説明

生体電気インピーダンス測定装置

【課題】インピーダンスを高精度に測定できる簡単な構成を有する生体電気インピーダンス測定装置を提供する。
【解決手段】測定電極15〜18と、電圧測定回路10及び制御解析装置2を含む主基板1上に配置された測定回路2、10とを備え、制御解析装置2は、所定の測定プログラムに基づき、それぞれの測定プログラムに特有の電極15に対し、可制御交流電流源4から人体に交流電流を印加し、交流電流を別の電極18を介して流出させ、生じた電圧を、別の2つの電極16、17により電圧測定回路10を用いて測定し、これに基づき身体セグメントのインピーダンスを測定するよう構成されている人体の組成データを測定するための生体電気インピーダンス測定装置において、各電圧印加電極15には、主基板1とは別体であり、電流印加電極の15の近傍に配置された遠隔操作される交流電流源4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の組成データを測定するための生体電気インピーダンス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の導電率は、水の含有量に強く影響を受ける。筋肉や体液などの脂肪の無い人体の部分に、体内の水分の大部分が含まれる。一方、脂肪組織中の水の含有量は比較的低い。そのため、人体や身体セグメントの導電率を測定した上で(あるいは、人体や身体セグメントの抵抗の逆数又はインピーダンスを測定した上で)、さらに少なくとも被測定者の身長や体重などのデータを考慮に入れれば、相対的な脂肪含有量を決定することができる。
【0003】
典型的な生体電気インピーダンス測定装置は、8つの電極を備える。即ち、足電極4つ(被測定者のそれぞれの足の接続用に2つずつの電極が用いられる)、と手電極4つ(被測定者のそれぞれの手の接続用に2つずつの電極用いられる)である。肢のそれぞれに、1つの電極を電流印加又は注入用として割り当てることができる。交流電流を一の電極を介して注入し、他の肢上に位置する別の電極を介して流出させる。そして、同様に異なる肢上に位置する2つの別の電極を用いて電圧を測定する。電流注入流出用の電極対及び、電圧差検知用の電極対を別の電極対に切り替えることにより、異なる体の部分を連続的に調べてもよい。電流を片手片足に注入し、電圧を同じ手の他方の電極と同じ足の他方の電極で測定すると、体の片側全体が測定される。測定回路の大部分は、制御解析装置とともに主基板上に位置する。主基板は、離れた場所にある肢の電極とケーブルにより接続されている。特に、交流電流の電源もまた主基板上に位置する。該交流電流電源は、体に交流電流を印加するための制御解析装置に制御された振幅を有する交流電流を発生させる。このような回路設計を図3に模式的に示す。主基板1上には、電圧測定回路10に接続される制御解析装置2が位置する。また、電圧測定回路10は、電極16及び17に接続されている。制御解析装置2はまた電流測定回路11の出力信号を受け取る。さらに、制御解析装置2は、交流電流源3の振幅を決定する制御信号を供給する。交流電流源3からケーブル19を介して交流電流が印加され、さらに、電極15を介して体に印加される。本構成においては、電流はケーブル19及び22を介して印加され、電極16及び17間の電圧が測定される。インピーダンス14を高精度に測定するためには、体に印加される電流をできるだけ高精度に知る必要がある。この点において、図3に示す構成では、交流電流源3により生成される交流電流が、かなり長い導体を伝わって体の電極における印加点まで到達する必要があるため、不利である。導体の寄生容量は、特に高周波交流電流においてロスに繋がるので、実際に注入された交流電流が高精度には分からない。その結果、インピーダンスもまた高精度には測定できない。
【0004】
本発明の請求項1のプレアンブル(序文)に記載の生体電気インピーダンス分析装置は、国際公開WO97/01303(特許文献1)に記載されている。回路の模式的構成が図4に示されており、この構成は、プリアンプ6及び8が主基板1から分離されるとともに、電圧測定電極の近くに位置し、前記プリアンプが電圧測定回路10へ出力信号を送信する以外は、先に図3とともに説明した構成に概ね対応する。さらに、電流測定回路12は、主基板と分離されて配置されており、この電流測定回路12により、電極18を介して流出する電流が測定される。この測定値は制御解析装置2へ送信される。本構成においても、印加される交流電流は主基板上の交流電流源3により生成されており、印加電極15へさらに伝えられる間に寄生容量によるロスを受ける。このロスは、高精度には予測できない。しかしながら、本構成においては、実際に流れる電流が電流測定回路12により測定されるので、インピーダンスを決定するために、この測定された電流を、電極16及び17間で測定された電圧とともに考慮に入れることができる。しかしながら、本構成においては、電流測定回路12を付け足す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO97/01303号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インピーダンスを高精度に測定できる簡単な構成を有する生体電気インピーダンス測定装置を提供することを目的とする。特に、これは印加電流を高精度に調節することにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、各電流印加電極には、主基板とは別体の、電流印加電極の近傍に配置される交流電流源が設けられる。各電流印加電極は、制御解析装置により遠隔制御される。このように、所望の振幅を有する交流電流が電流印加電極の近傍で生成された後、その電極に供給される。このように、印加交流電流の振幅が正確に分かり、しかも電極に至るまでの寄生容量に影響されない。主基板上の制御解析装置からは、単に、制御信号を各電流源に送信すればよい。この制御信号は、生成される交流電流の振幅を定める。このような制御信号は、交流電流の実際に生成される振幅に関して不確実なことが存在しないように、干渉による影響をより受けにくい手法で、制御解析装置から遠くにある電極へ送信することができる。電極における印加交流電流の振幅を高精度に知ることで、別の2つの電極間の電圧が簡単に測定できる。最終的に、実際に印加される交流電流又は流出する交流電流を別個に測定する必要なく、この判明した振幅と測定された電圧に基づき、インピーダンスが測定できる。故に、電流測定回路は不必要である。このように、簡単な回路設計を有するにもかかわらず、高精度でインピーダンスを測定できる構成が実現された。
【0008】
好適な実施形態においては、このようにプリアンプ入力前の電流経路による容量を最小化するために、電圧測定電極用プリアンプが同様にそれぞれの電極の近傍に配置される。
【0009】
好適な実施形態においては、交流電流源は、ツイストペアケーブルを介して送信される差動信号を利用する制御解析装置により遠隔操作される。あるいは、交流電流源の制御は、シールド導体を介して交流電流源へ送信される信号を用いて行うことができる。
