説明

生体電極包装体ユニットおよび生体電極良否判定方法

【課題】密封状態を開封せず、特別な装置を用いることなく、電極の良否判定を行う。
【解決手段】導電性ゲル層12aと該導電性ゲル層12aを介して生体に貼着され得る電極部材11aと該電極部材11aに一端が接続されたリード線28aとを備えた、生体刺激および/または生体信号取り出しのための生体電極と、前記導電性ゲル層12aを介してそれぞれが電気的に接続されるように配置されて前記導電性ゲル層12aと共に第1の電池を構成する、前記電極部材11a側の第1の電池電極部材である二酸化マンガンおよび前記生体に貼着される側の第2の電池電極部材である亜鉛片32と、前記リード線28aの他端と前記第2の電池電極部材である亜鉛片32との間に電気的に接続される微小電球21およびスイッチ23と、少なくとも、微小電球21およびスイッチ23を除く前記構成要素を密封包装する密封包装部材10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動器用電極、心電用電極、経皮ペーシング用電極等に適用される生体電極を密封包装した包装体ユニットおよび生体電極良否判定方法に係り、特に、生体電極を包装状態から開封せずに、定期的あるいは任意のタイミングで、包装状態の電極の良否判定検査を包装体ユニット単体で簡便かつ容易に行うことができ、しかも包装状態の電極の良否について適正かつ迅速に判定することができる生体電極包装体ユニットおよび生体電極良否判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の生体電極は、電極を安定した状態で使用するために密封状態で包装して保存されている。しかしながら、密封状態であっても経年変化等によって、生体電極の導電性ゲルや電極部材等のインピーダンスが増加するなどの劣化が生じる可能性がある。そのため、密封状態で包装を開封することなく、定期的あるいは任意のタイミングで生体電極の使用可能性を検査することも行われている。
【0003】
例えば、電極の電気的な使用可能性を、開封することなく定期的に検査することを可能にする、電子医療装置に使用されるシール包装された医用電極システムとしては、特許文献1に示されたシステムが知られている。この特許文献1では、(1)-a- 平らで薄い非導電性ベース層、 -b- 上記ベース層の側に配置された患者に接触する導電性半液体のゲル層、 -c- 上記ゲル層に通電可能に接続された導電性接続手段、からなる患者の体に配置され電子医療装置に接続する第1の使い捨て電極と、(2)-a- 平らで薄い非導電性ベース層、 -b- 上記ベース層の側に配置された患者に接触する導電性半液体のゲル層、 -c- 上記ゲル層に通電可能に接続された導電性接続手段、からなる患者の体に配置され電子医療装置に接続する第2の使い捨て電極と、(3) 上記第1および第2の電極を囲むために内部空間を形成するように構成され配置された、薄くて通常平らで柔軟性があり、完全な非ガス透過性の高分子材料で構成されたパッケージと、からなり、(4) 上記第1および第2の電極の接続手段は、上記パッケージを通って外面に延び、上記第1および第2の電極のゲル層は、それぞれの間で電気通信を行えるように対向した関係を持って方向付けられており、これによりパッケージを開封することなく、電流ループが上記第1の電極の接続手段、第1の電極のゲル層、第2の電極のゲル層、第2の電極の接続手段の間に形成されるようにしたシール包装された医用電極システムが提案されている。
【0004】
また、包装された使い捨ての除細動器用電極としては、特許文献2に記載のものが知られている。この特許文献2には、(1) ベース層と、(2) ベース層に上塗りされた患者と接触する導電性ゲル層と、(3) 第1の電極に取り付けられて導電性ゲル層に電気的に内部接続される第1端部と、除細動器本体に電気的に接続される第2端部とを備えた第1のリード線と、(4) 使用前に第1の電極を保護するために第1の電極と第1のリード線の第1端部とを通常ガス非透過性のパッケージで覆っており、(5) パッケージの開封と第1の電極の使用とに先立って、第1のリード線の第2端部が除細動器本体に接続できるように、第1のリード線がパッケージから延出するようにした包装された使い捨ての除細動器用電極が提案されている。
【0005】
