説明

生化学情報解析装置及びその生化学情報解析装置に供する変換情報作成装置、並びに生化学情報解析方法及び変換情報作成方法

【課題】マイクロアレイのスポットのピーク輝度値が撮影手段の飽和輝度値を超えても、そのピーク輝度値を求めることができる生化学情報解析装置を提供する。
【解決手段】飽和スポット抽出手段102は、マイクロアレイを撮影した画像から輝度値の飽和した飽和スポットの画像を抽出する。指標値算出手段105は、その飽和スポットの画像を所定の閾値で2値化して白領域の画素を計数し、その画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する。メモリ111には、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報が予め記憶されており、特徴値取得手段112はその変換情報を参照して、算出された指標値から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する。情報出力手段114は、取得された特徴値から、飽和スポットのピーク輝度値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性質もしくは蛍光性質を持たせた検体を定着したスポットの解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学・分子生物学分野においては、複数の検体(例えば抗原や抗体)を基盤上に一定のパターンで配列および定着させ、その定着した各検体に発光性質もしくは蛍光性質を持たせ、その発光性質もしくは蛍光性質を持たせた検体であるスポットの発光強度(ピーク輝度値)を測光することで、検体を解析する技術が実用化されている。検体に発光性質もしくは蛍光性質を持たせる方法としては、例えば、化学結合によって発光性質もしくは蛍光性質を具備した物質により標識化した物質を準備し、その標識化した物質を抗原抗体反応により検体に結合させる方法がある。
【0003】
また、特許文献1には、スポットの発光強度を測光する方法として、スポット上を測光部を一定速度で走査させるとともに、発光強度を連続的に測光し、発光強度の連続した波形グラフを得、該波形グラフのピーク値を各スポットの発光強度として求める技術が記載されている。
【0004】
しかしながら、このように波形グラフのピーク値をスポットの発光強度とした場合、その発光強度が測光部の飽和輝度値を超えると、その発光強度は波形グラフに表れず、スポットの発光強度を正確に得ることができない。
【特許文献1】特開平4−324345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、発光性質もしくは蛍光性質を持たせた検体を定着したスポットのピーク輝度値が、スポットを撮影する手段の飽和輝度値を超えても、そのピーク輝度値を求めることができる生化学情報解析装置及びその生化学情報解析装置に供する変換情報作成装置、並びに生化学情報解析方法及び変換情報作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の生化学情報解析装置は、発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを撮影して画像データを生成する画像取得手段と、前記画像取得手段により生成された画像データから、輝度値の飽和した飽和スポットの画像データを抽出する飽和スポット抽出手段と、前記飽和スポット抽出手段により抽出された飽和スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出手段と、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を予め記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記変換情報を参照して、前記指標値算出手段により算出された指標値から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する特徴値取得手段と、を備え、前記特徴値取得手段により取得された特徴値から、飽和スポットのピーク輝度値を求めることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2記載の生化学情報解析装置は、請求項1記載の生化学情報解析装置であって、前記指標値算出手段は、飽和スポットの画像データを第1の閾値および前記第1の閾値とは異なる第2の閾値でそれぞれ2値化して、前記第1および第2の閾値以上となる領域の画素数をそれぞれ計数し、その画素数比を指標値として算出することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3記載の生化学情報解析装置は、請求項1もしくは2のいずれかに記載の生化学情報解析装置であって、飽和スポットの特徴値は、飽和スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4記載の生化学情報解析装置は、請求項1もしくは2のいずれかに記載の生化学情報解析装置であって、飽和スポットの特徴値は、飽和スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5記載の変換情報作成装置は、生化学情報解析装置が備える記憶手段に、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を記憶させる変換情報作成装置であって、発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを撮影して画像データを生成する画像取得手段と、前記画像取得手段により生成された画像データから、輝度値の飽和してない基準スポットの画像データを抽出する基準スポット抽出手段と、前記基準スポット抽出手段により抽出された基準スポットの画像データの輝度値を、前記画像取得手段の飽和輝度値で正規化して、正規化スポットの画像データを生成する正規化手段と、前記正規化手段により生成された正規化スポットの画像データの輝度値を所定倍して伸張した伸張スポットの画像データを生成する伸張手段と、前記伸張手段により生成された伸張スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて伸張スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出手段と、前記伸張手段により生成された伸張スポットの画像データから、伸張スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を算出する特徴値算出手段と、を備え、前記伸張手段において伸張量を変化させて伸張スポットの画像データを生成し、その伸張スポットごとに、前記指標値算出手段および前記特徴値算出手段において算出された指標値および特徴値を前記変換情報として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6記載の変換情報作成装置は、請求項5記載の変換情報作成装置であって、前記指標値算出手段は、伸張スポットの画像データを第1の閾値および前記第1