生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置
【課題】生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムを提供すること。
【解決手段】生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステムであって、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサー100と、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段150と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段132と、を備えたバイオセンサーシステム。
【解決手段】生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステムであって、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサー100と、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段150と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段132と、を備えたバイオセンサーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置に関し、特に遺伝子の発現を網羅的に測定できるバイオセンサーシステムとこれを応用した検査装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、競技者の薬剤ドーピングや麻薬の服用は、オリンピックのメダル剥奪や相撲力士の解雇など社会的混乱を引き起こす事態に至っている。しかし、その検出方法はクロマトグラフィーあるいは質量分析機を用いた化学分析であり、大きな装置はスペースを取るため競技会場への持ち込みは不可能であり、外注先での検査工程も複雑で、検査に係る時間も3日から7日と長時間を要した。そのため、一度メダルを授与して表彰式を行った後に、薬剤ドーピングが発覚してメダルを取り消すまでには長い期間を必要とし、競技を運営する組織や選手にとって負担が大きかった。
【0003】
競技者の薬剤ドーピングに関しては、日本では、平成13年9月に財団法人日本アンチ・ドーピング機構が設立され、ドーピング検査やアンチ・ドーピングの普及・啓発を実施しているが、その方法はガスクロマトグラフィー、液層クロマトグラフィーおよび質量分析技術が中心で、検査に非常に手間と時間がかかっていた。また、世界的にもオリンピック委員会による規定が設けられているがほぼ同様な方法で行われている。
【0004】
さらに、競技者の遺伝子ドーピングに関しては、特に骨格筋に注射などして導入した場合には、血液や尿に排出されることはなく、検出は不可能とされていた。
【0005】
従来技術としては、微量生体分子を迅速正確に検出できる技術としてカーボンナノチューブバイオセンサーが注目されている。金属表面にカーボンナノチューブを備えることにより高感度に被検出物質を検出するセンサーが提案されている(特許文献1等参照)。カーボンナノチューブ上に固定された生物学的実体を含み、アレイとしたマトリックスアレイナノバイオセンサーが提案されている(特許文献2等参照)。親水性ポリマーを加えることにより、水溶液中での分散性に優れたカーボンナノチューブ組成物を電極上に具備したバイオセンサーも提案されている(特許文献3等参照)。
【特許文献1】特開2008−64724号公報
【特許文献2】特表2007−513357号公報
【特許文献3】特開2006−292495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、単品のバイオセンサーを用いる方法には限度がある。本発明は、生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これまで「分子レベル運動生理学」を行ってきており、その知見より、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサーを情報技術により解析することの有用性を見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0008】
(1) 生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステムであって、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、を備えたバイオセンサーシステム。
【0009】
(1)に記載の発明のバイオセンサーシステムは、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、を備える。生体高分子物質の種類を適切に選択することにより遺伝子の発現状態を網羅的に測定することができる。
【0010】
ここで、生体高分子物質を検知する物質としては、たとえば、蛋白同化男性化ステロイド薬の抗体、エリスロポエチン、インスリン、成長ホルモン、テストステロン、ミオスタチンに代表されるホルモンと関連物資の抗体、並びにアンギオテンシン変換酵素、アクチニンに代表される酵素とその関連物質の抗体であるが、これに限られるものではない。
【0011】
記憶手段は、フラッシュメモリー等の半導体メモリによることが、処理速度と軽量であるので望ましいが、ハードディスクでもよいし、その他のメモリでもよい。網羅的発現状態解析手段は、電子計算機の演算手段と対応するソフトウエアにより実現することができる。また、処理速度の点でDSP(Digital Signal Processor)を用いてもよい。
【0012】
(2)前記バイオセンサーが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである(1)に記載のバイオセンサーシステム。
【0013】
(2)に記載の発明のバイオセンサーシステムは、(1)の発明においてバイオセンサーが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである。カーボンナノチューブは、電子が散乱されずに結晶内を通り過ぎるバリステック伝導現象を示すので、検出感度が高い。かつ、細く強く耐熱性も高いので、小さな空間に複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した、密度の高いバイオセンサーを実現することができる。
【0014】
(3) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるものである(1)又は(2)に記載のバイオセンサーシステム。
【0015】
(3)に記載の発明のバイオセンサーは、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるので、ドーピング検出バイオセンサーとして使用することができる。ドーピング防止規定は、例えば、世界ドーピング防止規定である2008年禁止表国際基準によるものが望ましいが、これに限られるものではない。各地域や国、または団体で規定するドーピング防止規定であってもよい。
【0016】
(4) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ガン組織から発生する化学物質に反応するものである(1)又は(2)に記載のバイオセンサーシステム。
【0017】
(4)に記載の発明のバイオセンサーは、ガン組織から発生する化学物質に反応するものであるので、ガン検出バイオセンサーシステムとして使用することができる。
【0018】
ガン組織から発生する化学物質は、ガン患者の進展度合い、種類により異なるものである。たとえば、犬はガン患者をにおいで嗅ぎ分けることができる。犬の嗅覚を刺激する物質を認識するバイオセンサーを用いることにより実現することができる。
【0019】
(5) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できるものである(1)又は(2)に記載のバイオセンサーシステム。
【0020】
(5)に記載の発明のバイオセンサーは、エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できるものであるので、エリートアスリート発掘システムとして使用することができる。
【0021】
エリートアスリートとは、生まれながらにしてある特別の身体能力が高くなる遺伝子を持つ者であり、これらの人間を発掘してエリート教育を行うことにより、世界の舞台で活躍することができる人間を育成することができる。
【0022】
エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できる例としては、生まれながらして筋力の高いエリートアスリートとして、ミオスタチンの量を調べることにより実現することができる。骨格筋は、通常は代謝量が大きいので、通常の人間は生命維持のために不必要な筋肉をつけない筋肉の抑制剤であるミオスタチンが分泌されている。しかし、ある確率で遺伝子によりミオスタチンの分泌が少なく、筋量が著しく増加したエリートアスリートも存在する。
【0023】
(6) ドーピング薬物に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置した薬剤ドーピング検査装置であって、ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備えた薬剤ドーピング検査装置。
【0024】
(6)に記載の発明の薬剤ドーピング検査装置は、ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備える。ドーピング薬物を検出できる物質が表面に固定化されているので、検体を当該カーボンカーボンナノチューブに接触させることによって、検体に含まれる薬物を検出し、複数の電極からの信号を解析することによって検体の提供者が薬剤ドーピング陽性か否かを検査することができる。
【0025】
バイオセンサーを用いる方法であるので、短時間で判定することができる。したがって、従来のガスクロマトグラフィー、液層クロマトグラフィーおよび質量分析が中心で、検査に非常に手間と時間がかかっており、表彰後、長い検査期間を経てからメダルを取り消すなどの問題を解決することができる。また、カーボンナノチューブを用いているので小型に製作することができるので、ポータブルであり、競技場に持参して活用することができる。
【0026】