また、この特許文献2には、上記の構成に加えて、(1) ベース層と、(2) ベース層に上塗りされた患者と接触する導電性ゲル層と、(3) 第2の電極に取り付けられて導電性ゲル層に電気的に内部接続される第1端部と、除細動器本体に電気的に接続される第2端部とを備えた第2のリード線とを備え、(4) 使用前に第2の電極を保護するために第2の電極と第2のリード線の第1端部とを通常ガス非透過性のパッケージで覆っており、(5) パッケージの開封と第2の電極の使用とに先立って、第2のリード線の第2端部が除細動器本体に接続できるように、第2のリード線がパッケージから延出するようにした包装された使い捨ての除細動器用電極が開示されている。そして、上記第1の電極と第2の電極との導電性ゲル層は、パッケージ内で互いに電気的に内部接続されており、これにより上記第1のリード線と第2のリード線との第2端部間で電気回路を形成し、パッケージの開封に先立って上記第1の電極と第2の電極との電気特性を検査することを可能にしていることが開示されている。
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に記載の発明は、使い捨ての生体電極の密封包装体に関するものであって、上記密封包装された電極を使用する場合に、上記密封包装体を開封することなく、定期的に密封包装されている電極の電気特性を検査することができる特徴を備えるものであり、密封包装されている電極の電気特性を検査する手段として、電極を電源とテスト回路とに接続するため、電極に接続されているリード線の一部を、予め密封包装体の外部に導出させた構成からなるものである。
【0007】
特許文献3には、生体に対する接触面を導通かつ分離可能に接合した一対の電極部材と、前記各電極部材の一端部からそれぞれ導出されるリード線と、これらのリード線の他端部に結合して外部接続端子部を構成する電気的接続手段とを備えた生体電極ユニットを備え、前記電気的接続手段において前記リード線を相互に短絡接続して、前記一対の電極部材の導通を含む1つの閉回路を形成し、前記リード線を外部磁界により電圧(起電力)を発生し得るコイル形状に巻回して、これらの生体電極ユニット全体を密封包装材により密封包装した生体電極ユニット包装体が記載されており、その生体電極ユニット包装体の良否判定方法として、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて発信コイルと受信コイルとを配置し、前記発信コイルに所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、前記受信コイルに発生する電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能にすることが記載されている。
【0008】
この特許文献3に記載された発明によれば、リード線を含む生体電極ユニット全体を完全密封することができるため、電極部材の劣化の進行を抑制して、生体電極ユニットの有効保存期間を延長することができ、しかも、密封包装された生体電極ユニットを開封することなく容易かつ簡便に電極等の電極部材の良否を適正かつ迅速に判定することができるものである。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5402884号明細書
【特許文献2】米国特許第5579919号明細書
【特許文献3】特開2006−34681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1および特許文献2に記載の発明においては、電極の電気特性を検査するためにリード線を密封包装体の外部の電源とテスト回路とに接続する必要があるため、包装されている電極単体では検査することができず、また、複数の電極を検査する際は、その都度電極を上記電源とテスト回路とに接続しなければならず、いずれも検査が煩雑にならざるを得ない。さらに、リード線を密封包装体の外部に導出させることから、リード線の密封包装体からの引き出し箇所およびリード線の内部の密封を確実にしなければならない。このため、密封包装の構成が複雑になると共に、密封包装体からリード線が外部に引き出してあるために取扱い中などにおいてリード線に無理な力が加わって、密封が破壊される惧れがある。
【0011】
特許文献3に記載の発明は、上記特許文献1、2に記載された発明と異なり、包装体の外部にリード線を引き出す必要がなく、電極が容易に完全密封できるが、検査のために、生体電極ユニット包装体に、外部から磁界を与える必要があり、また、オシロスコープなどの測定計器が必要であるため、上記特許文献1、2に記載の発明と同様に、包装されている電極単体では検査することができず、また、複数の電極を検査する際も、生体電極ユニット包装体毎に外部から磁界を与え、測定計器で測定しなければならず、検査が煩雑になる。
