している可能性のある試料の充填に用いる容器を例示する図である。
【図2】本発明の蓋の縦断面を例示する概念図である。
【図3】本発明の蓋の縦断面を例示する概念図である。
【図4】標識検出工程における、容器へ装着された状態の本発明の蓋を例示する図である。
【図5】本発明の生体関連物質検出方法の手順を例示するフローチャートである。
【図6】実施例1および2で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図7】実施例1における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図8】実施例2における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図9】実施例1および2の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施例3で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図11】実施例3における、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋を、マイクロプレート中の個々の容器ごとに例示する概念図である。
【図12】実施例3における、接触工程後のマイクロプレートに装着された状態の検出用蓋全体を例示する概念図である。
【図13】実施例3の手順を示すフローチャートである。
【図14】実施例4で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図15】実施例4における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図16】実施例4の手順を示すフローチャートである。
【図17】実施例5および6で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図18】実施例5における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図19】実施例6における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図20】実施例5および6の手順を示すフローチャートである。
【図21】実施例7〜9で用いた検出用蓋を正面から見た時の様子を例示する概念図である。
【図22】実施例7における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図23】実施例8における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図24】実施例9における、接触工程後のマイクロチューブに装着された状態の検出用蓋を例示する概念図である。
【図25】実施例7〜9の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
4,6,7,8,9,10,20,30・・・蓋、21・・・特異的結合物質、41・・・標識物質、62,92,102・・・抗ジゴキシゲン抗体、63,73,93,96,103,106・・・ビーズ、64,94,104・・・抗ビオチン抗体、72・・・抗CRP抗体、82・・・ストレプトアビジン、83・・・FITC標識抗アルブミン抗体、95,105・・・抗FITC抗体、97,107・・・抗DNP抗体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行う工程と、
前記標識化操作後の試料が充填された容器に対して、光透過性の材質からなり、該容器内の試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化された蓋を装着する工程と、
前記標識化操作後の試料を前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、
を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項2】
生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、
光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記標識物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、
前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、
を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項3】
生体関連物質を含有している可能性のある試料を容器に充填する工程と、
光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質、および該特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、
前記試料を前記標識物質および前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、
を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項4】
蓋装着後の容器を転倒させて、前記接触を行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項5】
前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項6】
前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項7】
前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項8】
生体関連物質を含有している可能性のある試料が充填された容器に装着可能な蓋であって、
光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化されていることを特徴とする蓋。
【請求項9】
前記容器内の試料と接触可能な領域に、さらに、前記特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化されていることを特徴とする請求項8に記載の蓋。
【請求項10】
前記容器内の試料と接触可能な領域が、凸状とされていることを特徴とする請求項8または9に記載の蓋。
【請求項11】
前記容器内の試料と接触可能な領域のうち、20〜100%の領域に、前記特異的結合物質が固定化されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項12】
前記標識物質が、前記容器内の試料に溶解可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項13】
前記標識物質が、蛍光性物質、化学発光性物質および着色物質のいずれかを含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項14】
前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項15】
前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項16】
前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項17】
請求項8〜16のいずれか一項に記載の蓋が装着されてなることを特徴とする容器。
【請求項1】
生体関連物質を含有している可能性のある試料に対して該生体関連物質を標識化する操作を行う工程と、
前記標識化操作後の試料が充填された容器に対して、光透過性の材質からなり、該容器内の試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化された蓋を装着する工程と、
前記標識化操作後の試料を前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、
を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項2】
生体関連物質を含有している可能性のある試料および該生体関連物質と特異的に結合する標識物質の混合液を容器に充填する工程と、
光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記標識物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、
前記混合液を前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、
を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項3】
生体関連物質を含有している可能性のある試料を容器に充填する工程と、
光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質、および該特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化された蓋を、前記容器に装着する工程と、
前記試料を前記標識物質および前記特異的結合物質と接触させる工程と、
接触後の前記蓋が有する標識を光学的に検出する工程と、
を有することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項4】
蓋装着後の容器を転倒させて、前記接触を行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項5】
前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項6】
前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項7】
前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく前記蓋に固定化されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の生体関連物質の検出方法。
【請求項8】
生体関連物質を含有している可能性のある試料が充填された容器に装着可能な蓋であって、
光透過性の材質からなり、該容器内の前記試料と接触可能な領域に、前記生体関連物質と特異的に結合する物質が固定化されていることを特徴とする蓋。
【請求項9】
前記容器内の試料と接触可能な領域に、さらに、前記特異的結合物質が前記生体関連物質と結合する部位とは異なる部位に特異的に結合する標識物質が固定化されていることを特徴とする請求項8に記載の蓋。
【請求項10】
前記容器内の試料と接触可能な領域が、凸状とされていることを特徴とする請求項8または9に記載の蓋。
【請求項11】
前記容器内の試料と接触可能な領域のうち、20〜100%の領域に、前記特異的結合物質が固定化されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項12】
前記標識物質が、前記容器内の試料に溶解可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項13】
前記標識物質が、蛍光性物質、化学発光性物質および着色物質のいずれかを含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項14】
前記特異的結合物質の種類と前記標識物質の種類とが同数であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項15】
前記特異的結合物質が複数種類であり、種類ごとに区分されて固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項16】
前記特異的結合物質が複数種類であり、すべての種類が区分されることなく固定化されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の蓋。
【請求項17】
請求項8〜16のいずれか一項に記載の蓋が装着されてなることを特徴とする容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2008−101990(P2008−101990A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283944(P2006−283944)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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