の閾値とは異なる第2の閾値でそれぞれ2値化して、前記第1および第2の閾値以上となる領域の画素数をそれぞれ計数し、その画素数比を指標値として算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7記載の変換情報作成装置は、請求項5もしくは6のいずれかに記載の変換情報作成装置であって、前記特徴値算出手段は、伸張スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項8記載の変換情報作成装置は、請求項5もしくは6のいずれかに記載の変換情報作成装置であって、前記特徴値算出手段は、伸張スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項9記載の生化学情報解析方法は、発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを画像取得手段により撮影して画像データを生成する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにて生成された画像データから、輝度値の飽和した飽和スポットの画像データを抽出する飽和スポット抽出ステップと、前記飽和スポット抽出ステップにて抽出された飽和スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出ステップと、記憶手段に予め記憶された、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を参照して、前記指標値算出ステップにて算出された指標値から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する特徴値取得ステップと、を具備し、前記特徴値取得ステップにより取得された特徴値から、飽和スポットのピーク輝度値を求めることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項10記載の生化学情報解析方法は、請求項9記載の生化学情報解析方法であって、前記指標値算出ステップは、飽和スポットの画像データを第1の閾値で2値化して、前記第1の閾値以上となる領域の画素数を計数する第1の計数ステップと、飽和スポットの画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で2値化して、前記第2の閾値以上となる領域の画素数を計数する第2の計数ステップと、前記第1と第2の計数ステップにて得た画素数の比を指標値として算出する画素数比算出ステップと、を具備することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項11記載の生化学情報解析方法は、請求項9もしくは10のいずれかに記載の生化学情報解析方法であって、飽和スポットの特徴値は、飽和スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項12記載の生化学情報解析方法は、請求項9もしくは10のいずれかに記載の生化学情報解析方法であって、飽和スポットの特徴値は、飽和スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項13記載の変換情報作成方法は、生化学情報解析装置が備える記憶手段に、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を記憶させる変換情報作成方法であって、発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを画像取得手段により撮影して画像データを生成する画像取得ステップと、前記画像取得ステップにて生成された画像データから、輝度値の飽和してない基準スポットの画像データを抽出する基準スポット抽出ステップと、前記基準スポット抽出ステップにて抽出された基準スポットの画像データの輝度値を、前記画像取得手段の飽和輝度値で正規化して、正規化スポットの画像データを生成する正規化ステップと、前記正規化ステップにて生成された正規化スポットの画像データの輝度値を所定倍して伸張した伸張スポットの画像データを生成する伸張ステップと、前記伸張ステップにて生成された伸張スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて伸張スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出ステップと、前記伸張ステップにて生成された伸張スポットの画像データから、伸張スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を算出する特徴値算出ステップと、を具備し、前記伸張ステップにおいて伸張量を変化させて伸張スポットの画像データを生成し、その伸張スポットごとに、前記指標値算出ステップおよび前記特徴値算出ステップにおいて算出された指標値および特徴値を前記変換情報として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項14記載の変換情報作成方法は、請求項13記載の変換情報作成方法であって、前記指標値算出ステップは、伸張スポットの画像データを第1の閾値で2値化して、前記第1の閾値以上となる領域の画素数を計数する第1の計数ステップと、伸張スポットの画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で2値化して、前記第2の閾値以上となる領域の画素数を計数する第2の計数ステップと、前記第1と第2の計数ステップにて得た画素数の比を指標値として算出する画素数比算出ステップと、を具備することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項15記載の変換情報作成方法は、請求項13もしくは14のいずれかに記載の変換情報作成方法であって、前記特徴値算出ステップでは、伸張スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項16記載の変換情報作成方法は、請求項13もしくは14のいずれかに記載の変換情報作成方法であって、前記特徴値算出ステップでは、伸張スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の好ましい形態によれば、発光性質もしくは蛍光性質を持たせた検体を定着したスポットのピーク輝度値(発光強度)が、スポットを撮影する手段である画像取得手段の飽和輝度値を超えても、そのピーク輝度値を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の生化学情報解析装置及びその生化学情報解析装置に供する変換情報作成装置、並びに生化学情報解析方法及び変換情報作成方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態における生化学情報解析装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、画像取得手段101はサンプル試料(マイクロアレイ)を撮影してサンプル画像データを生成する。マイクロアレイは、発光性質または蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを一定のパターンで配列したものである。検体は例えば抗原や抗体等であり、基盤上にスポットされる。検体に発光性質もしくは蛍光性質を持たせる方法としては、例えば、化学結合によって発光性質もしくは蛍光性質を具備した物質により標識化した物質を準備し、その標識化した物質を抗原抗体反応により検体に結合させる方法がある。