(7) 前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である蛋白同化薬を検出できるものである(6)に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【0027】
(8)前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である興奮薬を検出することができるものである(6)に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【0028】
(9) 前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質であるホルモンと関連物質を検出できるものである(6)に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【0029】
(7)に記載の発明は、短距離競走に代表されるスプリント系のドーピングを防止することを目的とするものである。世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質に規定されている薬物は数百種類にも及ぶので、すべての禁止薬物を検出することができるセンサーを開発することは難しい。しかし、実際の現場では、短距離競走に代表されるスプリント系とマラソンに代表される持久系とでは、ドーピングに使用される薬物も異なる。
【0030】
そこで、スプリント系と持久系で対象とされる薬物を検出する物質を分けることにより、バイオセンサーの種類を実用的に適用できる範囲に絞ることができる。(7)に記載の発明は、スプリント系に使用される蛋白同化男性化ステロイド薬に関するものであり、(8)に記載の発明は、興奮薬に関するものである。(9)に関する発明は、持久系のホルモンと関連物資とを検出するものである。
【0031】
(10) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサーと、前記バイオセンサーの遺伝子の発現状態を網羅的に測定して解析する網羅的発現状態解析手段と、各種ドーピングの発現状態のデータを禁止薬物に関連付けて禁止薬物のタンパク質変動データベースをあらかじめ記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、競技後に測定された発現状態のデータと、前記記憶手段より読みだした競技前の発現状態のデータとの変動を検出する遺伝子変動検出手段と、を備えた遺伝子ドーピング検査装置。
【0032】
(11) 前記バイオセンサーが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである請求項10に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【0033】
(12) 個体を特定することができる生体認証手段と、前記生体認証手段で特定された個体生体情報と、競技前に測定された発現状態のデータとを個体生体情報に関連付けて記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、競技後に測定された発現状態のデータと、前記個別生体情報別発現状態データ記憶手段より個体生体情報をキーとして読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段と、をさらに備えた(10)又は(11)に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【0034】
(10)から(12)に記載された発明は、遺伝子ドーピングをも検出する遺伝子ドーピング検査装置に関するものである。上記で述べたように、特に骨格筋に注射などして導入した場合には、血液や尿に排出されることはなく、検出は不可能とされていた。発明者らは、遺伝子の発現状態を網羅的に解析する技術を応用して持久性運動でどのような分子の発現状態が変化するのかを鋭意研究してきた。その結果、ミトコンドリアの増加や血管新生に関わるような当然変動があるような蛋白質の他、思いもよらなかったものも動くことが確認された。しかも、時間的にその変化を追ってみることで当然のことながらその変動の程度も時間に応じて変化していることが判明した。「運動する」という刺激がたくさんの遺伝子のスイッチをいろいろな程度・時間で操作し始めることを見出した。
【0035】
この現象を外来の遺伝子を導入するドーピングに応用できないかと考えた。通常、生体に遺伝子を導入する場合、分子生物学者や遺伝子治療学者はその遺伝子のみを入れるようなことはしない。ベクターという遺伝子の運び手(プラスミドであったり、ウィルスであったり)にその遺伝子を入れ込んで(組み換えて)注射などをすると想定される。
【0036】
この場合、生体は必ずその「外来の遺伝子ベクターが入ってきた」事を察知し、一連の免疫反応を引き起こすと想定される。そのパターンをマイクロアレイ技術を使って読み取り、変動を一般化してしまえば、逆に「このパターンの遺伝子変動を起こしている血液を持った人は限りなく外来の遺伝子を導入された可能性が高い」と判断できる。
【0037】
病院で実際に遺伝子治療に使われている(実用化)ベクターは、実際にはそれほど多くない。研究者により多少バリエーションがあるものの、アデノウィルスをベースにしたそれ自体では安全性の確認されたものが主流で、いかに競技で良い結果を得るためといえども大腸菌用に使われているベクターをそのまま人に注射することはしないと想定される。したがって、数十種類の免疫反応物質を感知するカーボンナノチューブバイオセンサーを小さなチップの上に並べて(カタログアレイ)それに血液、あるいは尿、あるいは唾液、などのサンプルを載せれば、遺伝子ドーピングの有無がチェックできる遺伝子ドーピング検査装置を提供できる。
【0038】
さらに、ある特定の遺伝子の発現レベルが上がった場合には、それに代謝がかく乱さ
れいろいろな遺伝子の発現レベルが上がってくると想定される。この状態を網羅的に測定して解析することでもよい。
【0039】
(13) ガン組織から発生する化学物質に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置したガン検査装置であって、ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備えたガン検査装置。
【0040】
(13)に記載の発明のガン検査装置は、ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備える。ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質が表面に固定化されているので、検体を当該カーボンカーボンナノチューブに接触させることによって、検体に含まれるガン組織から発生する化学物質を複数の電極からの信号を解析することによって検体の提供者がガン組織に犯されているか否かを検査することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、を備える。生体高分子物質の種類を適切に選択することにより遺伝子の発現状態を網羅的に測定することができる。
【0042】
よって、生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムを提供することができる、
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0044】
<実施例1>
図1は、本発明のバイオセンサーシステムの一実施例を示すブロック図である。図2は、本発明のバイオセンサーシステムの一実施例の動作を示すフローチャート図である。図3は、本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーを示す図である。図4は、本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーの別の実施例を示す図である。図5は、本発明のバイオセンサーシステムの解析対象の生体高分子物質とその検知物質の実施例を示す図である。図6は、本発明のバイオセンサーシステムの運動適用別データベースの一実施例を示す図である。以下これらの図を参照して説明をする。
【0045】
本発明のバイオセンサーシステム1は、図1に示すように 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサー100と、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する複数のバイオセンサー100の出力信号を増幅して読み込むことができるバイオセンサーリーダー120と、情報をあらかじめ記憶する記憶手段140並びに150と、演算手段130と、検体を測定した際の複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段150に記憶されている運動適用別情報であるデータベースと対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段132と、結果等を表示する表示手段160と、を有する。
【0046】
バイオセンサー100は、図3に示すように複数の種類の生体高分子物質を検知する物質30(抗体、ANTIBODY)を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブ20と、物質の種類毎のカーボンナノチューブ20からの信号を検出する複数の電極10と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーが望ましい。なお、図3において、抗原40と検出を容易にする標識酵素50も理解を容易にするために表示されている。
【0047】
バイオセンサー100は、図4に示すような構成であってもよい。詳細については、下記文献1および2を参照。また、生体高分子物質を検知する物質30は、図5に1例を示すように、目的とする用途に対応して、生体高分子物質に対応した検知物質をカーボンナノチューブ20の表面に個別に固定化する。
【非特許文献1】By Sang Nyon Kim,“Carbon Nanotubes for Electronic and Electrochemical Detection of Biomolecules”Adv.Mater.2007,19,3214−3228
【非特許文献2】Joseph Wang,“Carbon−Nanotube Based Electrochemical Biosennsors:A Review”Electroanalysis 2005,17,No.1 7page
【0048】