【0012】
従って、本発明の目的は、生体電極を完全に密封包装して、電極部材の劣化進行を十分にかつ確実に抑制することができると共に、この密封包装された生体電極に対し、密封状態を開封することなく、特別な装置を用いないで、包装されている生体電極単体で、簡便かつ容易に良否判定を行うことができる生体電極包装体ユニットおよび生体用電極良否判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る生体電極包装体ユニットは、導電性ゲル層と該導電性ゲル層を介して生体に貼着され得る電極部材と該電極部材に一端が接続されたリード線とを備えた、生体刺激および/または生体信号取り出しのための生体電極と、前記導電性ゲル層を介してそれぞれが電気的に接続されるように配置されて前記導電性ゲル層と共に第1の電池を構成する、前記電極部材側の第1の電池電極部材および前記生体に貼着される側の第2の電池電極部材と、前記リード線の他端と前記第2の電池電極部材との間に電気的に接続される報知手段およびスイッチ手段と、少なくとも、前記報知手段およびスイッチ手段を除く前記構成要素を密封包装する密封包装部材と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る生体電極包装体ユニットは、前記第1の電池電極部材は前記導電性ゲル層と前記電極部材との間に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る生体電極包装体ユニットは、前記第1の電池電極部材は前記電極部材であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る生体電極包装体ユニットは、前記電極部材がカーボンからなり、前記第1の電池電極部材が二酸化マンガンからなり、前記第2の電池電極部材が亜鉛からなることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る生体電極包装体ユニットは、前記生体電極および前記第1の電池電極部材と同じ構成の別の生体電極および別の第1の電池電極部材をさらに1組備え、前記生体電極の導電性ゲル層と前記別の生体電極の導電性ゲル層とを、導通部を有する剥離材を挟んで対向配置して両導電性ゲル層同士を電気的に接続し、前記別の第1の電池電極部材と前記第2の電池電極部材と前記別の生体電極の導電性ゲル層とで第2の電池を構成し、この第2の電池と前記第1の電池とが並列に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る生体電極良否判定方法は、密封包装され、導電性ゲル層と該導電性ゲル層を介して生体に貼着され得る電極部材とを備えた、生体刺激および/または生体信号取り出しのための生体電極の良否判定方法であって、第1の電池電極部材と第2の電池電極部材とを前記導電性ゲル層を介して電気的に接続されるように配置して、前記導電性ゲル層と共に電池を構成し、該電池と報知手段とを直列接続して回路を構成し、該回路を流れる電流または前記電池の起電力に基づく前記報知手段の状態によって前記生体電極の良否を判定するようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る生体電極良否判定方法は、さらに、前記回路にスイッチ手段を直列に接続し、前記スイッチ手段により前記回路を閉回路としたときの前記報知手段の状態によって前記生体電極の良否を判定するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る生体電極包装体ユニットによれば、第1の電池電極部材と第2の電池電極部材と導電性ゲル層とにより電池が形成され、この電池で、電極部材、リード線、スイッチ手段を介して報知手段が駆動されるように回路を構成しているため、スイッチ手段を操作して回路を閉じると報知手段に電池の電圧が印加され、回路に電流が流れる。この電圧の大きさ或いは電流の大きさは、電池の容量および起電力や、導電性ゲル層、電極部材、リード線のインピーダンス等によって決まり、生体電極が劣化すると、電池の容量および起電力は低下し、或いは前記インピーダンスは増加するため、電圧は低下し或いは電流は減少する。この電圧の低下、電流の減少は報知手段によって容易に確認することがき、したがって、密封状態を開封することなく、特別な装置を用いることなく、生体電極包装体ユニット単体で、簡便かつ容易に良否判定を行うことができる。