【0025】
飽和スポット抽出手段102は、画像取得手段101により生成されたサンプル画像データから、輝度値の飽和した飽和スポットの画像データを抽出する。飽和スポットとは、画像取得手段101が取り込むことが可能な輝度値の飽和点(飽和輝度値)を超える発光強度(ピーク輝度値)を持つスポットのことである。
【0026】
本実施の形態では、飽和スポット抽出手段102はスポット抽出手段103と飽和スポット判定手段104からなる。スポット抽出手段103は、サンプル画像データから順次スポットの画像データを抽出する。飽和スポット判定手段104は、スポット抽出手段103により抽出されたスポットの画像データを画像取得手段101の飽和輝度値で2値化して、その2値化した画像中に白領域が存在するかどうかを判定することで、抽出されたスポットが飽和スポットかどうかを判定する。このように、飽和スポット抽出手段102は、飽和スポット判定手段104により飽和スポットであると判定されたスポットの画像データを抽出する。
【0027】
指標値算出手段105は、飽和スポット抽出手段102により抽出された飽和スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その計数した画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する。
【0028】
本実施の形態では、指標値算出手段105は第1の2値化手段106、第1の画素数計数手段107、第2の2値化手段108、第2の画素数計数手段109および画素数除算手段110からなる。
【0029】
第1の2値化手段106は、飽和スポットの画像データを第1の閾値で2値化して、2値化画像を生成する。第1の画素数計数手段107は、第1の2値化手段106により生成された2値化画像から白領域(第1の閾値以上となる領域)の画素を計数して画素数D1を得る。第2の2値化手段108は、飽和スポットの画像データを第1の閾値とは異なる第2の閾値で2値化して、2値化画像を生成する。第2の画素数計数手段109は、第2の2値化手段108により生成された2値化画像から白領域(第2の閾値以上となる領域)の画素を計数して画素数D2を得る。画素数除算手段110は、画素数D1、D2の比を指標値として算出する。
【0030】
記憶手段であるメモリ111は、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を予め記憶しており、特徴値取得手段112は、メモリ111に記憶されている変換情報を参照して、指標値算出手段105により算出された指標値(画素数比)から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する。
【0031】
特徴値算出手段113は、飽和スポット抽出手段102により輝度値が飽和していないと判定されたスポットの画像データから、そのスポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を算出する。
【0032】
情報出力手段114は、特徴値取得手段112により取得された特徴値または特徴値算出手段113により算出された特徴値から、スポットのピーク輝度値を求めて、ディスプレイやメモリ等の外部の装置へ出力する。
【0033】
続いて、上記した生化学情報解析装置が備えるメモリ111に、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を記憶させる変換情報作成装置について説明する。なお、変換情報作成装置は生化学情報解析装置に組み込まれていてもよい。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態における変換情報作成装置の概略構成を示すブロック図である。図2において、基準画像取得手段201はマイクロアレイを撮影して基準画像データを生成する。この基準画像取得手段201には、上記した画像取得手段101を用いるか、飽和輝度値が画像取得手段101と同一(略同一も含む)のものを用いる。
【0035】
基準スポット抽出手段202は、基準画像取得手段201により生成された基準画像データから、輝度値の飽和していない基準スポットの画像データを抽出する。具体的には、上記した飽和スポット抽出手段102と同様の処理により基準スポットの画像データを抽出する。
【0036】
すなわち、基準画像データから任意の1つのスポットの画像データを抽出し、その抽出されたスポットの画像データを基準画像取得手段201の飽和輝度値で2値化して、その2値化した画像中に白領域が存在するかどうかを判定することで、抽出されたスポットが基準スポットかどうかを判定する。この基準スポット抽出手段202には、上記した飽和スポット抽出手段102を流用することができる。
【0037】
基準スポット正規化手段203は、基準スポット抽出手段202により抽出された基準スポットの画像データの輝度値を、基準画像取得手段201の飽和輝度値で正規化して、正規化スポットの画像データを生成する。
【0038】
正規化スポット伸張手段204は、基準スポット正規化手段203により正規化された正規化スポットの画像データの輝度値を所定倍して伸張した伸張スポットの画像データを生成する。
【0039】
指標値算出手段205は、正規化スポット伸張手段204により生成された伸張スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて伸張スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する。
【0040】
本実施の形態では、指標値算出手段205に上記した指標値算出手段105を用いる。すなわち、伸張スポットの画像データを第1および第2の閾値でそれぞれ2値化して、第1および第2の閾値以上となる領域の画素数をそれぞれ計数し、その計数した画素数の比を指標値として算出する。
【0041】
特徴値算出手段206は、正規化スポット伸張手段204により生成された伸張スポットの画像データから、伸張スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を算出する。この特徴値算出手段206には、上記した特徴値算出手段113を流用することができる。
【0042】
変換情報作成装置は、正規化スポット伸張手段204において伸張量を変化させて伸張スポットの画像データを生成し、その伸張スポットごとに、指標値算出手段205および特徴値算出手段206において算出された指標値(画素数比)および特徴値を変換情報としてメモリ111に記憶させる。
【0043】
続いて、図2に示す変換情報作成装置について、図3〜図6を用いて詳しく説明する。