記憶手段140並びに150、演算手段130、表示手段160は、後述する図11に記載した情報処理装置1000により実現することができる。また、網羅的発現状態解析手段132は、専用のソフトウエアを情報処理装置1000にインストールすることにより実現することができる。
【0049】
次に、演算手段130の処理内容について図2にしたがって説明をする。演算手段130のソフトウエアがスタートすると、演算手段130は最初にnを1にセットする(S10)。次に演算手段130は、バイオセンサーnのデータをバイオセンサーリーダー120を介して読み込む(S20)。そして、そのデータを検体データとして記憶手段140に記憶する(S30)。次に、全バイオセンサーについて読み込まれたか判定され(S40)、読み込まれていなければ、nに1を加算して(S50)、次のバイオセンサー100のデータを読み込む。このようにして全バイオセンサーのデータが読み込まれたところで、網羅的発現状態解析が行われる(S60)。
【0050】
網羅的発現状態解析では、記憶手段140に記憶されている検体データと記憶手段150に記憶されている運動適用別データベースとが読みだされ、検体データに相当する運動適用別データが存在するか否かが比較される(S70)。運動適用別データベースの一例は、図6に示すように運動適用別に各センサー番号が示す出力のデータが最大値、平均値、最小値で記憶されている。検体データが運動適用に相当するか対比して、対比データがある場合は近い運動適用順に表示手段160により表示する(S80)。対比データがない場合は「対象情報なし」として表示される。
【0051】
<実施例1の応用例1>
上記のバイオセンサーシステムの一つの応用例は、ドーピング検査に使用する例である。複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるものであるので、ドーピング検出バイオセンサーとして使用することができる。ドーピング防止規定は、例えば、世界ドーピング防止規定である2008年禁止表国際基準によるものが望ましいが、これに限られるものではない。各地域や国、または団体で規定するドーピング防止規定であってもよい。
【0052】
<実施例1の応用例2>
上記のバイオセンサーシステムの別の応用例は、ガン検査に使用する例である。複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ガン組織から発生する化学物質に反応するものであり、ガン検出バイオセンサーシステムとして使用することができる。
【0053】
ガン組織から発生する化学物質は、ガン患者の進展度合い、種類により異なるものである。たとえば、犬はガン患者をにおいで嗅ぎ分けることができる。犬の嗅覚を刺激する物質を分離してバイオセンサーに用いることにより実現することができる。
【0054】
<実施例1の応用例3>
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、エリートアスリートの発掘に使用する例である。エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できる例としては、生まれながらして筋力の高いエリートアスリートとして、ミオスタチンの量を調べることにより実現することができる。骨格筋は、通常は代謝量が大きいので、通常の人間は生命維持のために不必要な筋肉をつけない筋肉の抑制剤であるミオスタチンが分泌されている。しかし、ある確率で遺伝子によりミオスタチンの分泌が少なく、筋量が著しく増加したエリートアスリートも存在するからである。
【0055】
<実施例2>
実施例2は、薬剤ドーピング検査装置に関するものである。実施例1で説明した網羅的発現状態解析手段等を省略して、図7に示すように、 ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブのバイオセンサー100と、カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極10(1)、10(2)、・・・10(k)・・・10(n)と、バイオセンサーリーダー120と演算手段230と禁止薬物判定レベルをあらかじめ記憶した記憶手段240と表示手段260を有する。
【0056】
世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質に規定されている薬物は数百種類にも及ぶので、すべての禁止薬物を検出することができるセンサーを開発することは難しい。しかし、実際の現場では、短距離競走に代表されるスプリント系とマラソンに代表される持久系とでは、ドーピングに使用される薬物も異なる。そこで、スプリント系と持久系で対象とされる薬物を検出する物質を分けることにより、バイオセンサーの種類を実用的に適用できる範囲に絞ることができる。
【0057】
<実施例2−1>
具体的な応用例として実施例2−1は、短距離競走に代表されるスプリント系のドーピングを防止することを目的とするものである。スプリント系に使用される蛋白同化男性化ステロイド薬に関するものであり、具体的には、ナンドロロン、アンドロステンジオールを検知する物質をカーボンナノチューブの表面に固定化する。
【0058】
<実施例2−2>
具体的な応用例として実施例2−2は、短距離競走に代表されるスプリント系のドーピングを防止することを目的とするものである。スプリント系に使用される興奮薬を検出するものであり、具体的には、ジメチルアンフェタミン、アドレナリンを検知する物質をカーボンナノチューブの表面に固定化する。
【0059】
<実施例2−3>
具体的な応用例として実施例2−3は、マラソンに代表される持久系のドーピングを防止することを目的とするものである。持久系に使用されるホルモンと関連物質を検出するものであり、具体的には、エリスロポエチン、インスリン、ミオスタチン等を検知する物質をカーボンナノチューブの表面に固定化する。
【0060】
<実施例3>
実施例3は、遺伝子ドーピング検査装置に関するものである。図8は、本発明の遺伝子ドーピング検査装置の一実施例を示すブロック図である。図9は、本発明の遺伝子ドーピング検査装置の一実施例の動作を示すフローチャート図である。
【0061】
図8に示すように、遺伝子ドーピング検査装置3は、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサー300と、バイオセンサーリーダー120と、演算手段330と、バイオセンサー330の遺伝子の発現状態を網羅的に測定して解析する網羅的発現状態解析手段332と、各種ドーピングの発現状態のデータを禁止薬物に関連付けてあらかじめ記憶する記憶手段350と、競技後に測定された発現状態のデータと、記憶手段350より読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段336と、個体を特定することができる生体認証手段320と、生体認証手段320で特定された個体生体情報と、競技前に測定された発現状態のデータとを個体生体情報に関連付けて記憶する個別生体情報記憶手段340と、競技後に測定された発現状態のデータと、個別生体情報記憶手段340より個体生体情報をキーとして読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段336と、を有する。
【0062】
バイオセンサー300は、実施例1で説明したのと同様な構成であるが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質が遺伝子ドーピングチェック用である点が異なる。すなわち、スプリンター系では、MyoD、Myogeninなどの分化促進マーカー、AKT、mTOR、などの細胞増殖マーカー、NTF、NDGF、などの神経促通マーカーが、
持久系では、VEGF、FLT、などの血管新生マーカー、PGC1、Calcineurin、などの代謝マーカーを表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、 前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーが望ましい。
【0063】
生体認識手段320としては、指紋、指の静脈、掌の静脈、顔や虹彩等の生体情報を利用するものを使用することができる。これらの生体情報は、それぞれの人間が持つ固有の特徴的な情報であり、盗用の心配が無い。
【0064】
次に、演算手段330の処理内容について図9にしたがって説明をする。演算手段330のソフトウエアがスタートすると、個別生体認証手段320により個別生体認証が行われる(S105)。次に、演算手段330は最初にnを1にセットする(S110)。そして演算手段330は、バイオセンサーnのデータをバイオセンサーリーダー120を介して読み込む(S120)。そして、そのデータを個別生体情報別発現状態データとして記憶手段340に記憶する(S130)。次に、全バイオセンサーについて読み込まれたか判定され(S140)、読み込まれていなければ、nに1を加算して(S150)、次のバイオセンサー300のデータを読み込む。このようにして全バイオセンサーのデータが読み込まれたところで、同一個別生体データの有無が調査される(S160)。同一個別生体データがない場合は、プログラムは終了する。同一個別生体データが有る場合は、旧個別生体情報別の発現データの変動量を記憶手段340に記憶されているデータを読み出して調査される(S162)。
【0065】
網羅的発現状態解析では、個別生体情報別の発現データの変動量と記憶手段350に記憶されている禁止薬物のタンパク質変動データベースとが読みだされ、発現データに相当する禁止薬物別データが存在するか否かが比較される(S170)。個別生体情報別の発現データの変動量の一例は、図10に示すように、訓練を始めると初期適応から後期適応につれて筋肉の組織、筋繊維は変化する。訓練により血管組織を増加し、筋力も増す。
【0066】
遺伝子ドーピングが行われた場合は、通常生体に遺伝子を導入する場合、分子生物学者や遺伝子治療学者はその遺伝子のみを入れるようなことはしない。ベクターという遺伝子の運び手(プラスミド、ウィルス等)にその遺伝子を入れ込んで(組み換えて)注射などをすると想定される。
【0067】
この場合、生体は必ずその「外来の遺伝子ベクターが入ってきた」事を察知し、一連の免疫反応を引き起こすと想定される。そのパターンをバイオセンサー300を使って読み取り、変動を一般化してしまえば、逆に「このパターンの遺伝子変動を起こしている血液を持った人は限りなく外来の遺伝子を導入された可能性が高い」と判断できる。例えば、検体より赤血球の実が増加していることが判明すれば遺伝子ドーピングの可能性があると判断される。
【0068】
発現状態の変動データが禁止薬物別データに相当するか対比して、対比データがある場合は近い禁止薬物順に表示手段360により表示する(S180)。対比データがない場合は「禁止薬物発言なし」として表示される(S190)。