【0021】
本発明に係る生体電極包装体ユニットによれば、第1の電池電極部材を電極部材とは別に設けているため、第1の電池電極部材の選択範囲が広がり、効率の良い電池を構成することができる。
【0022】
本発明に係る生体電極包装体ユニットによれば、電極部材を第1の電池電極部材と兼用しているため、構成が簡単になる。
【0023】
本発明に係る生体電極包装体ユニットによれば、電極部材をカーボンで構成し、第1の電池電極部材を二酸化マンガンで構成し、第2の電池電極部材を亜鉛で構成して、既存のマンガン乾電池と同じ構成としたため、電池としての効率の良い性能を期待でき、劣化判定を確実に行うことができる。また、電極部材がカーボンで構成されているため、金属電極に比べて腐食しにくい。さらに、一般的にカーボン電極では、除細動パルスを送出した後に、分極により電極の電位が基準電位に戻りにくい現象を生じ、心電信号を検出する電極としては使用できないが、第1の電池電極部材の二酸化マンガンが減極剤として作用するため、上記分極を抑えることができる。したがって、この構成によれば、心電信号が検出できる除細動用電極としても使用できる。
【0024】
本発明に係る生体電極包装体ユニットによれば、同じ構成の2個の生体電極を密封包装する場合、両生体電極の導電性ゲル層同士を導通させているため、前記第2の電池電極部材が2個の生体電極で共用でき、1個で済む。また、両生体電極のそれぞれの電池を並列に接続しているため、報知手段、スイッチ手段がそれぞれ1個で済み、簡単な構成で、2個の生体電極を密封包装することができる。さらに、スイッチ手段の1回の操作で2個の生体電極の良否判定を同時にできる。
【0025】
本発明に係る生体電極の良否判定方法によれば、導電性ゲルと第1の電池電極部材と第2の電池電源部材とで電池を構成し、この電池と報知手段とを直列接続して回路を構成して、この回路を流れる電流または電池の起電力に基づく報知手段の状態によって生体電極の良否を判定するようにしているため、密封状態を開封することなく、特別な装置を用いることなく、密封包装された生体電極単体で、簡便かつ容易に良否判定を行うことができる。
【0026】
本発明に係る生体電極の良否判定方法によれば、スイッチ手段を回路に直列に接続しているため、スイッチ手段を操作して回路を閉じると報知手段に電池の電圧が印加され、回路に電流が流れる。この電圧の大きさ或いは電流の大きさは、電池の容量および起電力、導電性ゲル層のインピーダンス等によって決まり、生体電極が劣化すると、電池の容量および起電力は低下し、或いは導電性ゲル層等のインピーダンスは増加するため、電圧は低下し或いは電流は減少する。この電圧の低下、電流の減少は報知手段によって容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明に係る生体電極包装体ユニットの実施例を説明する。密封包装部材10に電極部材11a、11b等が密封包装された状態の生体電極包装体ユニットを図1に示す。報知手段として白熱電球からなる微小電球21が密封包装部材10の表面に設けられている。微小電球21の裏面側には、目視確認の向上を図る黒または黒に近い色で着色がなされたシート22が設けられている。また、スイッチ手段を構成するスイッチ23が、微小電球21の近傍に設けられている。スイッチ23は、操作部23c(図5、図6参照)を押すとオン、離すとオフする押しボタン式スイッチで構成されており、微小電球21に直列に接続されている。
【0028】
この実施例では、図5、図6に示すように、微小電球21の表面側を透明の合成樹脂シート24で覆い、合成樹脂シート24の縁部24aを密封包装部材10に溶着して、気密性を担保する。この溶着は平面部の溶着のため、完全に密封できる。スイッチ23は、その操作部23cを表面側に向け、端子23a、23bを密封包装部材10内に突出させると共にベース23dを密封包装部材10に接着して気密性を担保する。なお、ベース23dは端子23a、23bと共にモールド成型されているため、端子23a、23bとベース23dとの間からの気密漏れはない。また、ベース23dと密封包装部材10との接着は平面部の接着のため、簡単に完全密封ができる。
【0029】
カーボン織布からなる電極部材11a、11bは可撓性のシート状に形成されており、図2、図4に示されているように、一方の面に導電性ゲル層12a、12bが設けられ、他方の面には非導電性部材14a、14bが粘着剤により接着されている。
【0030】