基準画像取得手段201が撮影するマイクロアレイには、基準画像取得手段201が取り込むことが可能な輝度値の飽和点(飽和輝度値)を超えない光量を持つ検体がスポットされており、検体の性質、スポット間隔及びスポット径が図1に示す生化学情報解析装置において解析するマイクロアレイ(サンプル試料)と同じものを用いる。図3に、基準画像取得手段201により撮影されたマイクロアレイの画像の一例を示す。図3において、301は基準画像、302はスポットを示す。基準画像取得手段201は基準画像301の画像データを基準スポット抽出手段202へ送る。
【0044】
基準スポット抽出手段202は、基準画像301から任意のスポット302を基準スポットとして抽出する。なお、マイクロアレイは検体がアレイ状に規則的に定着したものであるので、基準スポットの抽出位置を特定することができる。
【0045】
図4(a)に抽出した基準スポット302aを示す。また図4(b)に抽出した基準スポット302aの中心を通る中心線401上の画素の輝度分布403aを示す。図4(b)において、402は基準画像取得手段201が取り込むことが可能な輝度値の飽和点である飽和輝度値を示す。
【0046】
ここで、点から発光した光を面で受けると輝度の分布はガウス分布となるので、スポットを点と仮定すると、画像取得手段101および基準画像取得手段201により撮影されるスポットの輝度分布はガウス分布であると仮定することができる。
【0047】
基準スポット正規化手段203は、図5(a)に示す基準スポット302aの輝度分布403aのピーク値が基準画像取得手段201の飽和輝度値402と同じになるように、基準スポット302aの輝度分布403aを正規化して、図5(b)に示す輝度分布501を持つ正規化スポットの画像データを生成する。
【0048】
正規化スポット伸張手段204は、正規化スポットの輝度分布501を1倍から2倍まで0.05刻みで段階的に伸張した伸張スポットの画像データを生成する。すなわち、正規化スポット伸張手段204は、図6(a)に示す正規化スポットの輝度分布501を段階的に伸張して、例えば図6(b)、図6(e)に示すような輝度分布を持つ伸張スポットの画像データを生成する。この伸張スポットは飽和スポットに相当する。
【0049】
ここで、通常、基準画像取得手段201では飽和輝度値402を超える輝度値は信号として得られないが、正規化スポット伸張手段204による処理は計算機の数値計算で行うので、仮想的にピーク輝度値を作成することができる。なお本実施の形態では、最大伸張量を2倍としているが、この値は任意である。
【0050】
以下、正規化スポット伸張手段204により生成される伸張スポットの画像データに対する処理について、図6(b)に示す輝度分布Aを持つ伸張スポットを例に説明する。
【0051】
まず、正規化スポット伸張手段204が、輝度分布Aのピーク輝度値A603が予め設定しておいた終了判定値を超えているか否かを判定する。本実施の形態では終了判定値を基準画像取得手段201の飽和輝度値402を2倍にした値とする。伸張スポットのピーク輝度値が終了判定値を超えると、変換情報の作成を終了する。輝度分布Aのピーク輝度値A603は終了判定値を超えていないので、処理を続行する。
【0052】
次に、指標値算出手段205が、輝度分布Aの拡がりを指標する指標値(画素数比)を算出する。上述したように、本実施の形態では指標値算出手段205に指標値算出手段105を用いる。
【0053】
すなわち、第1の2値化手段106が輝度分布Aを持つ伸張スポットの画像データを、図6(b)に示す第1の閾値601で2値化して、図6(c)に示す2値化画像を生成し、第1の画素数計数手段107が図6(c)に示す白領域(第1の閾値601以上となる領域)の画素を計数して画素数D1を得る。
【0054】
また、第2の2値化手段108が輝度分布Aを持つ伸張スポットの画像データを、図6(b)に示す第2の閾値602で2値化して、図6(d)に示す2値化画像を生成し、第2の画素数計数手段109が図6(d)に示す白領域(第2の閾値602以上となる領域)の画素を計数して画素数D2を得る。
【0055】
そして、画素数除算手段110が伸張スポットの指標値として画素数D1、D2の比Rを算出する。ここでは、画素数比Rを以下の式(1)にて求める。
【0056】
【数1】

【0057】
なお、2つの閾値は、輝度値‘0’から基準画像取得手段201の飽和輝度値402までの間の値であり、かつ同じ値でなければ任意の値でよい。ここでは、図6(b)に示すように、値の大きい閾値を第1の閾値601とし、値の小さい閾値を第2の閾値602とする。2つの閾値の決め方の詳細に関しては図7を用いて後述する。本実施の形態では第1の閾値601を飽和輝度値402と同じ値とし、第2の閾値602を飽和輝度値402の半分の値とする。なお、第1の閾値601および第2の閾値602は固定値である。
【0058】
次に、特徴値算出手段206が、基準画像取得手段201の飽和輝度値402と輝度分布Aのピーク輝度値A603を用いて以下の式(2)から伸張スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値Cを求める。
【0059】
【数2】

【0060】
本実施の形態では特徴値Cを基準画像取得手段201の飽和輝度値と伸張スポットのピーク輝度値との比で定義する。なお、特徴値はこれに限定されるものではなく、例えば、基準画像取得手段201の飽和輝度値と伸張スポットを取り囲む円内の輝度値の平均値(平均輝度値)との比で定義すれば、ノイズによるピーク輝度値の誤差を軽減することができる。その他、正規化スポットの輝度分布を伸張させることによって単調増加もしくは単調減少する値を特徴値とすればよい。
【0061】
輝度分布Aの画素数比Rを画素数比RAとし、輝度分布Aのピーク輝度値A603と基準画像取得手段201の飽和輝度値402とを用いて式(2)から求めた特徴値Cを特徴値CAとすると、変換情報作成装置は、画素数比RAに対する特徴値CAをメモリ111に記憶する。
【0062】
以上、図6(b)に示す伸張スポットの輝度分布を用いて、画素数比(指標値)Rに対する特徴値Cを求める手順を説明した。
【0063】
変換情報作成装置は、正規化スポット伸張手段204が伸張スポットの輝度分布を0.05刻みで段階的に伸張するたびに、画素数比Rに対する特徴値Cを求める。例えば、正規化スポット伸張手段204が図6(e)に示す輝度分布Bを持つ伸張スポットを生成した場合、第1の閾値601で2値化して得た図6(f)に示す2値化画像から画素数D1を計数し、第2の閾値602で2値化して得た図6(g)に示す2値化画像から画素数D2を計数し、その画素数比RBを求める。また、輝度分布Bのピーク輝度値B604と基準画像取得手段201の飽和輝度値402を用いて式(2)から特徴値CBを求める。
【0064】
このように、正規化スポットの輝度分布を1倍から2倍まで0.05刻みで伸張した伸張スポットごとに、画素数比Rに対する特徴値Cを求めて、メモリ111に記憶させることで、変換情報を作成する。図7に変換情報の一例を示す。
【0065】
図7において、702は画素数比RAに対する特徴値CAをプロットした特徴点Aである。また、703は画素数比RBに対する特徴値CBをプロットした特徴点Bである。このように0.05刻みでプロットした各特徴点間を直線で補間することによって、図7に示すグラフ701を得ることができる。このグラフ701が変換情報である。