【0069】
以上のようにして、従来は、特に骨格筋に注射などして導入した場合には、血液や尿に排出されることはなく検出が不可能とされていた競技者の遺伝子ドーピングについても検査することができる。
【0070】
<実施例4>
実施例4は、ガン検査装置に関するものである。実施例2で説明したドーピング薬物を検出できる物資との代わりにガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を用いたものである。構成、作用は実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0071】
図11は、本発明のバイオセンサーシステム1で使用することができる情報処理装置1000のハードウェア構成の一例を示す。情報処理装置1000は、CPU(Central Processing Unit)1010、バスライン1005、通信I/F1040、メインメモリ1050、BIOS(Basic Input Output System)1060、パラレルポート1080、USBポート1090、グラフィック・コントローラ1020、I/Oコントローラ1070、並びにキーボード及びマウス・アダプタ等1092を備える。I/Oコントローラ1070には、ハード・ディスク1074、光ディスクドライブ1076、半導体メモリ1078、等の記憶手段を接続することができる。これらの記憶手段を記憶装置として使用することができる。グラフィック・コントローラ1020には、表示装置1022が接続されている。
【0072】
BIOS1060は、情報処理装置1000の起動時にCPU1010が実行するブートプログラムや、情報処理装置1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。これにより、図1で示した機能構成を有するハードウェアが実現される。
【0073】
光ディスクドライブ1076としては、例えば、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ、DVD−RAMドライブ、BD(Blu−ray Disk)−ROMドライブ等を使用することができる。この際は各ドライブに対応した光ディスク1077を使用する必要がある。光ディスク1077から光ディスクドライブ1076によりプログラムまたはデータを読み取り、I/Oコントローラ1070を介してメインメモリ1050またはハード・ディスク1074に提供することもできる。
【0074】
情報処理装置1000に提供される本発明によるプログラムは、光ディスク1077、またはメモリーカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。コンピュータプログラムは、I/Oコントローラ1070を介して、記録媒体から読み出され、又は通信I/F1040を介してダウンロードされることによって、情報処理装置1000にインストールされ実行される。プログラムが情報処理装置に働きかけて行わせる動作は、図1から図5において説明した動作は、情報処理装置1000における動作と同一であるので省略する。
【0075】
以上に示したコンピュータプログラムは、外部の記憶媒体に格納してもよい。記憶媒体としては光ディスク1077、またはメモリーカードの他に、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、を用いることができる。また、専用通信回線やインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハード・ディスクまたは光デスクライブラリー等の記憶装置を記録媒体として使用し、通信回線を介してコンピュータプログラムを情報処理装置1000に提供してもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。例えば、バイオセンサーはカーボンナノチュウーブにより説明をしたが、他のバイオセンサーであってもよい。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のバイオセンサーシステムの一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明のバイオセンサーシステムの一実施例の動作を示すフローチャート図である。
【図3】本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーを示す図である。
【図4】本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーの別の実施例を示す図である。
【図5】本発明のバイオセンサーシステムの解析対象の生体高分子物質とその検知物質の実施例を示す図である。
【図6】本発明のバイオセンサーシステムの運動適用別データベースの一実施例を示す図である。
【図7】本発明の薬剤ドーピング検査装置の一実施例を示すブロック図である。
【図8】本発明の薬剤ドーピング検査装置の別の実施例を示すブロック図である。
【図9】本発明の薬剤ドーピング検査装置の別の実施例の動作を示すフローチャート図である。
【図10】運動による人体の筋肉の適応を説明する図である。
【図11】本発明に使用する、情報処理装置の一例である。
【符号の説明】
【0078】
10(1)、10(2)、・・・10(k)・・・10(n) 電極
20 カーボンナノチューブ
30 生体高分子物質を検知する物質
40 抗原
50 酵素ラベル
100 バイオセンサー
120 バイオセンサーリーダー
130 演算手段
132 網羅的発現状態解析手段
140 記憶手段
150 記憶手段
160 表示手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置に関し、特に遺伝子の発現を網羅的に測定できるバイオセンサーシステムとこれを応用した検査装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、競技者の薬剤ドーピングや麻薬の服用は、オリンピックのメダル剥奪や相撲力士の解雇など社会的混乱を引き起こす事態に至っている。しかし、その検出方法はクロマトグラフィーあるいは質量分析機を用いた化学分析であり、大きな装置はスペースを取るため競技会場への持ち込みは不可能であり、外注先での検査工程も複雑で、検査に係る時間も3日から7日と長時間を要した。そのため、一度メダルを授与して表彰式を行った後に、薬剤ドーピングが発覚してメダルを取り消すまでには長い期間を必要とし、競技を運営する組織や選手にとって負担が大きかった。
【0003】
競技者の薬剤ドーピングに関しては、日本では、平成13年9月に財団法人日本アンチ・ドーピング機構が設立され、ドーピング検査やアンチ・ドーピングの普及・啓発を実施しているが、その方法はガスクロマトグラフィー、液層クロマトグラフィーおよび質量分析技術が中心で、検査に非常に手間と時間がかかっていた。また、世界的にもオリンピック委員会による規定が設けられているがほぼ同様な方法で行われている。
【0004】
さらに、競技者の遺伝子ドーピングに関しては、特に骨格筋に注射などして導入した場合には、血液や尿に排出されることはなく、検出は不可能とされていた。
【0005】
従来技術としては、微量生体分子を迅速正確に検出できる技術としてカーボンナノチューブバイオセンサーが注目されている。金属表面にカーボンナノチューブを備えることにより高感度に被検出物質を検出するセンサーが提案されている(特許文献1等参照)。カーボンナノチューブ上に固定された生物学的実体を含み、アレイとしたマトリックスアレイナノバイオセンサーが提案されている(特許文献2等参照)。親水性ポリマーを加えることにより、水溶液中での分散性に優れたカーボンナノチューブ組成物を電極上に具備したバイオセンサーも提案されている(特許文献3等参照)。
【特許文献1】特開2008−64724号公報
【特許文献2】特表2007−513357号公報
【特許文献3】特開2006−292495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、単品のバイオセンサーを用いる方法には限度がある。本発明は、生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これまで「分子レベル運動生理学」を行ってきており、その知見より、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサーを情報技術により解析することの有用性を見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0008】
(1) 生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステムであって、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、を備えたバイオセンサーシステム。
【0009】
(1)に記載の発明のバイオセンサーシステムは、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、を備える。生体高分子物質の種類を適切に選択することにより遺伝子の発現状態を網羅的に測定することができる。
【0010】
ここで、生体高分子物質を検知する物質としては、たとえば、蛋白同化男性化ステロイド薬の抗体、エリスロポエチン、インスリン、成長ホルモン、テストステロン、ミオスタチンに代表されるホルモンと関連物資の抗体、並びにアンギオテンシン変換酵素、アクチニンに代表される酵素とその関連物質の抗体であるが、これに限られるものではない。
【0011】
記憶手段は、フラッシュメモリー等の半導体メモリによることが、処理速度と軽量であるので望ましいが、ハードディスクでもよいし、その他のメモリでもよい。網羅的発現状態解析手段は、電子計算機の演算手段と対応するソフトウエアにより実現することができる。また、処理速度の点でDSP(Digital Signal Processor)を用いてもよい。
【0012】
(2)前記バイオセンサーが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである(1)に記載のバイオセンサーシステム。
【0013】
(2)に記載の発明のバイオセンサーシステムは、(1)の発明においてバイオセンサーが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである。カーボンナノチューブは、電子が散乱されずに結晶内を通り過ぎるバリステック伝導現象を示すので、検出感度が高い。かつ、細く強く耐熱性も高いので、小さな空間に複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した、密度の高いバイオセンサーを実現することができる。