一対の電極部材11a、11bは、剥離材としてのセパレータ16を介して上記導電性ゲル層12a、12bを相互に対向させて接合離反可能に接合する。また、上記電極部材11a、11bの周縁部には、ハトメによりリード線28a、28bの一端が電気的に接続されている。リード線28a、28bの他端は、コネクタ13に結合されている。
【0031】
コネクタ13においては、図2、図7に示されるように、リード線28a、28bが挿入された端部に対向する端部において、リード線28a、28bを短絡する短絡端子26が挿入されており、短絡端子26には、図6に示される微小電球21の一方の端子21bへ接続される補助リード線27が結合されている。
【0032】
電極部材11a、11bの導電性ゲル層12a、12b側には、図4に示す通り、電池の正極となる第1の電池電極部材として、二酸化マンガン31a、31bが薄く塗布或いは印刷されている。また、電池の負極となる第2の電池電極部材として亜鉛板片32が、セパレータ16の導電性ゲル層12a側にハトメ33により固定されており、電極部材11aを図3の如く閉じた状態で、亜鉛板片32と導電性ゲル層12aとが接触するようになっている。
【0033】
セパレータ16の中央部には、導通部を構成する穴35が穿設され、この穴35を介して、導電性ゲル層12a、12bが電気的に接続される。これにより、前記亜鉛板片32は電極部材11b側の第2の電池の負極としても作用し、電極部材11a側の二酸化マンガン31aと導電性ゲル層12aと亜鉛板片32とで構成される第1の電池と、電極部材11b側の二酸化マンガン31bと導電性ゲル層12bと亜鉛板片32とで構成される第2の電池とが、並列に接続されることになる。
【0034】
図2、図6を参照すると、ハトメ33とスイッチ23の一方の端子23aとの間は、補助リード線36により接続され、スイッチ23の他方の端子23bと微小電球21の他方の端子21aとの間は、補助リード線37により接続されている。したがって、上記の並列に接続された電池は、スイッチ23および微小電球21と直列回路を構成する。
【0035】
以上の通りに構成された生体電極包装体ユニットでは、微小電球21とスイッチ23以外の構成要素は、密封包装部材10に密封包装される。密封包装部材10は、各種の医療用資材を密封包装する公知の各種包装材料、例えば、アルミラミネート材等を使用することができる。
【0036】
次に、このような生体電極包装体ユニットにおいて、生体電極の良否を判定する方法を説明する。生体電極の良否の判定は、保存されている生体電極包装体ユニット単体で、定期的あるいは任意のタイミングで行われる。まず、スイッチ23を短時間オンすることにより、並列に接続された第1の電池と第2の電池の電圧が微小電球21へ印加される。生体電極の良否の判定は、微小電球21の点灯状況を目視して判定する。なお、微小電球に電流を流すことによって生体電極が劣化するため、スイッチ23のオン操作は微小電球21の点灯状況が確認できる程度に短時間とする。
【0037】
生体電極が劣化していない状態においては、上記電池は正常に電圧(起電力)を発生しており、スイッチ23を短時間オンすることにより微小電球21へ電圧が印加され、微小電球21が短時間点灯する。これにより、電極部材11a、11b、導電性ゲル層12a、12b等のインピーダンスが適正であり、劣化していないことが目視で確認でき、この生体電極包装体ユニットはまだ使用可能であることがわかる。
【0038】
電極部材11a、11b、導電性ゲル層12a、12b等の劣化が進行すると、これらのインピーダンスが高くなり、また電池の発生起電力が低下するため、スイッチ23をオンしても、微小電球21へ流れる電流が少なく、微小電球21は目視で見える程度に発光しなくなる。これにより、この生体電極包装体ユニットは劣化しており、使用不可能であることが確認できる。
【0039】
微小電球21は、電極部材11a、11b、導電性ゲル層12a、12b、第1、第2の電池電極部材の材質、量および微小電球21の発光時の視認性などによって、適切な特性の白熱電球を用いる。本実施例では、下記の仕様で製作したものを、前述の判定方法で判定して、正常に生体電極の良否が判定できることを確認した。
(a)電極部材11a、11b・・材料:カーボン織布、縦:80mm、横:60mm、厚さ:
0.5mm
(b)導電性ゲル層12a、12b・・材料:親水性粘着剤、縦:100mm、横:70mm、厚さ:1mm
(c)亜鉛板片32・・縦:20mm、横:10mm、厚さ:0.2mm
(d)微小電球21・・定格電圧:1.55V、定格ワット数:20mW
【0040】