【0066】
ここで、変換情報を以下の式(3)に示すように関数Fで定義する。すなわち、特徴値Cを、画素数比Rを変数とする関数Fで定義する。変換情報を参照して特徴値Cを求める場合、式(3)の関数Fに画素数比Rを代入することで特徴値Cを得ることができる。
【0067】
【数3】

【0068】
なお、第1の閾値601と第2の閾値602は任意の値を設定すればよいが、次の考えに基づいて設定してもよい。
【0069】
図7において、704は第1の閾値を飽和輝度値402とし、第2の閾値を飽和輝度値402に近づけた場合の変換情報である。また、705は第1の閾値を飽和輝度値402とし、第2の閾値を輝度値‘0’に近づけた場合の変換情報である。図7に示すように、第2の閾値を飽和輝度値402に近づける程、同じ特徴値Cに対する画素数比Rが大きくなるので、高分解能で指標値Cを求めることができる。
【0070】
但し、第2の閾値を飽和輝度値402に近づけ過ぎると、画素数D2と画素数D1がほぼ同じ値となり、特徴値Cが変化しても画素数比Rが1のまま変化しなくなる。そのため、第2の閾値を設定する際には、特徴値Cの変化が画素数比Rの変化に現れるように、第1の閾値と第2の閾値との間に間隔を持たせた設定としなければならない。
【0071】
また、複数の変換情報を用いて複数の特徴値を算出し、それらの特徴値の平均値や中間値をメモリ111に記憶させる特徴値Cとしてもよい。このようにすれば、ノイズによる影響を低減することが可能となる。
【0072】
以上、変換情報を作成する手順を説明した。
【0073】
続いて、図1に示す生化学情報解析装置においてサンプル試料(マイクロアレイ)を測定する際に、変換情報701を用いて飽和スポットの特徴値Cを求める手順について、図8〜図10を用いて説明する。
【0074】
サンプル試料には発光性質もしくは蛍光性質を有する検体がアレイ状にスポットされている。画像取得手段101は、サンプル試料を撮影してサンプル画像データを生成する。図8(a)に、画像取得手段101により撮影されたサンプル試料の画像の一例を示す。
【0075】
図8(a)において、801はサンプル画像、802はサンプルスポットを示す。サンプル画像801に写ったすべてのスポットをサンプルスポット802と呼ぶ。サンプル画像801の中心線803に沿った輝度値は、図8(b)に示すような輝度分布となる。
【0076】
図8(b)に示すように、輝度分布804と輝度分布806は飽和輝度値402を超えていないが、輝度分布805は飽和輝度値402を超えているため、このサンプル画像801からは輝度分布805を持つサンプルスポット802の真のピーク輝度値を得ることができない。なお、上述したように、生化学情報解析装置の画像取得手段101と変換情報作成装置の基準画像取得手段201は飽和輝度値が同一(略同一も含む)である。
【0077】
飽和スポット抽出手段102は、サンプル画像801から輝度値の飽和したサンプルスポット(飽和スポット)の画像データを抽出する。
【0078】
すなわち、スポット抽出手段103は、サンプル画像801からサンプルスポット802の画像データを順次抽出する。マイクロアレイでは予めサンプルスポットが規則的に配列されているので、抽出領域807で囲む通り、サンプルスポット802の場所を特定することができる。スポット抽出手段103は抽出領域807で囲まれた領域の画像データを抽出して、飽和スポット判定手段104へ送る。なお、スポット抽出手段103が新たなサンプルスポットの画像データを抽出できなかった場合には、測定を終了する。
【0079】
飽和スポット判定手段104は、スポット抽出手段103により抽出されたサンプルスポット802の画像データを画像取得手段101の飽和輝度値402で2値化して、その2値化した画像中に白領域が存在するかどうかを判定する。
【0080】
図9(a)に、画像取得手段101の飽和輝度値402を閾値としてサンプル画像801を2値化した画像を示す。図9(a)に示すように、輝度値の飽和したサンプルスポット中には白領域が存在する。そこで、飽和スポット判定手段104は飽和輝度値402を閾値として、スポット抽出手段103により抽出されたサンプルスポット802の画像データを2値化して、白となる画素があるかどうかを判定する。白となる画素がある場合、抽出したサンプルスポット802の輝度値は飽和していると判断する。この輝度値の飽和したサンプルスポット802を飽和スポットと呼ぶ。なお、図9(b)は、輝度値の飽和したサンプルスポットの2値化前の輝度分布であり、画像取得手段101の飽和輝度値402を超えた輝度値は得られていない。
【0081】
抽出されたサンプルスポット802が飽和スポットである場合、飽和スポット判定手段104は、そのサンプルスポット802の画像データを指標値算出手段105へ送る。なお、この場合、飽和スポット判定手段104は、特徴値算出手段113にはサンプルスポット802の画像データを送らない。
【0082】
また、抽出されたサンプルスポット802が飽和スポットでない場合、飽和スポット判定手段104は、そのサンプルスポット802の画像データを特徴値算出手段113へ送る。なお、この場合、飽和スポット判定手段104は、指標値算出手段105にはサンプルスポット802の画像データを送らない。
【0083】
指標値算出手段113は、輝度値の飽和していないサンプルスポット802の特徴値Cを、変換情報作成装置の特徴値算出手段206と同様の処理で算出する。本実施の形態では上記した式(2)で定義される特徴値Cを算出する。なお、上述したように、特徴値は式(2)で定義したものに限定されるものではなく、例えば、画像取得手段101の飽和輝度値とサンプルスポットを取り囲む円内の輝度値の平均値(平均輝度値)との比で定義する等してもよい。
【0084】
一方、指標値算出手段105は、変換情報作成装置の指標値算出手段205と同様の処理で飽和スポットの画素数比Rを算出する。すなわち、第1の2値化手段106が、飽和スポットの画像データを第1の閾値601で2値化して図9(c)に示す2値化画像を生成し、第1の画素数計数手段107が、図9(c)に示す2値化画像中の白領域の画素を計数して画素数D1を求める。また、第2の2値化手段108が、飽和スポットの画像データを第2の閾値602で2値化して図9(d)に示す2値化画像を生成し、第2の画素数計数手段109が図9(d)に示す2値化画像中の白領域の画素を計数して画素数D2を求める。そして、画素数除算手段110が、画素数D1、D2を用いて上記した式(1)から画素数比RCを求める。
【0085】
特徴値取得手段112は、メモリ111に予め記憶されている変換情報701を参照して画素数比RCに対する特徴値CCを求める。具体的には、画素数比RCを上記した式(3)に代入することで特徴値CCを求めることができる。図10に、変換情報701を参照して特徴値CCを求める様子を示す。図10において、1001は特徴点CCである。
【0086】
情報出力手段114は、特徴値取得手段112により取得された特徴値Cまたは特徴値算出手段113により算出された特徴値Cから、サンプルスポット802のピーク輝度値を求める。具体的には、以下の式(4)からピーク輝度値を求める。情報出力手段114は、この求めたピーク輝度値をディスプレイやメモリ等の外部の装置へ出力する。