【0014】
(3) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるものである(1)又は(2)に記載のバイオセンサーシステム。
【0015】
(3)に記載の発明のバイオセンサーは、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるので、ドーピング検出バイオセンサーとして使用することができる。ドーピング防止規定は、例えば、世界ドーピング防止規定である2008年禁止表国際基準によるものが望ましいが、これに限られるものではない。各地域や国、または団体で規定するドーピング防止規定であってもよい。
【0016】
(4) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ガン組織から発生する化学物質に反応するものである(1)又は(2)に記載のバイオセンサーシステム。
【0017】
(4)に記載の発明のバイオセンサーは、ガン組織から発生する化学物質に反応するものであるので、ガン検出バイオセンサーシステムとして使用することができる。
【0018】
ガン組織から発生する化学物質は、ガン患者の進展度合い、種類により異なるものである。たとえば、犬はガン患者をにおいで嗅ぎ分けることができる。犬の嗅覚を刺激する物質を認識するバイオセンサーを用いることにより実現することができる。
【0019】
(5) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できるものである(1)又は(2)に記載のバイオセンサーシステム。
【0020】
(5)に記載の発明のバイオセンサーは、エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できるものであるので、エリートアスリート発掘システムとして使用することができる。
【0021】
エリートアスリートとは、生まれながらにしてある特別の身体能力が高くなる遺伝子を持つ者であり、これらの人間を発掘してエリート教育を行うことにより、世界の舞台で活躍することができる人間を育成することができる。
【0022】
エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できる例としては、生まれながらして筋力の高いエリートアスリートとして、ミオスタチンの量を調べることにより実現することができる。骨格筋は、通常は代謝量が大きいので、通常の人間は生命維持のために不必要な筋肉をつけない筋肉の抑制剤であるミオスタチンが分泌されている。しかし、ある確率で遺伝子によりミオスタチンの分泌が少なく、筋量が著しく増加したエリートアスリートも存在する。
【0023】
(6) ドーピング薬物に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置した薬剤ドーピング検査装置であって、ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備えた薬剤ドーピング検査装置。
【0024】
(6)に記載の発明の薬剤ドーピング検査装置は、ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備える。ドーピング薬物を検出できる物質が表面に固定化されているので、検体を当該カーボンカーボンナノチューブに接触させることによって、検体に含まれる薬物を検出し、複数の電極からの信号を解析することによって検体の提供者が薬剤ドーピング陽性か否かを検査することができる。
【0025】
バイオセンサーを用いる方法であるので、短時間で判定することができる。したがって、従来のガスクロマトグラフィー、液層クロマトグラフィーおよび質量分析が中心で、検査に非常に手間と時間がかかっており、表彰後、長い検査期間を経てからメダルを取り消すなどの問題を解決することができる。また、カーボンナノチューブを用いているので小型に製作することができるので、ポータブルであり、競技場に持参して活用することができる。
【0026】
(7) 前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である蛋白同化薬を検出できるものである(6)に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【0027】
(8)前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である興奮薬を検出することができるものである(6)に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【0028】
(9) 前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質であるホルモンと関連物質を検出できるものである(6)に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【0029】
(7)に記載の発明は、短距離競走に代表されるスプリント系のドーピングを防止することを目的とするものである。世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質に規定されている薬物は数百種類にも及ぶので、すべての禁止薬物を検出することができるセンサーを開発することは難しい。しかし、実際の現場では、短距離競走に代表されるスプリント系とマラソンに代表される持久系とでは、ドーピングに使用される薬物も異なる。
【0030】
そこで、スプリント系と持久系で対象とされる薬物を検出する物質を分けることにより、バイオセンサーの種類を実用的に適用できる範囲に絞ることができる。(7)に記載の発明は、スプリント系に使用される蛋白同化男性化ステロイド薬に関するものであり、(8)に記載の発明は、興奮薬に関するものである。(9)に関する発明は、持久系のホルモンと関連物資とを検出するものである。
【0031】
(10) 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサーと、前記バイオセンサーの遺伝子の発現状態を網羅的に測定して解析する網羅的発現状態解析手段と、各種ドーピングの発現状態のデータを禁止薬物に関連付けて禁止薬物のタンパク質変動データベースをあらかじめ記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、競技後に測定された発現状態のデータと、前記記憶手段より読みだした競技前の発現状態のデータとの変動を検出する遺伝子変動検出手段と、を備えた遺伝子ドーピング検査装置。
【0032】
(11) 前記バイオセンサーが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである請求項10に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【0033】
(12) 個体を特定することができる生体認証手段と、前記生体認証手段で特定された個体生体情報と、競技前に測定された発現状態のデータとを個体生体情報に関連付けて記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、競技後に測定された発現状態のデータと、前記個別生体情報別発現状態データ記憶手段より個体生体情報をキーとして読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段と、をさらに備えた(10)又は(11)に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【0034】
(10)から(12)に記載された発明は、遺伝子ドーピングをも検出する遺伝子ドーピング検査装置に関するものである。上記で述べたように、特に骨格筋に注射などして導入した場合には、血液や尿に排出されることはなく、検出は不可能とされていた。発明者らは、遺伝子の発現状態を網羅的に解析する技術を応用して持久性運動でどのような分子の発現状態が変化するのかを鋭意研究してきた。その結果、ミトコンドリアの増加や血管新生に関わるような当然変動があるような蛋白質の他、思いもよらなかったものも動くことが確認された。しかも、時間的にその変化を追ってみることで当然のことながらその変動の程度も時間に応じて変化していることが判明した。「運動する」という刺激がたくさんの遺伝子のスイッチをいろいろな程度・時間で操作し始めることを見出した。
【0035】
この現象を外来の遺伝子を導入するドーピングに応用できないかと考えた。通常、生体に遺伝子を導入する場合、分子生物学者や遺伝子治療学者はその遺伝子のみを入れるようなことはしない。ベクターという遺伝子の運び手(プラスミドであったり、ウィルスであったり)にその遺伝子を入れ込んで(組み換えて)注射などをすると想定される。
【0036】
この場合、生体は必ずその「外来の遺伝子ベクターが入ってきた」事を察知し、一連の免疫反応を引き起こすと想定される。そのパターンをマイクロアレイ技術を使って読み取り、変動を一般化してしまえば、逆に「このパターンの遺伝子変動を起こしている血液を持った人は限りなく外来の遺伝子を導入された可能性が高い」と判断できる。
【0037】
病院で実際に遺伝子治療に使われている(実用化)ベクターは、実際にはそれほど多くない。研究者により多少バリエーションがあるものの、アデノウィルスをベースにしたそれ自体では安全性の確認されたものが主流で、いかに競技で良い結果を得るためといえども大腸菌用に使われているベクターをそのまま人に注射することはしないと想定される。したがって、数十種類の免疫反応物質を感知するカーボンナノチューブバイオセンサーを小さなチップの上に並べて(カタログアレイ)それに血液、あるいは尿、あるいは唾液、などのサンプルを載せれば、遺伝子ドーピングの有無がチェックできる遺伝子ドーピング検査装置を提供できる。
【0038】
さらに、ある特定の遺伝子の発現レベルが上がった場合には、それに代謝がかく乱さ
れいろいろな遺伝子の発現レベルが上がってくると想定される。この状態を網羅的に測定して解析することでもよい。
【0039】
(13) ガン組織から発生する化学物質に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置したガン検査装置であって、ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備えたガン検査装置。
【0040】