【0010】
好適な実施形態においては、電圧測定電極の近傍に配置されたプリアンプからの電圧測定信号を、制御解析装置へツイストペアケーブルを介して差動信号として送信してもよく、あるいは、制御解析装置へシールドケーブルを介してアブソリュート信号として送信してもよい。さらに、好適な実施形態においては、電流を流出させる各電極は、制御解析装置にシールドケーブルを介して接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精度にインピーダンスを測定することのできる簡単な構成を有する生体電気インピーダンス測定装置を提供することが可能となる。特にこれは、印加電流を高精度に調節することにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、生体電気インピーダンス測定装置の模式的な回路図を示す。
【図2】図2は、生体電気インピーダンス測定装置の代替実施形態の模式的な回路図を示す。
【図3】図3は、従来技術の生体電気インピーダンス測定装置の模式的な回路図を示す。
【図4】図4は、従来技術の生体電気インピーダンス測定装置の模式的な回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施形態を参照の上説明する。
図1及び図2に示す本発明の実施形態において、電極15を介して体に交流電流を印加する交流電流源4は、主基板1から離れた独立した部品として印加電極15の近傍に位置する。このように、交流電流は、電極のごく近傍の交流電流源4により生成されるので、主基板から、離れた肢用電極へと向かう信号が損なわれることはあり得ない。このように制御解析装置により前もって決定された既知の振幅を有し、交流電流源4により生成される交流電流は、劣化することがなく、そのため、制御解析装置2は高精度に知ることができる。電極16及び17を介する電圧を測定し、その信号をプリアンプ6及び8を介して電圧測定回路10へ伝えることにより、印加交流電流に対応する電圧を決定し、それからインピーダンスを導出してもよい。よって、電流を別個に測定することは原理的にもはや必要ではなく、その結果、図1に示す実施形態では、電流測定回路は省略される。
【0014】
図2に示す実施形態においては、クロスチェックができるように、補足電流測定回路11が主基板上に設けられている。
【0015】
良好な品質の交流電流源を利用した場合、その交流電流源が精度良く制御されているのであれば、交流電流は十分良く分かっているので、電流測定をしなくとも良い。このように、電流測定用回路部品全体を省いても良く、生体電気インピーダンス測定装置をそのように簡略化しても良い。
【0016】
さらに、その後の測定においてより確実に印加交流電流の振幅を再現できる。これは、後の測定における印加交流電流の振幅が、後の測定におけるケーブル経路の変更により変化することがないためである。
【符号の説明】
【0017】
1 主基板
2 制御解析装置
4 交流電流源
10 電圧測定回路
15、16、17、18 測定電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定電極(15、16、17、18)と、
電圧測定回路(10)及び制御解析装置(2)を含む、主基板(1)上に配置された測定回路(2、10)とを備える、人体の組成データを測定するための生体電気インピーダンス測定装置であって、
前記制御解析装置(2)は、
所定の測定プログラムに基づき、それぞれの測定プログラムに特有の電極(15)に対し、可制御交流電流源(4)から前記人体に交流電流を印加し、
交流電流を別の電極(18)を介して流出させ、
生じた電圧を、別の2つの電極(16、17)により前記電圧測定回路(10)を用いて測定し、
これに基づき身体セグメントのインピーダンスを測定するよう構成されている、生体電気インピーダンス測定装置において、
各電圧印加電極(15)には、主基板(1)とは別体であり、電流印加電極の(15)の近傍に配置された遠隔操作される交流電流源(4)が設けられていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
電圧測定に用いられる前記電極(16、17)の近傍には、それぞれの電極に対し主基板(1)とは別体のプリアンプ(6、8)が設けられていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記印加された交流電流を測定するための回路(11)をさらに備えることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記電極は人体の四肢のそれぞれに一対割り当てられることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記交流電流源(4)を制御するために、制御信号が、前記制御解析装置(2)により差動信号として生成され、前記交流電流源へツイストペアケーブル上で送信されることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記交流電流源(4)の制御は、当該交流電流源へシールドケーブル上で送信される信号を用いる前記制御解析装置(2)により行われることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項7】
請求項2に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記電極の近傍に位置する前記プリアンプ(6、8)からの前記電圧測定信号は、前記主基板(1)に差動信号として制御解析装置(2)へ向かうツイストペアケーブル上で送信されることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項8】
請求項2に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記電極の近傍に位置するプリアンプ(6、8)からの前記電圧測定信号は、前記主基板(1)に制御解析装置(2)へ向かうシールドケーブル上で送信されることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項9】
請求項2に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、
前記人体から交流電流を流出させる各電極は、前記主基板にシールドケーブルを介して接続されていることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72785(P2011−72785A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−218363(P2010−218363)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510259769)セカ アーゲー (3)
【Fターム(参考)】