【0087】
【数4】

【0088】
以上の処理により1つのサンプルスポット802のピーク輝度値が求まると、スポット抽出手段103はサンプル画像801から次のサンプルスポット802を抽出し、再度上記した処理を繰り返して、その次のサンプルスポット802のピーク輝度値を求める。生化学情報解析装置は、サンプル画像801からサンプルスポット802が抽出できなくなるまで処理を繰り返した後、測定を終了する。
【0089】
続いて、上記した生化学情報解析措置を用いた生化学情報解析方法について説明する。図11は本発明の実施の形態における生化学情報解析方法のフローチャート図である。
【0090】
測定を開始すると、まずステップS1101において、サンプル試料(マイクロアレイ)を画像取得手段101により撮影してサンプル画像データを生成する(画像取得ステップ)。
【0091】
次に、ステップS1102において、ステップS1101にて生成されたサンプル画像データから、輝度値の飽和した飽和スポットの画像データを抽出する(飽和スポット抽出ステップ)。すなわち、ステップS1101にて生成されたサンプル画像データからサンプルスポットを抽出し、そのサンプルスポットが輝度値の飽和した飽和スポットであるかどうかを判定する。
【0092】
次に、ステップS1103において、ステップS1102にて飽和スポットと判定されたサンプルスポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する(指標値算出ステップ)。
【0093】
次に、ステップS1104において、記憶手段に予め記憶された、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を参照して、ステップS1103にて算出された指標値から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する(特徴値取得ステップ)。
【0094】
次に、ステップS1105において、ステップS1104にて取得された特徴値から、飽和スポットのピーク輝度値を求めて、ディスプレイやメモリ等の外部の装置へ出力する。
【0095】
続いて、上記した生化学情報解析方法について、詳細に説明する。
ステップS1101にてサンプル画像データが生成されると、ステップS1102において、まずサンプル画像データからサンプルスポットの画像データを抽出する処理が行われる(ステップS1111)。このとき、サンプル画像データから新たなサンプルスポットの画像データを抽出できなかった場合(ステップS1111のNo)、当該サンプル試料の測定を終了する。
【0096】
サンプル画像データからサンプルスポットの画像データが抽出されると(ステップS1111のYes)、ステップS1112において、その抽出されたサンプルスポットの輝度値が飽和しているかどうかを判定する。その結果、飽和していないと判定された場合(ステップS1112のNo)、ステップS1106へ移り、飽和していると判定された場合(ステップS1112のYes)、ステップS1103へ移る。
【0097】
ステップS1106では、画像取得手段101の飽和輝度値402と当該サンプルスポットの輝度分布のピーク輝度値を用いて上記した式(2)から当該サンプルスポットの特徴値Cを算出し(特徴値算出ステップ)、ステップS1105へ移る。ステップS1105では、その算出した特徴値Cを用いて上記した式(4)から当該サンプルスポットのピーク輝度値を求めて、外部の装置へ出力する。その後、ステップS1111へ移り、サンプル画像データから次のサンプルスポットの画像データを抽出する。
【0098】
ステップS1103では、まずステップS1113において、飽和スポットの画像データを第1の閾値601で2値化した2値化画像を生成し、ステップS1114において、その2値化画像の白領域(第1の閾値601以上となる領域)の画素を計数して画素数D1を得る(第1の計数ステップ)。
【0099】
次にステップS1115において、飽和スポットの画像データを第2の閾値602で2値化して2値化画像を生成し、ステップS1116において、その2値化画像の白領域(第2の閾値602以上となる領域)の画素を計数して画素数D2を計数する(第2の計数ステップ)。
【0100】
そして、ステップS1117において、画素数D1、D2を用いて上記した式(1)から画素数比R(指標値)を算出する(画素数比算出ステップ)。なお、ステップS1113およびステップS1114による処理とステップS1115およびステップS1116による処理は順序を入れ替えてもよい。
【0101】
ステップS1117にて画素数比Rが算出されると、ステップS1104において、変換情報を参照して特徴値Cを取得し、ステップS1105において、その取得した特徴値Cを用いて上記した式(4)から当該サンプルスポットのピーク輝度値を求めて、外部の装置へ出力する。ステップS1105の処理が終了すると、ステップS1111へ移り、サンプル画像から次のサンプルスポットを抽出する。
【0102】
以上のステップS1102〜ステップS1106の処理を、ステップS1111においてサンプル画像から次のサンプルスポットが抽出できなくなるまで繰り返し、サンプル画像中の全てのサンプルスポットのピーク輝度値を求めて、測定を終了する。
【0103】
続いて、上記した変換情報作成装置を用いた変換情報作成方法について説明する。図12は本発明の実施の形態における変換情報作成方法のフローチャート図である。
【0104】
まず、ステップS1201において、マイクロアレイを基準画像取得手段201により撮影して基準画像データを生成する(画像取得ステップ)。
【0105】
次に、ステップS1202において、ステップS1201にて生成された基準画像データから、輝度値の飽和してない基準スポットの画像データを抽出する(基準スポット抽出ステップ)。
【0106】
次に、ステップS1203において、ステップS1202にて抽出された基準スポットの画像データの輝度値を、基準画像取得手段201の飽和輝度値402で正規化して、すなわち基準スポットのピーク輝度値が飽和輝度値402と同じになるようにして、正規化スポットの画像データを生成する(正規化ステップ)。
【0107】
次に、ステップS1204において、ステップS1203にて生成された正規化スポットの画像データの輝度値を所定倍して輝度分布を伸張し、伸張スポットの画像データを生成する(伸張ステップ)。
【0108】
次に、ステップS1205において、ステップS1204にて生成された伸張スポットの輝度分布のピーク輝度値が予め設定しておいた終了判定値を超えているかどうかを判定する。本実施の形態では、終了判定値を基準画像取得手段201の飽和輝度値402の2倍としている。
【0109】
ステップS1205において、ピーク輝度値が終了判定値を超えていると判定された場合(ステップS1205のYes)、当該変換情報作成処理を終了し、超えていないと判定された場合(ステップS1205のNo)、ステップS1206へ移る。
【0110】
ステップS1206では、ステップS1204にて生成された伸張スポットの指標値を算出する(指標値算出ステップ)。このステップS1206の処理は、上記したステップS1103の処理と同じである。
【0111】