(13)に記載の発明のガン検査装置は、ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を備える。ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質が表面に固定化されているので、検体を当該カーボンカーボンナノチューブに接触させることによって、検体に含まれるガン組織から発生する化学物質を複数の電極からの信号を解析することによって検体の提供者がガン組織に犯されているか否かを検査することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、を備える。生体高分子物質の種類を適切に選択することにより遺伝子の発現状態を網羅的に測定することができる。
【0042】
よって、生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステム並びにその応用装置である薬剤ドーピング検査装置、遺伝子ドーピング検査装置、ガン検査装置及びエリートアスリート発掘システムを提供することができる、
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0044】
<実施例1>
図1は、本発明のバイオセンサーシステムの一実施例を示すブロック図である。図2は、本発明のバイオセンサーシステムの一実施例の動作を示すフローチャート図である。図3は、本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーを示す図である。図4は、本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーの別の実施例を示す図である。図5は、本発明のバイオセンサーシステムの解析対象の生体高分子物質とその検知物質の実施例を示す図である。図6は、本発明のバイオセンサーシステムの運動適用別データベースの一実施例を示す図である。以下これらの図を参照して説明をする。
【0045】
本発明のバイオセンサーシステム1は、図1に示すように 複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサー100と、原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する複数のバイオセンサー100の出力信号を増幅して読み込むことができるバイオセンサーリーダー120と、情報をあらかじめ記憶する記憶手段140並びに150と、演算手段130と、検体を測定した際の複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段150に記憶されている運動適用別情報であるデータベースと対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段132と、結果等を表示する表示手段160と、を有する。
【0046】
バイオセンサー100は、図3に示すように複数の種類の生体高分子物質を検知する物質30(抗体、ANTIBODY)を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブ20と、物質の種類毎のカーボンナノチューブ20からの信号を検出する複数の電極10と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーが望ましい。なお、図3において、抗原40と検出を容易にする標識酵素50も理解を容易にするために表示されている。
【0047】
バイオセンサー100は、図4に示すような構成であってもよい。詳細については、下記文献1および2を参照。また、生体高分子物質を検知する物質30は、図5に1例を示すように、目的とする用途に対応して、生体高分子物質に対応した検知物質をカーボンナノチューブ20の表面に個別に固定化する。
【非特許文献1】By Sang Nyon Kim,“Carbon Nanotubes for Electronic and Electrochemical Detection of Biomolecules”Adv.Mater.2007,19,3214−3228
【非特許文献2】Joseph Wang,“Carbon−Nanotube Based Electrochemical Biosennsors:A Review”Electroanalysis 2005,17,No.1 7page
【0048】
記憶手段140並びに150、演算手段130、表示手段160は、後述する図11に記載した情報処理装置1000により実現することができる。また、網羅的発現状態解析手段132は、専用のソフトウエアを情報処理装置1000にインストールすることにより実現することができる。
【0049】
次に、演算手段130の処理内容について図2にしたがって説明をする。演算手段130のソフトウエアがスタートすると、演算手段130は最初にnを1にセットする(S10)。次に演算手段130は、バイオセンサーnのデータをバイオセンサーリーダー120を介して読み込む(S20)。そして、そのデータを検体データとして記憶手段140に記憶する(S30)。次に、全バイオセンサーについて読み込まれたか判定され(S40)、読み込まれていなければ、nに1を加算して(S50)、次のバイオセンサー100のデータを読み込む。このようにして全バイオセンサーのデータが読み込まれたところで、網羅的発現状態解析が行われる(S60)。
【0050】
網羅的発現状態解析では、記憶手段140に記憶されている検体データと記憶手段150に記憶されている運動適用別データベースとが読みだされ、検体データに相当する運動適用別データが存在するか否かが比較される(S70)。運動適用別データベースの一例は、図6に示すように運動適用別に各センサー番号が示す出力のデータが最大値、平均値、最小値で記憶されている。検体データが運動適用に相当するか対比して、対比データがある場合は近い運動適用順に表示手段160により表示する(S80)。対比データがない場合は「対象情報なし」として表示される。
【0051】
<実施例1の応用例1>
上記のバイオセンサーシステムの一つの応用例は、ドーピング検査に使用する例である。複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるものであるので、ドーピング検出バイオセンサーとして使用することができる。ドーピング防止規定は、例えば、世界ドーピング防止規定である2008年禁止表国際基準によるものが望ましいが、これに限られるものではない。各地域や国、または団体で規定するドーピング防止規定であってもよい。
【0052】
<実施例1の応用例2>
上記のバイオセンサーシステムの別の応用例は、ガン検査に使用する例である。複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ガン組織から発生する化学物質に反応するものであり、ガン検出バイオセンサーシステムとして使用することができる。
【0053】
ガン組織から発生する化学物質は、ガン患者の進展度合い、種類により異なるものである。たとえば、犬はガン患者をにおいで嗅ぎ分けることができる。犬の嗅覚を刺激する物質を分離してバイオセンサーに用いることにより実現することができる。
【0054】
<実施例1の応用例3>
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、エリートアスリートの発掘に使用する例である。エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できる例としては、生まれながらして筋力の高いエリートアスリートとして、ミオスタチンの量を調べることにより実現することができる。骨格筋は、通常は代謝量が大きいので、通常の人間は生命維持のために不必要な筋肉をつけない筋肉の抑制剤であるミオスタチンが分泌されている。しかし、ある確率で遺伝子によりミオスタチンの分泌が少なく、筋量が著しく増加したエリートアスリートも存在するからである。
【0055】
<実施例2>
実施例2は、薬剤ドーピング検査装置に関するものである。実施例1で説明した網羅的発現状態解析手段等を省略して、図7に示すように、 ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブのバイオセンサー100と、カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極10(1)、10(2)、・・・10(k)・・・10(n)と、バイオセンサーリーダー120と演算手段230と禁止薬物判定レベルをあらかじめ記憶した記憶手段240と表示手段260を有する。
【0056】
世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質に規定されている薬物は数百種類にも及ぶので、すべての禁止薬物を検出することができるセンサーを開発することは難しい。しかし、実際の現場では、短距離競走に代表されるスプリント系とマラソンに代表される持久系とでは、ドーピングに使用される薬物も異なる。そこで、スプリント系と持久系で対象とされる薬物を検出する物質を分けることにより、バイオセンサーの種類を実用的に適用できる範囲に絞ることができる。
【0057】
<実施例2−1>
具体的な応用例として実施例2−1は、短距離競走に代表されるスプリント系のドーピングを防止することを目的とするものである。スプリント系に使用される蛋白同化男性化ステロイド薬に関するものであり、具体的には、ナンドロロン、アンドロステンジオールを検知する物質をカーボンナノチューブの表面に固定化する。
【0058】
<実施例2−2>
具体的な応用例として実施例2−2は、短距離競走に代表されるスプリント系のドーピングを防止することを目的とするものである。スプリント系に使用される興奮薬を検出するものであり、具体的には、ジメチルアンフェタミン、アドレナリンを検知する物質をカーボンナノチューブの表面に固定化する。
【0059】
<実施例2−3>
具体的な応用例として実施例2−3は、マラソンに代表される持久系のドーピングを防止することを目的とするものである。持久系に使用されるホルモンと関連物質を検出するものであり、具体的には、エリスロポエチン、インスリン、ミオスタチン等を検知する物質をカーボンナノチューブの表面に固定化する。
【0060】
<実施例3>
実施例3は、遺伝子ドーピング検査装置に関するものである。図8は、本発明の遺伝子ドーピング検査装置の一実施例を示すブロック図である。図9は、本発明の遺伝子ドーピング検査装置の一実施例の動作を示すフローチャート図である。
【0061】