生体電極を使用するときは、包装体を開封して、コネクタ13から短絡端子26を取り外し、2個の生体電極を、亜鉛板片32がハトメにより取り付けられているセパレータ16から剥がして、それぞれ生体の所望の箇所に貼り付けて使用する。なお、亜鉛板片32を粘着剤によりセパレータ16に接着しておくと、包装体を開封するときは亜鉛板片32をセパレータ16から剥がして、2個の生体電極はセパレータに付けたままにしておき、使用する直前で2個の生体電極を分離して生体の所望の箇所に貼り付けることができ、使い勝手が良くなる。
【0041】
本実施例においては、第1の電池電極部材として二酸化マンガンを、第2の電池電極部材として亜鉛を使用したが、本発明はこの組み合わせに限定されない。例えば、イオン化傾向順に並べた元素(K,Na,Ca,Mg,Al,Zn,Fe,Ni,Sn,Pb,H,Cu,Hg,Ag,Pt,Au)において、Hを含まない、イオン化傾向の離れた2元素を選択して構成することができる。例えば、AlとSn、SnとAgなどにより構成することができる。また、AgとAgClのような化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0042】
本実施例においては、カーボン織布からなる電極部材11a、11bに、第1の電池電極材として二酸化マンガンを用いたが、例えば電極部材として錫を用いた場合は、これを第1の電池電極部材としても使用することができる。なお、この場合は第2の電池電極部材としてアルミニウム等を用いることができる。このように、電極部材の材料によって、第1の電池電極部材を別途設けずに、電極部材と共用することもできる。
【0043】
本実施例においては、電極部材11a、11bの材料としてカーボン織布を使用したが、カーボン系としてはこのほか、カーボン粉末を溶剤に混ぜたカーボン塗料を絶縁フィルムに塗布或いは印刷したものや、カーボンシート、カーボン不織布などが使用でき、また、金属系のシートや導電塗料を絶縁フィルムに塗布或いは印刷したものなどを用いることができる。
【0044】
本実施例においては、報知手段として、視認できる微小電球(白熱電球)を使用したが、本発明はこれに限定されず、低電圧、低電力で作動し、電池の電圧の大きさや電流の大きさが判別できるものであれば良い。例えば、視認できるものとして白熱電球の他、液晶、発光ダイオードなどが使用でき、音で確認できるものとしてブザー等が使用できる。音で確認できるものを使用した場合、視認する必要がないため、密封包装部材10の内壁に固定するのみで良い。
【0045】
本実施例においては、密封包装部材10内に生体電極を2個とその付属構成要素を包装した例を示したが、1個の生体電極およびその付属構成要素を包装したものとすることもできる。
【0046】
図8に、微小電球21とスイッチ23との取り付け構造に関する別の構成例を示す。微小電球21を、着色シート22aに接着して密封包装部材10に形成された窓部36に臨むように、着色シート22aの縁部22bを密封包装部材10に接着して、微小電球21を密封包装部材10内に固定する。密封包装部材10の外部からは透明の合成樹脂シート24で窓部36を覆い、合成樹脂シート24の縁部24aを密封包装部材10に溶着して、気密性を担保する。この溶着は平面同士のため、簡単に完全密封ができる。スイッチ23は密封包装部材10内に設け、その操作部23cを表面側に向け、密封包装部材10に描かれたスイッチマークMの下部に位置付け、操作部23cの周囲部を密封包装部材10に接着剤39により接着して構成する。
【0047】
なお、前記窓部36を透明の合成樹脂シート24で覆う代わりに、密封包装部材10の窓部36に対応する箇所のみをアルミラミネートにせず透明にすることもできる。また、スイッチ23を密封包装部材10内に設け、その操作部23cを表面側に向けて密封包装部材10に形成された窓部に臨ませ、操作部23cの周囲部を密封包装部材10に接着して気密性を担保するように構成することもできる。この接着もまた平面同士のため、簡単に完全密封ができるが、スイッチ23の形状、構成によって完全密封が難しいものは、前述の微小電球21と同様に、密封包装部材10の外部から窓部を合成樹脂シートで覆って密封することができる。
【0048】
このような構成によっても先の実施例と同様に、劣化の進行を、密封状態を開封することなく、特別な装置を用いることなく、簡便かつ容易に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例に係る生体電極ユニットにおいて、所要部材が密封包装された状態を示す平面図。