すなわち、伸張スポットの画像データを第1の閾値601で2値化した2値化画像を生成し、その2値化画像の白領域(第1の閾値601以上となる領域)の画素を計数して画素数D1を得る(第1の計数ステップ)。また、伸張スポットの画像データを第2の閾値602で2値化した2値化画像を生成し、その2値化画像の白領域(第2の閾値602以上となる領域)の画素を計数して画素数D2を得る(第2の計数ステップ)。そして、画素数D1、D2を用いて上記した式(1)から画素数比R(指標値)を算出する(画素数比算出ステップ)。
【0112】
次に、ステップS1207において、画像取得手段101の飽和輝度値402と伸張スポットの輝度分布のピーク輝度値を用いて上記した式(2)から伸張スポットの特徴値Cを算出する(特徴値算出ステップ)。
【0113】
次に、ステップS1208において、ステップS1206とステップS1207にて算出された画素数比Rと特徴値Cを変換情報として生化学情報解析装置のメモリ111に記憶した後、ステップS1204に戻る。
【0114】
以上のように、ステップS1204〜ステップS1208の処理を、ステップS1204において伸張量を変化させて、伸張スポットのピーク輝度値が終了判定値を超えるまで繰り返す。これによって、変換情報が作成される。なお、ステップS1206とステップS1207の処理は順序を入れ替えてもよい。
【0115】
以上のように、本実施の形態においては、輝度値が飽和したサンプルスポットのピーク値を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明にかかる生化学情報解析装置及びその生化学情報解析装置に供する変換情報作成装置、並びに生化学情報解析方法及び変換情報作成方法は、スポットのピーク輝度値が、スポットを撮影する手段の飽和輝度値を超えても、そのピーク輝度値を求めることができ、生化学情報を解析する装置等のスポットのピーク輝度値を求めることが必要な装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態における生化学情報解析装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における変換情報作成装置の概略構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態における基準画像の一例を示す図
【図4】本発明の実施の形態における基準スポットとその輝度分布の一例を示す図
【図5】本発明の実施の形態における正規化スポットの輝度分布を示す図
【図6】本発明の実施の形態における伸張スポットの輝度分布および伸張スポットの画素数比算出を説明するための図
【図7】本発明の実施の形態における変換情報の一例を示す図
【図8】本発明の実施の形態におけるサンプル画像とその輝度分布の一例を示す図
【図9】本発明の実施の形態における飽和スポットとその輝度分布および飽和スポットの画素数比算出を説明するための図
【図10】本発明の実施の形態における変換情報を用いた特徴値の取得を説明するための図
【図11】本発明の実施の形態における生化学情報解析方法を示すフローチャート図
【図12】本発明の実施の形態における変換情報作成方法を示すフローチャート図
【符号の説明】
【0118】
101 画像取得手段
102 飽和スポット抽出手段
103 スポット抽出手段
104 飽和スポット判定手段
105 指標値算出手段
106 第1の2値化手段
107 第1の画素数計数手段
108 第2の2値化手段
109 第2の画素数計数手段
110 画素数除算手段
111 メモリ
112 特徴値取得手段
113 特徴値算出手段
114 情報出力手段
201 基準画像取得手段
202 基準スポット抽出手段
203 基準スポット正規化手段
204 正規化スポット伸張手段
205 指標値算出手段
206 特徴値算出手段
301 基準画像
302、302a スポット(基準スポット)
401 中心線
402 飽和輝度値
403a 基準スポットの輝度分布
501 正規化スポットの輝度分布
601 第1の閾値
602 第2の閾値
603 ピーク輝度値A
604 ピーク輝度値B
701、704、705 変換情報
702 特徴点A
703 特徴点B
801 サンプル画像
802 サンプルスポット
803 中心線
804、805、806 輝度分布
807 抽出領域
1001 特徴点CC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを撮影して画像データを生成する画像取得手段と、
前記画像取得手段により生成された画像データから、輝度値の飽和した飽和スポットの画像データを抽出する飽和スポット抽出手段と、
前記飽和スポット抽出手段により抽出された飽和スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出手段と、
飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を予め記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記変換情報を参照して、前記指標値算出手段により算出された指標値から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する特徴値取得手段と、
を備え、前記特徴値取得手段により取得された特徴値から、飽和スポットのピーク輝度値を求めることを特徴とする生化学情報解析装置。
【請求項2】
前記指標値算出手段は、飽和スポットの画像データを第1の閾値および前記第1の閾値とは異なる第2の閾値でそれぞれ2値化して、前記第1および第2の閾値以上となる領域の画素数をそれぞれ計数し、その画素数比を指標値として算出することを特徴とする請求項1記載の生化学情報解析装置。
【請求項3】
飽和スポットの特徴値は、飽和スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれかに記載の生化学情報解析装置。
【請求項4】
飽和スポットの特徴値は、飽和スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれかに記載の生化学情報解析装置。
【請求項5】
生化学情報解析装置が備える記憶手段に、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を記憶させる変換情報作成装置であって、
発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを撮影して画像データを生成する画像取得手段と、
前記画像取得手段により生成された画像データから、輝度値の飽和してない基準スポットの画像データを抽出する基準スポット抽出手段と、
前記基準スポット抽出手段により抽出された基準スポットの画像データの輝度値を、前記画像取得手段の飽和輝度値で正規化して、正規化スポットの画像データを生成する正規化手段と、
前記正規化手段により生成された正規化スポットの画像データの輝度値を所定倍して伸張した伸張スポットの画像データを生成する伸張手段と、