図8に示すように、遺伝子ドーピング検査装置3は、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサー300と、バイオセンサーリーダー120と、演算手段330と、バイオセンサー330の遺伝子の発現状態を網羅的に測定して解析する網羅的発現状態解析手段332と、各種ドーピングの発現状態のデータを禁止薬物に関連付けてあらかじめ記憶する記憶手段350と、競技後に測定された発現状態のデータと、記憶手段350より読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段336と、個体を特定することができる生体認証手段320と、生体認証手段320で特定された個体生体情報と、競技前に測定された発現状態のデータとを個体生体情報に関連付けて記憶する個別生体情報記憶手段340と、競技後に測定された発現状態のデータと、個別生体情報記憶手段340より個体生体情報をキーとして読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段336と、を有する。
【0062】
バイオセンサー300は、実施例1で説明したのと同様な構成であるが、複数の種類の生体高分子物質を検知する物質が遺伝子ドーピングチェック用である点が異なる。すなわち、スプリンター系では、MyoD、Myogeninなどの分化促進マーカー、AKT、mTOR、などの細胞増殖マーカー、NTF、NDGF、などの神経促通マーカーが、
持久系では、VEGF、FLT、などの血管新生マーカー、PGC1、Calcineurin、などの代謝マーカーを表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、 前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、を有するカーボンナノチューブバイオセンサーが望ましい。
【0063】
生体認識手段320としては、指紋、指の静脈、掌の静脈、顔や虹彩等の生体情報を利用するものを使用することができる。これらの生体情報は、それぞれの人間が持つ固有の特徴的な情報であり、盗用の心配が無い。
【0064】
次に、演算手段330の処理内容について図9にしたがって説明をする。演算手段330のソフトウエアがスタートすると、個別生体認証手段320により個別生体認証が行われる(S105)。次に、演算手段330は最初にnを1にセットする(S110)。そして演算手段330は、バイオセンサーnのデータをバイオセンサーリーダー120を介して読み込む(S120)。そして、そのデータを個別生体情報別発現状態データとして記憶手段340に記憶する(S130)。次に、全バイオセンサーについて読み込まれたか判定され(S140)、読み込まれていなければ、nに1を加算して(S150)、次のバイオセンサー300のデータを読み込む。このようにして全バイオセンサーのデータが読み込まれたところで、同一個別生体データの有無が調査される(S160)。同一個別生体データがない場合は、プログラムは終了する。同一個別生体データが有る場合は、旧個別生体情報別の発現データの変動量を記憶手段340に記憶されているデータを読み出して調査される(S162)。
【0065】
網羅的発現状態解析では、個別生体情報別の発現データの変動量と記憶手段350に記憶されている禁止薬物のタンパク質変動データベースとが読みだされ、発現データに相当する禁止薬物別データが存在するか否かが比較される(S170)。個別生体情報別の発現データの変動量の一例は、図10に示すように、訓練を始めると初期適応から後期適応につれて筋肉の組織、筋繊維は変化する。訓練により血管組織を増加し、筋力も増す。
【0066】
遺伝子ドーピングが行われた場合は、通常生体に遺伝子を導入する場合、分子生物学者や遺伝子治療学者はその遺伝子のみを入れるようなことはしない。ベクターという遺伝子の運び手(プラスミド、ウィルス等)にその遺伝子を入れ込んで(組み換えて)注射などをすると想定される。
【0067】
この場合、生体は必ずその「外来の遺伝子ベクターが入ってきた」事を察知し、一連の免疫反応を引き起こすと想定される。そのパターンをバイオセンサー300を使って読み取り、変動を一般化してしまえば、逆に「このパターンの遺伝子変動を起こしている血液を持った人は限りなく外来の遺伝子を導入された可能性が高い」と判断できる。例えば、検体より赤血球の実が増加していることが判明すれば遺伝子ドーピングの可能性があると判断される。
【0068】
発現状態の変動データが禁止薬物別データに相当するか対比して、対比データがある場合は近い禁止薬物順に表示手段360により表示する(S180)。対比データがない場合は「禁止薬物発言なし」として表示される(S190)。
【0069】
以上のようにして、従来は、特に骨格筋に注射などして導入した場合には、血液や尿に排出されることはなく検出が不可能とされていた競技者の遺伝子ドーピングについても検査することができる。
【0070】
<実施例4>
実施例4は、ガン検査装置に関するものである。実施例2で説明したドーピング薬物を検出できる物資との代わりにガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を用いたものである。構成、作用は実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0071】
図11は、本発明のバイオセンサーシステム1で使用することができる情報処理装置1000のハードウェア構成の一例を示す。情報処理装置1000は、CPU(Central Processing Unit)1010、バスライン1005、通信I/F1040、メインメモリ1050、BIOS(Basic Input Output System)1060、パラレルポート1080、USBポート1090、グラフィック・コントローラ1020、I/Oコントローラ1070、並びにキーボード及びマウス・アダプタ等1092を備える。I/Oコントローラ1070には、ハード・ディスク1074、光ディスクドライブ1076、半導体メモリ1078、等の記憶手段を接続することができる。これらの記憶手段を記憶装置として使用することができる。グラフィック・コントローラ1020には、表示装置1022が接続されている。
【0072】
BIOS1060は、情報処理装置1000の起動時にCPU1010が実行するブートプログラムや、情報処理装置1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。これにより、図1で示した機能構成を有するハードウェアが実現される。
【0073】
光ディスクドライブ1076としては、例えば、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ、DVD−RAMドライブ、BD(Blu−ray Disk)−ROMドライブ等を使用することができる。この際は各ドライブに対応した光ディスク1077を使用する必要がある。光ディスク1077から光ディスクドライブ1076によりプログラムまたはデータを読み取り、I/Oコントローラ1070を介してメインメモリ1050またはハード・ディスク1074に提供することもできる。
【0074】
情報処理装置1000に提供される本発明によるプログラムは、光ディスク1077、またはメモリーカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。コンピュータプログラムは、I/Oコントローラ1070を介して、記録媒体から読み出され、又は通信I/F1040を介してダウンロードされることによって、情報処理装置1000にインストールされ実行される。プログラムが情報処理装置に働きかけて行わせる動作は、図1から図5において説明した動作は、情報処理装置1000における動作と同一であるので省略する。
【0075】
以上に示したコンピュータプログラムは、外部の記憶媒体に格納してもよい。記憶媒体としては光ディスク1077、またはメモリーカードの他に、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、を用いることができる。また、専用通信回線やインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハード・ディスクまたは光デスクライブラリー等の記憶装置を記録媒体として使用し、通信回線を介してコンピュータプログラムを情報処理装置1000に提供してもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。例えば、バイオセンサーはカーボンナノチュウーブにより説明をしたが、他のバイオセンサーであってもよい。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のバイオセンサーシステムの一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明のバイオセンサーシステムの一実施例の動作を示すフローチャート図である。
【図3】本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーを示す図である。
【図4】本発明のバイオセンサーシステムに使用されるカーボンナノチューブバイオセンサーの別の実施例を示す図である。
【図5】本発明のバイオセンサーシステムの解析対象の生体高分子物質とその検知物質の実施例を示す図である。
【図6】本発明のバイオセンサーシステムの運動適用別データベースの一実施例を示す図である。
【図7】本発明の薬剤ドーピング検査装置の一実施例を示すブロック図である。
【図8】本発明の薬剤ドーピング検査装置の別の実施例を示すブロック図である。
【図9】本発明の薬剤ドーピング検査装置の別の実施例の動作を示すフローチャート図である。
【図10】運動による人体の筋肉の適応を説明する図である。
【図11】本発明に使用する、情報処理装置の一例である。
【符号の説明】
【0078】
10(1)、10(2)、・・・10(k)・・・10(n) 電極
20 カーボンナノチューブ
30 生体高分子物質を検知する物質
40 抗原
50 酵素ラベル
100 バイオセンサー
120 バイオセンサーリーダー
130 演算手段
132 網羅的発現状態解析手段
140 記憶手段
150 記憶手段
160 表示手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステムであって、
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、
原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、
検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、
を備えたバイオセンサーシステム。
【請求項2】
前記バイオセンサーが、
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、