【図2】本発明の実施例に係る生体電極ユニットの密封包装された要素を取り出して示した構成図。
【図3】本発明の実施例に係る生体電極ユニットの電極部材部分について、電極部材部分を閉じた状態の要部透視図。
【図4】本発明の実施例に係る生体電極ユニットの電極部材部分について、電極部材部分を開いた状態の要部透視図。
【図5】本発明の実施例に係る生体電極ユニットにおける電球およびスイッチに関する要部構成を示す斜視図。
【図6】本発明の実施例に係る生体電極ユニットにおける電球およびスイッチに関する要部構成を示す断面図。
【図7】本発明の実施例に係る生体電極ユニットにおけるコネクタに関する要部構成を示す斜視図。
【図8】本発明の実施例に係る生体電極ユニットにおける電球およびスイッチに関する変更例の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0050】
10 密封包装部材
11a、11b 電極部材
12a、12b 導電性ゲル層
13 コネクタ
14a、14b 非導電性部材
16 セパレータ
21 微小電球
22、22a シート
23 スイッチ
24 合成樹脂シート
26 短絡端子
27 補助リード線
28a、28b リード線
31a、31b 二酸化マンガン
32 亜鉛板片
33 ハトメ
35 穴
36 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ゲル層と該導電性ゲル層を介して生体に貼着され得る電極部材と該電極部材に一端が接続されたリード線とを備えた、生体刺激および/または生体信号取り出しのための生体電極と、
前記導電性ゲル層を介してそれぞれが電気的に接続されるように配置されて前記導電性ゲル層と共に第1の電池を構成する、前記電極部材側の第1の電池電極部材および前記生体に貼着される側の第2の電池電極部材と、
前記リード線の他端と前記第2の電池電極部材との間に電気的に接続される報知手段およびスイッチ手段と、
少なくとも、前記報知手段およびスイッチ手段を除く前記構成要素を密封包装する密封包装部材と、
を備えたことを特徴とする生体電極包装体ユニット
【請求項2】
前記第1の電池電極部材は前記導電性ゲル層と前記電極部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の生体電極包装体ユニット。
【請求項3】
前記第1の電池電極部材は前記電極部材であることを特徴とする請求項1に記載の生体電極包装体ユニット。
【請求項4】
前記電極部材がカーボンからなり、前記第1の電池電極部材が二酸化マンガンからなり、前記第2の電池電極部材が亜鉛からなることを特徴とする請求項2に記載の生体電極包装体ユニット。
【請求項5】
前記生体電極および前記第1の電池電極部材と同じ構成の別の生体電極および別の第1の電池電極部材をさらに1組備え、前記生体電極の導電性ゲル層と前記別の生体電極の導電性ゲル層とを、導通部を有する剥離材を挟んで対向配置して両導電性ゲル層同士を電気的に接続し、前記別の第1の電池電極部材と前記第2の電池電極部材と前記別の生体電極の導電性ゲル層とで第2の電池を構成し、この第2の電池と前記第1の電池とが並列に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の生体電極包装体ユニット。
【請求項6】
密封包装され、導電性ゲル層と該導電性ゲル層を介して生体に貼着され得る電極部材とを備えた、生体刺激および/または生体信号取り出しのための生体電極の良否判定方法であって、
第1の電池電極部材と第2の電池電極部材とを前記導電性ゲル層を介して電気的に接続されるように配置して、前記導電性ゲル層と共に電池を構成し、
該電池と報知手段とを直列接続して回路を構成し、
該回路を流れる電流または前記電池の起電力に基づく前記報知手段の状態によって前記生体電極の良否を判定するようにしたことを特徴とする生体電極良否判定方法。
【請求項7】
さらに、前記回路にスイッチ手段を直列に接続し、前記スイッチ手段により前記回路を閉回路としたときの前記報知手段の状態によって前記生体電極の良否を判定するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の生体電極良否判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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