前記伸張手段により生成された伸張スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて伸張スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出手段と、
前記伸張手段により生成された伸張スポットの画像データから、伸張スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を算出する特徴値算出手段と、
を備え、前記伸張手段において伸張量を変化させて伸張スポットの画像データを生成し、その伸張スポットごとに、前記指標値算出手段および前記特徴値算出手段において算出された指標値および特徴値を前記変換情報として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする変換情報作成装置。
【請求項6】
前記指標値算出手段は、伸張スポットの画像データを第1の閾値および前記第1の閾値とは異なる第2の閾値でそれぞれ2値化して、前記第1および第2の閾値以上となる領域の画素数をそれぞれ計数し、その画素数比を指標値として算出することを特徴とする請求項5記載の変換情報作成装置。
【請求項7】
前記特徴値算出手段は、伸張スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする請求項5もしくは6のいずれかに記載の変換情報作成装置。
【請求項8】
前記特徴値算出手段は、伸張スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする請求項5もしくは6のいずれかに記載の変換情報作成装置。
【請求項9】
発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを画像取得手段により撮影して画像データを生成する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにて生成された画像データから、輝度値の飽和した飽和スポットの画像データを抽出する飽和スポット抽出ステップと、
前記飽和スポット抽出ステップにて抽出された飽和スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて飽和スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出ステップと、
記憶手段に予め記憶された、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を参照して、前記指標値算出ステップにて算出された指標値から、飽和スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を取得する特徴値取得ステップと、
を具備し、前記特徴値取得ステップにより取得された特徴値から、飽和スポットのピーク輝度値を求めることを特徴とする生化学情報解析方法。
【請求項10】
前記指標値算出ステップは、
飽和スポットの画像データを第1の閾値で2値化して、前記第1の閾値以上となる領域の画素数を計数する第1の計数ステップと、
飽和スポットの画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で2値化して、前記第2の閾値以上となる領域の画素数を計数する第2の計数ステップと、
前記第1と第2の計数ステップにて得た画素数の比を指標値として算出する画素数比算出ステップと、
を具備することを特徴とする請求項9記載の生化学情報解析方法。
【請求項11】
飽和スポットの特徴値は、飽和スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする請求項9もしくは10のいずれかに記載の生化学情報解析方法。
【請求項12】
飽和スポットの特徴値は、飽和スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比であることを特徴とする請求項9もしくは10のいずれかに記載の生化学情報解析方法。
【請求項13】
生化学情報解析装置が備える記憶手段に、飽和スポットの輝度分布の拡がりに対する高さの関係を表す変換情報を記憶させる変換情報作成方法であって、
発光性質もしくは蛍光性質を有する検体を定着した複数のスポットを配列したマイクロアレイを画像取得手段により撮影して画像データを生成する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにて生成された画像データから、輝度値の飽和してない基準スポットの画像データを抽出する基準スポット抽出ステップと、
前記基準スポット抽出ステップにて抽出された基準スポットの画像データの輝度値を、前記画像取得手段の飽和輝度値で正規化して、正規化スポットの画像データを生成する正規化ステップと、
前記正規化ステップにて生成された正規化スポットの画像データの輝度値を所定倍して伸張した伸張スポットの画像データを生成する伸張ステップと、
前記伸張ステップにて生成された伸張スポットの画像データを所定の閾値で2値化して、その所定の閾値以上となる領域の画素数を計数し、その画素数を用いて伸張スポットの輝度分布の拡がりを指標する指標値を算出する指標値算出ステップと、
前記伸張ステップにて生成された伸張スポットの画像データから、伸張スポットの輝度分布の高さに関する情報である特徴値を算出する特徴値算出ステップと、
を具備し、前記伸張ステップにおいて伸張量を変化させて伸張スポットの画像データを生成し、その伸張スポットごとに、前記指標値算出ステップおよび前記特徴値算出ステップにおいて算出された指標値および特徴値を前記変換情報として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする変換情報作成方法。
【請求項14】
前記指標値算出ステップは、
伸張スポットの画像データを第1の閾値で2値化して、前記第1の閾値以上となる領域の画素数を計数する第1の計数ステップと、
伸張スポットの画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で2値化して、前記第2の閾値以上となる領域の画素数を計数する第2の計数ステップと、
前記第1と第2の計数ステップにて得た画素数の比を指標値として算出する画素数比算出ステップと、
を具備することを特徴とする請求項13記載の変換情報作成方法。
【請求項15】
前記特徴値算出ステップでは、伸張スポットのピーク輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする請求項13もしくは14のいずれかに記載の変換情報作成方法。
【請求項16】
前記特徴値算出ステップでは、伸張スポットの平均輝度値と前記画像取得手段の飽和輝度値との比を特徴値として算出することを特徴とする請求項13もしくは14のいずれかに記載の変換情報作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−156824(P2009−156824A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338396(P2007−338396)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】