前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである請求項1に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項3】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるものである請求項1又は2に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項4】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ガン組織から発生する化学物質に反応するものである請求項1又は2に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項5】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できるものである請求項1又は2に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項6】
ドーピング薬物に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置した薬剤ドーピング検査装置であって、
ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を備えた薬剤ドーピング検査装置。
【請求項7】
前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である蛋白同化薬を検出できるものである請求項6に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【請求項8】
前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である興奮薬を検出することができるものである請求項6に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【請求項9】
前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質であるホルモンと関連物質を検出できるものである請求項6に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【請求項10】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサーと、
前記バイオセンサーの遺伝子の発現状態を網羅的に測定して解析する網羅的発現状態解析手段と、
各種ドーピングの発現状態のデータを禁止薬物に関連付けて禁止薬物のタンパク質変動データベースをあらかじめ記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、
競技後に測定された発現状態のデータと、前記記憶手段より読みだした競技前の発現状態のデータとの変動を検出する遺伝子変動検出手段と、
を備えた遺伝子ドーピング検査装置。
【請求項11】
前記バイオセンサーが、
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、
前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである請求項10に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【請求項12】
個体を特定することができる生体認証手段と、
前記生体認証手段で特定された個体生体情報と、競技前に測定された発現状態のデータとを個体生体情報に関連付けて記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、
競技後に測定された発現状態のデータと、前記個別生体情報別発現状態データ記憶手段より個体生体情報をキーとして読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段と、
をさらに備えた請求項10又は11に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【請求項13】
ガン組織から発生する化学物質に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置したガン検査装置であって、
ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を備えたガン検査装置。
【請求項1】
生体高分子を網羅的に測定するバイオセンサーシステムであって、
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を個別に固定化した複数のバイオセンサーと、
原因別に典型的な遺伝子の発現状態に関する前記複数のバイオセンサーの出力信号の情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、
検体を測定した際の前記複数の電極の出力信号を、あらかじめ記憶手段に記憶されている運動適用別情報と対比して遺伝子の発現状態の原因を特定する網羅的発現状態解析手段と、
を備えたバイオセンサーシステム。
【請求項2】
前記バイオセンサーが、
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、
前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである請求項1に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項3】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ドーピング防止規定に規定されている禁止物質を検出できるものである請求項1又は2に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項4】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、ガン組織から発生する化学物質に反応するものである請求項1又は2に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項5】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質は、エリートアスリートの特異的な遺伝子の発現状態を検出できるものである請求項1又は2に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項6】
ドーピング薬物に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置した薬剤ドーピング検査装置であって、
ドーピング薬物を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を備えた薬剤ドーピング検査装置。
【請求項7】
前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である蛋白同化薬を検出できるものである請求項6に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【請求項8】
前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質である興奮薬を検出することができるものである請求項6に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【請求項9】
前記ドーピング薬物は、世界ドーピング防止規定に規定されている禁止物質であるホルモンと関連物質を検出できるものである請求項6に記載の薬剤ドーピング検査装置。
【請求項10】
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のバイオセンサーと、
前記バイオセンサーの遺伝子の発現状態を網羅的に測定して解析する網羅的発現状態解析手段と、
各種ドーピングの発現状態のデータを禁止薬物に関連付けて禁止薬物のタンパク質変動データベースをあらかじめ記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、
競技後に測定された発現状態のデータと、前記記憶手段より読みだした競技前の発現状態のデータとの変動を検出する遺伝子変動検出手段と、
を備えた遺伝子ドーピング検査装置。
【請求項11】
前記バイオセンサーが、
複数の種類の生体高分子物質を検知する物質を表面に個別に固定化した複数のカーボンナノチューブと、
前記物質の種類毎のカーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を有するカーボンナノチューブバイオセンサーである請求項10に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【請求項12】
個体を特定することができる生体認証手段と、
前記生体認証手段で特定された個体生体情報と、競技前に測定された発現状態のデータとを個体生体情報に関連付けて記憶する個別生体情報別発現状態データ記憶手段と、
競技後に測定された発現状態のデータと、前記個別生体情報別発現状態データ記憶手段より個体生体情報をキーとして読みだし発現状態のデータとを比較する遺伝子変動検出手段と、
をさらに備えた請求項10又は11に記載の遺伝子ドーピング検査装置。
【請求項13】
ガン組織から発生する化学物質に反応するバイオセンサーをカタログアレイとして配置したガン検査装置であって、
ガン組織から発生する化学物質を検出できる物質を表面に固定化したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブからの信号を検出する複数の電極と、
を備えたガン検査装置。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図1】
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図1】
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−127652(P2010−127652A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300032(P2008−300032)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
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